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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2012/7/2  OPEC、生産枠据え置き

OPECは6月14日、ウィーンで開催した総会で、下期の生産枠を日量3000万バレルに据え置くことで合意した。

現在、サウジの増産などにより、OPECの生産量は日量3160万バレルとなっている。

サウジは燃料価格の上昇が世界経済の成長を妨げるのを防ぐため、原油生産を30年ぶりの高水準となる日量1000万バレルに大幅拡大している。

ヌアイミ石油相は総会に先立ち、「われわれの行動は、原油価格を3月時点の128ドルから現在の約100ドルに押し下げることに役立った。欧州と世界経済へのある種の刺激策となった」との見解を示し、原油価格が下落しているにもかかわらず、OPECの生産目標を引き上げる必要があるとの見解を示した。イランの今後の減産を視野に入れている。

原油価格下落を受け、一部加盟国は生産枠の引き下げを主張した。
財政均衡を原油価格の1バレル=100ドルを上回る水準に頼る一部の国は、原油価格がさらに下落する可能性を懸念している。

サウジアラビアも国家公務員の給与引き上げ、社会保障の拡充、公共投資の増加を実施しており、アブドラ国王は2008年12月に、75ドルが原油の適正価格だと発言した。

しかし、世界経済の減速に原油高が加われば、景気をさらに冷え込ませ、一層の原油価格下落を招く恐れもある。このためOPECは目標を据え置く一方、超過生産を減らすことで合意した。

OPEC事務局長は、生産枠の据え置き合意は160万バレルの減産を意味すると指摘した。

ーーー

OPEC生産枠の推移は下記の通り。(千バレル/日)

  2007/2 2007/11 2008/1 2008/9 2008/11 2009/1 2012/1
Algeria 794 1,357 1,357 1,357    1,286






Iraq
 含まず

 

 

Iraq含む
Iran 3,788 3,817 3,817 3,817    3,618
Kuwait 2,065 2,531 2,531 2,531    2,399
Libya 1,371 1,712 1,712 1,712    1,623
Nigeria 2,123 2,163 2,163 2,163    2,050
Qatar 663 828 828 828     785
Saudi 8,399 8,943 8,943 8,943    8,477
UAE 2,257 2,567 2,567 2,567    2,433
Venezuela 2,970 2,470 2,470 2,470    2,341
Angola     ー     ー 1,900 1,900    1,801
Equador     ー     ー 520 520     493
Iraq (ー) (ー) (ー) (ー) (ー) (ー)
Indonesia 1,370 865 865

離  脱

Total 25,800 27,253 29,673 28,808   27,300 24,845 30,000
(増減) (-500) (1,450) 2,420 〔-865〕   (-1,500)    

2008年9月総会ではイラクを除く11か国の生産枠合計は、離脱したインドネシアの枠を除いた28,808千バレルであった。
2008年11月総会では1,500千バレルを減らし、27,300千バレルとした。

2008年12月総会では、2009年1月からの生産枠を24,845千バレルとした。
これは2008年9月の生産量29,045千バレルから4,200千バレルを減らしたもの。

2008/12/18 OPEC 大幅減産決定

これ以降、国別の生産枠は明らかにされていない。

2011年12月の総会で、2012年1月以降の生産枠を、イラクを含む加盟12カ国の生産枠を日量30,000千バレルとすることで合意した。
ほぼ現状の生産量に即した水準で、サウジアラビアの意向に沿った形となった。

今回はこれを据え置く。

 


2012/7/2  南鳥島沖にレアアース 

東京大学大学院の加藤泰浩教授(地球資源学)らの研究グループが、「レアアース」を豊富に含む泥を南鳥島周辺の海底で発見した。6月28日に資源地質学会で発表した。

加藤教授らは、国際共同研究などで採取された南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)内の海底堆積物のボーリング試料を分析した結果、南鳥島の南西約300キロメートル、水深約5600メートルの海底の泥に最大約1700ppm、平均約1100ppmの高濃度でレアアースが含まれることを突きとめた。

「レアアースを含む泥の厚さは、現在確認できるものとして10メートルほど」あり、濃度や層の厚みなどから推定されるレアアースの埋蔵量は約680万トンで、日本が1年間に消費するレアアース(約3万トン)の「約220年分が見込める」という。

「ジスプロシウム」や「テルビウム」などに富み、他のレアアースも含まれているという。

また、南鳥島の180キロメートル北方のEEZ内や、南方のEEZ外でも1000ppmを超える濃度の泥を見つけている。

 2012/4/28 日本の大陸棚拡張、国連が認定


レアアースが見つかったのは水深5600メートルの海底で、これまでに採掘の例はない。

しかし、加藤研究室 では下記の発表時に、「現在のテクノロジーをもってすれば,3,500〜6,000メートルの深海から年間4,000万トンのレアアース資源泥を採掘・回収することは十分に可能と考えられ、さらに、回収したレアアース資源泥からは、薄い硫酸により短時間でレアアースを浸出(抽出)することが可能である」と述べている。

ーーー

加藤泰浩准教授(当時)らの研究グループは、南東太平洋や中央太平洋 の広い範囲にレアアースを高品位で含有する「レアアース資源泥」が分布していることを発見し、2011年7月4日付の英国科学誌 Nature Geoscience に発表した。

国際共同研究などで採取された太平洋海底のボーリング試料を分析し、ネオジムなどのレアアースを400ppm以上の濃度で含む泥が、水深3500〜6000メートルの多くの地点に分布しているのを見つけた。

1968〜1984 年に東大海洋研究所が古地磁気の研究のために太平洋全域から採取した27本のピストンコア試料と、深海掘削計画/国際深海掘削計画による掘削コア 51本から得られた試料について全岩化学組成分析を行った。

特に高濃度の泥はタヒチ付近の南東太平洋と、ハワイ付近の中央太平洋に集中し、泥の厚さはそれぞれ8メートル、23.6メートルで、両海域計約1100平方キロメートルの総レアアース量は、世界の陸上埋蔵量約1億1千万トンの800倍に当たる約880億トンと分かった。

さらに,レアアース資源泥には、バナジウム、コバルト、ニッケル、モリブデンなどのレアメタルも高濃度に含有されていることも明らかとなった。

この新たなレアアース資源は、見た目は普通の泥であるにも拘らず高品位のレアアースを含有しており、“レアアース資源泥”と名付けられた。

この“レアアース資源泥”は、
(1)レアアース含有量が高いこと
(2)資源量が膨大(陸上埋蔵量の約1,000倍)かつ探査が容易なこと
(3)開発の障害となるウランやトリウムなどの放射性元素をほとんど含まないこと
(4)レアアースの回収が極めて容易なこと(薄い酸で容易に抽出可能)
などの特長を兼ね備えている。

このレアアース資源泥は大半が公海にあり、国際海底機構に申請すれば鉱区獲得は可能だが、資源としての採掘例がないため、国際的な合意形成に時間を要するとみられる。

今回、日本の排他的経済水域内の海底堆積物のボーリング試料を分析した。

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東京大学大学院 エネルギー・資源フロンティアセンターでは7月20日にレアアースのシンポジウムを開催する。

レアアースのすべてを語る
ー海底レアアース泥の探査・開発から削減技術、製錬、リサイクルまでー

詳細は http://www.frcer.t.u-tokyo.ac.jp/event/images/RareEarthSympo.pdf


2012/7/3     韓国、7月からイラン産原油の輸入を全面停止;日本は輸入継続 

EUは6月25日の外相理事会で、7月1日から域内保険会社がイラン産原油輸送タンカーに損害保険を販売することを禁止することを決めた。

EUは1月23日、ブリュッセルで外相理事会を開き、イランへの制裁措置として、同国産原油の輸入禁止と同国中央銀行の資産凍結などを決めたが、その中に、下記の項目がある。

・イラン原油及び石油製品の欧州での輸送・購入・輸入の禁止、及び関連するファイナンスと保険契約の禁止
  既に締結済の契約は6月末までは認める。

2012/1/27 EU、イラン原油禁輸を7月完全実施へ

EUは7月1日にイラン産原油の全面輸入禁止措置を発動させた。

韓国は、欧州の保険会社の再保険がなければイラン産原油を運ぶタンカーを運航することができないため、7月からイラン産原油の輸入 を全面的に停止する。

韓国は中国、日本、インドに次ぐ4番目のイラン産原油の輸入国で、昨年は原油全体の9.4%の8720万バレルをイランから輸入した。

韓国の精油4社のうちSK EnergyとHyundai Oilbankがイラン産原油を輸入してきた。
SK Energyは輸入量の約10%、Hyundai Oilbankは約20%となっている。

今年に入り、両社はイラン産原油の輸入量を削減し、その分をカタールなどほかの産油国からの輸入で補っているため、韓国政府は「国内の需給に大きな影響はない」としている。

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イラン産原油の輸入停止は韓国政府のイラン向け輸出にも影響を与える。

韓国は米国の要求により2010年からイランとの金融取引を停止している。

韓国政府は2010年9月8日、独自の対イラン制裁を発表、事前許可ないイラン金融取引を事実上禁止した。

韓国の石油各社はイランからの原油の輸入代金を国内のウリィ銀行と中小企業銀行に開設された口座に入金し、韓国の輸出企業はイランから受け取るべき代金をその口座から引き落とす形で決済している。

この口座には約1年分の決済が可能な残高があるが、イラン産原油の輸入停止が長期化すれば、残高がなくなり、輸出代金が受け取れないこととなる。

なお、米オバマ政権は6月11日、韓国やインド、台湾、南ア、マレーシア、スリランカ、トルコの7か国・地域について、イラン産原油の輸入を大幅に削減したとして、イラン制裁法の適用対象から除外すると発表した。
6月28日には中国とシンガポールも除外した。

このため、イラン制裁法の上では、金融取引は可能となる。
現在の禁止は韓国政府の方針によるものであり、イラン制裁法の適用対象からの除外で、韓国政府が方針を変えるかどうかによる。

韓国政府は6月26日、危機管理対策会議を開き、原油の代替輸入先を確保する一方、韓国の輸出企業に被害が及ばないよう対応策を講じることを申し合わせた。

イラン向け輸出をする中小企業を対象に輸出物量をそれぞれ割り当てるクォーター制を実施する一方、イラン向け輸出の比重が高い企業がトルコなど代替市場へ目を向けられるように支援する計画。

他方、韓国のイラン原油輸入停止を受け、駐韓イラン大使は、「韓国政府の類を見ないイラン産原油輸入中断決定で両国関係の損傷を避けようとしたイランの努力が水の泡になった」とし、「韓国が今度の措置を実行すれば、イランも韓国製品の輸入を完全に中断する決定を下すこともありえる」と強調した。

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日本の場合は、以下により、当面の問題点を解決 、イラン産原油の輸入を(量を減らしながら)継続する。

(保険)

貨物保険:補償額を5割超 減額する。
船舶保険:免責条項を導入、戦争保険についてイラン関連は免責する条項を追加する。

賠償保険:6月20日「特定タンカーに係る特定賠償義務履行担保契約等に関する特別措置法」が成立 、 
     
イラン産原油を運ぶ日本のタンカーに重大な事故が起きた場合、最大で76億ドルを国が補償する。

詳細は以下の通り。

タンカーの損害保険は、対人・対物は任意だが、油濁損害については船舶油濁損害賠償保障法で強制加入が義務づけられている。

日本では海運各社でつくる日本船主責任相互保険組合がほとんどを引き受けているが、補償額は800万ドルしかないため、欧州の損保会社と再保険契約を結び、最大76億ドルまで補償できるようにしている。

今回、この再保険が出来なくなる。

特別措置法では、
・タンカー所有者と国が再保険分の保険契約に代わる特定保険者交付金交付契約を結び
・タンカー所有者から保険金相当額の年額約1500万円を徴収。
・日本船首責任相互保険組合が補償する額を上回る事故があった場合に、交付金を交付する。


(金融)

米国は2011年12月、核開発を加速するイランへの資金流入防止を目的に、イラン中央銀行と取引関係のある外国金融機関に事実上の制裁を科す条項を盛り込んだ国防権限法を成立させた。
これには、原油輸入を大幅に削減していれば例外とすることも盛り込まれている。

米国務省は3月20日、核開発疑惑を強めるイランへの追加金融制裁の適用対象から日本と欧州10か国の合計11か国を除外する方針を決め、米議会に伝達した。除外期間は180日間。

米国務省当局者は「日本は福島原発事故による困難にもかかわらず、2011年下半期にイランから輸入する原油量を15〜22%減らした。これは画期的な規模で、他の国にも手本になるだろう」と話した。

2012/3/21 対イラン制裁法、日本は適用除外 

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米国は6月11日、韓国やインド、台湾、南ア、マレーシア、スリランカ、トルコの7か国・地域を除外した。

6月28日には中国とシンガポールも除外した。

米国としては、中国との外交関係を悪化させたくないとの思惑もあるとみられる。

但し、中国は以下の通り述べている。
アメリカの独自制裁に強く反対
中国は、イランに対するアメリカの独自制裁に従う必要はなく、イランと通常の貿易や石油取引を行う権利を持つ
ある国が国内法によって、他国に制裁を行使しようとしたり、他の国々に対して、これらの独自制裁に従うよう求めたりすることは、我々にとって容認できない
中国は経済の発展を必要としているため、イランからの石油の輸入を続けるだろう

なお、日本のイランからの原油輸入額は年間1兆円規模にのぼり、三菱東京UFJ銀行が決済の7〜8割を担っている。
NY州地裁は5月2日、米海兵隊司令部爆破テロをめぐり、被害者への賠償金確保のため、三菱東京UFJ銀にイラン政府の資産調査と口座凍結を指示した。
これに対し同行は「凍結命令は日本国内の資産にも及び、日本の法律上問題がある可能性がある」と異議を訴え、米連邦地裁が5月25日までに米国外の口座凍結は無効との判断を下したことを受けて、日本企業が関連するイランとの決済取引を再開した。


2012/7/4 フェロシルト不法投棄事件で石原産業元役員らに賠償命令  

(事件)

石原産業四日市工場では硫酸法と塩素法で酸化チタンの生産をしているが、1997年に硫酸法の廃棄物の減量化と酸化チタンの製造コストの低減をはかるため、製造工程から副生する使用済み硫酸を再生利用して副生品を生産・販売する研究開発に着手した。

2001年から土壌埋戻材を「フェロシルト」と命名して販売を開始し、2003年には三重県リサイクル製品利用推進条例に基づく「リサイクル製品」に認定された。

2005年4月までの間に約77万トンのフェロシルトを生産、そのうち約72万トンが販売され、委託業者を通じて東海3県や京都府加茂町など35カ所に埋設された。業者がケナフを植えるための肥料と偽って埋め捨てたケースもある。

2004年11月、大雨によって愛知県北丘地区でフェロシルトが流出し、川の水を赤く染めるという事件が発生した。
サンプル検査の過程でフェロシルト中から基準値を超える6価クロムやフッ素化合物も含まれていることが分かった。

石原産業は2006年3月決算で、フェロシルト回収費用326 億円を特別損失に計上した。

「フェロシルト」の不法投棄事件で、廃棄物処理法違反(不法投棄)の罪に問われ、1審・津地裁で懲役2年の実刑判決を受けた同社四日市工場の元副工場長、佐藤驍被告の控訴審判決(2007/12)で、名古屋高裁は「不法投棄や隠ぺい工作の中心的な役割を担っていたと認められる」と1審判決を支持し、佐藤被告の控訴を棄却した。

2006/11/13 石原産業フェロシルト不法投棄事件

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石原産業は2007年4月、株主からの請求に基づき、元取締役佐藤驍に対し、取締役の責任追及にかかる損害賠償請求訴訟を提起した。(甲事件)

撤去・回収の費用負担を余儀なくされ多額の損害を受けたとし、当面、佐藤驍の取締役在任期間である2003年6月から2005年6月までの間の行為で、廃掃法違反による起訴事実に係る行為による損害10 億円につき賠償を求めるもの。

この訴訟に2つの訴訟が共同訴訟参加した。

@石原産業株主が、元取締役佐藤驍に対し、善管注意義務違反により会社に489 億円の損害を与えたとして、共同訴訟(乙事件)

A石原産業株主が、元取締役佐藤驍を除く他の取締役ら19 名に対し、善管注意義務違反の行為により、会社に489 億円の損害を与えたとして、同額の賠償を求めた株主代表訴訟(丙事件)

 

大阪地裁は2012年6月29日、これらに対する判決を言い渡した。

甲事件:被告佐藤驍(元副工場長)に対し、会社への10 億円の支払命令。

乙事件:元取締役佐藤驍に対し、会社への475 億8400 万円の支払命令。

丙事件:元取締役社長Aに対し、会社への254 億5050 万円の支払命令
        (内、101 億8020 万円は、元取締役亡Bの訴訟承継人と連帯)
     元取締役工場長亡Bの訴訟承継人3名に対し、会社への合計101億8020 万円の支払命令
        (元取締役Aと連帯して、元取締役亡Bから相続した財産の存する限度)
     その他の元取締役17 名に対する請求はいずれも棄却
   (乙事件と丙事件は同一事件であり、乙事件の475 億8400 万円の一部の連帯支払いとなる)

なお、石原産業ではこの損害賠償金額の受領の可能性は未だ不確定であるとして、業績に与える影響を見込んでいない。


2012/7/5 再生可能エネルギー買取制度スタート、風力枠は限度寸前 

再生可能エネルギー買取制度が7月1日にスタートした。

このうち、風力発電は20kw以上が 23.10円/kw(税抜き22.00円)、未満が57.75/kw(税抜き55.00円)で買い取る。

2012/6/26 再生可能エネルギーの固定価格買取制度 

再生可能エネルギーは電力会社が買い取り、その送電網を使って家庭や企業に送るが、風力については、風況により出力が大きく変動するため、電力系統への連系量が増大するにつれ、周波数や需給運用など電力系統に影響を及ぼすことが懸念される。

このため、電力会社では電力品質や安定供給に影響を及ぼさない範囲で連系可能量を設定している。

電力事業連合会によると、各電力の連系可能量は以下の通りで、現在の可能量は約430万kwで、2012年3月末試算の2020年頃の見通しは約600万kwとなっている。
東京、中部、関西の3電力はそもそも風力発電に向いた場所が限られているため、枠を設けていない。

これに対し、朝日新聞の調べによると、既に建設された風力発電と今後の建設予定分の合計概数は約360万kw(枠設定分では約300万kw)に達しており、現状では残り枠は31%しかない。

電力会社の風力発電連系可能量 (万kw)
 

連系可能量

買取予定量
          (*)

残り枠

2011/9/末 2012/3/末
(2020年頃の
 見通し)
現状 2020
北海道 56 56 52 7% 7%
東北 158 200 114 28% 43%
東京 - - 35    
中部 - - 21    
北陸 25 45 15 40% 67%
関西 - - 8    
中国 62 100 49 21% 51%
四国 25 45 23 8% 49%
九州 100 150 42 58% 72%
沖縄 2.5 3.0 1.4 44% 53%
合計 428.5 599 360.4
(296.4)

(31%)

51%)
* 既に建設された風力発電と今後の建設予定分の合計概数

北海道電力は56万kwの枠のうち52万kwが埋まった。
東北電力は今年初めに30万kw分を新たに募集したところ、買い取り枠の約3倍の324万kw分の応募が殺到し、断らざるを得ない状況。

枝野経済産業相は7月1日、風力発電に適した北海道と東北地方の一部地域で、必要な送電網の整備・増強を財政支援する方針を表明した。強い風が吹く地域は過疎地が多く、送電線の容量不足が発電所建設のネックになっている。

補助金を念頭に「送電網を持つ電力会社と(恩恵を受ける)風力発電事業者の負担を前提に、国が協力する枠組みを考えたい」と述べた。

経産相は「風力が大きな柱になる」と強調、2013年度予算の概算要求に盛り込む考え。


2012/7/6 JNC、リチウムイオン二次電池用負極材料及び電極の共同開発契約を締結 

 チッソの事業会社のJNCは7月3日、フランス原子力庁(CEA)の新エネルギー技術研究部門(LITEN) と自動車用リチウムイオン電池に使用される負極材料および電極の共同開発を開始すると発表した。

リチウムイオン二次電池の負極材料には一般的にグラファイト(黒鉛)などの炭素材が使用されるが、その物性から電池容量とエネルギー密度に限界があるために、これらを解決する新規材料の開発が強く望まれている。

このため、JNCはLITENとの間で、最先端のシリコン系負極材料およびそれを用いた電極の共同開発契約を締結し、開発を推進する。

LITEN ホームページではナノ構造のSi-C compounds に焦点を当てた研究をしているとしている。
なお、正極材では boron-doped LiFePO4 component の特許を取り、開発を進めている。

ーーー

JNCは、環境・エネルギー分野を新規事業ドメインとして位置づけており、その1つとしてリチウムイオン二次電池用部材の分野での開発を進めている。

2010年9月には、チッソ(当時)は正極材市場に進出することを決定し、ドイツのH.C. Starck GmbHと合弁会社を設立した。

H.C. Starckはタングステン、モリブデン等の希少金属の粉末及びコンパウンド、セラミック粉末、エレクトロニクス用スペシャリティケミカル等のメーカーで1986年にBayerグループに入った。

Bayerは2006年に投資会社の Advent International Carlyle Group に売却することを決め、2007年2月に売却を完了した。

2006/12/2 Bayer、子会社 H.C. Starck を売却

合弁会社は CSエナジーマテリアルズで、チッソ 51%、Starck 49%の出資。
両社のノウハウと生産技術を併せ、リチウムイオン二次電池正極材の製造販売、研究開発を推進する。

2012年5月にJNCの水俣製造所にセミコマーシャルプラントを完成し、9月には運転を開始する。

JNCはまた、市原製造所にセパレータのパイロットプラントを建設していたが、このたび完成し、ユーザーにサンプル評価を依頼している。
年内には本プラント建設計画を具体化させたい意向。

 

今回の負極材への進出で、リチウムイオン二次電池の4材料のうち電解液を除く3材料に開発・事業化の見通しがついたことになる。

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リチウムイオン二次電池の仕組みは以下の通り。

リチウムイオン二次電池は、非水電解質二次電池の一種で、電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う。

現在では、正極にリチウム金属酸化物を用い、負極にグラファイト(黒鉛)などの炭素材を用いるものが主流となっている。

電解液には非水溶液系電解質を使用する。
炭酸エチレンや炭酸ジエチルなどの有機溶媒 +ヘキサフルオロリン酸リチウム (LiPF6) といったリチウム塩を使う。

三菱化学はリチウムイオン二次電池の主要4材料(電解液・負極材・正極材・セパレータ)すべてを取扱う世界唯一の企業。

2010/9/13 三菱化学、リチウムイオン二次電池用負極材の製造能力増強 

宇部興産とDow Chemicalは2011年7月6日、リチウムイオン二次電池向け電解液の製造及び販売等を行う合弁会社を設立することで合意したと発表した。

宇部興産は、リチウムイオン二次電池の主要四部材のうち、電解液とセパレーターを事業化している。

2011/7/14 宇部興産とダウ、リチウムイオン二次電池向け電解液の合弁会社設立 


2012/7/6    中国、2カ月連続で利下げ 

中国人民銀行は7月5日、前回の6月7日に続き、2カ月連続で利下げを行った。実施は7月6日。

4-6月の成長率が6四半期連続で減速するとみられることから、景気のてこ入れのため踏み切った。

1年物貸出金利は6.31%から6.00%に、1年物預金金利は3.25%から3.00%に下げた。

人民銀行はさらに、貸出金利の下限を基準金利の80%から70%に引き下げ、銀行の裁量を拡大した。

貸出金利

  基準金利

下限

従来      6.56% 基準x0.9   5.904%
6/7改正      6.31% 基準x0.8   5.048%
7/5追加 6.00% 基準x0.7 4.200%

預金金利

  基準金利

上限

従来      3.50% 基準x1.0   3.50%
6/7改正      3.25% 基準x1.1  3.575%
7/5追加

3.00%

基準x1.1  3.30%

ーーー

なお、欧州中央銀行(ECB)も7月5日、主要政策金利であるリファイナンス金利を1%からユーロ導入以来低水準となる0.75%に引き下げた。

欧州債務危機の深刻化に対し、利下げにより景気下支えを図る。


2012/7/7 新日鐵住金の合理化策(コークス) 

新日本製鐵と住友金属工業は、2012年4月27日に株式交換契約と合弁契約を締結したが、両社は6月26日の株主総会で、その承認を得た。

この結果、2012年10月1日に両社は経営を統合し、新日鐵住金が発足する。

両社は、経営統合後3年程度を目途に、年率1,500億円規模の統合効果の実現を目指す。

うち調達関連では、
@原料調達・輸送効率向上による原料コスト削減
A設備仕様共通化、発注と契約の効率化による設備費・修繕費・資材費削減
Bグループ会社の統合・連携(原料・工事・修繕・作業 等)
により、400億円程度を目指すとしている。

合理化策の一つが住友金属小倉製鉄所のコークスである。

住友金属では小倉製鉄所向けのコークスを三菱化学の坂出事業所から半世紀以上にわたって調達してきた。

三菱化学坂出事業所は世界最大級のコークス炉を323門有し、高品質のコークスを年間390万トン生産している。
世界中から石炭を輸入し、年間約60〜70種類もの原料を様々な組み合わせでブレンドすることで、異なる品質のコークスを造り分けている。

しかし、同社では小倉製鉄所で使うコークスの調達の一部を三菱化学から新日鉄の持ち分法適用会社、日本コークス工業へ切り替える検討を始めた。

日本コークスは、工場が小倉製鉄所と同じ北九州市にあり物流費が安く、コークスを生産する際に発生するガスをパイプラインなどで小倉製鉄所に運び燃料として活用もできる。

日本コークスでは、コークス生産により発生するガスをクリーンエネルギー化のうえ、コークス焼成に再利用、余ったガスは新日本製鐵・八幡製鐵所に供給している。

住友金属では調達先の見直しにより、「原燃料費を年100億円以上減らせる可能性がある」としている。

三菱化学にとっては、新日鉄と住金の合併で思わぬ被害を受けることとなる。

日本コークスは旧称が三井鉱山である。

1889年 三井組が、大蔵省より官営三池炭鉱の払い下げを受ける。
1911年 三井合名会社より独立し、三井鉱山株式会社設立

1950年後半から エネルギー革命の進展の中、経営多角化を推進、コークス、セメント、機械事業へ進出

1988年 コークス炉1基を休止→2006年 休止コークス炉再稼動
1993年 三井三池化工機を合併
1997年 三池鉱業所を閉山、国内石炭採掘事業から撤退。
     (NEDO、525億円を債権放棄)
2004年 セメント事業から撤退

三井鉱山は2003年には債務超過状況を改善できないまま産業再生機構の管理下に置かれ、2006年まで事実上の国有化状態に置かれた。この間経営陣の刷新、財務体質の強化、遊休資産の売却等を進め、構造転換を図った。

主力のコークス事業では、北九州事業所の休止コークス炉を再稼動させ、新日本製鐵との間に長期供給契約を締結し安定供給を実現した。

年間生産能力は210万トンで、受け入れ〜生産〜搬送までの全工程をコンピュータ制御で無人化・合理化・高効率化を追求し、高品質な高炉用・鋳物用コークスを供給している。

2005年3月に再生機構は新日鐵、住友商事、大和証券SMBCに持株を譲渡した。(新日鉄と住友商事は各12.9%)

2008年2月に、新日鐵と住友商事は、三井住友銀行からB種優先株を取得し、普通株に転換した。
この結果、両社の持株比率は各21.7%となり、両社の持分法適用関連会社となった。

2009年4月、三井鉱山は日本コークス工業に改称した。


2012/7/9 三菱化学、旧東燃化学川崎のPEとPPを停止へ 

6月27日付ブログで「三菱化学が今後進めるべきものは、ポリオレフィンの構造改革である」と述べた。

三菱化学の子会社の日本ポリエチレンと日本ポリプロは6月29日、川崎市川崎区千鳥地区のHDPE及びPP工場各1系列を2014年4月に停止すると発表した。
(なお、後記の通り、プライムポリマーもPP 90千トンの停止を発表している)

停止するのは次のプラント。

  日本ポリエチレン 日本ポリプロ
停止プラント HDPE 第二系列(スラリー法) PP 第3系列(バルクー気相法)
元の所有者 東燃化学(昭電より譲受) 東燃化学
能力 52,000トン/年 89,000トン/年

これにより、東燃化学の川崎工場のPE、PPは全てなくなることとなる。
但し、構内には東燃化学のJVの日本ユニカーの工場は残る。(LDPE 180,000t、LLDPE/HDPE 120,000t)

東燃化学は下記の事情で日本ポリケムの株を三菱化学に売却し、日本ポリエチレン、日本ポリプロに参加していない。
上記のPE、PPのプラントは三菱化学が日本ポリケムの株とともに買収していると思われる。

ーーー

日本ポリエチレンは2003年9月に、日本ポリケムのPE事業を分離、日本ポリオレフィンのPE事業と統合し、設立された。

当初の出資比率は日本ポリケム50%、日本ポリオレフィン42%、三菱商事プラスチック8%であったが、
2008年3月に、日本ポリケム58%、日本ポリオレフィン42%
となった。

なお、この合併には公取委が反対した。

公取委は、統合会社のLDPEの合算販売シェアは約30%で第1位、上位3社累積シェアは約70%だが、東燃化学を通じて日本ユニカーとの結び付きがあり、これを前提にすればグループの合算販売数量シェア・順位は約45%・第1位、上位3社累積シェアは約80%になるとして問題視した。

このため三菱化学と東燃化学が交渉の結果、2003年1月に三菱化学が東燃化学所有の日本ポリケム株式を買取り、日本ポリケムを三菱の100%子会社とすることで合意、これを受けて公取委は日本ポリエチレンの設立を承認した。

三菱化学が同社の58%の株主となる。

日本ポリプロは、2003年9月に日本ポリケムのPE事業を分離した後、10月に残るPP事業をチッソのPP事業と統合した。

  出資比率は日本ポリケム(三菱化学 100%)が65%、チッソが35%である。

日本ポリケムの株主の昭和電工と日石化学(JX日鉱日石エネルギー)はPPではサンアロマーの株主である。

ーーー

日本ポリエチレンと日本ポリプロは上記の設備停止後も下記の多くのプラントを有している。(能力:トン)
三菱化学が今後も設備停止に踏み切るかどうか注目される。

    日本ポリエチレン

日本
 ポリプロ

LDPE LLDPE HDPE PP
三菱化学 鹿島  62,000 261,000  10,000 556,000
水島 66,000 53,000 94,000 100,000
四日市(停止済) (75,000)     (37,000)
東燃化学 川崎     50,000 89,000
JX日鉱日石 川崎 94,000   50,000 121,000  
昭和電工 大分 123,000   200,000  
チッソ 千葉
(丸善石化内)
      250,000
四日市
(東ソー内)
      80,000
不明 2,000      
合計 347,000 364,000 475,000 1,075,000

 注 LDPEの内訳で 2,000トンが不明(合計と合わない)
   東燃化学のHDPE能力はこれまで 50,000トンとされている。

 

参考 川崎の両社及び日本ユニカー、サンアロマーのプラントの立地は以下の通り。

ーーー

日本ポリエチレンと日本ポリプロの業績は以下の通り。


なお、三井化学 65%、出光興産 35%のプライムポリマーの業績は以下の通り。

プライムポリマーの能力は以下の通り。(単位:トン)

    LDPE LLDPE LL/HD併産 HDPE PP  
LL HD
プライムポリマー 出光・千葉   60,000     130,000 400,000  
三井・千葉   85,000 11,000 87,000 116,000 223,000  
三井・大阪           448,000  
日本エボリュー 三井・千葉   240,000         増強後 300,000
うち住化 50,000
三井デュポン 千葉 110,000            
岩国・大竹 60,000            
三井化学 岩国・大竹         3,000    
徳山ポリプロ 徳山           200,000 50/50製造JV
出光
/トクヤマ
合計 170,000 385,000 11,000 87,000 249,000 1,271,000  

なお、プライムポリマーは三井化学市原工場のPP製造設備1系列90千トンを2013年6月に停止する。


2012/7/10    Sunoco、Philadelphia 製油所の停止を取りやめ 

Carlyle Groupは2012年7月2日、Sunocoとの間で合弁会社 Philadelphia Energy Solutionsを設立することで合意したと発表した。

8月に停止予定であったSunocoのPhiladelphia Refinery をJVに移し、稼働を続ける。

CarlyleはJVのマジョリティを持ち、運営責任に当たる。
Sunocoは現物出資でマイノリティシェアを得るが、経営には参加しない。

同製油所は東海岸で連続稼働する最古の製油所で、能力は日量330千バレル。

Carlyleでは、米北東部でのエネルギーのハブとして重要であるとともに、 Marcellus Shaleの天然ガスに関し、新しいビジネスチャンスがあるとしている。

ーーー

Sunocoは2011年8月16日、オハイオ州HaverhillのFrankford のフェノール工場を売却すると発表、これにより、同社の石油化学は消滅した。

2011/8/25 Sunoco、石油化学の売却を完了 

Sunocoは2011年9月6日、Refinery事業からも撤退し、Marcus HookとPhiladelphiaの製油所の売却手続きを開始したと発表した。
事業の収益性悪化によるもので、収益性の高いRetail とlogisticsに経営資源を集中させたいとしている。

同社のBusiness Unit は以下の通り。
  Refining & Supply 撤退検討
  Chemicals    撤退完了
  Coke      スピンオフ(SunCoke Energy)
  Retail Marketing
  Logistics
  

製油所のうち、Pennsylvania州のMarcus Hook refineryは2011年12月に停止した。

しかし、現在のところ、製油所としての買い手は見つかっていない。
このため、Marcellus Shale の副産品を含む燃料の貯蔵、加工などの多目的プラントとして使用するとの見方がある。

付記
ブラジルのBraskemの米子会社Braskem America は7月11日、Marcus Hook製油所のプロピレン スプリッターを取得することを明らかにした。隣接のポリプロ工場にプロピレンを供給する。

ペンシルバニア州は、同社が少なくとも56百万ドルを投資し、雇用を維持・増加することを条件に、15百万ドルを供与する。

ーーー

東海岸ではConocoPhillips も2011年9月に、フィラデルフィア近郊のTrainer製油所を直ちに生産停止し、6か月以内に売却できない場合は永久に停止すると発表した。

2012年4月30日、Delta Air LinesはPhillips 66との間でTrainer refinery complex を買収する契約を締結したと発表した。

2012/5/10 Delta Air Lines、製油所を買収 


2012/7/10  長期プライムレート、過去最低に並ぶ

みずほコーポレートなどは7月9日、長期プライムレートを1.25%にすると発表した。7月10日から適用される。
2003年6月の過去最低水準に並んだ。

 


2012/7/11 福島原発事故調査委員会報告 

東京電力の福島第一原発事故を検証する国会の「事故調査委員会」(黒川清委員長)は7月5日、最終報告書を決定し、衆参両院議長に提出した。

報告書は、計641ページに及び、事故原因の分析のほか、「政府の危機管理体制の見直し」など7つの提言から構成されている。

ダイジェスト版 

要約版  本編  

英語版はExecutive summary のみが公開されている。本篇は現在翻訳中で、完成後に公開される。

ーーー

福島原発事故から9か月後に、国会は以下の目的で、憲政史上初の独立委員会を設置した。

@事故に係わる経緯・原因の究明
A今後の原発事故の防止及び事故被害の軽減のための施策または措置について提言

「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法」は、2011年10月30日に施行され、委員長及び委員の10名は、国会の承認を得て同年12月8日、両議院の議長より任命された。

【委員長】黒川 清(政策研究大学院大学アカデミックフェロー、元日本学術会議会長)
【委員】
     石橋 克彦(理学博士、地震学者、神戸大学名誉教授)
     大島 賢三(独立行政法人国際協力機構顧問、元国際連合大使)
     崎山 比早子(医学博士、元放射線医学総合研究所主任研究官)
     櫻井 正史(弁護士、元名古屋高等検察庁検事長、元防衛省防衛監察監)
     田中 耕一(分析化学者、株式会社島津製作所フェロー)
     田中 三彦(科学ジャーナリスト)
     野村 修也(中央大学法科大学院教授、弁護士) 
     蜂須賀 禮子(福島県大熊町商工会会長)
     横山 禎徳(社会システム・デザイナー)

調査の概要は以下の通り。
●ヒアリング: 延べ1167人(900時間超)
●原発視察(福島第一および第二、女川、東海):9 回
●タウンミーティング:3回(合計400超)
●被災住民アンケート回答者数:住民10633人(自由回答コメント8066人)
●作業従業員アンケート回答者数:2415人
●東電、規制官庁および関係者に対する資料請求:2000件以上

資料と映像は全て公開されている。http://naiic.go.jp/resources/

ーーー

黒川委員長によると、委員会の使命を、
 「国民による、国民のための事故調査」
 「過ちから学ぶ未来に向けた提言」
 「世界の中の日本という視点(日本の世界への責任)」
とした。

そして調査に当たり、以下の認識を共有化した。

事故は継続しており、被災後の「福島第一原発」の建物と設備の脆弱性及び被害を受けた住民への対応は急務であると認識する。

この事故報告が提出されることで、事故が過去のものとされてしまうことに強い危惧を覚える。

日本全体、そして世界に大きな影響を与え、今なお続いているこの事故は、今後も独立した第三者によって継続して厳しく監視、検証されるべきである。

 

事故の根源的原因:

本事故の根源的原因は歴代の規制当局と東電との関係について、「規制する立場とされる立場が『逆転関係』となること(規制当局は電力事業者の「虜」となっていた)による原子力安全についての監視・監督機能の崩壊が起きた点に求められる」と認識する。

黒川委員長は以下の通り述べている。
そこには、ほぼ50 年にわたる一党支配と、新卒一括採用、年功序列、終身雇用といった官と財の際立った組織構造と、それを当然と考える日本人の「思いこみ(マインドセット)」があった。経済成長に伴い、「自信」は次第に「おごり、慢心」に変わり始めた。入社や入省年次で上り詰める「単線路線のエリート」たちにとって、前例を踏襲すること、組織の利益を守ることは、重要な使命となった。この使命は、国民の命を守ることよりも優先され、世界の安全に対する動向を知りながらも、それらに目を向けず安全対策は先送りされた。そして、日本の原発は、いわば無防備のまま、3.11 の日を迎えることとなった。

何度も事前に対策を立てるチャンスがあったことに鑑みれば、今回の事故は「自然災害」ではなくあきらかに「人災」である。

事故の直接的原因:

事故が実際にどのように進展していったかに関しては、重要な点において解明されいないことが多いのに、東電は、事故の主因を早々に津波とし、「安全上重要な機器は地震で損傷を受けたものはほとんど認められない」と中間報告書に明記している。

委員会は、事故の直接的原因について、「安全上重要な機器の地震による損傷はないとは確定的には言えない」、特に「1号機においては小規模の小破口冷却材喪失事故が起きた可能性を否定できない」とし、これについて引き続き第三者による検証が行われることを期待する。

このほか、
「運転上の問題の評価」:東電の組織的な問題である
「緊急時対応の問題」:危機管理体制が機能しなかった、事業者と政府の責任境界が曖昧
「被害拡大の要因」:危機管理体制が機能しなかった
「住民の被害状況」:被災地住民に事故の状況は継続。政府側の住民の健康と安全を守る意思の欠如、対策の遅れ・・・
「問題解決に向けて」:規制される側とする側の逆転関係の解決なしには再発防止は不可能
「事業者」:東電経営陣の姿勢は原子力を扱う事業者としての資格があるのか?
「規制当局」:内向きの態度を改め、国際社会から信頼される規制機関への脱皮が必要
「法規制」:抜本的見直しが必要。世界の最新の技術的知見等を反映、これを担保するための仕組みの構築

提言

1.規制当局に対する国会の監視
2.政府の危機管理体制の見直し
3.被災住民に対する政府の対応
4.電気事業者の監視
5.新しい規制組織の要件
6.原子力法規制の見直し
7.独立調査委員会の活用

 

「ここにある提言を一歩一歩着実に実行し、不断の改革の努力を尽くすことこそが、国民から未来を託された国会議員、国権の最高機関たる国会及び国民一人一人の使命であると当委員会は確信する。
福島原発事故はまだ終わっていない。被災された方々の将来もまだまだ見えない。国民の目から見た新しい安全対策が今、強く求められている。これはこの委員会の委員一同の一致した強い願いである。」

 


2012/7/12 液晶パネル価格カルテルで東芝に87百万ドルの損害認定の評決 

米連邦地裁の裁判で7月3日、陪審から東芝に対し、87百万ドルの損害を認定する評決が出された。

東芝が1999〜2006年にかけて液晶パネルの価格を決める際、ほかの企業と話し合い、違法な協定を結んだとして、米国の消費者が集団で損害賠償を求めていた。

10人の陪審員は、東芝が液晶パネルの価格を決めるため、他の企業とホテルで会合を持ったと認め、パネルを使用するメーカーに17百万ドル、最終製品を購入した消費者に70百万ドル、合計87百万ドルの損害を認定した。

原告側は、共謀による損害は867百万ドルと主張した。陪審員は、グレイな部分が多く、決定的な証拠がないため、原告側の言うような多額の損害は認められないと述べている。

米独禁法は損害認定額の3倍(今回の場合は261百万ドル)の 賠償額を認めている。

但し、東芝では、本集団訴訟における他の被告の和解額の合計が本評決に基づき決定される損害賠償額(3倍賠償でも261百万ドル)を超えているため、東芝が罰金を支払う必要はない としている。(下記)

しかし東芝では、無罪を主張、あらゆる法的手段を用いて対応を進めるとしている。

ホテルでの同業者との会合は合法的なものであり、ホテルの会合で価格について話し合われたというタイプの製品は生産していないとしている。

「米国における液晶パネル事業について一切の違法行為はないと主張しており、違法性および損害を認定した今回の陪審による評決は不当であると考えています。今後、当社の主張が認められるよう、あらゆる法的手段を用いて対応を進めます」。

「東芝が罰金を支払う必要がない」点について、東芝では次のように述べている。 

「今回の評決で認定された損害額は、当社がかかわったと認定された共謀行為全体によって、原告である液晶パネル関連製品等の直接購入者が被った損害の額とされています。」

即ち、パネルを使用するメーカーに17百万ドル、最終製品を購入した消費者に70百万ドル、合計87百万ドルの損害という認定は、東芝単独のものではなく、昨年12月に和解したシャープ等を含めた全体のものという。

「3倍賠償」となっても合計で261百万ドルに過ぎない。(陪審員の意見から見ると、悪質ではないとして3倍賠償が適用されない可能性もある。)

昨年12月には液晶ディスプレーの直接需要家に対し合計388百万ドル 、消費者に対し総額538百万ドルの和解金で和解しているため、完全に支払い済みとなる。

和解の場合は、各社の判断でしたものであり、裁判の結果の如何にかかわらず返還しないとの条項が入っている筈で、各社は払い損となるが、東芝にとっては原告に対しこれ以上の支払い不要となる。

これは、シャープ等、既に和解した企業にとっては、新たな問題を抱える。

和解に当たっては、米国での裁判は陪審員裁判のため、企業対消費者の裁判では企業に不利となり、また3倍賠償の制度があるということを前提に、「自社は違法行為はしていないが、裁判になると時間も費用もかかるため、和解した」というコメントが多い。


しかし、今回、東芝は和解に応じず、裁判に持ち込み、グレイな部分が多いとして、損害は極めて少ないという評決を得た。
各社は結果として、評決額よりもはるかに高い和解金を払ったこととなる。

もし、違法行為がないなら、何故、堂々と争わなかったかとの批判が出る。

付記

東芝は9月11日、原告との間で和解し、和解金30百万ドルを支払うと発表した。

7月の87百万ドルの損害認定の評決を不服として対応を進めてきたが、訴訟の長期化の影響等を総合的に勘案したとしている。

「東芝が罰金を支払う必要はない」としながら、何故払うのか、これも不思議な話である。
(本当に払う必要がないなら、裁判をすぐに決着させればよい。)

ーーー

液晶ディスプレイカルテルでは、2008年にLG Display、 中華映管(台湾)とシャープの3社が国際カルテルを認め、罰金支払いで司法省と合意して以来、日本・韓国・台湾のメーカーは司法省に罰金を払うほか、役員22人が起訴された(そのうち多くが禁固刑と罰金刑を受けた)。

Samsung ElectronicsLeniencyで 法的には免責となった。
東芝は司法省による訴追は受けていない。

これに加え、直接の需要家からの集団訴訟と、最終消費者を代表する各州からの集団訴訟が行われた。

2011年12月に、Samsungを含む8社が液晶ディスプレーの直接需要家に対し、合計388百万ドルの和解金の支払いで合意した。
また、7社が、消費者に対し総額538百万ドルの和解金の支払いで合意した。(他に罰金支払い)

残る韓国のLG Displayは5月1日に消費者との間で和解、更に新しく台湾のAU Optronics も4月に消費者との間で和解した。いずれも金額は非公開。

2012/1/6   米国の液晶ディスプレイ価格カルテル、民事訴訟でも多額の和解金

最後に残ったのが東芝で、今回の陪審による評決となった。

ーーー

シャープは7月9日、TFT液晶事業に関し、北米・欧州において提起されている損害賠償を求める民事訴訟のうち、Dell, Inc.ほか2社からの民事訴訟について、総額198.5百万米ドルの和解金で和解することに合意したと発表した。

同社は上記の通り、多額の和解金で和解したが、これは別の訴訟である。
「カルテルに関する欧州委員会の調査が続いているほか、民事訴訟もまだ残っている」としている。


2012/7/13  韓国政府、国連に「沖縄近隣まで韓国の大陸棚」の主張提出方針 

韓国の高位の外交筋は7月4日、「朝鮮半島から伸びた大陸棚が、自然な延長により沖縄海溝まで伸びているというのが韓国政府の立場」と述べ、近くこれを立証する地質学・海洋科学・法的情報を含む資料を大陸棚限界委員会に提出すると述べた。

韓国領海200海里の外側から日本の沖縄近くまで広がる大陸棚について、科学的・技術的な権利を認めるよう要請書を提出するというもの。

韓国外交通商省当局者は「国連への大陸棚画定に関する文書提出は(加盟国の)義務だ。日本との排他的経済水域(EEZ)境界画定交渉は別途行っていく予定だ」としている。

付記

韓国政府は12月26日、韓国の大陸棚境界線を沖縄トラフまで拡張することを求めた大陸棚境界画定案を国連の大陸棚限界委員会に提出した。

同案で主張する韓国沿岸から200カイリを超える海域の大陸棚の面積は、2009年に提出した予備情報で申請した面積に比べ倍以上拡張している。

国連海洋法条約は、200カイリを超える排他的経済水域(EEZ)で大陸棚を設定する国に対し、大陸棚限界委員会への申請を義務付けている。ただ、同委は隣接する国が大陸棚をめぐる「紛争」があると国連に異議を公式に申し立てた場合、審査を行わない。このため日本が問題を提起すれば正式審査は行われない。
 

1970年に地図の青線部分を当時の朴正煕大統領が大韓民国の領海として公式宣言した。

日本との外交紛争となり、交渉の結果、1974年に2つの協定(合わせて通称 日韓大陸棚協定)が締結され、1978年6月に発効した。

@「日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の北部の境界画定に関する協定」(略称:北部協定)

  北緯33度付近から36度付近にかけての両国の大陸棚の境界を画定したもの。
  境界線は対馬海峡西水道を通過するが、両国の領海基線に対してほぼ中間線となっている。

A「日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定」(略称:南部協定)

  境界画定を棚上げして石油・天然ガス資源の共同開発についてのみ細目にわたり協定した。
  開発費用と収益を折半するという条件で、期限は2026年までの50年間。

締結から発効まで4年かかったのは日本側の事情。
南部協定の共同開発区域が完全に日韓中間線以南の“日本側”大陸棚に設定されていること
・中国からの自国大陸棚への侵犯とする激しい抗議

日本主張の「中間線原則」と、韓中両国の「大陸棚自然延長論」との衝突。
(当時は200海里の
排他的経済水域の概念はなかった)

なお、国際司法裁判所の「北海大陸棚事件」(1969年)では、国際司法裁判所は、「衡平な原則」でドイツの大陸棚を中間線ではなく、等距離原則より広く決めた。「衡平な原則」とは当事者間同士が合意できることとした。

 

韓国政府は今回、この共同開発区域全体を朝鮮半島から伸びた大陸棚と主張する。  

ーーー

韓国紙は今回の動きの背景を以下の通り説明している。 

@共同開発は2028年までだが、1986年に日本側が経済的効果が不十分という理由で開発拒否を宣言した。
 それ以降、探査が中断され、共同開発の原則のため独自開発は不可能となっている。

A韓国側は日本の突然の宣言を、国際法の変更によるものと解釈している。

協定締結当時は、大陸棚で領海を分け合った。
1982年に国際海洋法で200海里までの主権を認める排他的経済水域の概念が採択された。

この結果、共同開発区域の多くが日本の排他的経済水域になるため、2028年の共同開発の効力が切れた後に、独自開発を行う考えであろう。

B日韓共同で実施した調査では、この地域には石油と天然ガスの埋蔵量は72億トンに達する。

Cこの地域の一部は中国の主張する領海とも重なる。

国連海洋法条約は、排他的経済水域を200カイリと定めているが、東シナ海は海域が狭く日中両国のEEZが重なるため、日本は国際司法裁判所の判例などに照らして「重なる場合は中間線が境界」と主張。
一方、中国は、同条約の「大陸棚自然延長論」を主張。

2008年5月の日中首脳会談で東シナ海のガス田共同開発で一致した。
  白樺ガス田(中国名・春暁)の共同開発は両国の共同投資とし、収益分は先行投資した中国側に重点配分。
  翌檜ガス田(同・龍井)周辺の日中中間線にまたがる海域を共同開発区域とする。(日韓共同開発区域に隣接)
  合意対象外の日中中間線付近のガス田や、周辺海域の取り扱いについては継続協議。

付記 外務省は2015年7月22日、「中国による一方的な資源開発の状況」を公表した。

 

D韓国はこれらの動きに反発、2009年に大陸棚の境界についての予備情報を大陸棚限界委員会に提出した。

  まもなく提出される韓国の科学的・技術的権利の要求は、この予備情報の正式文書となる。


2012/7/14 中国経済の変調 

中国の6月の経済統計が順次発表されているが、中国経済の変調が見られる。

1)消費者物価指数と生産者物価指数

中国国家統計局が7月9日に発表した6月の 消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)はともに予想を下回る結果で、需要減退の兆候が見られる。

消費者物価指数は前年同月比2.2%上昇で、市場予想の同2.3%上昇を下回った。伸び率は3カ月連続で縮小した。

うち、食品は3.8%、非食品は1.4%であった。
食品のうち、豚肉は12.2%(前月は-0.6%)。




同時に発表された6月の生産者物価指数(PPI) は前年同月比2.1%の下落となった。伸び率は11か月連続で縮小している。

エコノミストは、「中国にとって、インフレはもはや脅威ではなくなった」と指摘、「物価の下落ペースが速過ぎ、デフレ観測が高まれば、当局はさらに金利を引き下げるだろう」との見方を示し ている。

温家宝首相は8日、「中国の景気は現在おおむね安定しているが、引き続き大きな下振れ圧力に直面している。政策の微調整をさらに進めるべきだ」と指摘。「信用の構造的ひっ迫を効果的に解決するため慎重な金融政策を維持する一方で、構造的な減税政策の改善に注力しながら、積極的な財政政策を引き続き行うべき」と述べた。

但し、「現在、不動産市場の調整は依然として重要な段階にあり、われわれは断固たる姿勢で抑制策を続け、投機的な不動産投資との戦いを長期的な政策としなくてはならない」と述べ、住宅価格の「妥当な後退」を達成する方針をあらためて表明した。

2)輸出入

中国税関総署は7月10日、貿易統計を発表した。

2010年、2011年は輸出入とも大きな伸びを示したが、本年上半期(1〜6月)は急減速し、輸出は前年同期比9.2%増、輸入は6.7%増と、いずれも1桁の伸びにとどまった。

欧州の債務危機が中国を直撃した。内需不振で輸入も低迷した。

上半期のEU向け輸出は前年同期比0.8%の減。
米国向けは13.6%増、ASEAN向けは16.8%増、日本向けは8.1%増。

6月単月では輸出は前年同月比11.3%伸びを示したが、前月は15.3%であった。
輸入は前月の12.7%の伸びに対し、6.3%の伸びにとどまった。

 

3)GDP

中国国家統計局は7月13日、2012年第2四半期の国内総生産(GDP)伸び率が前年比 7.6%になったと発表した。
2009年第1四半期以来の低水準。

上半期の伸びは 7.8%。

 

4)人民元

2月29日の終値6.2936元/$を最高値とし(一時高値は2月10日の6.2884元/$)、その後下降を続けている。

4月16日からは変動幅を基準値の±1.0%に拡大したが、最近は従来の -0.5% の変動幅を超えている。

中国の経済成長が鈍化する中、輸出促進に向けて中国人民銀行が元高を抑制するとの観測が強まった。

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中国人民銀行は7月5日、前回の6月7日に続き、2カ月連続で利下げを行った。実施は7月6日。

2012/7/6    中国、2カ月連続で利下げ


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