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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2019/4/15 Brexit と欧州議会選挙 

EUと英国は4月11日早朝、英国の離脱期限を10月31日まで再延長することで合意した。

但し、英国が5/23〜26の欧州議会選挙中にメンバーである場合、英国は欧州議会選挙の義務を持つ。

英国が5月22日までに協定書を批准しない場合で、それにも関わらず欧州議会選挙をしない場合、延期は5月31日に終了する。

2019/4/11 Brexit 合意書

メイ首相は、それまでに協定書を批准し、離脱しようと図っているが、現状では非常に難しい。

独立党元党首で反EUのNigel Farageは2回目の離脱期限であった4月12日、「Brexit Party」を設立し、欧州議会選挙に向け活動を開始した。
既成の政治勢力を無能だと批判し、「過去数週間の間に目にしたのは、この国の歴史上最大の民主主義実践を故意に裏切る行為だ」などと述べた。

欧州議会議員は任期が5年。総議席は751で、英国は、本土が70議席、北アイルランドが3議席の合計73議席である。

前回は2014年5月22日に投票が行われた。選ばれた議員の党派は次の通り。

  当選 前回比
独立党 24 +11
労働党 20 +7
保守党 19 -7
緑の党 3 +1
スコットランド国民党 2 ±0
自由民主党 1 -10
プライドカムリ 1 ±0
国民党 0 -2
 
Sinn Fein 1 ±0
民主統一党 1 ±0
アルスター統一党 1 ±0
合計 73 ±0

英国の下院では、独立党は2017/6/8 選挙 で全員落選し、議席数ゼロとなったが、その後、労働党等を離党した議員が入り、現在は11名となっている。

ーーー

EUでは、BREXITを前提に既に議席の再配分をしていた。

英国のEU脱退によって空席となる73議席のうち、46議席は無くし、総議席数は751から705に削減された。

残り 27議席は下記の通り再配分された。

フランス(+5議席)、スペイン(+5議席)、イタリア(+3議席)、オランダ(+3議席)、アイルランド(+2議席)、スウェーデン(+1議席)、オーストリア(+1議席)、デンマーク(+1議席)、フィンランド(+1議席)、スロヴァキア(+1議席)、クロアチア(+1議席)、エストニア(+1議席)、ポーランド(+1議席)およびルーマニア(+1議席)。

今回、英国が選挙に加わる場合の扱いは決まっていないが、(離脱取り止めの場合を除き)10月31日までであるため、おそらく追加議席分で選ばれた議員は補欠とし、英国離脱後に就任するのではないかと思われる。

 


2019/4/15   ジャパンディスプレイ(JDI)、 台湾・中国のグループから金融支援800億円受け入れ 

赤字が続き経営再建中のJDIは4月1日、筆頭株主であるINCJ(旧産業革新機構)とも連携しながら外部との提携交渉を行っていると発表した。総額1,100億円超の資本増強としていた。

2019/4/4 ジャパンディスプレイの動き   


JDIは4月12日、台湾の電子部品メーカーなど3つのグループで構成する台中連合から800億円の金融支援を受けると発表した。
メンバー企業1社とは晶ディスプレイに関する業務提携を、他の1社とは蒸着方式 有機ELディスプレイの量産計画に関する業務提携を行う。

現在の筆頭株主のINCJ(旧 産業革新機構 )は、750億円の優先株の引き受けで Debt-to-equity  を行うとともに、770億円の長期貸付で既存の債務(INCJが債務保証)を返済する。

合計で資本増強は1,170億円となる。(他に新株予約権付社債が180億円+200億円あり、全て転換すると1,550億円になる。)

当面の資金繰り不安は解消する。同社では「国内拠点の統廃合を視野に入れている」としており、リストラも示唆した。

日本の官民ファンド、INCJ(旧産業革新機構)に代わり、台中連合が議決権の49.82%(転換社債の転換後は65.41%)を握る筆頭株主になり、日本の電機大手の事業を統合して誕生した「日の丸液晶連合」は外資の傘下で再建を急ぐことになる。

@ 台中連合のSuwa Investment Holdings, LLCと 、800億円の出資契約を締結する。

 1) Suwa Investment Holdings, LLC  (出資比率は台湾紙の情報 6/18 新聞報道)

    出資比率  
台湾 TPK Holding 宸鴻集団 41.8% 251億円 31.375% タッチパネル大手
Cosgrove Global 23.6% 142億円 17.75% 一族富邦金控が運用・管理する投資会社
中国 Harvest Tech Investment Management
嘉実基金管理)
34.5% 407億円 50.875% 中国最大の資産運用会社 Harvestグループ のプライベートエクイティ投資を行う運用会社

 

これまでは、下記4社とされていた。

台湾 TPK Holding 宸鴻集団 〔今回出資〕
中国 Harvest Tech Investment Management
嘉実基金管理)
〔今回出資〕
China Silkroad Investmet
(中投絲路資本
 
敏実集団(Minth Group)

自動車部品メーカー

後の2社はApple問題(文末)の懸念で離脱したとされる。代わりに蔡一族 が加わった。

なお、Harvest Tech が中国政府の意向を受け、支援額引き下げを提案し、TPKが一部を肩代わりし、Appleが原資の一部を支援したと報道されている。
中国政府は過剰投資のリスクを嫌ったとみられている。

  付記 4/23日経によると、台湾の部品メーカーの淳安電子(SOE)もメンバーであったが、Apple問題で撤退した。
     JDIはAppleとの「密約」を隠していたが、2018/11にAppleが注文を半分に減らすと通達、JDIは隠しきれずに交渉終盤に明らかにし、SOEは離脱した。

2) 出資

普通株式:420億円
新株予約権付社債:180億円+200億円 合計 380億円(うち最後の200億円は資金需要により判断)
総計:800億円

用途は次の通り。
 運転資金:380億円
 R&D:92億円
 設備投資:320億円(蒸着OLED量産 100億円、車載量産化 120億円、新事業投資 100億円)


A 台中連合の2社と事業提携契約を締結する。

TPK :液晶ディスプレイに関する業務提携  (LCD Business Alliance Basic Agreement)

Harvest Tech Investment Management:蒸着方式 有機ELディスプレイの量産計画に関する業務提携

これまで、中台連合は、JDIの技術を活用して浙江省に有機ELパネル工場を建設することを計画しているとされていた。

計画は、第6世代の基盤を3万枚/月、6型パネル 400万台/月の工場の建設で、投資額が約5000億円で、資金は中国政府の補助金を活用する。
早ければ2019年中に建設を開始し、2021年の量産開始を見込む。

B INCJ (旧 産業革新機構)による750億円のDebt-to-equityと長期貸付金770億円による負債借り換え

優先株 引受 750億円  Debt-to-equity
長期貸付金  770億円
合計    1,520億円

 これにより、下記を返済

INCJの短期貸付金 200億円
劣後CB未償還残高 250億円
INCJの連帯保証債務 1,070億円

なお、劣後特約付貸付 300億円は継続する。

以上により、同社の資本・負債は次のようになる。(単位:億円)

現状           今後       
劣後特約付貸付金 300 劣後特約付貸付金 300  
INCJ 短期貸付金 200 1,520 INCJ 長期貸付金 770 1,520  
劣後CB 250
NCJ連帯保証債務 1,070 CINCJ優先株 750 資本増強
 当面 @+C 1,170
     +A 1,350
     +B    1,550
  BSuwa CB-2 200
ASuwa CB-1 180
@Suwa出資 420
既存資本金   既存資本金    

付記

Suwaからの出資は早くても6月になる見込みのため、JDIは4月18日、当面の運転資金として、INCJから200億円のつなぎ融資を受けると発表した。

 

同社の株主の変遷は次の通り。

  当初 その後 2018/3 2019/3/1

今回

増資 全社債転換
Suwa Investment 49.82% 65.41%
産業革新機構→ INCJ 70% 35.58% 26.81% 25.29% 12.69% 8.75%
ソニー 10% 1.78% 1.34% 1.26% 0.63% 0.44%
東芝 10%
日立 10%
日亜化学 3.52% 4.13% 2.07% 1.43%
海外機関投資家計 21.12% 69.32% 34.79% 23.97%
その他現行株主 62.64% 47.21%
合計 100% 100% 100% 100% 100% 100%

 

今回の決定には、次の問題がある。

1) 「日の丸液晶連合」は台中連合の傘下で再建を急ぐことになるが、米中の貿易摩擦が長引くなか、対米外国投資委員会(CFIUS)などが待ったをかける可能性がある 。

  また、JDIが有機ELパネルの量産技術でApplied Materialsと協業しており、Harvest Tech との蒸着方式 有機ELディスプレイの量産計画に関する業務提携 を提案を米国が問題とする可能性がある。

2) Appleとの契約

JDIはAppleからの増産依頼により、白山工場を建設したが、資金の大半はAppleからの前受け金1700億円で賄った。

問題は、JDIと Apple の契約である。この前受金の契約には下記の条項がある。

・JDIは年間2億ドルまたは売上高の4%のいずれか高い金額を四半期ごとに返済する。

・JDIの現預金残高は300億円以上を維持する。

・上記2つの条項を守れなければ、Appleは、前受け金の即時全額返済、または白山工場の差し押さえを要求できる権利を持つ。

返済原資は貸し手であるAppleからの注文次第であることが問題で、Apple側の理由で注文が減ると、 たちまち返済原資に行き詰まる。

今回の中台連合の出資800億円も、Appleが注文を減らせば、返済不能となり、Appleに流れることとなる。

中台連合の要求に基づいて、2019年以降の返済減額を訴えるため、INCJの志賀会長と経済産業省幹部の2人がApple本社へ乗り込んだが、3月23日に事実上のゼロ回答があった とされる。

今回、出資が決まったのは、Appleとの間で返済繰り延べの合意があったとされるが、報道では、債務残高約 1,000億円について2019年度返済分の一部を2020年度に繰り延べるというだけで、「トリガー条項」はそのまま残るという。JDIの今後はApple からの注文次第で、Appleが「生殺与奪」の権利を握ったままである。

 



2019/4/16  Chevron、米石油・ガス開発の
Anadarko Petroleum を買収 

米石油大手 Chevronは4月12日、米石油・ガス開発のAnadarko Petroleum を330億ドル規模で買収すると発表した

買収提示額は1株当たり65ドルで、4月11日終値に39%上乗せした水準。75%がChevron株式、25%が現金払いで、Anadarko株主は1株当たり現金16.25ドルとChevron 株 0.3869株を受け取る。

Anadarkoの債務150億ドル込みでの買収で、これと非支配持分の価値を加えると、企業価値は総額で500億ドルとなる。

同時期にOccidental Petroleum もAnadarkoを1株70ドル(現金と株式)で買収する提案をしていたが、Chevronに敗れた。

Occidental Petroleumの提案はChevron案よりも価格が5ドル高く、現金部分が多かった。

但し、Occidentalの提案にはAnadarko側に望ましくない条項が入っていたという。

買収により、Chevronは石油業界で3位になる。

Anadarko買収によってChevronはテキサス州とニューメキシコ州にまたがるパーミアン盆地のシェール油田の権益と生産が拡大するほか、メキシコ湾でも事業を強化できる。

Chevronは国内最大のシェール油田地帯、パーミアン盆地への投資を拡大してきたが、ブームの初期段階で機会を逃す一方、Anadarkoなどの独立系生産企業が掘削技術を開発、土地を安く借り受けたとされる。

Anadarkoは、モザンビークのLNG事業にも取り組んでいる。

Chevronは今回の取引の効果を次の通りとしている。

• 事業戦略の強化
 o Shale & Tight ガス –
最も魅力あるパーミアンのデラウェア盆地に計幅75マイルの回廊地帯を持つことになる。
 o Deepwater – Chevronの地位を強化
 o LNG – Mozambique LNG事業を入手 

• Synergies: 税引前で年間10億ドルのシナジーあり。投資を10億ドル削減できる。

• Accretive to Free Cash Flow and EPS

• 2020〜2022年に150〜200億ドルの資産売却を行い、負債の減少、株主への配当に充てる。

• free cash flowの増加で、自社株買いを 年間40億ドルから年間50億ドルに増やす。

ーーー

Anadarko の活動分野は次の通り。


 

Anadarkoはまた、Western Midstream Partners, LP の55.5%の持分を持つ。Rocky Mountains, North-central Pennsylvania、Texas にまたがって、天然ガス及びLNG・原油等の採集、処理、輸送を行っている。

Anadarkoは、モザンビークのLNG事業にも取り組んでいる。

モザンビークとタンザニアの国境を流れるRovuma川の河口と沖合に世界最大規模のガス田が発見され、開発が始まっている。

モザンビークの海底ガス田の開発は6区に分けて行われており、AnadarkoはArea 1の権益を持ち、三井物産が参加している。

  当初 現在
Anadarko (オペレーター) 76.5% 36.5%
Mitsui E&P 20%
モザンビーク国営石油会社 15% 15%
Bharat Petroleum(インド) 10%
Videocon (インド) 10%
Artumas Group(現 Wentworth Resources) 8.5%
PTT Exploration & Production (タイ)   8.5%

2013/1/10 モザンビークの天然ガス開発

Anadarkoは既に多くのLNG供給契約を締結している。
2018/2 フランス電力会社EDF 年間120万トン/15年間
2018/10 東北電力 年間28万トン/15年間
2019/2 中国海洋石油集団(CNOOC) 年間150万トン/13年間
東京ガス/と英国ガス大手Centrica 年間260万トン(2040年初頭まで)
Shell International Trading Middle East 年間200万トン/13年間

Anadarkoでは、「モザンビークは今後数十年間、世界の重要なLNGサプライヤーとなるだろう。LNG長期契約は年間750万トンに積み上がり、残りのLNG売買契約(年間450万トン)も近い将来に見込まれている」としている。

LNG能力は、Eni 主導のArea 4との共同で年産2,000万トンで、Area 1分はこのうち 1,200万トン。  

 



2019/4/17 独Merck、
米半導体材料メーカーのVersum Material を買収 

独Merckは4月12日、米半導体材料メーカーのVersum Material を買収する契約を締結したと発表した。

1株53ドルの現金払いで、負債込みの買収額は約58億ユーロ(65億米ドル)。

Versum は半導体の製造過程で使う高純度材料の大手で、Merckも半導体や液晶向けの高純度材料を手がけており、買収でカバーできる工程を広げる。

買収完了の3年後から年間7500万ユーロの統合効果を見込む。

Versum は1月に米Entegrisと経営統合することで合意していたが、Merckはこれを上回る条件を示し、Versum を翻意させることに成功した。

ーーー

米国の特殊化学品のEntegris は2019年1月28日、Versum Material を買収することで合意したと発表した。

Entegrisは半導体およびその他ハイテク産業の最先端の製造プロセスに対し、歩留まりを向上させる材料やソリューションを提供している世界有数のサプライヤーで、米国、マレーシア、シンガポール、台湾、中国、韓国、日本、イスラエル、ドイツ、フランスの世界各国に製造工場、サービスセンター、研究施設などの基幹施設を持つ。

Versum 株主は1株当たり、Entegrisの株式を1.120株受領する。計算では総額 38.3億ドルとなる。合併後のEntegrisは旧株主が52.5%、Versum株主が47.5%を所有する対等合併となる。

これに対し、Merckは2月27日、Versumに買収提案を行った。1株当たり48ドルで、債務を除く総額は52億ドルと、Entegrisとの合意額を大きく上回る。

Merckはその後、買収額を更に引き上げ、1株53ドルとした。

VersumはEntegrisに対し、対抗案の提示を求めたが、Entegrisは見直す計画は無いとし、Merckによる買収が決まった。

VersumはEntegrisに違約金を支払う。

ーーー

Versum Materials 米国の半導体材料メーカーで、2016年10月1日に分離するまでは、Air Products & Chemicals の一部門として30年以上にわたり営業していた。

材料と送達系システムの2部門から構成され、エレクトロニクスや半導体、フラットパネル・ディスプレイの市場向けに特殊材料を供給し、材料やガスの送達と流通システムを提供する。

「半導体業界に革命をもたらす次世代のCMPスラリー、超薄誘電/金属フィルム前駆体、調製洗浄剤およびエッチング用製品、デリバリー装置を供給する世界一流企業の一角を占めている」としている。

2018年の売上高は1,372百万ドルで、内訳は下記の通り。

 

Merck の事業は3部門に分かれ、2018年の売上高及び扱い製品は次の通り。

 

売上高
百万ユーロ

 
Healthcare 6,246

がん、腫瘍免疫および不妊治療領域を重点領域に、世界の先進的な医薬品や医療機器

Life Science 6,185

バイオサイエンス基礎研究から創薬、医薬品製造まで
研究室の純水・超純水装置システムや、薬剤を製造するための遺伝子編集ツール、抗体、細胞株、エンドツーエンドのシステムなど

Performance Materials 2,406

液晶やOLEDなどの「ディスプレイ用材料」、
さまざまな製品に彩りを与える「パール顔料」や化粧品用原料、
エレクトロニクス業界に貢献する半導体製造用の特殊化学品、
次世代エネルギー分野を支える「新規材料」のグローバルサプライヤー

Total 14,836  

Performance Materials 部門は最も小さい。半導体関連製品も多く、Versum買収で強化を図る。

ーーー

Merck KGaA の起源は1668年にフランクフルトの南のDarmstadtFriedrich Jacob Merckがエンゼル薬局を創業したことに始まる。

1891年、Merck 一族のGeorge Merckが米国に子会社 Merck & Co.を設立した。
この会社は第一次世界大戦で敵国企業の子会社として米国政府に接収され、1917年に独立した。接収後は両社は別会社である。

2006/3/23 2つのMerck社


2019/4/18 AppleとQualcomm、知財紛争で全面和解
 

AppleとQualcommは4月16日、Appleの契約メーカー(Contract manufacturers) との間のものも含めて、すべての訴訟を取り下げることで合意した。

合意内容にはAppleからQualcommへの一時金及ぶロイヤリティの支払いも含まれるが、金額は公表されていない。
また両社は、4月1日から6年間のライセンス契約(+2年延長オプション)に加えて、複数年のチップセット供給でも合意した。

付記

米Qualcommは5月1日、1〜3月期決算発表の中で、米Appleとの特許紛争の和解により、第3四半期にAppleからキャッシュで45億〜47億ドルの支払いを受ける見込みだと発表した。
この金額は、和解金とライセンス契約のライセンス料の一部を含むという。

Qualcomm の発表:

Direct license between Apple and Qualcomm : six years with two-year option to extend
   ・ Effective as of April 1, 2019
   ・ Apple will pay royalties to Qualcomm
Settlement includes a one-time payment from Apple to Qualcomm
Multi-year chipset supply agreement
All worldwide litigation will be dismissed and withdrawn. including claims involving Apple's contract manufacturers
 
Contributes to increased stability for licensing business
Reflects value and strength of Qualcomm's intellectural property

Apple側の発表は、事実関係のみ。

to dismiss all litigation between the two companies worldwide
a payment from Apple to Qualcomm.
a six-year license agreement, effective as of April 1, 2019, including a two-year option to extend
a multiyear chipset supply agreement.

iPhoneの5G対応に遅れが生じる中、Qualcommからの半導体調達を再開するために、Appleが特許使用料の支払い条件をめぐって歩みよった可能性がある。

Qualcommは2018年2月発表の5Gモデム「X50」の第二世代の「Snapdragon X55」を本年2月に発表した。今回の和解により、Appleは5G対応のiPhoneを発売できることとなる。

今回の和解を受け、Qualcommに代わってAppleにモデムを供給しているIntelは同日、5G対応のモデムの開発から撤退すると発表した。

ーーー

これまで、QualcommがAppleにiPhoneの通信機能をつかさどる半導体モデムチップを供給するという協力関係にあった。

世界シェア首位のQualcommは長年、Appleに対し独占的にこの半導体を供給してきた。
QualcommはAppleに対して半導体の代金だけでなく、それに付随する特許使用料の支払いも求めていた。

QualcommはAppleのContract manufacturer にライセンス料の支払を求め、Appleはそれを彼らに支払っていた。

2017年1月、Appleは米国でQualcommを提訴した。連邦取引委員会(FTC)は、2017年1月に、モデムチップセットの不正なライセンス供与に対する裁判所命令を求め、Qualcommを提訴したが、Appleはこれを受け、過去の取引条件の見直しを迫ったもの。Contract manufacturer に特許料を支払わないよう指示した。

「自社のチップに対して、他社の5倍以上の不当に高いライセンス料を請求している」
「Qualcommが不正なライセンスモデルを構築し、特許技術ごとではなく、販売する製品の単価に応じたライセンス料を求めてくる」
「契約に基づく約10億ドルの払い戻しが滞っている」と主張した。

QualcommはAppleのContract manufacturer に端末卸売供給価格の約5%を特許使用料として要求している。
AppleはQualcommがチップ価格と特許使用料を二重に請求していると主張、「2013年から支払った特許使用料90億ドルを返してほしい」とした。

韓国公正取引委員会は2016年12月に、「不公平なビジネスモデル」で独占的地位を築いたとして、Qualcommに対して約10億ドルの課徴金を支払うよう命じた。
この調査にAppleが協力したことに対する報復として、QualcommはAppleへの払い戻しを留保した。

QualcommはAppleの主張を否定するとともに、特許侵害があったとして逆提訴した。

Appleは同年4月、Qualcommに対し、Qualcommとの紛争が解決するまでは、自社のContract manufacturersに対し、Qualcomm製品へのライセンス分の支払いを行わないと通知した。

Qualcommは同年7月、 米国際貿易委員会(ITC)に苦情を申し立て、一部の「iPhone」を含む複数の製品について、米国への輸入を禁止するよう求めた。

AppleとQualcommは世界で80件の訴訟合戦を繰り広げている。Qualcommは中国やドイツで iPhoneの一部販売の差し止め命令を勝ち取っている。

2018年12月3日、Apple はQualcommとの和解を拒否した。2019年4月15日からカリフォルニア州サンディエゴで特許料をめぐる裁判がスタートする予定であった。

2019年3月には、ITCが2件の審理に対する裁定を下した。

ITCは、バッテリー節約技術に関するQualcommの特許を無効とした。Appleはこの件に関して iPhoneの輸入禁止を免れた。

この数時間前にはITCの別の判事が、Appleによるコンピューティングデバイスの電源管理に関する特許1件の侵害を認定し、問題の部品を含むiPhoneの一部旧モデルを米国で販売禁止にするべきだとの判断を示した。この最終決定は7月の予定であった。

ーーー

2社の関係は大幅に悪化、Appleは2016年以降、Qualcomm製モデムの搭載比率を引き下げ、代わりにIntel 製モデムを採用している。2018年秋の新モデルからはQualcomm製の製品を排除した。
Appleがモデムを自社開発しているといううわさもあった。
これにより、Qualcommの売上高は減少した。

他方、AT&T、Verizon、Samusung電子等が相次いで5G 対応スマホを発売する中、Qualcommから5Gモデムの供給を受けられないAppleは発売できないでいる。

Intelはまだ5Gモデムを発表していない。HuweiのCEOはこのたび、「我々はAppleに対しオープンだ」と述べたが、Huawei製の採用は見込めない。

Appleは最近Samusung電子に5Gチップ購入の意向を打診したがSamusung電子は供給量不足を理由に断った。(中央日報)

コンサルタントは「Appleが来年も次世代 iPhoneを発売できないならば米国をはじめとする世界のスマートフォン市場で競争力を失うだろう」と話している。

現在の5Gスマホはほぼ全て、Qualcommの半導体とGoogleのOSのAndroid を使っている。
このQualcommとGoogleが「反Apple」で距離を縮めている。

本年2月のQualcommの5G向けの半導体についての記者会見に、ゲストとしてGoogleが参加し、「Qualcommと活力ある5Gの経済圏をつくっていくことに喜びを感じる」と述べたと報じられている。

Appleとしては、iPhoneの5G対応を早期に進めるためにも、Qualcommとの和解を急ぐ必要があった。


2019/4/19  米連邦通信委員会、中国移動(China Mobile)の参入申請を却下へ 

米連邦通信委員会(FCC)は4月17日、中国国有通信最大手、中国移動(China Mobile)の米国参入(2011年申請)を認めない方針を明らかにした。

FCCのPai委員長は声明で、China Mobileが米国で通信事業に参入すれば「重大で深刻な安全保障上のリスク(substantial and serious national security and law enforcement risks)となることは明らかだ」と述べ、通信事業免許の申請を却下する方針を明らかにした。5月9日の会合で正式決定する。 (付記 正式決定)

中国政府のスパイ活動などを念頭に安全保障上のリスクが大きいと判断した。

ーーー

China Mobile は2011年9月1日、米国と海外をつなぐ通信サービス事業の免許を申請した。米国と外国との国際電話サービス提供を望んでおり、米国内でモバイルサービスを展開するつもりはないとしていた。

これに対し米国当局は中国政府によるサイバースパイを懸念した。FBI、国土安全保障省、司法省、国防総省がTeam Telecom を編成し、延々と検討を続けた。
China Mobileが米国の通信網とつながれば、中国政府がスパイ活動に取り組んだり、大規模障害を仕掛けたりするリスクを考慮したという。

米商務省の電気通信情報局は2018年7月2日、連邦通信委員会(FCC)に対し、国家安全保障上の理由からChina Mobile による参入申請を却下すべきだと勧告した。

China Mobile の申請は「容認できない国家安全保障と法執行上のリスクを突き付ける」と米情報機関などの当局者が結論付けたとし、China Mobile は「完全国有会社」であり、「中国政府に利用・操作されやすく、影響を受けやすい」と指摘した。

「世界の通信市場の統合深化に伴い、さまざまな悪質な行為が頻繁に行われているセクターにリスクと脆弱性が生じている」と説明。中国政府は China Mobileが築くつながりを利用して、経済スパイや情報収集を行う可能性があると指摘した。

中国のスパイ活動を懸念する米国側は、中国が米国内にいる中国市民を監視することも警戒している。

FCC はこれを検討するとしていた。

 


2019/4/20 Brexit、「合意なき離脱」回避の圧力 

欧州委員会のSecretary-GeneralのMartin Selmayrはこのたび、TVで述べた。

はっきりさせよう。合意なき離脱の場合、アイルランドとの国境沿いに hard border (物理的壁)が設けられる。

これは最悪のシナリオだ。

アイルランドにとって非常に厳しい状況だ。だから、これを避けるため、全てのことをする必要がある。

EUは、合意なき離脱は国境の壁につながり、国境の壁は北アイルランド紛争の再発につながるため、絶対に避ける必要があるとし、離脱協定の締結を迫っている。

 

米国民主党のNancy Pelosi下院議長は今週、議員団を率い、英国とアイルランドを訪問した。何を議論したのかとの質問への答えは、“Brexit, Brexit, Brexit”。

議長はアイルランド共和国と北アイルランドの国境を訪問し、厳しい発言をした。

英国が合意なき離脱を行い、Good Friday Agreement (北アイルランド紛争を終結させた1998年4月10日のイギリスとアイルランドの間の協定)になんらかの害があれば、米英貿易協定を締結しない。
("That's just not on the cards if there's any harm done to the Good Friday accords.")

議長は、メイ首相、保守党の離脱強硬派、労働党のCorbyn党首らに対し、「英国の離脱でGood Friday Agreementとして知られる北アイルランドの平和協定が弱まるなら、英国が米国と締結することを求めている貿易協定を米議会はブロックする」と警告した。

Good Friday Agreementについては、Brexitの問題の根源(続き)−「北アイルランド国境問題」

ーーー

北アイルランドのLondonderry で4月18日夜に暴動が起き、取材していた女性記者が流れ弾に当たり死亡した。

暴動はキリスト教の祝日Easter を週末に控える中で起きた(4/19 がGood Friday休日、4/21がEaster:復活祭)。

北アイルランドのEasterは、アイルランド独立につながった1916年の「イースター蜂起(Easter Rising)」をカトリック系住民が祝うとともに、英国の統治に抗議する日となっている。警察は、カトリック系過激派アイルランド共和軍(IRA)から分離した新IRAによる犯行とみて捜査している。

合意なき離脱は国境の壁につながり、国境の壁は北アイルランド紛争の再発につながる という懸念は現実的である。

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英政府は本年3月13日、合意なき離脱となった場合、アイルランドと北アイルランドの厳格な国境管理を回避すると表明した。

合意なき離脱となった場合、アイルランドから北アイルランドへの商品の輸入について新たな検査や管理を導入しない。企業の自己申告に頼り、国境を越えた取引を記録するためアプリベースのシステムを活用するという。新たな輸入関税制度は適用しない。

この計画は一時的かつ一方向のもので、長期的な対策については、EU・アイルランド政府と早急に協議を開始するとしている。

アイルランド首相も、合意なき離脱の場合でも、国境を越えた貿易の検査は避けられると期待していたが、EUは、監視が少しでも欠けたら欧州の単一市場に大きな穴が開くことを懸念し、この方針を退けた。

欧州側は、合意なき離脱に備え、アイルランドには国境を越えた貿易の検査体制を準備すべきだと圧力をかけている。アイルランド・英国間の貿易に対して大規模な検査体制を敷く必要があるとする。

2019/4/6 合意なき離脱の場合のアイルランドの扱い 

 

EUは合意なき離脱の場合は、英国の北アイルランドとEUのアイルランド共和国との間に国境管理が必要だと主張する。

EUとしては非EU国との間で、関税チェック、品質チェック等の幅広いチェックが必要である。

国境でのチェックは、単一市場、関税同盟の統合性("integrity")を守るために必要である。

安全でない製品やアンフェアな競争をする製品がEUに入ることを望まない。

食品チェックは厳密で、チェックは「輸入場所のごく近くの検査場("in the immediate vicinity of the point of entry")ですることとなっている。

食品チェックと動物のチェックが特に問題となる。

EU側は離脱交渉で、単一市場を守ることがEUにとってキイとなる目的であると繰り返し強調してきた。


 


2019/4/22 BP主導のコンソーシアム、カスピ海のAzeri Central East 海底油田への60億ドルの投資決定

BPは4月19日、同社主導のAIOC (the Azerbaijan International Operating Company) がカスピ海のAzeri-Chirag-Gunashli (ACG) 油田コンプレックスのAzeri Central East 油田の開発を決めたと発表した。

日量10万バレルで、2023年に生産を開始し、操業期間中に合計3億バレルをの生産する。

投資額は60億ドルで、既存のCentral Azeri platformと East Azeri platformの間の水深140mの地区にplatformと採掘設備をつくる。既存のACGパイプラインに接続し、陸上のSangachal Terminalに繋ぐ。

 


BPは2016年12月23日、AIOC (the Azerbaijan International Operating Company) がアゼルバイジャンで操業中のカスピ海で最大の海底油田 Azeri-Chirag-Gunashli (ACG) の開発を2050年まで(その後、2049年12月31日までに変更)続けることで、同国国営石油会社 SOCAR (the State Oil Company of the Republic of Azerbaijan) と基本合意したと発表した。2017年に契約締結した。

既存の契約は1994年9月に30年間の期限で締結された。

ACG地区の開発は1994年の契約締結以降、順次行われ、これまでに合計で360億ドル以上が投資されている。

・ 1997年にChirag油田が生産開始(Early Oil Project )
・ 2005年にCentral Azeri 油田の生産開始(Azeri Project Phase 1)
・ 2006/10にWest Azeri、2006/10にEast Azeri が生産開始(Azeri Project Phase 2)
・ 2008/4にDeepwater Gunashli が生産開始(Azeri Project Phase 3)
・ 2014/1 にWest Chiragが生産開始(Chirag Oil Project)

今回のAzeri Central East (ACE) project は契約延長後の最初の計画である。

ACGは super-giant 油田で、これまでに35億バレル(474百万トン)以上の生産を行った。Bakuの近くのSangachal Terminalから、主にBTC(Baku-Tbilisi-Ceyhan)パイプラインを通して欧州に輸出される。
2018年の生産量は平均して日量584千バレルであった。

権益保有者は下記の通り。

  当初 延長後 参考
BTC Pipe Line
BP 35.78% 30.37% 30.10%
Chevron 11.27% 9.57% 8.90%
SOCAR(アゼルバイジャン国営石油会社) 11.65% 25.00%
国際石油開発帝石(INPEX) 10.96% 9.31% 2.50%
Equinor(旧称 Statoil ) 8.56% 7.27% 8.71%
ExxonMobil  8.00% 6.79%
TPAO (トルコ) 6.75% 5.73% 6.53%
伊藤忠商事 4.30% 3.65% 3.40%
ONGC Videsh(インド) 2.72% 2.31% 2.36%
Azerbaijan (BTC) 25.00%
Eni  5.00%
TOTAL  5.00%
CIECO  2.50%

2017/9/19 国際石油開発帝石、カスピ海ACG鉱区の権益期限延長 

 


2019/4/23   ナイジェリア油田の贈収賄事件

ナイジェリアの油田の開発権を巡る贈収賄事件で、欧米企業に対する捜査が拡大している。同政府から開発権を得た石油大手の Shell とイタリアのEni、送金に関わった米金融大手JP Morgan Chaseに対する訴訟が英国やイタリアなどで進む。

問題の取引は、Shell とEniが2011年にナイジェリア政府から買い取った油田開発権で、2社は政府に約11億ドルを支払ったが、資金洗浄で有罪判決を受けているDan Etete 元石油相側に送金され、政府関係者に賄賂として支払われた疑いがある。送金にはJP Morganのロンドン支店の口座が使われた。

イタリアの検察は賄賂に使われると知りながら11億ドルを支払ったとして2社とShellの元幹部、Eni のCEOなどを刑事訴追した。
(日経 2019/4/20)

 

問題となったのは、アフリカ最大の油田の一つとされるOPL245 (Oil Prospecting License 245) である。埋蔵量は90億バレルとされる。


source: https://www.petroleum-economist.com/articles/politics-economics/africa/2019/eni-and-shell-face-new-nigeria-action

 

2011年にShell と Eni が権益を取得し、政府に13億ドルを支払ったが、それ以前に下記のような複雑な経緯があった。

1998 当時のDan Etete 石油相が OPL 245 の権益を20百万ドルで自分が所有する企業 Malabu Oil and Gas に与える。
(Malabuは実際には20百万ドルのうち、2百万ドルしか払っていない)
1999 政権交代
2001 Malabu Oil and Gasは権益の40%をShellに売却。
政府はMalabu Oil and Gasへの権益売却自体を取消し、Malabuは提訴
2002 政府は権益100%を210百万ドルで Shellに売却、生産分与契約を締結。(実際の支払いは1百万ドルだけ)
2006 政府がMalabu Oil and Gasと合意、権益を210百万ドルで渡す、Shellが提訴
2007 Etete元石油相、フランスでMoney-launderingで有罪
2009 Etete の有罪確定
Etete、Shellと会合
2011 ShellとEni、政府と新契約締結、13億ドルを支払い。 (両社から1,092百万ドル、Shellから当初分の207百万ドル)
政府は1,092百万ドル分をMalabu Oil and Gasに対し、契約取消の代償として支払い。

問題は、Malabuへの支払いである。賄賂であると見られた。

2012年にナイジェリア政府のEconomic and Financial Crimes Commission がMalabuの調査を開始した。
2014年にナイジェリア議会が法律違反としてOPL245の取引のキャンセルを議決した。

2013年に英国の Proceeds of Corruption Unit が調査を開始した。

2014年にイタリアのミラノの司法当局がEni のCEOと前CEOを贈賄容疑で調査を開始し、仲介者(ナイジェリア人の Emeka Obi とイタリア人 Gianluca Di Nardo)に渡った195百万ドルを凍結した。

2018年9月、イタリアの裁判所は仲介者2人を懲役4年とし、195百万ドルを没収する判決を下した。 (2人はイタリア法のfast-track trialを求めたもので、刑は1/3になる。)

2019年4月、ナイジェリアの裁判所はDan Etete元石油相、Mohammed Adoke 元司法相とEniの部長の逮捕状を出した。 801百万ドルの送金はMohammed Adokeの指示で行われたという。

下記の支払い関係が明らかになった。

Source: https://trwstockbrokers.wordpress.com/2017/12/17/exclusive-malabu-scandal-nigeria-sues-jp-morgan-demands-875-million/

ShellとEniはOPL 245 の権益を50/50で持つが、Shell の支払いが少ないのは、前の契約の207百万ドルと支払済みの開発費535百万ドルがあるため。

Shell とEniは13億ドルのうち、1,092百万ドルをロンドンのJP Morganのナイジェリア政府の口座に振り込んだ。

この1,092百万ドルのうち、801百万ドルはDan Etete 元石油相の Malabu Oil and Gas の口座に振り込まれた。

そのうち、532百万ドルは当時のGoodluck Jonathan大統領の親友で "super-dealer" とされる Abubakar Alyu の会社に再振り込みされ、大統領や政府首脳に渡った。プライベートジェットや装甲車などの支払いにも充てられた。 元検事総長(2006年に権益をShellからMalabuに移すのを承認)にも10百万ドルが払われた。
EniとShellの幹部にも50百万ドルが渡ったとされる。Eniの役員の自宅に現金で運ばれた。

Dan Etete 元石油相らには269百万ドルが支払われた。

仲介者は頻繁にEniの幹部とコンタクトしていた。

裁判長は、「EniとShellの経営陣は11億ドルの一部がナイジェリア政府要人への賄賂として使われることを十分認識していた」と結論づけた。

イタリアの検察は賄賂に使われると知りながら11億ドルを支払ったとしてShell とEni 及び両社の関係者を刑事訴追した。
訴追されたのは、Eniの現CEO、前CEO及びChief Operations and Technology Officer、Shellの4人の責任者、Shellに雇われた2人のMI 6 元部員。

Shell も Eniも ナイジェリア政府と交渉し決めたものとし、贈賄を否定している。但し、Shellは2009年にEteteと会ったことは認めている。5月にも幹部らが証言する。

Signature bonusとしてはShellから前回分の未払い分相当の207百万ドルを支払いながら、別途1,092百万ドルを両社から支払ったのを、どう説明するのだろうか。契約書等はどうなっているのだろうか?

オランダ検察もShellに対する刑事訴追を準備している。

責任追及は送金取引を扱ったJP Morganにも波及した。同行は2011〜13年にかけて801億ドルをDan Etete 元石油相の Malabu Oil and Gas の口座に送金した。
Etete 元石油相は2007年にフランスで資金洗浄の有罪判決を受けており、ナイジェリア政府関係者の指示でJP Morganが2011年にスイスとレバノンの銀行あてに送金した際、2行はコンプライアンス上の懸念などを理由に受け取りを拒否した。
ナイジェリア政府は、これを根拠に、JP Morganが送金をすべきでなかったと主張、政府資金の不正流出につながったとして同行に875百万ドルの損害賠償を求めた。

JP Moraganは法的及び規制上の義務を順守しているとして賠償請求の棄却を求めたが、英高等法院は2月、同行の要求を退けた。



2019/4/24   米、イラン原油全面禁輸へ 日本などへの免除を5月に撤廃
 

石油連盟の月岡隆会長(出光興産会長)は1月24日の記者会見で次の通り述べた。

日本などを禁輸の適用除外としたが、期間は最長180日としており、5月上旬にも期限が来るとみられ、現状では一定期間の輸入となる見通し。

運用上はイランでの3月積みぐらいがピークになってくる。3月積みで日本での荷揚げが4月となり、支払いが終わる形であればそこまでの輸入は可能だ。

昭和シェル石油と富士石油が既に輸入を再開した。今後も各社が契約に基づいて引き取りを行うと認識している。

出光も決まった契約の数量は履行したい。残っている部分はできる限り、この間に引き取りたい。

日本政府に対して米国との協議で禁輸の適用除外の継続を求めるよう要望している。引き続き適用除外が認められれば4月積みも行っていくだろう。

 



2019/4/25 テロ対策施設未完成の原発、運転停止へ 


原子力規制委員会は4月24日の定例会合で、原発に設置が義務付けられているテロ対策施設が期限内に完成しない場合、 期限の延長を認めないことを決めた。原則として原発の運転停止を命じる。

テロ対策施設は「特定重大事故等対処施設」と呼ばれ、2011年の福島第一原発事故後にできた新規制基準で設置が義務付けられた。
原子炉から離れた場所に建て、遠隔制御で原子炉を冷やす設備を備える。原子炉が航空機の衝突などによる攻撃を受けても、電源や冷却機能などを失わないようにする。

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原子力規制委員会は2013年6月19日、福島第 一原発事故の教訓を踏まえた新しい規制基準を決定した。7月8日に施行する。

テロ対策などを盛り込んだ「過酷事故対策編」、既存設備の安全対策を強化する「設計基準編」、活断層調査の強化や津波防護策を定めた「地震・津波編」の三つに大別される。

基準には、最新の安全対策を義務付ける「パックフィット制度」が導入され、既設原発も対象になる。

過酷事故対策編 「特定安全施設」(事故の際、中央制御室の代替として機能) 5年間猶予
「緊急時対策所」(前線本部となる免震重要棟) 仮設も当面可能(機能を満たせば)
フィルター付きベント装置 加圧水型原発は現状でも当面容認
電源車やポンプの配備  
航空機墜落などのテロ対策 法施行から5年猶予→審査終了後5年
非常用バッテリー(3つ目) 5年猶予
設計基準編 ケーブル難燃化(火災対策)  
活火山、竜巻対策の強化  
冷却装置、電源設備の多重化、多様化  
地震津波対策編 最高の耐震性  
防潮堤、水密扉  
活断層の調査対象を必要に応じて「40万年前以降」までさかのぼって拡大  
最高津波の高さ(「基準津波」)に応じた安全対策を実施  
活断層直上に重要施設の設置を認めない 日本原子力敦賀2号を認定

2013/6/21  原子力規制委員会、原発新基準を決定 

テロ対策施設の設置期限は、当初は新基準の施行から5年の2018年7月だった。
規制委は2015年、原発本体の審査が長引いていたことをふまえ、「工事計画の審査終了後 5年」に先延ばしを決めた。

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テロ対策施設をめぐっては、大がかりな工事が必要で、これまでに設置できた原発はない。

関西、四国、九州の電力3社が4月17日に、6原発12基で設置期限を超える見通しを示した上で、規制委に期限の延期などを求めた。
九電川内や玄海、関電高浜、大飯、美浜、四電伊方が期限を1年〜2年半ほど超える見通しという。

規制委は期限の延長を認めないことを決めた。設置期限に間に合わなければ、2020年以降に順次、運転停止することになる。

更田豊志委員長は「規制の根幹にかかわる。利用停止は明確にしたい」と述べた。

再稼働済みの全9基が停止を迫られる可能性が出てきた。

    認可 期限 遅れ ◎稼働中
九電 川内 1号 2015/3/18 2020/3/17 約1年 ◎   → 2020/3/16 停止
2号 2015/5/22 2020/5/21 ◎   → 2020/5/20 停止
関電 高浜 3号 2015/8/4 2020/8/3 約1年
4号 2015/10/9 2020/10/8
四電 伊方 3号 2016/3/23 2021/3/22 約1年
関電 高浜 1号 2016/6/10 2021/6/9 約2年半 40年超 工事要
2号
関電 美浜 3号 2016/10/26 2021/10/25 約1年半 40年超 工事要
関電 大飯 3号 2017/8/25 2022/8/24 約1年
4号
九電   玄海 3号 2017/8/25 2022/8/24 未定
4号 2017/9/14 2022/9/13 未定

付記

九州電力は2020年3月12日、川内原子力発電所1号機の定期検査を16日から開始すると発表した。特重施設設置期限が17日に迫ることから定検を前倒しで実施する。
特重施設の完成後、使用前検査を経て12月の再稼働を目指しており、停止期間は約9カ月と見込む。特重施設の完成遅れで停止するのは全国初。

付記
同2号機は2020年5月20日、停止。2021年1月26日の稼働を目指す。


2019/4/25     スコットランド首相、独立問う住民投票再実施 目指す

スコットランドの自治政府のNicola Sturgeon 首相は4月24日、2021年までに独立の是非を問う2回目の住民投票を行う準備を開始する意向を示した。

首相はスコットランド議会で「EU離脱をめぐる混乱を受け、独立を求める声はこれまでになく強まっている。Brexit か、独立した欧州国家になるかという選択の機会を、この議会の任期中に提供すべきだ」と述べ、英国がEU を離脱した場合、英国からの独立の是非を問う2度目の住民投票を2021年5月の次期自治議会選前に実施したい考えを表明した。

住民投票実施の法案を年内に作成する。住民投票実施にはいずれ英政府の承認が必要になるとしている。

今年10月末まで期限が延期されたEU離脱計画に影響を及ぼす可能性もある。

ーーー

スコットランド王国は1707年合同法により、イングランド王国に統合され、Kingdom of Great Britainとなった。
(1801年にアイルランド王国と合同し、United Kingdom of Great Britain and Ireland となった。1922年にアイルランド自由国が分離、連合王国は1927年にUnited Kingdom of Great Britain and Northern Irelandに改称した。なお、ウェールズ公国は13世紀にイングランドの支配下に置かれ、
ウェールズはイングランド王国の一部となった。

現在、スコットランドとウェールズ、北アイルランドには議会が設置され、 権限の委譲による自治権を有している。

Nicola Sturgeon女史は1970年生まれで、2014年よりスコットランド国民党首で自治政府首相。

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スコットランドの独立を問う最初の住民投票は2014年9月18日に実施された。

スコットランドでは独立志向が高まり、ブレア政権時代の1997年に独自の議会設置の是非を問う住民投票が可決された。

ブレア内閣はスコットランド住民の独立志向を抑えるため、1999年にスコットランド議会を設置して、中央政権の権限を大幅にスコットランド自治政府に移譲した。

スコットランドの独立志向は一時的に抑えられたかに見えたが、2011年5月のスコットランド議会選挙でスコットランド独立を公約に掲げるスコットランド国民党が議会の過半数を占める大勝利を収め、党首が自治政府の首相に就任した。

2012年10月にイギリスのキャメロン首相と自治政府首相の会談で住民投票の実施が決まった。

住民投票では55%が独立に反対し、否決された。但し、有権者の84.59%が参加するなどスコットランド人の独立問題への関心の高さが示された。

 

2016年のBrexit 国民投票ではスコットランドは62%が離脱に反対した。

Brexit の決定を受け、EU残留を主張する独立支持派の間で独立の住民投票の再実施を求める声が高まっている。

もし、スコットランドが独立し、EUに帰属すると問題は大きい。

国境管理(モノ、ヒト)、通貨、北海原油の帰属、 安全保障(原子力潜水艦基地はスコットランドにある)、・・・


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北アイルランドも今後、英国からの離脱=アイルランドとの統合の問題が出てくる。北アイルランドもBrexit国民投票で反対に回っている。

 

1998年4月10日、イギリスとアイルランドの間でベルファスト合意(聖金曜日協定)が締結された が、下記の項目が含まれている。

・北アイルランド地方議会の新設=英国政府の直轄統治から地方自治へ

・イギリスとアイルランド共に北アイルランドの領有権を主張しない。アイルランドは北アイルランド領有をうたう憲法を修正

・北アイルランド住民の過半数の合意なしに北アイルランドの現状を変更しない

・北アイルランドの将来の帰属は北アイルランド住民の意思によって決定される。

・帰属が確定するまではプロテスタント、カトリック系政治勢力が共同参加する自治政府によって統治される。

両国は北アイルランドの住民が国籍を、自身の選択で、アイルランド、英国、又は両方とすることを認める。将来の北アイルランドの帰属がどうなるかに関係なく、英国とアイルランド両方の国籍を持つことを認める。


北アイルランドの人口構成は、プロテスタント系が50%強、カトリック系が40%半ばと拮抗しているが、
カトリック系の方が出生率は高いため、北アイルランドは将来的にアイルランドへ帰属を変更する可能性が高い。

2019/2/11  Brexitの問題の根源(続き)−「北アイルランド国境問題

 



2019/4/26 韓国による我国水産物輸入制限に関するWTOパネル上級委員会報告書 

世界貿易機関(WTO)は4月11日、韓国による水産物の輸入禁止は不当として日本が提訴している問題で、韓国の措置を妥当とする最終判決を下した。

韓国は2011年3月の福島第一原発の事故後、放射性物質の漏出を理由に福島や岩手など8県産の水産物の輸入を禁止、さらに水産物以外の日本産食品の検査を強化するなど段階的に規制を広げた。

日本は科学的根拠がないとして撤回を求めたが、韓国が拒否したため、2015年にWTOに提訴した。

第一審にあたるパネルは2018年2月、輸入禁止は不当な差別として韓国に是正を勧告した。
韓国はこの判決を不服として上訴した。

日本政府は勝訴を確信しており、逆に韓国は敗訴を覚悟し、対応を検討していた。

しかし、今回の最終判決はパネルの判決を覆した。

WTOの紛争処理は二審制のため「最終審」の判断となる。上級委の判断は30日以内にWTOで正式に採択され、確定する。
韓国が禁輸を是正する必要はなく、日本が韓国に対し関税引き上げなどの対抗措置を取ることもできない。

 

原発事故後、多くの国が日本産食品の輸入を規制した。一時は最大54カ国・地域にのぼり、2019年3月時点でもアジアを中心に23カ国・地域が規制を続けている。
特に中国は東京や千葉、福島などのすべての食品の輸入を停止するなど、厳しい措置を取っている。

付記

米国は2021年9月22日、福島原発事故に伴う日本産食品(福島原産のコメ、原木シイタケなど35品目)の輸入規制を撤廃した。

FDA発表:
Now, after an extensive analysis of Japan’s robust control measures that include decontamination, monitoring and enforcement; after reviewing the results of 10 years of sampling food products from Japan; and after determining a very low risk to American consumers from radioactive contaminated foods imported from Japan, FDA has decided that the Import Alert #99-33 is no longer necessary to protect public health and therefore should be deactivated.

残るのは中国、香港、マカオ、台湾、韓国

ーーー

韓国の日本産品に対する輸入制限は次の通り。

    対象県 対象産品  
2011 追加テスト要件 全都道府県 全農水産物、加工食品、食品添加物、健康食品 出荷毎に、日本輸出前、韓国輸入時、韓国販売時にそれぞれセシウム含有量を計測し、一定量以上なら追加的に他の放射線核種の試験を課すか、あるいは輸入を禁止する。
2013年に対象産品を追加し、一部基準値を厳格化した。
2013 全水産物および畜産物
2012 産品別
禁輸
福島 スケトウダラ 後に2013年分に吸収
青森、岩手、宮城、福島、茨城 マダラ
2013 青森、岩手、宮城、福島、栃木、群馬、茨城、千葉 水産物28種類(スケトウダラ、マダラ、キンメダイ、イワシ、クロマグロ、ホタテ等)  

WTO協定附属書IAの衛生植物検疫(SPS)協定では次の通りとしている。

十分な科学的根拠を有し、適正な危険評価に基づく措置の導入を求める(2条2項、5条1項)。
その措置も国際貿易に対する不当な差別や偽装した制限となってはならず、不必要に貿易制限的であってもならない(2条3項、5条5項・6項)。

科学的証拠が不十分な場合でも、(2条3項の科学的証拠の要求の例外として)暫定的なSPS措置を取ることを許す(5条7項)。

我が国は事故直後の2011年4月の日中韓貿易相会合で解除を要請し、WTOでも2013年10月以来累次のSPS委員会で撤回要求を行なったが、解決を見なかった。

2015 年5月に本件をWTO紛争解決手続へ付託し、一連の措置のSPS協定違反を主張した。

第一審と第二審の判断の概要は以下の通り。

1) 暫定的なSPS措置かどうか(5条7項)

 第一審

海洋へのセシウムやヨウ素の流出が確認でき、対象産品の放射線含有の危険性を評価するのに十分な科学的証拠が揃っていた。
韓国は全ての措置についてその後追加的な情報に基づく見直しを行わなかった。
従って、韓国の措置は暫定措置ではない。

 第二審:無効

日韓双方とも、5条7項を取り上げていない。一審判断は付託された問題を検討するパネルの責務を踰越しており、無効。

2)   貿易制限的かどうか(5条6項)

5条6項は、「適切な保護の水準(ALOP」を達成するために必要な以上に貿易制限的であってはならないと定める。

韓国はこれを、食品摂取の1人あたり線量1mSv/年を上限としつつ、合理的に達成可能な出来るかぎり最低限の水準、と主張した。

日本は、代替措置としてセシウム含有100bq/㌕超の産品を排除すれば、セシウムおよびその他放射性核種による汚染につき韓国のALOP (1mSv/年) を達成できるので、韓国の措置は必要以上に貿易制限的であると主張した。

 第一審:貿易制限的である。

韓国の「合理的に達成可能な出来るかぎり最低限の水準」はALOPとしては不明確であるとし、措置の内容や各種証拠から1mSv/年を韓国のALOPと認定した。

2013年以降日本産品のセシウム含有が100bq/㌕を超えることは皆無であり、また以後著しく減少していることを認め、更にセシウムがその水準であれば韓国が懸念するストロンチウムおよびプルトニウム含有もコーデック基準値以下の安全なレベルと推定する日本の手法も統計上合理的であると認定した。

実際に福島で食べられている食事あるいは全て日本産海産物を使用した食事を食べ続けると仮定する慎重な評価手法に従っても、韓国のALOP(線量1mSv/年)は達成可能であるとも認定した。

この代替措置は経済的・技術的に実行可能である。

このような代替措置がある以上、少なくとも2013年以降韓国の一連の措置はSPS協定5条6項に反して必要以上に貿易制限的である。

 第二審:第一審判断破棄

韓国のALOPが「@通常の環境における食品の放射能レベルに維持すること、よってA1mSv/年を上限として、B合理的に達成可能なできるかぎり最低限に食品の放射能汚染を維持すること」と認める。

第一審はAのみに焦点を当てている。

日本が提案する代替措置(セシウム100Bq/s以上の食品のみ輸入制限、これで1人当たり年間被ばく量を1mSv/年以下にできる水準)が韓国の複合的なALOPを達成できるか否かを検討する責務があるが、代替措置が1mSv/年を著しく下回る被ばく量を達成できる、としか判断しなかった。

5条6項においてALOPの設定はSPS措置を取る加盟国の専権でもあり義務でもある。
ALOPは必ずしも定量的な基準でなくともよいが、SPS協定の適用を妨げないように、十分に詳細に定められなければならない。

加盟国による提示と実際の措置に反映されるALOPが異なる場合、証拠に基づき理由を示してALOPを決定する必要があるが、その点を判断していない。

以上のことからパネルの判断を破棄する。

3) 韓国の措置は日本産水産物に対して差別的か (2条3項)

 第一審:差別的である

過去の大規模放射線事故(たとえば1986年のチェルノブイリ原発事故)によって放出され、半減期が長いセシウムやストロンチウムが世界に広く残留しており、依然として全世界で食品汚染の可能性があった。
その汚染レベルは2013年以降の日本産食品と変わらない。

しかるに韓国は日本産品にのみ禁輸や追加的な検査を要求している。
日本産品の非常に低い放射線量に鑑みて、この差別には食品中の基準値以上の放射性核種から韓国民を守る規制目的と合理的に関係が見出せない。

 第二審:第一審判断破棄

「同一又は同様の条件の下にある加盟国の間」の差別を証明する2条3項の下では、関連する「条件」を特定しなければならない。

第一審は、発生源に近いところでのより大きな汚染の可能性や、特定の放射性放出事故が地域的・漸進的な潜在的食品汚染に帰結することなどを認定した。
にもかかわらず、こうした潜在的に食品汚染に影響する他の領域的条件に関する認定と一致させることなく、食品中の実際の汚染水準だけに依拠した。

 

以上の通り、第二審は、第一審の判断の論理構成を問題とし、その判断を否定した。上級委員会は法律審である。

ーーー

菅義偉官房長官は4月12日の記者会見で「敗訴の指摘は当たらない」と強調した。

理由として、上級委が日本産食品の安全性に触れていないため「日本産食品は科学的に安全であり、韓国の安全基準を十分クリアするとの一審の事実認定は維持されている」ことを挙げた。

しかし、実際には第一審の報告書には「日本産食品は科学的に安全」との記載はなかった。

第一審で日本は「韓国が日本産食品を差別的に扱っていること」を問題とし、安全性自体の認定は求めなかった。

「韓国の安全基準を十分クリア」についても、第一審は「日本は、代替措置としてセシウム含有100bq/㌕超の産品を排除すれば、セシウムおよびその他放射性核種による汚染につき韓国のALOPを達成できる」とし、貿易制限的としたが、第二審はこの判断を破棄している。

 

経産省所管の「経済産業研究所」の川瀬剛志ファカルティフェローは本件をまとめた論文「韓国・放射性核種輸入制限事件再訪ーWTO上級委員会報告を受けてー」を発表した。


2019/4/27  米司法省、GE元技術者ら産業スパイで起訴 

米司法省は4月23日、General Electric のガス・スチームタービン技術を中国に持ち出した産業スパイの罪で、GEの元技術者ら2人を起訴したと発表した。金銭的な支援など、背後に中国政府の関与があったと指摘した。

起訴したのはNew York州在住の中国系米国人の元技術者 鄭小清(Xiaoqing Zheng)と、遼寧省に住む中国人事業家の張兆禧(Zhaoxi Zhang)の2人。

鄭小清はGE Power & Waterに勤務中にGEのタービンの設計情報などの電子ファイルを盗み出し、中国に住む張兆禧に情報をメールで送るなどした疑いがある。産業スパイや企業秘密の窃取など14件の罪で起訴した。

鄭小清は4月23日、ニューヨーク州の裁判所に出廷し、無罪を主張した。

起訴資料によると、2人は盗んだ資料を自ら設立した中国のタービン部品メーカーの遼寧天一航空技術と南京天一航空技術で利用した。

また、盗んだ資料が中国の役に立つと考えて産業スパイを行い、中国政府から資金その他の支援を受け た。政府の斡旋で瀋陽航空航天大学、瀋陽発動機設計研究所、中国淮海工学院などと の間でタービン技術の開発のための契約書を締結したとしている。

FBIによると、39枚のGEのデザインとフローチャート用紙を暗号化し、そのファイルを一見無害な夕焼けのイメージコードに埋め込み、個人用メールボックスに送信した という。

鄭小清は、GE Power & Waterで10年近く働いて いる。中国の海外ハイレベル人材招致の「Thousand Talents Program:千人計画」に選ばれている。

千人計画の対象は以下の諸条件のいずれに該当する者:

  • 海外の著名な高等教育機関、研究機関において教授またはそれに相当するポストに就いた者
  • 国際知名企業と金融機関において上級管理職を経験した経営管理人材及び専門技術人材
  • 自主知的財産権をもつ、またはコア技術を把握している;海外での起業経験を持ち、関連産業分野と国際標準を熟知する創業人材
  • 中国が至急に必要とするその他のハイレベルイノベーション創業人材

2018年6月、米国防省は米下院軍事委員会の公聴会で、同プログラムの目的は米国の知的財産を獲得することにあると警告した。

米中貿易摩擦勃発後、「技術窃盗のためのプログラム」との見かた強くなった。数人の在米中国人技術者がFBIに逮捕され、同計画は「入獄計画」と揶揄されている。

中国教育部は昨年、一部の大学に対して、同計画の情報を削除するよう指示したとの情報がある。


 

カリフォルニアの陪審員が8月10日に、Monsantoの除草剤 Roundup による発癌被害で289百万ドルの賠償評決を下した。このニュースが伝わり、Bayerの株価が下落した。

10月23日、損害賠償は39百万ドルのままとし、懲罰的賠償は39百万ドルに大幅減額した。 しかし、Bayer主張の無罪にならなかったため、Bayerの株価は下落した。

米カリフォルニア州地方裁判所の陪審は2019年3月19日、別の男性が訴えていた裁判で、Roundupががんを発生させた「事実上の要因」だったとの評決を下した。陪審は3月27日、80百万ドルの賠償を命じた。

2018/8/28 Bayer のMonsanto買収 完了と、Monsantoの除草剤への賠償命令判決 

2018年6月7日のMonsanto買収完了時の株価は@98.94Euroであったが、Monsantoの除草剤Roundup の発癌訴訟の発表の都度、失望売りで値下がりし、現在では@61.54Euroまで下がっている。
これによる株価の値下がり損は350億ユーロに達する。(932,552百万株 x 37.4 Euro)


2019/4/30 北海LNG計画に中国2社が参加 

ロシアのガス大手Novatekは4月25日、北極圏で計画するArctic LNG事業で中国企業2社から2割の出資を受けることで合意したと発表した。
同日北京で開幕した「一帯一路」に関するフォーラムの席で合意文書に調印した。

中国石油天然気集団(CNPC)の100%子会社の中国石油天然勘探開発有限公司(China National Oil and Gas Exploration and Development:CNODC)が10%、中国海洋石油集団(China National Offshore Oil Corporation:CNOOC)が10%を出資する。

ロシアは北極海航路を活用した北極圏LNGの輸送でアジア市場の開拓を急ぎ、米国と貿易などを巡って対立する中国もエネルギー調達元の多角化を進めており、思惑が一致した。中国は北極圏を一帯一路の一環と位置づけている。

Novatekにとって、Arctic LNGはYamal LNGに次ぐ第二のLNG計画であるが、Yamal LNGにも中国は29.9%を出資している。

Novatekは2015年9月3日、プーチン大統領と習近平主席の見守るなか、中国のシルクロード基金(絲路基金にYamal LNG 計画の持分 9.9% を譲渡する基本契約書を締結した。

これにより、Yamal LNG計画の出資比率は下記のようになった。

  従来 今後  
Novatek 60% 50.1%  
Total 20% 20.0% 2011/3/2 調印 ロシアの天然ガス開発ーBP撤退、Total進出
CNPC 20% 20.0% 2013/9 参加合意、2014/1/14 株式買収完了
絲路基金 - 9.9%  

2015/9/14 中国のシルクロード基金がヤマルLNG計画に出資   

Arctic LNGは、Yamal LNG計画のあるヤマル半島の東隣のギダン半島のSalmanov(Utrennye) ガス田等を供給源とするもの。

Novatekにとって、Yamal LNGに次ぐ第二のLNG計画で、投資額を200〜210億ドルとみている。
能力は660万トン×3 系列の1,980万トン/年で、第1系列が2022-2023年、第2系列が2024年、第3系列が2025年の稼働を目指している。

現在は、Novatek が90%、フランスのTotal が10%を出資するが、Novatekはこのうち60%分を維持し、30%を他社に譲渡する考え。場合によっては、30%以上を譲渡することもあり得るが、事業のコントロールのため50%以下はあり得ないとしている。(Yamal LNG は51%) 

日本経済新聞が昨年12月22日に、三井物産が出資を協議していることが分かったと報じた。ロイターも同日、三井物産、ロシア政府出資のファンドのRussian Direct Investment Fund (RDIF)及びサウジのSaudi Aramcoが出資交渉をしていると報じた。三菱商事も交渉しているとみられる。

2018/12/24 Novatek のArctic LNG 計画に三井物産が参加か

Total が10%を出資しており、今回中国2社の計20%の出資が決まり、残るのは10%だけとなった。

 

付記

三井物産は、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同出資するオランダのJapan Arctic LNG B.V.を通じて、Novatekが推進するアークティックLNG2プロジェクトに参画すべく、プロジェクト会社アークティックLNG2社の持分を10%取得することでNovatekと合意し、2019年6月29日に持分売買契約を締結 した。

出資比率はJOGMECが75%、三井物産が25%。

三菱商事は参画を断念した。

Aramcoが出資交渉中との報道もあったが、これは消えたこととなる。

Novatek 60%
Total 10%
CNODC 10%
CNOOC 10%
三井/JOGMEC 10%

 


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