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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2014/6/2  王子製紙、年内に中国で紙パルプの一貫生産を開始

王子ホールディングスは5月28日、年内に江蘇省南通市の製紙工場で紙パルプの一貫生産を始めると発表した。
当初の計画発表から11年になる。

2010年末に高級紙生産設備第1期40万トンが生産を開始、2013年稼働を目指し、原料のクラフトパルプ自製設備を建設中であったが、パルプの排水を約100kmのパイプラインで黄海に排出する計画が住民の反対運動を受け、南通市がキャンセルしたため、中断していた。

その間、輸入パルプで高級紙(第1期40万トン)を生産しており、毎年、数十億円規模の赤字が続いた。

今回、パルプ排水を黄海に排出する代わりに、南通工場の隣に中水回用設備(膜処理で排水を浄化して再利用する設備)を設置、排水手段変更に伴う許認可を取得した。

排水処理当初案 黄海に排出   今回の排水処理
 

クラフトパルプ設備は6月上旬に試運転を開始し、年内に営業運転を開始する。

なお、当初計画ではパルプの能力は70万トンで、2015年に高級紙第2期40万トンを稼動させ、最終的に120万トンにするとしていた。

今回、パルプ能力は50万トンで、うち24万トンは当面 外販する。
製品については「市場動向を見ながら柔軟に見直し」としており、「印刷用紙の増設はもう打ち止め」としている。
板紙への転換が最有力とされる。

印刷用紙などの洋紙は工場増設が相次ぎ、中国では供給量が需要を上回る状況が続いている。
代わってアジア全域で段ボール向け板紙の需要が高まっている。

南通プロジェクトの総投資額は約1400億円となる。

ーーー

これまでの経緯は以下の通り。

王子製紙は2003年6月、単独出資で南通市に年産120万トンの上質紙、塗工紙を建設すると発表した。

しかし、その後の中国の投資ガイドラインの変更で合弁方式を義務付けられ、合弁相手との交渉に手間取り、2007年10月にようやく合弁会社の設立認可を取得した。

2007/10/31 王子製紙の中国工場、発表から年半でようやく着工

2010年末に高級紙生産設備第1期40万トンが生産を開始 、2013年稼働を目指し、原料のクラフトパルプ自製設備の建設を開始した。
高級紙の第2期は2015年の稼働を計画 、
最終的には年産120万トンの生産規模を目指すとした。

2012年7月、江蘇省南通市にある王子製紙の工場から出る排水が環境汚染を引き起こす恐れがあるとして、住民1万人以上が抗議デモを始めた。

南通市政府が経済技術開発区に王子製紙などを誘致する際、排水を南通市が建設する約100kmのパイプラインで黄海に排出すると約束していた。
完成後、王子製紙 の工場から1日15万トンが排水される予定だった。

住民の反対を受け、南通市は「パイプラインの建設計画を永遠に取り消す」と発表した。

2012/8/1 王子製紙の排水に抗議、中国江蘇省でデモ 


2014/6/3   Westlake Chemical、欧州の塩ビメーカー Vinnolit を買収 

Westlake Chemical は6月28日、投資会社のAdvent International からドイツを拠点とする塩ビメーカーVinnolit Holdings GmbH とその子会社を490百万ユーロで買収する契約を締結したと発表した。  

付記 7月31日 取引完了

Advent International は欧州の住宅建築のスローダウンで窓枠やドア材などの塩ビ製品の販売が停滞しているため、Vinnolit の売却先を探す努力を続けていた。

塩ビ業界での名門のSolvayが将来の撤退を前提にINEOSとの塩ビ事業統合を決めた。
  
2014/5/13 SolvayとINEOSの塩ビJV、EUが条件付でようやく承認 

TotalグループのArkemaは2012年7月に塩ビ事業をコモディティ製品に特化するKlesch Group に売却した。
  
2013/5/16  元Arkemaの塩ビ事業を巡る問題

 

Vinnolit はHoechst とWacker のJVであったが、2000年にAdvent International が買収した。
2007年にVinnolitはINEOSからペーストPVC(Emulsions-PVC)事業を買収、 英国のHillhouseとドイツのSchkopauのペーストPVC工場を取得するとともに、INEOSのイタリアのPorto Torres 工場で生産するペーストPVC全量の引取り権も得た。

現在、ドイツと英国に下記の6つの工場を持ち、能力は苛性ソーダが475千トン(100%)、VCMが665千トン、PVCが780千トンとなっている。
2013年の売上高は917百万ユーロで、従業員は約1400人。

立地 製品   原料VCMソース
ドイツ Cologne Microsuspension (paste) PVC
Suspension PVC
Wacker Chemie工場内 鉄道輸送
Knapsack 電解、EDC、VCM、
Suspension PVC
Hoechst 工場内 自製
Gendorf 電解、EDC、VCM、
Suspension PVC
Emulsion PVC
  自製
Burghausen Suspension PVC
Emulsion PVC
Wacker Chemie工場内 Gendorf からパイプ輸送
Schlopau Emulsions-PVC Dow ValuePark内
(旧INEOS)
Dowからローリー輸送
英国 Hillhouse Emulsions-PVC
Microsuspensions-PVC
(旧INEOS) INEOSのRuncornからローリー

Westlakeでは、買収により、クロルアルカリ事業をグローバルに展開することができるとともに、ペースト塩ビなどの特殊塩ビを製品群に加えることができるとしている。

ーーー

Westlake Chemicalは台湾でCGPCを設立した故 T.T. Chao が1986年に米国に進出、設立した。

現在の能力は以下の通りで、オレフィン事業(エチレン/PE/SM)とビニル事業(エチレン/塩素/VCM/PVC/塩ビパイプ)からなっている。
エチレン増強、電解増設により、エチレンと塩素の購入なしの一貫体制を目指す。

  能力
百万lbs

工場別

 
Lake Charles Calvert City Geismar
エチレン
          
3,430 2,740       拡張計画 +250
240 エタン原料 
  450   プロパンからエタンに変更し、能力を630にアップ
LDPE 2,480 1,500     Cities Serviceから買収、拡張 Eastmanから買収
 ー
LLDPE 980
SM 570 570     Mobil/Badger技術
塩素 1,250   550 700  
苛性ソーダ 1,375   605 770
VCM 1,850   1,300    
    550 Bordenから の買収プラントは停止
その後、VCM、PVC新設(PVC 2段階)
PVC

 

1,700     600
  1,100    2014年に  +200
   

BF Goodrich
から買収

Borden
から買収

 

 


2014/6/4 消費者物価指数

総務省が5月30日に公表した4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は前年比で3.2%上昇した。

消費増税の影響分を日銀の試算している1.7%と仮定すると、実質上昇率は前年比1.5%となり、3月の1.3%からプラス幅が拡大した格好となる。
食品やガソリンなどで増税の転嫁分を上回る値上げが実施されたとみられる。

但し、食料とエネルギーを除いたコアコアCPIでみると、前年より下がっている。
コアCPIの上昇はエネルギー関連の上昇によるところが大きい。

  月次(前年同月比 % )
2014/1 2014/2 2014/3 2014/4 同 実質
総合 1.4 1.5 1.6 3.4 1.7
生鮮食品を除く総合 (コア) 1.3 1.3 1.3 3.2 1.5
食料及びエネルギーを除く総合(コアコア) 0.7 0.8 0.7 2.3 < 0.6
参考  それぞれに含まれるもの、除外されるものは以下の通り。

総合

コア

 

コアコア

 

その他全て
(酒類を含む)
  ガソリン                    エネルギー
  電気・都市ガス・プロパンガス・灯油 
  その他食品(酒類を除く) 食品(酒類を除く)

生鮮食品(天候に左右され、変動が大きい)


2014年4月から消費税が5%から8%に上がった。

総務省は昨年に、2014年4月の消費増税以後も消費者物価指数は従来通り税込で表示し、消費税の転嫁分を取り除いた指数などは作成しないことを明らかにした。

日銀は消費税率の5%から8%への引き上げがCPIを2%程度押し上げるとみている。
ただ、4月分のCPIは一部公共料金などを旧来の5%の消費税率に基づく価格で算出するため、実質的な消費増税による物価の押し上げ効果は1.7%になるという。

1) 消費税率の3%ポイントアップに対し、CPIが2%程度押し上げる理由:

  下記が消費税が非課税になるため。
    健保、労災、自賠責保険などの医療費 (市販医薬品は課税)
    介護保険サービス
    教育費、教科書
    住宅賃借料(居住用のみ)
    その他

2)2014年4月のみ1.7%となる理由

  電気、都市ガス、プロパンガス、電話料の消費税は4月は5%で、5月から新税率になる。
  水道料、下水道料、し尿処理手数料は経過措置期間中は旧税率が適用される。

*コアコアCPIは低い旧税率適用の電気、ガスなどを含まないため、消費税の影響は1.7%以上になる。
 上の表では 前年同月比を実質で <0.6% とした。
    


2014/6/5  Pfizerの中国のジェネリック医薬品JVが生産開始 

海西輝瑞製薬 (Hisun-Pfizer Pharmaceuticals) の浙江省富陽市の工場が5月29日、正式に生産を開始した。

同公司は2012年設立で、浙江海正薬業(Zhejiang Hisun Pharmaceuticals)とPfizer のJV。
海正薬業が51%、Pfizerが49%を出資する。

富陽市の生産基地には15億元(約244億円)が投入され、世界先端レベルの生産ラインが6本建設された。
製品は抗ガン剤、抗生物質、心臓血管薬、糖尿病治療薬、ホルモン剤、向精神薬、免疫抑制剤など多岐にわたり、年間生産能力は2千万ボトル、15億錠に達する。

ーーー

両社は2011年6月、ブランドジェネリック医薬品の開発・製造・販売のJV設立を目指し、MOUを締結した。

2012年2月には更に進め、以下の内容の枠組み契約を締結した。

社名は海西輝瑞製薬 (Hisun-Pfizer Pharmaceuticals) とし、海正薬業が51%、Pfizerが49%を出資する。
投資額は295百万ドル、資本金は250百万ドルとし、両社はJV設立後に、選択した既存製品、製造サイト、現金その他を拠出する。

2012年9月12日、両社はJVの設立を発表した。
多国籍企業の医薬会社と中国のトップ医薬品会社のJVで、高品質で手ごろな価格のブランドジェネティック医薬品を中国と世界の市場で供給することを狙うとしている。

JVは、海正薬業の製品網、販売網、ブランドジェネリック医薬品の製造販売経験と、Pfizerの世界でのR&D、品質管理技術、国際的な市場開発・販売能力を活用する。

Pfizerは、ブランドジェネリック医薬品を含む特許切れ医薬品は、世界の医薬品市場で急成長している分野の1つだと し、特に新興国市場では、コストとアクセスが特許切れ薬成長のけん引役となっており、中国では国内製薬市場の70%をブランド後発薬が占めると指摘した。

合弁会社の生産工場は浙江省富陽市に、管理センターと研究開発センターは上海と杭州にそれぞれ開設する。

Pfizerは、「合弁会社は、中国が続けている医療改革へのPfizerの信頼を示すもので、世界に通用する治療ソリューションを中国に広げるPfizerの努力にとって重要な節目となる」と述べた。

ーーー

Pfizerはジェネリック医薬品にも力を入れている。

同社は特許期間が満了した「長期収載品」と「後発医薬品」を合わせてエスタブリッシュ医薬品(Established Products)と呼んでおり、従来から持つ長期収載品に加え、2011年よりPfizerブランドの後発医薬品を発売している。

Pfizer とMylanは2012年8月、日本における後発医薬品の開発、製造、流通、販売について、独占的な長期戦略的業務提携を締結したと発表した。

Pfizerは、これまで培ってきた強いブランド力と、日本市場への新薬導入の非常に優れた実績をもとに、両社の後発医薬品事業のポートフォリオの市場化、およびセールスとマーケティング業務を担当する。

Mylanは、研究開発、製造を含む技術分野を担い、同社がグローバル市場で培った、製品開発力、製造品質、サプライチェーンにおける信頼性、卓越したサービスの一層の強化に努める。

両社は2013年1月1日より後発医薬品事業の長期戦略的業務提携を開始した。

2012/8/31  Pfizer と Mylan、日本での後発医薬品事業で長期戦略的業務提携


2014/6/6  米国エネルギー省、LNG輸出認可手続きを変更、今後の承認は遅れる見込み 

米国エネルギー省(DOE)は5月29日、FTA非締結国に対するLNG輸出承認手続きを変更する案を発表した。
45日のpublic review とコメントを経て、決定する。

米国ではNatural Gas Act of 1938 により、天然ガス輸出入にはエネルギー省の許可が必要とされており、輸出許可の判断基準には@公共の利益に反するか否か、A輸出先国で内国民待遇が与えられるかどうかがある。@の公共の利益については、国内供給を脅かさないことと、自由競争を阻害しないことが要件となる。

LNG輸出設備の建設には環境法や諸規則で求められるレビュー(National Environmental Policy Act review:NEPA review) が必要であるが、DOEはこれまで、この完了を待たず仮承認を与えてきた。

これまでは申請順に審査して仮承認を与えており、これまでに6ヶ所7件(Freeport 追加を含む)が認められた。
このうち、日本向けは3ヵ所ある。

2014/3/27 米エネルギー省、西海岸からの非FTA締結国向けLNG輸出を承認 

今回、DOEは、環境面でのNEPA reviewが完了して後に初めて、申請を審査し、最終的に決定する案を提案した。

 

米国ではウクライナ情勢を受け、米同盟国がロシアの天然ガスに依存しなくても済むよう、WTO加盟国に政府の許可なしでLNG輸出を認めるなどの議論が出ていた。
現在のところ、
24件が非FTA国向け輸出の承認を待っており、順位の一番はOregon LNGである。

2014/4/1 米国からの欧州向けLNG輸出 

ロシアを除く主要7カ国首脳会議(G7サミット)は6月5日、ブリュッセルで首脳宣言を採択して閉幕した。宣言はガス供給をロシアに依存する欧州を中心に、エネルギー調達先の多角化や消費の効率化に取り組む方針を明確にした。
具体策の一つが、新たなガス供給ルートの構築で、欧州には年約2000億立方メートル分のLNG受け入れ施設があり、フル稼働すればロシアからの輸入量(1600億立方フィート)を上回る。
オバマ米大統領もサミットに先立つ東欧歴訪で、米国産のシェールガスの欧州への輸出解禁に前向きな姿勢を示した。

しかし、今回の案が決まれば、DOEはNEPA reviewが完了するまでの仮承認の発行を中止する。
このため、ロシアの天然ガスに依存する国にLNGを輸出することはかなり先になる。
(いずれにせよ、NEPA reviewが完了してから建設を始めるため、DOEの承認があってもすぐには輸出は出来ない。)

変更の目的は、商業的に有利な計画を優先して効率を上げるとともに、公共の利益に合うかどうかの決定に際し完全な情報が得られるということである。

これまではFTA非締結国への輸出が認められるかどうか、分かってから、NEPA reviewをするのが効率的と考えてきたが、NEPA reviewを完了し、実際に建設されるのが確実な計画について承認するよう変更することで、計画が公共の利益に与える影響をより正確に評価することが出来る。
また市場への影響の判断において、より正確な累積承認数量をベースに評価を行うことが出来るようになる。

NEPA reviewの申請費用は最大1億ドルと され、DOEへの申請費用(約2万ドル)を大きく上回っているため、NEPA reviewを先行させることで、実現性の低いプロジェクトをふるいにかけられるとみ られている。


米国からのLNG輸出に終始反対しているDow Chemical は今回のDOEの手続き変更に賛成し、この変更が輸出ラッシュに歯止めをかけ、天然ガス価格の値上げと供給の不安定から米国の消費者を守ることになると述べた。

ーーー

DOEは2012年にLNG Export Studyを発表した。
ここでは日量 60億〜120億ft3 の輸出を前提に検討した。

2012/12/7 米エネルギー省、LNG輸出に向けての報告書を発表

今回DOEは、米国が日量 120億〜200億ft3 の輸出の場合に公共の利益にどう影響するかについて理解を得るため、経済分析を実施する。

DOEは同時に、2つの資料を発表した。

@ 非定型天然ガスの関連情報
   
Draft Addendum To Environmental Review Documents Concerning Exports Of Natural Gas From The United States

A 温室効果ガス関連
   
Life Cycle Greenhouse Gas Perspective on Exporting Liquefied Natural Gas from USA



2014/6/7 サッポロビール、「極ZERO」を発泡酒に変更 

サッポロビールは6月4日、第三のビール「極ZERO」の販売を5月末の製造分で終了すると発表した。
税率が低い第三のビールと認められない恐れが出てきたため、7月15日に発泡酒として再発売する。

「極ZERO」は2013年6月に、世界初のプリン体ゼロ、糖質ゼロをうた って発売され、初年度は計画を6割上回る358万ケースを売り上げた。

プリン体は穀物の他、肉、魚、野菜など食物全般に含まれており、ヒトの体内でも生成、分解され る。
通常、プリン体は分解されて尿酸に変化し体外に排出されるが、尿酸量が排出能力を超え、体内に蓄積されると痛風の原因となるといわれている。
ビールや発泡酒に含まれているプリン体は麦芽由来で、通常、ビールには100mlあたり約5-10mg程度、発泡酒にはその約半分量が含まれている。

また、ビールのカロリーの1/3は糖質で、これが脂肪に変わる。(カロリーの2/3はアルコール)

主要ビールの成分(350ml缶当たり):

  カロリー アルコール分 糖質  プリン体
キリン一番搾り生ビール 143.5kcal 5.0%     9.45g 30.8mg
アサヒスーパードライ 147.0kcal 5.0% 10.5g 17.5〜21mg
サントリー モルツ 147.0kcal 5.0% 12.6g 29.4mg
サッポロ エビスビール 147.0kcal 5.5% 10.5g 38.5mg


「極ZERO」は、
麦芽・大麦・ホップとプリン体フリー原料を組み合わせ、工程の途中でプリン体を取り除くことなく世界初となる「プリン体 0.00」「糖質 0」を達成した。
 (栄養表示基準に基づき、100ml 当たり糖質 0.5g未満を「糖質ゼロ」と表記)

付記

サッポロビールは7月15日、発泡酒として「サッポロ 極ZERO」を発売した。
世界初となるプリン体 0.00、糖質 0 の2つのゼロはそのまま。

付記

サッポロは第3のビールとしてすでに売った分について指摘に沿った税率との差額115億円と延滞税1億円を追加で納めた。

しかし、その後の社内の検証で、第3のビールに間違いないという確信を得たとし、2015年1月26日付けでこの返還を求めた。
国税当局の判断が注目される。

付記

サッポロビールは2015年4月28日、追加納税していた酒税115億円の返還を求めていた問題で、国税当局から、返還しないとの通知を受け取ったことを明らかにした。理由は明らかにしていない。

付記

サッポロビールは2015年6月22日、「極ZERO」の酒税115億円を国税当局が返還しないと通知してきたことに対し、同社の工場がある北海道、千葉など5道県を管轄する国税局に異議を申し立てたことを明らかにした。

付記

国税当局は2015年9月24日までにサッポロ側の異議申し立てを棄却すると通知した。

付記 

2016年10月13日、国税不服審判所から棄却を決めた裁決書を受け取った。

付記

2017年4月11日、上記「更正をすべき理由がない旨の通知処分」の取り消しを求め、東京地方裁判所に訴訟を提起した。 

付記

2019年2月6日、東京地裁は原告の請求を棄却した。

古田裁判長は、製造工程や製造過程で採取されたデータを検討した結果、旧極ゼロは第三のビールに該当しないと判断した。判決は閲覧が制限され、詳細は明らかになっていない。
 

ーーー

ビール、発泡酒、第三のビールの定義と酒税(350ml缶当たり円)は以下の通りとなっている。

ビール   麦芽 2/3以上 アルコール分 20度未満 77.00
発泡酒    麦芽 2/3未満     下記以外 77.00
麦芽 重量比率 25/100〜50/100  アルコール分10度未満 62.34
麦芽 重量比率 25/100未満     アルコール分10度未満 46.98
〔第三のビール〕

その他の発泡性酒類
(ホップ又は苦味料を原料の一部とした酒類)

その他の醸造酒(発泡性)@ 糖類、ホップ、水及び政令で定める物品を原料として発酵させたもので麦芽を含まない。
(エキス分が2度以上のものに限る。)
28.00
リキュール(発泡性)@ 発泡酒にスピリッツを加えたもの
(エキス分が2度以上のものに限る。)
28.00

ビールは麦芽が2/3以上。
麦芽2/3未満が発泡酒となる。発泡酒は麦芽の比率で3つに分かれる。
第三のビールには、麦芽を含まないものと、発泡酒にスピリッツを加えたものがある。

ーーー

「極ZERO」の原材料は発泡酒+スピリッツ(大麦)で、サッポロビールではこれを「リキュール(発泡性)@」 としていた。
この場合、酒税は350ml当たり28円となる。

本年1月に国税当局より「極ZERO」の税率適用区分に関連し、製造方法に関する情報提供の要請があった。

同社では、当局の酒税法に関する法令解釈を確認し、資料、データの自主検証を行ってきた。
現時点では最終結論は出ていないが、「極ZERO」が「リキュール(発泡性)@」に該当しないこととなる可能性があるため、今回の結論となった。

新しく販売する発泡酒の場合、税率は
350ml当たり46.98円となり、約19円のアップとなる。
販売価格は350ml缶で 20―30円の価格上昇になるという。
 

製法のどの部分に酒類区分上の疑義があるのかについては「商品開発の機密なので言えない」としている。

「リキュール(発泡性)@」は「発泡酒にスピリッツを加えたもの」となっており、スピリッツをいくら入れるかの 規定はない。
スピリッツをどの工程で加えるか(発泡酒になった後かどうか)などが問題になると思われる。

サッポロビールでは、「極ZERO」が第三のビールと認められなかった場合、酒税の差額分の追加納付を求められる可能性があると発表した。
累計販売量から試算した差額は約116億円を見込んでいる。

付記

同社は6月20日、酒税の自主的な修正申告を発表した。

その後も国税当局から要請されている資料・データの検証作業を続けているが、国当局の酒税法に関する法令解釈に沿った形での事実確認には至っていない。
同社は「極ZERO」は「リキュール(発泡性)@」に該当するものと認識しており、今後もその方向で対応するが、財務的な追加負担軽減の観点(主張が否定された場合の延滞税など)から自主的に修正申告を行うこととした。

「極ZERO」の適用税率を「リキュール(発泡性)@」(350ml 当たり28円)から「発泡性酒類の基本税率」(同77円)として修正申告することにより、116億円の酒税納付額の差額(含む延滞税)が発生する見込みで、これを特別損失として計上する。

一般の発泡酒(麦芽25/100未満)の46.98円ではなく、77円を採用している。
極ZEROの成分は発泡酒にスピリッツ(大麦)となっており、後者を発泡酒が完成する前に投入したと看做されたと思われる。
酒税法では上記の「ビール」「発泡酒」「第三のビール」以外の製法で造られるビール類の税率を「ビールと同じ税率」としており、ビールの税率77円が採用された。
 

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酒税に関しては、日本酒を濃縮したものが「雑酒」とされ、税率が上がるケースを以前に紹介した。

2014/3/8   ゼオライト膜をつかった日本酒の濃縮



2014/6/9  石油業界に第二の産構法? 

6月7日付けの日本経済新聞は、茂木経産相のインタビュー記事とともに、「製油所、過剰解消へ再編 経産相が新制度で3年内に」との記事を掲載した。

昨年度の国内の石油精製能力は日量447万バレルだが、需要は332万バレルしかなく、各社は赤字経営が続くが、このままでは、過疎地などでの給油網の維持が難しくなる恐れや、都市部も含めて災害時の燃料供給が滞るリスクがあるとする。

経産省の構想は、まず、2013年12月4日に成立した「産業競争力強化法」 第50条に基づき政府が市場構造を調査し、その結果を踏まえ、今後3年を期限とした製油所の設備削減計画や、他社の製油所との統合案などを盛り込んだ再編計画を提出させるというもので、政府は税制措置や補助金も総動員して、各社の取り組みを後押しする。

合理化への取り組みが著しく不十分な企業には、経産相による勧告・命令や罰金(100万円以下)を科すことも検討するとしている。

日経は合わせて、コスモ石油と東燃ゼネラル石油が2014年度中に共同事業会社を設立し、コスモの千葉製油所と極東石油工業(東燃ゼネラル石油子会社)の千葉製油所を新会社に移し、2016年度までに石油精製能力を2〜3割削減すると報じた。

コスモは110千バレルと130千バレルの2系列、極東石油は152千バレル1系列である。

付記
両社は6月18日、両製油所を統合することにより、「国際競争力を持った国内トップクラスの製油所を目指す」との認識で一致したと発表した。本年中の基本契約締結を目指す。

付記

茂木経済産業相は6月10日の閣議後記者会見で、過剰供給構造の解消を目指す産業競争力強化法に基づき、石油業界の市場構造調査に乗り出す方針を表明した。
6月末をめどに石油製品の需給動向や製油所の供給能力を調査し、公表する。

ーーー

「産業競争力強化法」 はアベノミクスの第三の矢である「日本再興戦略」に盛り込まれた施策を確実に実行し、日本経済を再生し、産業競争力を強化することを目的とし、「創業期」、「成長期」及び「成熟期」の発展段階に合わせたいろいろな支援策により産業競争力を強化する。

産業競争力強化のためには、日本経済の3つの歪み、すなわち「過剰規制」、「過小投資」、「過当競争」を是正していくことが重要で、この法律は、そのキードライバーとしての役割を果たすものであるとしている。

同法第50条(調査等)は以下の通り。

政府は、事業者による事業再編の実施の円滑化のために必要があると認めるときは、商品若しくは役務の需給の動向又は各事業分野が過剰供給構造にあるか否かその他の市場構造に関する調査を行い、その結果を公表するものとする。


設備削減については、経産省は既に
「エネルギー供給構造高度化法」に基づく告示という形で、実質的に削減を強制した。

2010/7/7    エネルギー供給構造高度化法で重質油利用促す新基準、石油業界の再編圧力に
2014/3/14    エネルギー供給構造高度化法 処理期限

今回は、更なる設備削減と、他の製油所との統合を強制しようというものである。

既存の法律では強制は出来ないため、恐らく、「エネルギー供給構造高度化法」の改正か、この法に基づく新たな告示により実施することを考えていると思われる。
(同法では「
命令に違反した者は、百万円以下の罰金」となっており、上の記事に合致する)

統合の対象としては、同じ地区にある製油所を考えていると思われる。(単位:日量 千バレル)

 
地区   能力 エネルギー供給構造高度化法処理  
千葉 コスモ石油 240   統合の報道
東燃ゼネラル石油(極東石油工業) 152 2014/3 23千バレル削減を報告
出光興産 220    
富士石油 140 52千バレル削減  
川崎 昭和シェル石油(東亜石油) 65 昭和シェル扇町(120千バレル)停止  
東燃ゼネラル石油 268 67千バレル削減
分解能力 34.5千バレル増強
 
四日市 昭和シェル石油(昭和四日市) 260 休止分 50千バレル復活  
コスモ石油 112 43千バレル削減  
コスモ石油 100    
東燃ゼネラル石油 156    

 

当ブログは「エネルギー供給構造高度化法」に基づく告示という形での実質的な設備削減の強制を批判してきた。

2010/7/21 エネルギー供給構造高度化法は第二の産構法か?

産構法の場合は法律に基づく設備カルテルと共販会社設立であったが、申請により承認を得るものであり、強制ではなかった。

政府による市場調査は問題ないが、製油所の統廃合(当然、人員整理なども伴う)を強制するなどが許されるであろうか。
(第二次世界大戦中には
非軍需企業について企業整備令により法的強制力をもって企業の整理が行われた。)

日経のインタビューで、民間の経営への過剰介入ではないかとの質問に対し、経産相は以下のように述べている。

「事業の再編は企業の自主的な判断でしてもらう。
一方で石油産業の収益体質の改善は、国のエネルギー安全保障の根幹に関わる。

どの製油所が連携するかとか、どことどこが合併するかは当事者の決めること。
国は民間企業がみずから取り組む事業再編の環境整備をする。」

しかし、合理化への取り組みが著しく不十分な企業には、経産相による勧告・命令や罰金(100万円以下)を科すことも検討するとしており、明らかな過剰介入である。

なお、産業競争力強化法では公正取引委員会との関係について、以下の通り述べている。

・主務大臣は、当該認定に係る申請書の写しを公正取引委員会に送付するとともに、あらかじめ公正取引委員会に協議するものとする。

・協議に当たっては、産業競争力の強化を図ることの必要性に鑑み、所要の手続の迅速かつ的確な実施を図るため、相互に緊密に連絡するものとする。

 

参考  産業競争力強化法の内容


2014/6/10 Qatar に発泡ポリスチレン工場建設、湾岸諸国の住宅断熱が主目的

Ineos は5月29日、EPS Qatar 社に発泡ポリスチレン技術 (INEOS One Step EPS Suspension process) を供与すると発表した。

EPS Qatar はQatarで不動産事業を営むHitmi Ali AlHitmi が設立した会社で、QatarのMesaieed Industrial City に第一期として2017年末までに110百万ユーロを投じて EPS 年産 50千トン設備を建設、3〜5年以内に100千トンに倍増するとともに、近い将来、原料のSMも建設するとしている。

建設費の3割はAlHitmi が負担、残り 70% はQatar Investment Bankが融資する。

製品はGCC各国(湾岸協力会議:アラブ首長国連邦・バーレーン・クウェート・オマーン・カタール・サウジアラビア)、北アフリカ、トルコで販売する。

この工場はMENA(北アフリカ・中東)地域で最大のEPSプラントとなる。

GCC地域のポリスチレン能力は以下の通り。(千トン)

    PS EPS  
Saudi Arabia Petrokemya 140 40 Sabic 100% 
原料SMはSADAF (SABIC/Shell)
Saudi Polymers 200   Chevron 35%/National Petrochemical 65%
原料SMはJubail Chevron Phillips
Qatar EPS Qatar   (50) 原料SMは当面は購入

 

GCC各国の主要都市では住宅建設がブームとなっている。現在は重要視されていないが、家庭でのエネルギー消費が大きなシェアを占めるため、今後、住宅の省エネが必要となるのは必至である。

不動産事業を営むHitmi Ali AlHitmi はここに目をつけ、EPSの製造に乗り出した。

EPSはGCC各国と北アフリカの将来にとり非常に重要な製品であるとする。

「家庭でのエネルギー需要は増え続けており、これに対応できなくなる。省エネを考えることが必要だ。
 3 bedroom + living room の住宅では4つのエアコンが必要だが、EPSで断熱した家の場合は2つのエアコンで済む。」

これを立証するため、AlHitmi は昨年3月にDohaに全く同じ家を2軒(1軒はEPSで断熱、1軒は断熱無し)を建てた。冷房で50%の省エネを期待している。

 


2014/6/11 生化学工業、椎間板ヘルニア治療薬を開発 

生化学工業は2013年1月、腰椎椎間板ヘルニアを適応症とするSI-6603(一般名:コンドリアーゼ)について厚生労働省に製造販売承認申請を行ったと発表した。

付記 2018年3月23日に承認、5月22日に薬価収載され、8月1日に科研製薬より発売された。

同社は本年6月4日、日本における腰椎椎間板ヘルニアを対象とするコンドリアーゼの第V相臨床試験結果を発表した。

163名の患者を対象として行われた多施設共同プラセボ対照二重盲検比較試験で、顕著な下肢痛の改善効果が認められた。
下肢痛が50%以上改善した症例の 割合は72.0%で、身体的な機能障害および「生活の質」(QOL)の評価スコアの変化量も有意に大きく、機能障害およびQOL の改善が認められた。

試験責任研究者の北里大学北里研究所病院副院長は、「コンドリアーゼの下肢痛改善効果はヘルニア摘出術と同程度で、大きな副作用も生じずに忍容性も良好であった。保存療法無効の腰椎椎間板ヘルニア患者に対する有力な新規治療法となり得る」と述べ た。

腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板の中心部分にある髄核や外側の線維輪の一部が突出することで脊椎周辺の神経を圧迫し、痛みやしびれを引き起こす疾患である。



ヘルニア(hernia)とは、体内の臓器などが、
本来あるべき部位から脱出した状態を指す。

  鼠径ヘルニア=脱腸
  臍ヘルニア=でべそ

治療法には、手術をする方法と、保存療法(鎮痛剤薬、神経ブロック注射、温熱療法、牽引療法等)がある。
現在、腰椎椎間板ヘルニアについて根本治療となる薬物療法は他に存在しない。

コンドリアーゼは、髄核の構成成分であるグリコサミノグリカン(GAG:コンドロイチン硫酸やヒアルロン酸等)を特異的に分解するコンドリアーゼという酵素を利用した注射薬で、椎間板内に直接投与することにより、GAGを分解して髄核を縮小させることで、神経への圧迫を減少させる効果が期待される。

タンパク質を分解しないため、血管や神経などの周辺組織に影響を与えないとされる。


ーーー

なお、椎間板ヘルニアや黄色靱帯(脊柱管の後方にある椎弓の間を結ぶ靱帯)が厚くなることで脊柱管を圧迫して狭くし(狭窄)、それによって脊柱管のなかの神経が圧迫を受けるのが脊柱管狭窄症である。


2014/6/12 サウジの石油化学 2社の合併 中止 

2013年12月にサウジの石油化学会社  Saudi International Petrochemical Company (通称 Sipchem) と Sahara Petrochemical Company の2社は両社の合併に向けMOUを締結した。2013年6月から交渉してきたもの。
SipchemがSahara株主に新株を発行し、SaharaがSipchemの子会社になるという計画である。

欧州と中国の石化需要が伸び悩むなか、SABICは米国での投資機会を狙っている。
両社は合併により、世界の石油化学産業での主導的地位を高め、効率を高め、更なる成長に向け強固な基盤をつくることを目指した。

2014年上期には合併契約の調印を目指した。

サウジ政府のGeneral Retirement Organization とAl Zamil 一族のAl Zamil Holding Group がSipchem とSahara の大株主となっている。

しかし両社は6月8日、合併中止を発表した。
両社とも合併が株主にとり最善であるとしつつ、両社が親会社・子会社として存続しつつ、業務の統合を行うというやり方が現在の法律の枠内では難しいとの結論に達したとしている。

交渉は延期するが、将来、異なった仕組みを考える可能性はあるとする。

サウジのM&Aに関する規定は2007年に Capital Market Authority により導入された。
その後では上場会社の統合は2009年の食品グループのAlmarai によるHail Agriculture Development Companyの統合だけである。

中東では、大株主が利権を失うのを嫌がり、合併に反対することが多いとされる。

付記 2018年12月、両社は合併契約を締結した。

ーーー

Saudi International Petrochemical Company (Sipchem)   は1999年に設立された。

主要株主は下記の通りだが、2006年以降、Saudi Stock Marketに上場している。

  Zamil Group Holding Co.(サウジの投資会社)
  Ikarus Petrochemicals Holding Company (
Kuwait Stock Exchangeに上場、中東の石油化学に投資)
  Public Pension Agency
  Olayan Financial Co. Ltd.

Sahara PetrochemicalはZamil Group が中心になり設立、Saudi Stock Marketに上場している。

両社の株主のZamil Group は他にも石化事業を行っている。

サウジには他に、National Petrochemical Industrialisation Co. (通称 Tasnee Petrochemicals) があり、TasneeとSaharaは合弁のTasnee & Sahara Olefinsを持っている。

Tasneeの株主は以下の通り。

    National Industrialisation Company (NIC) 51% ワリード・ビン・タラール王子の投資持株会社が筆頭株主
    Gulf Investment Corporation (Bahrain, Kuwait, Oman, Qatar, Saudi Arabia, United Arab Emiratesの政府が均等出資) 
    
Saudi Pharmaceutical & Medical Appliances Co. (SPIMACO)
    National Industries Group (NIG), Kuwait,
    Al-Olayan Financing Co., Riyadh, Saudi Arabia

各社の事業は以下の通り。(能力:千トン)

1)Sipchem

社名 株主 製品 能力
International Methanol (IMC) Sipchem 65%
 Japan-Arabia Methanol 35%
メタノール  1,000
International Acetyl (IAC) Sipchem 76%
 Ikarus Petro 11%
 Helm Arania 10%
 政府 3%
酢酸            
無水酢酸     
460
50
International Vinyl Acetate (IVC) VAM              330
International Gases (IGC) Sipchem 72%
 National Power 25%
 政府 3%
CO               345
Sipchem Chemicals (SCC) Sipchem 95%
Sipchem Marketing 5%
酢酸エチル・ブチル  100
International Polymers (IPC) Sipchem 75%
 Hanwha Chem 25%
EVA/LDPE  
EVA film
200
Gulf Advanced Cable Insulation (GACI) Sipchem  50%
 Hanwha Chem 50%
架橋ポリエチレン   20
International Diol  (IDC) Sipchem 53.9%
 その他
無水マレイン酸
1,4ブタンジオール
その他
 

2) Sahara Petrochemical

社名 株主 製品 能力
AL WAHA Petrochemicals Sahara 75%
 Basell   25%
プロピレン
 (プロパン脱水素)
PP    
450

 450
SAHARA & Ma`aden Petrochemicals Sahara 50%
 Ma'aden 50%
(電解)ソーダ 
EDC 
250
300
Tasnee & Sahara Olefins
(T&S)
Sahara 32.55%
 Tasnee  60.45
 other  7%
   
  Saudi Ethylene & Polyethylene   T&S 75%
 Basell 25%
エチレン 
HDPE 
LDPE 
プロピレン
1,000
400
400
285
Saudi Acrylic Acid
(SAA)
T&S 65%
Sahara 22%
 Tasnee 13%
   
  Saudi Acrylic Monomer   SAA 75%
 Dow  25%
アクリル酸  250
Saudi Acrylic Polymer SAA 75%
 Evonik 25%
高吸水性樹脂 80
Saudi Butanol SAA 33%
 Saudi Kayan 33%
 Sadara 33%
n-ブタノール
iso-ブタノール
330
 11

  以上が統合案の対象であった。
 

3) Zamilの他の事業

社名 株主 製品 能力
Gulf Stabilizer Industries Zamil
 Chemtura
酸化防止剤 21
Arabian Amines Co. (Aminat) Zamil  50%
 Huntsman
アミン類 30
Saudi German Company
     For Non-woven Products
Zamil
 Al-Rajhi
PP Spun bond  
Bischof + Klein Middle East Zamil
 Bischof + Klein
flexible pacakging  
Al Tawfiq Plastic Co. for Plastic &
    Woven Sacks Industries
  PP woven sacks  

4) Tasnee

社名 株主 製品 能力
Tasnee & Sahara Olefins Company 上記
Saudi Polyolefins Co. (SPC) Tasnee 75%
 Basell 25%
プロピレン
PP
450
720
National Titanium Dioxide  (Cristal) Tasnee 66%
  Gulf Investment 33%
  一般投資家  1%
酸化チタン  
  未定   Tasnee    32.5%
 National Titanium Dioxide 32.5%
  東邦チタニウム 35.0%  
スポンジチタン  
Advanced Polyol Tasnee  50%
  Saudi Advanced Industries  50%
Polyether polyol 120
Clariant Masterbatches (Saudi Arabia) Tasnee  40%
  Clariant   60%
masterbatch  

 


2014/6/13 欧州委員会、Apple等の法人税を調査 

欧州委員会は6月11日、Apple、Starbucks、Fiat Finance and Trade 3社の法人税に関して、それぞれアイルランド、オランダ、ルクセンブルクの各国税務当局が下した判断について、本格的な調査を開始したことを明らかにした。

企業を対象とした調査ではなく、各国の税制が問題ないかどうかの調査である。

欧州委員会では、これら企業の税金が大幅減額になった可能性があるため、これら企業に対して適用する税制の優遇措置がEUで定めている「国の補助」の規則に違反していないか調べる。
EUでは加盟国政府や自治体などによる国内企業に対する補助・支援は、域内の他国企業との公正な競争を阻害してはならないとする規則がある。

欧州委は税務当局と個別企業との間の優遇措置などを規定した「税務取り決め」自体は問題ではないが、一部の企業に特別な利益を与えることにつながっていると懸念している。

欧州委のJoaquín Almunia 競争政策委員は「大手の多国籍企業は応分の納税をすることは非常に重要だ」と指摘、Algirdas Šemeta税制担当委員も「応分の納税は単一市場や財政の持続性、企業の公平な競争に欠かせない」と訴えた。

最終的にEUの規則に違反していると判断すれば、加盟国に対する制度の是正に加え、当該企業に追加納税を求める可能性もある。

これに対し、Appleはアイルランド当局から特別な措置を受けてはいないと表明、アイルランド政府も公的支援ルールに抵触していないと確信しているとコメントした。

付記

EUは9月30日、2014年6月11日付けのアイルランド向けのレターを公表した。Appleに対する課税の疑惑を詳細に述べ、今後調査を続けることを伝え、資料の提出を要求している。

付記

EUは10月7日、ルクセンブルグのAmazon への優遇策についても正式に調査を始めたと発表した。

ーーー

Appleに関しては、米上院の昨年の調査で、税務上の居住実績がないアイルランド法人を通じて何百億ドルの利益について課税を回避していたことが明らかになっている。

アップルは特許権の使用料などの名目で、アイルランドの子会社に世界各国で稼いだ利益の多くを移転。米本土の法人税率は35%だが、アイルランドは12.5%と低い。
さらにTax Havenとして有名なカリブ海の英領バージン諸島の子会社に利益を移し、納税を大幅に抑えている。
2011年には世界全体で342億ドルの利益を挙げたが、支払った税は10%未満の33億ドルにとどまる。

これにより、英国やフランスで税金の支払いがほぼ全面的に回避された。

New York Times (2012/4/28) はAppleなどの節税手口を ‘Double Irish With a Dutch Sandwich’ (アイルランド2社とオランダ社のサンドイッチ)と呼び、下図により説明している。

技術の権利

米本社とTax Havenの子会社との間で Cost-sharing agreementを結び、安い価格で権利をTax Haven子会社に移す。

米国需要家向け販売

米国での販売利益は通常35%の法人税が課されるが、多額のロイヤリティをアイルランド会社に払い、米国の税金を減らす。
アイルランド会社はロイヤリティ収益をバージン諸島の親会社に送ることでアイルランドでは免税となる。
バージン諸島はTax Havenのため、課税はない。

海外需要家向け販売

販売利益は第二のアイルランド会社で課税される筈だが、アイルランドとオランダの課税協定で、オランダ会社を通すことでアイルランドでは課税されない。

オランダ会社は販売利益を第一のアイルランド会社に送り、第一のアイルランド会社はこれをバージン諸島の親会社に送ることでアイルランドでは免税となる。
バージン諸島はTax Havenのため、課税はない。

ーーー

今回は問題となっていないが、Googleも同様である。

海外事業については権利(無形固定資産)をアイルランド子会社(バミューダで管理するためアイルランドでは非居住者となり法人税免除)に安い対価で移し、アイルランド会社が事業を行うが、ライセンス収入はオランダ子会社経由でアイルランドに移すことで源泉税を免れている。

Jeffrey Sachsの“The Price of Civilization”によれば、2006年に米国税庁(IRS) がGoogleと秘密協定を結び、この扱いを認めたという。

Starbucksは 英国で積極展開しているにもかかわらず、ほとんど納税していないとして批判が高まった。
同社は2012年の英議会調査に対し、オランダで非常に低い税率を享受する待遇を受けたと公表している。

Starbucksの欧州子会社のロイヤリティは欧州本部のアムステルダムのStarbucks Coffeeに支払われるが、これについてStarbucksはオランダ政府との間の交渉で税務上特別扱いすることになっている。

2012/12/14    スターバックスの移転価格税制問題

ーーー

2013年6月に北アイルランドで開かれたG8サミットは、首脳宣言に多国籍企業の税逃れを防ぐための国際協調などを盛り込んだ。

経済協力開発機構(OECD)と連携し、「多国籍企業がどこで利益を生み、税を払っているか」を把握する仕組み作りを進めることで合意した。

 


2014/6/14 ウクライナとロシアの天然ガス供給での対立続く 

ロシアがウクライナへの天然ガスの供給を代金の滞納を理由に停止すると警告している問題で、6月11日、両国とEUを交えた3者による協議が開かれたが、ガスの価格などを巡って対立が続き、結論は来週に持ち越されることになった。

ロシアのGazpromは本年4月1日、ウクライナ向けのガス価格を3月までの1000m3当たり268.5$から385.5ドルにすると発表し、4月3日には更に485ドルに引き上げた。
ウクライナはこれに反発、代金を滞納している。ウクライナはまた、
国際仲裁裁判所に仲裁を要請する考えを示している。

3者協議では、ロシアはウクライナへのガスの供給を停止する期限を6月16日まで先延ばしして協議を継続するとしたうえで、天然ガスの輸出価格をこれまでの主張の1000m3当たり485ドルから100ドル下げ、385ドルにすると提示した。

ロシア側は、385ドルはフェアな価格であり、欧州諸国向け価格と同じであるとし、ベストで最終の提案であり、これ以下での契約を結ぶ積もりはなく、欧州がロシア提案価格より安い価格でウクライナに供給すればよいとしている。

ロシアはウクライナの代金滞納を理由に今後の供給について前払いを要求していたが、ウクライナが6月16日までに20億ドル、6月26日までに残りを払えば、前払いを要求しないと伝えた。

滞納額については両国で認識に差があるが、ロシアは今回の100ドル/1000m3の割引を折り込めば、滞納額はこれまでの30億ドルから23.53億ドルに減るとしている。

これに対しウクライナ側は、依然として価格が高いうえに、ロシア政府の政治的な判断で100ドルの割引が取り消される可能性があるとして、提案を拒否した。
ウクライナは268.5$での供給を要求するとともに、クリミヤ統合の補償も求めている。

EUのエッティンガー委員は、6月16日の期限までに合意を得るため、引き続き電話などでの協議を続けるとし、「交渉は困難であり、さらなる妥協が必要だ」と述べて、合意へ向けた双方の柔軟な姿勢を促した。

付記

ロシア、ウクライナ、EUは6月16日に協議を行ったが、物別れとなった。

ロシアは385ドルを提示
ウクライナは326ドルを要求
EUは、ウクライナが滞納金のうち10億ドルを支払う代わりに、夏は300ドル、冬は385ドルに暫定的に引き下げを提案

ロシアはウクライナが滞納金の一部 19億5千万ドルを16日までに払わなかったとし、料金前払い制に移行、供給停止に踏み切った。
供給停止はウクライナ向けだけで、欧州向けは供給する。

ーーー

ロシアの天然ガス価格の推移は下記の通り。

  JOGMEC資料を補正

天然ガスの1000m3は40MMBtuに相当するため、485$/1000m3は12.125$/MMBtuで、値下げ後の385$は9.625$/MMBtuになる。

ロシア側の主張の通り、EU向けとほぼ同じであり、日本の輸入LNG価格と比べるとはるかに安い。

ウクライナはこれでも高すぎるとし、以前の268.5$を要求しているが、これは6.7125$/MMBtuに相当し、政治価格であり、市場価格ではない。

背景は以下の通り。

2013年のウクライナ向け天然ガス価格は401$/1,000m3であった。

ウクライナは2013年に欧州連合との政治・貿易協定の仮調印を済ませたが、ロシア寄りの姿勢を見せるヤヌコビッチ大統領は2013年11月、EUとの関係を強化する「連合協定」の締結を見送り、ロシアとの協力関係を密にする方針に転換した。

ヤヌコビッチ大統領は2013年12月17日にモスクワでプーチン大統領と会談、ロシアはウクライナに対し150億ドルの金融支援を実施し、天然ガスの価格を2014年1月から約3分の1 引き下げ、268.5$とすることで合意した。

しかし、2014年に入り、反政府デモの結果、2月22日にヤヌコビッチ大統領が首都キエフを脱出、政権は崩壊、新政権は欧州寄りとなった。

この結果、ロシアは4月から大幅値上げを行った。

2014/4/4 ロシアGazprom、ウクライナ向けガス価格を大幅に引き上げ 

2013年のウクライナ向け天然ガス価格(401$/1,000m3)自体がEU並みの市場価格であり、EUとの連合協定締結を見送り、ロシアとの関係を密にする代償として、政治的に引き下げたに過ぎない。ロシアとの関税同盟に加盟しているBelarusも政治価格の適用を受けている。

ウクライナが反ロシアに転じた今、親ロ国向けの政治価格は期待できず、市場価格で買うのが当然であると思われる。


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