ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2018/2/1  富士フィルム、米国Xerox Corporationを買収

富士フィルムHDは1月31日、米国Xerox Corporationとの間で以下の点で合意したと発表した。

 @富士フィルムHDがXerox Corporatの50.1%を取得、Xeroxは社名をFuji Xeroxに変更、NYSEの上場を維持
 A富士フィルムHDの子会社の富士ゼロックスとXerox Corporationの経営統合

富士フィルムとXeroxは56年間に亘り、富士ゼロックスを通じて多角的な相互協力を深めてきたが、富士ゼロックスが成長市場のアジアを中心にするのに対し、Xeroxが基盤とする欧米では、ペーパーレス化でコピー機の需要が減少している。

富士ゼロックスは当初は50/50であったが、2001年にXerox の経営不振で 、富士フィルム75%出資に変更した。
テリトリーは、Xeroxは
欧米中心、富士 ゼロックスは、日本、中国などアジア・太平洋となっている。

 

Xerox については最近、米の大手投資家の Carl Icahn が別の大株主との共同で富士ゼロックスの解消も含めた見直しを要求していることが報じられていた。合弁終了または、有利な条件での再交渉を求めている。
また、最高経営責任者の解任を含め、Xerox の抜本的な経営改善も求めている。

富士フィルムは、Xeroxの買収により、Xeroxと富士ゼロックスを一体化し、世界最大規模の売上高を誇るドキュメント企業とする。
統合効果発現により売上増及びコスト改善を通じた収益力向上を見込み、ドキュメントソリューションカンパニーとして事業成長を加速させる。

Xeroxによれば、現在のXeroxの株主は25億ドル(1株当たり $9.80)の配当と新会社Fuji Xerox の株式 49.9% を与えられる。残り50.1%は富士フィルムが保有する。
既存株主は、多額の現金と、富士ゼロックスと統合して著しく強化された新会社(Fuji Xerox)の株式を保有することとなるとしている。

  

富士フイルムHDは、富士ゼロックスにより自己株式として取得された対価を活用して、Xeroxの新株50.1%を取得する。
富士フイルムHDおよび富士ゼロックスの現金の外部流出はない。

1)  富士ゼロックスが 6,710億円を銀行借入
2)  富士ゼロックスが 6,710億円で富士フィルム保有の富士ゼロックス株を取得 (結果としてXeroxの100%子会社になる)
3)  富士フィルムは受領した6,710億円(61.8億ドル)で新Xeroxの株式 50.1%を取得 
4)  新Xerox は100%子会社となった富士ゼロックスの銀行借り入れを富士フィルムから受け取った6,710億円で返済する。

5) 新Xerox は旧Xerox 株主に、新Xerox株式の49.9%と特別配当25億ドルを支払う。

(まとめ)
富士フィルムは富士ゼロックスの75%分を6710億円と評価し、これを新Xeroxに渡すことにより、新Xeroxの50.1%を受け取る。
Xerox の既存株主は、Xeroxの株式100%の代わりに、新Xeroxの49.9%と特別配当25億ドルを受け取る。

 


新しいFuji Xerox は現Xerox本社(米国コネチカット州)および現富士ゼロックス本社(東京都港区)の両方を本社として活用する。

本件は、富士フイルムHDは1月31日、ゼロックスは米国時間1月30日の各取締役会において全会一致で承認された。

付記

米ゼロックスの筆頭株主で「物言う株主」として知られる著名投資家のCarl Icahnは2月12日、同じく大株主のDarwin Deasonと共同で、富士フイルムによる買収に反対する声明を公表した。2人はゼロックスの株を合わせて15.2%保有する。

主張は次の通り。

ゼロックス単独で経営を続けても、経営者を一新し、セキュリティーやソフトウエア分野への事業シフトや販売網の再構築を実行すれば、ゼロックスの株主価値を大きく引き上げることができる。
「富士フイルムにこの会社を奪われてはならない」と他の株主に呼び掛けている。

富士フイルムがキャッシュを一切使わない買収スキームも問題視。ゼロックス株主に対して支払われる25億ドルの特別配当がゼロックスの資産から支払われる点にも難色を示している。

買収交渉でゼロックス経営陣が株主価値を十分に考慮したか疑わしく、交渉過程の詳細を公開することを求める。
 


新富士ゼロックスの戦略の方向性:

* 写真現像技術を応用して微細なパターンを作成する技術。例えば半導体の製造工程などで用いられている。

 


2018/2/2 SABIC、Clariantに出資 

Clariant は1月25日、SABICがClariantの株式の24.99%を取得し、最大株主になったと発表した。

物言う株主Keith MeisterのヘッジファンドCorvex Management LP と投資グループの40 North から買収した。 これまで Corvex Management LPと40 North は共同でWhite Tale Holdings を設立し、Clariantと対決してきた。

Clariantは次のように述べた。
 SABICによる同社株式の取得については事前に知らされていた。
 SABICは世界の大手化学会社の一翼で、スペシャリティ部門にも進出しており、触媒のJV Scientific Designのパートナーでもある。
 近いうちに今後のClariantの運営について話し合いたい。

SABICは2003年に吸着剤と触媒のメーカーである Süd-Chemie と組んで、Linde AG からScientific Design Company Inc.を買収し、50/50 JV とした。

その後、2011年にClariantがSüd-Chemieを買収した結果、現在 Scientific Design はSABICとClariant の50/50 JV である。

ーーー

Corvex と40 North の White Tale Holdings はこれまで、Clariant株を長期保有するとして、会社側と対決してきた。

 

Clariant と Huntsman は2017年5月22日、両社の取締役会が満場一致で両社の対等合併の契約を承認した。

統合会社の社名はHuntsmanClariant で、統合会社の売上高は132億ドル、 EBITDA は23億ドル、企業価値は約200億ドルとなる。

Clariantの株式がそのままHuntsmanClariant の株式となり、Huntsmanの株主はHuntsman株式1株につき1.2196株のHuntsmanClariant株を受け取る。
結果として、Clariant株主が52%、Huntsman株主が48%となる。

取締役は両社から均等に出す。

新会社のグローバル本社はスイスのPratteln に置き、運営本部はテキサス州The Woodlandsに置く。

株式はスイスとNew Yorkの両方で上場する。

2017/5/26     Huntsman と Clariantが統合 

これに対し、White Tale Holdings は反対を唱え、Clariant株の買い増しを進めた。

2017年7月10日  10%超
   9月19日  15%超
    10月27日  20%超

White Tale は持株が15%超となった時点でClariantの取締役会に公開状を送り、Huntsmanとの合併を取り消し、戦略的代替案を探ることを求めた。

合併はClariant株主に損害を与え、Clariantのいろいろな選択肢をつぶすことになるとしている。
合併を取り止めるとともに、独立投資会社を雇って、スペシャリティケミカルの専業としてやっていける代替案を探ることを求めた。

両社は2017年10月27日、合併を断念した。両社は合併が長期的に株主の利益になると信じるが、物言う投資家White Tale Holdings が反対を続け、他の株主も同調しているため、無理と判断した。

契約には、株主総会で通らなかった場合の違約金の条項はなるが、今回は総会前の両社の判断であるため、違約金の支払いはない。

その後、ClariantはWhite Tale と話し合いを続けた。

しかし、White Tale の主張は曖昧で、Clariant側の印象は、Clariantをバラバラにして、それぞれを高く売ることを狙っているように見えるとしている。

Plastics & Coating部門の売却検討の提案も出された。

2016年の業績(100万スイスフラン)      

  売上高 EBITDA
Care Chemicals 1,465 276
触媒 673 160
Plastics & Coating
(顔料、マスターバッチ、添加剤)
2,525 368
天然資源ビジネス
Oil & Mining、Functional Minerals
1,184 200
Corporate - -117
Total 5,847 887

これは実質的にClariant 解体を意味し、経営陣にとって受け入れる余地はなく、対立した。

White Taleの狙いは、Clariantの価値を高めることではなく、売り抜けて利益を得ることであり、その後も24.99%まで買い増しし、SABICに売却して利益を上げた。

Clariant 株価推移

 



 

2018/2/3 丸善石油化学、品質検査に関する不適切行為判明 

丸善石油化学は2月2日、取り扱う製品の一部について、試験・分析項目の一部につき、需要家との契約に則った試験・分析がなされていなかった事実が判明したと発表した。

現時点で、法令違反行為は確認されていないとしている。需要家には1月24日以降、順次、説明を開始した。

判明後直ちに是正を行い、1月30日時点で全て試験・分析を開始した。
 
同社では 1月10日付で社長を本部長とする対策本部を設置した。更に、同日付で外部弁護士を加えた社内調査委員会を設置し、詳細な事実確認を行うとともに、本件の過去の経緯、原因の究明などの調査を行ったうえ、再発防止策を策定する予定。

問題点は次の通り。

@実際には試験・分析していないにも関わらず成績表に記述・提出している。
A定められた試験・分析頻度を順守していない。


対象となる製品(千葉工場および四日市工場)(21品目)
・プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、分解系キシレン、改質系キシレン

・高純度ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、メチルエチルケトン

・セカンダリーブチルアルコール、ジイソブチレン、ターシャリーブチルアルコール

・スワソルブETB(エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル)

・マルカゾールFH(シクロペンタン)、酸化エチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール

・トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、マルカレッツM(M-890A)、液化炭酸ガス

付記 

宇部興産でも製品検査項目の一部を実施していなかったことが判明 (2/23発表)

問題となるのは、宇部興産の千葉石油化学工場が生産し、宇部丸善ポリエチレン(宇部興産、丸善石化の50/50JV)が販売するLDPE。

宇部丸善ポリエチレンは2004年10月に宇部興産のLDPE製造販売事業を継承し、丸善石油化学が参加したもの。生産は宇部興産が受託している。

ーーー

丸善石油化学は、2016年3月よりコスモエネルギーHDの連結子会社となっている。

コスモは丸善石油化学に対し、自らが30%、100%子会社のコスモ松山石油が10%で合計40%を出資していたが、チッソ子会社のJNCから8%分を取得した。
出資比率は48%だが、丸善石油化学の自社株が9%あるため、議決権ベースでは52.75%となった。

2016/1/8  コスモ石油、丸善石油化学を連結子会社化
 



2018/2/5 リニア中央新幹線建設工事をめぐるゼネコン大手4社による談合事件での課徴金 

リニア中央新幹線建設工事をめぐるゼネコン大手4社による談合事件で、公取委による立ち入り調査前に自主申告した大林組については、これまで、課徴金全額が免除され、刑事告発もされないものとされてきた。

リニア中央新幹線建設工事をめぐるゼネコン大手4社(大林組、清水建設、鹿島建設と大成建設)による談合事件は2017年12月8日の東京地検特捜部による偽計業務妨害容疑での家宅捜査で明らかになった。

その後、12月18日には、特捜部と公取委が独禁法違反容疑で立ち入り調査を行ったが、その前に大林組が自主申告をおこなった。

独禁法違反容疑で立ち入り調査の後で、清水建設も自主申告を行っている。

付記

東京地検特捜部は3月2日、鹿島の土木営業本部の元副本部長と大成建設の元常務執行役員を逮捕した。鹿島建設と大成建設は、談合を否定している。

付記

公正取引委員会は3月23日、大林組、鹿島、清水建設、大成建設の大手ゼネコン4社と、鹿島と大成建設の幹部2人を独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で検事総長に刑事告発した。東京地検特捜部は告発を受け、同日にも4社と2人を同罪で起訴する。
 

独禁法では、調査開始日前の1番目の申告事業者は課徴金が全額免除されるとともに、公取委による刑事告発が見送られる
その他については以下の通り。

    課徴金 刑事告発 一般認識
開始前 第1申告者 全額免除 見送り 大林組
第2  50%減額    
第3〜第5 30%減額    
開始後 最大 3社 &
開始前と合わせ
  最大5社
30%減額   清水建設

公取委は第2申告者以降の扱いを改正しようとしていたが、現通常国会への提出を断念した。

2018/1/26 公取委、独禁法改正案の通常国会への提出を断念


しかし、課徴金減免には次のような手続きが必要である。

(調査開始前の自主申告)

 @まず調査開始前に、違反行為の概要を記載した「様式1号」を提出
 Aさらに公取委が通知する期限までに、指定日までに、不正行為に関与した自社や他社の役職名や時期などを明記した詳細な報告と営業日報などを添えた「様式2号」を提出

(調査開始後)
 調査開始日から20営業日を経過した日までに「様式3号」を提出し、公取委が把握していない情報を提供



今回の場合、大林組は調査開始前に1号様式を提出したが、様式2号の提出前の12月18日に独禁法違反容疑の調査が行われた。

このため、調査開始前に様式1号と様式2号を提出するという要件を満たせず、調査開始後の自主申告となる。
清水建設とともに、調査開始20営業日の前に様式3号を提出した。

ーーー

様式2号は公取委の指定する日までに提出することとなっている。

今回、その日の前に調査に入った。

通常は自分が指定した様式2号提出日までに調査に入ることはあり得ない。公取委の知らない事案を自主申告しても、 そのメリットが大幅に下がることとなる。

今回は、「公取委の知らない事案」ではなく、12月8日の特捜部の偽計業務妨害容疑調査の時点でおそらく公取委も関与しており、12月18日の独禁法違反容疑調査も予定されていたと思われる。

大林組の様式1号提出は、「形式上」は調査前であるが、公取委が全く知らない事案ではない。特捜部の調査の報道で公知の事実でもある。

大林組が仮に様式1号と様式2号を合わせて提出しておれば、調査前扱いになっていたかも分からない。


2018/2/5 サムスントップ釈放 

朴槿恵前政権で起こった国政介入事件で朴前大統領と長年の知人の崔順実被告への贈賄罪などに問われ、一審で懲役5年の実刑判決を受けたサムスングループ経営トップのサムスン電子副会長、李在鎔被告らの控訴審判決公判が2月5日開かれた。

控訴審は2017年12月27日に結審したが、検察側は懲役12年を求刑していた。

2017/12/30    サムスン副会長の控訴審、検察側12年求刑

ソウル高裁は地裁判決を破棄し、李被告に新たに懲役2年6カ月、執行猶予4年を言い渡した。李被告は約1年ぶりに釈放された。
2人の部下も執行猶予判決で釈放された。

2017年8月の一審では5つの起訴事実すべてが有罪とされたが、高裁は焦点となっていた贈賄の一部と海外への不正な送金などを無罪とした。

李被告が闘病中の父李健熙・サムスン電子会長から経営権を継承するため、朴被告に便宜供与を求めて賄賂を渡したとされたが、裁判所は大統領に依頼するようなことは無かったとしてこれを認めなかった。

サムスンが崔順実被告のドイツ法人であるCore Sportsと220億ウォン台のコンサルティング契約を結び、このうち38億ウォンを送金した件については、賄賂とは認めたが、違法な送金とは認めなかった。

これについては、最も悪いのは朴槿恵と崔順実で、韓国で最も力のある朴槿恵がサムスンに強要し、崔順実は朴槿恵との関係を利用して私腹を肥やしたとした。

下級審が、政治家と財界の典型的な癒着であるとしたのと大きく異なる。

朴槿恵被告の要請を受けて崔順実被告の娘の乗馬訓練のスポンサーになったことについては、弁護側は、李在鎔被告は部下がやったことを何も知らないとしたが、裁判所は有罪とした。

 

サムスンではトップ不在が長引き、大型M&Aや新事業を含む経営への影響が懸念されていたが、執行猶予判決で同被告は経営に復帰する。

付記 朝鮮日報は2月6日の社説で以下の通り述べている。

 一審では崔順実被告らに対する乗馬支援などに関して具体的な請託などなかったことは認められたが、「黙示的請託」なるものがあったとして懲役5年の実刑が宣告された。サムスングループの経営権継承という懸案をめぐり、朴前大統領と李氏が以心伝心で「心の中で請託が行われた」として実刑を宣告したのだ。裁判官が実際の証拠ではなく他人の心中を勝手に判断し「心の中の請託」があったとして有罪判決を下すなど絶対にあってはならないことだ。

 この無理な判決は今回の二審でほぼ正された。二審で裁判長は「李氏が朴前大統領に請託を行った証拠はない」と認めた。言うまでもなく実際に提出された証拠も一切なかった。サムスン物産と第一毛織の合併や、サムスン生命の金融持ち株会社への転換は李氏に経営権を継承するためだったとは言えず、朴前大統領も経営権継承について把握していたとは考えられないというのが裁判長の判断だ。また誰が見ても請託が行われたと言える状況でもなかった。「心の中の請託」などその前提自体が成立しないことを裁判長が認めたのだ。

 この事件を最初に捜査した検察は、事件の性格について当初「朴前大統領の強要によるもの」と判断したが、それを特別検事が「贈賄事件」へと勝手に変えた。朴前大統領に厳しい判決を下すため、事件の構図を思いのままに変更したのだ 。

付記 サムスン側、検察側がともに判決を不服として上告した。


 

2018/2/6 手術支援ロボット  ダヴィンチ(da Vinci Surgical System)の保険適用拡大へ 

厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)は2018年1月17日の総会で、2018年度診療報酬改定におけるロボット支援下内視鏡手術への保険適用について議論した。

2018年度診療報酬改定に向けて各領域の学会から計15件の提案があったが、2017年10月23日の医療技術評価分科会で議論し、その後、各提案について分科会委員による評価を行った。
その結果、既に保険が適用されている前立腺がんと腎臓がんに続き、肺がんや食道がん、胃がんなど新たに12件が挙げられた。
既存技術と同等程度の有効性・安全性があるとされるものを選んだ。

既承認

 

腹腔鏡下 前立腺悪性腫瘍
同               腎悪性腫瘍
新規承認案
胸腔鏡下 縦隔 悪性腫瘍
同    縦隔 良性腫瘍
同    肺 悪性腫瘍(肺葉切除or 1肺葉を超えるもの)
同    食道 悪性腫瘍
同    弁 形成術
腹腔鏡下 胃 切除術
同    噴門側胃 切除術
同    胃 全摘術
同    直腸切除・切断術
同    膀胱悪性腫瘍
同    子宮悪性腫瘍 (子宮体がんに限る)
同        膣式子宮全摘術

ダヴィンチ(da Vinci Surgical System)は米Intuitive Surgical 社の手術支援ロボットを使う手術。

胸腔鏡下手術、腹腔鏡下手術 をロボット支援下で行うもので、腹腔鏡下手術等では医師が直接鉗子を操作して行うが、ダヴィンチによる手術では鉗子の操作はロボットアームにより行われる。

元々は1980年代の後半に、米国陸軍と旧スタンフォード研究所において開発されたもので、戦地での負傷者の手術を、離れた場所にいる空母や米本土の病院の医師が遠隔操作ですることを狙った。

1995年、民間での応用をさらに推し進めるため、Intuitive Surgical 社が設立され、1996年には最初のロボット支援下手術用サージョンコンソールを開発した。

1999年1月に、da Vinci
Surgical Systemを上市、2000年には、一般的な腹腔鏡下手術を適応とする初のロボット支援下手術システムとして、FDAにより認可された。その後は、胸腔鏡手術、補助切開部からの心臓手術のほか、泌尿器科、婦人科、小児外科、経口アプローチによる耳鼻咽喉科の手術についてもFDAから認可を得てい る。

日本では、2009年11月に、泌尿器・一般消化器・婦人科・胸部外科でダヴィンチの薬事承認がなされ、2010年3月に販売を開始した。
2015年9月に心臓手術も承認された。

これは、大変高価な装置 (日本ではSiモデルが2億4800万円、Si-eモデルが1億7000万円)で、また、年間のメンテナンス費用もかさむ。

2012年4月に前立腺全摘除について保険収載が行われ、これのみ保険適用が可能となった。その後、2016年度から腎悪性腫瘍も 対象となった。
ダヴィンチは米国で蓄積された手術実績に基づいて日本で医療機器として承認されたが、米国では前立腺ガンの患者数が多く、実績データが豊富に集まっていた。腎悪性腫瘍については、2014年9月から日本で「先進医療B」としての治療が認められ、保険適用申請に向けた多施設共同の臨床研究を実施した。)

今回、保険適用が一挙に拡大する。

ーーー

ダヴィンチシステムは、胸腔鏡下 手術、腹腔鏡下手術をロボット支援で行うもの。

システムは、サージョンコンソール、ペイシェントカート、ビジョンカートなどから構成される。
3つのアームと1つのステレオ3Dカメラを搭載し、アームのカセットを交換することで、様々な処置を行うことが出来る。

通常の腹腔鏡下手術では医師が直接鉗子を操作して行うが、ダ・ヴィンチによる手術では鉗子の操作はロボットアームにより行われる。

執刀医は数m離れた場所に置かれたサージョンコンソールに座り、術野の3D画像を見ながら、ロボットアームを遠隔操作する。

左右のコントローラを右手と左手で握り、腕や指を動かすと、患者に横付けされたペイシェントカート(手術装置)に即座にその動きが正確に伝わって、患者の腹腔/胸腔内に挿入された鉗子や内視鏡が同じ動きを する。親指と人差し指を開閉すると鉗子の先も開閉し、組織をつまんで固定したり、剥がしたりといった操作ができる。また、フットペダルで切り替えることで、3本の鉗子と1本の内視鏡の合計4本を一人の術者が自在に操り、繊細な手術が実行でき る。

患者の横には吸引作業や機器カセットを交換したりする補助作業者が立つ。

 

 

 

   国立がん研究センター東病院 HPから

通常の腹腔鏡下手術 では、腹にヘソを含め4つの穴をあけて、機器の出入り口であるポートを設置し、ヘソからは腹腔鏡を入れる。

手術者は腹腔鏡の画像を映すモニターをみながら、ポートからいれた機器で手術を行う。立ったままで、上向きのため、長時間の手術は疲れる。
当然、手ぶれの恐れなどもある。

ダヴィンチの場合は、手術者は、両眼視で見る3Dモニターでリアルな立体画像でとらえることができ る。

開腹手術では3Dだった視野が、内視鏡越しに見る腹腔鏡手術では2Dになってしまい、術者は脳で画像の深さを調整して手術を行わねばならなかった。

座ったままで、下向きの目線(開腹手術と同じ目線)で操作を行うために、疲労が少なく、視野も広く奥行きの把握も良好とされる。

通常の腹腔鏡下手術ではポートに入れた鉗子の先が開閉するだけで、マジックハンドのように直線的でぎこちなく、曲がらない。
ダヴィンチでは鉗子の先に関節があり、人間の手首以上に自在に曲がるので、可動域が広くなる。


先の震えが伝わらないよう手ぶれを補正する機能があり、細い血管の縫合や神経の剥離などを正確に行うことができる。

このため、人の手以上に細かく、丁寧に、確実な手術ができる。

ロボットアームで毛筆で米粒に漢字を書くような細かい作業や、 1円玉より小さな折り鶴を折ることもできるとされる。

東京医科大学病院のトレーニング(折り鶴) https://www.youtube.com/watch?v=BQ3tVUsn2gI

 


2018/2/7 米国の税制改革は違憲、ニューヨーク州等が提訴へ 

ニューヨーク、ニュージャージー、コネティカットの東部3州の知事は1月26日、2017年末に決まった税制改革が自州の住民の連邦税負担を増やすことから、法律の撤回を求め近く連邦政府を提訴すると発表した。

新税制が特定の州の住民に対する差別にあたり、憲法に違反すると主張している。


米国ではこれまで、個人(及び企業)が州や自治体に支払った州税・地方税(所得税や固定資産税など)は連邦税の計算上、SALT (state and local tax) と呼ばれる控除制度により上限なしの控除が可能であった。

今回の税制改革では、個人については、2018年から2025年に限り、控除限度が10,000ドル(夫婦が別々に申告する場合は1人5,000ドル)となった。企業の場合は従来通り。

ニューヨークやニュージャージー、カリフォルニアといった東西海岸に面し、民主党が強い地域は、州・地方税率が高いことで知られる。

州所得税の限界税率は下図の通り。
このほか、固定資産税の全米平均は1700ドル程度だが、全米で最も固定資産税が高いといわれるニューヨーク州のウェストチェスター郡だと平均1万4000ドルに上るとされる。

この結果、州・地方税率の高い地域に住む住民にとっては連邦税の支払いが増え、打撃となる。

ニューヨーク州当局者は、税制改革によりニューヨーク州の納税者負担は年間140億ドルに達する可能性があるとする。
コネチカット州知事は、納税者負担は100億ドル増えるとする。

逆に、州税・地方税の低い南部諸州は今回の改正を歓迎している。

南部への人口移動について研究しているテネシー大学のボイド企業・経済研究センターの所長は、個人や企業が南部に移る理由は温暖な気候や手頃な住宅などさまざまだが、研究では税金が重要な要因になっているとする。今回の税制変更で南部州には2つの大きな影響が及ぶと予想する。一つは南部で恒久的居住を決める高所得者が増えること、もう一つは北部から移り住む中間層労働者が増えることだ。

ーーー

今回提訴方針を発表した3州の知事は、税制改革はSALTとして知られる州税・地方税控除を大きく削減するため、違憲であるとする。

 税制改革法は、各州の権利を根本的に侵害するもので、国の基本である連邦主義の概念に矛盾する。

 州税の高い州を、不公平に、恐らく意図的に罰するものである。

 民主党の強い12州が被害を受け、他の州は利益を得るため、Equal Protection Clauseに違反する。

注)アメリカ合衆国憲法修正第14条に定めるEqual Protection Clauseは、合衆国で生まれた(または帰化した)すべての者に公民権を与えるとする条項

コネティカット州知事は「今回の税制改革は我々の州と経済、住民に対する差別だ」と連邦政府を激しく非難した。

ニューヨーク州知事は「民主党が強い地域を狙った攻撃だ」と主張した。

ニュージャージー知事は、トランプ大統領と共和党主導の議会が、2016年の大統領選でトランプが敗北した民主党が強い州を狙ったものだという証拠が裁判で明らかになるだろうと述べた。
「昨年11月に、たった一夜で500頁もの税制修正案が手書きで出された。私は知らないが、ロビーストが手書きで作成したとされている」と述べた。

影響を受ける他の州の参加を求めるとしている。

 

今回の税制改革が違憲かどうかは税専門家の意見が分かれており、先行きは不透明。

このため、州政府が住民の負担を軽減するため、自ら税制を見直す動きも目立つ。

カリフォルニア州では州政府に支払う所得税を撤廃し、代わりに寄付金を納める方法を検討中。寄付金は連邦税制では全額が控除対象になるため、住民は新税制でも増税にはならない。

 

トランプ政権や共和党議員の間では、州の財政緊縮で州税を引き下げることが先決だとの指摘もある。ムニューシン米財務長官は講演で「州が13〜14%も課税する必要があるのか」と課税率の高い州を批判している。

ーーー

なお、州・地方税の損金算入取り止めは個人所得税の計算に限られ、法人税については従来通り、損金算入が認められる。

米国の法人実効税率の計算は、従来からカリフォルニア州のケースを採っているが、8.84%の州税は従来通り、損金算入される。

今回法人税率が21%に下がる結果、実効税率は27.98%となる。

 従来  35% x (1 - 0.0884) + 8.84% = 40.75%
 改正  21% x (1 - 0.0884) + 8.84% = 27.98%

 


2018/2/8  中国の2017年の石油化学製品の輸出入統計 

主な製品の輸入実績は下記の通り。
樹脂については、PVCを除き、日本の存在感はない。

エチレン  関税番号 290121
...
プロピレン  関税番号 290122
...
PE  (LDPE+LLDPE)    イランからの輸入が多い。 (特にLDPE)

PE 輸入内訳  LDPE:関税番号 39011000、
     LLDPEはこれまで関税番号39019020であったが、2017年からα-オレフィンを加え、390140 となった。
...
HDPE  関税番号 390120 イランからの輸入が多い。
...
PP 関税番号 390210
...
SM    関税番号 290250
...
PS  関税番号 39031990   変性PS(39031910)を除く
...
ABS    関税番号 390330
...
VCM  関税番号 290321
...
PVC  関税番号 390410 (ペースト塩ビを含む)  2011年以降は米国品が日本品を上回る。
...

PVCの輸出は下記の通りで、2016年と2017年は輸出が輸入を上回った。


 


2018/2/9   三井物産、豪石油ガス大手買収

三井物産は2月5日、豪石油ガス開発大手 AWE Limitedに対してTOBを実施すると発表した。

豪州国内の優良原油・ガス資産のポートフォリオを拡充すること、及び豪州石油・ ガス生産事業に於いて、より活動領域を広めるためオペレーター機能を獲得することを目指す。

2018年3月中〜下旬にAWE株1株に付き0.95豪ドルで買い付けをする。50.1%以上の応募で成立し、全株の買い付けを目指す。買収額は最大で602.1百万豪ドル(約512億円)となる。

AWEは豪証券取引所に上場するが、TOB成立後は非公開となる。

付記

三井物産は5月2日、公開買付けが終了し、株式の96.47%を580百万豪ドル(約493億円)で買い付けたと発表した。

今後、未応募分株式の強制買取を実施し、完全子会社化及び上場廃止を行う。

ーーー

三井物産は、中国国儲能源化工集団と豪州のMineral Resources Limitedとの争いに勝ち、TOBを実施する。

AWEに対しては、2017年11月30日に中国国有の中国国儲能源化工集団(China Energy Reserve and Chemical Group=CERCG)の豪子会社が1株当たり現金0.71豪州ドルでの買収を提案、12月8日に現金0.73豪州ドルに引き上げた。

12月8日に豪州のMineral Resources Limited (MRL) が1株当たり0.80豪州ドル相当の株式交換による買収を提案、その後、現金と株式の組み合わせによる1株当たり0.83豪州ドル相当に引き上げ、AWEはこれを株主に推奨した。

2018年1月29日に三井物産が1株当たり0.95 豪州ドルでの買収を提案、AWEはMRLに対し、三井提案への対案を出すよう要請したが、期限までに回答がないため、三井物産提案を株主に推奨した。

2017/11/30 中国儲能源化工集団(China Energy Reserve and Chemical Group=CERCG)
  1株当たり現金0.71豪州ドルで買収する条件付き提案
12/5 上記提案取り消し
12/8 CERCGが1株当たり現金0.73豪州ドルでのTOBを発表 総額 462百万豪州ドル
12/8 Mineral Resources Limited (MRL)
 0.80豪州ドル相当の株式交換提案
 AWEの22.325株当たりMRLの1株交付 
12/21 AWE、MRLによる改正案での買収を支持
 現金 0.415豪州ドル+MRL株式 0.0198〜0.0277株
 MRL株価が15〜21豪ドルの場合、0.83豪ドル相当、総額 526百万豪州ドル
2018/1/29 三井物産が0.95 豪州ドルでの買収提案
 総額 602百万豪州ドル
1/30 AWE、MRLに対し三井提案に対応した新提案を2/2までに出すよう要請
2/5 MRLが新提案を期日までに出さず。
AWEは三井提案を株主に推奨、
CERCGによるTOBを拒否
 

三井物産の提示額は、CERCGの買収案が昨年11月に明らかになる前のAWEの株価を74%上回る水準で、CERCGの案を30%、ミネラル・リソーシズの案を14%、それぞれ上回った。

ーーー

AWEは1997年に設立された。

同社の活動は下記の通り。

Project 立地 権益 (%) 2P Reserve 2C Contingent
BassGas Bass Basin @
AWE 35.00%
Origin Energy (Operator) 42.50%
Toyota Tsusho Gas E&P Trefoil 11.25%
Prize Petroleum International 11.25%
7.0 MM BOE 30.6 MM BOE
Casino Gas Otway Basin A
AWE 25%
Cooper EnergyAWE 50%
Mitsui E&P 25%
5.9 MM BOE 1.3 MM BOE
Waitsia Gas Perth Basin B
AWE (Operator)   50%
Origin Energy 50%
39.0 MM BOE 43.9 MM BOE
Onshore Perth    Basin

 

AWE

33〜100%

Ande Ande
Lumut Oil
Natuna Sea,
  Indonesia
C
AWE 50%
Santos (Operator)   50%
  33.7 MM BOE

2P Reserve (埋蔵量)はProved reserve+Probable reserve
2C Contingent (条件付き埋蔵量)は上記相当

 


2018/2/10   米国政府機関、再度の閉鎖、数時間後に予算合意で解除

米上院は2月8日のつなぎ予算期限までに対応ができず、政府機関は再度の閉鎖となった。

上院は直後につなぎ予算を含む法案を可決したが、下院の案とは異なるため、待機していた下院で再審議となった。

下院では反対が強く、見通しが立たなかったが、9日早朝なんとか可決した。

両院で可決した上院の法案は、連邦政府支出を約3000億ドル増やす期間2年の予算合意で、債務上限を1年間停止することと3月23日までの暫定予算が含まれている。

トランプ米大統領は直ちに法案に署名、午前0時過ぎに始まった政府機関の一部閉鎖は数時間で終了した。

署名直後の大統領のtwitter:

Just signed Bill. Our Military will now be stronger than ever before. We love and need our Military and gave them everything — and more.
First time this has happened in a long time. Also means JOBS, JOBS, JOBS!

ーーー

米議会上下院は1月22日午後、2月8日までのつなぎ予算をそれぞれ可決した。

米の2018年度(2017/10/1〜2018/9/30) 連邦予算は年度初めに決まらず、12月8日までの暫定予算でスタートした。

その後も、本予算の議論がまとまらず、期限切れ前日の12月7日、上院と下院は12月22日までのつなぎ予算を賛成多数で可決した。
更に、両院は
12月21日に2018年1月19日までのつなぎ予算を可決した

今回も与党・共和党は1月19日までに予算措置を講じるのは難しいと判断した。トランプ大統領は、メキシコ国境の壁の建設を強く求めている。他方、民主党は予算成立に協力する条件として、幼少期に親と一緒に不法入国した若者(ドリーマー)に滞在許可を与える制度を続けるよう主張している。

2018/1/20   米政府機関、閉鎖 

2018/1/23 国、政府機関閉鎖解除へ 

その後も話し合いは難航した。

トランプ大統領は1月25日、未成年時に親に連れられ不法入国する形で米国に来た「ドリーマー」180万人に10〜12年かけて市民権を付与する道を開く包括的な新移民法案の内容を明らかにした。

現行の救済制度「DACA」の下で登録されたドリーマーは69万人だが、ホワイトハウスでは資格があるにもかかわらず申請していない多くの移民がいるとみている。
これを含めた180万人のドリーマーは、職業を持ち犯罪歴がなければ、10 ─ 12年で市民権を得られるという案である。

新法案には、移住希望者に抽選で永住権(グリーンカード)を付与する「移民多様化ビザ抽選プログラム」の廃止や、移民の家族の呼び寄せの厳しい制限なども含まれている。

しかしこれと引き換えにトランプ大統領は、米国に合法的に移民することを現在よりも難しくするとともに、国土安全保障省がドリーマーを含む推定約1100万人の非正規移民を取り締まる手段と費用への増強を求めている。

更に、メキシコ国境に壁を建設するための250億ドルの「信託基金」設立や、カナダ国境の警備強化への投資などを求めている。
 

この条件は民主党にとって受け入れられないものだが、保守派からも懸念が噴出した。
対移民強硬論者である共和党のテッド・クルーズ上院議員は、不法移民に対して市民権への道を開くことは「重大な過ち」になると主張。選挙民に対する約束を違えることになると批判した。

このままでは2月9日に再度、政府機関が閉鎖される恐れがあった。

2月8日までのつなぎ予算の期限切れを間近にしながら、本予算の目途が立たないなか、下院は2月6日、3月23日までの5回目のつなぎ予算を決議した。

  共和党 民主党 合計
賛成 228 17 245
反対 8 174 182
棄権 1 2 3
合計 237 193 430

これまでのつなぎ予算は従来の経常支出をみとめるだけであったが、今回は異なる。

全体としては従来の経常支出を認めるだけだが、国防総省の予算については、ペンタゴンの求める全額 6590億ドル(軍人への賃上げを含む)を承認した。通常予算5840億ドルに追加し、海外緊急作戦予算750億ドルも認めた。

国勢調査局(Census Bureau)の2020年の調査の継続の費用や、中小企業庁が2017年のハリケーンや山火事の被害地域に対するローンなども認めた。

問題は上院である。フィリバスターを避けるには60票が必要だが、共和党は51議席しか持たない。

また、この予算が通った場合、債務上限が問題となる。議会予算局は、債務上限問題で3月前半に資金が枯渇する可能性を示した。当初、3月後半から4月にとしていたが、税制改革での税収減で早まった。

大統領の発言が問題を複雑にした。

2月6日の議員などの会合で、「民主党が新移民法の案を支持しないなら、政府機関の閉鎖を見たいものだ( “love to see a shutdown”)」と述べた。

 

しかし、上院の与野党指導部は2月7日、国防費などを積み増すため、2018会計年度(2017年10月〜2018年9月)と2019会計年度の歳出上限の引き上げで合意した。
合わせて、債務上限の2019年3月までの停止と、3月23日を期限とするつなぎ予算法案を通すことでも合意した。

米議会は2011年に、政府債務の悪化に歯止めをかけるため、10年間の歳出上限を定める「予算管理法」を成立させた。

2011年8月2日の期限切れでの米国史上初のデフォルトを目前にし、米与野党指導者は7月31日夜、連邦政府の債務上限を2.1兆ドル引き上げるとともに、その条件として今後10年間で2.5兆ドルの財政赤字を削減することで合意に達した。

2011/8/3  米国、債務上限引き上げ、デフォルト回避 

この予算管理法では、社会保障費などを除く「裁量的経費」に上限を設けている。国防費と非国防費に分かれ、国防費が半分を占める。

  国防費 非国防費 合計
2018年度 5,483億ドル 5,174億ドル 10,657億ドル
2019年度 5,613億ドル 5,313億ドル 10,927億ドル

2014年以降は特例法で上限を引き上げてきたが、2018年度については与野党対立が長引き、決まっていなかった。

これまでも、その都度法案で上限を引き上げてきたが、 今回、下記の通り上限を大幅に引き上げた。

  2018年度 2019年度 累計
国防費 800億ドル 850億ドル 1650億ドル
非国防費 630億ドル 680億ドル 1310億ドル
合計 1430億ドル 1530億ドル 2960億ドル
引き上げ後 12087億ドル 12457億ドル  

トランプ政権は2017年5月に提示した予算教書で、2018会計年度の国防費を540億ドル積み増す一方、非国防費を逆に540億ドル減らすとしていた。
今回合意した2018年度の国防費の引き上げ額は800億ドルとさらに大きくなり、非国防費も減額から一転して大幅増となった。

米議会が大幅な歳出増で合意したのは、2018年秋に中間選挙を控えるためで、共和党は有権者に国防費の大幅積み増しを訴え、民主党も医療用鎮痛剤「オピオイド」の中毒対策やインフラ投資を求め、与野党の妥協策で国防・非国防費の大幅積み増しにつながった。

この案が議会で成立すれば、2018年度の歳出上限は前年度比1割強も高まる。今後、大型減税で税収が年1千億ドル規模も減る見通しで、20兆ドルと過去最大に膨らんだ連邦政府債務は一段の悪化が避けられない。

同案が上下両院を通過すれば、政府機関の一部閉鎖といったリスクは当面回避できることとなる。

しかし、政府機関閉鎖を避けるため、不法移民問題を棚上げにしたことから、下院には反対意見が強い。
民主党下院トップのナンシー ペロシ院内総務は、不法移民問題を中心に、下院での演説時間としては史上最長の8時間7分の演説を行い、ドリーマーの救済策が折り込まれなければ法案に反対すると述べた。 共和党にも反対が多い。

肝心の上院でトラブルが発生した。共和党のRand Paul上院議員が大幅な予算増に反対した。

2月8日の午前中に下院で議決したつなぎ予算の議決にはいるかどうか(Cloture motion) の投票をしたが、否決された。共和党のRand Paul上院議員は反対した。(可決には60票が必要)
上院民主党首脳は下院案ではなく、与野党合意案を通す意向。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 49 6   55
反対 1 41 2 44
棄権 1     1
合計 51 47 2 100

共和党McCain上院議員は療養中で棄権

Rand Paul上院議員は、上院与野党首脳が決めた法案(歳出上限引き上げ、債務限度引き上げ、つなぎ予算)について、案の修正があるまでは投票しないと長時間反抗した。

上院に続き下院も法案を8日中に通す必要があり、深夜を過ぎると政府機関の閉鎖となるが、同議員は法案の議決に入るかどうか(Cloture motion) の投票をしないとしている。その間、投票が締め切れないため、法案の議決ができない。

2月9日午前0時35分に行政管理予算局(Office of Management and Budget)は政府機関の閉鎖を指令した。

ルール(投票時間制限)では深夜1時になれば法案の投票ができる。

直ちにCloture motionを73対26(Paul 議員の反対を含む)で可決し、法案の投票を開始した。

午前1時50分に上院は賛成71、反対28で 法案を可決し、下院に送付した。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 34 36 1 71
反対 16 11 1 28
棄権 1     1
合計 51 47 2 100


下院は上院の可決を待っており、全員に深夜又は早朝の議決に備えるよう通知し ていた。

下院で通るかどうかは不明であ った。上記の通り、民主党は移民問題の棚上げで反対しており、共和党内の財政保守派「フリーダム・コーカス(自由議連)」も反対姿勢を示していた。

しかし、公共事業などの積み増しを求めてきた民主党の一部が賛成に回る見込みで、ライアン下院議長(共和)は可決に自信をみせていた。

2月9日の午前5時半に下院で賛成多数で可決した。

  共和党 民主党 合計
賛成 167 73 240
反対 67 119 186
棄権 4 1 5
合計 238 193 431

2018/2/12 ドイツ連立交渉合意、 社会民主党の党員投票結果待ち 

ドイツのキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)の大連立交渉が2月7日、 長時間の交渉の結果、原則合意に達した。
メルケル首相が率いるCDU・CSUが SPDに大幅に譲歩したもので、4カ月間の政治空白の解消に向けて前進した。

政権樹立に向けた最後のハードルとなる社民党の46万4千人のすべての党員
による投票は今後、郵送で3〜4週間にわたって行われ、3月初めにも結果が公表される見通し。
否決されれば、連立合意は白紙となり、再選挙の可能性が高まる。

付記

ドイツ社会民主党(SPD)は3月4日、連立合意を党員投票で了承したと発表した。連立合意への賛成が66.02%、反対は33.98%だった。

ーーー

9月24日の連邦議会(下院)選挙で、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は709議席のうち246議席しか確保できなかった。大量の難民受け入れへの世論の反発があるとされた。

  第一次
2005/11
第二次
2009/10
第三次
2013/12
今回選挙
キリスト教民主同盟 (CDU) キリスト教
民主・社会同盟
(CDU/CSU)
連立 連立 連立 246 連立協議 → 連立協議
キリスト教社会同盟 (CSU)
ドイツ社会民主党(SPD) 連立   連立 153 離脱表明 →
緑の党       67 連立協議  
自由民主党(FDP)   連立 議席 0 80 連立協議→離脱  
ドイツのための選択肢(AID)     議席 0 92  
左派党       69  
無所属       2  
合計       709  

第一次と第三次政権で連立を組んだドイツ社会民主党(SPD)も大敗し(153議席)、連立離脱を宣言した。

このため、メルケル首相は、緑の党(67議席)、第二次政権で連立を組んだ自由民主党(FDP) (80議席)との3党連立を協議してきたが、11月19日、決裂した。

議席ゼロから92議席を獲得したドイツのための選択肢(AID)は、2013年のギリシャ経済危機を契機に反EUを掲げて結党され、ドイツのEU離脱を最大の目標として掲げている。移民問題についても強く反対しており、極右政党ともされる。

2017/11/23   ドイツ、メルケル首相の4選に暗雲

この結果、残る選択肢は、再選挙か少数与党による内閣だが、再選挙になればCDU・CSUはさらに票が減る可能性が高く、また、過半数割れ政権では安定した政治はできない。

メルケル首相は昨年末、「早く安定政権を成立させる使命を果たしたい」と述べ、SPDとの交渉の早期妥結に向けた強い意欲を示した。

2018年1月7日、 CDU・CSUとSPDの間で政権樹立の可否を探る予備交渉を始めた。

SPD執行部は政権協定交渉入りを決めたが、双方の政策に大きな差があり、1月21日の臨時党大会では賛成票が56%にとどまった。 ドイツ政治の安定のために連立すべきという賛成派と、これ以上メルケルの軍門にくだるべきではないとする反対派に、真っ二つに分かれた。

このため、SPD執行部はCDU・CSUに対し、方針の改善を要求した。

特に3項目が焦点となった。 双方の政策の違いは大きく、変な妥協は支持者を裏切ることとなるため、難航した。

  CDU・CSU SPD
難民問題 「難民増」とみられる政策に反対 一部難民の家族呼び寄せを拡大
医療保険制度 抜本改革に反対 公的保険と私的保険の格差の是正
雇用政策 左は、企業競争力に影響する。
(CSUは自動車産業を抱える)
正当な理由のない有期雇用契約禁止

難民問題については、限定的に認定された難民について月1000人を限度に家族呼び寄せを認め、個別事情に配慮した追加を認めることで合意した。

しかし残り2つについては難航し、期限としていた2月4日までに決着せず、2月5日にずれ込んだ。

24時間以上続いた協議の末、2月7日にようやく合意した。

期限付きの雇用契約の上限を現在の24カ月から18カ月へ減らした。

医療保険については、官民共同の枠組みを作る委員会の設立で合意した。

難民の受け入れについて年間22万人までに抑えることや、フランスと連携してユーロ圏の改革に取り組むことなどが盛り込まれた。

連立政権の人事については、SPDは財務相のポストを確保する。財務相という重要なポストをSPDへ引き渡すことは、メルケル首相が4期目を務めるためにCDU・CSUが大きく譲歩したことを示す。
交渉関係者によるとSPDは労働相のポストも確保する。法務相と家庭相、環境相のポストも得るとの報道もあった。

またビルト紙によるとシュルツSPD 党首は外務相となり、党首を辞任する。

いったんは下野する方針を表明しながら大連立へと方針転換したシュルツ氏への不満が党内で強まっていた。


付記  

シュルツ党首は外相として第4次メルケル政権に入閣することを断念したと発表した。昨年9月の総選挙直後に「メルケル政権には入閣しない」と断言していたシュルツ氏の変節に、党内外から非難が集中してい た。

シュルツ党首は2月13日、記者会見し、党首を即日辞任し、アンドレア・ナーレス連邦議会(下院)党会派代表に後任を託すことを発表した。 4月22日の臨時党大会に提案する。

 


 
2018/2/13 富士フイルムと武田薬品 、iPS細胞の研究、開発で提携 

富士フイルムと武田薬品工業は2月8日、iPS細胞由来心筋細胞を用いた再生医療製品の共同事業化に向けた取り組みを開始したと発表した。

富士フイルムは、米国子会社のCellular Dynamics International, Inc.が開発を進めているiPS細胞由来の心筋細胞を用いた再生医療製品において、全世界での共同事業化に関する優先交渉権を武田薬品に付与 した。対象にするのは重症の心不全患者向けで心筋の機能を回復する製品で、2019年にも米国で治験に入る見込み。

武田薬品は、富士フイルムに対して一時金を支払い(金額は公表せず)、両社は、複数のiPS細胞由来心筋細胞の薬効・安全性評価、実用化に向けたプロセス開発などについて共同研究を実施 する。

富士フイルムが保有する世界トップのiPS細胞関連技術や写真フイルムで培った高度なエンジニアリング技術と、武田薬品が持つ京都大学iPS細胞研究所(CiRA)との共同研究(T-CiRA)で培われたiPS細胞に関する専門技術や医薬品の前臨床・臨床試験に関わる豊富な経験を組み合わせ、心臓疾患患者のために、有効性・安全性に優れた画期的な再生医療製品の普及を目指 すとしている。

武田薬品は2017年に、試薬を手がける和光純薬工業を富士フイルムに売却している。両社が共同事業を始めるのは今回が初めて。

ーーー

富士フィルムは再生医療分野で買収を続けてきた。

1)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング

富士フイルムは2010年8月30日、国内で細胞再生医療材料事業を展開するジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)による40億円の第三者割当増資を引き受けると発表した。

増資引き受け後は、同社株式の41%を保有することとなったが、2014年に新株予約権の引き受けで持株比率は50.33%とし、連結子会社とした。

2010/9/3 富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと資本提携

2)Cellular Dynamics

富士フイルムは2015年3月30日、株式公開買付けによりCellular Dynamics を約307 百万米ドルで買収することで同社と合意した。

山中教授と、オタマジャクシを使って最初のクローンを作りだした Sir John Bertrand Gurdon がノーベル医学生理学賞を受けたが、ウィスコンシン大学のJames  Thomson 教授も山中教授と同じ2007年11月に人間の受精卵を使わずに皮膚細胞からiPS細胞ができると発表している。

Cellular Dynamicsは、そのJames Thomson 教授が創始者の一人である。

Cellular Dynamicsが持つ特許の範囲は、体の様々な細胞からiPS細胞を作製する技術、iPS細胞から心筋や糖尿病治療への応用が期待される膵臓のベータ細胞を作る技術など幅広い。中でも2013年に成立した、プラスミドと呼ばれる環状DNAを使ってiPS細胞を作る技術は、がんになりにくい安全なiPS細胞を得るのに不可欠とされる。

2015/4/14   京都大学iPS 細胞研究所、Cellular Dynamics Internationalと提携へ     

上記記事のタイトルの「提携」は山中伸弥教授の意向 で、実際にはiPS研究所と営利企業である富士フィルムとは考え方が異なる。

2017/12/6の日経記事では、山中教授は、iPS細胞を使った再生医療の普及に向け、富士フイルムに特許料を低額にするように要請したことを明らかにした。
同社子会社(Cellular Dynamics) のもつ関連特許は再生医療に重要で、ライセンス料が高額だと低コスト化への足かせになりかねないと危惧する。

Cellular Dynamicsは2016年10月、日本でiPS細胞を安全かつ効率的に作製する技術に関する特許を取得した。通常の採血と同様に無菌状態で低侵襲的に血液細胞を採取し、その血液細胞の遺伝子を傷つけることなくエピソーマルベクターを使用して複数の遺伝子を導入しiPS細胞を安全かつ効率的に作製できるもの。

日本におけるこの細胞の作製には、本特許と京都大学iPS細胞研究所が保有する特許が必要となる。

京都大学は再生医療用で使う iPS細胞の備蓄の際に大腸菌のDNAを使っており、Cellular Dynamicsの特許に触れる恐れがある。

富士フイルムは大学や研究機関に高額の使用料を課すことは避けたい意向とされるが、京大では交渉材料として使うためにも、新たな作製技術の採用を検討している。

臨床試験支援大手のアイロムグループ子会社のIDファーマが特許を持つ作製法で、iPS細胞の作製に必要な遺伝子を導入するのに「センダイウイルス(SeV)」というウイルスの一種を使う。
CytoTune®-iPSは、いわゆる山中4遺伝子(OCT3/4、SOX2、KLF4、cMYC)をセンダイウイルスベクターに搭載したもの。センダイウイルスの最大の特長は、レトロウイルスと異なりRNAのまま細胞質に留まり、そこで複製・転写・翻訳が行われることで、遺伝情報が細胞核内に入って宿主のDNA配列の中に組み込まれないため、染色体に傷を付けることがない。

 

3)和光純薬

富士フィルムは2016年12月15日、武田薬品から和光純薬工業を買収する契約を締結した。富士フィルムが2017年2月に実施するTOBに武田薬品が応募するもの。

富士は再生医療に関して、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングとCellular Dynamics の買収で、iPS細胞作製などに関する主要特許や細胞の開発・製造ノウハウ(Cellular Dynamics)を取得したが、更にフィルム事業などで開発してきた細胞培養に必要な足場材(リコンビナントペプチド)、一定条件生産技術や微小環境でのコントロール技術などを持つ。

和光純薬は細胞の培養に必要な「培地」(細胞が必要とするアミノ酸、糖、脂質、ビタミン、ミネラルに、成長因子などをバランス良く含む栄養液)を手がけており、富士フィルムに欠けていた部分がそろうこととなる。

和光純薬は2018年4月1日から「富士フィルム和光純薬」に改称する。

2016/12/22 富士フィルム、和光純薬を買収


富士フィルムは相次ぐ買収で再生医療製品の開発・生産に必要な技術を獲得したものの、医薬品は長い時間や膨大なコストが必要で開発リスクが高く、自社で医薬品を市場投入にまでこぎつけるのは難しい。

Cellular Dynamicsが日本でiPS細胞を安全かつ効率的に作製する技術に関する特許を取得した際の富士フィルムのコメントは、「この特許取得を契機にグループのシナジーを発揮させ、iPS細胞の受託生産ビジネスを拡大させていく」というものであった。

今回、富士フイルムは治験などで実績のある武田と組むことで、再生医療分野で実用化を急ぐ。

Cellular Dynamicsはほかに4つの疾患向けに再生医療製品を開発中で、分野ごとに提携相手を選ぶ。

ーーー

武田薬品は2015年12月、京大 iPS細胞研究所と の間で iPS細胞研究に関する共同研究を開始した。

がん、心不全、糖尿病、神経変性疾患、難治性筋疾患など6つの疾患領域で、iPS細胞技術をツールとして用い、創薬および難治性疾患の画期的な治療法の創出に対する新たなアプローチの開発に向け、今後10年にわたり研究を行う。

武田薬品は湘南研究所内の研究設備、および10年間で200億円の提携費用を提供する。
さらに、10年間で120億円以上に相当する研究支援(施設、設備、武田薬品の研究者など、さまざまな研究支援)を提供する。

研究人員は全体で100名程度を予定しており、武田薬品湘南研究所を拠点として、グローバルで新たに採用する人員も含み、武田薬品およびCiRAよりそれぞれ50名程度が共同研究に従事する。
また、武田薬品の化合物ライブラリーなど特別な研究資産も用いられる。

共同研究が軌道に乗った段階では、10件前後のプロジェクトが同時進行することになる。



2018/2/13 朴前大統領親友に懲役20年、ロッテ重光会長も実刑 

朴槿恵前大統領(収賄罪などで公判中)の親友で、大企業から資金拠出を強要したとして職権乱用罪などに問われた崔順実被告らの裁判で、ソウル中央地裁は2月13日、崔被告に懲役20年、罰金180億ウォン(約18億円)の実刑判決を言い渡した。

崔被告は既に、娘の不正入学を巡り業務妨害罪などに問われた事件の一、二審で懲役3年の実刑判決を受けている。

検察によると、崔被告は2015年から2016年にかけ、朴前大統領の要請を受け、文化・スポーツ事業振興目的で「ミル財団」と「Kスポーツ財団」を設立、大統領府の前政策調整首席秘書官の安被告と共に企業に対し多額の出資を強要し、計約774億ウォン(約77億円)を集めたとされる。

本件では、2017年12月14日、ソウル中央地裁で論告求刑公判が行われた。

検察側は崔被告に対し、職権乱用などの罪で懲役25年、罰金1185億ウォン(約123億円)、追徴金約78億ウォン(約8億円)を求刑した。

また、ロッテグループの重光昭夫(辛東彬)会長に対し、贈賄の罪で懲役4年、追徴金70億ウォンを求刑した。

崔被告と共謀したとされる大統領府の前政策調整首席秘書官、安鍾範被告には懲役6年を求刑した。

免税店事業認可に絡み、朴被告の要請で「Kスポーツ財団」に70億ウォン(約7億円)を賄賂として提供したとして贈賄罪で在宅起訴された韓国ロッテグループの重光昭夫(辛東彬)会長に対しては懲役2年6月の実刑判決を言い渡した。実刑判決で身柄を拘束されたため、グループの経営に支障が出る懸念もある。

会長はロッテグループの企業内の不正事件で懲役1年8カ月、執行猶予2年 の判決を受けており(下記)、今回の有罪で執行猶予が無効となり、懲役は合計4年2か月となる。

このほか、崔被告と共謀したとして、大統領府の前政策調整首席秘書官、安鍾範被告は、求刑通り懲役6年の判決を受けた。 

今回裁判所は、「大統領が職権を乱用、企業に出資を強要し、崔被告らが大統領と共謀した」と判断した。今後、前大統領も有罪となるのは確実だという見方が広がっている。

 

付記

辛東彬(重光昭夫)会長の拘束を受け、ロッテ創業者の長男の辛東主(重光宏之)氏は、ロッテHDの筆頭株主である光潤社の社長としてロッテHD代表取締役副会長を務める東彬氏の辞任と解任を訴えた。

日韓ロッテグループの代表者の地位にある者が横領・背任、贈賄などさまざまな犯罪行為で有罪判決を受け、収監されたことはロッテグループの70年の歴史上、前代未聞の出来事だとし、東彬氏の「即時辞任・解任」とコーポレート・ガバナンスの刷新・建て直しが不可欠だと強調した。

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崔順実被告への贈賄罪などに問われ、一審で懲役5年の実刑判決を受けたサムスングループ経営トップのサムスン電子副会長については、ソウル高裁は本年2月5日、地裁判決を破棄し、李被告に新たに懲役2年6カ月、執行猶予4年を言い渡した。李被告は約1年ぶりに釈放された。

2017年8月の一審では5つの起訴事実すべてが有罪とされたが、高裁は焦点となっていた贈賄の一部と海外への不正な送金などを無罪とした。

なお、本件については、サムスン側と検察側がいずれも上告している。

2018/2/5 サムスントップ釈放

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なお、重光昭夫(辛東彬)会長等は別途、ロッテグループの企業内の不正事件で、横領や背任などの罪に問われていたが、2017年12月22日、ソウル中央地裁で下記の判決があった。

  求刑 判決
辛東彬(重光昭夫)会長 (62) 懲役10年と罰金1000億ウォン 懲役1年8カ月、執行猶予2年
辛格浩(重光武雄)創業者(95) 懲役10年、罰金3000億ウォン 懲役4年と罰金35億ウォン 収監は見送り
辛東主(重光宏之)(63) 懲役5年、罰金125億ウォン 無罪

2017/12/23 ソウル中央地裁、ロッテ創業者に実刑判決、収監は見送り

 
 

 


2018/2/14 米国のCheniere Energy、中国CNPCとLNGの長期供給契約締結 

Cheniere Energy, Inc.は2月9日、中国のCNPCとの間で2つのLNG販売契約を締結したと発表した。

両社は2017年11月9日に、トランプ大統領の中国訪問に合わせ、MOUを締結していた。

Cheniere Energy子会社のCorpus Christi Liquefaction, LLC と Cheniere Marketing International LLP との契約に基づき、CNPC子会社のPetroChinaが年間約120万トンのLNGを購入する。
この一部は2018年に開始され、残りは2023年に開始される。それぞれの契約期間は2043年までとなっている。

Cheniereは稼働中(一部建設中)のSabine Pass 液化基地と建設中のCorpus Christi 液化基地を持つ。CNPCへの供給は主にCorpus Christi 液化基地から行われるが、2018年開始分はSabine Pass 液化基地の既契約分以外を出荷するものとみられる。

LNG価格は、他の契約と同様、原料天然ガスのHenry Hub priceと固定費部分から成り立つ。

既存のCheniereの販売契約では、LNGのFOB価格は以下の通りとなっている。
  
原料ガスコスト(Henry Hub 渡し市況 x 115%)+固定費(ガス化費用など)
   
15%は天然ガスのトレーダーとしてのマージンで、固定費は相手により 2.25〜3.00$/MM Btuとなっている。

Cheniereは本年1月16日に、スイスのコモディティ商社 Trafigura Pte Ltd との間で年間100万トンのLNG供給契約を締結している。2019年から15年間の供給となっている。

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Cheniereは稼働中(一部建設中)のSabine Pass 液化基地と建設中のCorpus Christi 液化基地を持つ。

子会社 Sabine Pass Liquefaction, LLC は1系列 年産450万トンの液化設備 合計6基(既報の7基から変更)を計画している。

このうち、1〜4系列は完成しており、第5系列は2015年6月に建設を開始した。最後の第6系列は未着工である。

この5系列の合計能力は2250万トンだが、このうち約88%の1975万トンが契約済みである。

相手先 年間
 万トン
固定費
$/MM Btu
製造系列 完成時期
BG Group(英) 350 2.25 第1系列 2016/4-5
200 3.00 第2, 3, 4 系列  
GasNatural(スペイン) 350 2.49 第2系列 2016/8
Kogas(韓国) 350 3.00 第3系列 2017/4
Gail (インド) 350 3.00 第4系列 2017/8
Total (仏) 200 3.00 第5系列 2019/8
Centrica (British Gas) 175 3.00 第5系列  
合計 1,975      

残り年間275万トンはCheniere Marketingが販売する。おそらく、このうちの一部がPetroChinaに向けられると思われる。


Corpus Christiでは、子会社のCorpus Christi Liquefaction, LLC が液化設備とLNG輸出基地を建設している。

当初は、年産450万トンの液化設備 最終5系列、合計2250万トンの計画で、まず2系列の建設を開始した。同時に第3系列分を含めた長期販売契約の交渉を行っている。

現在までに3系列計1350万トン/年のうち、計842万トンが成約している。相手は、インドネシアのPertamina (152万トン)、スペインのEndesa(225万トン)とIberdrola (76万トン)とGas Natural Fenosa (150万トン)、豪州のWoodside(85万トン)、英国のEDF(77万トン)、ポルトガルのEDP(77万トン)である。

これに今回のPetroChina(120万トン)とTrafigura(100万トン)が加わる。

現在、同社では当初の計画を変更し、年産450万トンの3系列に、7系列の中規模液化設備(1系列135万トン)と1基のLNGタンクを加え、総計2300万トンにする案を進めている。

構想図

 

 


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