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2012/10/1 新元素 113 

理化学研究所は9月27日、新たに3 個目の113 番元素の同位体の合成を確認したと発表した。

新たな崩壊過程を確認したことで発見を確実に証明でき、新元素として国際的に認定される可能性が高まった。

認定されれば命名権が与えられる。元素名は「ジャポニウム」が有力視されている。

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現在、原子番号1 番の水素(H)から112 番のコペルニシウム(Cn)までと、114 番フレロビウム(Fl)、116 番リバモリウム(Lv)の計114 種類が認定されている。

自然界には92番ウランより重い原子が存在しない。
(それ以上の原子番号の原子核は短い時間で崩壊し、安定な別の原子核へと変化してしまう。)

93 番以降は人工的に合成され、最近では114 番と116 番についてロシアと米国の共同研究グループが存在を報告、元素発見の優先権について国際的な認定を受けている。

国際純正及び応用化学連合(IUPAC)は2009年5月、112番元素を公式に認めた。
コペルニクスに因んだ「Copernicium」(元素記号 Cn)はコペルニクスの誕生日「1473年2月19日」に合わせ、2009年2月19日に正式に発表された。

2009/8/26 112番目の元素 Copernicium

国際純正及び応用化学連合(IUPAC)は2011年12月1日、同年6月に新元素であることを認めた2つの元素(原子番号114と116)の名前を発表した。

2011/12/8 新元素 Flerovium(原子番号114) とLivermorium(原子番号116)

ロシアのドブナ研究所とアメリカのローレンス・リバモア研究所の共同研究グループは、カルシウム(Ca)のビームを、アメリシウム(Am)やバークリウム(Bk)、カリホルニウム(Cf)に照射して113、115、117、118 番を合成し、その発見を主張してい る。

113番元素については、「115番新元素の原子核の初合成に成功し、その崩壊連鎖上の原子核として原子番号113の原子核も発見した」と発表した。

新元素の合成を証明するには、その元素が崩壊連鎖を起こして既知の原子核に到達することが重要だが、上記のどれも崩壊後に既知の原子核に至っていないため、優先権はいまだ認定されてい ない。

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理研の森田浩介准主任研究員らは2004年と2005年の2回、原子番号113の元素を加速器で合成した。

理化学研究所は2004年9月28日、これまで確認されている元素より、さらに重い113番元素の発見に成功したと発表した。

中央研究所加速器基盤研究部が、世界最高のビーム強度を有する理研線形加速器を80日間連続稼働させて得られた実験結果によるもの。

理研では、原子番号83のビスマスに、1秒間に2.5兆個の原子番号30の亜鉛ビームを80日間照射し続け、約100兆回の衝突を行わせ、原子番号113の原子を1原子合成し、確認することができた。

寿命は約0.0003秒で、次々にアルファ線を出し、さらに核分裂していった。

アルファ崩壊:
アルファ粒子(ヘリウム4 の原子核で原子番号2、質量数4)を放出してより安定な核に崩壊すること。これによって原子番号が2 小さく質量数が4 小さい核に変化する。

理研では国際機関に申請したが、データ不足などを理由に認められなかった。

当時は、113 が崩壊してできたボーリウム(Bh)が1例の報告しかなく既知核と確定できないこと、また、観測数が 2個と少ないことを理由に認定されなかった。

その後、研究グループは、2008〜2009 年にボーリウム(Bh)を直接合成し、既知核への到達が確かであることを実験的に示した。

2012年8月12日、3 個目の113 の合成に成功し、これまでの4 回のアルファ崩壊に続き2 回のアルファ崩壊を観測、最後は原子番号101 のメンデレビウム(Md)になったことを確認した。

この113 は、これまでに理研が確認した2個とは異なる新たな崩壊経路をたどったため、113 番元素の合成をより確証づけるものとなる。

Db は、自発核分裂かアルファ崩壊で崩壊することが知られている。
前回は自発核分裂を起こしたが、今回はアルファ崩壊でLrとなり、両方を観測したこととなる。

今回の合成で113 番元素の命名権が認められると、周期表に日本発の名前を、アジアの国として初めて書き加えることとなる。

1908年に当時第一高等学校教授であった小川正孝が第43番元素を発見し、ニッポニウム Nipponium: Npと命名した。
しかし後にそれは43番元素ではなかったことが判明し、ニッポニウムは幻の元素となった。
これは原子番号75のRheniumであった。

今回の113には、一度間違いとされた元素名ニッポニウムは使用できない。

理研では、今後は、未報告の119 番以上の原子番号を持った新元素の探索に挑戦し、超重元素探索の研究分野を牽引していくとしている。


2012/10/1  日本触媒・姫路製造所で爆発事故

9月29日午後2時30分すぎ、日本触媒・姫路製造所で爆発があり、消火活動中だった消防隊員1人が死亡し、工場従業員1人が意識不明の重体となった。ほかに従業員ら34人が重軽傷を負った。

同社によると、アクリル酸の入ったタンクの温度が上昇し、爆発したという。

爆発したのは、アクリル酸の貯蔵タンク(高さ5.6メートル、直径4.2メートル、容量70トン)で、南北に3基並んだタンクのうち一番南側。

午後1時前、タンク内の温度が異常に上昇しているのに従業員が気付き、同社の自衛消防隊が放水。しかし、温度は下がらず、「発火につながる重合反応が起きるかもしれない」と消防に応援を要請した。

消防隊員らが駆け付け、放水準備をしていたところ、約30分後に爆発し、北隣のアクリル酸のタンク(容量100トン)、トルエンのタンク(同50トン)に延焼したとみられる。

アクリル酸は重合反応で熱を出すため、タンク内は、常時、窒素を注入して酸素濃度を下げ温度を60℃前後で管理しているという。

タンク内のアクリル酸(液体)がゲル状に変化していたことが分かった。県警は、何らかの原因で異常な化学反応が発生し、爆発した可能性があるとみている。

付記

タンク内の温度管理について、管制室での監視ではなく、タンクに付いている温度計を目視するシステムであることが分かった。
「爆発前は温度計を読んでいない。アクリル酸の臭気で近づけなかったのではないか」という。
 

姫路市消防局は、現場の火災は9月30日午後3時半、爆発から約25時間ぶりに鎮火したと発表した。

付記

日本触媒は12月7日、45施設について一時使用停止命令を解除する旨の通知を受けた。
アクリル酸を使用しない製品について、安全を確保し順次稼働の再開を進める。
なお、自動車触媒、排水処理触媒、塗料・粘接着剤用アクリル樹脂(隣接の日本ポリマー工業)は稼働している。

付記

2013年4月30日、メタアクリル酸およびメチルメタアクリレート製造設備の一時使用停止命令を解除する旨の通知を受領。

付記

2013年5月31日、発災施設とは異なるアクリル酸製造設備の一部、アクリル酸の誘導品(高吸水性樹脂、水溶性ポリマー)の一部について、一時使用停止命令が解除された。稼働の再開を進める。

付記

2013年12月18日、再稼働に伴なう安全性が確保されたとの理由で、危険物製造所2施設について、一時使用停止命令を解除する旨の通知を受領、これにより、対象168施設のすべてについて命令が解除され、稼働を再開できることとなった。

付記

受取保険金を計上
 2013年第1四半期   3,851百万円
      第3四半期  5,291 百万円
  合計         9,142 百万円
 

同社は姫路製造所でアクリル酸と、それを原料にしたアクリル酸エステル、吸水性樹脂(SAP)を製造している。
SAPは紙おむつの生産に使用される。

アクリル酸の製法

  一段目  プロピレン(C3H6) + O2 →アクロレイン(CH2=CHCHO)+H2O

  二段目  アクロレイン(CH2=CHCHO)+1/2 O2→アクリル酸(CH2=CHCOOH)

ーーー

日本触媒のアクリル酸、SAPの能力は以下の通りで、日本では姫路製造所のみで生産している。(千トン)

  アクリル酸 SAP
現   状 2013末 現   状 2013末 2014末
日本 姫路 460   +80 320    
US ヒューストン 60   60    
テネシー州     0 付記 +60 0
ベルギー アントワープ     60    
インドネシア チレゴン 60 +80   +90  
シンガポール ジュロン島 40        
中国 張家港     30   +30
Total 620 780 470 560
+60
590

日本触媒は2012年1月31日、中国の能力を倍増すると発表した。
2014年3月末完成、7月から商業運転を開始する予定。

付記

米国子会社NA IndustriesはヒューストンにあるAmerican Acryl社(Arkemaとの折半合弁)のアクリル酸プラントの隣に、年産能力6万トンの最新鋭SAPプラントを建設し、6月に商業生産を開始し、テネシー州・チャタヌーガのSAP旧プラント(年産能力6万トン)を閉鎖した。

今回の事故を受け、SAPの供給量不足を補うべく、2012年12月、1年間の予定で、閉鎖中のSAP旧プラント(6万トン)の稼働を再開した。

事故があったのはアクリル酸などの貯蔵設備で、SAPなどの生産設備には損傷はなかったが、姫路市の石見市長は29日付で消防法に基づく危険物施設の緊急使用停止命令を出した。安全が確認できるまで、危険物施設すべての使用ができなくなり、同製造所の操業は事実上ストップする。
再開には 事故調査や原因究明、再発防止策の策定まで「半年かかる可能性が高い」とされ、長期の製造休止は避けられそうにない。

同社のSAPの生産能力は世界シェアの3割にあたる年47万トンで、日本では32万トンを姫路製造所のみで生産している。
在庫はSAPが0.8か月、アクリル酸が2週間程度。
しかし、いずれも構内にあるため同命令の解除まで出荷が不可能という。

日本触媒のSAPの最大需要家はプロクター・アンド・ギャンブルで、アジア向け紙おむつについて日本触媒から全量調達している。
同社は代替品調達などの対応策を固める方針だが、 SAPの各メーカーは紙おむつ需要拡大でフル生産が続き、代替生産する余地が少ないとされる。

また、紙おむつメーカーによってSAPに求める吸収スピードや保水力などが異なり、調達先をすぐに切り替えることは難しい。

オムツ・メーカーとSAPメーカーの組み合わせは、下記の通り。

P&G   日本触媒、BASF
キンバリー・クラーク   三洋化成、Evonik
ユニ・チャーム   住友精化、三洋化成(サンダイヤ)
花王   内製

 

SAPメーカーは下記の通り。

日本触媒:上記の通り、中国で+3万トン→59万トン
BASF:
ブラジルのCamaçariに60千トンプラントを建設(生産開始は2014年末)→59万トン

2011/8/4 日本の各社、高吸水性樹脂を増強 

Evonik:サウジJVで8万トン生産を決定。

2011/8/31 Evonikも高吸水性樹脂を増強

アクリル酸メーカーは下記の通り。(2010/10)

B社はBASFC社はDowD社はArkema(元 Atofina)と思われる。

日本触媒と住友化学は2002年に、住化のアクリル酸事業、日触のMMA事業を、シンガポール事業を含めそれぞれ相手に譲渡した。事業交換により夫々がコア事業に経営資源を投入することとしたもの。

日本触媒は住友化学・愛媛工場のアクリル酸製造プラント(年産8万トン)と製品の営業を譲り受けたが、愛媛プラントは2007年末に停止し、姫路に同能力のプラントを建設した。


2012/10/2   Ineos、米のシェールガスからのエタンを欧州のエチレン原料用に輸入

Ineosは9月26日、欧州のエチレン原料用にエタンを輸入するため、供給契約と輸送契約を締結したと発表した。

同社は独立系石油・ガス業者のRange Resourcesとの間で、2015年からエタンを購入する契約を締結した。
詳細は明らかにしていない。

欧州のエチレン事業の原料の多様化を図るもので、欧州のエチレンメーカーとしての競争力を強化するものになるとしている。

同社のエチレンプラントは下記の通りで、まず、ノルウェーのRafnes 工場で使用する。
 1.  Grangemouth, United Kingdom
 2.  Köln, Germany
 3.  Lavéra, France (50:50 JV: Naphtachimie between INEOS & TOTAL Petrochemicals)
 4.  Rafnes, Norway

Range Resources はMarcellus shaleを2004年から開発しており、2012年には全社の投資の86%を同地域で行っている。 

Ineosはまた、Sunoco 子会社のSunoco Logistics Partnersとの間で、エタンをペンシルバニア州Houstonから同州Marcus Hookまで輸送するため、パイプライン輸送契約とターミナルサービス契約を締結した。

ペンシルバニア州Houstonでは、MarkWestLiberty Midstream & Resourcesが Marcellus shaleのガスの集積、処理、分離、販売等の設備を建設中。
Marcus Hookには2011年12月に停止したSunocoの製油所があり、ここでプロパン分離、貯蔵、出荷等を行う。
Marcus Hookからは船でデラウエア湾経由で欧州まで輸送する。

付記

Ineosは2014年2月3日、米国のCONSOL Energyとの間でMarcellus Shaleのエタンの購入契約を締結したと発表した。
エタンはSunoco LogisticsからMariner East pipeline で運ばれ、Marcus Hookから船積みされる。

他方、Borealisは2014年2月10日、スウェーデンのStenungsundのフレキシブルクラッカーの原料として、ノルウェーのStatoil からエタンを購入する長期契約を更新したと発表した。新契約は2015年10月から7年間。米国のシェールガス革命によるエタンの世界的な価格変動を勘案した価格となる。、

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Sunoco Logistics PartnersはMarcellus shaleのガスの輸送のため、MarkWest Liberty Midstream & Resourcesと組んで、Mariner East計画とMariner West計画を進めている。

Sunoco Logistics は既存の石油製品のパイプラインを、液体エタン輸送パイプラインに改造し、能力を高める作業を行っている。
MarkWest Liberty社は、Sunocoの東西のパイプラインをペンシルバニア州Houstonの処理場につなぐための液体エタンパイプラインを建設中。

Mariner East はペンシルバニア州Houstonから同州Marcus Hookの停止中のSunoco製油所まで日量7万バレルのエタンとプロパンを輸送し、そこでプロパンを分離する。2015年上半期に使用可能となる。

Dow はRange Resources との間で、ペンシルバニア州南西部のシェールガスからのエタンをダウの既存のルイジアナ州のコンプレックスに供給する長期契約を締結する旨の覚書を結んだ。
    2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表

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SunocoはRefinery事業からの撤退を決め、ペンシルバニア州のPhiladelphiaとMarcus Hook の製油所の買い手を探した。

Carlyle Groupは2012年7月2日、Sunocoとの間で合弁会社 Philadelphia Energy Solutionsを設立することで合意したと発表した。
8月に停止予定であったSunocoのPhiladelphia Refinery をJVに移し、稼働を続ける。

Carlyleでは、米北東部でのエネルギーのハブとして重要であるとともに、 Marcellus Shaleの天然ガスに関し、新しいビジネスチャンスがあるとしている。

2012/7/10    Sunoco、Philadelphia 製油所の停止を取りやめ 

Marcus Hook refineryは2011年12月に停止した。

製油所としての買い手は見つかっておらず、Marcellus Shale の副産品を含む燃料の貯蔵、加工などの多目的プラントとして使用する。

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なお、Phillips 66のPhiladelphia のTrainer refinery complex も停止予定であったが、Delta Air Linesが買収した。

2012/5/10 Delta Air Lines、製油所を買収 

 

Mariner Westはエタンをカナダのオンタリオ州Sarniaの石化コンプレックスにエタンを輸送する。

NOVA Chemicalsは2011年5月に、Range Resourcesとの間でMarcellus Shale Basinのエタンの長期購入契約を締結した。


2012/10/2    米国Ex-Im Bank、アラムコとダウのサウジJVに過去最大の49億75百万ドルを融資 

米国の
Ex-Im Bankは9月27日、アラムコとダウのJVのサウジの石油化学会社 Sadara Chemical に対し、過去最大の49億75百万ドルの直接融資を承認したと発表した。

   
2011/7/26  
DowとSaudi Aramco、石油化学JV設立を最終決定

このプロジェクトが米国の雇用に貢献するのが融資の理由。
コンプレックスの建設のために、約18,400人の雇用が確保され、その12.5%は13の州の中小企業。約70社が輸出し、そのうち20社が小企業であるとしている。

Ex-Im Bankは連邦政府に属する独立行政機関で、2011会計年度に過去最大の327億ドルの融資を行った。
これには、中小企業の輸出をサポートするための、これも過去最大の60億ドルの直接融資が含まれる。


2012/10/3 BP、マレーシアのPTA事業をインド Relianceに売却 

BPは9月28日、マレーシアのPTA事業をインドの Reliance Global Holdings Pte. Ltd. に売却することで合意したと発表した。

売却するのはBP Chemicals (Malaysia) Sdn Bhd の全株で、Kuantanで1996年以降、年産61万トンのPTAプラントを運営している。
売却金額は230百万ドル(現金)で、2012年中に取引完了を目指す。

RelianceはKuantanでPTAの原料を供給しており、Reliance子会社のRECRON MalaysiaはPTAのマレーシア最大のカスタマーである。

Relianceは世界最大のポリエステル繊維メーカー。生産能力の80%はインドにあり、自社のPTAを使用しているが、マレーシアではPTAをBPから購入していた。今回の買収で原料自給体制を整える。

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BPは流出事故費用をまかなうため、また、BPの強みと成長機会を生かすため、2010年から2013年の間で380億ドルの資産売却を目標としている。

今回の売却を含めると、2010年以来の売却額は約330億ドルとなる。

過去の売却  2012/9/14  BP、メキシコ湾の非戦略的石油資産を売却

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BPでは、同社はグローバルなPTAメーカーであり、世界の生産量の約1/5を占めており、今後も中国やOECD市場でPTAに注力するとしている。更に、PTAや原料パラキシレンの技術のライセンスで収益を得るとしている。

同社の現在の世界全体の能力は年産750万トン。

製造拠点は、米国(2工場)、ベルギー、中国、インドネシア、マレーシア、台湾(2工場)。
このうち最大工場は中国の珠海で、現在能力は150万トンだが、2014年に更に125万トンの増設を行い、世界最大プラントとする。

  2011/2/22  BP、中国のPTA事業を拡大

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BPのマレーシアでのPTA以外の事業は以下の通り。

BP Petronas Acetyls Sdn Bhd

立地:Kerteh
出資:BP 70%、Petronas 30%
製品:酢酸
能力:
56万トン

BP Castrol Lubricants (Malaysia) Sdn Bhd

立地:Port Klang
製品:
lubricants

・エチレン、ポリエチレン(売却)

2010/9/2 BP、マレーシアのエチレン、ポリエチレンJV持分をペトロナスに売却 


2012/10/4  オバマ大統領、米国内での中国企業の風力発電買収を阻止 

オバマ大統領は9月28日、「国の安全保障に関わる」として、中国系企業Ralls Corp. によるオレゴン州の米海軍施設近くの風力発電企業4社の買収と所有を禁止し、本年取得した所有権を放棄することを求めた。

Ralls Corp. の買収行為がアメリカの安全を脅かす可能性があると認識し、買収の阻止を命じたとしている。

先ず、米国の外国投資委員会(CFIUS)がこの取引をやめるよう命じたため、Ralls Corp.がこれを越権行為で違法であると訴えた。
このため、大統領がCFIUSの提言を基に命令した。

New York Timesは、22年ぶりに大統領が商取引を禁止したが、これは、オバマ大統領が北京に対して弱腰だというRomney大統領候補を含む共和党の批判に対して、最近頻繁に打ち出している強硬ラインの一つであるとしている。

米国は外国からの米国内直接投資を歓迎するが、国家安全保障を保護するための例外を設けている。
外国投資委員会(CFIUS)が審査を行い、投資内容が米安全保障にかかわるものと大統領が判断した場合には究極的には買収案件を拒否できる。

まずCFIUSが外資による投資の予備審査をした後、同委員会が必要と認める案件についてのみ、本審査を行い、最終的に大統領の決定を仰ぐ。

財務省が議長となり、国土安全保障省、商務省、国防総省、国務省、司法省、エネルギー省、通商代表部、労働省、国家情報局がメンバーとなる。

これまで中国企業の買収阻止を命じたのは、1990年2 月にGeorge Bush大統領が行ったもので、China National Aero-Technology Import and Export Corp(中国宇宙航空技術輸出入公司)による航空機部品メーカーのMAMCO Manufacturing, Inc.の買収のみ。

付記

三一重工は10月18日、これを不服として、オバマ大統領と米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)を米コロンビア地区連邦地裁に提訴したと発表した。

「一枚の禁止令により、2000万ドル以上の直接的な損失が生じ(間接的な損失を含まず)、企業の対外的なイメージも損なわれる。提訴はやむなきことだった。誰も裁判を望んでおらず、当社は潔白を証明するため仕方なく訴訟措置を講じた」

「米国は何の説明もなく、中国の風力発電プロジェクトを無理やり中止させた。中国製の設備の使用を禁じた上、当社が米国人の経営する米国企業に譲渡するのを禁じ、補償すら行わなかった」

 

三一重工は2014年7月15日、米国コロンビア特区巡回控訴裁判所で、米国での買収をめぐる裁判で勝訴の判決を受けた。

ーーー

デラウエア州法人のRalls Corp.は中国の重機械メーカーのSany Group (三一集団)の役員2名が共同所有している。

同社は本年3月に、オレゴン州の4つの風力発電企業(合計発電能力40百万ワット)を買収した。
買収目的は、Sany Group の子会社の Sany Electric が製造する風力発電タービンで風力発電を行うこととされる。

Ralls Corp.によると、買収してすぐに、米海軍が、風力発電の場所が軍用機の訓練の邪魔になるとの懸念を表し、設備を除去するよう求めた。
近くの
米海軍施設(Naval Weapons Systems Training Facility)では遠方から自動操縦する無人飛行機と、爆撃機に同行して敵のレーダーを邪魔するelectronic warfare aircraftの訓練が行われている。

同社は6月末に、自発的に外国投資委員会(CFIUS)にこの取引を報告した。

CFIUS は安全保障を理由にRallの4つの風力発電の建設と操業を止めるよう命じ、すぐに設備を除去することを求めた。

これに対し、Rall側は土地と設備を売りたいと申し出たが、CFTUSは許可なしに売却することを禁じ、その土地でのSany社の製品の使用を禁止した。

Rallは年末までに工事を完成し、25百万ドルの投資税額控除を受ける予定であったが、これが不可能となったため、訴訟に踏み切った。

訴えでは、CFIUSは取引のどこが安全保障の問題になるのかについて証拠を示さず、説明も行っていないとしている。

米国法によれば、CFIUSは外国投資の禁止を大統領に提言できるが、自ら禁止することは出来ない。
今回は、大統領への提言をバイパスし、Sanyの製品の販売の禁止まで命じている。(越権、違法)

ーーー

新華社通信は、今回の措置は、米国の政治の偽善と、外国からの投資歓迎のダブルスタンダードを示すものだとしている。

中国紙は、米国市場を狙う中国企業はこれを教訓にし、安全保障を理由に買収に待ったがかかる可能性を考えるべきだとし、CNOOCによるカナダのNexen買収(150億ドル)についても、同じことが起こるかもしれないとしている。
Nexenは米国にもGulf of Mexico に資産を持ち、CFIUSの評価待ちとなっている。

2012/7/31   中国石油大手による買収 続く


2012/10/5 Chevron Phillips Chemical のサウジ石化コンプレックス、商業生産開始

Chevron Phillips Chemical は10月1日、JVのSaudi Polymers Company (SPCo) がサウジのAl-Jubailで建設していた石化コンプレックスが商業生産に入ったと発表した。

Saudi Polymers Company はサウジの投資会社Saudi Industrial Investment Group SIIGの子会社 National Petrochemical Company (Petrochem)が65%、シェブロンが35%する合弁会社で、2008年1月に石化コンプレックスの建設を開始した。

当初はSaudi Industrial Investment Group  SIIG50/50JVでスタートしたが、SIIGがPetrochemを設立、65%出資とした。

2008/1/25 Chevron Phillips のサウジ石化事業

製品と能力、技術は以下の通り。

製品   能力 EPC担当 技術
エチレン エタンクラッカー  1,220千トン 日揮 Lummus
プロピレン metathesis   440千トン 日揮 Lummus OCT(Olefins Conversion Technology)
1-Hexene     100千トン 日揮 Chevron Phillips
PE     550千トンx 2系列 Daelim  
PP     400千トン Daelim  
PS     100千トンx 2系列 Daelim  

製品はサウジ国内で販売するとともに、Chevron Phillips Chemicalのグローバルネットワークを利用し、海外にも販売する。

Chevron Phillips Chemical はHoustonに住友化学とのポリプロピレンのJVのPhillips Sumika Polypropylene Companyを持っていたが、2011年に工場を永久停止し、JVを解散することで住友化学と合意した。

Chevron Phillips Chemical はサウジのSaudi Polymers Companyの製造するPPを米国で販売する。

住友化学は今後も北米地域におけるコンパウンド製品供給を継続する。

2011/9/15 住友化学の米国のポリプロJV、解散へ 

Chevron Phillips とSaudi Industrial Investment Group (SIIG)は、同じジュベイル工業地区に既に3つのJVを持っている。
いずれも50/50のJVとなっている。
今回の計画のPS用のスチレンモノマー、PP用の不足プロピレンはここから供給する。

1)Saudi Chevron Phillips Petrochemical
  製品: Benzene   485千トン790千トン ( CPChem のAromax (R)技術)
    Cyclohexane   220千トン360千トン
    ガソリン    
  2000年に生産開始 、その後増設 
         
2)Jubail Chevron Phillips Company
  製品: エチルベンゼン   上のベンゼン使用
    SM   715千トン  日揮がEPC受注
    プロピレン   140千トン
    ガソリン     300千トン      
         
3)Petrochemical Conversion Company  
  製品: ナイロン6.6   50千トン
    ナイロンコンパウンド   20千トン
     HDPEパイプ、エンプラ射出成型部品 120千トン
         
  ナイロン6.6は上記Saudi Chevron Phillips Petrochemicalのシクロヘキサンを利用する。
2013年生産開始予定

 


2012/10/6   韓国で原発停止相次ぐ

10月2日午前8時10分に釜山市の新古里原発1号機が制御棒などの故障で原子炉とタービン発電機が止まり、発電を停止した。

新古里原発1号機は韓国で初めて建設された改良型の韓国標準型原発で、2011年2月28日に商業運転を開始した。

同日午前10時45分には、韓国南部の霊光原発5号機で蒸気発電機の水位低下が起こり、発電を停止した。
故障の原因を調査中。放射能漏れなど安全に問題はないとしている。

同機は2002年5月の商業運転開始後、17回の事故を起こしており、安全性に対する不安が高まっている。

市民団体は運転中止を要求している。
他方、原発の老朽に関係なく故障が頻発する中、同時多発的に発生したという点で、冬季の電力難に対する不安感が強まっている。


 

昨年も故障が相次いだが、今年に入って故障による原発の稼働中断は計7回となった。

本年2月9日に古里原発1号機ですべての外部電源が12分間、喪失する事故が起きたが、事業者の韓国水力原子力はこれを1カ月以上報告していなかった。

韓国の原子力安全委員会は7月4日、停止中の古里1号機の再稼働を承認した。

周辺自治体から廃炉要求が相次いだため、運営会社の韓国水力原子力が、IAEAに同機の安全点検を依頼、IAEAは「設備の状態は良好」との結果を明らかにしていた。

2012/3/14 韓国でも原発トラブル

蔚珍4号については、昨年9月の定修で伝熱管の亀裂を発見、定修を2012年4月まで延長していたが、その後、蒸気発生器自体の交換が必要と判明した。交換には1-2年が必要とされる。

新月城1号は本年7月31日に商業運転を開始したが、19日目の8月19日に制御棒制御系統の故障で停止した。

古里原発では上記の通り、発電所長が1号機の停止を外部に知られないよう関係者を口止めし、現場にいた60人以上の作業員も全員が事故の隠蔽に協力していたが、本年7月には古里原発の十数人の現場管理職が、廃棄された中古部品を協力会社に横流しし、新品のようにペイントを施した上で再び納品させ、見返りに賄賂を受け取ったとして逮捕・起訴された。

本年9月21日には、古里原発で非常時の消防対応などにあたる職員2人が、覚醒剤を使用したとして麻薬類管理法違反の疑いで逮捕された。このうち1名は古里原発の消防隊の事務室で覚せい剤を使用していたことが分かった。

野党の国会議員は9月26日、「原発の安全性が信用できない」として廃炉を求める声明を出した。

付記

韓国知識経済部は11月5日、原発の部品供給業者8社が外国機関の発行する品質保証書を偽造し、原発事業者の韓国水力原子力に部品を納入していたことが分かり、光州地検に捜査を依頼したと発表した。

偽造保証書で納入された部品は、ヒューズやスイッチなどの消耗品で、全体の98.2%が霊光原発5・6号機に使用された。

韓国水力原子力は霊光原発5・6号機の運転を同日から停止し、該当部品を交換する。
霊光原発3・4号機と蔚珍原発3号機にも数十個ずつ使われたが、交換対象の部品が少なく、運転中に取り換えられる。

付記

原子力安全委員会は2012年12月31日、「品質書類が偽造された部品をすべて交換し、関連設備の性能と安全性が総合的に確認された霊光5号機の再稼動を承認した」ことを明らかにした。同6号機については、原発部品に関する官民同号調査団の報告書を確認した上で、安全性を判断する。

韓国の原発一覧

    運転開始 原子炉形式 容量(kW)  
蔚珍 蔚珍
 1号
1988/9/10 加圧軽水炉 (PWR) 95万 2011/12 復水器の異常で停止
2012/8/23
異常を知らせる信号が点灯、停止
 2号 1989/9/30 加圧軽水炉 (PWR)  95万  
 3号 1998/8/11 加圧軽水炉 (PWR)  100万  
 4号 1999/12/31 加圧軽水炉 (PWR)  100万 2011/9 定修で伝熱管の亀裂発見、2012/4まで延長。
その後、蒸気発生器自体の交換が必要と判明(1-2年要)
 5号 2004/7/29 加圧軽水炉 (PWR) 100万  
 6号 2005/4/22 加圧軽水炉 (PWR) 100万  
新蔚珍
 1号
  KSNP (APR-1400) 140万 2012/5 着工
    2号   KSNP (APR-1400) 140万 2012/5 着工
  (3号)   KSNP (APR-1400) 140万 計画
  (4号)   KSNP (APR-1400) 140万 計画
霊光 霊光
 1号
1986/8/25 加圧軽水炉(PWR) 95万  
 2号 1987/6/10 加圧軽水炉(PWR) 95万  
 3号 1995/3/31 加圧軽水炉(SYSTEM80)  100万  
 4号 1996/1/1 加圧軽水炉(SYSTEM80)  100万  
 5号 2002/5/21 KSNP(OPR-1000)  100万 2012/10/2 蒸気発電機の水位低下し、停止
 6号 2002/12/24 KSNP(OPR-1000) 100万 2012/7/30 故障で自動発電停止
月城 月城
 1号
1983/4/22 CANDU  67.8万  
 2号 1997/7/1 CANDU 70万  
    3号 1998/7/1 CANDU 70万  
 4号 1999/10/1 CANDU 70万  
新月城
 1号
2012/7/31 KSNP(OPR-1000) 100万 2012/8/19 制御棒制御系統の故障で停止
    (稼働19日目)
    2号   KSNP(OPR-1000) 100万 建設中
古里

 

消防担当2名が覚せい剤使用で逮捕、1名は原発事務所で覚せい剤使用
古里
 1号
1978/4 加圧水型(PWR) 55.6万 2012/2/9 電源喪失で停止、1か月以上隠ぺい
 2号 1983/7 加圧水型(PWR) 60.5万 2011/6 継電器の設計ミスで停止
 3号 1985/9 加圧水型(PWR) 89.5万 2011/12  タービン発電機に過電圧で停止
 4号 1986/4 加圧水型(PWR) 89.5万  
新古里
 1号
2011/2 加圧水型(PWR) 96万 2012/10/2 制御系統の故障で停止
    (2号)   加圧水型(PWR) 96万 計画
    (3号)   加圧水型(PWR) 134万 計画
    (4号)   加圧水型(PWR) 134万 計画

KSNP:韓国標準型原子炉(韓国電力公社設計、加圧水型原子炉)


2012/10/8 米国経済の問題点 

米議会予算局(CBO)は10月5日、2012会計年度(2011年10月- 2012年9月)の財政赤字が4年連続で1兆ドルの大台を突破したとの見通しを明らかにした。前年の1兆2970億ドルからは2070億ドル減少した。

財政赤字のGDP比は2009年度10.1%、2010年度9%、2011年度8.7%に対し、約7%に改善した。

歳入が増加し、支出が減少した。

付記 米財務省は10月12日、2012会計年度の財政赤字が1兆893億5300万ドルとなったと発表した。

単位:10億ドル
    2011 2012 増減理由
歳入 個人所得税 1,091 1,129 38 給与所得増
社会保険料 819 850 31 所得増
法人所得税 181 242 61 減価償却ルール変更など
その 211 229 18  
合計 2,302 2,450 148  
歳出 軍事費 678 651 -27 アフガン、イランの費用減
Social Security 720 762 42  
Medicare 483 469 -14 政府負担計画の終了
Medicaid 275 250 -25  
失業保険 126 96 -30 最近の対象者減
その他予算 1,089 1,030 -59  
国債金利 266 258 -8  
TARP -38 24 62  
合計 3,599 3,540 -59  
赤字 -1,297 -1,090 207  
   * TARP:不良債権買取プログラム

2013年度がどうなるかは、減税失効と歳出の自動削減開始が重なる「財政の崖 (Fiscal Cliff)」問題の行方に左右される。
 

Fiscal Cliff 問題

米国では、年末に大型減税が期限切れを迎え、来年1月からは財政管理法に基づき、歳出の自動削減が開始され 、その影響は最大で6060億ドルに達し、赤字は減少するが、大規模な財政緊縮が起こる可能性がある。

バーナンキFRB議長が2012年2月の議会証言で「大規模な財政の崖」という表現で米景気の先行きに警鐘を鳴らし、注目を集めるようになった。

10月4日の日本経済新聞の景気討論会でも、米国経済については、@米国の住宅バブル崩壊に伴う家計のバランスシート調整がほぼ終了した、Aシェールガス革命による産業界の活性化 (三菱ケミカル小林社長)、という明るい点が指摘されたが、半面、米国経済の最大のリスク要因として「財政の崖」の問題が挙げられた。

今年の年末〜来年1月にかけて起こる具体的な増税、特別措置の終了、そして歳出削減の内容は以下の通り。

増税関連
・ 医療改革に伴う増税 110億ドル
・ 医療保険税(Obama Care)増税 180億ドル

特別措置の終了
・ 失業手当金給付期間延長措置の終了 260億ドル
・ 投資減税延長期間の終了 650億ドル
・ 給与税減税の終了 950億ドル
・ ブッシュ減税(所得税率や配当・キャピタルゲイン税率の軽減)の終了 2,210億ドル

歳出削減
・ 2011年8月の財政管理法に基づく歳出の一律削減 650億ドル (後記)
 

財政管理法に基づく歳出の一律削減

問題の根源は連邦政府の債務上限で、それに対する対策案が民主党と共和党で全く異なることである。

昨年5月に連邦政府債務は当時の上限14.29兆ドルに達し、つなぎの資金繰り対策でしのいでいた。
8月2日までに上限が引き上げられなければ、米国は新たな借り入れができなくなり、米国史上初のデフォルトに陥るおそれがあった。

米与野党指導者は7月31日夜、連邦政府の債務上限を2.1兆ドル引き上げるとともに、その条件として今後10年間で2.5兆ドルの財政赤字を削減することで合意に達した。

11月23日までに1.2〜1.5兆ドルの削減案決定(増税、福祉費、軍事費を含める) を採決しない場合、2013年1月から10年間1.2兆ドルの予算カット条項が発動される。この半分は国防・安全保障費で、メディケアも一部カットされる。但し、Social Security とMedicaidは除外。

しかし、米議会の超党派委員会が、11月23日の期限を前に、決裂した。

 民主党:2.3兆ドルの赤字削減、うち富裕層向けに1兆ドルの増税
 共和党:年金、医療保険の大幅縮減

2011/8/3  米国、債務上限引き上げ、デフォルト回避 

付記

2012年は大統領選挙のため、選挙終了後まで全く交渉なし。

 

 

付記

米議会予算局(CBO)によると、「財政の崖」が現実になれば5000億ドル超の規模の財政緊縮となり、2013年の実質経済成長率は-0.5%、失業率は9.1%になる。

「財政の崖」と赤字削減に関連する主張の隔たり(2012/11/9 日本経済新聞)

  オバマ氏・民主 共和
政策の基本理念 公平な機会を実現するため
所得再配分機能を強化
徹底した小さな政府に向け
政府プログラム、税、歳出など縮小
ブッシュ減税
(崖の中心)
年収25万ドル以下のみ1年延長 現行の減税を全面的に延長
企業税制 法人税を35%から28%に下げ、
製造業を優遇し雇用拡大
法人税率を35%から25%に。
外国所得への追加課税廃止
歳入措置 富裕層を軸に実質増税し
財政赤字を削減.
表面税率は上げず、
各種控除や優遇措置を見直し歳入を積み上げ
歳出 非国防費と国防費を半々の割合でカット 国防費はGDP比4%を堅持。
年金などへの切り込み深く
医療改革法
(オバマケア)
国民の強制保険加入で皆保険に オバマケアは廃止。
民間保険の活用拡大

ーーー

Thomas Friedman と Michael Mandelbaum の“That used to be us --- How America fell behind in the world it invented and How we can come back は、共和党の「減税」も民主党の「福祉」も行き過ぎているとし、米国は昔はこんなではなかったと嘆いている。

米国民の1%が収入の1/4、財産の40%を保有するという異常な格差があり、大幅な財政赤字があるのに、共和党は減税を主張する。

Reaganは赤字コントロールが目標 とし、必要なら増税も行うとした。
財政赤字がインフレを生み、より高い税率が適用されて実質増税になること、投資が抑制されることを恐れた。

その後、Volkerがインフレ を抑圧し、新世代は「赤字は問題でない」と考えるようになってしまった。

そもそもはニクソンのドルとの交換停止 による赤字増大が問題で、Friedmanの理論では 赤字増大に対し抑制が効くとした。しかし、中国の米国債購入で歯止めがかからなくなった。

福祉も行き過ぎで、Medicareではコストを理由に治療を止めることを法律で禁止しているため、患者の死の直前2か月 のためだけにに使われる費用が550億ドル にも達しており、無意味な治療が20〜30%もある。

 


2012/10/9 iPS細胞から卵子作成・マウス出産に成功 

京都大の研究チームはこのたび、マウスのiPS細胞とES細胞(受精卵をもとにした胚性幹細胞)から卵子をつくることにが成功した。その卵子を体外受精させ、子どもや孫も生まれた。iPS細胞から生殖能力のある卵子ができたのは初という。

京大発表 多能性幹細胞から機能的な卵子を作製することに成功
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/121005_2.htm

米科学誌サイエンスの10月4日の速報電子版で発表、解説記事も掲載した。

Offspring from Oocytes Derived from in Vitro Primordial Germ Cell–Like Cells in Mice
   http://www.sciencemag.org/content/early/2012/10/03/science.1226889.abstract

解説記事 Sperm and Eggs Created in Dish Produce Mouse Pups
   http://news.sciencemag.org/sciencenow/2012/10/oocytes-normal-mice.html

京大の斎藤通紀・医学研究科教授や林克彦准教授らの研究チームが下記の手法で卵子をつくり、この卵子計163個を、マウスが自然につくった精子と体外受精させて、雄雌3匹の子どもが生まれた。
いずれも正常で、別のマウスとの間に孫をつくることもできた。

同チームは昨年、iPS細胞とES細胞から精子を作る同様の実験にも成功している。

ーーー

チームは、メスのマウスの細胞から作ったiPS細胞とES細胞に2種類のたんぱく質などを加えて培養し、 卵子や精子を作る元となる「始原生殖細胞」に極めて似た細胞を作った。

始原生殖細胞は生殖細胞のもとになる未分化の細胞で、発生の初期に出現し、将来の卵原細胞あるいは精原細胞になる。

昨年の精子の場合は、この始原生殖細胞を雄の精巣に移植して精子を作った。

しかし、卵子はそのままでは分化しにくい。
このため、始原生殖細胞をマウス胎仔の中から取り出した将来の卵巣になる体細胞と共に培養した後に、雌マウスの卵巣に移植することで未成熟卵子を得た。

それらの未成熟卵子を体外培養により受精可能な卵子にまで成熟させた後に、自然につくった精子と体外受精させることにより健常なマウスを得た。

ーーー

本成果は基礎および応用面の双方において大きな効果が期待できる。

基礎面においては、始原生殖細胞の発生メカニズムの解明や卵子形成の初期段階の解析が可能になる。

応用面においては、不妊症の原因究明に効果が期待できる。

ES/iPS細胞を起点として、始原生殖細胞から卵子形成の初期段階までの一連の分化過程を追えることから、この培養系を発生モデルとして用いて、始原生殖細胞の発生や卵子の分化・成熟に必要な遺伝子の単離に貢献すると考えられる。

これらの遺伝子はヒトの不妊症の原因遺伝子となっている可能性があるが、iPS細胞からも卵子を作製できることから、不妊症患者からのiPS細胞を用いることにより、疾患原因遺伝子の同定を行うことが可能になると考えられる。

しかし、本研究はマウスを用いた試験段階であり、マウスとヒトの相違点を考慮すると、応用面での貢献のためには、さらなる基礎研究が必要である。

人とマウスのiPS細胞は性質が違い、人で同様に始原生殖細胞をつくるのはかなり難しいという。

また、卵子は生命の根源となる細胞であり、倫理的な課題を慎重に検討する必要がある。

ES細胞とiPS細胞の取り扱いを定めた国の指針では ヒトについて「できた卵子や精子を受精させない」としている。
政府の総合科学技術会議は昨秋、研究のため人工的に作った生殖細胞の受精の是非について、ようやく検討を始めた。

チームの斎藤通紀教授:

つくった卵子の機能に問題がなく、倫理上の問題も解決されて社会的にも認められることが前提だが、成果が不妊治療に役立てばいいと強く思う。

現時点の技術をヒトで応用することは非常に難しい。

山中伸弥・京都大iPS細胞研究所長:

精子に続き、わずか1年で卵子作製に成功したことに敬意を表したい。体の中で精子や卵子がどうできるのか、緻密な研究を積み重ねてきたチームだからこそと思 う。不妊症の原因解明や創薬につながる大きな一歩。

ーーー

慶応大の岡野栄之教授らが、人間の皮膚の細胞から作ったiPS細胞を培養し、「始原生殖細胞」に成長させることにが成功した。10月6日の各紙が報じた。

始原生殖細胞に特徴的に現れる遺伝子が確認できた。

海外では既に作製例が報告されているが、国内では初とみられる。


2012/10/9  速報 山中伸弥教授にノーベル医学生理学賞 

ノーベル生理学医学賞を決定する機関のカロリンスカ医科大学(Karolinska Institutet) は10月8日、今年のノーベル医学生理学賞を、京都大学の山中伸弥教授と英ケンブリッジ大のSir John B. Gurdon に与えると発表した。

山中教授は2006年、マウスの皮膚細胞に4種類の遺伝子を入れることで、あらゆる組織や臓器に分化する能力と高い増殖能力を持つ人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作り出した。2007年には人間でも同様のiPS細胞づくりに成功した。

Sir Gurdonは1950年代、カエルの成体の細胞の核を卵子に移植すると、 受精卵のような「多能性」をもつようになり、さまざまな細胞や組織に「初期化」できることを示した。

ノーベル賞ホームページは山中教授のインタビュー録音を載せている。
タイトルは教授の発言から、"My goal, all my life, is to bring this stem cell technology to the bedside, to patients, to clinics ..."

ノーベル医学生理学賞の受賞は1987年の利根川進・米マサチューセッツ工科大教授以来2人目。
今回の受賞で日本人の受賞者は、米国籍の南部陽一郎氏(2008年物理学賞)を含め19人。

      (敬称略)
物理学賞 (7人)   湯川秀樹、朝永振一郎、江崎玲於奈、小柴昌俊、小林誠、益川敏英、南部陽一郎
化学賞 (7人)   福井謙一、白川英樹、野依良治、田中耕一、下村脩、鈴木章、根岸英一
医学・生理学賞 (2人)   利根川進、山中伸弥
文学賞 (2人)   川端康成 大江健三郎
平和賞 (1人)   佐藤栄作

ーーー

山中伸弥教授とSir John B. Gurdon は2009年にラスカー賞(基礎医学部門)を受賞している。
ラスカー賞は米国で最も権威がある医学賞で、受賞者の2割以上がノーベル賞を受けている。

ラスカー賞の日本人の受賞は6人目。

1982年   花房秀三郎(基礎医学研究賞)    
1987年   利根川進(基礎医学研究賞)   ノーベル賞
1989年   西塚泰美(基礎医学研究賞)    
1998年   増井禎夫(基礎医学研究賞)    
2008年   遠藤章(臨床医学研究賞)    
2009年   山中伸弥(基礎医学研究賞)   ノーベル賞

2008年には血中コレステロール濃度を下げる薬のもとになる物質「スタチン」を発見した遠藤章・東京農工大特別栄誉教授が臨床医学部門で受賞している。

2008/9/16 米ラスカー賞に遠藤章・東京農工大名誉教授

 


2012/10/10   Westlake Chemical、エチレン原料をプロパンからエタンに変更

Westlake Chemicalは10月2日、ケンタッキー州Calvert Cityのエチレン工場の原料をプロパンからエタンに変更するとともに、能力を205千トンから286千トンに増やすと発表した。

Marcellus shaleで開発されている安価なエタンを活用するもので、同工場のビニルチェーンの競争力を高める。
同社は同時にCalvert CityのPVCの能力を現在の500千トンから590千トンに増強すると発表した。

北米では、天然ガスが豊富にあるため、エチレン原料としてはエタンが最も多く、それに続いてプロパン、ブタンもクラッキングに使われている。

同社のLake Charles工場のエチレンはエタンを原料にしている。

合計の投資額は201〜240百万ドルで、エチレンは2014年第2四半期、PVCは2014年後半に完成する予定。

同社は2011年8月に本件を検討していることを明らかにし、以下の通り述べている。

「Marcellus shale のエタンをGulf Coastに輸送するパイプラインの完成を待っている。Calvert Cityにエタンを持ち込むため、それに接続する。
プロパンからエタンに転換した時点でデボトルネッキングにより能力を増強する。」

現在、Enterprise Products Partners がMarcellus shale のエタンをペンシルバニア州HoustonからGulf Coastに輸送するパイプラインのATEX Express  を建設中で、2014年第1四半期にサービスを開始する予定。

ペンシルバニア州Houstonからの新設パイプラインを、石油製品をGulf Coast からmidwest に送っていたパイプラインに接続し、逆送させる。テキサスでの新設パイプは貯蔵設備までのもの。


別途、
Sunoco Logistics PartnersがMarcellus shaleのガスの輸送のため、MarkWest Liberty Midstream & Resourcesと組んで、Mariner East計画を進めており、エタンをペンシルバニア州Houstonから同州Marcus Hookまで送って処理したうえで、Gulf Coast や欧州に船で輸送する。

2012/10/2 Ineos、米のシェールガスからのエタンを欧州のエチレン原料用に輸入
 

Westlakeでは北米のエタンベースのエチレンは中東のエタンベースエチレンに次いで、世界で2番目の低コストエチレンであるとしている。
原料コストの低下(及び原油価格アップによるナフサ価格アップ)により、エタンの有利性は更に拡大しつつある。

これを受け、各社は米国およびカナダでのエチレン増強を行いつつある。

1)ダウ  2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表

2)シェル 2011/6/14 Shell、アパラチア地方でエチレンクラッカー建設へ

3)LiondellBasell

LyondellBasellは2011年12月8日、投資家説明会を開催し、現状と今後の戦略を説明した。

今後の成長戦略のなかで、SinopecとのJVで中国でのPO/TBA計画のFS実施を決めたことや、米国で安価なエタンを使用したエチレンの増強などを明らかにしている。

2011/12/20   LyondellBasellの成長戦略 

 他に、Shaleエタンの利用も。

  Nova

NOVA Chemicalsは2011年5月、Range Resourcesとの間でMarcellus Shale Basinのエタンの長期購入契約を締結したと発表した。Ontario州Sarniaにパイプラインで輸送する。

  Ineos

2012/10/2 Ineos、米のシェールガスからのエタンを欧州のエチレン原料用に輸入


Dowの
Andrew Liveris CEOは2012年3月8日、エネルギー関連の調査機関が主催する年次会合CERAweek でスピーチし、シェールガスからのLNGの輸出を制限するよう求めた。

アメリカのこの安く豊富なガスの産業での有利性は、首尾一貫した国のエネルギー政策をつくらなければ消えてしまう。天然ガスを輸出する代わりに、液体形態ではなく、これを加工した固体形態で輸出するべきだ と述べた。

 

ーーー

Westlake Chemicalは台湾でCGPCを設立した故 T.T. Chao が1986年に米国に進出、設立した。

2006/9/16   Westlake Chemical、20周年
2008/3/12   T.T. Chao 逝去
2012/1/20   Westlake Chemical、Georgia Gulfに買収提案、Georgia Gulfは拒否

現在の能力は以下の通りで、オレフィン事業(エチレン/PE/SM)とビニル事業(エチレン/塩素/VCM/PVC/塩ビパイプ)からなっている。
エチレン増強、電解増設により、エチレンと塩素の購入なしの一貫体制を目指す。

工場別能力(単位:千トン)

    エチレン   VCM PVC
Olefins Business Lake Charles, LA  1,140 PE     1,140
SM   
   260
   
Vinyls Business Calvert City, KY   205286 塩素      250  590  500590
Geismar, LA   塩素    (350) 270  270

 ・Calvert CityはBF Goodrichから買収
 ・ PEの一部はCities Service と Eastman から買収
 ・GeismarのVCMとPVCは、
Bordenから買収したプラントを停止し、その後新設した。
 ・Geismar では電解を新設中(当初計画は塩素250千トン、その後350千トンに修正)で、2013年完成予定。


2012/10/11 米下院委員会、中国通信機器大手2社との取引解消を要請、米中の新たな火種 

米下院情報委員会は10月8日、中国の通信機器大手で世界2位の華為技術(Huawei Technologies)と 世界5位の中興通訊(ZTE Corp )に対する中国当局の影響力が米国の安全保障上の脅威となる恐れがあるとする報告を公表し、両社と取引のある米国企業に他のメーカーを選ぶことを検討するよう呼びかけるとともに、米連邦政府に両社の米国でのM&A活動を阻止するよう要求した。

11カ月にわたり2社に対する調査を実施した。

Rogers委員長(共和党)とRuppersberger下院議員(民主党)が中心となった情報特別委は2011年11月、両社が中国の情報機関のため、重要な通信部品・システムに悪意あるハードウェアやソフトウェアを組み込んだ疑いがあるとして、両社に対する調査の発動を発表した。

中国政府が両社がつくったネットワーク機器に組み込んだソフトウエアで cyber-espionage を行う恐れがあるとしている。

「中国の軍および情報機関は、米軍の技術優位性を認識し、将来の米国との対立時に利用するため、有利となるものを積極的に探している。送電網や金融ネットワーク等の重要なインフラに悪意のある埋め込みを行えば、とてつもない武器となりうる」と述べている。

中国政府は中興の株式を保有し、中国の国有銀行が両社に資金の一部を提供しており、両社は中国の政府や軍と取引があり、両社の内部には中国共産党の基層レベルの組織があることから、両社は党や政府の機関から独立していない企業だとみなし、そのうえで、中国政府からの要求を拒絶することは難しいため、その製品にはリスクが存在し、米国の安全上の利益を損なう可能性があると結論づけた。

華為技術については、1年に及ぶ調査で贈収賄や不正行為、差別行為、著作権違反など米国の法律に違反しているとの確かな情報をつかんでおり、FBIやその他の政府機関に調査を委ねるとしている。

Bloomberg社は、今回の報告書は両社の米国市場での業務展開にとってより大きな障害になると分析している。

ーーー

華為は公式サイトで声明を発表し、情報特別委が主導し、11 カ月をかけて完成させたこの報告書が、明確な情報や証拠を提出して同委の懸念を実証できていないと述べた。また同報告書は伝聞が多く、その本質や目的は中国企業の米国市場への参入を阻止し、競争から阻害することであるとの見方を示した。

中興は、同社は米国市場にとっていかなる安全保障上の脅威にもなっていないとし、米国の関連機関や関係者が今すぐやらなければならないことは、視野を広げて電気通信産業の供給チェーン全体をしっかり眺めることだと指摘した。

中国外交部の洪磊報道官は、定例記者会見で、「中国の電気通信企業は市場経済の原則に基づきグローバル経営を行っており、その米国における投資には中米経済貿易関係の互恵・Win-Win という性質が体現されている。米国議会が事実を尊重し、偏見を捨て、中米経済協力に役立つ行動をとる事を望む」と述べた。

人民日報は、「事実の裏付けを欠いたよりどころのない懸念を抱きながら、相手側に対し事実によって無罪を証明するよう求める。こんなロジックはまるでかつての“推定有罪”のように乱暴なものだと批判している。

同委の賢明とはいえない政治的な動きは、中米の経済貿易協力の健全な発展を阻害するものだ。事実に背き、偏見に満ちたこの報告書は、貿易保護主義のたちの悪い拡大であり、疑心暗鬼になっての空騒ぎであると同時に、米国という「法治至上国家」が推定有罪という醜態を演じていることを暴露するものでもある。

今回非難を受けた両社は中国の法律や国際的に通行するルールに基づいて合法的に経営を行い、グローバル市場で立派な業績を上げ、多くの国で受け入れられている。それがどうして米国では安全保障上の脅威になるのだろうか。

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米国は数多くの中国製品に対し、反ダンピング調査や反補助金調査を行い、中国も対抗措置を取っている。

米国は9月17日に、中国が輸出する自動車・自動車部品に大規模な補助金を支給しているとしてWTOに提訴、中国も同日、米国が中国の輸出品に対し不当な相殺関税をかけているとしてWTOに提訴し、米中両国間の貿易摩擦が激化している。

Obama大統領は9月28日、「国の安全保障に関わる」として、中国系企業Ralls Corp. によるオレゴン州の米海軍施設近くの風力発電企業4社の買収と所有を禁止し、本年取得した所有権を放棄することを求めた。

2012/10/4 オバマ大統領、米国内での中国企業の風力発電買収を阻止 

米紙は、これは、Obama大統領が北京に対して弱腰だというRomney大統領候補を含む共和党の批判に対して、最近頻繁に打ち出している強硬ラインの一つであるとしている。

Kissinger元国務長官は10月3日、Obama大統領と共和党のRomney氏が遊説などで争って中国カードを切っていることを批判し、「中国を攻撃する発言は最悪だ」と述べた。

「Obama大統領とRomney氏が選挙キャンペーンで、『中国は貿易分野で米国をだましている』と言っているが、これは最悪の発言だ」と批判した。

また、Romney氏が、「大統領に就任すれば中国を為替操作国に認定する」と述べていることに対し、「ほとんどすべての中国問題専門家が異議を抱いている。中国との貿易摩擦を戦争にしようとするのは、中国を知らない理論家だけだ」と指摘した。

米紙は、中国でテレコム関連の製品を売っている米国企業が報復されかねないと懸念している。
但し、中国はハイテク部品を欧米や日本の企業に頼っており、これを切ることはないだろうとの見方もある。(他の分野での報復はありうる)


2012/10/12  BP、テキサスの製油所をMarathon Petroleum に売却  

BPは10月8日、テキサス州Texas Cityの製油所と米国南東部の販売ネットワークの一部をMarathon Petroleum に25億ドルで売却する契約を締結したと発表した。

売却対象は、
 製油所 能力 日量 475千バレル
 隣接するSouth Houston Green Power コジェネレーション設備
    液化天然ガスパイプライン3本
 米国東南部の4か所の販売ターミナル

この製油所は1998年のAmocoとの統合でBPの所有となった。

なお、製油所に隣接するTexas City 石化コンプレックスは製油所とは独立しており、BPのグローバル石油化学事業の重要な一部であるため、売却の対象外。今後もMarathon Petroleum所有となる製油所との間で長期的な原料供給契約を結び、やっていく。

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同社は8月13日に、カリフォルニア州Carsonの製油所と、販売設備をTesoro Corporationに25億ドルで販売する契約を締結している。

売却対象は、
 製油所 能力 日量 266千バレル
 隣接する400メガワットのコジェネレーション設備の持分(51%)
 WilmingtonのコークスV焼設備(年産35万トン)
 販売設備(パイプライン、貯蔵ターミナル)
 ARCOブランドの販売ネットワーク(南カリフォルニア、アリゾナ、ネヴァダ)

この製油所は2000年のARCO買収でBPの所有となった。 

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BP は米国に5つの大規模、近代的な製油所を持っていた。
 ・テキサス州 Texas City   今回売却
 ・カリフォルニア州 Carson  8月に売却
 ・ワシントン州 Cherry Point
 ・インディアナ州 Whiting
 ・オハイオ州 Toledo (Husky Energyとの50/50JV、2008年設立)

BPは2011年2月1日、 グローバルな需要の変動を背景に、米国の製油・販売事業を再編し、2つの製油所を処分すると発表した。
テキサス州 Texas City とカリフォルニア州 Carson製油所とそれらに付属する販売設備の売却先を探すとした。

同時にBPは、残りの3つの製油所を強化するとした。以下の計画を進めている。 

 ・ワシントン州 Cherry Point (240千バレル)   超低硫黄クリーンディーゼル燃料、超低ベンゼンガソリンの製造
       
 ・インディアナ州 Whiting (405千バレル)   カナダの重質油の処理能力を増強 
       
 ・オハイオ州 Toledo (160千バレル)   連続触媒改質装置の追加
 (Husky Energyとの50/50JV)

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BPは流出事故費用をまかなうため、また、BPの強みと成長機会を生かすため、2010年から2013年の間で380億ドルの資産売却を目標としている。(2010年7月には、2011年末までに300億ドル分の資産を売却するとしていた。)

今回の売却を含めると、累積額は350億ドルを超える。

2012/9/14  BP、メキシコ湾の非戦略的石油資産を売却 


2012/10/13 米国商務省、中国製太陽電池のダンピングを最終認定 

米国商務省は10月10日、中国製の太陽電池およびモジュールにダンピングおよび補助金の行為が存在するとする最終判決を下した。

米国際貿易委員会(ITC)が11月下旬の会合で米企業の被害を最終的に認定すれば、納税命令を出す。
ITCは2011年12月2日に、
中国から輸入されたソラーパネルが米市場で不当に安く販売されており国内業界に損害を与えているとの仮決定を下している。米国メーカーの倒産が相次いでいることから、被害認定はほぼ確かとみられる。

米国ではダンピングの存在は商務省が、被害の存在はITCが認定する。

付記

米国際貿易委員会(ITC)は11月7日、中国製の太陽光発電機器に対し今後5年間、反ダンピング関税と相殺関税を適用することを最終決定した。

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米商務省は3月20日、中国のソラーパネルメーカーが中国政府から不当な補助金を受けているとして、相殺関税を課す仮決定を下した。

相殺関税の対象となるのは中国製の結晶シリコン型ソラーパネルで、中国製の太陽電池セル(発電素子)を使ったパネルやモジュールであれば、第三国から輸入する製品にも適用される。

米商務省は5月17日、中国製太陽電池を対象に反ダンピング関税を課す仮決定を下した。

2012/3/24   米商務省、中国製ソラーパネルに相殺関税 

 

米商務省は10月10日、反ダンピング関税と相殺関税を課す最終決定を下した。

今回の決定の内容は以下の通り。 

単位:%   AD:反ダンピング、CVD:相殺関税
  仮決定   最終決定
AD CVD 合計 AD 輸出
補助金
調整後
 AD
CVD 合計
Wuxi Suntech 31.22 2.90 34.12 31.73 -10.54 21.19 14.78 35.97
Trina Solar 31.14 4.73 35.87 18.32 -10.54 7.78 15.97 23.75
他の59社  31.18 3.61 34.79 25.96 -10.54 15.42 15.24 30.66
他の全て 249.96 3.61 253.57 249.96 -10.54 239.42 15.24 254.66

相殺関税が大幅にアップとなっているが、逆に反ダンピング関税から輸出補助金相当分が控除されるため、合計ではあまり変わらない。
合計では中国最大手の尚徳電力(Suntech) が引き上げられ、Trina Solar
(天合光能) は引き下げとなった。
 

EUも本年9月6日、中国製太陽電池に対する反ダンピング調査を発動すると発表した。

中国は2011年に約358億ドルの太陽光発電製品を輸出したが、そのうち6割以上はEU向けで、EUに輸出された製品の価値は210億ユーロに達した。EUの中国太陽光発電企業に対する影響は、米国を大きく上回る。

米国商務部のデータによると、米国は2011年、中国から31億ドル相当の太陽電池およびモジュールを輸入した。

付記
EUは11月8日、反補助金調査を開始したと発表した。

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米国では中国製の安い太陽電池の輸入が急増した結果、太陽電池パネルの価格が急落。米メーカーの経営破綻や工場閉鎖などが相次いでいる。

2009年に環境・エネルギー分野で雇用創出を目指すオバマ大統領の「Green New Deal」政策の一環として535百万ドルの融資保証を受け、2011年5月にはObama大統領も訪問した太陽電池メーカーのSolyndraが2011年9月6日に破産法(Chapter 11)を申請した。

本年6月28日には米太陽光発電パネルメーカーのAbound Solarが米連邦破産法の適用を来週申請する方針を発表した。
同社も「Green New Deal」政策の一環として、米エネルギー省から受けた4億ドルの融資保証枠のうち7000万ドルを利用していたが、中国メーカーの低価格攻勢などで事業継続が困難となった。

米商務省は2011年10月にドイツの太陽電池大手SolarWorld の米国子会社など7社から、「中国メーカーは政府支援を受けて生産・販売コストより安くパネルを販売している」として、関連調査と100%超の関税適用をするよう請願を受けた。

SolarWorldは太陽電池パネルの大幅値下がりによりカリフォルニアの工場を閉鎖しており、中国の輸出業者のダンピングで米国のメーカーは根こそぎにされると批判している。

米商務省によると、中国からの太陽電池パネルの輸入は2009年の640百万ドルから2010年に1,500百万ドルに急増した。
 

他方、中国からの安い輸入パネルで太陽発電を推進している米国のメーカー25社(The Coalition for Affordable Solar Energy)はこれに反対し、太陽電池の価格上昇で米国の需要は減少し、10万人の職が失われるとしている。

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米商務部の決定を受け、中国商務省の瀋丹陽報道官は10月11日に談話を発表した。

「米商務省が中国政府および企業の合理的な反論を無視し、中国製太陽電池製品に税徴収措置をとったことに対し、強く不満の意を示す」

「アメリカは新エネルギー分野で貿易摩擦を引き起こし、全世界に保護貿易主義および新エネルギーの発展を阻止しようとするシグナルを発信した。これは気候変動への全世界対応とエネルギーの安全保障という大きな流れに背くものである。また、G20首脳会合で可決された確約にも違反している」

「中米両国の企業間では、協力や共通利益が日増しに緊密になっている。アメリカが誤ったやり方を是正し、ともに新エネルギーおよびグリーン経済の発展を促していくよう希望する」

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米国の動きに対し、中国も対抗している。

中国商務省は7月20日、米国製の太陽光発電パネル向け多結晶シリコンについて反ダンピング調査、反補助金調査を開始したと発表した。合わせて韓国製の多結晶シリコンについても反ダンピング調査を開始した。

中国が輸入している多結晶シリコンの約4割が米国製で、2割は韓国製とされる。

2012/7/24    中国商務部、米の太陽発電向けポリシリコンに反ダンピング、反補助金調査開始

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中国が米国とEUのダンピング調査で問題にしている点に、米国とEUが中国を非市場経済国待遇をしていることがある。

WTO協定では「貿易の完全な又は実質的に完全な独占を設定している国ですべての国内価格が国家により定められているものからの輸入の場合には、規定の適用上比較可能の価格の決定が困難であり、また、このような場合には、輸入締約国にとって、このような国における国内価格との厳密な比較が必ずしも適当でないことを考慮する必要があることを認める。」と規定している。
但し、「非市場経済国」の定義はなされておらず、どのような場合に輸出国を「非市場経済国」として認めるかについては各国の裁量にゆだねられている。

「市場経済国」との認定を受けていない国の場合、ダンピング調査の際に、輸出価格は、国内価格との比較ではなく、経済発展レベルが近い代替国の価格と比較して判定される。

実際には中国よりコスト水準の高い国を代替国に採用するケースが多く、この結果、ダンピングと判定される確率も高くなっているといわれている。

今回、米国は代替国としてタイを選んだが、EUは米国を代替国に選んだとされる。

EUの場合も、ダンピング認定がされるのは必至とみられている。


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