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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2009/2/2 新日本石油の業績

新日本石油は1月30日、2009年3月期連結決算の業績予想を大きく下方修正した。

昨年10月時点では当期純損益を-230億円としていたが、今回は-2,400億円とした。前年と比較し、-3,883億円となる。

2009年3月期業績予想 (単位:億円)

  今回予想
(2009/1/30)
前回予想
(2008/10)
差異 前年実績 差異
売上高  76,000  88,500  -12,500  75,240    760
営業損益
(うち在庫影響)
  -3,040
 
(-4,100)
  -120
  (-730)
  -2,920
 (-3,370)
  2,640
 (1,679)
  -5,680
 (-5,779)
経常損益   -2,700    50   -2,750   2,757   -5,457
当期純損益   -2,400   -230   -2,170   1,483   -3,883
配当    20   20  -   12   +8

セグメント別経常損益(単位:億円)

  今回予想
(2009/1/30)
前回予想
(2008/10)
差異 前年実績 差異
石油製品
(うち在庫影響)
  -3,520
 (-4,100)
 -1,190
  (-730)
  -2,820
 (-3,370)
  1,313
  (1,679)
  -4,833
 (-5,779)
石油化学製品    -490   -280    -210    226    -716
石油・天然ガス開発   1,200   1,130     70   1,113     87
建設・その他    110    110     0    105     5
合計   -2,700    50   -2,750   2,757   -5,457

損失増大の主因は原油在庫の評価損である。同社は原油の在庫を総平均法で計算している。

同社では10月時点では 通期平均で、原油代 97.8ドル/バレル、為替レート105.3円/ドルとみていた。
今回、原油代
83.7ドル/バレル、為替レート100.0円/ドルに見直した。

原油価格が上昇していた2008年3月期は、前年度末の安い在庫を平均したため、在庫評価で1,679億円の利益を計上した。
しかし、本年は期首の高い在庫が損益に影響するため、10月時点では在庫の影響を
-730億円とみていたが、その後の原油安により、それが-4,100億円に膨らんだ。

在庫の影響を除くと、営業損益は1,060億円の黒字であり、同じく在庫の影響を除いた前年実績(961億円)とあまり変わらない。

石油化学会社も、住友化学や三井化学を除き、ほとんどが原料及び製品の評価に総平均法を採用しており、規模は異なるが、同様の事態が起こる。

付記

出光興産は後入先出法を採用していたが、2009年度(2010年3月決算)から総平均法に変更した。


2009/2/2  三井化学の業績

三井化学は1月30日、2009年3月期の業績予想の修正と、緊急対策を発表した。

営業利益は-250億円、当期純利益は-130億円で、前年実績比ではそれぞれ、1,022億円、378億円の減益となる。
第1〜第3四半期の営業損益の合計が120億円の黒字に対し、第4四半期には
-370億円と激減する。

2009年3月期業績予想 (単位:億円)

  今回予想
(2009/1/30)
前回予想
(2008/10/31)
差異 前期実績 差異
売上高   14500   18800  -4300   17867  -3367
営業利益    -250    450   -700    772  -1022
経常利益    -300    480   -780    661   -961
当期純利益    -130    220   -350    248   -378
年間配当   9.00   13.00  -4.00   12.00  -3.00

セグメント別営業損益(単位:億円)

  今回予想
(2009/1/30)
前回予想
(2008/10/31)
差異 前期実績 差異     前期比 内訳
数量差 交易条件 固定費他
能材料   -60   190  -250   359   -419  -240   -75  -104
先端化学品    80   90   -10   108    -28    2   -6   -24
基礎化学品   -210   220  -430   334   -544  -408   -97   -39
その他   -60   -50   -10   -29    -31   -20   -15    4
合   計   -250   450  -700   772  -1,022  -666  -193  -163

2009年1〜3月については、
  為替レートは90円/$(通期では100円/$)
  国産ナフサ価格は26,000円/kl(通期 58,800円/kl)
を前提としている。

原料価格転嫁不能の影響はあるが、後入先出法を採用しているため前期末在庫の影響は少なく、数量差(販売減、減産)の影響が大きい。

第4四半期の営業損益は、機能材料が-158億円、基礎化学品が-217億円、全体で-370億円となっている。

ーーー

この業績悪化を受け、同社では下記の緊急対策を実施する。
(1)役員の報酬減額
    2009年2月より業績回復の見通しが立つまでの間、役員賞与返上、報酬減額で年間総報酬を20〜30% 減額
(2)管理社員の報酬減額
    2009年4月より業績回復の見通しが立つまでの間、賞与・報酬減額で年間総報酬を8% 減額
(3)あらゆるコスト削減策の強化

ーーー

三井化学は同時に、市原工場のEOGプラントとアニリンプラントの停止を発表した。

1)EOG

ポリエステル繊維や不凍液の原料となるエチレングリコール(EG)は、中東及びアジアにおけるプラントの大幅な新増設により、今後、更に供給過剰となることが懸念される。

同社は市原工場と大阪工場にEOとEGのプラントを有しているが、2009年11月をもって、市原のEOGプラント(EO:119千トン/年)を停止する。

EOGプラント停止による余剰エチレン8万トン/年のうち、エチレン4万トン/年を使用し、市原工場内に1-ヘキセンプラント(30千トン/年)を新設する。(投資額:75億円、2010年12月営業運転開始)

また、子会社のプライムポリマーが市原工場のエボリューの増強(24→30万トン/年)を検討しており、これによりエチレンの残り4万トン/年を消費する予定。

2)アニリン

三井化学は市原工場でフェノールの誘導品としてアニリンを生産している(能力66千トン/年)が、主用途であるMDI分野で自製化が進み、販売数量が激減したため、2009年3月にプラントを停止、事業から撤退する。

100%子会社の三井化学ポリウレタンが大牟田工場でMDI原料用として稼動しているアニリンプラントは、今後も稼動を継続させる。

 


2009/2/3 ダウとクウェートの対立

ダウは1月29日、クウェートの国会議員の一部が、ダウがK-Dow Petrochemicals 設立に際し、賄賂を払ったのではないかとの疑惑を否定した。
「ダウが不正な行為をしたのではないかとの示唆に対し激しい怒りを感じている。ダウとPICとの契約は完全に適切なものであり、ダウの行為も適切であった」としている。

K-Dow Petrochemicals 破談を受け、ダウではPICに対して25億ドルの損害賠償の訴えを行う可能性を示唆しているが、これに反発して一部の議員がダウが賄賂を払ったのでないかと騒ぎ出した。世界市場で石油化学製品の価格が暴落しているときに、高い価格での契約を結んだのは怪しいと政府を批判している。

クウェート国会は1月27日、石油会社の役員による不当利得行為やあらゆる形でのコミッションの受取りの疑いについて調査パネルを設置することを、賛成42、反対16、棄権2 で決めた。

パネルはAl-Zour 地区の日産615千バレルの製油所建設についても調査を行う。
同製油所については、
日揮と韓国のGS Engineering のコンソーシアムが原油蒸留施設の建設を、SKエナジーが水素製造装置、大林産業が貯蔵タンクの建設を、それぞれ請け負っている。

一部の国会議員はダウとPICの既存の4つのJVの取り消しも主張している。

  EQUATE Petrochemical EQUATE 2 Equipolymers MEGlobal
Formed: 1995   2004 2004
Ownership: Union CarbideDow 45%→42.5%
PIC 45%
42.5%
Boubyan Petrochemical
10%→ 9%  
Al-Qurain Petrochemical  0 6%
同左 Dow  50%
P
IC  50%
Dow 50%
PIC
  50%
Headquarters: Jleeb Al-Shyoukh, Kuwait         同左 Horgen, Switzerland Dubai, United Arab Emirates
Production
facilities:
Shuaiba, Kuwait 同左 Ottana, Italy and
Schkopau, Germany
Fort Saskatchewan and
Red Deer, Alberta, Canada
Capacities:
  (tons/year)
エチレン 650千トン→800千トン
LL/HDPE 450千トン→600千トン
EG     300千トン→400千トン

PP     100千トン→120千トン
PIC資産、Equateが製造受託)

エチレン 850千トン
PE    
300千トン
EG    
600千トン  
PET 485千トン EG 1,000千トン


ーーー

クウェートでは首長一族が内閣を抑え、反対派が議会を抑えて、互いに対立している。

K-Dow Petrochemicals についてはクウェート国会の会派 Popular Action Bloc の議員が問題視し、反対運動を展開した。
反対派はAl-Zour
地区の製油所建設にも反対しており、この計画も取り消される可能性がある。

付記

ナセル首相は2009年3月15日付けの地元紙とのインタビューで、Al-Zour 製油所の建設計画を取り止める考えを示した。

ーーー

昨年の12月27日までは、ダウの変身戦略が成功し、価格変動の影響を受ける石油化学をAsset-light 方式で全てJV化するとともに、Rohm and Haas 買収でスペシャルティ分野の強化が出来る筈であった。

12月28日にクウェート側が1月1日発足予定のJVを取り止めると通告し、事態は一転した。

R&H買収は主に繋ぎ融資で行い、PICからの入金でその大部分を返済する予定であったが、入金がなくなったためR&H買収が出来なくなった。

Moody's S&P K-Dow Petrochemicals 破談を受けて既にダウの格付けをジャンクボンド直前にまで引き下げており、投資適格を維持するためには実行が行き詰ることのない詳細な資金計画が必要であると明言している。
ダウとしては絶対にこれ以上の格下げを避ける必要があり、ファイナンスを確保するため、とにかく時間がほしいとしている。
Liveris CEO 「priority one, two and three はファイナンスの確保である」と述べた。

他方、R&Hは契約の実行を迫ってダウを訴えており、裁判官はダウの延期要請を拒否し、3月9日の開廷日程を決めた。

変身戦略の相手であるPICとR&Hの双方と対立することとなり、ダウは窮地に追い込まれている。

 

付記

ダウは2月3日、デラウエアの裁判所に R&H の訴えへの反論を提出した。
62ページに及ぶ長文だが、これまでの経緯を延々と述べた愚痴のようにみえる。

http://news.dow.com/dow_news/pdfs/20090203answer.pdf

他方、R&H 23日、「状況が悪いのは事実だが、ダウが買収を決めた時点で既に問題が起こり、更に悪化すると見込まれていた。このため買収契約ではダウがこのリスクを取ることを決めている」と述べ、2日付けのダウ宛レターを公表した。

http://www.businesswire.com/portal/site/rohmhaas/?ndmViewId=news_view&newsId=20090203006172&newsLang=en

 


2009/2/3 サウジ石化事業に資金問題

Saudi Kayan Petrochemical Company は200510SABIC 35%、Al-Kayan 20%出資で設立された。残り45%は昨年公募した。

アルジュベイルに100億ドルを投じて、エチレン 1,350千トン、LDPE 300千トン、PP 350千トン、Bis-Phenol A 240千トン、PC 260千トン等の石化コンプレックスを建設するもので、2009年稼動を目指した。

2006/7/5  新しいサウジ石化計画スタートへ

当初、SABICは2007年後半に本計画での借入交渉をする予定であった。しかし、GE Plastics 買収のための15億ドルの借入交渉を先行させた。

これに時間がかかり、そのうちサブプライム問題が発生した。

このため急遽交渉を始め、2008年5月末にKayan 計画の借入契約(60億ドル、期間15年)をまとめた。

国際的な金融機関から地方銀行、イスラム金融、政府機関など幅広いもので、韓国の輸出保険会社やEXIM銀行、英国のExport Credits Guarantee Department Saudi Industrial Development Fund (SIDF) Saudi Public Investment Fund (PIF)などが含まれている。

 

今回サウジ政府のSaudi Industrial Development Fund (SIDF) がこの契約に不満を示し、場合によっては 530 百万ドルの融資の取り止めも示唆している。

いくつかの問題を指摘しているが、最大の問題は金利率である。

SIDFの契約内容そのものは開示されていないが、商業銀行の条件は当初はLibor (ロンドン銀行間取引金利)+50 basis points で、建設後は+75 basis points となっている。(1 basis point = 0.01%)

この地域での契約では通常 Libor +200 basis points 以上となっており、これは極めて低い。

各行はSABICとの関係維持を願って、不利な条件を呑んだものだが、自行のコストアップで赤字必至となっている。

サウジ政府の金融機関が不満を表明するのは異例のことで、ブーム時に進められた多くの計画が重要な問題を含んでいる可能性を示唆している。

新規事業だけでなく、既存事業についても今後再点検される可能性があるとされている。

付記

SABICのCEOは2009年12月に、Kayanには16プラントあるが、いくつかは2010年に、残りは2011年にスタートすると述べた。

付記

2010年7月、Kayanは建設費が約24%、24億ドル増となると発表した。

親会社のSABICでは、2011年末までに16系列のうちの15系列をフル稼働させるとしている。

付記

2011年10月、大部分が稼働


2009/2/4 LyondellBasell Chapter 11 申請の影響

LyondellBasell 16日、米国事業について破産法 Chapter 11 (民事再生法)の申請を行ったと発表した。

2009/1/7 LyondellBasellChapter 11 申請

Basell 20077月、 Lyondell の全株式を127億ドル(借入金込み 190億ドル)で買収することで合意し、LyondellBasell が誕生したが、世界経済の悪化により化学品の需要が減少、LyondellBasell 借入金負担に耐えられず、260億ドルの債務の整理のため、Chapter 11 を申請したもの。

同社への債権者は債権の90%程度を失うと見られている。

付記

2009年2月27日、裁判所は80億ドルのdebtor-in-possession DIP:Chapter 11 申請企業に対する融資)を承認した。
但し、この規模の企業としては非常に短い1年の期限で、利率は20%にも達する。
.
今後については楽観できない。

 

Citigroup 1月16日、2008年第4四半期の業績を発表したが、LyondellBasell 向け債権20億ドルに対し、12億ドルの損失引き当てを行っている。

Royal Bank of Scotland Plc は1月19日、25億ポンド(35億ドル)の債権のうち、10億ポンド(14億ドル)を損失に落とした。
同行は他の欧州銀と分割してオランダ銀ABNアムロを買収したが、アムロが保有していた16億ドルの債権を引き継いだ。

Royal Bank of Scotland 2008年度の最終赤字が最大で280億ポンド(約3兆7千億円)に達するとの見通しを発表している。
英国政府は昨年の金融危機対策で購入した同行の優先株を普通株に転換し、持株比率を58%から70%に引き上げる。

Goldman Sachs Group Inc.は127LyondellBasell Finance Company への融資及びつなぎ融資のうち 850百万ドルを昨年12月に損失に落としたことを明らかにした。

このほか、 UBS(スイス) Merrill Lynch & Co.(破綻して Bank of America NA が買収)も多額の債権を有している。

付記

UBSが2月10日に発表した2008年決算では、197億スイスフラン(1兆5400億円)の最終赤字となった。

ーーー

Basell と同様に借入金で事業を拡大してきた Ineos も大変な状況にある。

2008年11月、同社はBarclays Merrill Lynch 主導の銀行団に対し、総額70億ユーロの2つの借入契約を2009年5月末まで免責(金利支払中断)するよう要請、銀行団はこれを受け入れた。

2008/11/19 Ineos の状況悪化

Standard & Poor's は1月27日、Ineos の企業格付けをCCCに落としたと発表した。Moody'sも同じレベルのCaa2 に落とした。
S&P では4月の銀行との再交渉の結果(利率のアップなど)や第1四半期の損益状況によっては、更なる引き下げもありうるとしている。

ーーー

これらの状況は金融機関による融資姿勢に表れており、化学業界で融資を受けられるのは Cash-rich な医薬品メーカーに限られている。

Hexion によるHuntsman 買収は、買収資金を供給する契約を結んでいたCredit Suisse Deutsche Bank が融資を拒否したため破綻した。
このため
Huntsman は両行を訴え、裁判が5月11日に予定されている。

昨年10時点の裁判では、判事は、Hexion/Huntsman の合併会社が支払不能になるとか、借入金を返済できないだろうとかを主張する裁判を銀行が起こすことを禁止するのが妥当であるとした。

しかし、LyondellBasell Ineos が現実に支払不能な状況に陥ったため、新しい裁判では判断が変わる可能性がある。

 


2009/2/4 BPの損益

BPは2月3日、2008年度の決算を発表した。

それによると、2008年の“Replacement cost profits” は256億ドルで、前年の184億ドルと比べ、39%増加した。これは過去最高である。
税引後損益は212億ドルで、前年比では1%の増益となっている。

                    単位:百万ドル
  2008  2007 増減   08/4Q 07/4Q
税引後損益  21,157  20,845  +1%    -3,344  4,399
うち在庫評価損益(税引後)  -4,436   2,475      -5,931  1,004
差引 Replacement cost profits  25,593  18,370 +39%     2,587  3,395

石油会社の場合、原油価格の変動が大きい場合、在庫評価方法によって損益に与える影響が大きいため、在庫評価とは別に、原油価格を当期の平均価格で評価した損益を Replacement cost profits として示すケースがある。

もし、期首と期末の在庫量が変わらなければ、これは LIFO法による損益と同じになる。

BPの場合、2007年には在庫評価損益が25億ドルのプラスであったが、2008年は44億ドルの赤字で、これを除けば、実質損益は過去最高益となる。

第4四半期をとると、税引後損益は-33億ドルで前年同期(44億円)に比べ77億ドルもの悪化となっているが、在庫評価損が59億ドルもあり、Replacement cost profits では26億ドルの益となっている。

Shell はこれを 「CCS (Current cost of supplies) profits」と呼んでいる。

2008/8/5  Exxon Mobil の損益


2009/2/4  Pfizer Wyeth 買収契約

Pfizer は1月26日、Wyeth 680億ドルで買収すると発表した。

2009/1/27 PfizerWyeth を買収

Pfizer がSECに提出したCurrent Report この契約内容が明らかになった。
   
http://idea.sec.gov/Archives/edgar/data/78003/000091412109000324/pf11518635-8k.tx 

それによると、条件を満たしながらPfizerが契約を実行しない場合、Pfizer は破談金Termination fee45億ドルを支払うこととなっている。

逆にWyeth がもっとよい提案 (Superior Proposal )を受けた場合、以下の破談金をを支払う。
 合併契約締結後30日[email protected]億ドル

 その後 20億ドル

また、Wyeth株主の不承認や、Wyethの契約違反で終了した場合も、Wyethは20億ドルの破談金を支払う。
Wyethの取締役が株主への合併承認の推薦を取り消した場合、Wyethは20億ドルの破談金と費用7億ドルを支払う。

別途、現在のWyethの取締役2人をPfizerの取締役にすることも定められている。

 


2009/2/5  住友化学、三菱ケミカル、東ソーの業績

三井化学に次いで、住友化学、三菱ケミカル、東ソーの業績予想の発表があった。各社とも昨年10月末時点の予想と比べ、たったの3ヶ月で大幅な減益に修正している。

 

住友化学の業績

住友化学は2月3日、2009年3月期の業績予想の修正を発表した。

2009年3月期業績予想 (単位:億円)

  今回予想
(2009/2/3)
前回予想
(2008/10/31)
差異 前期実績 差異
売上高  18,200  20,100  -1,900   18,965  -765
営業利益    300    700   -400   1,024  -724
経常利益     0    600   -600    928  -928
当期純利益   -150    150   -300    631  -781
年間配当   9   12  -3   12  -3
ナフサ価格
   
4Q
58,500/kl
25,000
/kl
66,100/kl
  61,500/kl
 

セグメント別営業損益(単位:億円)

  今回予想
(2009/2/3)
前回予想
(2008/10/31)
差異 前期実績 差異
基礎化学   -110   -20   -90   106  -216
石油化学   -180    25  -205    45  -225
精密化学    40    75   -35   114   -74
情報電子化学    60   155   -95    63   -3
農業化学    240   235    5   209   31
医薬品    310   310    0   465  -155
その他    -60   -80   20    37   -97
全社    -    -   -   -15   15
合計    300   700  -400  1,024  -724

農業化学と医薬品の営業利益はほぼ前回予想通りで頑張っているが、基礎化学、石油化学と情報電子化学が大幅減益となる予想で、当期純利益は赤字となり、減配する。

同社は減益予想と減配予想に伴い、役員報酬の減額を実施する。
 @ 平成21年3月期業績に対応する役員賞与は支給しない。
 A 月報酬については平成21年4月以降8〜10%の減額改訂を行う。
 B その結果、役員の年間報酬額は、20%程度の減額となる。

また、設備投資・研究開発投資の厳選、諸経費の削減、在庫削減等による有利子負債の削減、人員合理化など、コストの削減に取り組むとしている。

同社の国内外のグループ従業員は正規・非正規合わせて約34千人だが、このうち、海外で非正規の1600人、国内で正社員200人を含む900人を削減する。正社員は中途・新卒の採用抑制で対応し、希望退職は募集しない。

在庫の削減については今年3月末までに10%(金額では400億円)を縮減する。設備投資と研究開発投資に関してはおおむね10%減を目標に掲げている。

同社は退職給付債務の積立不足額に充当するため、保有株式の一部を拠出して、164億円の退職給付信託を設定した。
この株式の簿価と信託設定金額との差額である148億円を特別利益として計上する。

株価下落で目減りした退職給付債務積立金を穴埋めするのに保有株式拠出で行うことにより、その株式の含み益を顕在化させ、その分だけ負担を軽くするもの。

ーーー

三菱化学は2月4日、2009年3月期の業績予想の修正を発表した。

2009年3月期業績予想 (単位:億円)

  今回予想
(2009/2/4)
前回予想
(2008/10/31)
差異 前期実績 差異
売上高  29,700  32,700  -3,000  29,298   -402
営業利益    220   1,250  -1,030   1,250   -1,030
経常利益    60   1,210  -1,150   1,289  -1,229
当期純利益   -580    350   -930   1,641  -2,221
年間配当   未定   16     16  
ナフサ価格
   4Q
58,500/kl
25,000
/kl
69,000/kl
  61,500/kl
 

セグメント別営業損益(単位:億円)

  今回予想
(2009/2/4)
前回予想
(2008/10/31)
差異 前期実績 差異
エレクトロニクス・アプリケーションズ    80    250   -170   316   -236
デザインド・マテリアルズ    10     80    -70    97    -87
ヘルスケア    790    790     0   572    218
ケミカルズ    -470     70   -540   109   -579
ポリマーズ    -120     90   -210   112   -232
その他     80    120    -40   141    -61
全社   -150    -150     0   -97    -53
合計    220   1,250  -1,030  1,250  -1,030

ケミカルズ、ポリマーズ及びエレクトロニクス・アプリケーションズが前回予想より大幅に悪化し、当期損益は赤字となった。

ヘルスケアの前期比増益は、2008年10月の田辺三菱製薬の合併に伴うもので、2008年上期の損益には田辺製薬分が入っていないことによる。

平成213月期の期末配当金については減配せざるを得ないが減配の幅を見極めているとし、未定とした。(中間配当は8円)

平成22年3月期は収益を復元することを目標として定め、主に三菱化学グループ、三菱樹脂グループを対象に以下の対策を進める。

 <徹底した固定費の削減>
  ・ 経費全般のゼロベースでの見直し
  ・ 人事的施策:三菱化学グループと三菱樹脂グループとで合計50〜60億円の削減
    (役員報酬:年10〜20%の範囲内で削減、社員賞与:5%カット、要員配置等)
  ・ 研究開発費の選択と集中
 <資産の圧縮>
  ・ 設備投資の大幅な抑制
  ・ アセットライト(棚卸資産・売掛サイトの圧縮、資産の売却)
   3月末までに08年9月末比で1,000億円を削減
 <事業構造の改革>
   痛みにひるむことなく取り進めを加速

 

今回予想で受払差(在庫評価差)は次の通り。 (単位:億円)

  年間 うち4Q
ケミカルズ(石化)  -282  -206
ケミカルズ(炭素)    116    8
ポリマーズ    3  -153
合計  -163  -351

ーーー

東ソーは2月4日、2009年3月期の業績予想の修正を発表した。

2009年3月期業績予想 (単位:億円)

  今回予想
(2009/2/4)
前回予想
(2008/10/24)
差異 前期実績 差異
売上高   7,300   8,600  -1,300   8,274  -974
営業損益    -200    220   -420    591  -791
経常損益    -230    220   -450    525  -755
当期損益    -260    100   -360    252  -512
配当   6円    8円  -2円    8円  -2円

営業損益、経常損益、当期損益ともに赤字となっている。2円の減配とする。

セグメント別の営業損益の予想は発表されていないが、第3四半期までの実績では、石油化学は8億円の益、基礎原料(塩ビを含む)は134億円の赤字となっている。

年間合計では石油化学も赤字と思われる。

ーーー

三井化学を含む4社の2009年3月期業績予想は以下の通りで、4社とも当期純損益は赤字に転落する。
石油化学の赤字が大きい。(単位:億円)

  三井化学
(2009/1/30)
住友化学
(2009/2/3)
三菱ケミカル
(2009/2/4)
東ソー
(2009/2/4)
売上高       14,500      18,200       29,700     7,300
営業損益          -250
       300
        220      -200
基礎化学品 -210 基礎化学 -110
石油化学 -180
農業化学 240
医薬品   310
ケミカルズ -470
ポリマーズ
 -120
ヘルスケア 
790
 
     
経常損益        -300         0         60      -230
当期純損益         -130        -150        -580      -260

 


2009/2/6  2008年の合成樹脂出荷実績

各樹脂の分野別出荷実績が出揃った。

いずれも内需、輸出ともに前年を下回った。
塩ビの場合は国内出荷が共販会社が設立された1982年並にまで落ち込んだ。内需は能力の半分しかない。

内需は各樹脂ともに11月からの落ち込みが大きい。

各製品とも、能力と内需の間の差が拡大している。(能力はMETI発表最新の2007年末)
今後、輸出は期待できず、大幅な設備廃棄が必要となる。

LDPE
 
  2007 2008
内需  1,580  1,460
輸出   236   204
合計  1,816  1,664
能力
(併産)
 2,249
 + 265
 
     
HDPE    
 
  2007 2008
内需   966   884
輸出   122   94
合計  1,088   979
能力
(併産)
 1,141
 + 265
 
     
PP    
 
  2007 2008
内需  2,827  2,565
輸出   367   217
合計  3,194  2,782
能力  3,106  
     
PS    
 
  2007 2008
内需   862   768
輸出   44   37
合計   906   806
能力 .1,016  
     
ABS    
 
  2007 2008
内需   334   298
輸出   197   185
合計   530   484
     
PVC    
 
  2007 2008
内需   1,279  1,174
輸出    839   551
合計   2,118  1,725
能力   2,313  

2009/2/6  国際司法裁、黒海のルーマニア・ウクライナ領海紛争で判決

オランダ・ハーグの国際司法裁判所は2月3日、海底ガス田が見つかった黒海北西部の領海線画定をめぐるルーマニアとウクライナ間の40年間の紛争で、係争海域の約8割をルーマニア領海と認定する判決を言い渡した。15人の判事の満場一致で決まった。

両国は判決に従うことを事前に約束している。

判決 http://www.icj-cij.org/docket/files/132/14987.pdf?PHPSESSID=4783e0ba313e1b907c6dc64a70122cab

ガス田開発には世界的な大企業が相次ぎ名乗りを上げており、ウクライナ政府代表も「資源開発の環境が整い、両国の利益となる」と歓迎した。

問題となったのは国境の約40キロ沖にあるウクライナ領の無人島、ズメイヌイ島(英語名SerpentsIsland)。常時海面上にあり、周囲 2km、面積 0.17平方km、無人島で、ローマ神話のアキレスの墓があると伝えられている。

19世紀からルーマニアが領有、1948年に旧ソ連が占領した歴史的背景もある。

ウクライナはSerpents' Island は自国の領土で、これをベースに領域を主張した。ルーマニアは小さすぎて島ではないと主張していた。

判決では先ず、Serpents' Island は岩ではなく、島であり、周囲12海里をウクライナの領土とした。

しかし、経済水域と領土とは異なるとし、経済水域の決定に際しては
Serpents' Island を無視し、海岸線のみで決めた。
海岸線の近くにある一連の島は海岸線の延長とみなすが、
Serpents' Island の場合は離れ過ぎており、海岸線には影響しないとした。

ーーー

この判決が日本の東シナ海の境界線の決定になんらかの影響を与えるのかどうか、判決をざっと見ただけでは分からない。
(どなたか分かれば教えてください)

 

付記

外務省は2月6日、国際司法裁判所(ICJ)所長に小和田恒判事が互選で選出されたと発表した。任期は同日から3年間で、日本人がICJ所長に就任するのは初めて。

ICJは国連憲章で1945年に設立が決まった。国連総会と安全保障理事会で選ばれた15人の裁判官(任期9年)が国際法に基づき、国家間の紛争の平和的解決を図る目的で活動している。


2009/2/7  ボリビア、BP系ガス田を国有化

ボリビアの Morales 大統領は1月23日、BP系のPan American Energyが保有する天然ガス開発企業 Empresa Petrolera Chaco SA の国有化を発表した。

Pan American Energy はアルゼンチン法人で、BP60%、アルゼンチンのBRIDAS40%を所有している。

Chacoは 1990年代に民営化され、現在は Pan American Energy 51%、ボリビアの国営企業Yacimientos Petroliferos Fiscales Bolivianos (YPFB)49%所有している。
Morales 大統領は昨年、取締役派遣を目指し、 Pan American Energy に対し、YPFB51%を与えるよう指示したが、交渉は決裂していた。

国有化によりYPFBが99%、一般投資家が1%となる。

今回の措置は同大統領が進めるエネルギー資源の国家管理策の一環で、これですべての外資系ガス事業が国営石油会社の傘下に入る。

Chaco はボリビアで天然ガス埋蔵量ベースで4番目の会社で、埋蔵量の4.9%を占めている。

同国では1月25日、政府の権限拡充や先住民の権利拡大などをうたった憲法改正の是非を問う国民投票を予定しており、今回の国有化宣言は改憲の支持票を掘り起こす狙いがあるとみられている。 野党関係者は今回の国有化を「国民投票を有利にする目的だ」と非難している。
ボリビアは先住民が約6割を占め、モラレス氏は同国初の先住民出身の大統領。

一方、Pan American Energy はあらゆる手段で会社の利益を守るとの声明を発表した。国際仲裁も考慮している。

ーーー

ボリビアの天然ガス埋蔵量は南米ではベネズエラに次いで大きい。

1997年、当時のGonzalo Sánchez de Lozada 大統領が退任直前に国営石油公社の民営化を半ば強行的に行なった。

200651日、 Morales 大統領は大統領最高指令を発し、これを逆転させ、天然ガス資源の再国有化を宣言した。

外資系石油会社(ブラジルのPetrobras、スペインのRepsol、フランスのTotal を含むブラジル、英国、スペイン、米国各2社、およびフランス、アルゼンチン各1社)はボリビア政府との新契約の交渉に臨み、新契約に同意するか撤退するかの選択期限の10月末に、新契約に調印した。

ボリビアの国営企業 YPFB が国内資源を所有し、各社が生産物を販売することとなり、従来より高い率のロイヤルティと税金を支払うというもの。
この時、YPFB
Chaco49%を取得した。

PetrobrasRepsolTotal 3社で見つかっている天然ガスの埋蔵量の 84%を占める。

Morales 大統領が指摘するように、「誰一人追放することも、なにひとつ財産を没収することも、一切の補償金を支払うこともなく」実施された。
事業条件と税率の大幅な変更にもかかわらず、撤退を決める企業は1社もなかった。

大統領は昨年、Shell のパイプライン会社 Transredes も国有化している。

ーーー

1月25日、新憲法案の是非を問う国民投票が実施され、承認された。

新憲法では、スペイン語のほかに先住民言語も公用語と規定したほか、下院の議席に先住民枠を新設するなどした。
コカインの原料にもなるコカの葉栽培を伝統文化として明記した。
また、土地所有面積に上限を設定し、非利用地は国が接収できると規定した。
モラレス政権は先住民を中心とした貧困層への土地分配を目指している。

 


2009/2/7 シノペックがスペインのRepsol に出資?

シノペックがスペインのRepsol の20%を買うと言う噂が飛び交っている。

Repsol の株の20%を所有するスペインの建設会社 Sacyr Vallehermoso が売却を考え、Sinopecと交渉をしているというもの。

Sacyr Vallehermoso は2006年11月に市場から20%を購入し、最大の株主となった。現在の所有株数は20.01%。

住宅バブル崩壊で資金繰りが苦しくなった Sacyr Vallehermoso は債務の縮減を目指し、Repsol 株の売却を狙っているとされる。

Repsol の株価は14ユーロ/株以下に下がっているが、Sacyr は買値の26.7ユーロでの売却を期待しており、ロシアのLukoil は既に提案を拒否した。

Repsol につい[email protected]/8/5  Repsol YPFによるポルトガルの石油化学増強 参照。

ーーー

Repsol の原油生産はブラジル沖の深海油田の利権により今後増加することが期待され、Sinopecにとり魅力。

Sinopecは国内の石油需要に対応すべく、このところ海外進出を急いでいる。

昨年12月にはシリアで活動するカナダの石油会社Tanganyika Oil 買収について政府の承認を得た。

また、昨年12月にSinopecがロンドン株式市場に上場するロシアの石油・天然ガス開発会社 Urals Energy の買収を計画していると報じられた。
Urals Energyの原油・ガスの確認埋蔵量は1億7000万トンあるが、巨額の負債を抱えるほか、パイプラインなどへの投資がかさんだことで財務が悪化している。

時価総額から約6倍高い1億3000万米ドルを提示して完全買収を目指しており、ロシア当局の承認を待っているという。


2009/2/9  大衆薬ネット販売規制 

厚生労働省は2月6日、改正薬事法施行に合わせて、一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売を規制する内容の省令を公布した。

副作用のリスクが低い一部の医薬品を除き、インターネット販売を含めた通信販売ができなくなる。
現在はインターネットで購入できている一般医薬品のうち7割近くが販売できなくなるとされる。

薬事法では、一般用医薬品(医薬品のうち効能・効果の人体に対する作用が著しくなく、医薬関係者から提供された情報に基づき需要者の選択により使用されるもの)の販売方法などの制限に関して以下の通り定めている。

(販売方法等の制限) 第37条 
薬局開設者又は一般販売業の許可を受けた者、薬種商若しくは特例販売業者は、
店舗による販売又は授与以外の方法により、
配置販売業者は
、配置以外の方法により、
医薬品を販売し、授与し、又はその販売若しくは授与の目的で医薬品を貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

この「店舗による販売又は授与」について「店舗によるインターネット販売も含まれる」という解釈がなされており、医薬品のネット販売は適法となっている。

法律で認められているものを省令で禁止する形となる。
内閣総理大臣の諮問機関である規制改革会議では、省令案の段階で「法律に基づかない規制は違法性もある」と指摘していたという。

付記

「第1類」「第2類」の医薬品のネット販売を規制する「薬事法施行規則などの一部を改正する省令」は2009年6月1日から施行されるが、厚生労働省は2009年5月29日、「薬事法施行規則などの
一部を改正する省令の一部を改正する省令」を公布・施行した。

「薬事法施行規則などの一部を改正する省令」の施行後2年間の経過措置を定めるもので、下記の者に対して、伝統薬などの薬局製造販売医薬品 (*)と第2類医薬品の通信販売を、2011年5月31日まで2年間可能にする内容となっている。
*
 知事の許可を受け、薬局が製造販売できる医薬品のことで、「薬局製剤指針」に適合するものに限定

薬局及び店舗販売業の店舗が存在しない離島に居住する者
  (離島でなくても近くに薬局がない場合や、身体が不自由で買いにいけない人は認められない)
省令施行前に当該既存薬局開設者から購入し、又は譲り受けた医薬品をこの省令の施行の際現に継続して使用していると認められる者
  (どうやって継続使用をチェックするのか)

読売新聞は社説(5月31日)で、「無資格者や悪質な業者を排除する仕組みを作れば、インターネットなどの利便性を生かしつつ、安全に大衆薬を販売できるのではないか。秩序ある規制緩和を進めるべきだ。」とする。

医薬品ネット販売規制自体を定める省令に関しては、ケンコーコムとウェルネットは5月25日、国を相手取り、医薬品ネット販売の権利確認と省令の無効確認・取消を求め、東京地裁に提訴した。

付記

東京地裁は2010年3月30日、上記の請求を棄却した。
「健康被害を防止するための規制として必要性と合理性が認められる」とした。
但し、「副作用に関する消費者の意識や、情報通信技術に変化が生じた場合、規制内容を見直すことが法の趣旨に合致する。今回の規制が恒久的に固定化されるべきだという判決ではない」と付言した。

付記

東京高裁は2012年4月26日、原告側敗訴の一審判決を一部取り消し、2社に販売権を認める逆転判決を言い渡した。

裁判長は「改正法には医薬品のネット販売を直接禁止・制限する規定はなく、一律に禁止しているとは認められない」と指摘。ネット販売を原則禁止する省令の規定は「法律の委任なしに国民の権利を制限しており違法」と判断した。

薬品を適正使用するための情報提供についても「(インターネットなどを通じた)幅広い情報提供の方法が考えられる」として、「ネット販売は情報提供が不十分」とする国の主張を退けた。

ーーー

背景は以下の通り。

2006年に薬事法が改正され、2009年6月1日に実施される。

これまでは一般用医薬品は薬剤師を置かないと販売できなかった。(薬剤師を置けばインターネット販売も可)

態の種類 専門家(資質) 販売可能な一般用医薬品
薬 局 薬剤師(国家資格) 全ての一般用医薬品
薬店(一般販売業) 同上 同上
薬店(薬種商販売業) 薬種商(都道府県試験) 指定医薬品以外の一般用医薬品
配置販売業 配置販売業者(試験なし) 一定の品目
特例販売業 (薬事法上定めなし) 限定的な品目

改正でコンビニエンスストアなどでも、「一般医薬品」の販売ができるようになるなど、医薬品販売の規制緩和がなされた。

一般医薬品を第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品の三つに分け、そのうち、第二類医薬品と第三類医薬品については薬剤師でなくとも、実務経験1年以上で、都道府県が実施する試験に合格した「登録販売者」であれば販売することができるようになる。

合わせて、顧客からの相談対応を義務付け、第一類には聞かれなくとも積極的に文書で情報提供する義務をつけた。(第二類は努力義務)

             改正薬事法 省令
専門家 相談対応 積極的情報提供 ネット販売 ネット販売
第一類 副作用等により日常生活に支障を来す程度の
健康被害が生ずるおそれのある一般医薬品のうち、
特に注意が必要なもの
(胃腸薬「ガスター10」、発毛剤「リアップ」など)
薬剤師 義務 文書義務付け      X
第二類 副作用等により日常生活に支障を来す程度の
健康被害が生ずるおそれのある一般医薬品
(主な風邪薬、「葛根湯」などの漢方薬、鎮痛薬など)
薬剤師
登録販売者
義務 努力義務   ○   X
第三類 第一類医薬品、第二類医薬品以外の一般医薬品
(ビタミン剤、整腸薬など)
薬剤師
登録販売者
義務 規定なし   ○   ○

登録販売者:実務経験1年以上で、都道府県が実施する試験に合格したもの

厚生労働省主催の検討会の報告書(2008/7/4)では、改正薬事法を受けて、情報提供の内容・方法等に関する制度設計の方向性を議論、報告書をとりまとめた。
医薬品のネット販売については、第1類医薬品は適当ではない、第2類医薬品は対面の原則が担保できない限り適当ではないとした。

今回の省令は、薬剤師や販売者が説明や情報提供を尽くすため、薬局や店舗での「対面販売」を原則とし、インターネット販売を含む通信販売の対象を、ビタミン剤や整腸薬などの第三類に限定した。

厚労省は省令案について昨年9-12月に国民からのパブリックコメントを実施した。

一般医薬品のネット販売を行っている薬局・薬店が会員となっている日本オンラインドラッグ協会(JODA)は2008年11「安全・ 安心な医薬品インターネット販売を実現する自主ガイドライン」を発表した。

ネット販売に際して使用上の注意事項などの情報提供を適正に行うことや購入者の状態の確認・質問を行うことなどを必要条件として定める。
販売に際しての情報提供や説明は、ネットのほうが安全・安心」としている。

http://www.online-drug.jp/img/JODA-081120.pdf

解説 http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/11/20/21602.html

薬剤師団体や薬害被害者団体、日本チェーンドラッグストア協会などは規制の方針に賛成している。

しかし、へき地に住む人や高齢者などが購入しにくくなるなど消費者の利便性低下を指摘する意見もある。

楽天やヤフー、業界団体の日本オンラインドラッグ協会など6事業者・団体は6日、「通販での購入をやめざるを得ない多くの消費者の健康を害する可能性がある」としたうえで、省令の再改正を求める共同声明を出した。

このため、舛添厚生労働相は厚労相直属の検討会を設置して引き続き議論する方針を示した。

付記

楽天の三木谷浩史社長は2月10日、厚生労働省が設置を決めた一般用医薬品の販売方法をめぐる検討会に、自らがメンバーとして参加する意向を明らかにした。

ーーー

この問題は1月23日に行われた公正取引委員会競争政策研究センターの国際シンポジウム「参入と産業活性化に果たす競争政策の役割」でも取り上げられた。

イプシ・マーケティング研究所の野原佐和子氏が「新市場拡大を阻害する法制度関連の課題」として問題提起した。

新規創出市場であるネット通販事業の市場拡大に対して、既存ビジネスであるドラッグストア業界が危機感を抱き、監督官庁に働きかけたもので、参入障壁が少なく拡大中の新市場に対して、事業存続が困難になるような制度変更である。

シカゴ大学のDennis W. Carlton教授は、日本の事情は分からないが、米国では医療費節減のため政府が積極的にインターネット販売を推奨しているとコメントした。

規制改革会議メンバーで元 産業再生機構COOの富山和彦氏は、公表された弊害例は、高校生がネットで購入した大量の睡眠薬で自殺した件だけで、これは使用方法に違反した飲み方によるものであり、ネット購入での弊害ではなく、今回の省令は参入障壁であるとして、省令よりも上位の法律である独禁法でこれをやめさせられないかと述べた。


2009/2/10 Covalence の「世界の企業モラル番付け」

1月30日にカナダの出版社Corporate Knights Inc.と米国の投資調査会社 Innovest Strategic Value Advisors の発表する「世界で最も持続可能な100 社」について述べた。

これとは別に、スイスのジュネーブにある6社によって設立されたCovalence が毎年、「世界の企業モラル番付け」を発表している。
同社は1月20日、2008年版を発表した。

同社の「モラル番付」の評価には、企業自身が出すデータだけでなく、新聞、雑誌のほか、NGO、大学、労働組合による情報などを使って多方面から分析している。

集計は、企業に好意的な情報は1点加点、否定的な情報は1点減点するという方法で、ランキングが毎日更新され、株価のように発表されている。評価の観点となるのは労働条件、廃棄物処理、製品の社会的有用性、人権政策など、45項目がチェックされ、企業が倫理面でどう見られているかのバロメータである。

手法  http://www.covalence.ch/index.php/products/methodology/#8

2008年のランクは以下の通り。http://www.covalence.ch/docs/CovalenceEthicalRankings_CurrentResultsDetails.xls

トップ10 

  2008   2007
順位 社名 業種   社名 業種
1 ↑ HSBC Holdings Banks   Wal-Mart Retailers
2 ↑ Intel Corp Technology   Coca-Cola Co Food & Beverage
3 ↑ Unilever Food & Beverages   トヨタ Automobiles & Parts
4 ↑ Marks & Spencer Retail   HSBC Banks
5 ↑ Xerox Technology   IBM Technology, Hardware & Equipment
6 ↑ Alcoa Inc Basic Resources   Marks & Spencer Retailers
7 ↑ Rio Tinto Basic Resources   Tesco Retailers
8 ↑ General Electric Industrial Goods & Services   BP Oil & Gas
9 − Dell Computer Technology   Dell Technology, Hardware & Equipment
10 DuPont Chemicals   Ford Automobiles & Parts

日本企業順位

2008   2007
順位 会社名   順位 会社名
11 ソニー   3 トヨタ
15 日産自動車   15 ホンダ
22 ホンダ   29 ソニー
29 東芝   36 日産自動車
34 トヨタ   60 マツダ
44 マツダ   73 東芝
55 キヤノン   83 富士通
71 デンソー   111 デンソー
73 三菱商事   119 NEC
79 リコー   120 シャープ

世界の化学企業 順位

2008   2007
順位 会社名   順位 会社名
10 ↑ DuPont   13 DuPont
17 ↑ BASF   26 Dow Chemicals
60 ↑ Air Products   42 Bayer
111 L'Air Liquide   46 BASF
114 Akzo Nobel   94 Air Products
118 Linde   113 Monsanto
119 住友化学   129 Akzo Nobel
125 Bayer   135 住友化学
153 Ecolab   142 L'Air Liquide
214 Praxair   143 Syngenta

日本の化学企業 順位

2008   2007
順位 会社名   順位 会社名
119 住友化学   135 住友化学
246 旭化成   173 三井化学
300 三井化学   180 旭化成
320 東レ   185 三菱ケミカル
342 信越化学   188 信越化学
405 日東電工      
426 三菱ケミカル      

2009/2/10 2009年3月期損益予想

2009年3月期の第3四半期業績の発表がほぼ出揃った。

そのなかで2009年3月期通期の損益予想は、各社とも第2四半期発表時の予想に比べ、大幅に悪化している。

下記各社全社が前期実績比で減益で、特に石油化学の比率の高い企業の損益が悪い。

予想未発表の信越化学はグラフから除いたが、同社も 2008/4/28発表の予想の達成は困難としている。
(但し、証券取引所上場規定による開示義務:損益が0.7以下:が生じるほどの落ち込みは想定していないとしている。)

旭硝子と昭和電工は12月決算のため、2007年12月期実績と2008年12月期実績の対比。
各社の損益落ち込みの大きい2009年1〜3月分を含まないため、比較的好決算となっている。

 

 

トクヤマは特別損失に、樹脂サッシ問題をめぐる改修費用見込額200億円や固定資産の減損損失24億6万円を計上している。

 


2009/2/11 宇部興産の医薬品事業

第一三共は2月4日、第一三共と宇部興産が発見し、第一三共とEli Lilly 共同開発している経口抗血小板剤プラスグレルについて、FDAの心・腎疾患諮問委員会が、経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けている急性冠症候群(ACS)患者の治療薬として、9対0の満場一致で承認勧告を決定したと発表した。
FDAの判断は諮問委員会の勧告に拘束されるものではないが、FDAでの審査の際に考慮される。

プラスグレルは、動脈硬化に伴う心臓発作、脳卒中を引き起こす可能性のある血小板の凝集を防ぐ医薬品で、まずはPCIを受けているACS患者への新しい治療薬として開発を進めており、FDAへの新薬承認申請は、2007年12月にEly Lillyより提出された。

プラスグレルは第一三共と宇部興産の共同研究開発で導出され、原体製造は宇部興産が、臨床開発・販売は第一三共とEli Lilly が担当する。

欧州では Ely Lilly が2008年2月にプラスグレルの販売承認申請を欧州医薬品庁(EMEA)に提出した。

昨年12月に、EMEAの医薬品委員会が、PCIを受けているACS患者のアテローム血栓性イベント軽減の治療薬として、プラスグレルの承認を推薦する肯定的な見解を示している。これは欧州委員会への最終的な承認勧告とみなされる。

付記 

欧州委員会は2月23日、PCI 治療を受けているACS患者のアテローム血栓性イベントの治療薬であるEFIENT(R)の販売を承認した。

第一三共とリリーは、7月10日(米国東部時間)「FDAが、経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けている急性冠症候群(ACS) 患者の治療薬として、エフィエントの販売を承認した」と発表した。

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宇部興産は、現中期経営計画「ステージアップ2009」において医薬品事業を将来の成長及び収益性ポテンシャルが見込める育成事業と位置づけており、「社会に貢献する有用な新規自社医薬品を創製する」ことを目指し、研究開発を進めている。

現在までのところ、同社は薬剤の開発までにとどめ、臨床開発・販売は他社に委ねる形をとっている。
医薬品の臨床開発・販売には多数の要員が必要であり、止むを得ないことと思われる。

2000年には田辺製薬(現:田辺三菱製薬)と共同開発した抗アレルギー薬 「タリオン(R)」が、2003年には三共(現:第一三共)と共同研究開発した血圧降下薬「カルブロック(R)」が、それぞれ日本国内で上市されており、プラスグレルはこの2剤に続くもの。

同社の開発した医薬品の状況は以下の通り。

2007〜2009年度 中期経営計画「ステージアップ2009」初年度の進捗 から (2008/5/19)

  商品名 適応症 販売 状況
営業品 タリオン 抗アレルギー剤
・アレルギー性鼻炎
・蕁麻疹
・皮膚疾患に伴うそう痒
田辺三菱製薬
 製剤売上高(億円)
  2007年度実績  83
  2008年度見込 108
  2010年度目標 140
共同開発
 2000年上市(日本)
 2003年皮膚疾患適応承認
 2004年上市(韓国)
 2007年口腔内崩壊錠承認
 *点眼薬ライセンスを受けたISTA フェーズV
カルブロック 血圧降下剤
・高血圧症
第一三共
 製剤売上高(億円)
  2007年度実[email protected]
  2008年度見込 140
共同開発
 2003年上市(国内)
開発品 プラスグレル 抗血小板剤
・心筋梗塞、脳梗塞など
第一三共
Eli Lilly
共同開発:第一三共
 (欧米)申請中
 (国内)フェーズU
DE-104 緑内障治療薬
・緑内障、高眼圧症
参天製薬 共同開発:参天製薬
 (米国)フェーズU
 (国内)フェーズU
UR5369 抗リウマチ薬 未定 自社開発
 前臨床
UR5908 COPD治療薬
(慢性閉塞性肺疾患)
未定 自社開発
 前臨床

 

 


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