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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2018/5/15 Elliott Management米韓FTAのISDS条項に基づき韓国政府に賠償請求 

米国の物言う株主の投資会社 Elliott Managementは、2015年の Samsung Groupの第一毛織とサムスン物産の合併を巡り、米韓自由貿易協定(FTA)の「ISDS(投資家と国家の紛争解決)」条項に基づいて韓国政府に6億7000万ドルの損害賠償を要求した。

韓国法務省が5月11日、Elliott から受け取った仲裁意向書を公開した。FTAのISDS条項を根拠に企業が韓国政府に賠償を求めた初のケースになる。

付記

米国のヘッジファンドのMason Capital Management は6月8日、韓国政府に仲裁意向書を提出した。当時Samsung C&Tに2.2%出資しており、合併に反対した。175百万ドルの賠償を要求。 

付記

 韓国法務部は7月13日、Elliott ManagementがISDS仲裁申請書を前日に提出した、と明らかにした。韓国政府に7億7000万ドル(仲裁意向書より1億ドル増)を被害補償額として請求した。政府関係者の不当な決定でサムスン物産の株価が下落し、7億7000万ドル以上の損害が発生したと主張した。仲裁地を英国と提案した。

Elliotが問題視するのは、2015年にSamsung Groupの第一毛織とサムスン物産が合併を決めた臨時株主総会で、当時、サムスン物産株を7%強保有していた Elliottは反対したが、韓国政府傘下の国民年金公団が賛成するなどし、合併は承認された。

第一毛織とサムスン物産(Samsung C&T) の合併は2015年7月18日の臨時株主総会で承認を受け、9月1日に新しいサムスン物産(Samsung C&T) となった。

新しいSamsung C&T は李一族のSamsungグループ支配構造の事実上の持ち株会社となる。

2014/12/2 Samsung Group の持株会社 第一毛織の上場 付記参照

2017/12/26 韓国公取委、2年前のたサムスン物産と第一毛織合併での株式売却命令を遡及修正

朴槿恵前大統領とその友人の国政介入事件の裁判で、国民年金が第一毛織とサムスン物産の合併の賛成を決めたのは、サムスンから朴槿恵前大統領への賄賂の効果であると認定された。

韓国の前大統領、朴槿恵被告側への贈賄罪などに問われた国政介入事件で、ソウル中央地裁は2017年8月25日、サムスングループを事実上率いる李在鎔・サムスン電子副会長に懲役5年(求刑12年)の判決を言い渡した。贈賄や横領など問われた罪のすべてを有罪とした。

李在鎔副会長の主要容疑は賄賂供与など5つ。

特検チームはこうした支援が2015年7月に朴大統領が保健福祉部傘下の国民年金公団を通じサムスン物産と第一毛織の合併を助けたことに対する答礼だとみており、これらの資金協力が李副会長の指示もしくは了解のもと実行されたとし、副会長に崔被告側への贈賄罪が成立すると判断した。

2017/8/28   サムスン電子副会長に実刑判決、ソウル地裁

Elliotは、合併の成立は不当であり「6億7000万ドル以上の被害を受けた」として、仲裁裁判所を通じて韓国政府に賠償を求める考えを明かした。

ーーー

ISDS(Investor‐State Dispute Settlement)条項は、企業が進出先の政府から不公平な待遇を受けたり、財産を不当に収用されたりした場合に、仲裁を申し立てることができる仕組み。

韓国法務省によると、FTAを巡っては初のケースだが、同国政府が国家間の投資協定を根拠に企業から賠償請求を受けるのは5件目となる。

米国系ファンドの現代グロービスUAEのInternational Petroleum Investment Co (IPIC) のオランダ法人 Hanocal BV、イランのEntekhab Industrial Group、と他に1件(不明)。

2015/9/25 韓国にイラン企業から3番目のISD提起

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韓国の財閥は複雑な資本関係を改善するグループ改編の途上にあり、改編計画が創業家に有利な条件で立てられているとの批判がつきまとう。

Elliottは5月11日、現代自動車グループの再編について5月29日に予定する臨時株主総会で、反対票を投じる意向を表明した。
Elliott は、現代自動車と起亜自動車、現代モービスというグループ3社の株式を合わせて10億ドル余り保有していること、普通株の保有比率は3社それぞれで1.5%を超えることを明らかにしている。

現代自動車グループは未来事業の競争力を強化し、循環出資など政府の規制を解消するための出資構造の再編に乗り出した。
グループの財源と資源を効率的に配分し、各グループ社の事業力量と独立性ㆍ自律性を向上し、同時に大株主の責任経営を強化するためとしている。

現代モービスと現代グロービスの分割合併、循環出資の完全解消などで行われる。

現代モービスは、投資や重要部品の事業部門と、モジュール及びAfter Service 部品事業部門を人的分割する。
モジュール及びAS部品事業部門を現代グロービスと合併する。

これに対し、Elliottは、同グループの再編計画は一部の株主を不当に扱っており、事業上の論理的な考え方が欠けていると主張する。
現代モービスの一部事業を現代グロービスに移すのではなく、現代自動車と現代モービスを合併させ、グループ全体を統括する持ち株会社を創設するよう提案している。

グループ内の12兆ウォン(約1兆2100億円)を超える余剰資金を株主に還元し、配当を引き上げ、自社株の消却をすべきだと求めたほか、ガバナンス改善のため新たな外部取締役の起用を増やすよう各社に促した。

現代自動車と現代モービスが合併すれば、資産規模で世界7位の自動車会社になるとする。


 


第一期計画は次の通り。

2006/4/7 中国のエチレン合弁会社ー2


 

2018/5/17 富士フィルム、富山化学を完全子会社化し、富士フィルムRIファーマと統合

富士フィルムは5月14日、大正製薬から7月31日に富山化学株式34%を取得して富山化学を完全子会社化すること、放射性医薬品の富士フイルムRIファーマと富山化学を10月1日付で統合し、富士フイルム富山化学としてスタートさせることを発表した。

同社は現在、富山化学の低分子医薬品、富士フイルムRIファーマの放射性診断薬・治療薬を中核として医薬品事業を展開している。

昨今、アンメットメディカルニーズへの対応がますます求められるとともに、治療の適正化に貢献する診断の重要性が高まっている中、富山化学と富士フイルム RI ファーマを統合して、診断薬・治療薬の新薬開発のスピードアップ、さらには「診断」と「治療」の連携強化をより一層図る。

付記

富士フィルムは7月27日、ジェネリック医薬品を中心に事業活動を行ってき富士フイルムファーマを2019年3月31日付で解散すると発表した。

製薬業界を取り巻く環境が急激に変化しており、現在の事業活動では安定的な収益を将来にわたって確保することが困難であると判断した。

 

富山化学:

富士フイルム、大正製薬、富山化学工業の3社は2008年2月13日、富山化学の医療用医薬品事業の強化を中心とする戦略的資本・業務提携を行うことで基本合意したと発表した。

下記の手順により、富山化学株式の最終的な保有比率は富士フイルム 66%、大正製薬 34%となった。今回、富士フィルム100%とする。

2008/2/19 富士フイルム、富山化学を買収、総合ヘルスケア企業を目指す

 

富山化学は抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」(Favipiravir) を開発した。

アビガンは、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。

富士フイルムは2014年9月26日、グループの富山化学が開発した抗インフルエンザウイルス薬「アビガン® 錠200mg」が、エボラ出血熱に罹患した患者の治療のため、フランスの病院で投与されたと発表した。

2014/9/27    富士フィルム、エボラ出血熱患者に「アビガン」提供 

 

富士フイルムRI ファーマ:

富士フイルムRI ファーマは治療用放射性医薬品メーカーで、旧称 第一ラジオアイソトープ研究所。

1968年に第一製薬とMallinckrodt とのJVで設立、1988年に第一製薬の100%子会社となり、2006年10月に富士フィルムが買収した。

富士フイルムRI ファーマは2014年10月14日、大手製薬企業のEli Lilly and Companyとの間で、同社のPET検査用放射性医薬品「florbetapir(18F)注射液)」の日本国内における共同開発契約を締結した。

同年11月4日、脳疾患や心臓疾患、腫瘍などの各種疾病の機能診断に役立つPET(陽電子放射断層撮影)検査用の放射性医薬品市場に参入すると発表した。富士フイルムRI ファーマが約60億円を投資し、川崎と茨木に研究開発拠点を新設する。

2014/11/18 富士フイルム、PET検査用の放射性医薬品市場に参入  


 
富士フイルムは、写真フィルムで培った、化合物の合成力・設計力や解析技術、ナノ分散技術などの高度な技術を活かして新薬の研究などを行う。

統合会社となる富士フイルム富山化学は、富士フィルムと連携し、アンメットメディカルニーズが高い「がん」「中枢神経疾患」「感染症」領域において、新規の放射性診断薬・治療薬、独自の作用メカニズムを持った治療薬の開発を行う。

さらに、必要な量の薬物を必要な部位に必要なタイミングに送達するドラッグ・デリバリー・システム(DDS)のさらなる技術開発も推進し、下記の技術を、既存薬のみならず、次世代医薬品として期待されている核酸医薬品や遺伝子治療薬へ応用展開していく。

リポソーム製剤技術:細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質などをカプセル状にした微粒子 (リポソーム)の中に薬物を内包する製剤技術
マイクロニードルアレイ:100〜2000 ミクロンの長さの微細な突起をシート上に配した薬剤送達部材で、皮膚表面に貼ることで、 突起部分から薬剤を皮膚に浸透させ、体内に届けることができるもの
 


 


2018/5/18 東芝の決算、中国が東芝メモリ売却を承認 

東芝は5月15日、決算を発表した。

株主帰属損益は8040億円の黒字で、前年を1兆7697億円上回り、2月に発表した予想(5200億円)を2800億円上回った。

2019年3月期の同利益は、東芝メモリ売却益を折り込んで、1兆700億円を見込み、2期連続で過去最高益を更新する見通し。

主なポイント:

@資産・事業売却 3400億円(WEC関連債権、ランディス・ギア、映像事業など)

2018/1/19    東芝、Westinghouse関連の株式と債権を売却

2017/4/29 東芝のスイス子会社ランディス・ギアの売却 

東芝は2017年11月14日、東芝映像ソリューションの発行済株式の95%を、中国ハイセンスグループに譲渡することを決定した。
2018年2月28日 譲渡完了

A 課題の処理 -1300億円 (欧州子会社年金、固定資産減損、構造改革等)

B 事業改善 5300億円 (メモリ事業損益 4700億円)

C 評価損益の税金 差引 1973億円の益

メモリ事業分割の評価益への課税 -2485億円 (売却未了のため売却益は非計上で、これのみ計上)
WEC関連債権・株式売却で、評価損が実現し、税金が4458億円減少 (債権分2445億円、株式分1972億円)

株主資本は、当期の株主帰属損益 8040億円に増資6000億円を加え、1兆3361億円増加し、7831億円となり、債務超過を解消した。


2019年3月期予想には下記を含む。

 税引前損益(900億円)には、2Q以降に持分法損益になると見込むメモリ事業損益 500億円を含む。

 当期純損益(株主帰属 10,700億円)には、メモリ事業売却益 9700億円と、1Qのメモリ事業非継続事業損益 800億円を含む。

 なお、Cash Flow としては、メモリ事業の売却収入 1兆4500億円を見込んでいる。(売却額は2兆円、東芝出資3500億円、他に税金?)

2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結


中国の独占禁止法当局が売却案を承認した
ことが5月17日に分かった。既に日米欧など他の全ての国の独禁法当局の承認は得ている。

6月1日付で売却する。東芝メモリの売却により、利益剰余金は予想ベースでは1兆700億円の増となり、東芝の株主資本比率は急回復する。


詳細は下記の通り。(億円)

  17/3 18/3 増減   19/3予想
営業損益          
 Energy System -417 -148 269    
 Infra System 584 480 -104    
 Retail & Printing 163 270 107    
 Storage & Device 576 473 -102    
 ICT 71 13 -58    
 others -171 -487 -316    
 全社 15 39 25    
 合計

820

641 -179   700
           
継続事業 税引前 449 824 374   900
               税金 580 -619 -1,199

 

 
               税引後 -130 1,443 1,573    
           
非継続事業 税引前   7,219  

メモリ事業 4,657、WEC 2,562

 
        税金   -2,231  

実効税率 30.9%

 
                 税金補正   1,973  

メモリ事業非適格 -2,485、WEC是認 4,458

 
非継続事業 税引後 -11,472 6,961 18,432

17/3 WECは-12,801、差引メモリは1,329

 
税引後 合計 -11,602 8,404 20,006    
           
うち 非支配持分 -1,945 364 2,309    
差引 株主帰属 -9,657 8,040 17,697   10,700
           
利益剰余金 -5,804 2,236 8,040

18/3 株主帰属損益 8,040億円

 
2017/12 増資   6,000 6,000    
株主資本 -5,529 7,831 13,361

債務超過を解消

 

   2017/3月期発表では、非継続事業はWECのみで、税引後は-12,801億円。今回、メモリ 1329億円を含め、遡及して-11,472億円としている。

 

損益予想の推移:

  営業損益

継続事業

非継続事業
税引後損益
株主帰属
損益
 
税引前損益 税引後損益
2017/8/10 4,300 4,000     2,300 メモリ営業損益 3,712億円
増減     -3,400  会社分割による税額 -3,400億円
2017/11/9 4,300 4,000     -1,100  
増減         6,300  WEC関係債権譲渡益2400億円、税引き後1700億円
メモリ事業分割の税額影響減少 2400億円ほか
繰延税金資産 1100億円を計上(復活)
2018/2/14 0 200     5,200 メモリ事業営業利益4400億円は非継続事業に振替
増減 641 624     2,840  
最終 641 824 1,443 6,961 8,040  

 



2018/5/19 iPS細胞の心臓病臨床研究、承認

厚生労働省の再生医療等評価部会は5月16日、iPS細胞から作った心臓の筋肉細胞をシート状にして重症心不全患者の心臓に移植する大阪大の臨床研究計画を 、臨床研究の患者の対象を厳しくすることなどの条件付きで承認した。iPS細胞を使った心臓病の臨床研究は世界初で、年度内にも最初の患者に移植される。

澤芳樹教授(心臓血管外科)のチームが今年3月に届け出ていた。

iPS細胞を使った移植の臨床研究では、理化学研究所などのグループが目の加齢黄斑変性に対する自己iPS細胞由来の網膜色素上皮シート移植を実施しているが、移植した細胞の数 は数十万個だった。
今回の心臓病の臨床研究は約1億個と、移植する細胞数が大幅に増える。数が多いと低品質な細胞が紛れ込む恐れがある。

iPS細胞はがん化の恐れがあ るが、目の場合は異変がすぐ分かり、対処できるが、心臓の場合は簡単ではない。

承認された臨床研究計画は、虚血性心筋症(血管が詰まって 心臓の筋肉への血液供給が減ることや途絶えることによって生じる心臓の筋肉の障害)の患者が対象で、18歳以上80歳未満の3人に、他人のiPS細胞から作った2枚の心筋の円形シート(厚さ 0.05ミリ、直径数センチ)を心臓表面に張り付ける。がん化や免疫拒絶反応などに対する安全性を調べ、心機能の変化についても観察する。

iPS細胞は京都大iPS細胞研究所が備蓄するものを使用する。

シートは3カ月で細胞が死んで消失するとされ、免疫抑制剤を段階的に減らす。動物実験では消失しても心機能の改善が確認されているという。


澤教授らの研究グループは、2006年より重症心筋症患者に対して、患者自身の足の筋肉(骨格筋)から採取した筋芽細胞と言われる細胞のシートを作製し、心不全に陥った心臓表面に貼ることにより、心機能回復させる治療の研究を進めてき た。

筋芽細胞は心筋細胞になるわけではないが、生着した細胞は、血管を誘導するVEGFやFGFといったサイトカン(細胞間の情報伝達を担うタンパク質分子)を出し続け、周辺組織に血管が誘導されて、機能が回復する。

筋芽細胞を直接心筋内に注射する方法があるが、注射の際に移植細胞の95%以上が失われ、効果が十分でなく、他にいろいろな問題がある。

この技術は、2016年5月に、テルモ社によって虚血性心筋症患者への新たな治療法として製品化され 、「ハートシート」として発売された。厚生労働省が再生医療の実用化を促進するために制定した「条件及び期限付き承認」という早期承認制度が適用になった初めての製品である。

テルモは、大阪大学との共同研究を進め、先端医療開発特区「スーパー特区」の「細胞シートによる再生医療実現プロジェクト」(研究代表者:東京女子医科大学岡野光夫教授)に参加した。

しかし、より重症な虚血性心筋症患者に対して筋芽細胞では治療効果が認められないという課題があった。

そこで、澤教授らの研究グループは、細胞から作った心筋細胞に着目した。

動物実験において、虚血性心筋症によって心臓の機能が低下したブタに iPS細胞から作った心筋細胞をシート状に加工して移植する研究を実施し、心臓の機能を改善させることに成功 した。

さらに心筋細胞の作製に用いる試薬や作製方法を改良することで、ヒトに移植可能な安全性の高い心筋細胞を大量に作製することに成功し た。

今回、ヒトでの安全性を検証する臨床研究の実施することとなった。

 

患者自身の筋肉から培養する筋芽細胞では、拒絶反応はないが、筋肉を採取してから移植可能な細胞を作製するまでに1ヶ月以上かかり、緊急時に使用することができない。

今回の治療法では、京都大学で作製されたiPS細胞を使い、事前に心筋細胞を大量に作製・保存しておくことができるため、患者の負担も少なく、緊急の使用も可能で ある。

本治療法は、有効な治療法の存在しない重症心不全に対する新しい治療となる可能性があり、深刻なドナー不足である我が国の移植医療において、一石を投じる治療法になる。

ーーー

細胞をシート状にして幹部に貼り付ける技術は、東京女子医科大学の岡野光夫教授によって開発された。

まず、培養した細胞シートを培養皿から取り出す技術を開発した。
タンパク質分解酵素などを使用すると、重要な働きをするタンパク質が分解され、十分な機能を果たせない。
このため、温度に応答する高分子を利用する。培養皿の表面にこれを薄く敷き詰め、37℃に設定し、細胞を増殖させシートにする。温度を20℃に下げると高分子が親水性に変わり、皿と細胞の間に水が浸透するため、きれいに剥がすことができる。

シートの積層化には、細胞シート回収面にゼラチンなどの支持材を固定したスタンプ型積層機器を開発した。

シートに血管内皮細胞を少量混ぜると、細胞シート内に毛細血管網ができる。3層の細胞シートごとに血管がつながるのを待って、次の3層の細胞シートを重ねていくと30枚の細胞シートからなる厚さ約1ミリの心筋細胞が完成した。

これまでの応用例:

口腔粘膜の細胞シートを使った角膜の再生
食道上皮癌の切除の痕に口腔粘膜の細胞シートを貼り付け、狭窄を克服
歯根膜細胞シートを使った歯周組織の再生
軟骨細胞シートによる関節軟骨の再生
心筋細胞シート(澤教授)


2018/5/21     中国、米国原産の輸入コーリャンへの反ダンピング、反補助金調査を打ち切り

中国商務部は5月18日、公告44号で、米国原産の輸入コーリャンの反ダンピング調査、反補助金調査を打ち切ると発表した。

商務部は2月4日に反ダンピング及び反補助金調査の実施を発表した。

4月17日には、反ダンピングでクロの仮決定を行い、一律 178.6%の保証金の徴収を開始した。

米国産の輸入が急増しており、問題であるとした。

  2013 2014 2015 2016 2017/1-10
輸入量(万トン) 31.7 541.9 896.6 586.9 425.8
金額(万ドル) 9,181 151,736 247,147 126,055 84,631

反ダンピング調査の最終決定を追って行うとともに、反補助金調査を続けるとしていた。

ーーー

今回、商務部は下記の理由で、反ダンピング、反補助金調査を打ち切るとした。これまでに徴収した反補助金の保証金は返却する。

調査の過程で、多くのユーザーの声を聞いた。

輸入コーリャンへの反ダンピング措置で消費者の生活費が上がる。(コーリャンは白酒の原料、食用、飼料、エネルギー源として使われる)

家畜の飼料にも使われるが、国内の豚肉の価格は下がっており、飼料値上がりで養豚業者の生活が苦しくなる。

これは公共の利益に反する。

参考 

 

反ダンピング課税は、被害を受ける国内メーカーの保護のためのものであり、安値の輸入が減ると、国内価格に影響を与えるのは当たり前の話である。

国内メーカーの要請で反ダンピング課税を行いながら、消費者の声を重視して調査を打ち切るのは、おかしな話である。

 

反ダンピングのクロの仮決定は、米国による国有通信機器大手、中興通訊(ZTE)への制裁の翌日になされており、米制裁への報復措置とみられていた。

2018/4/19 米国が中国通信機器大手 ZTEへの製品販売を7年間禁止

中西部の農業生産地域のうち8つの農業州がトランプを大統領選で勝利に導いた重要な票田となっており、中国の輸入対応措置でこれらの地域の経済は直接影響を受け、大統領に政治的に大きなダメージを与える。

中国は、コーリャンへの追加課税を取り下げることで米国にも譲歩を迫る狙いがあるとみられる。

 

米中両政府は5月17、18の両日、ワシントンで「貿易戦争」回避に向けた2回目の閣僚級会合を行った。

1日遅れの共同声明で、「米国の対中貿易赤字を減らすため、中国が米国の農産品やエネルギーとサービスの輸入を大幅に増やすことで合意した」と表明した。数値目標などには触れなかった。
両国の見解として「知的財産権の保護は重要だ」とも付記した。
ムニューシン米財務長官は「貿易戦争は当面保留する」と述べた。制裁関税を棚上げし、貿易不均衡是正のための具体案を詰める。

黒字圧縮と引き換えに習主席が大統領に自ら求めた通信機器大手、中興通訊(ZTE)の制裁問題には触れていない。

 


2018/5/22 化学メーカーの3月期決算 

2018年3月期決算がほぼまとまった。

各社の決算状況は http://www.knak.jp/kessan/ 

決算でIFRS方式を採用する企業が増えている。

下のグラフでは、斜線で示した、三菱ケミカル、日立化成、住友化学(2017/3〜)、JSR(2017/3〜)、住友ベークライト(2017/3〜)で、これらについては、営業損益はコア営業損益、経常損益は税引前損益を表示している。当期損益は他社と同じ株主帰属損益を表示しているが、損益概念に相違点がある。

なお、上記のうち、JSRはコア損益を表示していない。(「その他の営業収益・費用」は少なく、非経常的な損益がないためと思われる)

 

営業損益には、下記の通り、従来の営業外損益(金融費用・損益を除く)や特別損益を含むため、それ以前との対比はできない。

このため各社が独自の判断で、新しい営業損益から非経常的な損益を除外したものをコア営業損益として発表している。

コア営業損益は従来の営業損益に近いが、持分法損益やその他の営業外損益等を含んでいる。

経理処理も、ノレンの償却がなくなるなど、一部変更されている。

 

主な各社について、順次掲載する。(信越化学については掲載済み 2018/5/1 要企業の2018年3月決算 ー 信越化学

全般的に好調だが、特定の業種が全体としてよいというのではなく、一部の会社の利益が大きく伸びている。
(石油化学製品については、前年度に交易条件の改善で各社とも営業利益が増えており、更なる増益は難しい。なお今後は、米国のシェールガス原料の大規模エチレン設備が相次いで完成するため、値下がりが予想され、採算は悪化すると思われる。)

信越化学は塩ビと半導体の増益が大きい。三菱ケミカルはMMAの増益分が全社の増益額とほぼ同じである。住友化学はMMAに加え、海外の石化事業が増益となっている。
東ソーはクロルアルカリの増益分が全社の増益額とほぼ同じ。旭化成はアクリロニトリルの交易条件差の貢献が大きいとみられる。
そのなかで三菱ガス化学が、一時は会社を支えた海外メタノール事業の損益が停滞しているなか、芳香族や機能化学品で増益となっているのが目立つ。

IFRS方式に切り替えた企業(住友化学など)の営業損益については、切り替え以前の年度と比較し、持分法損益が含まれた影響が大きい。

三菱ケミカルと信越化学で、経常損益(or     税引前損益)ではほぼ同じだが、当期損益で差がついているのは、連結対象子会社の少数株主帰属損益の多少による。
 

売上高  
   
営業損益 ーーー  IFRS採用企業(斜線)はコア営業利益
   
経常損益ーーー  IFRS採用企業(斜線)は税引前損益
   
当期損益  

 


2018/5/23 主要企業の2018年3月決算 − 三菱ケミカルホールディングス 

2017年3月期よりIFRS方式に変更した。

損益は前期を大幅に上回った。

法人税については、米国の連邦法人税率の引き下げで繰延税金負債の取り崩しによる減少があった。

田辺三菱製薬や大陽日酸のような高収益子会社の持ち株比率が50%台に止まるため、少数株主帰属損益が大きい。

年間で12円の増配とした。


 

営業損益のうち、コアに含まれない非経常的損益は下記の通り。(億円)

  2016/3 2017/3 2018/3
減損損失 -136 -150 -97
固定資産売却損益 21 -20 -19
関係会社株式売却 3 -10 37
過去勤務費用   -8 -50
子会社統合費用   -10 -38
特別退職金 -155 -25 -24
環境対策費   -68 -10
その他 -50 -98 -47
合計 -317 -389 -248

営業損益は下記の通り。2016/3からはコア営業利益で、これまで営業外損益扱いで除外されていた持分法損益等を含む。

2017年4月に三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンを統合し、三菱ケミカルにしたのに伴い、2018年3月期のセグメントを変更した。

 

MMA部門の営業利益の伸びが大きい。特にモノマーの市況が上昇した。MMAのコア営業利益は1096億円となり、前年を717億円上回り、 これは全社の増益額とほぼ同じである。

MMA部門の営業利益が大き過ぎ、将来、状況が変われば、影響は大きい。
1990年の三菱油化のスチレンモノマーの利益は200億円とも300億円とも言われた。翌年にはバブルがはじけ、これがほぼゼロとなり、同社の損益悪化が三菱化成との統合に至った。

旧三菱レイヨンのMMA部門と、田辺三菱製薬、大陽日酸のコア営業利益を加えると2,481億円となり、全体の65%を占める。

IFRS コア営業損益対比(億円)    
  2017/3 2018/3 前年比 増減内訳 2019/3
予想
売買差 数量差 コスト
削減
機能部材 623 580 -43 -141 133 99 -93 625
機能化学 319 360 41 325
MMA 379 1,096 717 646 100 50 57 910
石化 209 259 50 230
炭素 38 124 86 165
産業ガス 521 575 54 -9 45 16 2 615
ヘルスケア 984 812 -172 -2 40 25 -235 730
その他 2 -1 -3 0 -8 2 3 -50
合計 3,075 3,805 730 494 310 192 -266 3,550

     その他差には、受払差・持分法投資損益差等の金額が含まれる。


田辺三菱製薬の実績は以下の通り。

2017年度よりIFRSを適用。(三菱ケミカルHDの出資比率は56.3%)

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 コア営業利益 税引前損益 株主帰属損益   配当
中間  期末 
2016/3 4,258 818 1,070 833 593 22 24
2017/3 4,240 941 945 961 713 24 28
2018/3 4,339 773 785 788 580 38 28
前年比 99 -168 -160 -173 -133 14 0
2019/3 4,350 670 700 675 470 28 28
 

コア営業利益は、後期開発へのステージアップやNeuroDerm社の買収などによる研究開発費の増加により減益となった。

2017/7/27 田辺三菱製薬、イスラエルの医薬品企業 NeuroDermを買収

 

2014年下期から連結対象とした大陽日酸の業績は下記の通り。  

2017年3月期よりIFRSを適用(2016/3もこれに組換え)。(三菱ケミカルHDの出資比率は50.7%) 

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 コア営業利益 税引前損益 株主帰属損益   配当
中間  期末 
2016/3 5,944 489 475 466 290 7 9
2017/3 5,816 537 547 502 347 9 11
2018/3 6,462 599 600 559 489 11 12
前年比 646 62 53 57 142 2 1
2019/3 6,700 645 640 600 400 12 12

 


2018/5/24 中国、自動車関税を一律引き下げ 米に歩み寄り
 

中国財務部は5月22日、税委会公告〔2018〕3号を出し、輸入自動車及び自動車部品に対する関税を引き下げると発表した。

貿易赤字削減へ関税引き下げを求めてきたトランプ米政権に中国側が歩み寄った。

自動車については、現在税率が25%の(関税番号での)135種と現在20%のトラック4種を引き下げ、全て15%にする。

自動車部品については、現在、8%、10%、15%、20%、25%の(関税番号での)79種を引き下げ、全て6%とする。

詳細 http://gss.mof.gov.cn/zhengwuxinxi/zhengcefabu/201805/P020180522506508786661.pdf

 

習近平国家主席は4月10日、博鰲(ボアオ)アジアフォーラムで演説し、自動車への輸入関税を今年引き下げ、自動車合弁の外資出資規制を緩和する方針をあらためて表明した。

輸入を拡大したいと心から考えていると説明、できるだけ早く関連の政策を打ち出すように取り組むと述べた。

中国の昨年の輸入車数は122万台で、中国の自動車販売全体(2887万台)の4.2%程度を占めた。中国で外資メーカーは現地合弁工場による地産地消で多くの車種を国内生産するが、高級車の輸入が多い。

2017年に最も輸入台数が多かったブランドは独BMWの18万7千台で、2位は独ダイムラーのMercedes-Benzの18万3千台。トヨタは約14万台を日本から輸出 、日産は約2万3千台を日米英の工場から中国に輸出した。スバルは中国向けの車両を日本から全量輸出しており、2万7千台を販売した。

 

付記

これとは逆に、トランプ大統領は5月23日、自動車や自動車部品を対象に安保を理由に輸入制限を課せる通商拡大法232条に基づく調査を指示した。「自動車や自動車部品などの中核産業は国家としての強さに重要だ」との声明を出した。

商務省は乗用車やトラック、自動車部品を対象に調査を始めた。鉄鋼に課した輸入制限と同様に、車の輸入増が安保上の脅威になっているか調べる。
米メディアによると乗用車の関税を25%に引き上げる案が浮上している。

ーーー

中国政府は4月17日、自動車分野における外国企業の出資制限を2022年までに順次、撤廃すると発表した。
現在、中国メーカーと合弁を組むことが義務付けられ、合弁先への出資比率も50%以下に制限されている。

計画では、年内に電気自動車(EV)など新エネルギー車の生産会社で出資制限を撤廃し、2020年に商用車、2022年に乗用車に拡大する。
外国メーカー1社が設立できる合弁企業数を原則2社に制限している規制も撤廃される見通し。

ーーー

外紙は、中国通信機器大手、中興通訊(ZTE)の制裁緩和で米中が合意に近づいたと報じた。中国メディアによると、米国の制裁緩和の条件として、ZTEが経営体制の刷新に同意し、生産再開の準備を始めたという。

しかし、トランプ米大統領は5月22日、「まだ合意していない。様々な取引を話し合っている」と明らかにした。制裁を見直す場合、13億ドルの罰金や経営陣刷新が条件になるという。

中国と進める包括的な貿易交渉の進捗には「満足していない」と述べた。

 


2018/5/25 主要企業の2018年3月決算 − 住友化学 

2018年3月期からIFRS方式に変更した。(下記では2017年3月期もIFRSに組み替えたもので対比した。)

住友化学の場合、シンガポールのTPCやサウジのPetroRabigh などは持分法損益で、この2年はこれが急増しており、コア営業損益の増加(特に石油化学)が大きい。


三菱ケミカルと同様、大日本住友製薬など高収益企業の少数株主帰属利益分が大きい。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 うちコア うち
持分法
税引前
損益
法人
所得税
税引後
損益

うち

配当(円)
少数株主 株主帰属 中間 期末
2017/3 19,390 1,265 1,845 422 1,223 132 1,091 326 765 7.0 7.0
2018/3 21,905 2,509 2,627 553 2,408 627 1,782 444 1,338 10.0 12.0
前年比 2,515 1,245 781 131 1,185 494 691 118 572 3.0 5.0
2019/3 24,900 2,050 2,400           1,300 11.0 11.0

営業損益のうち、コアに含まれない非経常的損益は下記の通り。(億円)

  2017/3 2018/3
事業構造改善費用 -182 -142
減損損失 -365 -89
固定資産売却益 10 68
公正価値変動 -65 61
段階取得差益 28
その他 -7 -16
合計 -581 -118

 

営業損益

2017/3以降はIFRS方式の「コア営業損益」で、持分法損益を含む。
それ以前の持分法損益(大部分が石油化学)は15/3 239億円、16/3 202億円

 

営業損益対比(億円)           
  2017/3 2018/3 増減 内訳   2019/3予
価格差 コスト差 数量差等
石油化学 589 946 357 175 20 162 630
エネルギー・機能材料 60 192 132 10 20 102 200
情報電子化学 87 123 36 -125 135 26 200
健康・農業関連 474 440 -35 -120 0 85 590
医薬品 699 948 249 0 -170 419 810
その他 101 111 9 0 0 9 110
全社 -165 -132 33 - - 33 -140
  1,846 2,627 781 -60 5 836 2,400

 

石油化学:MMAや合繊原料が交易条件改善
              シンガポールやサウジの持分法損益が大きく改善
       ライセンス収入増       

エネルギー・機能材料:アルミ市況上昇
           レゾルシンやエンプラの販売数量増

情報電子化学:偏光フィルム、タッチセンサーパネルの売価大幅減

           偏光フィルムの出荷は増、原料合理化、出荷増でコストダウン。

健康・農業関連:メチオニンの価格下落。      
           インドの
Excel Crop Care 新規連結

医薬品:研究費、販売費増。米国でラツーダ等の出荷増。

 
 


大日本住友製薬の業績は次の通り。  (住友化学出資比率 50.22%)

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 うちコア 税引前
損益
法人
所得税
税引後
損益
配当(円)
中間 期末
2017/3 4,084 403 644 428 115 313 9.0 11.0
2018/3 4,668 882 906 849 314 534 9.0 19.0
前年比 585 479 262 421 200 221 0.0 8.0
2019/3 4,670 530 770 550     9.0 11.0
左は従来の日本方式、右はIFRS方式(特別損益等を含む。コア損益が従来の営業損益に近い)

日本では、後発医薬品の使用促進による大幅減収で減益
北米では、「ラツーダ」や抗てんかん剤「アプティオム」の売上が拡大、円安の影響もあり、大幅な増収増益

 


2018/5/26 ポルトガル電力公社、中国長江三峡による買収案拒否

ポルトガル電力公社 EDP(Energias de Portugal SA )は5月15日、筆頭株主である中国国有企業、中国長江三峡集団(China Three Gorges Corp.)からの最大約91億ユーロの買収提案を拒否すると発表した。提案された買収価格が企業価値を適切に評価していないとしている。 欧州の電力会社の買収で、支配権を得る場合に一般的なプレミアムから見て低すぎるとした。

三峡集団は2011年12月にEDPの株式の21.35%を2,690百万ユーロで買収した。

公的債務危機に対応するために、2011年5月にポルトガルはEUから780億ユーロの支援を受けており、ポルトガル政府とEUとIMFが確認した合意に基づいて、ポルトガル政府が政府が保有する電力、送電、航空関連企業の株式の売却を始めたが、本件はその最初で最大のものであった。

三峡集団が提示した取得価格は市場価格に53%のプレミアムを乗せた水準だった。三峡集団はEDPに対する資金支援を強化し、債務の返済や再生エネルギープロジェクトを支援することを約束した。

ドイツの独エネルギー大手E.ON やブラジル中央電力公社 Eletrobras を抑えて落札した。

EDPは米国、スペイン、ブラジルにも拠点を持っており、三峡集団はこの買収で国外展開を加速する。

EDPはブラジルでも有数の電力会社で、複数の水力発電所を運営し200万軒以上にエネルギーを供給している。

現在は23%を保有している。

同社は5月11日に、残りの77%について、同日の終値に5%弱を上乗せした1株当たり3.26ユーロでのTOBを提案した。出資比率を最低でも 50%以上に引き上げる計画だった。

三峡集団では、買収価格の3.26ユーロはEDPの株価の過去6カ月の平均より10%以上高いとしているが、アナリストは同様のケースではプレミアムは30%程度になっているとしている。買収価格の引き上げを期待して、EDPの株価は5月14日に3.50ユーロと提示額を上回る水準に上昇した。

ポルトガル政府は介入を否定しているが、拒否の背景には、基幹インフラの運営企業を国外企業に握られることへの懸念が働いたとの見方もある。

 
 

三峡集団は、三峡ダムの建設、揚子江開発のため、国務院の承認を得て2009年9月に設立された。230億ドルをかけた三峡ダムを運営している。

現在では世界でも最大の水力発電会社で、中国最大のクリーンエネルギー会社となっている。

三峡集団傘下の三峡新能源有限公司は3月28日、天津開発区管理委員会と洋上風力発電プロジェクトに関する投資協力合意書を締結したと発表した。

計画によると、発電施設は同開発区南港工業区の海上に建設し、総設備容量1000メガワット、年間発電量約24億キロワット時、年間事業収益約20億元となる見込み。発電能力は工業区の石油化学産業の巨大な電力需要を満たす。

三峡集団は2015年11月に、ブラジルのサンパウロ電力公社が運営していたジュピア水力発電所(設備容量155万キロワット)とイーリャ・ソルテイラ水力発電所(同344万キロワット)の30年間の運営権を138億レアル(約4530億円)で落札した。

 


2018/5/26 主要企業の2018年3月決算 −  三井化学、東ソー 

 

三井化学

2017年3月期は 基盤素材の交易条件の大改善などにより、営業損益は大幅増益となったが、本年度は横ばいであった。

営業外損益の持分法損益が前年の2億円から71億円に急増した。

ドイツの歯科材料事業で再度ノレン償却を行った結果、特別損失が増加した。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 持分法 経常損益 特別損益 当期損益   配当
中間 期末
2016/3 13,439 709 -22 632 -219 230 4 4
2017/3 12,123 1,021 2 972 -114 648 5 9
2018/3 13,285 1,035 71 1,102 -160 716 9 9
前年比 1,162 13 69 130 -46 67 4 0
2019/3予 14,800 1,060   1,120   800 10 10

 営業損益は下記の通り。

  16/3 17/3 18/3 増減

増減内訳

  19/3
予想
数量差 交易条件 固定費他
モビリティ 449 407 423 16 34 18 -36 450
ヘルスケア 116 101 108 7 20 4 -17 130
フード&パッケージング 203 206 199 -7 39 -21 -25 230
基盤素材 10 385 389 4 -2 19 -13 330
その他 -69 -78 -84 -6 -6 -80
合計 709 1,021 1,036 15 91 20 -97 1,060

 

 

特別損益は下記の通り。(億円)

    2016/3 2017/3 2018/3 増減
特別利益 資産売却益 51 26 35  
事業譲渡益 37 - 6  
債務免除益     20  
その他     3  
合計 88 26 65 38
特別損失 固定資産処分・売却損 56 73 24  
減損損失 241 41 150  
その他 10 26 51  
合計 307 140 225 84
特別損益 -219 -114 -160 -46

同社は2013年4月にドイツのHeraeus Holdingsから有利子負債を含め約543億円で歯科材料事業 Heraeus Dentalを買収した。

2013/4/10  三井化学、歯科材料事業を543億円で買収 

2016/3の減損損失には、このノレンの減損195億円を含む が、2018/3にも追加で143億円を計上した。

アナログ分野におけるドイツでの販売の低下、デジタル製品の立ち上げの遅れ等に伴い、計画を見直した。

ーーー

東ソー

クロルアルカリの交易条件差が大きく、営業損益は前年に続き大幅増益となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益

 配当

中間 期末
2016/3 7,537 694 658 -39 397 7.0 7.0
2017/3 7,430 1,112 1,131 -26 757 7.5 16.5
2018/3 8,229 1,306 1,323 -19 888 12.0 16.0
前年比 798 194 192 7 131 4.5 -0.5
2019/3予 8,500 1,100 1,120   760 14.0 14.0

営業損益は下記の通り。

 

  16/3 17/3

18/3

増減

内訳

  19/3予想
数量差 交易条件 固定費他
石油化学 116 201 225 24 1 -2 25 135
クロルアルカリ 180 479 666 187 -2 247 -58 552
機能商品 327 354 339 -15 48 -16 -47 335
エンジニアリング 46 51 49 -2 -3 0 0 56
その他 26 27 27 0 -1 1 0 23
合計 694 1,112 1,306 194 43 230 -80 1,101

クロルアルカリは各製品とも価格が上昇した。

 苛性ソーダ:国内価格の是正、海外市況の上昇

 塩ビ樹脂:国内価格の是正、海外市況の上昇

 MDI:輸出価格上昇

 セメントは国内輸出とも出荷順調。


2018/5/28 主要企業の2018年3月決算 − 旭化成、三菱ガス化学 

 

旭化成

ケミカル事業の営業損益が大きく増加し、増収増益となった。特別損益も黒字であった。

 

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益   配当
中間 期末
2016/3 19,409 1,652 1,614 -150 918 10 10
2017/3 18,830 1,592 1,606 -32 1,150 10 14
2018/3 20,422 1,985 2,125 58 1,702 14 20
前年比 1,592 392 519 90 552 4 6
2019/3予 21,550 1,900 1,990   1,400

34

               

営業損益は下記の通り。

事業部別 

  16/3 17/3 18/3 増減

内訳

19/3予
数量差 売値差 コスト差
マテリアル ケミカル 609 744 1,001 257 87 550 -379 935
繊維 139 117 121 5 27 16 -38 140
エレクトロニクス 44 25 97 72 49 -25 48 75
住宅 住宅 654 595 602 7 26 23 -42 610
建材 58 45 40 -4 15 -2 -18 45
ヘルスケア 医薬・医療 243 171 197 25 -5 6 24 175
クリティカルケア 119 148 198 50 112 13 -75 200
その他 38 20 19 -1 -1     20
全社 -253 -271 -290 -19     -19 -300
合計 1,652 1,592 1,985 392 311 581 -499 1,900

ケミカル事業は、アクリロニトリル等の交易条件差、数量差で大幅増益となった。

クリティカルケアは2012年に買収した米国の救命救急医療機器大手であるZOLL Medical Corporationだが、毎年増益となっている。
  2013/3 -37億円、2014/3 -35億円、2015/3 41億円、2016/3 119億円、2017/3 148億円、2018/3 198億円

2012/3/19 旭化成、米国ZOLL Medical Corporationを買収 


特別損益は有価証券売却益が大きく(152億円)差引黒字となった。

 

ーーー

三菱ガス化学

営業損益は前年を190億円上回り、当期損益でも126億円の増益となった。大幅増配とし、次期も更に増配する。

特別損益は投資有価証券評価損 83億円を含む。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 持分法 経常損益 特別損益 当期損益   配当
中間 期末
2016/3 5,935 340 167 454 4 341 8.0 8.0
2017/3 5,565 438 211 624 -13 480 8.0 22.0
(11.0)
2018/3 6,359 627 183 807 -73 605 24.0(12.0) 35.0(17.5)
前年比 794 190 -28 183 -60 126 (4.0) (6.5)
2019/3予 6,400 530   750   610 35.0(17.5) 35.0(17.5)


三菱ガス化学は海外メタノール事業が持分法であり、営業損益に含まれないため、部門別損益については従来からこれを含む経常損益を発表している。

2015年3月期までは経常損益に占める持分法損益の比重が非常に高かった。その後、 メタノールを主とする天然ガスの利益が減り、この3年間、利益が横ばいであるのに対し、芳香族、機能化学品の利益が急増している。

 
      このうちの持分法    
   
  16/3 17/3 18/3 増減 19/3予想
天然ガス系 139 143 149 6 180
芳香族 137 175 251 76 212
機能化学品  156 268 386 118 306
特殊機能材 39 62 63 2 63
その他 3 3 3 -1 0
全社 -19 -27 -46 -18 -11
合計 454 624 807 183 750
天然ガス系化学品 メタノール、アンモニア、アミン系製品、メタクリル酸系製品、多価アルコール類、酵素・補酵素類
芳香族化学品 キシレン異性体及びその誘導品
機能化学品 過酸化水素、電子工業用薬品類、エンジニアリングプラスチックス
特殊機能材 プリント配線板用材料、プリント配線基板、脱酸素剤「エージレスR」
その他 不動産業他
 

持分法損益は、 天然ガス系(メタノール)で93億円、機能化学品ではエンプラなどで79億円を、特殊機能材で3億円を計上した。

海外メタノールでは、ベネズエラのMETORの税制改正や、サウジのプラントトラブル、ブルネイメタノールの定修などで減少した。

芳香族では、高純度イソフタル酸の市況が大幅に上昇、メタキシレンの休止していた生産装置1系列を2017年3月末に再稼働し、販売数量が増加
メタキシレンジアミンも販売数量増加、販売価格上昇で増益となった。

機能化学品では、半導体向け薬液の販売数量が増加。ポリカーボネートも中国を中心に需要が好調、ビスフェノールAのスプレッドは非常に高い水準で推移 。

 


2018/5/28 小野薬品工業と ブリストル・マイヤーズスクイブ、がん免疫療法薬2剤の併用療法の承認取得 

小野薬品工業とブリストル・マイヤーズスクイブは5月25日、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体「オプジーボ®(一般名:ニボルマブ)」およびヒト型抗ヒトCTLA-4モノクローナル抗体「ヤーボイ®(一般名:イピリムマブ)」について、根治切除不能な悪性黒色腫に対する両剤の併用療法に係る国内製造販売承認承認 を取得したと発表した。

今回の承認は、国内で初めてのがん免疫療法薬2剤の併用療法の承認となる。
両社は腎細胞癌についても併用療法の承認申請を行っている。

ブリストル・マイヤーズスクイブ は4月18日、FDAにより両剤併用療法が、未治療の中及び高リスクの進行腎細胞癌治療薬として承認されたと発表した。癌免疫治療法薬の併用療法としては米国で初の承認となる。

悪性黒色腫(メラノーマ)は皮膚の色と関係が深いメラニン色素の産生能を持つ色素細胞(メラノサイト)ががん化した悪性腫瘍で、皮膚がんの中でも転移率が高く、きわめて悪性度が高いとされてい る。

オプジーボおよびヤーボイは、国内においてすでにそれぞれの単剤投与について「根治切除不能な悪性黒色腫」を対象として承認を取得している。今回の承認によって、併用療法が可能とな った。

働きの異なる2剤を併用することで治療効果が上がるといい、患者の選択肢が増える。

ーーー

癌免疫薬は免疫チェックポイント阻害薬とよばれる。
(他に、自分のリンパ球を取り出し培養したうえで、活性化したリンパ球だけ、特にナチュラル・キラー細胞を戻すNK細胞投与がある。)

癌細胞には、免疫細胞攻撃を防止する「免疫チェックポイント」という仕組みがある。

1) 癌細胞は、免疫細胞からの攻撃を逃れるために、PD-L1 というタンパク質を出し、これが免疫細胞のPD-1 に結合すると、免疫細胞の働きが抑制される。

2) 免疫細胞は、抗原提示細胞である樹状細胞から癌抗原の提示を受けると働きが活発になり、それを目印に癌細胞を攻撃するが、抗原提示を受ける際、免疫細胞のCTLA-4 に樹状細胞のB7というタンパク質が結合すると、逆に免疫細胞の働きが抑制され、癌細胞を攻撃できなくなる。


これらの「免疫チェックポイント」を阻害して、免疫細胞に癌細胞を攻撃させるのが、免疫チェックポイント阻害薬である。

現在、日本で承認済みと開発中のものは下記の通り。小野薬品とブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS) は提携している。

  機能 承認 開発中
抗PD-1抗体 免疫細胞のPD-1に結合し、PD-1と癌細胞のPD-L1の結合を防止 オプジーボ(小野薬品/BMS)
キイトルーダ(米Merck)
 
抗PD-L1抗体 癌細胞のPD-L1に結合し、PD-1とPD-L1の結合を防止 バベンチオ(独Merck/Pfyzer
テセントリク(
Roche/中外製薬)
デュルバルマブ(AstraZeneca)
 
抗CTLA-4抗体 免疫細胞のCTLA-4に結合し、CTLA-4と樹状細胞のB7の結合を防止 ヤーボイ(BMS/小野薬品)
 
 


承認取得は次の通り。

  オプジーボ ヤーボイ オプジーボ/
ヤーボイ併用
キイトルーダ バベンチオ テセントリク
悪性黒色腫 2014/7 2015/7 2018/5 2016/9    
非小細胞肺癌 2015/2     2016/12   2018/1(二次治療)
腎細胞癌 2016/8          
ホジキンリンパ腫 2016/12     2017/11    
頭頚部癌 2017/3          
胃癌 2017/9     2017/12    
尿路上皮癌            
メルケル細胞癌         2017/9  

http://answers.ten-navi.com/pharmanews/7342/

 

なお、エーザイと米 Merck は3月8日、エーザイ創製の抗がん剤、経口チロシンキナーゼ阻害剤「レンビマ」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)を全世界で共同開発・共同販促する戦略的提携について合意したと発表した。

両社は、「レンビマ」の単剤療法、ならびにMerck の抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法における、共同開発と共同販促を行う。

2018/3/13  エーザイと米 Merck 、エーザイの抗がん剤「レンビマ®」のがん領域における戦略的提携に合意

 


 

2018/5/29  主要企業の2018年3月決算 − 帝人、宇部興産 

帝人

ヘルスケアが前年の米国在宅医療事業撤退の効果もあり、増益となった。

増収増益だが、前年の法人税に特殊要因があったため、当期損益は若干の減益となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 法人税 当期損益   配当
中間 期末
2016/3 7,907 671 603 -147 164 311 3.0 4.0
2017/3 7,413 565 559 -220 -175 501 5.0 30.0
(6.0)
2018/3 8,350 698 678 1 208 456 30.0
(6.0)
30.0
(6.0)
前年比 937 133 119 221 383 -46 1.0 0
2019/3予 8,800 700 710     470 30.0
(6.0)
40.0
(8.0)

2017/3の税金は、米国在宅医療事業(Braden Partners, L.P.ならびにAssociated Healthcare Systems, Inc.)からの撤退を決定したことに伴う税効果会計の適用

営業損益

  16/3 17/3 18/3 増減 増減のうち 19/3予
マテリアル 671 312 336 24

償却費増 -75、価格差 -50
為替差益 +25、構造改革 30

365
ヘルスケア 248 359 112

米在宅医療撤退 65、先行費用 -52

340
その他 53 61 8   60
全社 -48 -59 -11   -65
合計 671 565 698 133   700


特別損益は次の通り。

  2016/3 2017/3 2018/3
減損損失 - 43 - 14 - 11
事業構造改善  -55 -155 -5
固定資産除却、売却損 -29 -48  -41
固定資産売却益 3 3 56
その他 -23 -6 2
差引 -147 -220 1

ーーー

宇部興産

化学品が各分野とも好調で、増収増益となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益   配当
中間 期末
2016/3 6,418 414 396 -120 191 0 5.0
2017/3 6,166 350 333 -4 242 0 6.0
2018/3 6,956 503 507 -57 317 0
 
75.0
(7.5)
前年比 790 153 174 -53 75 0 1.5
2019/3予 7,400 440 455   305 0
 
75.0
(7.5)

 

営業損益

  16/3 17/3 18/3 増減

内訳

19/3予
価格差 数量差 固定費差 その他
化学 121 97 290 193 108 45 6 35 225
医薬 11 25 21 -4 1 12 2 -19 5
建設資材 198 163 123 -39 -38 11 -23 11 125
機械・金属成形 46 37 55 18 -2 3 -35 52 60
エネルギー・環境 39 29 24 -5 -4 7 -2 -6 25
その他 11 8 9 1       1 10
全社 -12 -7 -19 -12       -12 -10
合計 414 350 503 153 65 78 -52 62 440

化学品が200%の大増益となった。内訳は下記の通り。(億円)

ナイロン・ラクタムチェーン +72 ラクタムは中国の環境規制等で需給がタイト化、売価アップ
ナイロンも原料価格上昇に応じ、売価アップ
アンモニア増収
合成ゴム +59 原料ブタジエンの価格アップに応じ売価アップ
電池材料・ファイン +23 車載向け電池材料等が販売数量増
ポリイミド・機能品 +33 ポリイミドは回路基板向けに数量増

 



2018/5/29    デンカ、コンゴ民主共和国へエボラウイルス迅速診断キットを提供


デンカは5月28日、グループ会社のデンカ生研が、エボラウイルス迅速診断キット(クイックナビTMシリーズ) 試作品をコンゴ民主共和国
の国立生物医学研究所(INRB)へ提供した と発表した。

同社は、昨年の同地域でのエボラ出血熱流行時に、同国保険省のアドバイザーとしてJICAから派遣されている専門家からの要請で この試作品を提供し、拡大防止に貢献した。

今回、エボラウイルス病の流行発表を受け、同国保健省エボラ対策国家調整委員会検査部会が、昨年の成果を踏まえ、JICA 経由で検査キットの提供要請を行い、それを受けてデンカ生研が無償にて実施した。JICAは医療従事者の移動手段としてバイク5台、簡易検査施設の電力供給用に発電機1台を提供した。

コンゴ民主共和国保健省は5月8日,赤道州ボコロ保健圏において,2例のエボラ出血熱が発生したことを発表した。

世界保健機関(WHO)は5月14日、4/4〜5/13に報告された感染例を次のとおり発表している。

  確定 高い可能性 疑い
ビコロ保健圏 2 20 7
イボコ保健圏 0  3 5
ワンダカ保健圏 0 2 0
合計(うち 死亡 19) 2 25 12

 

この検査試作キットは、高田礼人教授(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)とデンカ生研が、ザンビアで実施中の地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)「アフリカにおけるウィルス性人獣共通感染症の調査研究プロジェクト」の研究成果を活用し、共同で開発したもので、特別な器具や装置無しに約15分で検査結果を判定でき、医療施設が十分に整っていない地域においても迅速な検査が実施できる。

 

デンカ生研では、インフルエンザ、ノロウイルス、RSウイルスなどの迅速診断キット製品群を有している。

同社はかねてより、北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの高田礼人教授と共同でエボラウイルス迅速診断薬の開発を行っていたが、2015年3月にその試作品開発に成功した 。

デンカ生研が製造・販売を行う感染症迅速診断キット「クイックナビ™」シリーズのプラットフォームをベースとするもので、血清を検体とした測定を行う。


毒性の高いウイルスを扱うことの出来る米国のBSL4施設(Biosafety Level 4)において、エボラウイルスに感染したサルの血清を用いた試験を行い、約15分でエボラウイルス感染の有無が判定できることを確認した。

エボラウイルス感染の判定には、主にELISA法や RT-PCR法などの測定法が使用されているが、これらは特別な装置と長い測定時間を必要とする。
ELISA(Enzyme-linked immuno-sorbent assay)法:
 
 抗原抗体反応を利用して、特定物質を測定する免疫学的測定法

RT-PCR (Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction)= 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法:

 RNA(リボ核酸)から逆転写酵素によってcDNA(相補的デオキシリボ核酸)を合成し、ポリメラーゼ連鎖反応を行うことで、目的の遺伝子を増幅する方法

これに対し、デンカ生研の「クイックナビ™」シリーズが採用するイムノクロマト法は、特別な器具や装置を必要としないため、簡便且つ迅速な検査が可能で、電源などが十分でない地域においても活用が期待される。

クロマト(クロマトグラフィー)は、固定相の一端から多成分試料を移動させ、各成分の固定相に対する吸着や、分配の差異による移動速度の大小によって分離する方法 で、イムノクロマト法は、この原理と抗原抗体反応を組み合わせたもの。検出方法としては、酵素抗体法と凝集法(金コロイドや着色ラテックスなど)がある 。

 

 


2018/5/30 主要企業の2018年3月決算 − チッソ 


チッソは2011年1月に「事業再編計画」に記載した100%子会社
JNC を設立し、事業を譲渡した。

2011/1/12 チッソ、「事業再編計画」に基づく、新会社を設立

親会社のチッソは当面、子会社JNCの株式配当益で補償業務を担い、3年後をめどに株式を他者に全面譲渡し、譲渡益を熊本県に納付して補償業務を委ね、清算するという構想である。

なお、特措法では、「救済の終了」と「市況の好転」をJNC売却の条件としている。
 

水俣病の公式確認から62年を迎えた5月1日の水俣病犠牲者慰霊式の後、チッソ社長が「水俣病の救済は終わっている」と述べて批判を受け、その後、取り消した。

2018/5/2   チッソ社長、「水俣病の救済は終わっている」 付記に「お詫びと撤回」


「救済の終了」には時間がかかるが、
「市況の好転」についても、主力の液晶の利益が激減しており、2011年3月期に248億円あった経常損益は48億円に減っている。

液晶については、元の利益に戻る可能性は少なく、JNCを購入しようという相手が出てくるかどうか疑問である。

2018年3月末の未処理損失は 1,421億円である。資本金は78億円で、純資産は−1,111億円となっている。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益   配当
中間 期末
2016/3 1,718 129 138 -39 55 0 0
2017/3 1,540 61 75 -64 -14 0 0
2018/3 1,600 29 48 -40 -33 0 0
前年比 60 -32 -28 25 -19    
2019/3予 1,680   55     0 0

 

経常損益

液晶を中心とする機能材料は、2015年3月期には182億円の利益を計上したが、その後、128億円、83億円となり、本年は26億円に激減した。

中国パネルメーカーの増産を受けて液晶ディスプレイパネルが供給過多の状況となってきており、顧客が稼働調整した影響から、液晶材料の販売 が減少した。
有機ELパネルが増えており、今後、液晶が元に戻る可能性は少ない。

  15/3 16/3 17/3 18/3 増減 19/3予想
機能材料 182 128 83 26 -56  
加工品 21 16 15 18 3  
化学品 -11 17 -1 21 22  
商業事業 4 3 3 3 0  
電力 5 1 0 1 0  
その他 2 1 2 2 -0  
全社 -28 -28 -27 -23 4  
合計 175 138 75 48 -28 55

 

機能材料 液晶関連材料、電子情報材料
加工品 ポリオレフィン複合繊維、被覆肥料、高度化製肥料
化学品 高級アルコール、可塑剤(三菱ガスとのJV シージーエステル)、溶剤、PP(三菱ケミカルとのJV 日本ポリプロ)、PE(丸善ポリマーとのJV 京葉ポリエチレン)、PP特殊コンパウンド
商業事業  
電力 水力発電、太陽光発電
その他 化学工業設備の設計、施工等

液晶は水俣で製造する液晶単品を五井と台湾の台南工場でブレンドし、ディスプレイ・メーカーに供給している。


特別損益には下記を含む。(億円)

  14/3 15/3 16/3 17/3 18/3
水俣病補償損失 -41 -38 -37 -35 -33
被害者救済一時金 -46 -2      
環境対策費 -20        
災害損失       -16 -7
減損損失 -1 -5 -38 -3  
固定資産圧縮損     -25    

 


2018/5/30     7原発12基の換気系ダクトに腐食

原子力規制委員会は5月23日、全国の原発などで中央制御室の空調換気系ダクトを調査した結果、一部に腐食や穴、亀裂が見つかったのは下記の島根2号機以外に7原発12基だったと明らかにした。他に未報告分がある。

http://www.nsr.go.jp/data/000232172.pdf   (表では東海第二は報告待ちとなっているが、5/22に腐食ありの発表があった。)

2016年12月に中国電力島根原発2号機の中央制御室のダクトで腐食による複数の穴が見つかった 。ダクトを覆う保温材を外す点検で複数の穴が見つかり、最大で横約100センチ、縦約30センチだった。
原因は結露や外から浸入した雨水、塩分の付着と推定されている。

この問題を受け、規制委が2017年1月に各電力事業者に調査を指示していた。

東京電力柏崎刈羽3、7号機では計9カ所の穴や亀裂があり、3号機で最大の縦約13センチ、横約5センチの亀裂が見つかった。
ダクトに腐食があると事故時に中央制御室に放射性物質が流入して運転員が被ばくする恐れがある。腐食が大きい柏崎刈羽3号機は換気機能に異常がある可能性がある。

規制委の更田豊志委員長は記者会見で「腐食の程度や穴が大きい」と指摘し、東電に速やかな是正を求めた。

腐食がみつかった原発の全てが、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型(BWR) で、規制委によると沸騰水型の場合、ダクトの外気取り込み口に水分や塩分を除去するフィルターを設置しないメーカーが多かった。
原発は全て海岸沿いにあり、水分や海水の塩分を含んだ外気をダクトから取り込み、腐食が発生したとみられる。ダクトの材質は鉄や亜鉛メッキ鋼。

加圧水型 (PWR) では外気の取り入れ口の近くにフィルターを設置するなどの対策をしており、問題なかった。
 

規制庁によると、稼働中の原発で同様の腐食が見つかった場合、保安規定では10日以内に補修することになっており、補修できなければ原子炉を停止する必要がある。

 

発電所名
運転開始 型式

能力
万KW)

廃炉 再稼働
合格
再稼働

今回調査

回答 機能・性能への影響 居住性に影響を与える範囲の腐食孔
北海道
 
@ 1989/6/22  PWR 57.9       異常なし    
A 1991/4/12  PWR 57.9      
B 2009/12/22 PWR 91.2      
東北電
 
東通 @ 2005/12/8  BWR 110.0       異常なし    
東北電  女川 @ 1984/6/1 BWR 52.4       異常なし    
A 1995/7/28 BWR 82.5      
B 2002/1/30 BWR 82.5       ダクトフランジに腐食 無し 無し
東 電
 
福島
第一
@ 1971/3/26  BWR 46.0 2012/4/19
 
         
A 1974/7/18  BWR 78.4        
B 1976/3/27  BWR 78.4        
C 1978/10/12 BWR 78.4        
D 1978/4/18 BWR 78.4 2014/1/31
 
    異常なし    
E 1979/10/24 BWR 110.0   ダクトフランジに腐食 無し 無し
東電
 
福島
第二
@ 1982/4/20 BWR 110.0       報告待ち    
A 1984/2/3 BWR 110.0          
B 1985/6/21 BWR 110.0          
C 1987/8/25 BWR 110.0          
原電
 
東海 @1966/7/25   16.6

1998/3/31
運転終了

         
A 1978/11/28 BWR 110.0       ダクトに腐食 無し  
東電
 
柏崎
刈羽
@ 1985/9/18 BWR 110.0       報告待ち    
A 1990/9/28 BWR 110.0          
B 1993/8/11 BWR 110.0       ダクトに腐食 無し 有り(5個)
C 1994/8/11 BWR 110.0       ダクトに腐食 無し 無し
D 1990/4/10 BWR 110.0       異常なし    
E 1996/11/7 ABWR 135.6   2017/12/27   ダクトに腐食 無し 無し
F 1997/7/2 ABWR 135.6   ダクトに腐食 無し 有り(4個)
中電
 
浜岡 @1976/3/17 BWR 54.8 2009/1/30
運転終了
         
A1978/11/29 84.0        
B 1987/8/28 BWR 110.0       ダクトに腐食 無し 有り(6個)
C 1993/9/3 BWR 113.7       ダクトに腐食 無し  
D 2005/1/18 ABWR 138.0        
北陸
 
志賀 @ 1993/7/30 BWR 54.0       ダクトに腐食 無し  
A 2006/3/15 ABWR 135.8       異常なし    
原電
 
敦賀 @ 1970/3/14 BWR 35.7 2015/3/17
決定
    ダクトに腐食 無し  
A 1987/7/25 PWR 116.0       異常なし    
関電
 
美浜 @ 1970/11/28 PWR 34.0 2015/3/17
決定
    異常なし    
A 1972/7/25 PWR 50.0      
B 1976/3/15 PWR 82.6   2016/11/16   異常なし    
関電
 
大飯 @ 1979/3/27 PWR 117.5       異常なし    
A 1979/12/5 PWR 117.5          
B 1991/12/18 PWR 118.0   2017/5/24  2018/3/14    
C 1993/2/2 PWR 118.0   2018/5/9    
関電
 
高浜 @ 1974/11/14 PWR 82.6   2016/6/20   異常なし    
A 1975/11/14 PWR 82.6        
B 1985/1/17 PWR 87.0   2015/2/12 2016/1/29
   2017/6/6
   
C 1985/6/5 PWR 87.0  

2016/2/26     2017/5/17

   
中国
 
島根 @ 1974/3/29 BWR 46.0 2015/3/18
 決定
    ダクトに腐食 無し 吸気 4個
外気取入 83個
A 1989/2/10 BWR 82.0       ダクトに腐食 無し  
四国
 
伊方 @ 1977/9/30 PWR 56.6 2016/5/9
 廃炉
    異常なし    
A 1982/3/19 PWR 56.6 2018/5
廃炉
       
B 1994/12/15 PWR 89.0   2015/7/15 2016/9/7    
九州
 
玄海 @ 1975/10/15 PWR 55.9 2015/3/18 
決定
    異常なし    
A 1981/3/30 PWR 55.9          
B 1994/3/18 PWR 118.0   2017/1/18 2018/3/23
     4/18
   
C 1997/7/25 PWR 118.0   2018/6予    
九州
 
川内 @ 1984/7/4 PWR 89.0   2014/9/10 2015/8/11  異常なし    
A 1985/11/28 PWR 89.0   2015/10/15    
  もんじゅ             異常なし    
六ケ所 再処理             異常なし    

 

 

 


2018/5/31 医薬メーカーの3月期決算 

2018年3月期決算がほぼまとまった。

各社の決算状況は http://www.knak.jp/kessan/ 

塩野義製薬と大正製薬と大日本住友製薬の2016/3が日本方式(グラフ斜線)で、他はすべてIFRS方式。

 

営業損益には、下記の通り、従来の営業外損益(金融費用・損益を除く)や特別損益を含むため、それ以前との対比はできない。

このため各社が独自の判断で、新しい営業損益から非経常的な損益を除外したものをコア営業損益として発表している。

コア営業損益は従来の営業損益に近いが、持分法損益やその他の営業外損益等を含んでいる。

経理処理も、ノレンの償却がなくなるなど、一部変更されている。


売上高


営業損益

IFRSの場合はコア営業利益(但し、エーザイはコアの記載がなく、営業利益全体)


税引後損益 (日本方式の場合は経常損益)
 

株主帰属損益


武田薬品は、主に営業損益の増により、前期から 719 億円増益の1,869億円となり、これまで大きく引き離されていたアステラス製薬を上回った。

なお、アステラス製薬の損益は1647億円だが、同社によると、コア当期純利益は2043億円となっている。(前年は2133億円)

 

塩野義の売上高には下記のロイヤリティを含み、この増加が営業損益に貢献

  '17/3 '18/3
ViiV HIV治療薬 733億円 1,035億円
AstraZeneca クレストール 330億円 226億円
その他 94億円 289億円
合計 1,157億円 1,550億円

また、主にViiVからの配当金が増大した。

  '17/3 '18/3
配当金 180億円 265億円

 

 


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