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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2017/8/15 日産自動車とNEC、バッテリー事業を譲渡

日産自動車は8月8日、日産が保有するバッテリー事業およびバッテリー生産工場を中国の投資会社GSR Capitalに譲渡する契約を締結したと発表した。

売却対象のオートモーティブエナジーサプライ(AESC)に共同出資するNECも、自社及び子会社のNECエナジーデバイスが所有するAESC 株式を日産に売却したこと、及びNECエナジーデバイスをGSR Capital に譲渡する交渉を行っていることを発表した。
NECエナジーデバイスはバッテリーおよび電極の開発・製造を行っており、AESCに電極を供給している。

GSR Capital (金沙江創業投資基金)は、北京、香港およびシリコンバレーに拠点を持つ中国の投資ファンドで 、電気自動車、新エネルギー、現代農業、医療および無線技術などの高成長分野への投資に焦点を置いている。近年、超小型EVメーカーやリチウムイオン電池メーカーに相次いで投資を行っている

サッカーのイタリア1部のACミランは本年4月にRossoneri Sport Investment Lux に売却されたが、このオーナーはGSR Capital の会長のSonny Wu(伍伸俊)である。

日産の譲渡契約の対象となるバッテリー事業には、AESCの全株式(NECから譲渡を受けたものを含む)、北米日産会社が保有するバッテリー生産事業、英国日産自動車が保有するバッテリー生産事業、及び日産のバッテリー事業に関連する追浜、厚木、座間の開発・生産技術部門の一部が含まれる。

日産では、「AESCは、GSR Capital の幅広いネットワークや積極的な投資を活用し、新たな顧客の獲得により、その競争力の向上が可能となる。これは日産にとってはEVの競争力の更なる強化にもつなが る」としている。AESCを引き続き同社の重要なパートナーとし、日産は市場をリードするEVの開発及び生産に専念するとしている。

GSR CapitalのSonny Wu 会長は、「AESCの取得は、新エネルギー自動車産業に関わる当社にとって重要な一歩とな る。R&Dへのさらなる投資を行い、米国、英国および日本で既存生産能力を拡大していく。また、中国および欧州に新たな工場を建設し、世界中により良い製品を提供してい く」と述べた。

NECでは、スマートエネルギー分野では蓄電システムの構築・運用・保守を行うサービス事業へのシフトを進めており、総合的に検討した結果、このたびの契約締結に至ったとしている。

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オートモーティブエナジーサプライ(AESC)は2007年4月に、日産自動車、NEC、NECトーキンの合弁により、自動車用高性能リチウムイオン電池の開発、マーケティングを事業内容として設立された。

2008年に自動車用高性能リチウムイオン電池の開発、生産、販売を行う会社へ移行、2010年にHEV用、EV用のバッテリーの本格的な量産を開始した。

2010年4月にNECエナジーデバイスが設立され、NECトーキンの「大容量ラミネートリチウムイオン二次電池」事業を承継した。
AESCの株主も、NECトーキンからNECエナジーデバイスに代わった。


Renault と
日産自動車は当初、AESCの技術をベースにした 電気自動車用電池工場を、2012年半ばまでにRenault のフラン工場に建設する計画を発表していた。

しかし、この計画は延期された。

2012年時点では、ルノーのEVの電池については、小型商用車「Kangoo Z.E.」とセダン「Fluence Z.E.」向けはAESCが、2人乗りの超小型車「Twizy」向けはLG Chemが供給していた。

電気自動車の分野での戦略的提携をしている Renault とフランス原子力庁は2012年7月、電気自動車用次世代電池の量産開発でLG Chemと提携すると発表した。

LG Chemは、EV用次世代電池の工場をフランス国内に建設し、2015年末からEV用電池の現行品の量産を開始する。
ルノーが2012年末発売予定の小型 EV「ZOE」も、LG Chemの電池を採用する。

AESCの生産能力が限られているため、日産自動車は自ら出資するAESCの電池を優先して使い、RenaultはLG Chemの電池を採用することになったとされた。

Renault は2014年5月21日、Renault とLG Chemが次世代のゼロエミッションの自動車用のバッテリーを共同開発する契約に調印したと発表した。

2014/5/28   ルノー、韓国LG Chem と将来の電気自動車のバッテリーを共同開発、GMはバッテリーをLGに統一

 

車載リチウムイオン電池の世界シェアは次の通り。(2017/8/3 日本経済新聞)

パナソニックは2017年1月4日、Tesla が米ネバダ州に建設した「Gigafactory」で円筒形リチウムイオン電池セルの量産を開始すると発表した。

Gigafactory内に設置されたパナソニックの電池セル工場で 新型EV(電気自動車)「モデル 3」およびTeslaの住宅用蓄電池「PowerWall」、産業用蓄電池「PowerPack」向けに、「2170」サイズの円筒形電池セルを生産する。

2017/1/11    Tesla Motors とパナソニック、「Gigafactory」でバッテリーの生産開始

 


2017/8/16 世界の貿易のFTAカバー率

METIの「通商白書」、JETROの 「世界貿易投資報告」が相次いで発表された。

2017/6/17 平成 29 年版 通商白書

2017/7/31 ジェトロ世界貿易投資報告」2017年版 ‐転換期を迎えるグローバル経済

それによると、日本の貿易全体に占めるFTA・EPA締結国との貿易の割合(FTAカバー率)は主要各国と比べると、非常に低いことが分かる。 


以下では、2017年3月末(METI)or 2017年6月末(JETRO))時点でFTAが発効している国との2016年の貿易 額、率をとった。

 
  貿易額
(億ドル)

FTA発効

TPP

EU
韓国 中国 米国 NAFTA EU TPP11 米国
日本 12,371 22.5% 22.5% 1.8% 15.8% 11.9%
韓国 9,019   23.4% 12.2% 10.9% 21.3% 67.8%  
中国 37,261 6.8%   31.9% 38.7%  
EU 38,308 2.5%   28.6% 31.1%  
米国 36,429 3.1%

 

29.3 6.7% 39.1%

8.4%

 
メキシコ 7,859 66.0 79.7%  
カナダ 8,166 67.1 70.5%  
チリ 1,159  93.1%  

中国とEUのFTA化率(計)は両者で数字が異なって おり、通商白書を採った。
 

日本の場合、FTAカバー率は22.5%に過ぎない。
米国込みのTPPが発効すれば、EUを加えて52%になるところであったが、米国離脱により、米国を除くTPP締結国(TPP 11)とFTA締結が間近とされるEUを加えても36.2%である。
政府目標の「2018年に7割」には遠い。米国 and/or 中国との締結が必要であるが、問題が多い。

それに対し、韓国はFTAカバー率が67.8%もある。

韓国は、日本が締結していない中国、米国、カナダ、EU、EFTA、トルコ、ニュージーランド、コロンビア、中南米6カ国とFTAを締結しており、更にインド、オーストラリア等とも締結し、欧州―東アジア―米国をつなぐ「東アジアのFTAハブ」と称している。(後記)

中国やEUも30%を超えている。

米国、カナダ、メキシコはNAFTAを締結しており、特にメキシコとカナダはNAFTAでの貿易(ほとんどが対米)が大きな比率を占める。
NAFTA再交渉は8月16日に始まる。

首位のチリは93.1%で、中国、韓国、米国、カナダ、EUなどFTAを結 んでいる。

 

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日本と韓国のFTAの状況は下記の通り。年月日は発効日。 
 
TPP 参加国-2016/2/4 署名日本を含め12カ国
韓国先行
    日本 韓国
アジア
  個別 ASEAN   個別 対ASEAN
ASEAN マレーシア 2006/7 2009/2/1   2007/6/1
シンガポール 2002/11 2008/12/1 2006/3/2 2007/6/1
ベトナム 2009/10 2008/12/1 2015/12/20 2007/6/29
ミャンマー   2008/12/1   2007/11/27
インドネシア 2008/7 (未発効)   2007/12/7
フィリピン 2008/12 2010/7/1   2008/1/1
ブルネイ 2008/7 2009/1/1    2008/7/1
ラオス   2008/12/1   2008/10/1
カンボジア   2009/12/1   2008/11/1
タイ 2007/11 2009/6/1   2010/1/1
モンゴル 2016/6  
インド 2011/8 2010/1/1
中国   2015/12/20
北米 米国   2012/3/15
カナダ  (交渉中) 2015/1/1
メキシコ 2005/4  
欧州 EFTA
スイス、リヒテンシュタイン、
ノルウェー、アイスランド、
  2006/9/1
スイス 2009/9  EFTAとしては発効済
EU 28カ国 (交渉中) 2011/7/1
トルコ 基本&物品貿易 (交渉中) 2013/5/1
サービス&投資 2015/2/26 (署名)
オセアニア オーストラリア 2015/1 2014/12/12
ニュージーランド   2015/12/20
中南米 チリ 2007/9  2004/4/1
ペルー 2012/3  2011/8/1
コロンビア (交渉中) 2016/7/15
中米6カ国
グアテマラ、ニカラグア、エルサルバドル、ホンジュラス、コスタリカ、パナマ
  2016/11/16 (妥結)
Mercosur   (予備交渉)

                                                                                              



2017/8/17 中国、北朝鮮の石炭や鉄などを全面禁輸

中国の商務部と税関総署は8月14日、北朝鮮からの石炭、鉄、鉄鉱石、鉛、鉛鉱石、海産物などの輸入を15日から全面的に禁止すると発表した。

国連安全保障理事会が8月5日に採択した北朝鮮に対する新たな制裁決議 (2371) に基づく措置。

国連の安全保障理事会は、北朝鮮がICBMだとする発射実験を2回行ったことをめぐり、北朝鮮の主な収入源になっている石炭などの輸出を一切禁止するとする制裁決議を中国、ロシアを含む全会一致で採択した。

安保理制裁に基づく禁輸が加盟国によって着実に実行されれば、北朝鮮の年間輸出収入の約3分の1にあたる10億ドルが削減できる見込み。

商務部公告40号によると、詳細は次の通り。

8月15日以降、下記の対象品目の輸入は全面的に禁止する。
これ以前に入港したものについても、9月5日以降は申請を受け付けたものについても輸入手続きを中止する。

例外として、北朝鮮の羅津港からの石炭で、輸出国が信頼できる情報によって北朝鮮産以外のものと証明するものの再輸出品は除く。(但し、輸出国は国連が設置する委員会に通知する必要がある。) ロシア品を想定している。

禁止対象製品は次の通り。

製品 詳細 関税番号
石炭 石炭 2701
亜炭 2702
鉄鉱石   2601-111、112、119、120、200
  7201-10001、10009、20000、50001、50009
鉛、鉛鉱 鉛鉱 2607
鉛製品 第78章全て
海産品 魚類 第3章全て
エキス及びジュース 1603
調整・保存処理した魚、イクラ 1604
同上甲殻類 1605
付記

商務部は2017/8/25の公告47号で、国連安全保障理事会が8月5日に採択した北朝鮮に対する新たな制裁決議 (2371) の第12条に基づき、北朝鮮の団体・個人が中国でJVを設立すること、既存JVの増資を行うことを禁止した。

 

 

ーーー

国連安全保障理事会は2016年11月30日、北朝鮮による核実験等に関する決議第2321号を全会一致で採択した。

中国商務部は2016年12月23日の公告81号で、国連決議2321に基づき、次の措置を取ると明らかにした。

1) 北朝鮮からの石炭の輸入の制限

2017年1月1日以降、毎年、各国全体の北朝鮮からの輸入を4億ドル、または750万トンのいずれか少ない方に制限する。

2) 北朝鮮からの銅、ニッケル、銀、亜鉛の輸入禁止

3) 北朝鮮からの彫刻像の輸入禁止

4) 北朝鮮へのヘリコプター、船舶の輸出禁止

石炭については、実際に北朝鮮から輸入しているのは中国のみとされる。

中国商務省は2017年2月18日、公告12号で、国連決議2321に基づき、北朝鮮からの石炭輸入を2月19日から12月31日まで全面的に停止すると発表した。

中国の1月の北朝鮮からの石炭輸入額は1億2194万ドル、輸入量は145万トンで、1月末時点では上限まで相当な余裕があることが判明している。

 

2017/2/28    中国、北朝鮮からの石炭輸入を全面停止

石炭は2月19日から禁輸したものの、今年上半期の中朝貿易の輸出入の総額は、昨年の同じ時期と比べて10.5%増えていた。

 



2017/8/18   米大統領、通商法301条で対中調査指示

 

トランプ米大統領は8月14日、不公正貿易での制裁も視野に、中国に対する通商法301条に基づく調査を開始するよう指示した。

https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/08/14/presidential-memorandum-united-states-trade-representative

内容は次の通り。

中国は知財やイノベーションや技術に関連して、米国の技術と知財の中国企業への移管を求めたり、米国の利害に悪影響を与えるような、法律、政策、慣例、行動を実行している。
これらは、米国の輸出を妨げ、米国のイノベーションに正当な対価を払わず、米国の雇用を中国に移転し、その結果、対中貿易赤字を増やし、米国の製造業、サービス、イノベーションを弱体化させている。

このため、USTRに対し、1974年通商法301条(301〜309条の総称)の section 302(b) に基づき、中国の法律、政策、慣行、行動が不当又は差別的で、米国の知財、イノベーション、技術発展に害を与えているかどうかの調査を行うよう命じる。

不当と判断すれば制裁措置の発動も検討する。

1974年通商法301条では、米国の通商に負担・制限を与えている外国の慣行等について,当該国と協議を行うことを義務付け,解決しない場合には,関税引上げなどの一方的措置を発動する権限を行政府に与えている。

署名に先立ってトランプ大統領は「 外国による知的財産の盗難は、年間で数百万人の雇用喪失と数十億ドルの損失をもたらしている。不公正な行為からアメリカの労働者や技術、産業界を守るのは私の義務であり、責任だ」と述べ、不公正な貿易慣行の是正を求めていく姿勢を強調した。

直接言及はしなかったが、北朝鮮が核やミサイルの開発を進める中、中国から協力を引き出すため、圧力を強める狙いもあるものと見られている。

USTRのLighthizer 代表は今回の大統領令を受け、USTRが最優先課題の一つとして調査の検討に取り組む方針を示した。

付記

米通商代表部(USTR)は8月18日、中国による知的財産権の侵害を対象に通商法301条に基づく調査を開始したと発表した。

中国商務部の報道官は8月21日、「米国は世界貿易機関(WTO)のルールを無視し、国内法を根拠に中国に対して貿易調査を発動した。無責任であり、中国に対する指摘は客観的ではない。中国は米国のこうした一国主義的、保護主義的なやり方に強烈な不満を表明する」と述べた。
また、「中国は米国が事実を尊重し、協力の強化を願う双方の産業界の強い願いを尊重し、多国間の貿易ルールを尊重し、慎重に行動することを呼びかける。中国は調査の進展状況を注意深く見守り、あらゆる適切な措置を取り、中国の合法的な権利を断固として守る」と述べた。


これについて野党・民主党の上院院内総務は8月14日、声明を発表し「トランプ大統領の行動パターンが続いている。中国に対する発言は厳しいが、行動は弱々しい」と述べ、通商問題で大統領令の署名を連発しているものの、具体的な対応が伴っていないと批判した。

トランプ大統領は4月20日、大量の鉄鋼輸入が米国の安全保障を脅かしている懸念があるとして、米通商拡大法に基づいた鉄鋼輸入の実態調査を米商務省に指示した。

更に4月27日に、アルミニウムについての調査を指示する大統領令を出した。

鉄鋼については、トランプ大統領が関税引き上げと輸入割り当てを同時に課す考えを表明したが、米産業界で賛否が分かれて おり、決まっていない。
(輸入鋼材の攻勢を受ける鉄鋼業界は早期の関税引き上げなどを要求しているが、石油業界はパイプラインの価格の上昇につながりかねない制裁措置には反対、自動車産業も反対している。 )

2017/4/22  Trump大統領、鉄鋼輸入規制に向け、実態調査を指示


中国外交部の報道官は8月14日の定例記者会見で「中米の利益の相互融合が日増しに深まり、互いに切り離せない緊密な構造がすでに形成されている中、貿易戦争に前途はなく、勝者なくして共に負けるのみだ」と述べた。

「中米の経済・貿易関係の本質は互恵・ウィンウィンだ。双方は中米包括経済対話を通じて、双方の経済・貿易関係に生じる問題への対処について重要な共通認識にいたった。双方が相互尊重、平等及び互恵の精神に基づき、互いの懸念を対話によって解決し、中米の経済・貿易関係の持続的で健全な安定した発展を維持することを希望する」と述べた。

また「中国側は知的財産権の保護を一貫して非常に重視している。近年中国は関連法規を制定・整備し、知的財産権の侵害という違法犯罪行為への取り締まりを強化し、社会全体の知的財産権保護意識の強化を重視し、誰の目にも明らかな成果を得た」と述べた。

さらに「WTO加盟国による貿易措置は、すべてWTOルールを順守する必要がある」と米国の動きにクギを刺した。

WTOは一方的な制裁措置を認めていない。米の通商法301条は、何が不公正であるかの判断を米国が一方的に認定し,対抗処置を講じられるという意味で、 WTOルールに抵触する可能性が極めて高い。

米国が実際に制裁に乗り出せば、中国が対抗措置に動くなど、世界経済に大きな混乱をもたらす恐れもある。

米政府高官も「調査結果を得るまで1年近くかかる可能性もある」と述べるなど中国の出方を見極めつつ、全面対決は回避したいとの思いがにじむ。

 



2017/8/19   石油天然ガス・金属鉱物資源機構、伊藤忠の英領北海油田探鉱事業に出資


石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (JOGMEC) は8月15日、伊藤忠石油開発・英国(CIECO UK)が権益の12%を保有する英領北海油田における探鉱事業に出資すると発表した。

本プロジェクトは、相当規模の油ガス田の発見が期待され、成功の際には、我が国の石油供給源の多角化に一層寄与するものと見込まれるとして、CIECO BP が負担する探鉱事業費の50%を上限に出資を行う。出資見込額は約30億円としている。

本事業については、(1) 技術的事項、(2) 経済的事項、(3) 政策的事項、(4) 事業実施関連事項等の観点から構成されるJOGMECの採択審査基準を満たすと判断 した。採択に際しては、経済産業大臣と協議し、同意を得ている。

対象となる鉱区は英領北海ライセンスP2170(20/5b鉱区および21/1d鉱区)でスコットランドのAberdeen の沖合にある。

現在の権益保有は下記の通りで、CIECO UK はこの事業のため、2017年7月に100%子会社としてCIECO V&C (UK) を設立した。

Statoil (U.K.) 70% オペレーター
Trap Oil 18% Jersey Oil and Gas子会社
CIECO V&C (UK) 12%  

2014年12月、伊藤忠とTrap Oil は、英領北海第28次ラウンドにおいて、ライセンスP2170(20/5b鉱区および21/1d鉱区)を共同落札した。(比率50/50)

2016年8月、Statoil (U.K.) を70%の権益を保有するオペレーターとして迎え、CIECO UKは12%、Trap Oil は18%となった。

この2つの鉱区の埋蔵量(STOIIP=Stock Tank Oil Initially In Place)は191〜450MMbbls とみられている。

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伊藤忠石油開発は旧称 CI エネルギー開発で、当時の略称のCIECOを引き継いでいる。

CIECO UK は北海のShetland Islands 沖の下記の鉱区に参加している。

1) Hudson Field

Dana Petroleum 47.50% Operator
CIECO UK 25.77%  
TAQA 26.73%  

 埋蔵量は2億バレルで最終的に約60%が回収可能とされている。

2) Western Isle Development Project (Harris field and Barra field)

Dana Petroleum 76.92% Operator
CIECO UK 23.08%  

CIECO UKは JOGMECの債務保証制度を利用して参加している。
年内生産開始予定(予想生産量 40,000 b/d)

 

 


 

2017/8/19   LG電子、世界最大のOLEDスクリーンを設置

LG電子はこのたび、アラブ首長国連邦のドバイのDubai Mall にある水族館 Dubai Aquarium & Underwater Zoo に有機EL(OLED)のサイネージ(商業用看板)を設置した。

55インチ型のOLEDを820枚つなぎ合わせたもので、縦14メートル、横50メートル、総面積は700平方メートルで、バレーボールコート4つを合わせたものより大きい。
17億画素で構成される。

これは “World’s Largest OLED Screen” としてギネスブックに登録された。

 

OLEDは薄くて軽いため、曲線形状など、様々なデザインを作ることができるのを利用し、水族館の上部に、滑らかな波の形で作られている。
液晶と違り、バックライトがなく、それぞれの画素が光を出すため、どの角度から見ても色が歪曲されず、サイネージに最適とされる。

 



2017/8/21  
トランプ政権、Bannon主席戦略官を更迭

米ホワイトハウスは8月18日、トランプ米大統領の最側近である Steve Bannon首席戦略官・上級顧問が同日付で退任すると発表した。

大統領はこの数日、Bannon氏へのいら立ちを内々に吐露していた。

Bannon氏は米メディアThe American Prospect とのインタビューで、

ホワイトハウス内で対立するGary Cohn 国家経済会議(NEC)委員長らの名前を挙げながら「毎日が闘いだ」と政権内の確執を暴露。
(“That’s a fight I fight every day here,” he said. “We’re still fighting. There’s Treasury and  Gary Cohn and Goldman Sachs lobbying.”)
さらに「我々は中国と経済戦争中だ。(詳細後記) 北朝鮮問題は余興に過ぎない。軍事的解決などあり得ない。忘れて良い」と述べ、トランプ氏が排除していない北朝鮮問題の軍事的解決を否定した。

8月12日に、白人至上主義団体と反対派の衝突で女性が死亡したが、トランプ大統領の発言に各界から批判が強まり、米製造業評議会と戦略・政策評議会を解散する事態に発展した。

大統領の本事件についての発言:

8月12日
 「Alt right (alternative right ) を突撃したAlt left はどうなのか?彼らはゴルフクラブを振り回していた。彼らにも問題がある。」 
 「様々な側から(on many sides)もたらされる憎悪、偏見、暴力に、可能なかぎり最も強い言葉による抗議を表明する」

8月14日 上記を批判され、Whitehouseが準備
 「人種差別は悪だ。その名のもとで暴力を振るう者、KKKもネオナチも白人主義者も、そのほかのヘイト・グループを含む人々は、アメリカ人が大切にする全てのものと矛盾している」

8月15日 別件の会見で急に質問され、本音が出た。
 「責任は双方にある」「一方に悪い集団がいて、もう一方にも非常に暴力的な集団がいた。だれも言いたがらないが、私は今ここでそう明言する」

Bannonは白人至上主義者として知られ、反ユダヤ主義者として非難されてもいる。Alt rightの運動と密接な関係があり、大統領の発言はBannonと結びつけられた。

政権運営の安定化を図るため、人種差別的な言動で知られるBannon氏を Kelly 大統領首席補佐官が事実上、更迭した。


右派系ニュースサイトBreitbartNewsは、Bannon氏が会長に復帰したと発表した。

大統領はTwitterで以下の通り述べた。

I want to thank Steve Bannon for his service. He came to the campaign during my run against Crooked Hillary Clinton - it was great! Thanks S

Steve Bannon will be a tough and smart new voice at BreitbartNews ... maybe even better than ever before. Fake News needs the competition!



Bannon氏は経済ナショナリストを自任、政権内のJared Kushner 大統領上級顧問 (Ivanka Trumpの夫)やGary Cohn米国家経済会議(NEC)委員長らの国際協調派と対立していた。
Cohn委員長は退任の噂があったが、残留するとみられる。

Bannon氏は白人至上主義者として知られ、反ユダヤ主義者として非難されてもいる。

右派系ニュースサイトBreitbartNewsの会長であったが、大統領選ではトランプ陣営の最高責任者を務め、白人労働者層にしぼった選挙戦術で大統領誕生に貢献した。

経済ナショナリストを自任、メキシコ国境の壁、イスラム圏からの入国禁止、パリ協定離脱などの政策を主導した。NAFTA即時離脱も主張した。

「中国との経済戦争が最も重要」とし、中国に対する301条調査(鉄鋼、アルミ、知財)を主導した。

The American Prospect とのインタビューで、次の通り述べた。

「我々は中国との経済戦争をしている。私には中国との経済戦争が最も重要だ。我々は熱狂的にここに集中しなければならない」とする。
  (“We’re at economic war with China.  To me the economic war with China is everything. And we have to be maniacally focused on that.)

 「米国と中国のどちらかだけが25年か30年後に覇権国家として残ることになるだろう。我々がこの道で倒れたら、中国が覇権国になるだろう」と述べた。
 (One of us is going to be a hegemon in 25 or 30 years and it’s gonna be them if we go down this path. )

具体的対策としては、今回の知財、前回の鉄鋼とアルミを対象とする301条調査を挙げた。

ーーー

トランプ政権は発足半年で、政権内の多くが入れ替わった。上記のとおり、Bannon氏と「国際協調派」との政策の争いも激化していた。

Kelly首席補佐官が7月31日に就任、「Whitehouseに規律を取り戻す」とした。今回のBannonの解任で、ようやく落ち着くとみられる。

  就任 退任
2/13   Michael  Flynn大統領補佐官(国家安全保障担当)辞任
(就任前にロシア駐米大使と協議した疑惑)
2/20 Herbert McMaster 陸軍中将 大統領補佐官(国家安全保障担当) 就任
6/2   Mike Dubke 広報部長辞任(ロシア疑惑)
Sean  Spicer 報道官が広報部長兼務
7/21 Anthony Scaramucci (政権移行チームの幹部)、広報部長に就任(広報の経験なし)
  Sean  Spicer 報道官 辞任(Scaramucci 広報部長に反対)
Sarah  Sanders副報道官、報道官就任
7/28   Reince Priebus 大統領首席補佐官 解任
  Scaramucci 広報部長に反対。ホワイトハウス内からの相次ぐリークに関して責任があるとされた。
7/31 John F. Kelly (前国土安全保障長官)、大統領首席補佐官 就任

「Whitehouseに規律を取り戻す」
  大統領執務室への自由な出入りを禁止

  Anthony Scaramucci 広報部長解任(就任10日、Kelly首席補佐官が解任)

 退任後、Scaramucciは、Bannon首席戦略官がトランプ大統領のアジェンダ遂行能力を妨げていると批判

8/12 Charlottesville, Virginia 白人至上主義者と反対派の市民との間で衝突、女性死亡。

大統領の発言で、米製造業評議会と戦略・政策評議会から辞任が相次ぐ。

BannonはAlt rightの運動と密接な関係があり、大統領の発言はBannonと結びつけられた。

8/16 トランプの大統領選挙で広報担当の28歳女性 Hope Hicks、暫定広報部長に任命  (付記 9/12 広報部長就任)
8/16  米製造業評議会と戦略・政策評議会を解散(実際には離脱が相次ぎ、存続不可能であった。戦略・政策協議会は解散を決めていた。)
 Twitter : Rather than putting pressure on the businesspeople of the Manufacturing Council & Strategy & Policy Forum, I am ending both. Thank you all!

 当初はメンバーの辞任に対し、代わりはいくらでもいるとしていた。
 For every CEO that drops out of the Manufacturing Council, I have many to take their place. Grandstanders should not have gone on. JOBS!

8/18   Steve Bannon首席戦略官 実質解任

付記 ホワイトハウスは2018年2月28日、Hope Hicks 広報部長(29)が辞任すると発表した。


しかし、問題は解決していない。

大統領の支持率は下がったが、30%程度でとどまっているのは、トランプに投票した Alt right や白人労働者などの支持層があったためとされる。これらが離反するリスクがある。

Bannonが去っても、大統領自身の考えが変わらないと、支持率は上がらないだろう。

政界も財界も、大統領と一線を画そうとしている。

とりあえず、9月末までに予算案と債務上限引き上げを通す必要がある。

2017/8/7 混迷の米議会、オバマケア代替法案を決められず、夏季休会入り 

 
 
 
 

2017/8/22  伊藤忠と関電、米国でガス火力発電所建設

伊藤忠商事と関西電力とドイツのSiemens AG は、米国で天然ガスの火力発電所を建設する。近く、共同で運営会社を設立する。

伊藤忠はこれまでも子会社Tyr Energyを通じて米国で発電事業を手がけてきたが、建設から運営まで担うケースは初めてという。

この事業はHickory Run Power Development Project(地図参照)で、Pennsylvania州 Lawrence Countyに天然ガスのコンバインドサイクル発電所を建設する。発電能力は100万KWで、2020年稼働を予定している。

出資比率は、伊藤忠子会社のTyr Energyが50%、関西電力が30%、Siemensが20%となっており、Siemensがガスタービンを供給する。建設費は9億ドル程度とされる。

コンバインドサイクル発電はガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式で、最初に圧縮空気の中で天然ガスを燃やしてガスを発生させ、その圧力でガスタービンを回して発電を行う。ガスタービンを回し終えた排ガスは、まだ十分な余熱があるため、この余熱を使って水を沸騰させ、蒸気タービンによる発電を行う。

発電所はMarcellus とUticaのシェールガス田に近く、天然ガスを安定的に入手できる。

発電した電気は北米最大のPJM (Pennsylvania-New Jersey-Maryland) 電力卸売市場(米国北東部13州およびワシントンD.C.の全部または一部の電力市場で、独立系統運用者により管理されている)を通して米国北東部に供給する。

建設費用のうち、460百万ドルはBNP Paribas が融資するが、そのうち140百万ドルは韓国の銀行などが融資する。

 

ーーー

伊藤忠子会社のTyr Energyは米国で下記の電力事業に参加している。

PROJECT NAME

mw

FUEL TYPE LOCATION STATUS 参加日本企業
Alabama II 885 Natural Gas or Fuel Oil Autauga County, AL Operating JERA
Commonwealth Chesapeake 315 Low Sulfur Diesel New Church, VA Operating  
Cottage Grove 245 Natural Gas or Fuel Oil Cottage Grove, MN Operating  
Cotton Plains I 50.4 Wind Floyd County, TX Operating  
Empire 635 Natural Gas or Fuel Oil Rensselaer, NY Operating 東京ガス、関電
Gateway 845 Natural Gas or Fuel Oil Rusk County, TX Operating JERA、Diamond、大阪ガス
Georgia 945 Natural Gas or Fuel Oil Heard County, GA Operating JERA、Diamond
Good Spring 337 Natural Gas Schuylkill County, PA Development  
Hickory Run 1,000 Natural Gas Lawrence County, PA Development 関電
Keenan II 152 Wind Woodward County, OK Operating  
Kiamichi 1,220 Natural Gas Kiowa, OK Operating JERA
Old Settler 151.2 Wind Floyd County, TX Operating  
Phantom Solar 15.4 Solar Killeen, TX Operating  
Plains End I & II 228.6 Natural Gas Arvada, CO Operating  
Rathdrum 275 Natural Gas Rathdrum, ID Operating  
Shepherds Flat 845 Wind Arlington, OR Operating 住友商事
Virginia 885 Natural Gas or Fuel Oil Fluvanna County, VA Operating JERA、JーPower
Whitewater 249 Natural Gas or Fuel Oil Whitewater, WI Operating 大阪ガス

2010年10月、伊藤忠商事と中部電力は、米国IPP事業者であるTenaska, Inc.他が保有する米国の5つの天然ガス火力発電所(合計契約出力:4,780MW)の一部事業権益(持分出力:約1,565MW)をTenaskから取得することで合意した。

伊藤忠商事の米国子会社Tyr Energy Inc.と中部電力が50%ずつ出資する共同投資会社を通じて保有する。

その後、中部電力と東京電力は2015年4月30日、燃料上流・調達から発電まで、火力発電事業のサプライチェーン全体に係る包括的アライアンスに伴う共同事業会社 JERA を設立した。

 


2017/8/23   経産省、中部電力の武豊石炭火力発電所ににCO2 削減勧告

中部電力が石油火力発電所から石炭火力への置き換えを計画する武豊火力発電所(愛知県武豊町)について、環境省は2017年8月1日、「パリ協定」に基づく温室効果ガス削減目標が達成できないとして、再検討を促す内容の意見書を 経産省に提出した。
重油及び原油を燃料種とする発電設備を撤去し、相対的にCO2排出係数が高い石炭を燃料種とする発電設備を設置するもので、バイオマス混焼による削減効果を勘案してもなお、現状より年間200万トン程度増加するものであることから、環境保全面から極めて高い事業リスクを伴う。

石炭火力発電に係る環境保全面からの事業リスクが極めて高いことを改めて自覚し、2030年度及びそれ以降に向けた本事業に係る二酸化炭素(CO2)排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には事業実施を再検討することを含め、事業の実施についてあらゆる選択肢を勘案して検討することが重要である。

本事業を実施する場合には、省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標を確実に達成するとともに、本事業が、今後JERAに移行することも踏まえ、事業者全体として、所有する低効率の火力発電所の休廃止・稼働抑制など、2030年以降に向けて、更なるCO2排出削減を実現する見通しをもって、計画的に実施することを求める。

経緯:

政府は2015年7月17日、地球温暖化対策推進本部を開き、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を「2030年までに2013年比26%削減」とする目標を正式決定した。

2015/7/18 温室効果ガス 2030年に2013年比 26%減 

日本では大型石炭火力発電所の建設計画が続出している。

中部電力は2015年2月6日、武豊火力発電所(愛知県武豊町)の建て替え計画を発表した。

運転開始から40年以上が経過している、石油を燃料とする既設の2〜4号機を廃止・撤去し、新たに5号機として石炭火力発電所を新設する。
出力は2〜4号機の合計とほぼ同じ107万キロワット。
国内最高水準の高効率な発電設備として2021年度の営業運転開始を目指す。


力業界各社は、2015年7月17日、低炭素社会の実現に向けた新たな自主的枠組みを構築するとともに、「電気事業における低炭素社会実行計画」を策定した。

容は下記のとおりで、2030年度の販売電力量1kWh当たりのCO2排出量を2013年度比約35%減らすというもの だが、参加各社はそれぞれの事業形態に応じた取り組みを結集するというだけで、具体的な「実行計画」はない

  2030年度に排出係数 0.37kg-CO2 / kWh 程度(使用端)を目指す。

 2030年度CO2排出量(3.6億トン-CO2) / 電力需要想定(9.808億kWh) = 0.37kg-CO2/kWh

2013年度比 ▲35%程度相当と試算
 

  火力発電所の新設等にあたり、BAT(Best Available Technology) を活用すること等により、最大削減ポテンシャルとして約1,100万トン-CO2の排出削減を見込む。

 

環境省は2015年8月14日、中部電力が愛知県武豊町で2022年の運転開始を目指す大型石炭火力発電所について、また、8月28日、九州電力・東京ガス・出光興産の3社が設立した「千葉袖ケ浦エナジー」が千葉県袖ケ浦市で計画している大型石炭火力発電所の建設について、「環境影響評価(アセスメント)法に基づき「現段階では是認できない」とする意見書を経済産業 省に提出した。

上記の「電気事業における低炭素社会実行計画」で公表した二酸化炭素削減目標は実効性が不十分なため、CO2排出量を2030年までに2013年比26%減らす政府目標達成に「支障を及ぼしかねない」と判断した。

2015/8/20 環境相、中部電力の石炭火力計画 是認せず 


しかし、丸川環境大臣は2016年2月8日、林経済産業大臣と会談し、石炭火力発電所の新設を容認する方針を伝えた。

環境省と経産省の合意内容は下記の通り。

・火力発電の効率に数値目標を設定、効率の悪い設備や休廃止
・再生可能エネルギーと原発を合わせた非化石電源の利用を合計で原則44%以上にするよう電力会社に求める
・発電所のCO2排出量などの情報の開示
・電力業界は削減計画を誠実に実行
 

今回、環境省は武豊火力発電所について、再検討を 求めたもの。

 

 

これを受け、経産省は8月18日、武豊火力発電所の建設計画について、二酸化炭素(CO2)排出削減を講じるよう勧告した。

効率が低い既存の火力発電所を休廃止したり、稼働を抑制したりすることで中部電全体としての排出量を抑制するよう求め ている。

(1)石炭火力発電を巡る環境保全に係る国内外の状況を十分認識し、本事業を検討すること。

(2)このような国内外の状況を踏まえた対応の道筋を描くことにより本事業を実施する場合には、ベンチマーク指標の目標を確実に達成するとともに、本事業が、今後JERA (
東京電力と中部電力の火力発電事業のJV)に移行することも踏まえ、事業者全体として、所有する低効率の火力発電所の休廃止・稼働抑制など、2030年以降に向けて、更なる二酸化炭素排出削減を実現する見通しをもって、計画的に実施すること。

(3)本事業の工事の実施及び施設の供用に当たっては、二酸化炭素の排出削減対策をはじめ、排ガス処理設備の適切な運転管理及び騒音・振動の発生源対策等による大気環境の保全対策、排水の適正な処理及び管理による水環境の保全対策等の環境保全措置を適切に講ずること。

今回の経産省の勧告について、環境省幹部は「石炭火力が地球温暖化対策に与える影響を経産省としても重く見た内容になっており、画期的だ」と評価している。

中部電力は、「すでに低効率火力の休廃止の検討を進めており、大きな影響はないが、勧告を真摯に受け止め計画を進めていく」としている。

ーーー

エネルギーの使用合理化等に関する法律(省エネ法)の平成20年度改正により、「ベンチマーク制度」が導入され、平成23年度より報告結果が公表されている。

 特定の業種・分野について、当該業種に属する事業者の省エネ状況を業種内で比較できる指標(ベンチマーク指標)を設定し、省エネの取組が他社と比較して進んでいるか遅れているかを明確にし、非常に進んでいる事業者を評価するとともに、遅れている事業者には更なる努力を促すための制度。

「電力供給業」のベンチマーク制度は次のとおり。

ベンチマーク指標 目指すべき水準
熱効率標準化指標 当該事業を行っている工場の火力発電設備における定格出力の性能試験により得られた発電端熱効率を定格出力の設計効率で除した値を各工場の定格出力によって加重平均した値

 

100.3%
以上
火力発電熱効率 当該事業を行っている工場の火力発電設備における発電端電力量の合計値を、それを発生させるのに要した燃料の保有発熱量(高位発熱量)で除した値 未設定

資源エネルギー庁は2017年5月、ベンチマーク指標報告結果(平成28年度定期報告分)を発表した。

電力供給業
目指すべき水準:100.3%以上
平均値:99.1%

達成事業者数/報告者数:1/11 (
達成事業者:電源開発のみ )

 


2017/8/24    ベビーパウダー訴訟でJohnson & Johnsonに417百万ドルの支払い命令
 

Los Angeles Superior Court の陪審は8月21日、スキンケア用品のベビーパウダーが卵巣がんの原因になったとする訴訟で、Johnson & Johnson (J&J) に417百万ドルの支払いを命じる評決を下した。 同様の訴訟では過去最高額となる。J&Jは評決を不服として上告するとしている。

陪審は「40年以上ベビーパウダーを性器の衛生に使い続けたため卵巣がんになった」と訴えたカリフォルニア在住の62歳の女性に賠償金を払うよう J&J に命じた。
女性は11歳の時に使用を開始し、52歳の時(2007年)に卵巣がんと診断された。

ベビーパウダーが原因で卵巣がんになったとして、J&J に対して数千人の患者が訴訟を起こしている。

原材料であるタルクが卵巣がんの原因とみられている。タルクはアスベスト(石綿)と非常に似た構造式を有しており、性質も極似している。
(FDA基準に適合したタルクはアスベストの1種のトレモライトを含んでいない。)

統計によると、米国では17%の女性が習慣的に性器にタルクを使っているとされる。
余分な皮脂や水分を吸収して肌をサラサラな状態に保ち、
女性のデリケートゾーンのできものやかぶれ等を防ぐ目的で使用されてい る。
メーカーの宣伝があったとされる。

1994年にはアメリカの癌予防連合が、習慣的なタルクの使用は卵巣がんのリスクが高いと発表している。
研究によれば、デリケートゾーンに付けられたタルカムパウダーは、内臓に炎症を与えつつ、ガン細胞を成長させながら
子宮、卵管そして 卵巣まで辿り着くことが可能であるとされる。

陪審は、タルク原料の製品の使用に伴うリスクについて、J&J と子会社が警告を怠ったと判断した。認定された賠償義務は70百万ドルに347百万ドルの懲罰的損害賠償 を加えた。

ミズーリ州で過去2年に行われた裁判では5件のうち4件で J&J側が敗れ、最高で110百万ドル、合計307百万ドルの賠償義務を認定する評決が下された。 (後記)

州の陪審裁判がミズーリ州以外で行われたのは今回が初めて。

原告の弁護士は、J&Jは直ちにタルクのリスクを女性に警告すべきだと述べた。10年、20年、30年、40年と毎日使っている女性が国中にいるとしている。

J&J は「J&J のベビーパウダーの安全性は科学が裏付けており、われわれはそれに導かれている」と語り、評決を不服として控訴する方針を示した。
昨年ニュージャージー州の裁判で、裁判長がタルクと卵巣がんを結びつける証拠は不適当として原告2人のの裁判を却下したのを取り上げ、原告の主張は科学的証拠に支持されていないとする。

Superior Court of New Jersey Law Division (Atlantic City)の裁判官は2016年9月、翌10月に予定された裁判を前に、「原告2人はJ&Jのベビーパウダーが癌を引き起こしたという十分な医学的証拠を示していない」として却下した。

ーーー

ミズーリ州で過去2年に行われた陪審員裁判では5件のうち4件で J&J側が敗れている。

    原告
勝訴
罰金+懲罰
(百万ドル)
 
2016/2/24  St. Louis 10+62=72 数十年使用のAlabamaの死亡女性
2016/5/3  St. Louis 5+50=55 数十年使用の女性
2016/10/28  St. Louis 2.575+65=67.5
+2.5
40年使用の女性
(Imerys Talc Americaへの罰金)
2017/3/7 St. Louis X 36年使用のTennesseeの女性
2017/5/5 St. Louis 5.4+105=110 40年使用のVirginiaの女性
罰金合計  

307

 

原告勝訴の陪審裁判はすべてMissouri 州St. Louisの裁判所であり、原告には他州の女性が多い。

J&Jは3月の勝訴を受け、6月に他の全てについて控訴した。

2017年6月19日、最高裁判所はこれに影響する判決を下した。

Bristol-Myers Squibb (BMS)が自社の製品 Plavix(血小板が集まって血栓ができるのを防ぎ、血液の流れを改善する薬)の薬害裁判でのSuperior Court of Californiaの判決に対し、上告していた裁判で、最高裁はBMS勝訴の判決を下した。

原告側は、カリフォルニア州の住民が86人、他の33州の住民が592人で、集団訴訟を起こした。

それに対し、BMSは裁判の実質で争うのでなく、原告側を問題とした。

BMSはカリフォルニア州に本社を持たないとし、原告のうちの592人はカリフォルニア州で薬を飲んだわけではなく、薬はカリフォルニア州で彼らに売るために製造販売されたものではない。
それなのにカリフォルニアで訴えられるのはフェアでないと主張した。

最高裁は8:1で、カリフォルニア州は非居住者に対してはBMSへの裁判管轄権を持たないとし、BMS勝訴とした。

 

J&Jは直ちにこの最高裁判断を活用し、係争中の裁判(原告3人のうち他州が2人)を無効とするのに成功、過去の敗訴分についても無効を主張している。



2017/8/25    
韓国、米国のFTA 即時改定要求に応じず

 

米韓政府は8月22日、FTAを見直すかを議論する特別合同委員会をソウルで開いた。

米側は米韓FTAで貿易赤字が拡大しているとして改定を要求。一方、韓国は米国の対韓貿易赤字とFTAは無関係とし、改定には応じないと反論した。

ーーー

6月30日の米韓首脳会談でトランプ大統領が文大統領に対し、貿易の不均衡是正を強く迫った。「米韓の貿易協定は公正であるべきだ」と口火を切り、2012年のFTA発効後に対韓貿易赤字が2倍に増えたことや自動車、鉄鋼分野の被害が大きい点を例に、韓国に是正を求めた。

これに対し、文大統領は「条件が合えば米国からLNGを調達できる」と述べた。

米通商代表部(USTR)は7月12日、FTAの改定交渉を韓国政府に正式に要求した。

2017/7/20 米国、韓国とのFTAの再交渉を要求 

 

両国の主張は次の通り。

米国は、米韓FTAで対韓貿易赤字が2倍に膨らんだと主張。自動車と鉄鋼、IT分野について、貿易不均衡の是正を求めた。

米韓FTAは2012年3月に発効した。

その前年の2011年の対韓輸出は435億ドル、2016年は423億ドルと2.7%減少した。

2011年の対韓貿易赤字は132億ドル、2016年は276億ドルと倍増した。

2016年の自動車セクターの赤字は230億ドルで、全体の赤字の90%近い。
韓国の自動車市場の非関税障壁が問題。

韓国は下記の通り反論した。

2017年上半期の対米黒字は30%減少した。

サービス収支は韓国の赤字で、年2桁のペースで増えている。

対韓赤字の原因がFTAではない。韓国の対米投資も、米国の対韓投資も大きく増えており、「ウィンウィンの関係」だ。

米国が問題視する自動車輸出は2016年に減少に転じている。
米国車の輸入は増加しており、日本車を抜き、輸入車で2位。

鉄鋼の対米輸出は反ダンピング課税で既に減少している。

FTAの効果と、米国の対韓貿易赤字の原因について、両国の専門家による共同調査の実施を提案。

 

会議の終了後、記者会見した韓国産業通商資源省の金鉉宗通商交渉本部長は、「米側はFTAの『再交渉』(renegotiation)ではなく、『改定』(amendent)、『修正』(modifcation) という言葉を使った」と説明。「FTA の『改定』『修正』には双方の同意が必要で、今回は同意できなかった」と語った。

米通商代表部(USTR)のLighthizer 代表(電話で参加)は「多くの米国の労働者は米韓FTAから恩恵を受けていない」と不満を表明。「トランプ大統領は貿易不均衡の是正を公約している」とも付け加え、米韓FTAの改善を引き続き求めていく考えを示した。

今後の会議の日程については、韓国側は「米国の提案を待つ」と述べ、未定であることを明らかにした。

 

ーーー

米国、カナダ、メキシコの3カ国は8月20日、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の第1回会合を終えた。年内の決着を目指し、政府間の協議を加速することで合意した。

初会合終了後に発表した共同声明のポイントは次の通り。

・ 3カ国は再交渉で野心的な成果を上げることで一致し、NAFTAのルールを改正する重要性を再確認した。
・ 初会合では20以上の交渉分野について協議した。
・ 第2回会合を9月1〜5日にメキシコで、第3回を9月下旬にカナダで、第4回を10月に米国でそれぞれ開く。

具体的な成果は明らかにしていない。

米国は、原産地規則の厳格化や他国の通貨安誘導を封じる「為替条項」の導入を強く求めているが、カナダやメキシコの反対で協議が難航しているとみられる。

2017/7/19 米通商代表部、NAFTA再交渉の協議目標を公表 

 


2017/8/26 米連邦控訴裁、ジュゴン訴訟で原告主張を一部認める 

サンフランシスコの連邦控訴裁(9th U.S. Circuit Court of Appeals)は8月21日、日米の環境保護団体がジュゴンを保護するため、米軍普天間飛行場の名護への移設工事の中断を求めた訴訟で、米裁判所には工事中止を命じる権限がないとして訴えを棄却した1審の判断を破棄し、サンフランシスコ連邦地裁へ差し戻した。

原告側の主張を一部認めた判断で、地裁が今後、工事中止の是非を判断する見通しとなった。

米国の環境保護団体のCenter for Biological Diversityと Earthjustice、日本の環境グループなどが、「現在の基地建設計画では、餌場と生息地を破壊し、ジュゴンは生息できない」と して中止を求めていた。ジュゴンは米国でもU.S. Endangered Species Actで絶滅危機種に指定されている。

日本政府は2012年に、移設工事はジュゴンに悪影響を与えないとし、米政府も2年後に同じ結論を出していた。

2015 年に、一審のサンフランシスコの U.S. District CourtのEdward Chen 判事は下記の理由で却下していた。

原告の要求は裁判所が扱えない政治的問題である。裁判所はジュゴンを保護するための工事中止や他の保護策を命じる権限がない。

これに対し控訴裁の3人の判事は、環境団体は国防総省に対し、ジュゴン対策を求めるための裁判を起こす法的権利があると判断した。また、環境団体による工事中断要求は司法を超えた政治問題を引き起こすものではないとした。

2015年に訴えを却下したChen 判事に本件を戻し、審査させる。

国防総省は判決を検討すると述べた。

3月の審理中に司法省は、日本政府が自国領土内の、協定により日本政府が支払う計画にとって何がよいのかを決めているのに、米国の裁判所が何が公共の利益かを決めるようにはなっていないと主張した。これに対し裁判長は、「分かったよ。君の立場ではそうだろう」と述べ、ニヤリとした。


2017/8/28   サムスン電子副会長に実刑判決、ソウル地裁

韓国の前大統領、朴槿恵被告側への贈賄罪などに問われた国政介入事件で、ソウル中央地裁は8月25日、サムスングループを事実上率いる李在鎔・サムスン電子副会長に懲役5年(求刑12年)の判決を言い渡した。贈賄や横領など問われた罪のすべてを有罪とした。

副会長は控訴する。

公判では、李被告が闘病中の父李健熙・サムスン電子会長から経営権を継承するため、朴被告に便宜供与を求めて賄賂を渡したかが問われた。

サムスングループでは、トップの不在がさらに長引くことになり、パニック状態に陥った。今後、サムスングループの経営がどうなるか、注目される。

経営・経済専門家らはサムスンが負う最も大きな打撃として「ストップした買収合併戦略」を挙げた。昨年まで活発に進められたサムスンの買収合併が今年に入り完全にストップしたのは大型投資を主導できるだけのリーダーシップがないためという。

ーーー

朴槿恵大統領が絡む疑惑と親友の崔順実被告の国政介入事件を調べている韓国の特別検察官の捜査チームは1月16日、贈賄などの容疑でサムスングループの事実上のトップ、李在鎔サムスン電子副会長の逮捕状を請求した。逮捕には裁判所の許可が必要である。

ソウル中央地裁は1月19日、特別検察官チームによる李在鎔副会長に対する贈賄や横領、偽証容疑の逮捕状の請求を棄却した。

判事は「現段階で逮捕の事由や必要性を認定するのは難しい」と発表。理由として「賄賂犯罪の要件となる対価関係、不正な請託などに対する現在までの証明の程度や、各種支援経緯に関する具体的事実関係とその法律的評価をめぐり争いの余地がある」と指摘した。

その後、韓国の特別検察官は2月14日、李在鎔サムスン電子副会長について贈賄などの疑いで再び逮捕状を請求した。13日に出頭を求め、改めて事情聴取。再請求に踏み切った。

ソウル中央地方裁判所は2月17日、副会長の逮捕を認めた。「新たに構成された犯罪事実と追加の証拠資料などを考え、拘束の必要性を認める」と説明した。
地裁側も、朴氏の疑惑に対する国民の関心が高く、野党が一致して李副会長の逮捕を求めていたことを考慮したとみられる。

李在鎔副会長の主要容疑は次の5つ。
△賄賂供与
△賄賂供与の目的で会社の公金を横領
△賄賂供与の目的でドイツに送金した、財産の海外逃避
△賄賂を隠蔽するために犯した犯罪収益隠匿
△国会での証言・鑑定に関する法律違反

サムスンは2015年8月に崔順実被告のドイツ法人であるCore Sportsと220億ウォン台のコンサルティング契約を結び、このうち38億ウォンを送金した。
2015年10月と2016年1月には崔被告のめいのチャン・シホ氏が設立した韓国冬季スポーツ英才センターにも16億2800万ウォンを後援した。
崔被告が設立に深くかかわった文化支援財団「ミル財団」とスポーツ支援財団「Kスポーツ財団」に204億ウォンを拠出した。

支援を約束したものまで含めると総額430億ウォン(約41億3600万円)に上る。

特検チームはこうした支援が2015年7月に朴大統領が保健福祉部傘下の国民年金公団を通じサムスン物産と第一毛織の合併を助けたことに対する答礼だとみており、これらの資金協力が李副会長の指示もしくは了解のもと実行されたとし、副会長に崔被告側への贈賄罪が成立すると判断した。

8月7日に開かれた結審公判で、特別検事は、同事件が「典型的な政経癒着による腐敗犯罪で国民主権の原則と経済民主化という憲法的価値を大きく毀損した」と主張し、「法廷で正義が生きていることを見せてくれることを期待する」という言葉と共に、予想を上回る懲役12年の重刑を求刑した。


2015年9月1日、第一毛織とサムスン物産(Samsung C&T)が合併し、新しいサムスン物産(Samsung C&T) とな り、Samsungグループ支配構造の事実上の持ち株会社となった。

これにより、財閥の中心の三星電子に対する李一族の支配権が強化される。

この合併について、朴政権が第一毛織とサムスン物産2社の大株主だった国民年金公団に対し、所管官庁の保健福祉省を通じて合併に賛成するよう圧力をかけた疑いがあるとされた。

2017/1/20 ソウル地裁、サムスン電子副会長の逮捕を認めず

 

これに対し、李在鎔副会長はこのような請託と代価性を全面的に否定した。

サムスングループはコメントを発表し、「副会長が対価を望んで支援したことは決してない。
崔順実被告に対する支援とミル財団・Kスポーツ財団への支援金は、朴大統領の強要により仕方なく出したものだ。
とりわけ、合併や経営権の継承と関連して不正な請託があったとする特別検察官の主張は受け入れがたい」とした。


裁判では、特検は最後まで李在鎔副会長の贈賄容疑に対する決定的な証拠を提示できなかった。 朴前大統領がサムスンの案件と関連した指示を下したという証拠も何一つ出なかった。

法廷に呼び出された計59人の証人のうち、誰一人からも決定的な証言を得ることができなかった。

このため、朝鮮日報は、「特検の結審公判の論告文が法的な説明よりも、国民感情に訴えたという指摘がある」と述べ、請託の事実を立証できる直接的証拠がない状況で、「特検が法廷の外で世論戦を繰り広げることは望ましくない」という法曹界関係者の声を紹介した。担当記者のコラムを通じても「論理がずさんな特検が『人民裁判』を期待している」と、警戒の声を高めた。

ーーー

7月2日の裁判では、就任したばかりの金尚祖・公正取引委員長が証人として出廷した。「年休を取得して個人の資格で来た。」

検察側の質問に対し、第一毛織とサムスン物産の合併は、「オーナー家の経営権継承のため」のもので、「時の大統領がOKしたから成功した」と述べた。

金尚祖・公正取引委員長は6月の就任までは漢城大学教授で、経済分析を通じて大企業の不当な利益確保を追求し、「財閥狙撃手」の異名を持つ。

2017/6/22 韓国、公取委委員長に「財閥狙撃手」が就任 

 


 

2017/8/29    米国の金融緩和と労働市場

米連邦準備理事会(FRB)は2016年12月に1年ぶりに利上げを行い、2017年に入り3月と6月に追加利上げを行った。年内さらに1回を見込んだ。

2017/6/15 米、3カ月ぶり利上げ 


FRBのイエレン議長は7月12日、米下院金融サービス委員会で「経済が想定通りなら、比較的早く保有資産の縮小を開始する」と表明した。「今後数カ月は物価動向を見極める」とも述べ、保有資産の縮小を急ぐ一方で、追加利上げは慎重に判断する考えをにじませた。市場では9月の会合で資産縮小を決めるとの見方が浮かんでいる。

イエレン議長は8月25日、米国ワイオミング州ジャクソンホールで毎年開催される経済政策シンポジウム、ジャクソンホール会議で講演した。
講演では、トランプ政権が掲げる大幅な金融規制緩和をけん制した。FRBの保有資産の縮小開始や追加利上げの時期には言及しなかった。

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2016年12月の利上げ時には、FRBの声明文では「労働環境と物価上昇率の実績と見通しに鑑みて、政策金利を引き上げると決断した」と強調した。

このところ、米国の消費者物価は低迷しており、FRBが重視する米国商務省発表の個人消費支出物価指数(PCE Price Index)   は6月に前年比 1.4%で、目標とする2.0%に程遠い。

雇用面では、失業率は4.3%まで下がり、完全雇用水準とされる4.6%を3月以降5カ月連続して下回っているが、平均時給の伸び率は2.53%と低水準に止まっている。
(日本と同様である。)

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FRBは8月3日、これまで発表してきた「労働市場情勢指数」(LMCI:labor market conditions index)の発表を取り止めたと発表した。

LMCIは労働市場関連の19の指標をもとに算出するもので、「雇用者数や失業率といった雇用状況の数だけでなく労働の「質まで加味されている」のが特徴である。

イエレン議長が重視するもので、「イエレン・ダッシュボード(計器盤)」とも呼ばれ、2014年2月のイエレン議長の就任後、2014年10月に過去に遡り、数値が発表された。

過去の指数の動きは不況時期をビッタリ示している。

LMCIの構成要素は次の通り。

    算入倍率
(12-month)
失業 失業率 -0.96
労働参加率 0.36
フルタイムでの労働を希望するパートタイマーの数 -0.91
雇用 就業者数 0.91
政府関連雇用者数 0.03
臨時雇用 0.88
労働時間 平均週勤務時間 0.69
週平均労働時間 0.75
賃金 平均時給 0.38
求人 求人誌数(help-wanted index) 0.93
採用 求人倍率 0.78
転換率(失業者から雇用者へ) 0.76
Layoffs 失業保険者率 -0.93
失業5週間以下 -0.77
離職 離職率 0.88
退職5週間以下 0.42
調査 求人多数業種対採用困難業種 0.93
採用計画 0.65
採用困難専門職 0.83

 

しかし、ここにきてLMCIは低い水準で、最新(最終)の2017年6月は1.5となり、前月の3.3から急低下し、ゼロに接近している。

FRBとしては、これ以上低下すると、「労働環境と物価上昇率の実績と見通し」がいずれもマイナス傾向を示し、保有資産の縮小開始や追加利上げがやり難いと考えたとみられる。

FRBは公表中止の理由を「労働市場の変化をとらえるには、もはや有用ではないと判断した」とし、「平均時給を指標に取り入れても、労働市場と賃金上昇との間に有意義な相関をもたらさなかった」と述べた。

We decided to stop updating the LMCI because we believe it no longer provides a good summary of changes in U.S. labor market conditions.

Specifically, model estimates turned out to be more sensitive to the detrending procedure than we had expected, the measurement of some indicators in recent years has changed in ways that significantly degraded their signal content, and including average hourly earnings as an indicator did not provide a meaningful link between labor market conditions and wage growth.

 


2017/8/30 ハリケーン Harvey

米国南部のメキシコ湾岸(Gulf Coast)に接近し、カテゴリー4に勢力を強めていたハリケーン Harveyは8月25日午後10時ごろ、テキサス州Rockport付近に上陸した。風速は約60メートルに達した。

Harvey は上陸後、勢力を弱めたが、そこで停滞し, Houston areaを含む広域に大量の雨を降らせ、各地で冠水被害が出ている。

その後、またメキシコ湾に出て、再び勢力を強め、Houston 近郊に再上陸の構えを示している。

テキサス州は洪水被害に対し、州兵1万2千人を総動員して救助活動にあたっている。ブルームバーグ通信は経済的損害が300億ドルに達するとの試算を報じた。

テキサス州知事は30の郡に非常事態宣言を出すとともに、連邦政府による支援の迅速化を図るためHarvey を「大規模災害」として宣言するようTrump大統領に要請した。

これを受けて大統領は8月25日、Harveyを大規模災害と宣言する文書に署名した。大統領は8月29日にテ
キサス州を訪れて被害状況を視察する。

 

冠水被害が広がったテキサス州の Corpus Christi、Lake Charles、Houston地区の製油所は米国全体の製油能力の30%を占める。
エクソンモービルやロイヤル・ダッチ・シェルなどの大手各社は、製油所などの関連施設の操業を相次ぎ停止した。
全米の石油精製能力の15%が止まった状態という。

原油生産地と港をつなぐパイプラインも止まった。

メキシコ湾の原油生産日量38万バレル分(メキシコ湾原油生産の約21%)が停止、イーグルフォードシェール鉱区でも操業停止が広がっている。

Harveyはこれから再上陸する可能性もあり、いつ再開できるかは不明である。

原油の在庫がだぶつくとの見方から、ニューヨーク商業取引所では原油価格が大幅に下落。WTI原油の先物価格は8月28日に、前週末より1.30ドル安い1バレル=46.57ドルと、ほぼ1カ月ぶりの安値水準で取引を終えた。

8月29日の終値は46.44ドルとさらに下がった。一時は45.76ドルと約1カ月ぶりの安値を付けた。テキサス州では29日も降雨が続いており、沿岸の製油所が通常稼働に戻るには数週間かかるとみられている。

 

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米国では2005年8月にHurricane Katrinaが New Orleans を、翌9月にはHurricane Rita がHoustonの東方に上陸し、石油精製、石油化学に大きな被害を与えている。

   

2017/8/31  韓国ロッテグループ、持ち株会社制へ一歩 

ロッテ製菓、ロッテショッピング、ロッテフード、ロッテ七星飲料の系列上場会社4社は8月29日、臨時株主総会を開き、持ち株会社制への移行に向けた会社分割・合併の承認を得た。

4社はそれぞれ、投資部門と事業部門に分割し、ロッテ製菓の投資部門が残りの3社の投資部門を吸収合併し、中間持株会社のロッテホールディングス にする。事業部門はそれぞれ、持株会社の子会社として存続する。

4社は4月26日にそれぞれ取締役会を開き、持ち株会社制への移行のための企業分割と分割合併を議決した。 

辛東彬(重光昭夫)会長と対立する兄の辛東主(重光宏之)は会社分割・合併に反対しており、5月に株主総会決議を禁止する仮処分を申請するなど三つの訴訟を起こしたが、いずれも棄却された。

臨時総会の承認により、10月1日が分割合併期日となり、その後、変更上場や再上場の審査などの手続きを経て、10月30日に事業部門4社と中間持株会社の株式取引が再開される予定。

持ち株会社制に移行すれば、 7月末現在67個あるロッテグループの循環出資の輪が18個に大幅に減る。

ロッテグループでは、将来的にこの中間持株会社と韓国ロッテの本社といえるホテルロッテの合併を考えているとみられている。

付記

韓国ロッテグループは10月12日、ロッテ製菓など系列4社の投資部門が統合した持ち株会社「ロッテ持ち株株式会社」が同日正式に発足したと発表した。
ロッテ製菓、ロッテショッピング、ロッテ七星飲料、ロッテフードの4社を投資部門と事業部門に分割した上で、ロッテ製菓の投資部門が残り3社の投資部門を吸収する形で形成された。

代表取締役は辛東彬(重光昭夫)会長と同グループ経営革新室長(社長)の黄ガッ圭(ファン・ガッキュ)氏が共同で務める。資

辛東彬氏の持ち株会社の持ち株比率は13.0%、兄の辛東主(重光宏之)の持ち株比率は0.3%、日本のロッテHDは4.5%にとどまる。

日本のロッテHDは、今回の合同には参加しない韓国ロッテの事実上の本社のホテルロッテの100%株主。(ホテルロッテは新会社の大株主)

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ロッテグループの辛東彬(重光昭夫)会長は2015年に、不透明な支配構造を改善するため、グループ企業間で株式を持ち合う「循環出資」をなくし、持ち株会社制へ移行する方針を明らかにしていた。

循環出資を減らすことで支配構造が単純化し、投資と事業部門を分離することで経営効率が上がり、経営が安定するとみられている。

現在の韓国ロッテグループの資本関係は次の通り。

    http://mottokorea.com/mottoKoreaW/userfiles/2014/07/lotte07241.jpg

今回中間持株会社をつくる4社の出資関係は次の通りで、上図に加え、それぞれの子会社を加えて循環投資がある。

例えば、ロッテショッピングはテホン企画の株式の34%を持ち、テホン企画はロッテ情報通信の株式の28.5%を持っている。そしてロッテ情報通信はロッテショッピングの株式を4.8%持っている。

ロッテ製菓はロッテフードの株を持ち、ロッテフードはテホン企画に出資、テホン企画はロッテ製菓に出資している。

中間持株会社の設立で、ホテルロッテ(及びロッテアルミ)が中間持株会社に投資、中間持株会社の下に事業会社の4社がくっつく形となる。

 

付記

ロッテグループの長男である辛東主(重光宏之)・日本ロッテホールディングス前副会長がロッテ系列会社の株をほとんど売却することにした。

SDJコーポレーションは2017年9月12日、辛前副会長が所有していたロッテショッピングとロッテ七星飲料、ロッテフード、ロッテ製菓のほとんどの株を売却することにしたと明らかにした。

SDJコーポレーションは、2015年10月にシン前副会長がロッテグループの経営権奪還をするために設立した会社で、辛東主・前副会長が会長を務めている。

売却額は総額7,000億ウォン(約680億円)を超える見通しで、株式を大量に保有している日本ロッテの経営権確保に注力するものとみられる。

 


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