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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2011/11/1 2011年第3四半期の国産ナフサ基準価格 54,900円/klに 

第3四半期の輸入価格平均は52,885円/klとなり、国産ナフサ基準価格は54,900円/klとなった。
第2四半期の59,000円/klから4,100円/klの値下がりとなった。

ナフサ輸入価格の推移は以下の通り(単位:円/kl)
国産ナフサ基準価格は、輸入価格の四半期平均(四半期ごとの加重平均価格)に2,000円を加算(10円単位を四捨五入)

  輸入価格 平均価格 基準価格
'10/1  45,470  45,713  47,700
2 46,363
3 45,249
4 47,536 47,650 49,700
5 49,151
6 46,379
7 42,356 40,713 42,700
8 39,989
9 39,715
10 40,712 43,123 45,100
11 42,222
12 46,708
'11/1 49,202 50,382 52,400
2 50,257
3 51,923
4 55,522 56,979 59,000
5 58,400
6 57,299
7 54,425 52,885 54,900
8 52,420
9 51,824

 


2011/11/2 日本の住宅着工件数 

前回、米国の住宅着工の状況について述べた。
    2011/10/24 最近の米国の住宅着工状況

国土交通省は10月31日、9月の新設住宅着工件数を発表した。
6〜8月に3か月続けて前年を上回り、回復の兆しかと思われたが、9月の新設着工戸数は64,206戸で、前年同月より10.8%の減となった。

日本の住宅着工は、2005年に発覚した構造計算書偽装問題(姉歯事件、耐震偽装)を受けた改正建築基準法が2007年6月20日に施行され、激減した。(2007/10/1 日米住宅着工件数減少

2008年7月になって、ようやく、前年を上回った。しかし、2008年12月には再び前年比ダウンとなり、その後低迷している。

この影響を最も受けているのがPVCで、PVCの国内需要は低迷している。

 

6〜8月の住宅着工には、次の2つの駆け込み需要が含まれており、9月の減はその反動である。

1)住宅エコポイント

省エネ性能を満たした住宅の新築・改修時に、1戸あたり最大30万円がつく住宅エコポイントが今年7月末の着工分で締め切られた。

2)住宅ローン「フラット35」の1%の金利優遇措置

フラット35は最長35年の中期固定金利の住宅ローンで、住宅金融支援機構が民間金融機関から住宅ローン債権を買い取り、証券化して機関投資家に売却して資金を調達する。

政府は「省エネ」、「耐震」、「バリアフリー」、「耐久性・可変性」のいずれかに優れた住宅向けの「フラット35S]で当初10年間の金利を通常より1%引き下げた。(それまでが0.3%の優遇)
利用者は年1%台前半と、民間の3%前後より割安な金利で借りられる。

三菱総研は、政府の金利優遇によって、2010年の住宅着工戸数を10万〜13万戸押し上げたと試算している。
2009年度の着工件数は775千戸、2010年度は819千戸となっている。

国土交通省は、利用が予想以上に多く、予算枠の上限に近づいたため、当初2011年12月末としていた1%の金利優遇措置の申請期限を9月末に前倒しし、その後は、本来の金利引き下げ幅0.3%に戻った。(2012年3月末には0.3%の優遇もなくなる。→下記)

ーーー

政府が10月21日にまとめた今年度第3次補正予算案で、住宅エコポイントとフラット35Sの金利優遇措置の復活が織り込まれた。

省エネ住宅を新築する場合、被災地は従来と同じ1戸当たり最大30万円相当、その他の地域は半減して15万円相当を付与する。
省エネや耐震化のリフォームは地域を問わず、最大30万円相当とする。
獲得ポイントの半分は、被災地の物産品や義援金などに利用を限定する。

金利優遇措置については対象を限定し、金利優遇幅を下げて復活させる。

  対象:「省エネ」のみ (他は通常の下げ幅0.3%)

  金利優遇:当初5年間 0.7%(東日本大震災被災地は1.0%)
                 6〜10年目 0.3%
 


2011/11/3    丸紅と三菱商事、石炭事業を拡大 

丸紅と三菱商事は11月1日、石炭事業についての発表を行った。

1.丸紅、カナダの炭鉱運営会社を中国企業と共同で買収

丸紅は、中国のWinsway Coking Coal Holdings (永暉焦煤股份有限公司と共同で、カナダの炭鉱運営会社Grande Cache Coal Corporationの全株式を買収することでGrande Cacheの取締役会と合意したと発表した。

丸紅が40%、Winsway社が60%出資の合弁会社を設立し、カナダ法のPlan of Arrangementにより、現金総額約983百万カナダドル(約765億円)で友好的買収を行う。

 Plan of Arrangement:
被買収企業の取締役会決議、株主承認決議及び裁判所の承認、その他の条件を満たすことにより成立

Grande Cacheが運営するアルバータ州のGrande Cache炭鉱は、製鉄コークス原料用の強粘結炭の数少ないカナダ供給炭鉱として、1969年以来、操業を続けてきた。
現在年産2百万トンで、今後は3億トンを超える豊富な埋蔵量に下支えられた拡張を計画している。


丸紅は同炭鉱の石炭取引に関し、40年以上日本の鉄鋼メーカーのエージェントであると共に、2004年以降は対日独占販売権を獲得している。

新興国の粗鋼生産増加に伴い、強粘結炭は恒常的な供給不足にあり、同炭種の需要は今後一層強まることが予想される。同社では、本買収は日本への安定供給に貢献すると共に、同社の将来的なカナダにおける炭鉱事業拡大の基盤を築くことにもなるとしている。

Winsway Coking Coalはモンゴル等の原料炭の中国市場への輸送・販売を業とする企業。
モンゴル内陸部を含む陸路及び鉄道による輸送網から構成されるプラットフォームをベースとする。

同社では今回の買収の意義を以下の通り述べている。
・炭鉱の
豊富な埋蔵量
・採炭への最初の垂直統合
・今後のワールドクラス石炭企業へのプラットフォームになる。
・地政学的リスクの多様化
・1960年代からカナダの石炭事業に経験のある丸紅との提携

ーーー

2.三菱商事、豪州クイーンズランド州BMA原料炭事業の大規模拡張意思決定 

三菱商事は、100%出資子会社のMitsubishi Development(MDP)とBHP Billitonの折半出資の豪州クイーンズランド州 BMA原料炭事業の大規模拡張に関する投資意思決定を行ったと発表した。

BMA(BHP Billiton Mitsubishi Alliance)は豪州最大の石炭生産企業で、原料炭の海上輸送シェアは世界一、世界の原料炭海上貿易量の約3割を占める

2001年にMDPがBHP Billitonから権益を取得することにより発足した。

MDPは1968年に、オーストラリア北東部のクイーンズランド州においてアメリカ企業とパートナーシップを組み、原料炭の炭鉱開発を行う目的で設立 された。

三菱商事は原料炭需要が将来にわたって継続的に増加するとの判断の下、原料炭の安定供給を確実なものとするため、2001年に従来のマイノリティーとしての権益比率を50%まで引き上げ、世界最大手の資源会社BHP Billitonと対等の立場で石炭合弁事業BMAを立ち上げた。

豪州・クイーンズランド州の大規模石炭埋蔵地域のBowen Basinで21億トンにも上る埋蔵量を保有し、7つの炭鉱で高品位の原料炭を中心に年間約5,000万トンを現在生産している。生産された石炭を出荷するための港湾施設Hay Pointの操業も行う。

製品の大半をHay Point港湾施設より出荷 、一部をその近隣のDalrymple Bay港湾施設や南部のGladstoneより出荷している。

 

今回の投資はCaval Ridge炭鉱の新規開発とPeak Downs炭鉱の拡張で、投資のMDP社負担分は約21億豪ドル(約1,700億円)となる。

Caval Ridge炭鉱: 年間550万トンの生産を計画
Peak Downs炭鉱:現行能力から年間250万トンの増産を計画

2014年から約60 年間に亘り、合わせて年間800万トンの輸出用高品位原料炭を増産する。

本年3月にもBMA生産能力拡張に関するMDP社負担分約31億豪ドル(約2,530億円)の投資意思決定を行って いる。

Daunia炭鉱の新規開発:2013年より年間450万トンの原料炭を生産
Hay  Point港の第三次拡張(2014年に出荷能力を年間5,500万トンに拡張予定)

 

三菱商事はBMAとは別に、Rio Tinto及びJ-POWER(電源開発グループ)、JCD(石炭資源開発)と共同で、同地区でClermont一般炭炭鉱 の開発を行っている。

同炭鉱に隣接するBlair Athol 炭鉱 は1984年から出炭を開始し、以来、年間1,000万トンから1,200万トンを生産し、日本向け電力用海外炭の安定供給に寄与してきた。
このBlair Athol 炭鉱が2010年代に生産終了するのに合わせ、Clermontを開発し、Blair Atholの貨車積み設備、鉄道、港湾等のインフラを利用することとした。

Clermont炭鉱は2006年に開発が決定され、2010年5月には第1船を日本向けに出荷、2010年の生産量は491万トンとなった。
今後、年間1,200万トン規模まで生産を伸ばす。

権益比率は以下の通り。
 MDP :31.4%(当初は34.9%)
 Queensland Coal (Rio Tintoグループ) :50.1%
 J-POWER オーストラリア(電源開発グループ):15.0%
  JCD オーストラリア(石炭資源開発): 3.5%(MDPから譲り受け)


2011/11/4 イタリア唯一の塩ビ会社Vinyls Italiaの存続決定

Ineos Vinyls Italiaは、Ineosが元のオーナーで原料を供給しているEniとの争いで撤退を決め、Safi Spa に売却されてVinyls Italiaとなったが、Eniへのエチレン、塩素代の未払債務問題がこじれ、政府指名の委員の管理下“Controlled Administration”)に入った。

2009/2/20 Ineos のイタリアのVCM/PVC事業、破産の危機を脱する  
2009/8/1  Vinyls Italia準破産処理

同社はPorto MargheraRavennaPorto Torres の3か所VCMとPVCの工場(Porto Torresはe-PVC)を持っている。
イタリア唯一のPVCメーカーで、イタリア政府はこの存続に注力してきた。

2年間の“Controlled Administration”の後、本年9月にイタリアの合成樹脂商社のIndustrie Generali spa (IGS) がRavenna 工場買収を決め、その後、Eniも同社に原料を供給することで合意した。

IGSでは年末にもPVCの生産を再開するとしており、初年度は年産140千トンとするが、将来は200千トンに増設する考え。

IGSはArkema、BASF、Carmel Olefins(イスラエル)、Hellenic Petroleum(ギリシャ)などのPE、PP、安定剤、BOPPフィルムなどを扱う商社で、イタリアに20千トンのPVCコンパウンド工場を持つ。
PVCコンパウンドの原料に遡及することとなる。

なお、他の2工場については、以下の通り、非塩ビ事業に転換される。

工場 従来製品 引き受け手 今後の製品
Ravenna VCM, s-PVC Industrie Generali PVC 140,000t→200,000t
Porto Torres VCM, e-PVC Polimeri(Eni)/Novamont Bio-based chemical complex
Porto Marghera VCM, s-PVC Oleificio Medio Piave 小麦粉、植物油

1)Porto Torres 

Polimeri Italia (Eni の子会社)とバイオプラスチックのメーカーのNovamontが50/50JVのMatrìcaを設立し、5億ユーロを投じてバイオベースのケミカルコンプレックスを建設する。

Porto TorresにあるVinyls Italiaのプラントを含むEniの全ての石油化学コンプレックスが(NBRを残して)すべて撤去され、植物油を原料とするバイオプラスチック、バイオ潤滑油、エラストマー用のバイオ添加剤などのバイオケミカルコンプレックス(合計能力年産350千トン)が建設される。

Eniは別途、250百万ユーロでバイオマス発電所を建設し、コンプレックスに電力を供給する。

計画では3期に分けて7工場が建設される。
 ・第一期 バイオモノマー、バイオ潤滑油
 ・第二期 合成ゴム用
のバイオ伸展油、バイオフィラー
  ・第三期 第一期プラントの増設、バイオプラスチック

2)Porto Marghera

土地の持ち主のSyndial(Eni子会社)の承認待ちだが、これまでの石油化学とは全く離れ、Oleificio Medio Piaveが小麦粉や植物油の生産を計画している。
 


2011/11/5 EU、ブラウン管(CRT)用ガラス事業カルテルに制裁金 

EUは10月19日、テレビやコンピュータに使われるブラウン管(CRT)用ガラスのカルテルで3社に128.736千ユーロの制裁金を科した。

カルテルは1999年2月から2004年12月まで続き、欧州経済領域(EEA)での販売価格を調整していた。
EUによる調査は2008年末から始まった。

韓国Samsung Corning Precision Materials は最初にカルテルの存在を報告して制裁金を全額免除された。
日本電気硝子は調査に協力して50%の免除を受けた。

また、各社とも、カルテルの存在について争わない「同意決定手続き」に応じたため、制裁金は10%減額された。

  Leniency
 減額
協力
 減額
同意決定
  減額
制裁金
(千Euro)
Samsung Corning Precision Materials 100%   10% 0
日本電気硝子 50%   10% 43,200
Schott AG   18% 10% 40,401
旭硝子     10% 45,135
合計       128,736

「同意決定手続Cartel Settlement Procedure)」は2008630日に制定され、同年71日から運用された。
裁判所への控訴による長期の争いを避け、他の事件の摘発に要員を向けることが目的。

適用の第1号は2010年5月のDRAMカルテル。
2010/5/21
 EUDRAMカルテルに制裁金、「同意決定手続き」初適用

その後、飼料カルテル家庭用洗剤カルテルで適用があり、今回は4例目。

付記

韓国の公正取引委員会は12月11日、ブラウン管用のガラスをめぐり、価格や生産量を調整する国際カルテルを結んでいたとして、日韓4社に総額545億ウォン(約37億円)の課徴金を課したことを明らかにした。

サムスンコーニング精密素材、旭硝子の子会社の韓国電気硝子、日本電気硝子とそのマレーシア法人


ーーー

韓国Samsung Corning Precision Materialsは旧称Samsung Corning Precision Glassで、韓国Samsung Electronicsと米Corningの合弁会社。
主にSamsung向けにLCDガラス基板などを供給しているが、社名変更後は無機材料に関する材料メーカーへと業容拡大を狙う。

Schott は、125年以上にわたり、特殊ガラス、特殊素材、部品、システムの開発と製造に従事。

日本電気硝子は1944年に日本電気により設立、1949年に日本電気から分離独立した。

2011年3月にニプロが日本電気硝子の株式の10.62%を取得して主要株主となり、その後、電気硝子もニプロの株式の10.40%を取得している。
2011/7/30 ニプロ、医薬用硝子容器事業で海外展開

旭硝子は、CRT用ガラス事業から既に撤退している。
(過去も欧州において製造拠点を保有していない。)

旭硝子は同事業に関して、韓国の競争法当局からも調査を受けている。
 

なお、旭硝子とPilkington(日本板硝子)などは欧州での板ガラスカルテルで制裁金を科せられている。

2007/3/20 欧州委員会板ガラスカルテルを調査

 


2011/11/7   EU 金融危機

2010年にギリシャ危機の原因とEU緊急首脳会議によるギリシャ(第一次)支援策について述べた。
EU・ユー口圏首脳会議では
欧州金融安定化メカニズム(European Stabilization Mechanism)、欧州金融安定基金(European Financial Stability Facility:EFSF)の設立も決まった。

2010/5/10  統一通貨ユーロの危機

事態はその後、混迷を深めた。

ユーロ圏の債務危機リスクの再燃でアイルランド、ポルトガルなどの国債のデフォルト(債務不履行)保証コストが上昇、EFSFなどは2010年11月にはアイルランド、2011年5月にはポルトガルへの支援を行った。

2011年7月にはギリシャへ第二次金融支援が決まった。1090億ユーロの公的支援に加え、民間金融機関もギリシャの新旧の国債交換、国債の再投資を通じ、損失(21%)を負担した。

しかし、支援の条件となったギリシャの改革は国民の反対を受け、進まない。

10月に入り、2011年7月に欧州銀行ストレステスト(健全性審査)に合格したばかりのフランス・ベルギー系大手銀行 Dexia がギリシャやイタリアの国債を大量に保有することから、資金の調達が出来ず、あっけなく破綻、欧州ソブリン債への積極投資で痛手を受けた米国のMFGlobal HoldingsmもChapter 11を申請した。

2009/10 ギリシャの財政赤字粉飾が表面化
2010/5 ギリシャに対する支援策(2010〜2012年で1,100億ユーロの協調融資)
欧州金融安定化メカニズム(European Stabilization Mechanism)創設
 EFSF 最大4400億ユーロ
 IMF 2500億ユーロ
 欧州委員会が発行する債券 600億ユーロ 「欧州金融安定化メカニズム」(EFSM)
 最大合計 7500億ユーロ
2010/11 アイルランド支援(850億ユーロ)
2011/5 ポルトガル支援(780億ユーロ)
2011/6 EFSF拡充決定(2011/10 最後のスロバキアが一旦反対した後、賛成し、成立)
2011/7 ギリシャ向け第二次金融支援
 公的支援 1090億ユーロ、民間金融機関による支援 370億ユーロ(21%の損失負担)
2011/10 フランス・ベルギー系大手銀行 Dexia 解体決定
米国 MF Global Holdings、Chapter 11申請

ギリシャの破綻が他のPIIGS諸国(ポルトガル、イタリア、アイルランド、スペイン)に波及してEU全体、更には世界の金融に悪影響を与えることが懸念された。

ギリシャの政府債務は過去にデフォルトしたロシアやアルゼンチンに比べ、はるかに大きく、両国はその後、資源価格の上昇で経済は回復したが、ギリシャの場合は資源も大きな産業もない。

ギリシャと同様に政府債務のGDP比率が高いイタリアの場合は更に影響が大きくなる。

1998 ロシア デフォルト総額
   727億ドル
石油、天然ガス価格アップで回復
2001 アルゼンチン デフォルト総額
   823億ドル
穀物価格アップで回復
今回 ギリシャ 政府債務
  4,822億ドル 
うち国債残高   資源なし
 3,838億ドル
イタリア 政府債務
    3兆ドル
 

危機に対応するため、EUは6月にEFSFの拡充を決定した。これは加盟国全部の承認を得ることが必要だが、最後のスロバキアが10月に一旦は反対を決め、その後賛成し、成立した。
(自国よりも恵まれているギリシャ救済のために資金を出すことに抵抗を示した。)

2010年5月に設立されたEFSF はユーロ圏各国の政府保証を受けて4400億ユーロの債券発行が可能だが、最上級の格付けを維持するためには、そのうち格付けが最上級(AAA)の6か国の2550億ユーロしか貸し出すことができない。

今回、融資可能金額を引き上げることを目的に、ユーロ圏各国が政府保証をつける金額を7800 億ユーロに引き上げることとした。(結果、6か国の合計は4515億ユーロとなった。 なお、総額から既に支援を受けているギリシャ、アイルランド、ポルトガル分を除外すると726,000百万ユーロとなる) 

各国が負担する保証負担額は以下のとおり。(100万ユーロ)

  保証負担額 拡大後
オーストリア 12,241    21,639
フィンランド 7,905 13,974
フランス 89,657 158,488
ドイツ 119,390 211,046
ルクセンブルグ 1,101 1,947
オランダ 25,144 44,446
AAA格付 6か国
  合計
255,439 451,540
その他 184,561 328,243
合計 440,000 779,783

フランスが自国の格付けダウンを恐れるのは、債券発行限度が減少するため。

10月に入り、上記のEFSF拡充が全加盟国で承認されたのを受け、EUは10月27日未明、欧州債務危機克服に向けた「包括戦略」で合意した。

「包括戦略」内容:

EFSF強化 一部損失補てんの債務保証
特別目的会社(SPC)活用

AAA格付け6か国分は4500億ユーロあるが、EFSFはすでに欧州の銀行の資本増強向けに最高1000億ユーロを、またギリシャ、アイルランド、ポルトガル向け支援に約1000億ユーロを充てることにしている。

残りのうち2000億ユーロ程度を元手に、IMFや政府系ファンド(SWF)、民間投資家などに投資要請し、実質1兆ユーロ規模に拡大 する。

資金ソースにより、低リスク低リターン、中リスク中リターン、高リスクに分けて使用する。

ギリシャ問題 民間銀行によるギリシャ債務の損失負担は7月時点の21%から50%に
(新旧の国債交換、国債の再投資を通じギリシャ国債の元本を削減)
ギリシャ債務残高は2020年にGDP比120%に削減へ
(当初案なら150%で高止まり)
ギリシャの財務状況を常時監視
ギリシャに下記の改革を求める。
 ・女性年金支給開始 60歳→65歳
 ・一定額以上の受給者への支給額減額
 ・公務員3万人の削減、給与カットも
 ・民間企業の賃下げのための規制緩和
 ・保有不動産からの利益に対する課税の導入
 ・付加価値[email protected]%→23%(実施済み)
 ・ガス(DEPA)、通信(OTE)など国営企業の民営化
 ・公共事業の凍結、削減(2011年度は前年比3.3%減)
 ・軍事費の大幅削減
欧州銀行の資本増強 民間銀行によるギリシャ債務の損失負担は7月時点の21%から50%に
銀行資産を狭義の中核的自己資本の比率で9%を基準に再評価、来年6月までに資本増強
試算では資本増強に1064億ユーロ(約11兆円)が必要
今後の危機対応 EUの基本条約「リスボン条約」の改正を検討、
財政・経済統合案を12月に中間報告、来年3月に最終報告
ユー口圏は(各国財政の点検のため)少なくとも年2回の首脳会議を開催
イタリアに対し財政健全化のための構造改革求める
同国は13年までに財政均衡、26年までに年金支給開始年齢引き上げを公約

しかし、ギリシャ国民は前提条件の改革案に反発、ストが相次いだ。

ギリシャのパパンドレウ首相は10月31日、ユーロ圏各国がまとめた支援策を受け入れるかについて、国民投票を行う意向を表明した。

国民投票で受け入れ反対が多数を占めれば、国家破綻(デフォルト)や、ユーロ圏からの離脱の可能性も出てくるため、ギリシャ国内外で大問題となった。

最終的にEUとの協議の後、首相は11月3日、緊急閣議を開き、国民投票を撤回する意向を明らかにし、ギリシャは「包括戦略」を受け入る方向となった。

 G20首脳会議は11月4日、以下の内容の首脳宣言を採択した。

欧州危機で金融市場の緊張が高まり、新興国経済に成長鈍化の兆し

・世界経済が直面する喫緊の課題に協調して行動

・EUが合意したギリシャの債務削減などの包括対策の速やかな実施を要請

・イタリアが財政健全化に向けてIMFの監視を受け入れたことを歓迎

・通貨安競争の回避に向け、市場で決定される為替制度への迅速な移行を確認

・IMFの資金基盤強化の検討を各国財務相に指示

・行動計画で、日本は2010年代半ばまでに消費税率を10%に引き上げると明記

ーーー

とりあえず前向きに進み出したが、ギリシャの改革案が予定通り行われる保証はなく、財政赤字の抑制が出来るかどうか、不明である。(おそらく出来ないだろう。)

欧州の金融機関はギリシャ国債の50%カットの穴埋めとして資本増強が必要だが、貸しはがしなどで信用収縮が拡大、景気に悪影響を与える可能性がある。

EFSFの資本増強のため、EUは中国などに資金提供を求めているが、進展はない。

中国は受諾するとしても、人民元切り上げ問題や市場経済国待遇問題を条件にすると思われる。
(人民元切り上げ問題は米国が了承する筈がない。)

イタリアやスペインに飛び火した場合、EFSFも資金不足となる。

ギリシャの次はイタリアとの見方が強く、イタリア国債は既に市場の狙い撃ちに遭っている。
4%台後半であった10年物国債の利回りは6%以上となっている。

IMFはイタリアに440億ユーロの支援を提案したが、首相が拒否、最終的に3か月ごとに財政状況を審査し、計画の遅れがあれば勧告するシステムを呑ませた。

イタリアの付加価値税は20%から21%に引き上げられたが、増税は一部にとどまり、年金受給開始時期のの67歳への引き上げも妥結しておらず、改革は進んでいない。

IMFの支援は拒否したが、IMFの監視を受け入れたことは、イタリアが危機に面していることを明確にしたこととなる。

 

そもそも、余りにも国力が違う国々が単一通貨ユーロを採用し、危機時に通貨切り下げも金利引下げも出来ないというのは無理がある。

欧州統合に懐疑的なチェコのクラウス大統領は、「ギリシャ危機は通貨を4割り引き下げれば解決する」と述べ、危機の原因は自国通貨の切り下げができないユーロの仕組みにあると指摘したとされる。

これまでに、単一通貨ユーロを、第一ユーロと第二ユーロに分けるという案や、弱い国を切り離すと案が取りざたされていた。(逆に、ドイツの離脱によるユーロ崩壊も市場でささやかれていた。)

しかし、仮にこの時点でギリシャがユーロから離脱したとしても、デフォルトは必至であり、問題解決にはならない。
ユーロ圏EUが抱え込んでいくしかない。

 

今後も世界的な金融危機に波及するおそれは続く。


2011/11/7 番外編 記事紹介 

日経ビジネス11月7日号 「TPP亡国論のウソ」

「農業の守り方を間違った」 高木勇樹・元農林水産事務次官(現・日本プロ農業総合支援機構副理事長 

高木氏は、これまでの農業保護のあり方は間違っていたと自らの過去も含めて批判する。反対派の議論とは全く逆に、日本の農業再生のために、TPP交渉に参加する必要があると説く。

記事全文 http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20111104/223609/?P=1
 

参考 2010/11/10  TPP参加と農業問題


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