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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2017/10/2 トランプ政権の税制改革案  

トランプ米大統領と共和党指導部は9月27日、税制改革案を公表した。

法人税率は現行の35%から20%に引き下げられる。

トランプ大統領は記者団に対し、これまで15%への減税を主張していたのは、議会との交渉で最終的に20%で決着させることが狙いだったと説明、20%という数字は「完璧な数字だ」と述べ、この数字は譲れない「レッドライン」と呼んだ。

「先進国の法人税率の平均(22.5%)よりも低くなり、米企業の競争力強化につながる」 とする。

この枠組みの下、企業は少なくとも5年間、設備投資の即時償却を認められる。
パートナーシップやLLC(有限責任会社)といったいわゆるパススルー事業体の税率は25%が上限となる。
(
現在はPass-through企業は非課税で、所有者の個人所得となり、最高税率39.6%が課税される。)

海外所得は、現在は米国への配当送金時に35%の課税がされるが(現地の課税分は控除)、これを無税とする。
「全世界所得課税方式」から「源泉地国課税」に切り替える。
既存の留保利益については1回限り課税する。(税率未定)
これにより、各社が海外に留保している多額の利益が米国に還流する。

個人所得税の税率区分は現行7段階で最高税率は39.6%だが、これを12%と25%、35%の3段階とする。
(但し、金持ち優遇の非難に対し、高所得者向けに第4の区分を追加する可能性がある)

遺産税と代替ミニマム税(AMT)などの廃止も求めており、実現すれば高所得層や富裕層に恩恵をもたらす。

法人税の実効税率は次の通りとなる。法人税率20%で基準となるカリフォルニア州の場合、実行税率は27.07%となり、日本やドイツを下回る。

詳細は 2017/4/28 トランプ政権の税制改革案
 

この案は、共和党の上院、下院のトップ、両院の税制委員会のトップ、Mnuchin 財務次官、Gary Cohn国家経済会議委員長の"Big 6"が作成した。

問題は財源で、財源確保に関する計画の詳細はまだ明らかになっていない。

下院共和の税制改革案では、現在35%の連邦法人税率を20%に引き下げ、輸出は免税して輸入品には20%をそのまま課税する「国境調整」の導入を求めている。
これに対し、Trump大統領は、
法人税は一律15%とし、国境税調整は無し。その代り海外に工場を建て、そこで生産した製品をアメリカに持ち込もうとする企業には35%の関税をかけるとしていた。

2017/2/20 米国の国境税案

しかし、ホワイトハウスと米議会指導部は7月27日、税制改革で焦点となっていた「国境税」について、「多くの不確定要素がある」として、導入を見送ることで合意した。

2017/8/1 米、「国境税」断念

ホワイトハウスは減税による税収へのマイナス効果は経済成長による税収増で相殺されるとしているが、共和党内から異論が強まる可能性がある。

 

非政府組織(NGO)の「責任ある連邦予算委員会」(Committee for a Responsible Federal Budget)は、この予算案の概要とその影響を発表した。

http://www.crfb.org/blogs/big-6-tax-framework-could-cost-22-trillion

それによると、2018年〜2027年の10年間で、減税規模は2兆2千億ドルと見込まれ、過去最大だった「ブッシュ減税」を上回る。金利を勘案すれば、2兆7千億ドルに達する。
 

連邦法人税 税率:35%から20%に引き下げ

Alternative Minimum Taxの廃止  

$1.9 trillion
海外所得非課税 (現在は米国への配当送金時に35%の課税)
既存の留保利益については1回限り課税(税率未定)
± 0
少なくとも5年間、設備投資の即時償却を認める。 $0.4 trillion
Pass-through企業
 
新しく税率 25%を設定(個人事業主やパートナーシップなど) $0.5 trillion
個人所得税 12、25、35%の3段階に簡素化 (35%より高い第4の税率の可能性あり)
最高税率35%に引き下げ

現在は最低が10%、最高が39.6%で、7段階に分かれている。

$1.7 trillion 

 

Alternative Minimum Tax (AMT) の廃止
累進税率で課税される所得税とは別に、AMT(税率 は26%又は28%)を算出し、いずれか高い金額を納付(金持ちに少なくともいくらかは税金を払わせるのが目的)
各税率適用の所得の範囲のインフレ調整の より正確化 -$0.1 trillion
基礎控除額を現行の約2倍に引き上げ
(単身では1万2000ドル、共働き夫婦では2万4000ドル)
$0.7 trillion
child tax credit 現在の17歳未満1000ドルを著しく(500ドル?)増やす。
子供以外の扶養家族控除 500ドルの新設
$0.4 trillion
本人及び扶養家族の基礎控除(1人4050ドル)の廃止 -$1.6 trillion
遺産税(estate tax)の廃止 $0.2 trillion
住宅ローン金利、寄付以外の控除の廃止 -$1.6 trillion
その他 -$0.3 trillion
合計 減税 $5.8 trillion、増税 $3.6 trillionの差引 $2.2 trillion
同上 (金利込)   $2.7 trillion

 


2017/10/3  厚労省、アスベスト被害者に国に対する訴訟を督促

厚生労働省は10月2日、アスベスト工場の元労働者や遺族ら2,314人に対し、国賠訴訟を起こすよう個別に通知する方針を正式に発表した。

2014年の最高裁判決後の和解で、条件に合う被害者が新たに同種訴訟を起こせば賠償に応じる方針であるが、対象者のうち多数が訴訟を起こしておらず、賠償金を受け取っていないままである。

裁判を起こせば、積極的に和解手続きを進めて賠償金を支払う。

周知用ポスターとリーフレットをリニューアルし、現住所等の確認が取れている人に対しては、10月上旬にリーフレットを発送する。

 

 

ーーー
 

大阪府の泉南地域のアスベスト紡織工場の元従業員とその遺族89人が、規制の遅れで肺がんになったなどとして国に賠償を求めた2件の集団訴訟(大阪アスベスト訴訟第1陣、第2陣)で、最高裁第1小法廷は2014年10月9日、規制権限を行使しなかった国の対応を違法とする判決を言い渡した。

国は、1971年に粉じん排気装置の設置義務化を行ったが、原告は、「1958年には実用的な技術も普及しており、義務化が可能だった」とした。

裁判官5人全員一致の意見で、「健康被害の医学的知見が確立した1958年時点で規制すべきだった」とし、国の責任を認めた。

第1陣28名については賠償額の算定のため2審の大阪高等裁判所に審理が差し戻され、国は早期解決のため和解に応じる意向を示し、同年12月26日、原告27人(最高裁判決後 1人死亡)が国と和解した。

和解内容は(1)国が謝罪する(2)国は責任割合を2分の1とした最高裁判決に沿い、約2億7300万円を賠償する(3)被害者を掘り起こすために厚生労働省が周知する(4)泉南地域の工場跡に残る石綿の除去を進めるよう厚労省が関係省庁に伝える−−の4点。

国は今後、最高裁判決の条件に合う被害者が新たに同種訴訟を起こせば賠償に応じる方針で、新たな訴訟は2015年2月にも提起される見通し。

2014/10/10 アスベスト訴訟、最高裁 「国に責任」の判断

対象者は次の条件に合致する石綿工場の元労働者やその遺族

(1) 1958年5月26日から1971年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場(石綿紡績工場、石綿含有建材・製品の製造工場など)で、石綿粉じんにばく露する作業に従事。
(2)その結果、石綿による一定の健康被害(石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚などを)を被ったこと。
(3)提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること。  

ただ裁判を起こさなければ賠償金が受け取れないため、救済が遅れており、9月末までの請求者は約230人に過ぎない。厚労省は今回、該当者に連絡し、訴訟を督促する。

石綿工場と考えられる事業場であり、かつ、石綿ばく露作業を国の責任期間内に行っていた可能性のある事業場において、石綿関連疾患による労災支給決定された人のうち、国の責任期間内に石綿ばく露作業に従事していた可能性のある人: 1,356人

じん肺管理区分決定者のうち、石綿によるじん肺管理区分決定者であり、石綿工場と考えられる事業場で、かつ、石綿ばく露作業を国の責任期間内に行っていた可能性のある事業場において、「じん肺管理区分決定(管理2〜4)」を受けた人(ただし、上記1に含まれる方114人を除く) : 958 人


厚労省ではまた、都道府県労働局、労働基準監督署、法テラス、労災指定医療機関などにポスター(下記)とリーフレットの掲示を依頼する。

 

 

 


2017/10/3 The Mystery of the Missing Inflation (物価上昇が消えた謎)

リーマン・ショックを的中させ一躍有名となったニューヨーク大学のNouriel Roubini教授が、国際的なNPOで各国の新聞をつなぐ組織であるProject-Syndicateのサイト The World Opinion Page に 9月13日に論文を掲載した。

タイトルはThe Mystery of the Missing Inflation で、世界の多くの国で経済が好転しているのに物価上昇が起こらないのは何故かを論じている。

https://www.project-syndicate.org/commentary/monetary-policy-missing-inflation-by-nouriel-roubini-2017-09

日本のCPI 国FRBが重視する商務省発表の個人消費支出物価指数(PCE Price Index)  

教授は、理由の一つとして、先進国のSupply Shock を挙げる。

もし、供給ショックが一時的であるというのが間違いなら、正常化は間違いであり、緩和策を続けるべきだということになろうが、 逆のことも言えるとする。

国際決済銀行はこの立場をとっている。「インフレ目標を2%から0%に下げるべきだ」と主張している。永続的な供給ショックを前提にすれば0%が正常なインフレ率であるとする。
それなのに2%を目標とし続ければ、過度な金融緩和でリスク資産の価格を押し上げ、バブルを起こしてしまう。
中央銀行は、次の金融危機を避けるため、早く金融正常化政策をとるべきであるとする。

しかしほとんどの中央銀行はこの立場をとらない。これらの中央銀行は、2%のインフレ目標を捨てないが、供給ショックが一時的なものとみる。
さもなければ、量的緩和やマイナス金利という異常な措置を続けねばならなくなるからである。この異常な措置は中央銀行にとって不快なものである。

教授は、日本銀行は量的緩和やマイナス金利を不快なものとしない唯一の例外としている。

米国もEUも、物価が目標に達しなくても、出来るだけ早く正常化しようとしているが、日本銀行は2%に近づくまで、この措置を継続しようとしている。

他の中央銀行が2%を「目標」としているのに対し、日本銀行の場合は2%は「公約」であるからであろう。

 

ーーー

日本の場合は、上記のSupply Shock に加え、需給構造の問題もある。

需要構造が変わっているのに、規制により供給体制が需要に対応できなくなっている。

この解決には、需要のなくなった産業への保護をやめ、新しい需要に対応する産業への規制をやめて、供給構造を改変するしかない。

2017/1/4 アベノミクス4年

 

のままでは、いつまで経っても2%は達成できず、量的緩和やマイナス金利の弊害が増大する。

 

 


2017/10/4  オバマケア見直し 採決見送り 

オバマケアの見直しをめぐって、与党・共和党は新たな法案の採決を目指していたが、党内で再び反対意見が出て可決が見込めないことから、9月26日に採決を見送ることを決めた。

トランプ大統領は、「数人の共和党の議員には失望した」と述べ、不快感をあらわにした。

付記  2017/10/18  トランプ政権のオバマケア骨抜き策に対し、州が訴訟

トランプ大統領は、オバマ前政権が導入した医療保険制度 Obama Careの見直しを重要な公約の1つに掲げた。

下院は5月4日の本会議で、共和党が提出した医療保険制度「オバマケア」の廃止と、これに替わる制度の創設を盛り込んだ法案(American Health Care Act)を賛成217、反対213の僅差で可決した。

2017/5/9  オバマケア代替法案 米下院が可決

しかし、上院共和党では穏健派が無保険者の増加につながると懸念する一方、保守派はオバマケア廃止には不十分と主張し、見解が割れた。

7月25日には代替法案の審議開始を承認したが、その後提出した3つの法案は、いずれも与党共和党員の一部の反対で否決された。
この結果、早期の法案可決を諦め、休会入りした。

2017/8/7 混迷の米議会、オバマケア代替法案を決められず、夏季休会入り


今回、Bill Cassidy及びLindsey Graham 上院議員が新たな法案をまとめ、今週中の採決を目指していた。

この案のポイントは、@Medicaidの連邦予算の大幅削減、Aオバマケア保険を提供する医療保険会社への補助金の停止。

これにより、数百万人が保険を失うと試算され、民主党のほか、保険会社や医療関係者も反対を表明している。

上院(定数100)は今年度中の9月末までなら、60票ではなく過半数の賛成で法案を通過させることができる。しかし、共和党は52議席のため、3人が反対すれば可決できない。

米上院は4月7日、「核オプション」(nuclear option)と呼ばれる禁じ手(フィリバスター制度の変更)を使って、保守派のNeil Gorsuch を最高裁判事に指名した人事を 54 対 45 の賛成多数で承認した。

2017/4/8 米上院、異例の手続きで最高裁判事を承認

過半数の賛成での法案通過はこの関連と思われるが、不明。


先ず、政府の関与を最小限にすべきだと主張する保守強硬派のRand Paul 議員がいち早く反対を表明した。

一方で、低所得者向け公的医療保険の大幅縮小に反発したSusan Collins議員も反対に回った。

更に、米共和党の重鎮であるJohn McCain上院議員が反対票を投じることを明らかにした。

コストがどの程度になるのか、保険カバーにどのような影響が及ぶのかを知らないまま投票することはできないとし、共和、民主両党が法案策定にともに取り組むことが望ましいとの見解も示した。

3人の反対で、過半数を獲得できないこととなった。
 

10月からの新たな会計年度では、過半数で法案を可決できる特別なルールが当面、適用できなくなり、上院定数100のうち60票が必要となる。

民主党は公的医療保険の拡大を目指しており、協力は簡単ではない。

共和党幹部は当面は税制改革に集中する考えを示しており、医療保険制度の見直し議論はしばらく後回しになる。



2017/10/5  JXTG、室蘭の化学品工場を閉鎖、物流拠点に転換

JXTGエネルギーは9月27日、室蘭製造所での石油製品および石油化学製品の生産を2019年3月末で停止したうえで、同年4月より、北海道を中心とした石油製品の物流拠点(出荷基地)として事業を再構築すると発表した。

2017年4月のJXエネルギーと東燃ゼネラル石油との経営統合により、国内16カ所に製油所・製造所を有することとな ったが、新たな最適生産・供給体制について様々な検討を重ねた結果、本件を決めた。

室蘭製造所 は2018年4月に室蘭事業所として運営を開始する。主な事業内容は、石油製品の受入・備蓄・出荷(油槽所機能)である。

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室蘭製造所は1956年に室蘭製油所として操業開始した。

当初の原油処理能力は日量7,500バレルであったが、1973年に110,000バレルに、1999年に196,000バレルにアップした。
しかし、2001年に180,000バレルまで削減した。

経済産業省は2010年7月5日、通称「エネルギー供給構造高度化法」に基づき、告示を出した。

日本の重質油分解装置の装備率を2013年度までに10%から13%程度まで引き上げることを目標に基準を定め、引き上げを義務化した。

重質油分解装置の装備率 改善率
10%未満の企業  45%以上
10%以上13%未満の企業  30%以上
13%以上の企業  15%以上
重質油分解装置の装備率=重質油分解装置の処理能力÷常圧蒸留装置(トッパー)の処理能力

重質油分解装置の新設には500億円以上かかるとされ、内需が縮小する中で新増設は非現実的で、実質的にはトッパー能力削減しかないとされた。

2010/7/7 エネルギー供給構造高度化法で重質油利用促す新基準、石油業界の再編圧力に

これに基づき、JXグループは580千バレルを削減したが、このなかに室蘭の180千バレルが含まれている。

2014/3/14   エネルギー供給構造高度化法 処理期限

室蘭製油所は2014年3月の原油処理停止に伴い、同年4月に室蘭製造所に改称した。

現在の製造設備は次の通り。

ナフサ水素化精製装置 64,000バレル/日
接触改質装置(PL装置) 36,000バレル/日
ベンゼン抽出装置 9,000バレル/日
粗キシレン製造装置 20,000バレル/日
キュメン製造装置 4,200バレル/日
灯油水素化精製装置 45,000バレル/日
流動接触分解装置(FCC装置) 30,000バレル/日
減圧軽油水素化脱硫装置(MHC装置) 45,000バレル/日
水素化分解装置(HDC装置) 30,000バレル/日
水素製造装置 1,230,500Nm3/日
硫黄回収装置 250トン/日

             

JXと韓国のSK Innovationは2011年8月5日、韓国でパラキシレンと潤滑油ベースオイル製造のJV設立製造に係る合弁会社を設立することで合意した。

  パラキシレン製造JV 潤滑油ベースオイル製造JV 
1.社名 Ulsan Aromatics Yubase Manufacturing Asia
2.所在地 蔚山広域市(SK Energy 蔚山コンプレックス内) 蔚山広域市(SK Energy 蔚山コンプレックス内)
3.設立時期 2012/6/8 2012/10
4.出資比率 JXエネルギー       50%−1株
SK Global Chemical 50%+1株
JXエネルギー    28%
SK Lubricants 72%
5.事業内容 パラキシレンの製造 潤滑油(ベースオイル)の製造
6.生産能力 約100万トン/年 (世界最大) 135万kl/年
7.商業生産 2014年予定 2012/10
8.総投資額 約1兆ウォン(約800億円) 約3,500億ウォン(約280億円)

2011/8/9  JXエネルギーとSKグループ、韓国でパラキシレンと潤滑油ベースオイル製造のJV設立

2014/4/30  JXエネルギーとSK総合化学のパラキシレンJV : 韓国の法改正

室蘭製造所はパラキシレンの原料の粗キシレンをUlsan Aromaticsに供給しているが、これが赤字要因になっているとされている。

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現在の JXTGエネルギーの製油所・製造所体制は次の通り。



2017/10/6 米エネルギー省、
Vogtle 3、4号機原発の建設続行で債務保証追加 

米エネルギー省は9月29日、Southern電力によるVogtle 3、4号機原発の建設事業に対する債務保証を 条件付きで最大37億ドル追加すると発表した。
当初から83億ドルの保証を行っており、債務保証合計は120億ドルになる。

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Westinghouse は3月29日、ニューヨーク州連邦破産裁判所に米国連邦倒産法第11章に基づく再生手続申し立てた。

WestinghouseのChapter 11手続きにより、建設中の2原発(各2基)の追加コストを電力会社負担に変更してWestinghouseの損失を確定させるのが目的。

 

東芝は6月10日、Westinghouseが建設中の「AP1000」原発、Vogtle 3、4号機建設計画に関する親会社保証について、Southern電力に対し、3,680百万米ドルを2017年10月から2021年1月までの間に分割して支払うことで合意書を締結した。

2017/6/12 東芝、米国原発建設プロジェクトの親会社保証問題で前進 

Southern電力は10月2日、東芝から債務保証額の分割払いの第一回分として3億ドルの支払いを受けたと発表した。

東芝は7月27日、サウスカロライナ州で建設中のV.C. Summer 原発2号機、3号機に関する親会社保証について、South Carolina Electric & Gas 及びSantee Cooper との間で合意書を締結した。

東芝は両社に対し、2,168百万ドルを2017年10月から2022年9月までの間に分割で支払う。この支払は、2基の原発の建設、1基だけの建設、建設断念のいずれのケースでも行われる。

2017/7/31 東芝、米原発の保証債務 6561億円で確定 

なお、South Carolina Electric & Gas 及びSantee Cooperは9月27日、東芝から受け取る予定の保証金のうち、2017年10月の支払い分を除く全てをCitibankに売却した。
総額の91.5%に割り引いた金額となるが、5年の分割よりも直払いを選択した。東芝の今後の支払い能力への懸念もあると思われる。


South Carolina Electric & Gasは7月31日、
V.C. Summer 原発の建設を断念すると発表した。完成を目指せば追加コストが膨らみすぎること、税額控除制度の延長が不明なこと等を勘案して決定した。

South Carolina Electric & Gas(55%出資)は事業継続も考えたが、共同事業者のSantee Cooper (45%出資)が撤退を決めたため、断念した。

Southern電力は8月31日、Georgia Public Service Commission にVogtle 3、4号機の工事を続行すると報告した


この結果、Westinghouseの扱っていた原発は次の通りとなる。

    建設 東芝保証 政府債務保証
Southern電力 Vogtle 3、4号機 継続 3,680百万ドル 83億ドル
+37億ドル
South Carolina Electric & Gas V.C. Summer 2、3号機 断念 2,168百万ドル  
合計     5,848百万ドル  

 

今回の政府債務保証はThe Energy Policy Act of 2005 によるもので、対象は、新規の又は著しく改善された技術を使い、温室効果ガスを減らす計画となっている。
実施された場合、2014年12月に出された125億ドルの先進原発プロジェクトを対象とする募集での最初のものとなる。

保証は、Southern電力の株主3社に与えられる。

株主 出資比率 保証
Georgia Power Company 45.7% $1,670 million
Oglethorpe Power Corporation 30.0% $1,600 million
Municipal Electric Authority of Georgia 22.7% $415 million
Dalton市 1.6%
合計   $3,685 million

エネルギー省のPerry長官は、米国の原子力エネルギーの将来は明るいと述べ、原発建設を後押しする姿勢を強調した。

 

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なお、Westinghouse のChapter 11 手続きは遅れている。

ロイターによると、Blackstone Group LP とApollo Global Management が共同で再建スポンサーに名乗り出た。買収額は40億ドルに近いとされる。

このほか、Cerberus Capital Management LP も原発部品メーカーのBWX Technologies Inc と共同買収の話し合いをしているとされる。

他にも検討している企業はある。但し、対米外国投資委員会(CFIUS)は米国企業以外による買収は認めないだろうと見られている。

 


2017/10/7 中国、預金準備率最大1.5%下げ 

中国人民銀行(中央銀行)は9月30日、一定の条件を満たした銀行に限り、預金準備率を2018年から最大1.5%下げると発表した。
中小零細企業、農業、貧困対策向けの融資を拡大した銀行が対象となる。10月の共産党大会を控え、習近平指導部が社会的弱者に配慮する姿勢を訴える狙いとみられる。

大手金融機関の標準の預金準備率は現在17%だが、中小零細などへの貸出残高(またはその増加額)が、全体の貸出残高(同)に占める比率が2017年に1.5%になった銀行は0.5%、10%に達した銀行は1.5%それぞれ準備率を下げる。2017年通年の実績で下げ幅を決める。

四大国有銀行など大手や中堅銀行はすべて、地方銀行は全体の9割が準備率下げの対象になると見られ、事実上の金融緩和ともいえる。

人民銀行は2016年3月に準備率を下げて以来、金利、準備率ともに据え置いている。

預金金利は1年定期のもの

中国は、シャドーバンキングの膨張に歯止めをかけ、金融部門の潜在的なリスクの芽を摘むため、2017年初からは短期金融市場の金利を高めに誘導し、引き締め気味に金融政策を運営している。

今回の措置が金融緩和と受け取られると、いったん収まった人民元安が再燃する恐れもあるため、人民銀行は「金融緩和ではない」とわざわざ強調した。

 


2017/10/9     武田薬品、Entrepreneurship Venture Programで2社目を設立

武田薬品は10月2日、Entrepreneurship Venture Programにより2社目のバイオテク企業、 ChromaJean を湘南研究所に設立したと発表した。

Entrepreneurship Venture Program は、武田薬品の研究アセット、技術を用い、武田薬品で働く研究者自らが起業することをサポートするプログラム。

武田薬品内におけるアントレプレナーシップを奨励し、ベンチャー企業の独立運営を支援するだけでなく、アントレプレナーシップの育成に貢献することで、日本の創薬エコシステム醸成にも寄与することを期待する。

ChromaJeanの設立に際しては、同社で培われた資産や技術が初期運転資金と共に提供され、さらに新会社は湘南研究所における実験機器やオフィススペースなど、必要な研究サービスを利用することができる。

このProgramでの第1号は SEEDSUPPLY で2017年5月15日に設立された。(発表は8月1日)

両社の概要は次の通り。

1) SEEDSUPPLY

事業:医農薬品の研究・開発ならびにそれらの受託およびコンサルティング業務

既存のハイスループットスクリーニング技術では対応できない創薬ターゲットを対象にした化合物探索や標的分子が不明な化合物の結合蛋白質探索に威力を発揮する。低分子化合物の新しい可能性を追求していきたいとしている。

サービス:

結合化合物探索:

武田薬品が保有する化合物ライブラリを用いて結合を指標にしたハイスループットスクリーニングを行う。
精製蛋白質だけでなく、膜画分、ミクロソーム画分等も用いることができるので、あらゆるターゲットに対応できる。
 

   結合蛋白質探索:標的が未知な化合物に結合する蛋白質を当社が有する蛋白質ライブラリからスクリーニングを行う。

Drug discovery

既存のハイスループットスクリーニング技術では対応できない創薬ターゲットに特化し、独創的な新薬候補化合物の創製に挑戦する。

2) ChromaJean

最適な分離・精製条件をすばやく見出す独自のアルゴリズムと、効率化を可能にするクロマトグラフィー技術を組み合わせ、以下の事業展開を通して前臨床および早期開発ステージにある医薬品の研究開発に貢献する。

1. 受託試験サービス
キラル化合物を含む種々の化合物に対して、迅速かつ非常に高い成功確率で分離・分析を達成できるようにChromaJeanが開発し、標準化した独自のクロマトグラフィー技術を提供
2. 新規クロマトグラフィー技術の開発
アカデミアや研究機器メーカーと協業し、ChromaJeanの技術を基にした新規技術の開発
3. 国内外の創薬関連企業におけるクロマトグラフィー・プラットフォームの構築支援サービス
今後構築するフランチャイズネットワークを通じた、ChromaJeanの技術を様々な研究活動において活用するためのクロマトグラフィー・プラットフォームの構築支援サービスの提供
 
クロマトグラフィー技術は、研究プロセスにおいて必要不可欠な技術であり、様々な研究部門で使用されているにも関わらず、作業者の経験と勘に依存しているために個人差が大きい。

ChromaJeanは、武田薬品において培った専門性を活かし、分離条件探索から精製完了にいたるまでの各ステップの標準化・自動化に成功した。
さらに武田薬品が長年蓄積してきた独自のノウハウを組み合わせることにより、高速化、省コスト化および個人差の排除を実現するとともに、非常に成功確率の高い技術となっている。

 


2017/10/11  認知症の35%は予防可能

10月8日付日本経済新聞は、掲記のタイトルで、英 University College LondonのGill Livingston 教授とのインタビューを掲載している。

英医学誌 Lancet の認知症(Dementia)に関する国際委員会が7月20日付で同誌に論文“Dementia prevention, intervention, and care” を発表して話題となった。Livingston教授はこの研究を主導した。

概要は以下の通り。

2015年時点で世界に約4700万人と推定されており、2050年に約3倍の1億3100万人になると予測されている。
世界の経済的な負担は2015年時点で8,180億ドル。2050年には2兆ドルを超える見込み。

研究で分かった認知症の最も大きな要因は、中年期(45〜65歳)の聴力低下で全体の9%を占めた。中年で耳が遠くなると、9〜17年後に認知症になる例が増える傾向がある。

次は中等教育(12〜14歳)の未修了が8%にのぼる。教育を受けることで、脳を活性化して認知機能を高めると同時に、食物に気を使ったり運動をしたりして健康に気を配るからだ 。

このほか中年での肥満、高血圧、65歳以上の高齢期での喫煙、うつ、活動量の低下、社会的な孤立、糖尿病が十分証拠があるリスク要因だった。

これら9つの要因を改善すれば、認知症の3分の1を防ぐことができる。遺伝的な要因は7%にすぎなかった 。

米、英、スウェーデン、オランダなどでこのようなリスク要因を改善し、生活習慣を変えると、認知症が減るという報告がすでにある。その大部分は教育によるものだ 。

論文概要 http://www.thelancet.com/commissions/dementia2017

論文全文 http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(17)31363-6/fulltext

 

論文では認知症のリスク ファクターを次の通りとしている。

時期 要素

原因比率 %

 
予防不可 予防可能
生まれつき 遺伝 7%   アポリポ蛋白E (ApoE) ε4 allele (下記)
若年期
(12〜14歳)
中等教育未終了   8% 脳を活性化して認知機能を高める。
健康に気を配る。(食物や運動)
中年期
(45〜65歳)
聴力低下   9%  
高血圧   2%  
肥満   1%  
高齢期
(65歳以上)
喫煙   5%  
鬱 (depression)   4%  
活動量の低下   3%  
社会的な孤立   2%  
糖尿病   1%  
その他 58%    
合計 65% 35%  

アポリポ蛋白E(ApoE)主として肝細胞で産生され、全身の他の臓器へのコレステロールや脂肪酸の運搬に関与している。

ApoE遺伝子にはε2、ε3、ε4の3つの対立遺伝子(allele )がある。
 ApoE ε3は正常型(Wild Type)
 ApoE ε4はアルツハイマー病の危険因子と見なされている。
 ApoE ε2は受容体との結合力が低く、高脂血症の原因となる。


教授は、「日本の研究報告はなかったが、日本でも栄養バランスの改善や、高血圧や聴力低下の防止、持続的な運動によって、認知症になる人を減らせると思う」と述べ、「認知症の新薬開発は今のところ、うまくいっていないし、まだ時間がかかる。予防で認知症を減らす方が、医療コストの削減につながる」 としている。

 

なお、Dementiaの語源はラテン語の「demens」で、「mens」がmind(心、精神)の意味であることから、out of mind の意味となる。 


2017/10/12    GE、物言う株主を取締役に

General Electric は10月9日、物言う株主(activist)で知られるTrian Fund Management, L.P.の設立パートナーの一人で最高投資責任者(Chief Investment Officer)のEd Gardenが同日付で取締役に就任したと発表した。

Ed GardenはTrian Fund Managementを率いるNelson Peltz の右腕にして義理の息子であり、何年にもわたって多数の企業の取締役を歴任し、経験を積んでいる。

取締役就任に当たりEd Gardenは、「他の投資家と同様にGEの株価には失望している。しかし、GEは長期な投資対象としてかなり上昇余地があると信じている」との声明を出した。

一方、Trian Fund ManagementのNelson Peltzから取締役の席を求められていたProcter & Gambleは、委任状争奪戦の結果、とりあえず拒否した。

ーーー

GEは6月12日、GE Healthcareの社長John Flannery (55歳)が8月1日付でGEのCEOになり、2018年1月1日付で会長兼CEOになると発表した。Jeff Bornstein CFOが副会長になる。

GEは10月6日、副会長に昇格したばかりのJeff Bornsteinが2017年12月末で退社すると発表した。更に、Immelt 会長を支えてきた勤続39年のJohn Rice副会長と勤続27年のBeth Comstock副会長も退任する。

Flannery CEO とライバル関係にある人物は事実上GE本体からいなくなる。

Jeff Immelt 会長兼CEO (61歳)は2017年12月31日の引退まで会長にとどまる。

Immelt 会長兼CEOはGEの大改革を成し遂げたが、株価が上がらないのが問題とされた。

物言う株主(activist)として著名なNelson Peltz 氏率いるTrian Fund Management は、2015年にGE株を取得し、圧力を強めていた。

2017/6/16 GEのJeff Immelt 会長、退任 

参考 Trian Fund Management はDuPontの前CEOのEllen Kullman 氏を退任に追い込んでいる。

2015/10/6 DuPont のCEO Ellen Kullman、急に退任

Trian Fund Managementは2015年10月、保有するGE株式数が 9850万株と、全体の1%、時価額で25億ドルに達し、GEの大株主上位10 社に入ったことを明らかにした。

この時点ではGEの取締役会への参加は要求していないが、一段の経費削減と金融資産の売却拡大、さらにはM&Aへの慎重対応を求めた。

GEの Immelt 会長兼 CEOはここ数年にわたり、GEの事業改革を進めてきた。

2015年6月、金融事業の大幅縮小を打ち出し、2017年末ごろまでに2500億ドルの資産を売却する方針を決めた。

GE Capitalは世界有数の金融機関で、その保有資産は 5000億ドル、GE全体の売上の3〜4割を占め、利益ベースでは半分近くを稼いでいる。

2015年8月、医療事業者向けの金融事業を貸出債権を含めて85億ドルで米金融機関のCapital One売却すると発表、また GE Capital Bank のインターネット銀行事業と預金約160億ドルをGoldman Sachs Bankに売却することで合意した。

2015年10月に、消費者ローンやリースなど金融部門の一部を米銀行大手Wells Fargoに売却すると発表した。譲渡する資産の規模は約320億ドル。

2015年12月、日本における法人向けのリースおよび融資事業を三井住友ファイナンス&リースに売却することで合意した。対象となる最終正味投資額は約46億米ドルで売却価格は約48億米ドル。
 

一方、2015年11月に仏重電大手 Alstomのエネルギー部門の買収手続きを完了した。買収額は97億ユーロで、再生可能エネルギー部門、送配電部門の各子会社の発行済み株式の50%、原子力発電向けのタービン事業子会社では80%をそれぞれ取得した。(AlstomはGEの鉄道信号システム事業を譲り受け、鉄道ビジネスの専業企業になる。)

取引は Partnership structure を採用、GE Oil & Gas とBaker Hughes は新設のPartnership に関連資産を拠出する。
新設の上場企業を通して、GE はPartnership の権益の 62.5%を、Baker Hughesの既存株主は権益の37.5% を受け取る。
Baker Hughesの既存株主は更に、GEがPartnership に拠出する74億ドルを使って、1株当たり17.50ドルの特別配当を受け取る。

2016/11/8 GE、Baker Hughes と石油・ガス事業統合

 

8月1日付でGEのCEOになったJohn Flanneryは、株価下落の中で早急に結果を出すよう圧力を受けている。

事業ポートフォリオの変更も検討、2018年末までに経費を20億ドル削減する計画を持ち、その一環として、社用ジェット機や社用車も減らしている。

Trian Fund Management は、コスト削減を上積みするなどの経営改善策を要求していた。

今回、取締役派遣を巡り、Trian Fund Management とGEは水面下で協議を進めていたもよう。

Flannery CEOは、低迷する株価を踏まえると、一部の機関投資家らの支持を得るTrian Fund Management と対立するのは現状では得策ではないと判断した模様。
Trian Fund 圧力をテコにして、大胆なコスト削減を行うとみられる。

ーーー

これに対し、Procter & Gambleは別の姿勢を取った。

Trian Fund Management Nelson Peltz は、P&Gの株価が低迷するのは経営陣の怠慢と主張し、P&Gの取締役就任を求め、投資家に賛同を求めていた。

発行済み株式の4割を保有する退職年金基金などの機関投資家がPeltz の取締役就任への賛同を表明していたほか、株主アドバイザー大手3 社もPeltzを支援、票数が拮抗するとみられていた。
委任状争奪をめぐるキャンペーンに、Trian Fund ManagementとP&Gが費やした金額は総額6,000万ドルとも推定されている。

しかし、10月10日の株主総会で株主投票の結果、Peltz の取締役就任の提案を退けた。

この結果について、Trian Fund Management 側は投票結果は非常に接戦で、結果を納得できないとし、独立した調査を求めている。

P&G側は今回の結果は暫定的なもので、独立調査の詳細は米証券取引委員会(SEC)に提出する報告資料内で開示するとしている。

付記 P&Gは10月16日、SECへの報告で、株主投票の投票数を明らかにした。
   
Nelson Peltz への投票数は会社側提案の11人の候補より少なく、会社側が僅差で勝ったことが分かった。

 


2017/10/13 東証、東芝の特設注意市場銘柄の指定解除 

東証は10月11日、東芝の特設注意市場銘柄の指定を12日付で解除すると発表した。同時に監理銘柄の指定を解除する。

「特設注意市場銘柄」:

有価証券報告書に虚偽の記載を行ったり、監査報告書で不適切な会計処理であることが指摘されていたり、上場廃止基準に抵触するのをギリギリのところで免れたりした企業のことで、コーポレートガバナンスの改善が急務であると取引所が判断し、それを促す意味でも通常の銘柄と区別する。

指定を受けた企業は、それから1年後に内部管理体制確認書を取引所に提出する。この内容を審査し、着実な改善がうかがえると判断されれば、「特設注意市場銘柄」の指定が解除され、通常の取引銘柄に戻される。

しかし、依然として改善がなされておらず、今後もその見込みがないと取引所がみなした場合や、指定から1年6カ月以内に改善の兆候が見られなかった場合は、「上場廃止」の処分が下される。

「管理銘柄」:

上場銘柄が上場廃止基準に該当する恐れがある場合に、投資家にその事実を周知するため、指定される。


東証は2015年9月15日、有価証券報告書に虚偽記載を行い、内部管理体制などについて改善の必要性が高いと判断し、東芝を特設注意市場銘柄に指定した。
同時に、上場契約違約金 9,120万円の支払いを命じた。

2016年12月、指定から1年を経過した後に同社から提出された内部管理体制確認書の内容等を確認したところ、全社的に改善に向けた取り組みが行われていることが認められたが、なお、問題が見られ、確認する必要があると判断し、特設注意市場銘柄指定を継続することにした。

当該指定から1年6か月を経過した日(2017年3月15日)以後に同社から再提出される内部管理体制確認書の内容等を確認し、内部管理体制等について改善がなされなかったと認められた場合は、同 社株式は上場廃止となる。

日本取引所グループの清田CEOは6月16日の定例記者会見で東芝の特設注意市場銘柄の指定解除の審査について「有価証券報告書が出ないうちに一方的に結論を出すのは難しい」との見方を明らかにした。

なお、東芝株式は8月1日、東京証券取引所の第1部から第2部に「降格」となった。2017年3月末時点で債務超過となり、1部上場基準に抵触した。

2017/8/2 東芝、東証2部降格 

東芝は8月10日、PwC あらた監査法人から2017年3月期の有価証券報告書について監査法人から「おおむね妥当だ」とする「限定付き適正」の監査意見を受領し、有価証券報告書を関東財務局に提出した。

この結果を受け、東証は東証は特注銘柄から外すかの検討を行ってきた。

2017/8/14 東芝、有価証券報告書を提出、決算発表
 

今回、東証は下記により、指定を解除した。

特設注意市場銘柄指定から1年6か月を経過した後の2017年3月15日に同社から再提出された内部管理体制確認書の内容等を審査した。
その結果、以下の改善策が講じられていることが認められた。

i) 事業実態に反した非合理的な経営目標を要求する等の経営トップによる暴走や歪んだ経営方針が無批判に踏襲されていくことを牽制・抑止するため、取締役の選任・解任プロセスを改善。

指名委員会を社外取締役のみで構成し執行サイドからの独立性を確保、経営トップに対する信任調査の導入等

経営陣への有効な牽制と執行サイドへの実効的な監督を行うことを目的として、取締役会・監査委員会等の社内機関がその職責を十分に発揮するためのガバナンス態勢を刷新。

取締役会・監査委員会の構成の見直し及び情報収集態勢の強化、社外取締役のみで構成される「取締役評議会」の設置と重要な意思決定プロセスにおけるチェック機能の発揮等


社内の各部署とその役職員が本来の任務を確実に遂行できる社内風土を定着させることを目的として、全社的なコンプライアンス意識の向上・定着を図るため、全役職員に対し経営トップから継続的にメッセージを発信。また事業・役職に応じた実効的な研修、法令違反等への厳格な処分等を実施


ii) 重要な経営判断を行う際には十分なリスクの分析・評価を必ず行うこととするため、リスク分析・評価を専門とする組織(外部専門家の知見も活用)を設置し、同組織の分析・評価を踏まえて取締役会等で審議することとするなど、意思決定プロセスを見直し

iii) 事業の推進とは独立して適正な会計報告を行うため、CFOの選任・解任に係る拒否権を指名委員会に付与し、また、各カンパニー(各事業部門)の財務部門をCFOの直轄とするなど、財務部門の独立性を強化。開示体制を強化するため、適時開示に係る情報連携体制等を見直し

iv) 子会社の管理を強化するため、リスクに応じて子会社を管理する方針を明確化した上で、子会社のリスク情報の収集態勢の強化、子会社に対する実効的なモニタリング等を実施

これらから、同社の内部管理体制等については、相応の改善がなされたと認められた。
 

ーーー

なお、8月初めの時点では、上場継続には3条件全ての達成が条件であった。

@債務超過の解消

A有価証券報告書での適正意見

B特定注意市場銘柄指定解除 東証が今秋をメドに判断

このうち、AとBが達成されたこととなる。

しかし、2018年3月末までに東芝メモリの売却が完了しなければ債務超過の解消は出来ない。

東芝は9月28日、東芝メモリの株式譲渡契約を締結したと発表した。

しかし、国際仲裁裁判所の審理と独占禁止法の審査の問題があり、2018年3月末までの東芝メモリの売却完了のハードルは高い。

2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結

 


 

2017/10/14    帝人、DuPontとのポリエステルフィルム合弁会社の持分を売却 

帝人は10月10日、DuPontと共同で、米国、欧州及び中国のフィルム事業の合弁会社4社の所有持分全てをIndorama Netherlands B.V.に売却することを決定したと発表した。

DuPontは本事業から完全撤退、帝人は、2016年にDuPontから持分を買い取った日本とインドネシアの事業の更なる高機能化に資源を集中的に投入する。

ーーー

帝人はポリエステルフィルム分野では、世界6カ国で米国デュポンと合弁事業を行っていた。

帝人は1957年に英国ICIのPETフィルム製造技術を導入。
DuPontは1998年にICIからポリエステル事業を買収。

両社は2000年1月、折半出資により世界最大のポリエステルフィルムのグローバル合弁会社(Teijin DuPont Films)を設立した。

日本をはじめ、米国、欧州(ルクセンブルグ、英国)、アジア(インドネシア、中国)の6カ国に地域合弁会社が設立され、工業用、包装用、磁気用の幅広い用途向けに、それぞれの地域のニーズに対応した高機能ポリエステルフィルム製品群を、地域の販売網を通じて販売した。

インドネシアは帝人子会社、中国は
DuPont JVで、それぞれを両社のJVに移した。

 国  社名   出資比率 %  備考
帝人 DuPont その他
日本 帝人デュポンフィルム 50.1 49.9    
米国 DuPont Teijin Films U.S. 49.9 49.9 (*1) 0.2 *1 帝人デュポンフィルム
英国 DuPont Teijin Films U.K.  50.0 50.0    
ルクセンブルグ DuPont Teijin Films Luxembourg 50.0 50.0    
インドネシア P.T. Indonesia Teijin DuPont Films 50.1 49.9   元は帝人100%P.T.Indonesia Teijin Films
中国 DuPont Hongji Films Foshan
(佛山杜邦鴻基薄膜)
中国JV  51 (*2) 49 *2 佛山塑料集団(Foshan Plastics Group)
DuPont
持株をDuPont Teijin Films China に移管
(49.0) (51.0)

帝人は2016年8月19日、日本とインドネシアのDuPontとのJVについて、DuPontの持分を買収し、帝人100%とすると発表した。

中国経済の減速に伴う需要低迷、中国メーカー台頭による市場構造の変化により、事業環境は厳しさを増し、事業構造の変換が急務になっており、事業運営柔軟性と意思決定の迅速性を向上するため、国内合弁とインドネシア合弁について、DuPont持分を取得することで合意した。

2016/8/23    帝人、日本とインドネシアのDupont とのJVを100%子会社化

この結果、現状は下記の通りであるが、帝人としては、日本とインドネシアのJVの完全子会社化以降は、日本とインドネシアにおいてPENフィルムを含むポリエステルフィルムの更なる高機能化に資源を集中的に投入する方針としており、米国、欧州及び中国のDuPontとのJV 4社については資源投入対象としての重要性が低くなっている。

DuPontは2016年に日本とインドネシアの持分を帝人に渡したが、その以前の2011年に、高成長分野に舵を切っていることから、この事業の売却のうわさが出ていた。

2011/10/18     DuPont、帝人とのポリエステルフィルムJVを売却か?

今回、Dowとの統合により、本事業の意味はなくなっていた。

 社名

出資比率 %

 備考 今後
帝人 DuPont その他
日本 帝人デュポンフィルム 100    
50.1/49.9→60/40 更なる高機能化に資源を集中的に投入
インドネシア P.T. Indonesia Teijin DuPont Films 100     50.1/49.9
米国 DuPont Teijin Films U.S. 49.9 49.9 (*1) 0.2 *1 帝人デュポンフィルム 帝人、DuPontとも
持分を
Indoramaに売却
英国 DuPont Teijin Films U.K.  50.0 50.0    
ルクセンブルグ DuPont Teijin Films Luxembourg 50.0 50.0    
中国 DuPont Hongji Films Foshan
佛山杜邦鴻基薄膜

JV(*2)     51.0

(*3) 49.0 *2 DuPont Teijin Films China
*3
佛山塑料集団(Foshan Plastics Group)
(49.0) (51.0)
韓国 Teijin DuPont Films Korea     (*1) 100  (販売会社)
*1 帝人デュポンフィルム
 

 

ーーー

Indorama Group 1974年にMohan Lal Lohia ML Lohia)によりインドで設立され、インド、インドネシア、タイなどでPTAPET、ポリエステルなどの事業を拡大した。

ML Lohia は事業を3人の息子に分割した。長男OP Lohiaはインド、次男 SP Lohia はインドネシア、三男 Aloke Lohia (APL) はタイを受け継いだ。同じような事業を行っているが、それぞれが独立して事業を行っている。

今回の売却先は、三男 Aloke LohiaがGroup CEO and Vice Chairmanを務めるIndorama Ventures Public Company Limitedの子会社である。

同社の詳細は 2016/1/12 タイのIndorama Ventures、BPのアラバマのPX、PTA、NDCコンプレックスを買収 

 


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