2006-5-1

ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  2006-5-1 http://blog.knak.jp
 



2015/1/19 メキシコ湾原油流出事故の責任流出量 認定 

2010年4月の海洋掘削プラットフォームDeepwater Horizon rig での大量の重油流出事故についての米政府による水質浄化法(Clean Water Act)に基く民事訴訟の裁判で、New Orleansの District Court のCarl Barbier 判事は2014年9月4日、BPに「重大な過失」(gross negligence )と「故意の不法行為」(willful misconduct)があり、これが大量流出の原因となったとし、BPは水質浄化法によるバレル当たり4,300ドルの罰金に値するとの判決を言い渡した。

責任割合について、判事は、BPが67%、Transoceanが30%、Halliburton が3%と認定した。

2014/9/8    2010年の原油流出事故、「BPに重大な過失」と認定


第二段として、Carl Barbier 判事は2015年1月15日、責任流出量を319万バレルと認定する判断を下した。罰金額は1月20日以降に決定される。

実際の流出量は400万バレル以上であるが、回収努力を考慮し、責任流出量を319万バレルとした。

政府は流出量を490万バレルとし、そのうち420万バレルはBPの責任だとしていた。
他方、BPは流出量を245万バレルとしていた。

昨年9月の判断では、BPに「重大な過失」(gross negligence )と「故意の不法行為」(willful misconduct)があり、これが大量流出の原因となったとした。
今回、判事は、BPは事故の収拾に当たっては「重大な過失」はなかったとした。

水質浄化法では原油の流出量 1バレルに対して1,100ドルの罰金となっているが、重大な過失による場合は、罰金は4,300ドルとなる。
流出量が319万バレルとすると、重大な過失での罰金額は137億ドルとなる。

政府は昨年裁判所に提出した書類で、BPに160億ドル〜180億ドルの罰金を求めた。
一方、Anadarkoに対しては10億ドルを求めた。

罰金額の決定に当たっては、下記の点が考慮される。

・被告側の流出量を抑える努力
・法律違反の重大性
・被告側の流出量を抑える努力の内容、程度、効果
・罰金が被告に与える経済的影響
・違反により被告が得る利益(もし在れば)
・有責性の程度
・同様事故での罰金
・以前の違反の事例

責任割合について、判事は、BPが67%、Transoceanが30%、Halliburton が3%と認定しているが、うち、Transoceanは政府と和解済み。

BPの責任分には井戸のOwnerとしての責任もあり、事故時にOwnerであったAnadarkoと三井石油開発も関係する。うち、三井は政府と和解済み。

Ownerの責任については、2012年にCarl Barbier 判事が水質浄化法で罰金を支払う責任があるとした。
BPとAnadarko は事故は
Transoceanのriser pipeのせいであるとして反論した。(三井は政府と和解済み)
しかし3人の判事のパネルはこれを却下、更に控訴裁も2015年1月9日、7対6の僅差で却下した。

これらを全て勘案して、罰金額が決定されることとなる。

Operator 責任比率 Owner 出資比率 水質浄化法責任
BP 67% BP 65%  
Anadarko 25% @判事「Ownerとしての責任のみ」
A政府は10億ドルを求める。
(2014/12)
Mitsui 10% 2012/2/20  メキシコ湾原油流出事故で三井石油開発が米政府と和解
  罰金 70百万ドル+環境保全 20百万ドル
Transocean 30%   2013/1/8 Transocean Deepwater Horizon 事故で罰金14億ドル支払い
Halliburton 3%    

 


2015/1/20   オバマ大統領、富裕層への課税強化を提案

オバマ米大統領は1月20日に行う2015年の一般教書演説で、富裕層が保有する株式などの資産課税を強化する方針を打ち出す。

White House は1月18日、下記の発表を行うとともに、これについてのFact Sheet を発表した。

米国の経済復興はミドルクラスの努力のおかげである。

ミドルクラス家族に役立つ、より簡単な、より公平な税制が必要だ。

一般教書演説に先立ち、大金持ちや大企業が税金を免れている抜け道を塞ぎ、それをミドルクラスが21世紀経済での地位を強化する手助けに使うという計画を発表した。

改善案は、
1)相続税の抜け穴を塞ぎ、金持ちに相続資産への税金を支払わせる
2)キャピタルゲインタックスの強化:最高税率をReagan大統領時代の28%に戻す。
3)巨大金融機関の仕事の仕方の改善:借入金へのFeeの設定

増税分の使い道は下記の通り。
1)共稼ぎ家族(育児や老人介護などの負担が大きい)への新しい税額控除
2)子育て支援
3)教育支援
4)退職のための貯蓄支援

米連邦準備理事会のJanet Yellen 議長は2014年10月17日、ボストン連邦準備銀行が開催したカンファレンスで講演し、「所得や富の不平等は100年ぶりに最高レベルに近づいている」とし、「米国で不平等が深刻化していることは、大変懸念すべきことだ」と 述べた。

2014/10/24 Janet Yellen 米連邦準備理事会議長、米国の不平等の深刻化を懸念 

2013/10/23 米国の政治・経済の問題点

大統領は、「1%対99%」に象徴される歴史的な水準の米経済格差を是正する一方で、ウォール街へのけん制強化でリベラル色を鮮明にする。

ただ、連邦議会上下両院の多数を占める野党・共和党の反発は確実で、実現の見通しは険しそうだ。

ーーー

米国では国民のたった1%が全所得の25%を得ている。
1980年代初めには10%程度に過ぎなかったが、その後、急増した。Reagan大統領の時代である。



今回の提案の1)と2)は金持ち優遇の税制の改正である。

1)Trust fund loophole

  キャピタルゲイン税制には問題があり、税率を上げるだけでは解決しない。
  米国には(相続税ではなく)遺産税の制度はあるが、大きな抜け穴があり、大金持ちは実質的に課税を免れている。

最大の抜け穴は “stepped-up basis” と呼ばれるもの。
大きな含み益をもつ株式をTrust に入れておくと、無税で相続できるだけでなく、相続時に相続株式の簿価が時価に
“stepped-up”され、売却しても売却益がゼロとなるため課税されない。

10百万ドルで取得した株が50百万ドルに値上がりした場合、売却すれば40百万ドル分が課税される。
しかし、Fundに入れておくと、相続した時点で株式の取得価額は10百万ドルではなく 50百万ドルとみなされるため、相続人は売却しても課税されない。贈与の場合も同じ。

FacebookのMark Zuckerberg CEOGoldman SachsLloyd Blankfein CEOなど、企業経営者など何百人もが使っていることはSECへの届け出資料が示しており、連邦税逃れの規模は2000年以降で1000億ドル以上に上るかもしれないとされる。

2)Capital gain tax

 米国のCapital gain tax は、一般所得の額に応じて決まるが、最高税率は2012年までは15%に過ぎなかった。
 庶民は一般所得が中心だが、大金持ちはCapital gainの割合が大きく、この税率が低いのは大金持ちを利する。

    ヘッジファンドマネージャーは通常、管理報酬と成功報酬を受け取るが、「管理報酬は預かり資産の2%、成功報酬は預かり資産の上昇幅から20%」が通常である。
 
IRSのルールで、成功報酬はキャピタルゲインとされ、納税額はきわめて少ない。

最高税率は Carter 時代に35%から28%に下がり、Reagan時代に20%になった。
一旦、28%に上がったが、Clinton時代に20%に、Bush時代に15%に下がった。

米国の著名な投資家Warren Buffett は自身の2010年の税率が17.4%で、同氏の秘書の約半分ということを知り、2012年11月にNew York Timesに寄稿し、年収100万〜1000万ドルの富裕層については30%、1,000万ドル以上は35%の税率を適用するよう主張した。(“Buffet rule”)

2013年に最高所得層のみ20%に引き上げた。これに所得25万ドル以上の層のみにAffordable Healthcare Actにより3.8%が追加された。

課税収入
(夫婦合算:2015)
Ordinary Income Tax Rate Long-term Capital Gains Tax Rate
 
2008-2012 2013- Obama提案
$0〜$18,450 10% 0% 0%  
$18,451〜$74,900 15%
$74,901〜$151,200 25% 15% 15%  
$151,201〜$230,450 28%
$230,451〜$250,000 33%
$250,001〜$411,500 15%+3.8%  
$411,501〜$464,850 35%
$464,850以上 39.6% 20%+3.8% 28%

今回の提案は、最高層のみ、Reagan時代の28%に戻すというささやかなものである。

Fact sheet でも、28%になるのは夫婦の所得が約50万ドル以上の層だけであると説明している。

以上の2つについて、Fact sheet は以下の通り説明している。

・影響はほとんどがトップの1%の人だけである。

 トップ1%の人への影響が99%で、所得200万ドル以上のトップ0.1%への影響が80%以上である。
 それでも金持ちのCapital gain の税率は低い。但し、全く税金を払わずに富を蓄積するのは出来なくなる。

・税金の不公正の是正である。

・カネを投資に
 “stepped-up”システムでは税金がかからないため、何世代もカネを貯める傾向がある。このインセンティブを失くし、成長のためにカネを使わせる。

・ミドルクラスは保護される。

夫婦の場合、二人とも死ぬまでは遺産税はかからない。
夫婦で20万ドル(単身では10万ドル)までのCapital gain は遺産税はかからない。
上記に加え、自宅については50万ドル(単身は25万ドル)が免税となる。
高価な美術品などを除き、衣類、家具などの資産は免税である。

 中小企業についても、遺産税支払いのために事業を売却するなどのことはない。

相続した個人経営の事業は、事業が売却されない限り、課税されない。
個人経営の事業の場合、15年分割の税支払いのオプションもある。 

3)巨大金融機関へのFee

巨大金融機関(500億ドル以上の資産を持つ約100社)の負債に0.07%のフィーを徴収する。

銀行が多額の借入金を積み上げて危うい投資に動かないようにする狙いで、この案は金融機関にExcise tax を課するという共和党のDave Camp 元歳入委員長の税制改革案に沿ったものとしている。

ーーー

米国の金持ち優遇税制はひど過ぎ、Janet Yellen 議長も「大変懸念すべきことだ」とし、Warren Buffett も金持ちを増税せよとしている。

しかし、これを是正しようという動きには反対が多いのは不思議である。

Robert Reichはその著 “Aftershock”で、米国の不況の原因は富の偏重であるとし、このまま放置すると国民の反乱が起こり、大変なことになるとしている。

2013/10/23 米国の政治・経済の問題点


2015/1/21   宇部興産、Dow Chemical とのリチウムイオン二次電池向け電解液合弁会社を子会社化

宇部興産は1月16日、リチウムイオン二次電池向け電解液事業をさらに強化するため、Dow Chemical との50/50JVのAdvanced Electrolyte Technologies LLC(AET)を子会社化したと発表した。

今回、出資比率を70%としたが、2015年3月末には80.5%とする予定。この時点でDow出資は19.5%となり、持分法対象から外れる。
実質的にはDowの離脱だが、後述の通り、AETの米国と中国の工場はDow の工場内にあるため、出資を残したと思われる。

宇部興産では、今回の子会社化は、AETと宇部興産の電池材料事業との一体運営を強化し、事業の更なる拡大を図っていくものとしており、今後、需要増が見込まれる車載用リチウムイオン二次電池向けを中心に、研究開発・生産・販売等でのシナジーをより一層発揮することで拡販やコストダウンを推し進めるとしている。

ーーー

宇部興産は2011年7月、Dow Chemical との間でリチウムイオン二次電池向け電解液の製造及び販売等を行う合弁会社を設立することで合意したと発表した。

宇部興産は、リチウムイオン二次電池の主要四部材のうち、電解液とセパレーターを事業化している。

電解液事業については、独自の有機合成技術を用いた高純度溶剤、炭酸ジメチル(DMC)等をベースに電解質を混合したリチウムイオン電池用電解液「ピュアライト®」を販売している。

同社は堺工場年産能力1万トンのプラントを持つが、民生用携帯機器に加え、今後、ハイブリッド自動車や電気自動車などの車載用途をはじめとして、蓄電用途や産業用途などへの応用も期待され、大幅な需要の増加が予想されているため、グローバルな生産・販売体制を早急に構築することが不可欠であると判断し、Dowとの合弁会社設立を決めた。

Dow Chemical は韓国最大のリチウム電池メーカーKokam Engineering の米国子会社、投資会社のTownsend Ventures, LLC、SAIL Venture Partners と組んで、合弁会社Dow Kokam を設立、リチウム電池を製造している。

2009/5/27 ダウ、ミシガン州にリチウム電池工場

これとは別にDow Energy MaterialsがNickel-Manganese-Cobalt (NMC) リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)の正極材料を製造している。

2011年12月にAdvanced Electrolyte Technologies LLC(AET)が設立された。
宇部興産は、電解液の技術を合弁会社にライセンスし、合弁会社は順次、米国・中国・欧州に電解液の製造設備を有する100%子会社を設立することを決めた。

(米国) 

2011年12月、AET設立と同時に同社の米国子会社Advanced Electrolyte Technologies (USA) LLCが設立された。
同社はDow Chemical のミシガン州Midland工場内に年産5,000トンの工場建設に着手した。

(中国) 

2012年6月、AET Electrolyte Technologies (Zhangjiagang) Companyが設立された。
江蘇省張家港市のDow Chemical の工場内に年産 5,000トンの工場建設に着手した。宇部技術で原料の炭酸ジメチルから生産する。

(欧州)

2012年6月、スペインにAdvanced Electrolyte Technologies LLC を設立した。

宇部興産は電解液の開発体制を整えるため、2011年にUBE Chemical Europe S.A.のCastellon 工場で分析装置や小ロット電解液の調合設備を稼動させたが、これを引き継いだ。
デュッセルドルフに販売事務所を設け、
欧州市場向けにサンプル出荷を始めた。

日本での生産・販売は宇部興産が行うが、日米中の合計能力は20,000トンとなる。

ーーー

中国工場は2013年6月に営業運転を開始した。

米国工場も2013年3月に工場は完成した。

しかし、EV市場拡大の遅れにより米国の電解液需要が当初見通しを大幅に下回っているため、2014年2月の報道では、工場稼動を当面見送るとしていた。(現時点での状況は不明)


リチウムイオン電池の各材料の競争は激化している。

 


2015/1/22 伊藤忠商事、タイのCPグループと共同で中国中信集団と戦略的業務・資本提携 

伊藤忠商事は1月20日、タイのCharoen Pokhand Group (CP) 及び中国最大の政府系企業グループ「中信集団」(CITIC Group) の3社間で戦略的な業務・資本提携を行うと発表した。

伊藤忠は下記の通り、両社とそれぞれ提携しているが、今回、3社間で戦略的な業務・資本提携を行うもので、伊藤忠とCPが共同でCITICグループの中核企業「中国中信」(CITIC) に約20%出資する。出資金額は合計で約1兆2040億円で、伊藤忠の約6千億円の投資は日本企業の対中出資としては過去最大となる。

中信集団は、金融から不動産、資源開発まで手がける中国最大の政府系企業グループで、伊藤忠は今回の提携により、成長が見込める食料事業や活発化している商業施設の開発などの不動産事業を一段と強化したい考え。
中信集団としても、今回の提携を通じて海外ビジネスを加速させるねらいがあるものとみられる。

ーーー

報道では、日本の総合商社の出資額も、中国の国有企業への外国企業の出資額もいずれも過去最大という異例の巨額投資が実現するのには、習近平指導部の強い意向があるという。

日中関係の悪化を受けて、日本から中国への直接投資実行額は2年連続で減少しているが、習指導部としては、海外企業の対中投資を再び増やす呼び水として、また、国有企業改革の目玉として、今回の出資を後押ししており、伊藤忠に決断を迫っていたという。

伊藤忠は丹羽宇一郎前会長が中国大使を務めるなど中国政府と関係が深く、タイのCPグループも習政権と近いとされる。

ーーー

伊藤忠は1972年に総合商社では初めて、中国から友好商社に指定された。

2011年4月 に中信集団との間で幅広い事業分野での提携検討を目的とする「包括戦略提携協議書」を締結するとともに、第1号案件として、CITICグループ傘下の金融事業会社であるCITIC International Assets Managementに25% 出資した。

協業可能性として、中国国内や金融事業分野に限定せず、全ての地域及び幅広い分野において実施するとし、下記を想定した。
- 中国における中間所得者層拡大を見据えたリーテイル金融分野における共同取り組み 
- 日中間クロスボーダーM&A及び日本企業の中国進出サポートに関するアドバイザリー業務
- 住宅、オフィスビル、商業施設、物流施設等の不動産共同開発・運営・ファンド事業
- 新車販売事業等自動車関連事業における共同取り組み
- 海外における資源開発及びニューエナジー分野における共同取り組み
- 中国における消費市場拡大を見据えた生活消費関連分野での共同取り組み

伊藤忠はまた、2014年7月にタイのCharoen Pokphnad Group (CP)と資本・業務提携契約を締結している。

CPは1979年、中国改革開放直後の中国に最初に進出した外資企業で、農業と食料品を中心に、情報通信、流通、金融、医薬品等の事業を手掛け、アジア地域で更なる事業展開を推進中である。

今回の3社間の戦略的な業務・資本提携の概要は下記の通り。

(業務提携)

強み

伊藤忠  総合商社トップクラスの非資源分野収益力
         幅広い分野における総合力
         グローバルな調達・販売網と事業展開

CP    非資源分野(農業・食品、小売、通信他
         中国・アジアでの強固な地場事業基盤
         中国・アジアにおける華僑ネットワーク

CITIC   中国における総合金融サービス
         中国政府との強固な関係
         中国におけるブランド力

   
シナジー創出可能分野  

(資本提携)

伊藤忠とCPの50/50JVのChia Tai Bright Investment (CTB)がCITICグループの中核会社の中国中信(CITIC Limited) に出資する。
2段階で総額 約803億HK$(約1兆2040億円)で、20.61%を取得する。

付記 伊藤忠はCPとの提携後に、中国中信に1%出資していたCP子会社のCTBの50%を取得した。
   報道によると、国営会社には民間の出資は30%までとの暗黙のルールがあるが、CITICが李首相に直談判し、例外で認められた。

株主関係

  現状 2015/4 2015/10
CITIC Group 77.90% 67.90% 10%分購入
約5150億円
既存1%は売却
59.89%  
CTB 1.00% 10.00% 20.61% 優先株引き受け・転換
約6890億円
一般株主 21.10% 22.10%   19.50%  
合計 100% 100%   100% 優先株で13.36%増

出資するCITIC Limited の事業は下記の通り。

金融事業 中国第1位の信託会社、第1位の証券会社、第7位の銀行
不動産・インフラ 中国29都市のオペレーション
建設・プロジェクト 中国第6位の建設業
資源・エネルギー アジア、豪州、南米での石油、石炭、鉄鉱石事業
製造業 世界第1位のアルミホイール製造
中国第1位の建材製造機器
中国第1位の特殊鋼製造
その他 IT、通信、医療、運送、出版、旅行、スポーツ等

2013年度の連結純利益は約7300億円。
 

伊藤忠にとっても巨額投資であるが、今後、どのような形で提携が効果を生み、投資を回収できるのか、注目される。


2015/1/23 旭化成ケミカルズ、  ポリカーボネート樹脂原料の新製法を開発 

旭化成ケミカルズは1月19日、ポリカーボネート樹脂の原料であるジフェニルカーボネートの新製法を開発し、この製法の実証プラントを水島製造所内に建設することを決定したと発表した。

プロセス実証プラント計画概要

(1)立地

旭化成ケミカルズ株式会社 水島製造所B地区(岡山県倉敷市)

(2)能力

1,000トン/年

(3)稼働予定

2017年1月

付記

旭化成は2017年8月7日、実証プラントで検証した結果、運転安定性と操作性を確認でき、連続運転1000時間以上を達成したと発表した。
さらに従来の製造プロセスに比べて、省エネ、CO2排出量削減、安全な原料(CO2)を用いた製造プロセスの実現に成功した。

ポリカーボネートの骨格となるカルボニル基は従来の製法ではホスゲンに由来するが、新製法ではCO2に由来する。

 

ポリカーボネート樹脂の従来の製法は一酸化炭素と塩素から製造されるホスゲン(毒ガス)を原料としている。
ホスゲン法はホスゲンの毒性問題や環境面での問題をもっている。
 

2006/4/14 ポリカーボネートと原料ビスフェノールA
 

旭化成は世界で初めてのCOからの非ホスゲン法PC樹脂製造技術を開発した。

同社が非ホスゲン法の開発に着手したのは1977年で、1988年に実証プラントを稼働した。
エチレンオキサイドと副生CO及びビスフェノールAを原料とし、高性能のPC樹脂と高純度EGの2つの製品を高収率で製造するものである。

旭化成は、25年の歳月をかけて実用化に成功したこの独自技術を、国内でも海外でも自らは使用していない。
製造技術をPC樹脂メーカーに供与し、対価を受け取るライセンス契約を締結し、この技術を世界に展開するというユニークな戦略を取っている。

2002年6月から台湾で奇美実業との合弁会社(旭美化成)で100千トンのプラントを稼動させたが、現在、4カ国5社にライセンスし、合計能力は665千トンに達する。

2013/12/14    旭化成のポリカーボネートのグローバル展開戦略

 

今回開発したプロセスは、二酸化炭素とアルコールおよびフェノールを原料とし、独自の触媒を用いてジアルキルカーボネートを経由してジフェニルカーボネートを製造する もの。

従来の同社の非ホスゲン法と異なりエチレンオキシドを原料としないため、エチレンセンターに依存せず、製造場所の立地制約が緩和される。
また、反応が簡素化され、従来の同社法に比べてエネルギー使用量の低減ならびに生産コスト削減にも寄与する。

同社はこの新製法も自社では使用しない模様で、今回の新製法の開発により、ライセンス事業の競争力を強化するとしている。


2015/1/24 欧州中銀、量的緩和導入決定

欧州単一通貨ユーロを使う19カ国の金融政策を決める欧州中央銀行(ECB)は1月22日、定例理事会を開き、ユーロ加盟国の国債などを購入し、資金を大量に金融市場に供給する「量的緩和政策」の導入を決めた。

ユーロ圏は物価が下落し続けるデフレの懸念が強まっており、量的緩和はこれを払拭する狙いで、量的緩和の導入は1998年のECB創設以来初めて。

ECBの狙い:

購入する国債の価格が上昇(金利が低下)し、企業向け融資や住宅ローンの金利も低下して、企業の生産や家計の消費を促す。
ユーロが大量に出回ると、ユーロの価値がドルや円に対して下がるため、外国為替市場でユーロ安が進む。
ユーロ圏からの輸出を後押しするほか、ユーロ圏が輸入する原材料や製品の価格が上昇し、ユーロ圏の物価を押し上げる。

2014年12月のユーロ圏消費者物価指数速報値は前年比で -0.2%となった。マイナスとなったのは2009年10月の -0.1%以来で、原油安でエネルギー価格が大幅に下落した。

欧州中銀は 過去の平均値の2%弱の上昇を目標としているが、原油安で下落が続く可能性が高い。

付記 2015年1月は前年比0.6%下落 (うちエネルギー 8.9%下落、エネルギー除くと +0.4)

量的緩和政策の概要は下記の通り。

1) 2015年3月から2016年9月末まで、毎月 600億ユーロ(約8兆円)、総額1兆1400億ユーロ(約156兆円)の金融資産を買い取る。

2) ユーロ圏の全加盟国の残存期間2〜30年の国債を購入対象とする。購入はECBへの出資比率に応じて行う。

National central bank 比率%
Deutsche Bundesbank (Germany) 25.57
Banque de France (France) 20.14
Banca d'Italia (Italy) 17.49
Banco de España (Spain) 12.56
De Nederlandsche Bank (The Netherlands) 5.69
Nationale Bank van België/Banque Nationale de Belgique (Belgium) 3.52
Bank of Greece (Greece) 2.89
Oesterreichische Nationalbank (Austria) 2.79
Banco de Portugal (Portugal) 2.48
Suomen Pankki – Finlands Bank (Finland) 1.78
Central Bank of Ireland (Ireland) 1.65
Národná banka Slovenska (Slovakia) 1.10
Lietuvos bankas (Lithuania) 0.59
Banka Slovenije (Slovenia) 0.49
Latvijas Banka (Latvia) 0.40
Banque centrale du Luxembourg (Luxembourg) 0.29
Eesti Pank (Estonia) 0.27
Central Bank of Cyprus (Cyprus) 0.21
Central Bank of Malta (Malta) 0.09
Total 100.00

出資比率が最大のドイツの国債を最も多く買うこととなるが、ドイツは財政が健全で景気も堅調なため、国債購入の効果は少ないとみられる。
一方、景気停滞と財政難が続くギリシャなど南欧諸国の国債の購入が少なくなると、そうした国の国債金利が低下せず、効果が限定的になる恐れがある。

3) 購入した国債の信用が低下し、国債価格が急落して、ECBに損失が生じた場合、
          損失の2割は全加盟国で分担
          残る8割は、国債を発行した国の中銀が負担。

ギリシャ国債のリスクは他の国は負わないということ。

負担を懸念するドイツなどに配慮したものだが、ユーロ圏の結束の原則に反し、高水準の債務を抱える国の財政をさらに圧迫する可能性があるとの批判が上がっている。

4) ギリシャの場合、EU、ECB、IMFの3機関で構成する国際債権団がまとめた支援プログラムの条件を順守する必要がある。

ギリシャでは1月25日に総選挙が行われるが、急進左派連合(SYRIZA)が優勢となっている。

SYRIZAの党首は、ギリシャがユーロ圏にとどまる意向を示しながらも、勝利した場合には債権国から課された緊縮財政政策に終止符を打つと約束 しており、EUとIMFから借りた2400億ユーロの一部帳消しも望んでいる。

場合によってはギリシャ国債は対象外となる可能性もある。


ユーロ圏は景気や財政など経済状況がばらばらな19カ国が加盟している。

ECBへの出資比率に応じた国債購入が景気や物価の押し上げにつながるのかは明確でなく、金融市場にも効果に懐疑的な見方がある。

 

国債購入は賛成多数で決まった。
銀行筋によると、ドイツ、オランダ、オーストリア、エストニアの中銀総裁とラウテンシュレーガー専務理事の計5人が資産買い入れに反対した。

ドイツはこれまで、効果が少ない、財政規律の改革に支障、財政ファイナンスを禁止したEUの条約に反するといった理由で反対していた。
EUの基本条約「リスボン条約」は、ECBによる参加国国債の購入は、「財政ファイナンス」にあたるとして禁止している。

欧州司法裁判所の法務官は1月14日、ECBの無制限債券買い入れ策「OMT(Outright Monetary Transactions)」について、「原則的に」EU条約に沿っているとの意見を示し、条件付きでこれを支持した。

Pedro Cruz Villalon法務官は、OMTは「必要」であり「妥当」との見解を示す一方、ECBはOMT実施を正当化する根拠を示す必要がある、と指摘 した。
また、OMT実施の条件として、ユーロ圏の特定の国への支援プログラムにECBが直接関与しないことを挙げている。

同法務官は「ECBはEUの金融政策を策定かつ実施するに当たり、幅広い裁量を与えられるべきであり、裁判所はECBの活動を査定するに当たって相当程度の慎重姿勢が求められる」と述べた。

法務官の見解に拘束力はないものの、それに沿った判断を司法裁が最終的に下すケースが大半。

 


2015/1/26  米国、中国と台湾からの太陽電池製品に反ダンピング関税と反補助金関税

アメリカ国際貿易委員会(USITC)は1月21日、中国及び台湾の太陽電池製品が実質的な損害を与えたと認定、反ダンピング関税と反補助金関税の徴収が決定した。
商務省は昨年12月にダンピングと補助金の最終認定を行い、税率を発表していた。

中国は太陽光パネル関連で米国及びEUと熾烈な争いを繰り広げてきた。

2014/5/5  中国、EUの太陽光パネル用ポリシリコンの反ダンピング・反補助金調査でクロの最終決定

 

米国は中国の太陽光パネルについて、2012年に反ダンピング(AD)、反補助金(CVD)課税を行った。

単位:%   AD:反ダンピング、CVD:相殺関税
  仮決定   最終決定
AD CVD 合計 AD 輸出
補助金
調整後
 AD
CVD 合計
Wuxi Suntech 31.22 2.90 34.12 31.73 -10.54 21.19 14.78 35.97
Trina Solar 31.14 4.73 35.87 18.32 -10.54 7.78 15.97 23.75
他の59社  31.18 3.61 34.79 25.96 -10.54 15.42 15.24 30.66
他の全て 249.96 3.61 253.57 249.96 -10.54 239.42 15.24 254.66

2012/10/13 米国商務省、中国製太陽電池のダンピングを最終認定

付記 

WTO上級委員会は2019年7月16日、米国の相殺関税には不当な部分があるとする判断を下した。

中国国有企業が不当に安い価格で部品を供給し、中国企業を補助し経済をゆがめていたとする米の主張を認める一方で、米国の関税の算定には誤りがあると指摘した。

米国が修正に応じない場合、中国は独自の制裁措置を発動できる。

 

更に、2014年に入り、台湾製を含む中国の太陽電池製品(バッテリー、モジュール、合板、パネル、建築一体化材料などを含む)についてAD、CVDの調査を開始した。

上記の課税後、多くの中国のモデュールメーカーが台湾製のセルを使用することにより、これを回避しようとしたため、この抜け道を塞ぐため、台湾製も含めた。

米商務省は2014年7月25日、中国と台湾のメーカーの結晶シリコン太陽電池製品に反ダンピング関税の適用を、6月3日に中国製の結晶シリコン太陽電池製品に反補助金関税を課す仮決定を行っている。

2014/7/30  米商務部、中国・台湾製の結晶シリコン太陽電池製品に反ダンピング関税適用の仮決定

2014年12月16日、商務省は反ダンピング、反補助金の最終決定を行い、詳細を発表した。

 

仮決定

 

最終決定

反補助金(CVD) 反ダンピング(AD) 合計
保証金
反補助金(CVD) 反ダンピング
(AD)
dumping
 margin
保証金
China Wuxi Suntech Power 35.21 42.33 14.03 49.24 27.64 52.13
Trina Solar 18.56 26.33 10.74 29.30 49.79 26.71
Renesola/Jinko 26.89 58.87 55.49 82.38 38.72 78.42
調査協力41社 42.33 20.38 47.27 52.13
        うち  5社 27.64
調査非協力 165.04 165.04 191.93 38.72 165.04
Taiwan Gintech - 27.59   27.59 - 27.55
Motech - 44.18   44.18 - 11.45
Others - 35.89   35.89 - 19.50

今回、ITCが実質的な損害が生じていると認定したため、上記が最終決定された。
(米国では商務省がダンピングの認定、ITCが損害の認定を行い、両者が揃って、確定となる。)

最終合計税率はADとCVDの重複分を除外し、追って発表される。

 

中国商務部はこれを受け、「米国の決定は両国間の太陽光パネル製品をめぐる貿易紛争をさらに激化させ、両国産業の貿易や協力に深刻な損害を与えるもので、中国企業はこの決定に強い不満を表明する。中国はWTOの枠組内、および米国の司法システム内で権利を行使し、自国の権利を守ることを検討する」とコメントした。

 

米国内でも、輸入パネルを使用するメーカーは失望を表明した。

Solar Energy Industries Associationは、「USITCの決定は米国太陽光産業の後退を意味しており、提訴したソーラーワールド米国支社でさえほとんど何のメリットも得られないもの」との見方を示した。

また、別の業界団体のCoalition for Affordable Solar Energyは、「USITCの今回の決定は米国国内の太陽光エネルギー製品の価格を引き上げ、米国企業の利益を損なうことになる。データによると、2014年には太陽光パネルユニットの価格低下により米国の太陽光エネルギー産業の雇用は21.8%増加した。米国と中国が交渉を通じて貿易摩擦を解決することを呼びかける。貿易障壁の設置は解決策ではない」とコメントした。


2015/1/27 2014年 貿易統計 

財務省は1月26日、2014年の貿易統計(通関ベース)の速報を発表した。

輸出は73兆1052億円で2年連続の増加となった。過去4位である。

輸入は85兆8865億円で5年連続の増加で、過去最大の輸入額となった。

差引貿易収支は12兆7813億円のマイナスで、過去最大の赤字である。

全体
 
  輸入のうち、鉱物性燃料は2013年が28.4兆円、2014年は27.7兆円となっている。
そのうち、LNGは2013年が87,731千トン 7.3兆円、2015年は 88,506千トン 7.9兆円。
 
   
対 米国
 
   
対 EU
 
   
対 中国   輸出入ともに過去最高
 
   
対 中国を除くアジア
 
   
地域別貿易収支
 
   
なお、財務省は半年ごとに貿易取引の通貨別比率を発表している。
     http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/tuuka.htm
  これを元に計算すると、下記の通り、外貨別輸入が輸出を上回っており、円安は貿易収支面ではデメリットとなることを示す。
 
   
   

2014/6/24 改正会社法が成立、チッソの事業会社売却が容易に 


2015/1/29   丸紅、原油価格下落等で1600億円の減損損失を計上

 
丸紅は1月26日、1600億円の特別損失を計上すると発表した。

内訳は次の通り。

  減損損失 主な理由 損益
資源 北海の油ガス 5鉱区群 原油価格下落、開発コスト増加 -600億円
メキシコ湾沿岸(1鉱区) 原油価格下落 -175億円
米シェールオイル -175億円
チリ銅事業の減損損失 銅価格下落 -100億円
豪州石炭事業の減損損失 石炭価格下落 -50億円
非資源 Gavilon社「のれん」の減損損失 計画未達による計画見直し -500億円
合計 -1,600億円
税効果 400億円
損益合計 -1,200億円

豪州鉄鉱石事業については、高いコスト競争力があり、高品質の鉱石が期待できるため、減損不要と判断。

同社では、原油価格は45ドルを割ることは想定外で、社内見通しと大きく違ったとしている。北海の原油開発では原油価格の下落に加え、現在進めている開発プラットフォームの改修コストが大幅に上昇することが分かった 。

同社の北海での原油開発は下記の通り。

2001 英領北海 Larch 油田  
2003/3 英領北海Sycamore油田 生産開始 丸紅 35.5%、残り Venture Production plc
2004/9 英領北海で操業するEnergy North Sea Holdings を買収
2008/3 英領北海 Cayley油・ガス田 探鉱に成功 丸紅 41.03%、Talisman Energy(加)  58.97%
2009/11 英領北海 Shaw 油田 探鉱に成功
2010/9 ノルウェー領北海  権益取得 Norwegian Energy CompanyからOselvar鉱区15%、Enoch鉱区4.4%

メキシコ湾沿岸では、2003年3月にアラバマ州沖合のFairway Field の権益 35.7% をBPから買収した。残り64.3%はShellが保有し、操業を担当している。
また、2006年2月にPioneer Natural Resources からメキシコ湾の生産・開発・探鉱鉱区群の権益を取得した。

BPは2010年10月25日、Devon Energy から2010年3月に買収したメキシコ湾の深海で操業中のの4つの原油・ガス田の権益を、丸紅に650百万ドルで売却することで合意したと発表した。
(WTI原油の2010年の平均価格は80$/bbl)

2010/10/25 BP、メキシコ湾の4油田の権益を丸紅に売却 

シェールオイルについては、丸紅は下記に参加している。

Niobrara     2011/4/13 丸紅、米国のシェールオイル開発計画に参加

Eagle Ford 2012/1/9 丸紅、イーグルフォード・シェールオイル・ガス開発事業に参画

 

2013年に買収した米穀物大手Gavilonについては、見込んでいた買収後のシナジー効果が出なかったことが原因としている。

丸紅は2012年5月29日、北米で穀物・肥料・エネルギーのトレーディング事業を展開するGavilon Holdings の持分すべてを取得すると発表した。
買収価額は36億ドルだが借入金が20億ドル程度あり、合計で56億ドル程度となる。

丸紅は北・南米に穀物供給ソースを確保し、アジアを中心に販売力を強化してきたが、Gavilonが全米に持つ140を超える穀物集荷関連拠点を取り込み巨大な穀物集荷流通網を確保し、更に、Gavilonのブラジル、豪州、ウクライナなどの拠点を丸紅の持つ資産と組み合わせ、活用するとしていた。

中国商務部は2013年4月22日、丸紅による米穀物大手Gavilonの買収を厳しい条件付きで承認した。

2社の合併は「中国の大豆輸入市場への支配力を強め、競争を排除あるいは抑制する」可能性があるとし、
(1)中国向け輸出・販売業務を分離独立すること
(2)例外を除き、丸紅はGavilonから大豆を買い付けてはならない
(3)市場情報を交換してはならない――といった義務を課した。


本ブログでは、「買収の狙いは主に中国向け輸出のためと思われ、高額での買収の意義が失われることにもなる」とした。

2013/4/26    中国、丸紅の米穀物大手Gavilon買収を条件付きで承認

油価格に連動するように、銅、鉄鉱石などの金属や穀物などの国際商品相場が下落している。

丸紅経済研究所の調査によると、豪州産鉄鉱石の1月の中国向け船積み価格は1トン当たり71ドル。
2011年1月の184ドルから4割以下の水準で、2014年10月の81ドルから1割以上下落した。

銅も、ロンドン市場の1月の取引価格が1トン当たり6000ドル前後で、2014年10月から700ドル近く下げ、アルミも1月価格が同1788ドルと2014年10月より1割以上安い。

ーーー

2014年9月には、住友商事が米国のタイトオイル開発などで2700億円の大幅な損失を計上すると発表している。

 

損失

 
米 タイトオイル -1700億円

保有資産譲渡に伴う減損

豪 石炭 -300億円 石炭価格下落に伴う減損
ブラジル 鉄鉱石 -500億円 今後の市況、事業の動向
米 タイヤ事業 -200億円 今後の市況、事業の動向
(合 計) -2700億円  
税効果等 300億円  
株主帰属損益 -2400億円  

2014/10/1 住友商事、米国のタイトオイル開発などで大幅な損失計上

住友商事はアフリカで世界最大級のニッケル鉱山開発を進めているが、操業開始が大幅に遅れたほか、市況急落もあり、損失を計上する可能性がある。

 

この数年、中国の国営企業が猛烈な勢いで海外の資源に投資をしており、採算を度外視したものも多い。

そのなかで日本企業も資源への投資を拡大してきたが、高騰した製品価格を前提にした割高な投資が多い。

価格の下落が続けば、ほかにも減損損失の計上が行われると思われる。


2015/1/30 英下院の環境監査委員会、シェールガス開発の中止を提言 

英下院のEnvironment Audit Committeeは1月26日、フラッキング(水圧破砕法)によるシェールガス採掘の中止を提言する報告書を発表した。

概要は以下の通り。

政府はフラッキングを推進しており、税務上の恩典を与え、規制緩和法案(Infrastructure Bill)で住民の許可なしに地下の掘削を自由に認めようとしている。

フラッキングによるガス生産は気候変動法(Climate Change Act)での英国の義務と矛盾する。
シェールガスは低炭素ではない。政府の目的はソースに関係なく、エネルギーの二酸化炭素濃度を下げるということだ。

規則で環境への影響は守られるというが、地下水の水質、水の供給、廃棄物、国民の健康、生物多様性、地質、騒音等々の危険について、広範囲な不確実性がある。
フラッキングがまだテスト段階であるためだ。取り返しのつかないダメージから環境を守る必要がある。

フラッキングは保護地域、国にとって重要な地域で直ちに禁止すべきだ。

メタンを全く放出しないことを義務付けるべきだ。

全ての水源地域でフラッキングを禁止すべきだ。


委員長は以下の通り述べた。

フラッキングは、フルスケールの二酸化炭素の回収・貯蔵なしには、長期的な温室ガス排出量の削減目標と合致しない。
また、フラッキングが水の供給、大気質、住民の健康に与える影響には大きな不確実性がある。

英国の国立公園や素晴らしい自然の美が油田やガス田に変わるのを許せない。
国としてのシェール禁止が無理な場合、そのような場所では禁止すべきだ。

政府は住民の許可なしに家屋の地下で掘削することを認める法律を通そうとしている。これは極めて非民主的であり、議会はこれを認めず、住民の権利を守るべきだ。

政府は昨年に地下掘削権に関する規制緩和法案(Infrastructure Bill)を提出した。

現在、下院で審議中のこの法案は、シェールガスなどの地下採掘を一定範囲内で自動的に許可する内容で、企業は土地所有者の許可を得ずに地下でのフラッキングが可能になる。

同委の議員8人はこの日、この法案の修正案を議会に提出した。

ーーー

David Cameron 首相はフラッキング禁止要求を拒否した。

エネルギー安全保障上も、価格引下げのためにも必要であるとし、米国のシェールガス革命を英国でも実現すると述べた。

エネルギー・気候変動省は、「シェールガス開発は温暖化ガス削減目標と合致する」と反論。シェールガスは発電量の不安定な再生可能エネルギーを補完できる可能性もあるとした上で、「目標達成には再生可能エネルギー、原子力、ガスを取り混ぜたエネルギー構成が必要」としている。

英政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を80%減らす目標を掲げる。
 

Ineosは同日、反論を発表した。

報告は一方的で、フラッキングの利益よりも、潜在的なリスクに焦点を当てている。

米国では100万以上の井戸が掘削され、製造ルネッサンスが起こり、米国に雇用と繁栄をもたらしている。

英国でも安全にフラッキングが出来ると信じており、国全体に利益をもたらす。

同社は英国でシェールガス開発を計画している。

2014/8/22 Ineos、スコットランドのシェールガス開発に参加

2014/10/3 Ineos、英国でのシェール開発反対を抑えるため大盤振る舞い

2014/10/18  Ineos、英国で更にシェールガスの権益を取得

 


2015/1/31 中国の化学製品輸入統計

中国の2014年の化学製品の輸出入統計が発表された。

輸入量は製品により、大きな差がある。

韓国、台湾は輸出量を維持しているが、日本品については、VCMとSM を除き、存在感は極めて薄い。

ポリエチレンやSMでイラン品の輸入増が目立つ。
サウジのPP、米国のPVCも増えている。
 

LDPE
  輸入量増加 (LLは横ばい、LDPEが増加)。LDPEのイラン品の増加が目立つ。
 
 
   
HDPE
  HDPEもイラン品の増加が目立つ。
 
 
PP
  2009年以降、サウジ品の輸入が多い。
 
   
SM
  輸入量横ばい。日本品は過去の水準の半分。ここにもイランが進出。
 
   
PS
  輸入数量激減。
 
  日本は2004年の中国の反ダンピング調査以降、積極輸出を取り止めている。
   
ABS
   
 
   
VCM
  輸入数量減。
  yu
  2012年の日本からの輸入減は、2011/11の東ソー南陽の事故の影響
   
PVC
  輸入数量激減。日本品は半減、米国品の増大が目立つ。
 
  2009年は異常で、「その他」に、独(76千トン)、仏(21千トン)、英(151千トン)、マレーシア(66千トン)など、平年の数倍〜数十倍の出荷があった。
 
PVC 輸出
  PVCについては、輸出が輸入を上回るようになった。
 
   
  但し、月により変動が激しい。インド向けの出荷の増減が影響している。
 


 


次へ

最新分は  2006-5-1 http://blog.knak.jp