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2016/9/1   EU、アイルランド政府にApple への130億ユーロの追徴を命令
 

EUは8月30日、アイルランドが米国のAppleに対して税を優遇していたのは、EUの法律が禁止している不当な補助にあたるとして、最大で130億ユーロ(プラス金利)の追徴課税を行うよう命じた。

付記

アイルランド政府は11月9日付で一般裁判所に訴状を提出した。

アイルランドは欧州委の判断にすぐさま「違法性はない」と反論し、アップルもこれに同調していた。

アイルランドは先進国で最低水準の12.5%という低い法人税率を掲げ、これまで多国籍企業の誘致を積極的に進めてきた経緯があり、追徴課税に踏み切った場合には立地の魅力が失われるとの見方が多い。

付記

Appleは12月19日、EU一般裁判所に不服申立の正式手続きを行った。

 

EU執行機関の欧州委員会は、2014年6月11日、Apple、Starbucks、Fiat Finance and Trade 3社の法人税に関して、それぞれアイルランド、オランダ、ルクセンブルクの各国税務当局が下した判断について、本格的な調査を開始したことを明らかにした。

欧州委員会では、これら企業の税金が大幅減額になった可能性があるため、これら企業に対して適用する税制の優遇措置がEUで定めている「国の補助」の規則に違反していないか調べる。
EUでは加盟国政府や自治体などによる国内企業に対する補助・支援は、域内の他国企業との公正な競争を阻害してはならないとする規則がある。

欧州委は税務当局と個別企業との間の優遇措置などを規定した「税務取り決め」自体は問題ではないが、一部の企業に特別な利益を与えることにつながっていると懸念している。

EUはその後、2014年6月11日付けのアイルランド向けのレターを公表した。Appleに対する課税の疑惑を詳細に述べ、今後調査を続けることを伝え、資料の提出を要求している。

2014/6/13 欧州委員会、Apple等の法人税を調査 

参考 

2012/12/14  スターバックスの移転価格税制問題
2014/10/20 買収・合併による節税目的の海外移転禁止の動き強まる
2014/11/27 欧州委員会、オランダのStarbucks への税優遇の内容を公表
2015/10/27 欧州委員会、StarbucksとFiatの税優遇を違法と認定、追加徴税を指示
2015/12/9 EU、McDonald'sに対するルクセンブルグの法人税優遇措置を調査
2016/1/14 EU、ベルギーの「税優遇制度」は違法
2016/1/26 Google、追加納税で英税務当局と合意
2016/3/8 Facebook、英で法人税納付拡大

アイルランドのApple子会社は欧州 (及び中東、アフリカ、インド)での販売利益を全てアイルランドに集めている。

欧州委員会は、調査の結果、アイルランド政府は通常の法人税率 12.5%に対し、Appleには、2007年の税務取り決めに基づき、利益の1%以下しか納めないで済むように優遇措置を認めていたとして、EUの法律が禁止している国による違法な補助にあたると判断した。

そのうえで、2003年から2014年にAppleが支払うべきだった最大で130億ユーロを追徴課税するよう、アイルランド政府に命じた。

ルールでは、違法な国の支援については、欧州委員会が最初に情報を求めてから10年間となっている。
本件では2013年に情報を求めた。Appleでは2015年にアイルランドでの体制を変更し、2007年の税務取り決めは無効となった。

欧州委員会の競争担当のMargrethe Vestager 委員は会見で「国が特定の企業を優遇してはならないという明確なメッセージだ」と述べた。

これに対し、Appleは顧客向けのコメントを発表し、「違法ではない」と主張した上で、法的措置をとる方針を明らかにした。

アイルランドの財務相は、欧州委員会の決定を受け入れられないとの見解を示した。
税全額が納付されており、政府の補助は一切ないとの立場に変わりなく、アップルに優遇税制を講じてはいないと表明した。

米国財務省は「失望した」とし、アイルランドや欧州の他国への外国からの投資に影響を与えるだろうと述べた。
企業側が米国での納税に際してその分の控除を受けようとし、米国の納税者に「最終的につけが回される」可能性があるとし、欧州委員会による遡及課税はアンフェアであり、確立した法原則に反するものであるとしている。

付記

Appleは9月1日、海外事業で稼いだ多額の現金を来年以降、米国に還元するとの考えを示した。
この場合、追加課税により還元金額は大幅に減少し、米国の税金が減ることとなる。

なお、オランダ(Starbucks) 、ルクセンブルグ(Fiat) はEUの措置を不満とし、欧州司法裁判所に提訴している。

 

欧州委員会の発表内容は下記の通り。

 

Apple Inc.はアイルランドに Apple Sales International と Apple Operations Europe を持つ。

両社はAppleとの間で Cost Sharing Agreement を締結し、Appleの知財を使用する権利を持ち、欧州、中東、アフリカ、インドでApple製品を販売する。

Apple Sales International が主で、世界中からApple製品を購入し、販売する。
Apple Operations Europe は一部のAppleコンピュータを製造し、販売する。

各国の需要家は製品を直接両社から購入する契約を結ぶ。

社はCost Sharing Agreement に基づき、米国本社にロイヤリティを支払う。2011年の支払は20億米ドルで、2014年に著しく増大した。

販売利益からこれを控除したものが両社の利益となるが、この扱いについて、Appleは1991年にアイルランド政府との税務取り決めを結び、2007年にこれを改定した。

それによると、この利益の大半を両社の "head office" に移転する。ごく一部が残り、アイルランドで課税される。

 "head office"はどの国にも属さず、従業員も事務所もない。活動はときどき取締役会を開くだけ。"head office"に移された大半の利益は、どの国からも課税されない。

2011年には、Apple Sales Internationalの利益は160億ユーロであったが、このうち50百万ユーロだけが課税所得となり、10百万ユーロの税金を支払った。
残りの利益159億95百万ユーロは非課税となった。

この結果、Apple Sales International の実効税率は2011年で 0.05%、2014年には利益は増えたが課税所得は増えなかったため、実効税率は 0.005%になった。

Apple Sales International と Apple Operations Europe の活動で大半の利益が計上されており、 "head office" は実際の事業活動を一切行っておらず、金利収入のみが利益である。

これをベースに考えると、アイルランド政府の税務取り決めの結果、Apple は他の企業よりも著しく低い税金しか払わずに済むこととなり、EUの国による支援のルールでは違法なものとなる。

ルールでは違法な支援は取り戻すこととなっている。罰金を課すのではなく、他の企業と同じ扱いにするだけである。

試算では、取り戻しの対象期間(欧州委員会が最初に調査を求めた2003年から、この税務取り決めが取り消される前の2014年まで)の未払い税金は130億ユーロ (プラス金利)である。

Apple Operations Europe分が50百万ユーロで、残りがApple Sales International の分。

もし、この発表により他の国が両社に課税することとなる場合には、その分は控除される。
 


 

2016/9/2  JXホールディングスと東燃ゼネラル石油、経営統合の最終合意

JXホールディングスと東燃ゼネラル石油は8月31日、来年4月1日に経営統合し、新統合会社「JXTGホールディングス」を設立することで最終合意したと発表した。

両社は2015年12月3日に経営統合を目指すことで基本合意書を締結している。

2015/12/4 JXホールディングスと東燃ゼネラル石油の経営統合

手続きは下記の通り。

@  経営統合日(2017年4月1日)に、東燃ゼネラル1株に対し、JXHD株式 2.55株を割り当てる株式交換を行う。

   2016年12月21日の両社株主総会での承認、関係当局からの許認可を前提。

A 同日にJXエネルギーを存続会社、東燃ゼネラルを消滅会社とする吸収合併を行う。

統合持株会社は、社名をJXTGホールディングスとし、会長に木村・JX会長、社長に内田・JX社長、副社長に武藤・東燃ゼネラル社長が就任する。

 

なお、これらに先立ち、2017年1月1日付けで、東燃ゼネラルは子会社のEMGマーケティングを吸収合併する。

統合効果については、昨年の発表時には「統合後5年以内に、事業年度当たり連結で1000億円以上の収益改善効果」としていたが、新たな目標を「統合後3年以内に1000億円」とした。

内訳概算は下記の通り。

供給・物流・販売部門 280億円 原油調達オペレーション最適化、陸海上配送効率化など
製造部門 400億円 川崎地区の一体運営による約100億円の収益改善
ベストプラクティス活用による省エネ促進・補修費削減など
購買部門 150億円 工事資材、触媒などの購買コスト削減
その他 170億円 統合基幹業務システム導入による業務改善
その他効率化・合理化など
合計 1000億円 「数百人規模の人員効果を含んでいる」

両社で合計11カ所ある製油所についても統廃合を早期に実現する。

なお、商品ブランドは各社の現在のブランドを継続して使用し、将来の最適ブランドについては引き続き検討を続ける。


 


2016/9/3 年金運用、4-6月で5.2兆円 の損失 

年金積立金管理運用独立行政法人(GRIF)は8月26日、2016年度第1四半期(4-6月)の運用状況を発表した。

運用益は マイナス5兆2342億円で、2015年度第4四半期のマイナス4兆7990億円に続き、2四半期連続の巨額赤字となった。

GRIFでは、赤字の要因として、@中国の景気の悪化、A5月の米雇用統計の想定外の低迷、B英国のEU離脱を問う国民投票を挙げ、それらが重なり株安や円高となったとしている。

6月末の円相場は3月末との比較で主要10通貨全てに対して上昇した。国内株は大幅に下落する一方、日本銀行のマイナス金利政策を受けた国内債の利回りは低下した。
下記の通り、株式比率を大幅に増やしたことが響いた。

株式の赤字の多くは期末時点での時価に基づく評価損であり、全額が実現した損益ではない。
保有している株式については、今後に株価が上がると取り戻せる可能性はある。第1四半期の利子・配当収益は8,342億円であった。

GRIFは、「市場変動による影響について多角的に分析しつつ、長期的な観点から運用を行っており、短期的に市場価格が上下しても年金受給に支障を与えることはありません 」としている。

なお、2015年度通期の運用損益はマイナス 5兆3098億円であった。

市場運用開始(2002年度)以降の累積収益額は、2014年度末では50兆7338億円であったが、2016年度第1四半期末には40兆1898億円に減少した。

第1四半期末での運用資産額は129兆7012億円であった。

付記 第2四半期(7-9月)は2兆3746億円の黒字で、累計は42兆5644億円となった。

ーーー

GRIFは2014年10月に運用方法を大幅に見直し 、これまで24%であった株式(国内、外国12%ずつ)を50%(国内、外国25%ずつ)に増やし、株式と債券が半分ずつで国内資産6割・外貨建て資産4割という分散型 とした。5%だった短期資産は各資産に分散して管理している。

理由は制度を維持できるだけの運用益を確保するため。

今の制度に必要な利回りは1.7%だが、低金利の国債で運用しても目標を達成できない。
また、「全額国債運用なら、1%金利が上昇すれば、(債券価格が下落するので)10兆円の評価損が出る。国債は安全で、株式は危ないという考えがあるが、そうではない」と説明した。

今後、新たな基本ポートフォリオを目標として中長期的に資産配分を調整する。

  2013/6/7 2014/6/末

2014/10/31

2016/6/末
基本 上下
変動率
基本 上下
変動率
国内株式 12% 6% 16.79% 25% 9% 21.06%
外国株式 12% 5% 15.54%  25% 8% 21.31%
国内債券 60% 8% 51.91% 35% 10% 39.16%
外国債券 11% 5% 10.76% 15% 4% 12.95%
短期資産 5%   5.00%     5.51%
合計 100%   100% 100%   100%

上下変動率は国内債券が8%から10%、国内株式6%から9%、外国債券5%から4%、外国株式5%から8%に変更された。

 

新たな目標値に向けた資産構成への変更がほぼ終了した2015年7-9月期に自主運用開始以降で最大の評価損を計上した。

金融市場は昨年末にかけて持ち直したものの、本年に入ると円高・株安が再燃し、再度大幅赤字となった。

2015年 4-6 2兆6489億円
7-9 -7兆8899億円
10-12 4兆7302億円
1-3 -4兆7990億円
2016年 4-6 -5兆2342億円

 

国内債券は黒字であるが、比率を増やした株式(国内及び外国)が大幅赤字である。


GRIFは「投資は長期で見るもの」としているが、株式比率を上げるとボラティリティが高まることを被保険者に十分に伝えていないことを問題視する意見が多い。

 


2016/9/5 原発に強度不足の鋼材使用の可能性ー2

フランスの原子力安全局 (ASN) は6月28日、フランスで運転中の58基の加圧水型原子力プラントのうち、9つの原発の18基の蒸気発生器で水室(Channel Head) の機械的強度が想定より低い可能性があると発表した。

これらはArevaのCreusot 工場 と日本鋳鍛鋼(新日本製鐵グループ及び三菱グループの共同出資)が鍛造したもので、機械的強度を低下させる炭素濃度の高い領域を持つ鍛造鋼が使われた可能性がある。

2015年4月、建設中のフランスの Flamanville 3号機で、Areva社傘下のCreusot 工場 (Creusot Forge ) が製造した原子炉容器上蓋と下鏡に鋼材組成の異常が見つかり、調査を指示していた。

これを受け、原子力規制委員会は8月24日、国内の実用発電用原子炉の原子炉容器等において炭素濃度の高い領域が残っている可能性がある鋼塊部分を含んだ鍛造鋼の使用の有無等について確認する必要があると判断し、下記の調査対象機器について、製造方法及び製造メーカーを調査し、その結果を報告することを指示した。

加圧水型原子炉:原子炉容器、蒸気発生器、加圧器
沸騰水型原子炉:原子炉圧力容器

2016/8/25 原発に強度不足の鋼材使用の可能性 


原子力規制委員会は9月2日、電力各社からの報告を発表した。

13基の原発で原子炉容器に日本鋳鍛鋼の鍛造鋼が使用されており、その他、4基の原発で蒸気発生器で使用されていることが分かった。

鍛造鋼の使用が確認された原発については、当該鍛造鋼が規格(JIS等)を上回る炭素濃度領域を含む可能性について評価し、その結果を10月31日までに報告させ、対応を検討する。

付記

同じメーカー製の鋼材を使用する原発を持つ各社は10月31日、「強度不足の可能性はない」とする調査結果を原子力規制委員会に報告した。
いずれも強度不足の原因となる鋼材の炭素濃度の偏りはなかったという。規制委は各社の報告内容を確認して今後、対応を決める。

電力会社 原発 現状

原子炉容器

蒸気発生器
上蓋 下鏡 胴部 一次側鏡板
北海道 泊1号        
泊2号        
東京 福島第二 2号      
福島第二 4号      
北陸 志賀1号      
関西 高浜2号        
高浜3号 運転差止      
高浜4号 運転差止      
大飯1号        
大飯2号        
四国 伊方2号        
九州 玄海2号        
玄海3号      
玄海4号      
川内1号 営業運転      
川内2号 営業運転    
日本原子力 敦賀2号      
(基数)  

(13基)

(他4基)


フランスでは運転中の18基でこの鋼材が用いられているが、当局は直ちに安全上の問題があるとは判断していない。

日本鋳鍛鋼では、「原子力の分野では特に厳しい仕様を定め、検査で強度も確認しており、現時点で問題はないと認識している。事業者の調査に協力し、原子力規制委員会から要請があれば、いつでも調査を受ける」としている。(産経新聞)

 



2016/9/6 アブダビ石油、アブダビで新油田開発 

アブダビ石油は1969年に試掘1号井で出油に成功し、1973年から商業生産を開始した。
現在、ムバラス油田、ウム・アル・アンバー油田、ニーワット・アル・ギャラン油田の3油田から生産される原油をブレンドし、ムバラスブレンド原油として、全量をコスモ石油とJX日鉱日石エネルギーが引き取っている。

アブダビ石油は2012年にアブダビでの石油開発の45年間の期限を迎えたが、2011年2月に30年更新の新利権協定を締結した。

既存のムバラス油田、ウム・アル・アンバー油田、ニーワット・アル・ギャラン油田の3油田(合計日量 24千バレル) に加え、同程度の生産量が見込めるヘイル油田の権益も取得した。

2009/1/23 アブダビ石油の油田権益 20年延長へ

 

アブダビ石油では新たに権利を得たヘイル油田に、総事業費約800億円で貯蔵設備やパイプラインなどを整備し、2017年半ばの生産開始を目指している。2018年に全面稼働し、日本向けに日量2万バレル超を生産する計画で、生産中の3油田と合わせた生産能力は倍増する。

国際協力銀行(JBIC)とメガバンク3行が約600億円を協調融資し、支援する。

ーーー

コスモ石油は2014年11月6日、コスモ子会社のコスモエネルギー開発が保有するアブダビ石油の株式を新設分割により設立する会社に承継させ、新設会社の一部持分をスペインの総合石油会社のCEPSAに譲渡すると発表した。

コスモ石油とCEPSAは共にアブダビ国営の投資会社 International Petroleum Investment Company(IPIC)グループの一員同士である。

IPICは2007年にコスモ石油に20%出資し、筆頭株主となった。
IPICはCEPSAの株式を順次取得し、2009年8月にTotal から48.83% を買収、最終的に100%をおさえた。

2014/11/11 コスモ石油、UAE油田開発でCEPSAとJV 

 



2016/9/7 日本政府、Brexit で英国に警告 
 
英主要メディアは9月5日、英国のEU離脱決定をめぐり、日系企業に関税や通関手続きなど新たな負担がかからないよう求めた日本政府の要望書について、「日本が警告の砲弾を放った」などと大きく報じた。

日本政府は9月2日にBrexit に伴う対応を検討する関係省庁会議を首相官邸で開き、1) 現行の関税率や通関手続きの維持、2) 外資参入にかかる基本政策の維持、3) 英・EU間の規制、基準の維持――などを柱とする要望事項をまとめた。文書は9月2日付で外交ルートを通じて英政府とEUに伝達し、9月5日の日英首脳会談でもあらためて意向を伝えたもよう。

文書は、“Japan’s Message to the United Kingdom and the European Union” というタイトルで、要約 1ページ、本文4ページ、英国及びEU宛の要望書10ページの合計15ページに及ぶ。
  全文:www.mofa.go.jp/files/000185466.pdf

要約は次のとおり。

開かれた欧州の維持がアジアを含む世界にとっての関心事である。

不確実性が経済にとって大問題で、post Brexit がどうなるのか、はっきり分かるような「予測可能性」が確保されることを望む。そのためには、暫定期間の設定を含めた交渉の段取りや制度変更時の移行・周知期間を含め、透明性の高い離脱交渉が必要である。

日本の多くの企業が英国で活動しているが、以下の要望(詳細添付)を日本政府に出している。

追加の関税や手続きを必要としない貿易の維持
投資に拘束を受けないこと
欧州でのサービスや金融取引がスムースに行える環境の維持
必要なスキルを有する労働力の確保
英国とEU間の調和のとれた規則や基準

日本政府は英国とEUがこれらの要請をフルに留意し、これらに応え、現在のビジネス環境を維持し、急激な変化の影響を緩和し、魅力的な進出先であり続けることを望む。

日本は、Brexit の交渉プロセスが世界経済に悪影響を与えずにスムースに進められるよう、協力する。

文書では、欧州では日本企業は44万人の雇用を行い、多くの企業が英国に集まっていること、2015年の欧州向け直接投資の約半分が英国向けであることなどを示し、上記の要請が満たされない場合、英国から大陸欧州に移転する可能性があることを示唆している。

日本は「労働者の移動の自由」と「EU諸国との従来通りの貿易」 を求めているが、後者については英国も望んでいるものであるのに対し、Brexit のそもそもの目的が「移民の流入の阻止」である。
日本の要請は、国民投票の結果を否定する内政干渉と捉えられる恐れがある。

Guardian 紙は、要望書が「メイ首相のチームに大きな困難をもたらした」と報道、他のEU非加盟国から同様の要望が相次ぎ、離脱交渉の手足が縛られることを、英首相官邸が恐れていると論じた。

大衆紙 Daily Express は「破滅の恐怖をあおる日本、離脱後の英国の混乱を警告」(Doom-mongering Japan issues warning of TURMOIL in Britain post-Brexit during G20 )と扇情的な見出しを掲げた。同紙電子版には「日本製品はボイコットだ」「英国から出て行け」「脅しには屈しない」などと反日感情をむき出しにした読者のコメントが相次いだ。
「日本が英国から出て行けば、ボイコットする日本製品がなくなってしまうな」というのもある。
 


9月5日の英議会での質疑でも国会議員が相次いで取り上げた。デービスEU離脱担当相は答弁で「我々は単に、日本政府に明らかに関心があるような、限られた数の会社や銀行の利益を見ているのではない。経済全体の利益を見ており、(離脱案作りには)少し時間がかかる」と述べた。(朝日新聞)


 


2016/9/8 FDA、抗菌石鹸の販売禁止

米食品医薬品局(FDA)は9月2日、抗菌作用のあるトリクロサンなど19種類の殺菌剤を含む抗菌石鹸やボディーソープなどを販売禁止にすると発表した。
長期に日常使用した場合の安全性と、通常の石鹸水より殺菌効果があるということをメーカーが証明できなかったとしている。
一部企業は既にこれらの殺菌剤を製品から除外し始めている。

「消費者は抗菌石鹸は細菌の増殖を防ぐのにより効果があると考えがちだが、通常の石鹸と水より有効だという科学的根拠はない」と指摘した。さらに「殺菌剤は長期的に利点よりも有害となりうる可能性があるとの指摘もある」と警告した。

規制対象となったのはトリクロサン、トリクロカルバンなど下記の19種類の殺菌剤を含む石鹸やハンドソープ、ボディーソープなど。

トリクロサンは殺菌効果などをうたう液体抗菌製品の93%に含まれており、2千種以上が販売されているという。
水で使用し、使用後に洗い流すものが対象で、除菌用ローション (Hand sanitizers)や医療の場で使われる殺菌製品には適用されない。

FDAでは、トリクロサン(液体石鹸)、トリクロカルバン(固形石鹸)など殺菌製品に使われる殺菌剤の長期使用で菌への抵抗性やホルモン効果などの健康リスクがあることを示すデータが出たため、2013年にルールを提案し、販売を続ける場合には安全性と有効性の追加データを出すよう求めた。

しかし、メーカーは19種類の殺菌剤についてデータを出すことが出来なかった。他の3種類、Benzalkonium chloride、Benzethonium chloride、Chloroxylenol (PCMX) については、追加データ待ちで1年間だけ使用を認めた。

FDAは通常の石鹸と水による手洗いを推奨しており、石鹸がない環境ではアルコール消毒液(60%以上のアルコールを含むもの)の使用を勧めている。

ーーー

欧州でもEuropean Chemicals Agency (ECHA)が2015年6月25日にトリクロサンの使用禁止を決定した。

ホルモンの働きを妨害し、甲状腺や生殖成長、発達機能などに影響を及ぼす可能性があることや、抗生物質が効かない抗生物質耐性菌が生まれているとの研究報告がある。

日本では1990年代に病原性大腸菌O157の被害が広がると抗菌剤に注目が集まり、トリクロサンが配合された薬用せっけんなどが広く使われるようになった。
現在も、トリクロサンやトリクロカルバンを含む製品が多く販売されている。

 

菅官房長官は9月7日の記者会見で、「日本において同様の成分を含む製品の確認を早急に実施している。この調査結果を踏まえ、厚生労働省の審議会において日本が取るべき措置について検討を行い、速やかに結論を導きたい」と述べた。

付記

厚労省は9月30日、「薬用石けんに関する取扱い等について」を出した。

日本化粧品工業連合会及び日本石鹸洗剤工業会は、これらの成分を含有しない製品への切替えに取り組むよう会員会社に要請した。

厚生労働省としても、この切替えの取組みを促すため、製造販売業者に対して、流通する製品の把握と、製品を1年以内に代替製品に切替えるための(医薬部外品の)承認申請を求めるとともに、その際の承認審査を迅速に行うとした。
 


2016/9/9   豪州のWoodside Petroleum、BHP Billitonの豪のガス田権益を取得

豪州のWoodside Petroleumは9月5日、BHP Billiton から豪州西部沖のScarborough ガス田などの権益の半分を4億ドルで取得すると発表した。
BHP Billiton がExxonMobil と共有しているガス田の25%分と、BHP Billiton が単独所有するガス田の50%を取得するもので、後者についてはOperator になる。

取得する権益は下記の通り。
Operator
ガス田 鉱区 現在の所有   今後の所有 埋蔵量
(Best Estimate)
BHP
Billiton
Exxon
Mobil
BHP
Billiton
Woodside Exxon
Mobil
総量 Woodside
持分
Scarborough WA-1-R 50% 50% 25% 25% 50% 6.9Tcf 1.7Tcf
WA-62-R 100% 50% 50% 1.8Tcf 0.9Tcf
Jupiter WA-61-R
Thebe WA-63-R
合計   8.7Tcf 2.6Tcf
 

Woodsideは取引完了後に250百万米ドルを支払い、Scarborough ガス田の最終投資決定の段階で追加の150百万米ドルを支払う。

これにより取得する埋蔵量は2.6Tcf (Best estimate =2C)と評価される。 

Scarborough は洋上でLNGを生産する浮体式LNGによる開発を計画してきた。
Woodsideの参入により、既存のパイプラインにガスを流し込むなど浮体式LNGに比べコストが安い開発方法に切り替え、商業化を速める可能性が出てきた。

Woodsideが主体のPluto計画は、ガスを海底パイプラインで豪州西岸のBurrup 半島のBurrup LNG Park(North Rankinの液化基地に隣接)に運び、LNG化する。

業績不振のBHP Billitonは、2016年6月期通期決算では米シェールガス関連の減損が響き、64億ドルの赤字に転落した。
ガス資産を売却し、主力の石油や鉄鉱石、銅などに注力する。


近辺の計画は次のとおり。

Gorgon  Chevron50%、ExxonMobil 25%、Shell 25%
North Rankin Japan Australia LNG (MIMI) (三井物産・三菱商事)、BHP Billiton、BP、Chevron、Shell、Woodside Energy 各1/6
Pluto Woodside Energy 90%、関電 5%、東京ガス 5%

2009/9/18 Chevron、豪州でのGorgon Natural Gas Project 実施の最終決定


2016/9/10  イラン、クルド人地区でLDPE の生産開始

イランのNational Petrochemical Companyは2016年8月24日、Kurdistan provinceで石油化学プラントの生産を間もなく開始すると発表した。

253百万ドルを投じたもので、LDPE年産300千トンを生産する。

具体的には下記の通りで、当初は2012年に生産開始とされていた。

社名:Kordestan Petrochemical

立地:Sanandaj, Kurdestan province

製品:LDPE 300,000t/y

5月31日にはMahabad のMahabad Petrochemical がLLDPE/HDPE 300千トン、Butene-1 30千トンをスタートしている。

 

原料のエチレンはBandar Imam とAssaluyeh からWest Ethylene Pipelineにより輸送される。

West Ethylene Pipelineの第二期(Kermanshah からMahabadまでの585km) は間もなく開通する。

West Ethylene Pipelineは350万トンのエチレンを輸送する能力を持つ。

 

 
 

 2006/7/20 イラン、地方での石油化学推進

 


2016/9/12   小泉元首相の外国特派員協会での記者会見

小泉純一郎元首相が9月7日、東京の外国特派員協会で記者会見した。

録画 https://www.youtube.com/watch?v=BhNGZItxWOM&feature=youtu.be

テーマは、@「トモダチ作戦被害者支援基金」と、A原発反対の考え方について。

途中、通訳が「変人」を「Strange person」と訳したのに対し、「私はstrangeでも eccentric でもない、常識人だと思っている。ある人からもっと適切な訳があると教えてもらった 」と述べた。それは「Extraordinary」であると。

@「トモダチ作戦被害者支援基金」

2011年の福島第一原発事故の際に「トモダチ作戦」に参加して被爆し、被害を受けた兵士が多数いることを本年3月に知り、5月にSan Diegoに行き、被害を受けた兵士と面会した。

放射能は海の方に流れていたが、兵士は防護服を着ずに作業をした。
当時のビデオでは空母に戻ったときに、汚染が分かり、「すぐ服を脱ぎ、シャワーを浴びろ」との声が入っている。しかし、シャワーは汚染された海水から塩分を除いただけのもの。

作戦終了後に鼻血や下血など体の調子が悪くなり病院で診察を受けたが、「放射能の影響によるものとは断定できない」とされた。

これまでに7人が亡くなり、300人(最近では400人)も病気で苦しんでいる兵士が出てきている。

兵士は法律上、米政府を訴えられないので、東電やGEを訴えている。
(東京電力側に10億ドルの救済基金設立を求める集団訴訟を起こしている。)

これはほっとけないなと思った。

外務省北米局長は事情は正確に把握しており、帰国後報告したが、同情はするが、政府としては何も出来ないということであった。

米側も放射能被害と「断定できない」との立場であった。

しかし、頑健な兵士が病気になっており、常識的には放射能の被害ではないか。

そこで「トモダチ作戦被害者支援基金」を7月2日に立ち上げた。目標は来年3月末までに1億円。
建築家の安藤忠雄氏の協力で8月に大阪で講演会をし、会費1万円で1300人が集まった。

 

A原発問題

何故、総理をやめて、原発反対になったのか? 

総理のときは、 専門家の意見を信じていた。
  「安全」、「コストは一番安い」、「CO2を出さないClean energy」である。
    資源のない日本に原発は必要。

311で勉強し直し、上記3点が全て嘘と分かった。嘘を信じたのを恥じた。
日本では、「過ちては改むるに憚ること勿れ」「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」

スリーマイル島、チェルノブイリの大事故があった。
チェルノブイリの後、日本の専門家は、「日本の原発は違う。絶対安全なのだ。多重防護されている」とした。
ところが311が起こった。

「絶対安全はない」、しかし原発は事故が起これば飛行機事故などよりずっと大きな被害を与える。

東電も電力会社も、「安全第一」ではなく「収益第一」「経営第一」だ。防護が必要との声があったが、多重防護で大丈夫としてきた。

事故直後に原発40年を決めたが、今は変わった。申請すれば政府は認める。

原発が動かないと、利益が出ないから。

3年前に原発ゼロは無責任と言われた。直ちにゼロにすると、冷房、暖房が動かず、大変だと。
ところが2年間ゼロでも、最近の2〜3基だけの稼動でも、全く支障がない。ゼロでやっていける。

原発が安いというのは嘘。最も高い。
東電は賠償で政府の支援を求めた。5兆円が9兆円になった。最近はもっと支援をといっている。
廃炉でも政府のカネが必要。

「もんじゅ」など30年経っても動かない。維持費だけで1日5000万円。1兆2000億円かかっている。

原発は日本でやってはいけない産業だ。ピンチはチャンス、自然エネルギーで更なる発展ができる。

 

Q&A

1.安倍首相の評価

 原発については全く意見が違うが、(2期目は)総理としてはかなり頑張っている。

2.安倍首相の「福島 under-control 」 発言について

 これは嘘。全くコントロールされていない。
 凍土壁での地下水コントロールも出来ていない。
 よくあんなことが言えるなと不思議。

 田中委員長が川内原発について、新しい基準に合格したといったが、その後、「安全だとは申し上げない」といった。
 政府は日本の原発は世界で最も厳しい安全基準だといっている。
 アメリカと比べてみろ。

3. 反原発の進め方

 政党としてでなく、国民運動としたい。 

4.原発の対案は?

 太陽光で原発1基100万KWを賄うには山手線内の土地全てがいると言われた。昨年1年で政府支援なしで 2700万KWがやれた。
 あと風力も地熱もある。

 原発なしでもやっていける。

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なお、8月26日の深夜、NHKで生放送された討論番組『解説スタジアム』が反響を呼んでいる。

タイトルは「どこに向かう 日本の原子力政策」。

NHKによる番組紹介

今月、愛媛県の伊方原発3号機が再稼働するなど、原発再稼働の動きが相次いでいます。また「核燃料サイクル」が行き詰まりを見せるなど、日本の原子力政策の根幹が問われています。日本の原子力政策をどう考えていくか。解説委員が生放送で徹底討論します。

NHKの7人の主要解説委員が、日本の原発政策を多角的に議論するという番組だが、解説委員7人のうち6人が政府や原子力規制委員会、そして電力会社の問題点を徹底的に批判した。


2016/9/13 カナダパイプライン運営大手Enbridge、米同業Spectra Energy を2.8兆円で買収
 

カナダのパイプライン運営大手Enbridge Inc. は9月6日、米同業のSpectra Energy Corp. を370億カナダドル(280億米ドル)で買収すると発表した。

原油価格低迷と政府の規制が高まるなか、パイプラインの新設は難しく、統合により北米のエネルギーインフラの巨人になるとしている。

Enbridgeは、Alberta のオイルサンドをBritish Columbiaの港に運ぶNorthern Gateway について、カナダの最高裁が今夏、カナダ政府の認可を覆したため、着工できないでいる。

同社は先週には、長く遅れていたSandpiper pipeline project (North Dakota からWisconsin のハブに原油を送るもの)を原油価格の下落を理由に凍結した。

Spectra はNew England の既存のネットワークの拡大を計画したが、Massachusetts 最高裁が、需要家の電力会社が追加コストを電力料値上げで転嫁するのをブロックしたため、頓挫した。

本件は両社のトップの間で、Project Rainbow の名で数ヶ月にわたり協議されていたという。

Enbridgeが運営するのはカナダから米中西部・メキシコ湾岸に向けての原油パイプラインが主力で、原油安による原油減産の影響を受け輸送量の減少傾向が続いていた。

一方、Spectra Energy が運営するパイプラインのほぼすべてが天然ガス用で、米国では本格的に天然ガスの輸出が始まり、今後も案件が目白押しのため輸送拡大が期待できる。

同社はシェールガス優良鉱区の東部ペンシルベニア州 Marcellus地区から天然ガス輸出基地が集中するメキシコ湾岸にかけて天然ガスパイプラインを持っている。
また、New York市に天然ガスを供給する最大の天然ガスパイプラインを持つ。

Spectra の買収により、Enbridgeのパイプラインは原油とガスを合わせて総延長が約19万キロメートルになる。

Enbridgeの予測によると、2025年までに天然ガス輸送量は年率3〜5%成長する。輸出事業拡大の効果のほか、環境意識の高まりを背景に産業分野での天然ガスの使用拡大効果も見込めるという。


2016/9/14  韓国製洗濯機に対する米国の反ダンピング関税で、韓国のWTO勝訴確定 

世界貿易機関(WTO)の上訴機関である上級委員会は9月7日、米国が2013年に韓国製洗濯機に課した9〜13%の反ダンピング関税がWTO協定に違反するとの判決を下した。
WTO上級委は通商紛争の最終審で、3年以上に及んだ反ダンピング紛争で韓国の勝訴が確定した。

米国は2013年1月、サムスン電子とLG電子が不当に安い価格で洗濯機を輸出したとして、反ダンピング関税を適用し た。

これに対し、韓国政府は同年8月、米国の「ゼロイング」方式と「標的ダンピング」方式 は協定違反としてWTOに提訴した。

「ゼロイング(Zeroing)」は、高値輸出の分はダンピングマージンをゼロと、安値輸出のみで計算することにより、全体のアンチダンピング税率を不当に高くする計算方法。

正常価格 100
輸出価格がAが80(ダンピングマージン 20)、Bが125(同
-25)、Cが150(同 -50)の場合
(いずれも同数量とする)

通常の計算 〔(20)+(-25)+(-50)〕/(80+125+150) = -15.5% ダンピングなし
  

ゼロイング  〔20+0+0〕
/(80+125+150) = 5.6% ダンピングあり

WTOは2007年1月、日本の申立てを認め、米国にゼロイングの撤廃を勧告したが、米国は従わず、WTO の紛争処理上級委員会は2009年8月、小委員会(第1審)の判断を支持し、米国がWTOの是正勧告に従っていないと認定した。日本の「勝訴」が確定し、米国は計算方法の見直しが義務付けられた。

2009/8/20  米の反ダンピング関税調査、WTO違反が確定

米国は依然としてゼロイングを適用し続けたが、2012年2月に、米国は日本とEUに対しては「ゼロイング 」を撤廃することを約束した。

2012/2/8  米が反ダンピング課税で「ゼロイング」廃止 

しかし、韓国に対しては依然として「ゼロイング」を適用し、WTOの協定違反の判定を受け、「ゼロイング」と「標的ダンピング」を合わせる方法を考案した。

「標的ダンピング (Targeted dumping) 」は、輸入された全体物量でなく、特定の時期に特定の地域で販売された物量に対してのみダンピングマージンを計算する方式である。

米国はサムスン、LGが2012年のBlack Friday(11月の第4木曜日の感謝祭の翌日の金曜日のことで、クリスマス商戦の開始の日)に合わせて輸出した洗濯機を標的にした。米国メーカーも値引き販売するが、韓国製だけがダンピング判定を受け た。

2013年8月の韓国政府の提訴を受け、WTO紛争解決機関小委員会は2016年3月、「ゼロイング」+「標的ダンピング 」計算方式が国際協定を違反していると判断した。

しかし、米国は2016年4月に
上訴した。 しかも、WTOの上級委員会の韓国出身の委員の再任を拒否すると愚挙に出た。

WTOの通商紛争解決手続きは二審制で、小委員会(パネル)の調停が一審、上級委員会の調停が二審となる。
7人で構成されたWTO上級委員会は国家間貿易紛争で最終決定を出す「最高裁裁判官」と同じ役割をする。

張勝和・ソウル大法学専門大学院教授は2012年に韓国人では初めてWTO上級委員に選出された。

委員の任期は4年で、一度だけ再任可能となっており、再任にはすべてのWTO紛争解決機構加盟国の同意が必要である。

米国は張勝和委員の再任に反対し、再任は不可能となった。

これに対しては、現在の上級委員全員と、18人の元委員のうち生存している13人全員が抗議声明を出し た。
「米国の行為はWTOの自由貿易体制を危機に陥れ、根幹を揺るがす」とし、「上訴機構の判決と勧告は委員個人でなく上訴機構レベルで出した決定という点を看過した行動」と指摘した。

関係者は「洗濯機紛争は米国のゼロイング慣行を一度に崩す可能性があり、波及力が大きい」とし「もし上訴機構が韓国の手をあげればその後の判決の基準となるだけに、米国の産業界が急いで動いている」と説明した。
しかし、再任反対は、オバマ政権レベルで熟慮した決定ではなく、米通商代表部(USTR)の独断的な突発行動である可能性が高いと見られている。

張勝和の再任は拒否されたが、上級委員会はWTO協定に違反するとの判決を下した。

韓国産業通商資源部関係者は「世界的な保護貿易主義の流れに影響を与える。韓国企業の対米輸出環境が改善する」と述べた。

 


2016/9/15 EUの南欧7カ国がEU構造改革を求めアテネ宣言採択 

ギリシャ、イタリア、フランス、ポルトガル、キプロス、マルタ、スペインのEUの南欧7カ国の首脳は9月9日、アテネで初の南欧諸国会議(Euro-Med summit)を開いた。

旗振り役のギリシャのチプラス首相は開会に当たり、参加国は「経済危機難民危機で不公正な打撃を受け、移民流入の圧力を受け、不安定な中東・北アフリカ諸国に隣接している」と指摘した。

会議は、難民・移民問題や失業、安全保障など南欧が苦しむ課題について提言をまとめ、EUに一層の対応を求めることで一致し、「アテネ宣言」(Athens Declaration)を採択した。

全文 http://primeminister.gr/2016/09/09/15173

9月16日には、EU離脱を決めた英国抜きの非公式なEU首脳会合がスロバキアの首都Bratislavaで開かれるが、宣言に基づく提案を行うとみられる。

アテネ宣言は「欧州の経済と社会モデルの構築」を目指すとし、経済成長や難民問題、安全保障の各分野でEUが採るべき施策を提案した。

経済面では、EUが主導した緊縮策で失業者が増大し、貧困が拡大したことを受け、雇用創出に向けたEUの資金援助を大幅に拡充することを要求している。

「欧州は繁栄と社会正義の約束を守る必要がある。経済危機に打ち勝ち、雇用を産み、社会モデルを守り、我々の経済の将来に備えるため、更なる成長と投資が必要である 」としている。

とりわけ、高失業率に苦しむ若年層への支援強化を求めた。

提案3.Fostering Growth and Investment in Europe

提案4.Strengthening programmes for youth

難民問題では、ギリシャやイタリアに負担が集中している現状を打開するため、EU各国による「責任の共有」を要望している。

国境管理や移民・難民対策は欧州の将来へのチャレンジであるとし、レーシズムや外国人嫌悪は許容できないとしている。

EU の現行の難民政策はDublin systemと呼ばれ、政治的な迫害などを逃れてきた難民申請者に対しては、最初に入国したEU 加盟国のみが難民申請手続きを受け付けることになっているが、責任と連帯の原則に立ち、これを見直すことを求めている。

提案5.Addressing the challenge of migration

このほか、次の2つの提案をしている。

提案1.Ensuring the internal and external security of Europe

提案2.Reinforcing the cooperation in the Mediterranean and with African countries

今後も南欧諸国会議を続けることを決めた。次回はポルトガルで開催する。

これに対し、緊縮策を推進するドイツからは厳しい意見が相次いでいる。「仏大統領や伊首相はギリシャのチプラス首相に利用されている」とのコメントも出た。

ーーー

ドイツ主導のEUの緊縮策により、南欧諸国の経済は停滞し、失業率が増大している。特に若年層の失業率は大きい。
ドイツやオランダとの差が著しい。

難民・移民問題については、最初に入国したEU 加盟国のみが難民申請手続きを受け付けるというDublin systemでは「玄関口」にあたる国に負担が集中するため、これを緩和するため、EUの内相会議は2015年9月、加盟国の経済規模などに基づいて難民を割り当てることを賛成多数で決めた。

ギリシャやイタリアにたどり着いた約16万人を2年間かけて分担する目標だったが、両国から移転した難民は3%未満の約4700人にとどまっている。一部の中東欧諸国は反対の姿勢を崩していない。

「寛容な」難民受け入れ政策を進めてきたドイツのメルケル首相の選挙区で、首相のキリスト教民主同盟が州議会選挙で大敗した。移民受け入れがその原因である。

9月16日の非公式なEU首脳会合は、英国の離脱後のEUの団結を議論する予定だが、ドイツと南欧諸国との対立が拡大する恐れもある。

付記

9月16日の27カ国の非公式首脳会合は、今後半年間に最優先で取り組む政策課題をまとめた「行程表」を採択した。

 ・ 移民・難民問題
 ・  テロ対策・安全保障
 ・  反グローバル化への対応・若年対策
 ・  EUの将来  来年3月に将来像を提示

イタリア首相は会議終了後に単独で記者会見を開き、「今回の結論には満足していない」と言及。難民・移民対策で突っ込んだ議論を避けた会議進行や、緊縮的な財政政策を重視するドイツへの不満を隠さず、独仏との共同記者会見を拒否したことを明かした。


2016/9/15    METI、「未来志向型の取引慣行」を提案

世耕経産大臣は9月15日、経団連と自動車工業会との懇談会で、「未来志向型の取引慣行に向けて」を発表した。

経団連に対して、「日本経済を持続的な成長軌道に乗せるには中小企業の取引条件改善が必要だ」と協力を要請、自動車工業会に対しては、自動車産業の適正取引の推進のための自主行動計画の策定と付加価値向上のための先進的な取り組みの推進を要請した。

日本商工会議所との会談では、「公正取引委員会とも連携し、下請け取引の適正化に徹底的に取り組む」と述べた。

「未来志向型の取引慣行に向けて」の概要は下記の通りで、自動車業界などを念頭に、下請けに対して「一律 5%の値下げ」等を要請する商慣習を改めるよう求めるもの。
 

具体的には、「下請法」の運用基準を改正し、下請けに一律の割合で値下げ要求したり、金型の保管費用を押しつけたりするケースを違反事例として公正取引委員会に提案する。

来年の春闘をにらみ、中小企業が賃上げしやすい環境を整える狙いとみられる。

大企業のうち2015年に賃上げした割合は89%にのぼる一方、中小企業は63%に過ぎない。個人消費の底上げには中小企業の賃上げが効果的である。
特に、自動車産業の場合、部品の一律値下げ要請(強制)が賃上げを阻害している。

現在でも、取引主体(売り手と買い手)の自主的な判断で取引が行われていない場合は、「不公正な取引方法」で独禁法違反である。政府が賃上げを要請している現在において、最低の賃上げも出来ない下請けに値下げを要求するのは、本来、独禁法違反である。

本ブログでは以前に、下記のように、自動車メーカーによる部品価格値下げ要求を公取委が問題視しないことを批判した。

本来、公取委が経産省の反対を押し切ってでも摘発すべきことを、経産省の側から公取委に提案するのは面白い。

公取委は売り手側のカルテルは徹底的に取り締まるが、買い手側の値上げ阻止、値下げ要求の行動はカルテルでない限り、問題としない。

自動車メーカーによる部品価格の値下げ要求が一つの例である。

公取委の「不公正な取引方法」の1つに下記を挙げている。カルテルでなくても、違反である。

自由な競争の基盤を侵害するおそれがあるような行為で、大企業がその優越した地位を利用して、取引の相手方に無理な要求を押し付ける行為 。

この行為の形態から直ちに違法となるのではなく、それが不当な場合(公正な競争を阻害するおそれがあるとき)に違法とな る。

「公正な競争を阻害するおそれ」の例に、
取引主体の自主的な判断で取引が行われていないこと(自由競争基盤の侵害)により、競争秩序に悪影響を及ぼす行為 。

自動車メーカーの定期的な値下げ要求に対し、低賃金の弱小部品メーカーが自主的判断で常時値下げに応じていたとは考えられない。

「法的解釈」からは明らかに違反と思われるが、どうして放置しているのだろうか。

公取委も、まさか、「申告がないから自主的判断で値下げに応じていると思っていた」とは言わないだろう。
そんな申告をしたら、切られるのは明らかで、出来る筈がない。

 


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