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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2019/6/15 英国の保守党党首選挙 

英国のメイ首相の後任を選ぶ与党・保守党の党首選挙で、6月13日に党所属の下院議員313人による1回目の投票を行った。

最低 8人の推薦を受けて立候補した10人のうち得票数が17未満の候補がふるい落とされ、上位者が18日の2回目投票に進む。ここでは得票33未満が落とされる。

19日と20日にはそれぞれ最下位を落とし、最終的には候補を2人に絞り込み、十数万人いる党員の郵便にによる決選投票で7月22日の週に新党首を選出する。

新党首はエリザベス女王の承認を受け、メイ氏から首相の座を正式に引き継ぐ。

 

1回目で3人がふるい落とされた。

候補     6/13 6/18 6/19 6/20 決戦
Boris Johnson 前外相 メイ首相の離脱協定に反発して外相を辞任 114        
Jeremy Hunt 外相 国民投票では残留派だったが、現在はEU離脱派 43        
Michael Gove 環境相 メイ首相の離脱協定を支持 37        
Dominic Raab Brexit担当相 国民投票の前からEUからの離脱を訴え 27        
Sajid Javid 内務相 残留派 → 欧州懐疑派 23        
Matt Hancock 保健相 メイ首相の離脱協定を支持 20        
Rory Stewart 国際開発相 残留派→ Brexitを受け入れ 19        
Andrea Leadsom (F) 前下院院内総務 EU離脱派の中心的存在、政府方針に反対し辞職

落選

11  
Mark Harper 元院内幹事長 残留→ メイ首相の離脱協定支持 10
Esther McVey (F) 前雇用・年金相 離脱派。メイ首相の離脱協定に反発し辞職 9

(F) は女性

 

誰が党首(=首相)になっても、議会で一つの方向に決めるのは難しい。

「離脱の延期は最長 10/31 までとする」となっており、残り時間は少ない。

今回トップのジョンソン前外相は2016年の国民投票で離脱派の急先鋒となったが、他に手段がなければ正式な合意なしでも離脱する意向を示している。

 



2019/6/17    ジャパンディスプレイ、苦境に

ジャパンディスプレイは、台中連合の各社が6月14日に支援の内部機関決定を行うとの発表をしていたが、6月14日夕刻、まだ通知を受け取っていないと発表した。

「通知内容により関係者との再協議を要する場合は、速やかに協議を行い、その結果が決定次第開示する」としている。

企業連合のうち、台湾の1社が支援見送りを決めたことが分かったと報じられている。JDIの経営が想定以上に悪化していることなどから、出資をめぐる条件が折り合わなかった。
JDIは17日、台湾タッチパネル大手の宸鴻光電科技から交渉離脱の通知を受けたと発表した。

6月18日には定時株主総会を開く。元々、台中連合による支援はこれには間に合わず、追って臨時総会を開くとしていたが、経営不安は解決すると説明する予定であった。
先行きが不明のままで、どうするのだろうか。

なお、シャープの戴正呉会長兼社長は6月14日、日本経済新聞の取材で、ジャパンディスプレイの支援も「要請があれば検討する」と述べたとされる。

シャープの再建を巡っては、経産省の意向を受けた産業革新機構と鴻海が争った。

経産省には、革新機構がシャープに出資した上で液晶部門を分離させてジャパンディスプレイと統合させる 意向があったとされる。

支援の内容の差と、会社の解体を嫌う経営陣の意向から鴻海に決まった。

ーーー

経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は5月30日、同社に対する支援策が確定したことを発表した。

JDIでは台中連合の金融支援を確定させるべく、関係各社に協力を要請し、下記の協力を得た。

1) Apple社:当面の財務強化に対する協力として、前受金に対する債権相殺金額を、2年間にわたり 、従来の合意条件に対して半額繰り延べ。発注の増量についても真摯に協議。

2) 現在の筆頭株主のINCJ(旧 産業革新機構) 資金面の協力を強化

以上の協力を得たのを受け、台中連合は総額800億円の支援について、6月14日に各社の内部機関決定を行う旨、連絡してきた。

JDIの定時株主総会(6月18日)での承認は間に合わないが、年内に行う臨時株主総会で承認を得て、実行する。

2019/6/3 ジャパンディスプレイ、支援が進展 

この各社の内部機関決定がまだなされていない。

ーーー

ジャパンディスプレイ(JDI) は5月15日、2019年3月期の決算を発表した。

特別損失で白山工場資産減損 747億円を含む752億円を計上した。

同時に、同社は構造改善策を実施することを発表した。

・ 1,000人規模の早期既報退職を上期中に募集

・ 役員報酬及び管理職等の賞与減額等

構造改革費用は約100億円、効果は年間ベースで約200億円と見ている。

2019/5/17  ジャパンディスプレイ、5年連続赤字

 

JDIは6月12日、この構造改革の実施と、合わせて執行体制の刷新に関する発表を行った。

上記の発表後、具体的内容を検討してきたが、6月12日開催の取締役会において、 下記を決議したとしている。

1) 今後の需要の大幅回復の見込みが立たないモバイル事業の縮小と、これに伴う白山工場の一時稼働停止 及び茂原工場後工程ラインの閉鎖

2)人員削減

3) 役員報酬及び社員給与等の削減

4) 執行体制の刷新

 

1)   工場停止

従来取り組んでいる車載・ノンモバイル事業の強化を継続する一方で、バイル事業については縮小し、生産及び一部生産設備の集約を図る

スマートフォン向けディスプレイ
の生産拠点の一つである白山工場においては、時稼働を停止
モバイル事業用の後工程生産の縮小のため、 茂原工場後工程ラインを

同社の工場は下記の通り。

  元の持ち主   今回決定 簿価
石川工場 東芝モバイル(松下電器)      
白山工場 JDIとして新設
Appleからの前受け金で建設
2016/12 稼働  2019/7〜2019/9 停止
9月末までに再稼働の判断
約1000億円
鳥取工場 ソニーモバイル(鳥取三洋)      
東浦工場 ソニーモバイル      
茂原工場 日立ディスプレイズ 2019年夏から有機EL量産開始 2019/9
後工程ライン(V2ライン)閉鎖
生産設備の除売却
約3億円
能美工場 東芝モバイル(東芝) 停止→ 産業革新機構に譲渡
 → JOLEDに
   
深谷工場 東芝モバイル(東芝) 2016/4 閉鎖    

参考 海外工場

Suzhou JDI Electronics 江蘇省蘇州市 素尼移動顕示器(蘇州)を買収  
Nanox Philippines Philippines ナノックスより、81%取得  
Kaohsiung Opto-Electronics Taiwan 旧 高雄日立電子  
Suzhou JDI Devices 江蘇省蘇州市 旧 日立顕示器件(蘇州) 2018/5 株式持分を全て譲渡
Shenzhen JDI 広東省深圳市 旧 深圳日立賽格顕示器 2018  中国企業に売却

白山工場の再稼働等の判断は9月末までに行う。

なお、 今後の顧客需要の動向により、白山工場の資産についての減損損失400500億円を特別損失として計上する可能性がある。

また、白山工場の再稼働を行わなかった場合には、追加の特別損失として、工場運営に係る違約金や補助金返済等100200億円が発生する可能性がある。

付記  2019/9/13 「2019/10以降も稼働停止継続」と発表 

「白山工場の一時稼働停止決定後、顧客からの受注拡大に努めるとともに、顧客の需要動向を注視してまいりましたが、現時点では、稼働の再開により利益を創出するだけの需要増は見込めておりません。
一方、
Harvest Tech Investment Managementから将来のOLEDディスプレイの量産拠点の候補として白山工場を活用する案が示されており、その可能性についても協議を開始しております。
こうした状況を踏まえ、当社は当面の間、白山工場の稼働停止を継続することといたしました。

また、茂原工場後工程ラインにつきましては、2019年8月末までに生産を終了しております。」

白山工場は液晶パネルのみで、需要回復は望めない。有期ELへの転用には少なくとも数百億円規模の投資が必要とされる。

ーーー

白山工場は第6世代(1500×1850ミリメートル)液晶新工場で、1,700億円を投じて建設し、3年前に完成したばかり。前年度に減損損失を計上したとはいえ、休止の件はこれまで出ていなかった。

台中連合が6月14日の内部機関決定に踏み切ったのには、Appleが発注の増量についても真摯に協議するとしたのも一つの理由であろう。

工場を停止するのは、Appleからの注文がほとんどないことを意味する。JDIは今回、白山工場の再稼働を行わなかった場合についてさえ触れている。
そのような状況で台中連合が出資するであろうか。


問題は、JDIと Apple の契約である。
この前受金の契約には下記の条項がある。

・JDIは年間2億ドルまたは売上高の4%のいずれか高い金額を四半期ごとに返済する。(今回、一部条件緩和)

・JDIの現預金残高は300億円以上を維持する。

・上記2つの条項を守れなければ、Appleは、前受け金の即時全額返済、または白山工場の差し押さえを要求できる権利を持つ。

工場を停止したままで返済を続けるのは困難である。

この投資は社内で異論が浮上する中、革新機構から派遣された社外取締役が決定を主導したとされる。液晶から有機ELへの移行という技術トレンドを読み誤った。

また、Appleのために、Appleの資金で建てた工場であり、本来なら、Take or Pay 条項を入れるべきであった。何の条件もなしに義務だけというのは考え難い。

そもそもは、テレビ用液晶パネルが競争力を失った時点で、中小型ならやっていけるとした判断自体が無理であったようだ。


 

2) 人員削減

(1)国内における希望退職者の募集

@募集人数1,200
A
募集対象者:2020年3月31日時点で40歳以上の社員JOLED出向者、海外出向者含む)
 (注
1白山工場組織V2ライン及び西日本オフィスの各拠点における勤務者については、年齢の制限を設けない
 (注
22019年6月1日現在の国内社員及び出向者の数 4,635

退職希望者には退職金規則に定める退職金に加え、退職特別加算金を支給する。また、希望者に対しては再就職の支援を行う。

(2)海外販売子会社における人員の削減

スマートフォン向けディスプレイを主として販売する中国の海外販売子会社において、数十名程度の人員削減を実施

早期割増退職金として90億円の特別損失を計上する。人員削減で年間200億円のコスト削減を図る。

3) 役員報酬、管理職給与及び一般社員賞与等の減額等

4) 執行体制の刷新

9月30日辞任 代表取締役社長社長執行役員CEO 月ア義幸
10月1日就任 取締役会長 社外取締役 橋本孝久
社長執行役員 CEO 常務執行役員CFO 菊岡稔

 


2019/6/18 国際石油開発帝石、インドネシア・アバディLNGプロジェクトでインドネシア政府と合意

国際石油開発帝石(INPEX)は6月16日、インドネシアのアラフラ海Masela 鉱区Abadi LNGプロジェクトの改定開発計画について、インドネシア府当局と基本合意書を締結した

基本合意書は、概念設計(Pre-FEED)作業終了後に実施した改定開発計画に関する協議においてロジェクトの経済性確保するため政府当局と事前に合意した事項を規定したもの

今後政府当局との間で、改定開発計画提出及び承認、生産分与契約の修正及び延長等の手続きを開始する。

国際石油開発帝石(INPEX) は1998年11月にインドネシア政府の公開入札により Masela 鉱区の権益を取得、その後、オペレーターとして探鉱作業を推進し、2010年12月に第一次として LNG年産250万トンFLNG方式で開発する開発計画がインドネシア政府より承認された。

その後の変遷で年産950万トン規模 の陸上LNG計画で再スタートする。

同社の 上田社長は10年弱の遅れについて「全体ではプラスの面の方が大きい」との認識を示した。
2018年に生産を始めたオーストラリアの大型LNG事業からの技術やノウハウの移行が可能である点などを理由に挙げた。

豪州プレリュードFLNGプロジェクトは2019年3月にコンデンセートの出荷を開始、2019年6月にLNGの出荷を開始した

2018/12/28 国際石油帝石、豪州プレリュードFLNGプロジェクトの生産開始 

アバディLNGプロジェクトの概要

鉱区 インドネシア共和国マセラ鉱区
鉱区期限 現行鉱区期限2028年に、期間追加(7年)を申請中、更に延長(20年)を申請予定。
20551115日までを申請予定)
鉱区面積 2,503平方キロメートル
水深 400〜800メートル
鉱区位置 マルク州サムラキ市沖合約150キロメートル

生産規模 天然ガス 総生産量LNG換算)年産1,050万トン
 ・
LNG年産950万トン規模
 ・
鉱区周辺地域の現地需要向けパイプラインガス供給予定
コンデンセート 日量最大約
3.5万バレル規模
権益比率 インペックスマセラアラフラ海石油65%(オペレーター
SHELL
35%

インペックスマセラアラフラ海石油はINPEX 51.93%、石油天然ガス・金属鉱物資源機構 48.07%

その他 20176月にインドネシア政府からNational Strategic Projectに、
さらに
9月にはPriority Infrastructure Projectに認定

LNGプラントの設置場所については触れていないが、2015年9月にインドネシア政府の海洋担当調整省はガス田から373マイルのパイプラインでAru 島に運ぶ案を主張しており、ここであると思われる。

 

 

経緯は次の通り。

国際石油開発帝石(INPEX) は1998年11月にインドネシア政府の公開入札により Masela鉱区の権益を取得した。

その後、オペレーターとして探鉱作業を推進し、2000年に掘削した試掘第1号井によりAbadi ガス田を発見した。その後、6坑の評価井掘削を含むガス田評価作業を実施し、同ガス田にはLNG開発に十分な天然ガス埋蔵量を確認した。

2010年12月に第一次として LNG年産250万トンFLNG方式(浮体式LNG生産施設)で開発する開発計画がインドネシア政府より承認された。

参加権益比率はINPEXが90%(オペレーター)で、 インドネシアの有力エネルギー企業PT Energi Mega Persada社の子会社PT EMP Energi Indonesia(EMPI)が10%となったが、2013年6月にEMPIの権益を買収し、INPEXが65%(オペレーター)、Shell 35% の体制となった。

その後、天然ガス埋蔵量の増大が確認され、2014年にLNG能力を3倍の750万トンに拡大したFLNG方式での「改定開発計画」の承認を申請した。

申請を受けたインドネシア政府の内部で意見が分かれた。

2015年9月に海洋担当調整省は陸上案を主張した。

Abadiガス田から373マイルのパイプラインでAru 島に運び、陸上でLNGにすれば、建設費は160億ドルで、洋上の場合の220億ドルにくらべ、60億ドルの節約になるとコストダウンになるだけでなく、近辺の地域の経済発展にも役立つと主張した。

エネルギー鉱物資源省と石油·ガス上流レギュレータは、 洋上なら148億ドルで、陸上より45億ドル安いと主張し た。

ジョコ大統領は2016年3月23日、陸上に建設すべきだとする政府方針を決定した。

INPEXは4月1日にインドネシア政府より陸上LNGによる開発計画の検討を求める内容の通知を受領した。

2016/3/29  国際石油開発帝石、インドネシア政府方針でLNG計画を大幅変更へ


その後、LNG価格は世界的に大きく下落し、計画の存続に疑念が生じた。

Inpexはその後、政府当局経済性確保を含めた協議を続け、その結果を踏まえて2018年3月に年産950万トン規模を想定する陸上LNGPre-FEED作業開始の決定に至った。

 

 


2019/6/19 シャープ、堺の液晶パネル工場の子会社化検討 

シャープがテレビ向けの大型液晶パネルを生産する運営会社 堺ディスプレイプロダクトを子会社化する検討を始めた。

シャープは堺市に大型テレビ用液晶パネル工場を建設し、2009年10月に稼働させたが、ソニーへの販売を狙い、ソニーとの合弁会社シャープディスプレイプロダクトとして分離した。
その後、ソニーは離脱し、現在は
鴻海精密工業の郭台銘会長の資金運用会社が53.05%を所有している。(社名は堺ディスプレイプロダクトに改称)

シャープは液晶パネルを自社の亀山工場でも生産するが、ガラス基板が小さく、大型パネルの生産性に課題がある。
堺工場は世界最大級のガラス基板を備える。

シャープが堺工場を再び傘下に収めれば、大型パネルの生産効率が向上するとともに、高精細な映像表現ができるシャープ独自の「IGZO」技術を使うことも可能となり、中韓メーカーのパネルとの差別化につながることとなる。

ーーー

経緯は下記の通り。

シャープは2007年7月、新たに大阪府堺市に最先端の液晶パネル工場と、薄膜太陽電池を量産する太陽電池工場を併設することを決定したと発表した。

主な生産品目:40型・50型・60型クラスの大型テレビ用液晶パネル
 ・マザーガラスサイズ:2,850mm x 3,050mm(第10世代)
  (60型クラスのパネルが6枚、50型クラスは8枚、40型クラスは15枚取れる)
 ・投入能力:月72,000枚(稼動当初は月36,000枚)

液晶パネル工場は2009年10月に稼働した。

凸版印刷と大日本印刷は同地にカラーフィルターの工場を建設した。

2007/12/5  シャープの「21世紀型コンビナート」

2009年4月にシャープとソニーは、この液晶パネル工場を分社化し、大型液晶パネル・モジュールの生産および販売を行う合弁会社シャープディスプレイプロダクトを設立した。

会社名称 シャープディスプレイプロダクト
設立日 2009年4月1日
稼動開始 2009年10月
出資比率 最終 シャープ66%、ソニー34% (当初 ソニー 7.04%)
事業 大型テレビ用液晶パネル・モジュールの生産およびシャープ、ソニーへの販売
生産能力 72,000枚/月(稼動当初は36,000枚/月)(マザーガラス投入ベース)

2009年12月29日、ソニーはシャープディスプレイプロダクトの増資を引き受け、7.04%を100億円で取得した。
ソニーは堺工場で生産されるパネルの7%にあたる55万台分(40型換算)を購入する。

2011年4月末までに最大34%まで引き上げられ、その時点で265万台分がソニーに供給されることとなっていた。

しかし液晶パネルの調達環境をめぐる変化を背景に、両社は2011年4月、ソニーの追加出資を先送りにした。

シャープは2012年3月27日、電子機器の受託製造サービスの世界最大手の鴻海グループ(Hon Hai) と戦略的グローバル・パートナーシップを構築すると発表した。

鴻海グループのシャープの第三者割当増資  9.88% 669億円
(これは中止となり、その後2016年3月30日に
鴻海は取締役会でシャープ買収を決めた。鴻海グループでシャープの3888億円の第三者割当増資を引き受け、議決権の66%を得た。)

シャープディスプレイプロダクトを「ワンカンパニー」として共同で事業運営 シャープ 46.48%、董事長 46.48%、ソニー 7.04%
鴻海グループのシャープ本体への出資は一時中止となったが、この投資は行われた。)

シャープとソニーは2012年3月28日、ソニーの追加出資を行なわないことで合意し、2012年5月24日にシャープディスプレイプロダクトについて、6月末までにソニーが保有する株式(出資比率:7.04%)すべてを譲渡し、両社の合弁を解消すると発表した。対価として、ソニーの出資時と同額の100億円が全額現金で支払われる。

また、シャープと凸版印刷、大日本印刷は2012年5月24日、凸版、大日本の堺工場における液晶カラーフィルター事業をシャープディスプレイプロダクトに吸収分割の方式により承継させることを決めた。

これらの結果、シャープディスプレイプロダクトの出資比率は以下の通りとなる。(吸収分割で株式発行)

シャープ 37.61%
郭台銘  37.61SIO International Holdings Limited)
凸版 9.54
大日本 9.54
自己株式 5.70 (ソニーから買収分 旧 7.04%相当)

2012年7月17日付で社名を「堺ディスプレイプロダクト」に変更した。

2016年12月28日、シャープが持ち株 436千株を 17,170 百万円で郭台銘氏の投資会社に譲渡した。

現状の出資関係は次の通り。

郭台銘 53.05%
シャープ  26.71%
凸版印刷 9.54%
大日本印刷 9.54%

シャープ本体への鴻海グループの出資は次の通り。

Honhai Precision Industry 26.14%
FOXCONN (Far East) 18.41%
FOXCONN Technology 13.00%
SIO International  7.36% 
合計 64.91%

 
 


    
2019/6/20    ジャパンディスプレイ 株主総会 

ジャパンディスプレイ(JDI)は6月18日、都内で株主総会を開いた。

取締役5人の選任と、補欠監査役1人の選任の2つの議案はすべて賛成多数で可決されたが、支援に名乗りを上げていた台中3社連合の一角が離脱するなど二転三転する再建案に株主から批判が相次ぎ、経営陣は弁明に追われた。

ジャパンディスプレイは、台中連合の各社が6月14日に支援の内部機関決定を行うとの発表をしていたが、6月14日夕刻、まだ通知を受け取っていないと発表した。

JDIは17日、台湾タッチパネル大手の宸鴻光電科技から交渉離脱の通知を受けたと発表した。

2019/6/17 ジャパンディスプレイ、苦境に

10月に社長に就く菊岡稔・常務執行役員は、台湾勢が抜けた穴を埋めるため、香港ヘッジファンドのオアシス・マネジメントなどと「800億円はきちんとした形で調達できるよう交渉している(下表の右参照)」とし、他にも「国内事業会社を中心としたグループや海外の事業会社から(出資の)意向表明を受けている」と説明した。

しかし、いずれも確約ではなく、各社が今後機関決定するというだけである。

JDIは4月12日、台湾の電子部品メーカーなど3つのグループで構成する台中連合から800億円の金融支援を受けると発表した。

当初予定では6月18日のJDIの定時株主総会で最終的に承認を受ける予定だったが、台中連合が金融支援に必要な機関決定を延期すると相次ぎ表明した。

JDIは5月30日、同社に対する支援策が確定したことを発表した。Apple及びINCJによる支援を材料に説得した。

しかし、台中連合各社は期限の6月14日に機関決定をせず、うち1社は離脱を表明した。

このように、これまでのJDIの発表はいずれも実現していない。

今回の案も各社が6月27日までに機関決定を諮るというだけで、決まったものではない。また、仮に決まっても、なんらかの条件がつく可能性もある。

また、仮に決まっても、中国勢がメインとなった場合、米国からなんらかのクレームがつく可能性もある。

その間、資金の外部流出は続いており、仮に今回の案が実現しても、更なる資金手当てが必要である。
 

ーーー

JDI資本計画

  台中連合(Suwa) INCJ
普通株式 420億円  
転換型優先株式   1,020億円
第2回CB 180億円  
第3回CB 200億円  
合計 800億円 1,020億円
総計

1,820億円

台中連合の状況    

付記  台湾のCosgrove Global(富邦グループ)からも交渉離脱の通知

     

内訳

2019/6/17 JDI  発表

億円 比率 状況 あり得る
ケース
台湾 TPK Holding 宸鴻集団 タッチパネル大手 230百万ドル(250億円) 31.25% 離脱 通知受領
Cosgrove Global 一族富邦金控が運用・管理する投資会社 130百万ドル(140億円) 17.50% 機関決定の通知 未受領→ 離脱通知
中国 Harvest Tech Investment Management
嘉実基金管理)
中国最大の資産運用会社 Harvestグループ のプライベートエクイティ投資を行う運用会社 190百万ドル(210億円) 51.25% 190百万ドルについては200百万ドルに増、6/27までに機関決定 200百万ドル
(215億円)
 
200億円 200億円についても機関決定。 200億円
  不足の場合、更に200百万ドル出資、
6/27までに機関決定
200百万ドル
(220億円)
香港 Oasis Management     離脱社代替 150百万ドル 
6/27までに機関決定
150百万ドル
(160億円)
 
合計   800     800億円

 


 

2019/6/21  ブラジルのオデブレヒト、民事再生を申請、LyondellBasell がBraskem買収を取り止め  


ブラジルのコングロマリットでゼネコン最大手のOdebrecht SA (Braskemの親会社)が985億レアル(約2兆7,580億円)の負債を抱えて、6月17日にブラジルの法的再建手続きである裁判上の再生手続き(Recuperacao Judicial)の申し立てを行った。

ブラジル史上最大の負債額と報じられている。再生手続き開始が決定されれば、同社は60日以内に再生計画を提出しなければならない。

Odebrecht グループは2014年に政治家や国内大手企業を巻き込む汚職事件「ラバ ・ジャット」に加担していたことが発覚した。2014年以降、業務の一部が停止に追い込まれ、多くの失業者を出すなど国内経済への影響が大きかった。

ブラジル連邦警察2014317日に国営石油公社Petrobrasをめぐる汚職事件への捜査通称ラバジャット捜査Operação Lava Jato=Car Wash)を開始した。

同事件ではPetrobrasが長年にわたって常習的に取引先企業との契約で水増し請求をさせそこから捻出した裏金を政党や有力政治家に繰り返し渡していたとされ政財界を巻き込むブラジル史上最大の汚職事件となった

Odebrecht は贈賄側として軒並み汚職事件に関与したとされ201567月にはOdebrecht および そのCEO起訴された2008年からOdebrechtの経営に当たっていた Marcelo Bahia Odebrechtは19年の懲役刑を受けた。

さらに逮捕された幹部が司法取引に応じて行った証言から中南米等諸外国の大統領有力政治家への贈賄も明らかになり汚職の構図が国境を越えて根深いものであることがわかった

20161221日に米国司法省が報告を発表しOdebrecht および子会社Braskemなどが2001〜2016年にわたり中南米ブラジルアルゼンチンベネズエラコロンビエクアドルペルーパナマグアテマラメキシコドミニカ共和国フリカのポルトガル語圏アンゴラモザンビーク) の計12か国において100以上総額33.4億ドルに及ぶ公共事業受注の便宜を図ってもらう見返りとして少なくとも総額78,800万ドルの賄賂を渡していたことが明らかになった 。

Odebrechtは米国で贈賄工作を行いスイスの銀行口座を用いて裏金の出入金を繰り返していたことから米国の外国汚職防止法Foreign Corrupt Practices Actに抵触するとして摘発された 。
同社は米国司法省と35.6億ドルOdebrecht  26.0億ドルBraskem 9.6億ドルの制裁金を20年かけて米国ブラジルスイスの司法当局に支払うことを定めた起訴猶予合意を締結した。

 正大学経済学季報第67巻第4 オデブレヒト汚職事件と中南米諸国への影響  


Odebrecht は1944年創業で、創業50年の1994年には21カ国で事業を行い、従業員3万4千人の企業に成長 、2013年には従業員19万3千人を抱えるに至った。

だが、事件により、事業契約見直しや罰金徴収など、様々な形で影響を受け、現在の従業員は4万8千人 に減っている。

グループ内での貸し借りも含めた負債が985億レアルに上り、経営破綻に陥った 。諸銀行への負債は510億レアルで、内145億レアルはBraskemの株式が担保だという。

再生申請で交渉の対象となる負債額は836億レ アルで、この額には司法取引で命じられた罰金は含まれていない。

Odebrecht や債権者の銀行の多く は再生申請回避の意向であったが、連邦貯蓄銀行が負債取立を強行しようとし、民事再生申請となった。

今年5月には、子会社で砂糖・エタノール製造のAtvos Agroindustrial Participacoes SAが民事再生を申請した。
石油・ガス関連の
Ocyan(旧称 Odebrecht Oil & Gas)は司法外手続きで50億レアルの負債返済に関する合意を成立させたが、6月にはLyondellBasell が昨年来交渉してきたBraskem買収を取り止め(後記)、経営建て直しへの道を狭めた。

なお、今回の再生申請には下記の子会社等は含まれていない。

Braskem、建設事業のOEC(旧称Odebrecht Engineering & Construction)、石油のOcyan(旧称Odebrecht Oil & Gas)、造船のEnseada、物流のOdebrecht Transport 、住宅建設の Incorporadora ORなど。

ーーー

Braskemの株主は次の通りで、OdebrechtとPetrobrasが共同で意思決定をすることとなっている。 

  議決権 全体  
Odebrecht 50.1% 38.3% 共同意思決定
Petrobras 36.1% 36.1%
その他 2.9% 25.6%  

「その他」に議決権 0.96%をもつ双日が含まれる。

国営石油会社Petrobras SAは2016年1月に Braskem の持株 36.1% を売却することを決めた。

Petrobrasは1300億ドルに上る負債を圧縮し、資金繰りを確保するため、2016年に140億ドルの資産売却を検討していた。

問題は、Braskemの主株主のOdebrecht とPetrobrasが意思決定を共同で行っており、Petrobrasの持分売却の条件に、Odebrechtが売却先をパートナーとして受け入れることが含まれており、Odebrechtが決定を保留していることで売却交渉が止まったままになった。

2016/3/21 Petrobras のBraskem 売却構想 

オランダの化学大手 LyondellBasellは2018年6月15日、ブラジルのOdebrechtとの間で、同社傘下のBraskemの取得を巡り独占的な買収交渉に入ったと発表した。交渉は初期段階で、合意に至るかは不明と説明している。

その後、売却価格や取引の全体の仕組みなどで交渉が続き、売却への期待でBraskemの株価は1年で16%上昇し た。

本件は本年3月時点で、予想より時間がかかりそうと報じられた。

Lyondell側はBraskemが2017年Annual Report を米国SECに提出するまでは契約を結ばないと決めているが、Braskemの監査会社が同社の内部管理の評価を終えていないため、まだ提出できないでいる。
結局、5月15日までに提出できなかった。同社の米国預託証券(ADR)はNY証券取引所で上場廃止になる。

また、BraskemとPetrobrasの間のナフサの長期供給契約の締結が遅れている。Petrobrasの新CEOは前任者のまとめた契約書にまだサインしていない。

Odebrechtは当初、Braskem の株とLyondellBasellの株とを交換する予定であったが、Odebrechtの財政が悪化し、現金が必要になった。
これにより、新たにLyondellとの交渉が必要になる。

Lyondell はOdebrechtとの間で合意を得た後に、共同で意思決定をしているPetrobrasと交渉を始める必要がある。


そして LyondellBasellは 6月4日、Braskem買収に関するOdebrechtとの交渉を終了したと発表した。

「LyondellBasellとBraskemの統合は両社の力、製品ポートフォリオ、販売地域を補完しあい、素晴らしいものだ。しかしながら、慎重に検討した結果、交渉を続けないことで一致した」としている。

               
 


2019/6/21 LyondellBasellの現状

Basell と Lyondell Chemical は2007年7月17日、Basell が Lyondell の全株式を127億ドル(借入金込み 190億ドル)で買収することで合意したと発表した。

2007/7/18 Basell Lyondell を買収

 

Lyondell は旧Lyondell (PO、SM、MTBEPGTDIなど)とMillenium(酸化チタン、酢酸、VAM)、および両社のJVEquistar (エチレン、プロピレン、EOGPE)が合併したもので、その後、酸化チタン事業はサウジのNational Titanium Dioxide Company に売却している。

経緯については 2007/2/26 Lyondell とシノペック鎮海煉油化工、寧波で PO/SM 生参照

Basell の成立の経緯は下図の通りで、2005年にBASFShell Basell Access Industriesに売却した。

 

LyondellBasell の扱う製品は下記の通り。 

 同社 2017 Data Book から

Olefins

 

Polyolefins

単独プラント(千トン)

  Americas Others Total
Ethylene 5,400 2,900 8,300
Propylene 2,300 2,700 5,000
Butadiene 400 300 700
PP 1,800 5,400 7,200
HDPE 1,800 1,900 3,700
LDPE 600 1,300 1,900
LLDPE 500   500
Catalloy 300 300 600
PP compound   300 300
PB-1 resins   50 50

 

  千トン
PO 2,300
SM 2,700
TBA 2,800
Oxyfuels 3,200
PG 400
PG ethers 200
Butandiol 200
Methanol 1,400
酢酸 600
VAM 300
EO 400
EG 300
Ethanol 200

 

 

JV  (能力:千トン)

JV 立地 Partner Lyondell
share
C2 C3 HDPE LDPE PP PP
Compound
Indelpro Mexico Alfa 49%         600  
Al-Waha Saudi Sahara Petrochemical 25%   500     500  
Baswll Orlen Poland Orlen 50%     300 100 400  
HMC Polymers Thailand PTT 29%   300     800  
PolyPacific 豪/Malaysia Mirlex 50%           100
PolyMirae 韓国 Daelem/SunAllomer 50%         700  
SEPC Saudi Tasnee/Sahara 25% 1,000 300 400 400    
SPC Saudi Tasnee 25%   500     700 40
JV 立地 Partner Lyondell
share
PO SM Methanol
U.S.PO JV USA Covestro   1,200    
European PO JV Netherlands Covestro 50% 300 700  
Ningbo ZRCC China ZRCC 19% 300    
0%   600  
La Porte Methanol USA Linde 81%     500

2016/8/26     LyondellBasell、サンアロマーから撤退


 

2019/6/22   英国 保守党党首選挙-2


次期英首相を選ぶ保守党党首選は、ジョンソン前外相とハント外相が決選投票に駒を進めた。

議員による選挙で、最低 8人の推薦を受けて立候補した10人のうち得票数が17票未満の候補がふるい落とされ、2回目は得票33未満が落とされる。その後はそれぞれ最下位を落とし、最終的には候補を2人に絞り込 む。

その後、党員の郵便による決選投票で7月22日の週に新党首を選出する。

付記 新党首は7月23日に発表、首相就任は7月24日午後。

議員の投票結果は次の通り。(Fは女性)

候補     6/13 6/18 6/19 6/20 決戦
Boris Johnson 前外相 メイ首相の離脱協定に反発して外相を辞任 114 126 143 157 160  
Jeremy Hunt 外相 国民投票では残留派だったが、現在はEU離脱派 43 46 54 61 77  
Michael Gove 環境相 メイ首相の離脱協定を支持 37 41 51 59 落選 75  
Sajid Javid 内務相 残留派 → 欧州懐疑派 23 33 38 落選 34  
Rory Stewart 国際開発相 残留派→ Brexitを受け入れ 19 37

落選

27  
Dominic Raab Brexit担当相 国民投票の前からEUからの離脱を訴え 27

落選

30  
Matt Hancock 保健相 メイ首相の離脱協定を支持 20

撤退

Andrea Leadsom (F) 前下院院内総務 EU離脱派の中心的存在、政府方針に反対し辞職

落選

11  
Mark Harper 元院内幹事長 残留→ メイ首相の離脱協定支持 10
Esther McVey (F) 前雇用・年金相 離脱派。メイ首相の離脱協定に反発し辞職 9

ジョンソン氏とハント氏は全国16万人の保守党員に向け、向こう1カ月かけて選挙活動を展開する。郵送による投票で次期党首を選ぶ。

保守党サイトによる党員への世論調査では62%がジョンソン氏を支持。ハント氏への支持は11%にとどまる。情勢に大きな変化がなければ、強硬離脱派のジョンソン首相が誕生する確率が高くなっている。

ジョンソン氏は10月31日の期限までに離脱を果たす決意をこれまでに示しており、離脱期限を再度遅らせるくらいなら合意なしの離脱を望むと言明してきた。
ただ、ここ数日は言い回しを軟化させ、18日の討論では10月末での離脱を保証することを拒んだ。
 

ハント氏は秩序立った離脱のためなら離脱期限の延期もいとわない考えだが、EU離脱の撤回よりは合意なしの離脱を選ぶと言明している。

ーーー

党首(首相)が決まってから、離脱 の具体案を決定し、(当然メイ首相がEUと協議して決めた離脱協定案とは異なるため、)新たにEUと協議する必要がある。
(EUは協定案が最終であり、修正には応じないとしている。)

そのうえで、下院で承認を得る必要があるが、党内の反対派と野党の反対で簡単に通るとは思えない。

仮に合意なき離脱となれば、EUは監視が少しでも欠けたら欧州の単一市場に大きな穴が開くことを懸念しており、アイルランド共和国と英国の北アイルランドとの国境を越える貿易に関税をかけ、通関手続きや食品・動物の検疫を実施するために対策が必要としている。

しかし、再度国境管理が行われると、1998年4月10日のベルファスト合意(聖金曜日協定)で収拾した北アイルランド紛争の再発が懸念される。

このため、なんらかの対策をEUと合意する必要がある。

2019/4/6 合意なき離脱の場合のアイルランドの扱い 

 
離脱期限の10月末が近づくなか、5月24日のメイ首相の党首辞任(6月7日付)の表明後、2か月もかけて次期党首(=首相)を選ぶというのはどういうことだろうか。

 


2019/6/24 米、中国スパコン大手を禁輸対象に指定 

米商務省は6月21日、輸出管理法に基づき安保上懸念がある企業を列挙したEntity List (規則 744.11(b) )にスーパーコンピューター大手5社とそれぞれのグループ会社を追加した。

付記

米商務省のBureau of Industry and Security (BIS) は8月13日、中国国有の原子力発電最大手、中国広核集団 とその子会社をEntity List (事実上の禁輸リスト)に加えると発表した。

米国の原子力技術を軍事転用しているとして、米国製品の販売を阻止する。原発は中国がハイテク産業育成策「中国製造2025」で掲げる重点分野 で、米政権は禁輸措置などを駆使して中国ハイテクへの締め付けを強めている。

Entity Listに載ったのは下記の各社:

China General Nuclear Power Corporation (CGNPC) 別名China Guangdong Nuclear Power Corporation
China General Nuclear Power Group
China Nuclear Power Technology Research Institute Co. Ltd.
Suzhou Nuclear Power Research Institute Co. Ltd.


Entity
List 対象は、これまでは、大量破壊兵器(WMD)プログラム、テロリズム又はその他の行為のリスクをもたらす恐れのある企業が対象であった。

「知財戦争」に適用したのは、2018年10月29日に中国の福建省晋華集成電路(Jinhua Integrated Circuit Company:JHICC)、本年5月15日の華為技術(Huawei)の2つである。

2019/5/16    米国、Huawei を対象に2施策

実は、2015年2月18日に中国のスーパーコンピューター関連4社が、米国製の部品を使ったスパコンで核爆発演習、兵棋演習をサポートしているとして指定されている。

National Supercomputing Center Changsha (NSCC-CS)、National Supercomputing Center Guangzhou (NSCC-GZ)、
National Supercomputing Center Tianjin (NSCC-TJ)、
国防科技大学(National University of Defense Technology:NUDT)

このうちの 国防科技大学(NUDT) は、Entity List に載り、禁輸対象になっているが、湖南国防科技大学の名を使って部品を輸入していると され、今回湖南国防科技大学が追加指定 された。

今回、中国政府系のスパコン大手の曙光信息産業のほか、米半導体大手Advanced Micro Devices (AMD)と合弁を組む天津海光先進技術投資有限公司(THATIC)など計5社と関連会社が指定された。

商務省は、スパコンが「核爆発のシミュレーション」などの軍事目的に利用されていると指摘。無錫江南については、中国人民解放軍の傘下にある研究施設が所有者で「中国軍の近代化を使命としている」とした。

AMDの合弁会社 Hygon と HMC もリストに含まれている。

米国は核開発への影響を懸念して2015年にXeonプロセッサの中国での販売を禁止し、さらにCPUの設計開発製造に関する技術の中国への移転にも制限をかけている。
そのため、単純に中国内でx86互換CPUを製造するのは困難。

AMDとTHATICは合弁で海光微電子技術有限公司(HMC)と成都海光集成電路設計有限公司(Hygon)を設立。まずHMC(AMDが51%出資する子会社)にx86に関連する知的財産の利用権を与え、さらにHMCがこの知的財産権の利用ライセンスをHygonに与えてHygonがチップを設計。続いてこの設計をHygonがHMCに売却し、HMCがチップを生産。これをHygonが販売するという形でこの問題を解決したという。
HMCはAMDが51%出資しておりAMDの傘下企業と見なされるため、こういったスキームが可能になった。

しかし、今回はこれらJV2社も指定された。AMDは今後両社に技術を供与できない。

 

今回のリスト

天津海光先進技術投資有限公司(THATIC) Chengdu Haiguang Integrated Circuit 成都海光集成電路設計有限公司(Hygon)
Chengdu Haiguang Jincheng Dianlu Sheji
Chengdu Haiguang Microelectronics Technology 海光微電子技術有限公司(HMC)
Chengdu Haiguang Wei Dianzi Jishu
Higon Higon Information Technology
Haiguang Xinxi Jishu Youxian Gongsi
THATIC
Tianjing Haiguang Advanced Technology Investment
Tianjing Haiguang Xianjin Jishu Touzi Youxian Gongsi
Sugon(曙光信息産業)
  中国政府系のスパコン開発大手
 
中国科学院が出資
Dawning
Dawning Information Industry
Sugon Information Industry
Shuguang
Shuguang Information Industry
Zhongke Dawn
Zhongke Shuguang
Dawning Company
Tianjin Shuguang Computer Industry.
無錫江南計算技術研究所
(
Wuxi Jiangnan Institute of Computing Technology)
Jiangnan Institute of Computing Technology
JICT
(既に指定)
 
国防科技大学(NUDT)
(追加)
 湖南国防科技大学

無錫江南計算技術研究所のスーパーコンピューターの「神威太湖之光」は、6月17日発表のスパコン計算速度の世界ランキングで3位に入った。
首位は米のOak Ridge National Laboratoryの「Summit」、2位は同じく米のLawrence Livermore National Laboratoryの「Sierra」で、日本からは産業技術総合研究所の「AI橋渡しクラウド(ABCI)」の8位が最高。東京大・筑波大の「オークフォレスト・パックス」は16位、理化学研究所「京」は20位だった。


国防科技大学(NUDT) は既に指定されているが、湖南国防科技大学の名を使って部品を輸入しているとして、湖南国防科技大学を追加指定した。

 

今後、日本企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出、再輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。

「再輸出」の規制は米国の国内法を海外の国にも適用する「域外規制」であり、もし、日本企業がこれに違反し、米国品を再輸出した場合には、罰金、禁固、取引禁止顧客としての指定、米国政府調達からの除外等が課せられ、そのため実質的に米国との取引が以後出来なくなる事態が生じる。

「域外規制」では、中国などへの輸出の場合は米国品が25%以上含まれておれば、再輸出となり、規制対象となる。
(イラン、北朝鮮、シリア、スーダン向け輸出については米国品が10%以上)

 


2019/6/25  アップル、対中関税引き上げ反対の書簡; Dell、HP、Intel、Microsoftも4社共同で 

 

米中貿易摩擦が高まりを見せるなか、Appleは6月17日、Robert Lighthizer 米国通商代表に対して公開書簡を送付した。

米国が中国からの輸入品 約3000億ドルに対し最大25%の関税をかける第4弾制裁に反対するもの。


内容は次の通り。

今回の案ではAppleの主要製品( iPhone, iPad, Mac, AirPods,  AppleTV)の全てと米国で修理に使用する部品やバッテリーが含まれている。また、モニターやキーボードのようなアクセサリーも含まれている。

我々は政府に対し、これら製品に関税を掛けないよう、強く要請する。

Tariff Code  Apple Products
8517120050  iPhone 
8471300100 MacBook, iPad, iPod Touch 
85176200  Apple Watch, AirPods, HomePod, BeatsWL, AirPort, Time Capsule 
8471490000 iMac 
8517700000   iPhone repair parts 
8525501000

8528520000
8471602000
8518302000
9113908000 
AppleTV 

Computer Monitors/MB Monitor Modules
Keyboards
Wired headphones/earphones
Wired speakers
8507600020  Batteries, battery cases 

   
(Appleの経済的貢献)

Appleは米国で最大の雇用者の1つである。直接従業員、製造・販売面での協力会社の従業員、成長するアプリケーション分野で生計を立てる米国人を含めて50州全てで200万以上の雇用に責任を持っている。

2018年に減税案が通り、我々は米国経済に対し、5年間で3500億ドル以上の直接貢献を行う意向を表明し、それを実行しつつある。いくつかの新しい拠点を開き、米国で新たな雇用をつくった。

Appleはまた、政府への米国最大の納税企業であり、さらに地方の固定資産税やSales tax、従業員の税で毎年数十億ドルを払っている。

最後に、Apple製品は米国の家庭、学生、企業、政府組織、学校、病院などで、連絡、教育、健康改善、創造などのために使われている。

(関税の影響)

Apple製品への米国の関税はAppleの米国経済への貢献を減らす結果となる。

米国の関税は、Appleのグローバルな競争力への重荷となる。グローバル市場で競合する中国企業は米国市場ではあまり活動しておらず、米国関税の影響を受けない。米国企業以外の競合企業も同様である。このため、米国の関税は我々のグローバルな競争相手に塩を送ることとなる。

(結論)

我々はこの関税案を進めないよう、強く要請する。

ーーー

Appleは、関税が掛けられた場合、値上げするのかどうかについては触れていない。

政府への関税取り止め要請とは別に、Appleは主要取引先に対し中国での集中生産を回避するよう要請したという。日本経済新聞が報じた。

米中貿易戦争の激化と中国の人件費高騰を受けリスクを分散する目的で、Apple向けの中国生産のうち15〜30%を海外に分散するよう検討を促した。
Appleの調達額は10兆円を超え、同社製品の9割超は中国で生産されているとされる。

日経アジアレビューによると、アップルから要請を受けた主要取引先は、iPhoneの組み立てを行っている台湾の鴻海精密工業、和碩聯合科技(Pegatron)、緯創資通(Wistron)のほか、MacBookを生産する広達電脳(Quanta Computer)、iPadを生産する仁宝電脳工業(Compal)、 AirPodsを生産する英業達(Inventec)など。

メキシコ、インド、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどが有力な候補地に挙がっている。

ーーー

Dell Technologies、HP、Intel、Microsoft の4社は6月17日、USTRに共同で書簡を送った。

米国の主要イノベーターとして知的財産保護の重要性を認識しており、アンフェアは知財慣行への政府の対応には感謝するが、ラップトップコンピューターやタブレットに対する今回の関税引き上げ案は中小企業、幅広い消費者、デバイスの製造業者を含めた多くの米国企業を不相応に傷つけることになる。同時に、それらへの関税はUSTRが是正しようとしている中国の貿易慣行を是正することにならず、逆に、米国の技術的リーダーを傷つけ、革新を行い、グローバル市場で競争する力を弱めることとなる。

このため、これら製品を除外することを要請するとし、以下の背景説明をしている。

I.  4社は主導的イノベーターであり、雇用を創っている。

II.  関税は米国の企業、消費者、学校を不相応に傷つける。

米国のラップトップメーカーは米国消費者を満足させるため、中国に頼っている。

 1) 消費者への害

Consumer Technology Association の試算では、米国の価格は少なくとも19%(平均価格のラップトップで1台 120ドル程度)上昇する。
価格に敏感な消費者は購入を止め、古いものを使ったり、使うのを止めるかも知れない。

予算が決まっている学校は大変だ。学校での1人1台がやれなくなる。

 2) 中小企業への害

米国には3千万の中小企業があり、米国の雇用の半分を占めるが、業務の効率化のためラップトップを使っている。

 3) イノベーションへの害

ラップトップのメーカーも著しく傷つけ、米国が技術面で引っ張っていく能力を害する。

関税をフルには負担できず、値上げせざるを得ないが、値上げで需要が減少する。

長期的に革新能力を失い、米国の技術面でのリーダーシップを維持できなくなる。

米国以外の競争相手は、米国市場でのシェアが少ないため、被害も少なく、相対的競争力が増すことになる。

III.  関税は中国のアンフェアな知財慣行の是正に役立たない。

 

 



2019/6/26 
トランプ大統領、「タンカーは自国で防衛を」、日米安保破棄も言及 

米国は6月24日、イランへの大規模な追加制裁を発表した。ハメネイ師のほか、同師直属のイラン革命防衛隊の幹部8人を対象に指定した。国家元首に制裁に科すのは極めて異例。

指定されると米国での保有資産が凍結され、米企業との取引も禁じられる。制裁対象と取引をした第三国の企業や人物も米国の制裁対象になる可能性があり、イランと外国企業の取引を難しくする効果がある。

ポンペオ米国務長官は「テロを誘発し、核兵器や弾道ミサイルを開発する資金源を絶つ」と狙いを説明した。

トランプ大統領は、制裁によりハメネイ師と同師の組織は金融リソースにアクセスできなくなると説明。「イランの最高指導者は同政権による敵対的行為に究極的に責任を負う」と述べた。

イラン革命防衛隊の幹部8人は、弾道ミサイルプログラムや国際海域での商船に対する「嫌がらせや妨害工作」など、「地域での悪意ある活動」を指揮したとしている。

トランプ大統領はツイッター(後記)の最後でこう述べている。

The U.S. request for Iran is very simple - No Nuclear Weapons and No Further Sponsoring of Terror!

圧力を強めて交渉のテーブルに着くよう迫るが、イラン側は対決姿勢を一段と鮮明にしている。

 

ホルムズ海峡でのタンカー攻撃を受け、緊張が高まっているが、トランプ大統領はツイッターで、「なぜ米国が他国のために無報酬で航路を守っているのか。 中国や日本などの国々は、いつも危険な旅をしている自国の船舶を守るべきだ」と述べた。

「米国は世界最大のエネルギー生産国になった。そこにいる必要すらない」としている。

China gets 91% of its Oil from the Straight, Japan 62%, & many other countries likewise.

So why are we protecting the shipping lanes for other countries (many years) for zero compensation.

All of these countries should be protecting their own ships on what has always been a dangerous journey.

We don’t even need to be there in that the U.S. has just become (by far) the largest producer of Energy anywhere in the world!

The U.S. request for Iran is very simple - No Nuclear Weapons and No Further Sponsoring of Terror!

しかし、米国は、ホルムズ海峡に依存する原油輸出国のサウジアラビアを保護する義務を持っている。

1971年8月15日、ニクソン大統領は、ドルと金の交換を停止した。

ニクソンはキッシンジャーをサウジに派遣し、以下の交渉を行わせた。

 ・米はサウジを防衛する。どんな兵器も売る。サウジ王家を未来永劫に保護する。   
 ・見返りに
@サウジの石油販売を全てドル建てにする。
         Aサウジの貿易黒字で米国財務省証券を購入する。

サウジはこれを受け入れ、1974年に調印された。
その後、OPECの他のメンバーもドル建て取引を採用し、ドルが世界通貨となった。

これが「ペトロダラー」システムで、これまで金との兌換が必要なため、無制限なドル印刷は出来なかったのに対し、ほぼゼロコストでドルを無制限に印刷し、輸入決済に充てることが出来るようにな った。

2015/8/10  “The Colder War”   

発言を受け、与党・共和党のリンゼー・グラム上院議員は6月24日、ツイッターで「海上航路での安全な航行は常に安全保障上の国益だ」と強調した。関係国の負担増は必要としつつも米国も安全確保に関与を継続すべきだとの考えを示した。

ポンペオ国務長官も、中東地域の航行の自由を「最重要だ」と強調し、米国の関与継続が必要との認識を示した。

ーーー

米ブルームバーグ通信は6月24日、トランプ大統領が最近、日米安保条約破棄の可能性について、私的に言及したと報じた。

関係者3人の話として伝えたところによれば、トランプ氏は有事の際に米国が日本を支援する義務を負う一方、日本側にその義務はないと主張し、日米関係をこれまでより相互的なものとすることを望んでいるという。

付記 Trump大統領は6月26日、テレビのインタビューで日米安保に不満を表明した。

If Japan is attacked, we will fight World War III.
We will go in and protect them with our lives and with our treasure.
We will fight at all costs, right?

But if we are attacked, Japan doesn’t have to help us at all.
They can watch on a Sony television the attack.
So, there’s a little difference, OK?

 


2019/6/27 Huawei、米 Verizonに特許料10億ドル以上を要求 

米国から攻撃を受けている中国のHuawei が米モバイル通信大手のVerizon Communications に対し、10億ドル以上の特許使用料の支払いを要求していることが分かった。


米紙などが6月12日、消息筋の言葉を引用して、「Huaweiの知的財産権担当役員が2月にVerizonに書簡を送 り、特許料を支払うべきだと通知した」と報じた。両社の代表が6月初めにニューヨークで会い、問題となった一部の特許について議論したことも分かった。

HuaweiはVerizonに対して、コアネットワーク装置、有線インフラ、モノのインターネット技術など、自社の230件以上の特許使用料の支払いを要求しており、全体特許使用料は10億ドル以上に上るという。

一般に特許権者はいつでも特許料の請求をできる。HuaweiはVerizonが自社特許を使用していることを認識していたが、ビジネス上の理由でこれまで請求していなかった。

HuaweiがVerizonに支払い要求の通知をしたのは、米司法省がHuawei と孟晩舟 Huawei副会長を起訴した後である。

ーーー

米上下両院は2018年8月、HuaweiやZTEなど計5社への締め付けを大幅に強化することを盛り込んだ「2019年度米国防権限法」を超党派の賛成で可決し、8月13日にトランプ大統領が署名、成立した。

2018/12/11    2019年度米国防権限法(NDAA2019)  ---  Huawei、ZTE等の米政府機関との取引からの排除 

カナダ司法省は2018年12月1日、Huawei の創業者 任正非の娘である孟晩舟副会長 兼 最高財務責任者(CFO)をバンクーバーで逮捕した。

2018/12/10 華為技術(Huawei Technologies )の副会長の逮捕

米司法省は1月28日、Huawei と孟晩舟 Huawei副会長を起訴した。

2019/2/1 米司法省、Huawei を起訴

Huaweiは3月7日、同社の製品を米政府機関が調達することを禁じる「2019年度米国防権限法」が米国の憲法違反だとして、テキサス州の裁判所で米政府を提訴したと発表した。

米政府はこの後、Huaweiへの攻撃を強めている。

Trump 大統領は5月15日、米企業が安全保障上リスクがある企業の通信機器の調達を禁じる大統領令に署名した。名指しはしていないが、中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei)などが念頭にあると報じられている。

米商務省は同日、安全保障上の懸念があるとして輸出を規制する外国企業のリストに中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei)を追加したと発表した。

2019/5/16    米国、Huawei を対象に2施策

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米国政府の圧力で各国で次世代通信規格「5G」のネットワークからHuaweiを排除する動きが広がっているが、Huaweiなどの中国企業が開発した技術が5Gネットワークの中心である。

Wall Street Journalによると、Huaweiは5G分野で、巨額の研究開発費と、5Gの基本構造を策定する世界各地の会議への積極的な貢献で強力な存在となっている。

5G関連で主要メーカーが保有する標準必須特許(Standard Essential Patents)は次の通り。(IPリティックス:2019/2/4現在)

社名 件数
Huawei 中国 1,529
Nokia フィンランド 1,397
Samsung 韓国 1,296
中興通訊(ZTE) 中国 1,208
Ericsson スウェーデン 812
Qualcomm USA 787
LG Electronics 韓国 744
Intel USA 550
電気通信科学技術研究所(CATT) 中国 545
シャープ 日本 468

広東欧珀移動通信(Oppo)を加えると、5Gに関する全標準必須特許のうち中国勢は36%を占める。

中国が保有する特許には5Gの端末の構成部品、基地局、自動運転車の技術などあらゆる製品に関わる技術が含まれている。専門家によると、世界の通信会社はHuawei製品が禁止される可能性のある地域で事業を行っている企業も含め、5Gネットワークを導入する際にはこの技術の使用許諾を得るためにHuaweiにロイヤルティーを支払わなければならない。

 

Huaweiが5G特許で反撃に出たのを懸念し、共和党のMarco Rubio上院議員はツイッターで、「Huaweiは特許ゴロになった。特許で米国に報復しようとしている」と述べた。

Huawei has become a patent troll. This is an attempt by them to retaliate against the U.S. by setting the stage for baseless, but costly, patent claims.

Huawei is using the tactics of patent trolls to attack U.S. companies in retaliation for Trump administration national security actions against them.
We should not allow China government backed companies to improperly use our legal system against us.

上院議員はHuaweiが米国で特許料を取ることができないようにする法案を提出した。米国特許商標庁が認めた特許に関し、米国のWatch lists に載った企業に対しては法の下での救済を制限するというもの。

これを聞いてHuaweiのCEOはCNBCに対し、「こんな法律が通れば法治国家としての米国のイメージが傷つく」と述べた。



2019/6/27    FedEx、Huawei 制裁を巡り米商務省を提訴
 
物流大手 FEDEX CORPORATION(旧称 Federal Express :FedEx) は6月24日、米商務省を提訴した。

商務省が定めた禁輸リストにより、毎日輸送する「大量の貨物を監視すること」を強いられていると訴えている。

https://about.van.fedex.com/wp-content/uploads/2019/06/FedExComplaintAsFiled.pdf

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米商務省は5月15日、華為技術(Huawei)に対する米国製ハイテク部品などの事実上の禁輸措置を発表した。

輸出管理法のに基づき安保上懸念がある企業を列挙したEntity List (規則 744.11(b) )にHuawei を追加した。

今後、日本企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。

2019/5/16    米国、Huawei を対象に2施策

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訴状の概要は以下のとおり。

FedEx は毎日、約1500万の荷物を引き受けている。そのため、45万人のチーム、2150の拠点、13の航空機の拠点、679機の飛行機、650の空港、39の地上拠点、600の地上設備、18万台の自動車を持ち、220か国以上にわたり事業を行っている。

FedExのような輸送業者は、(HuaweiをEntity List に載せた)Export Control Reform Act of 2018 とExport Administration Regulationsに縛られている。

それによると、荷物の送り主か受取人が “Entity List” に載っているかどうかを調べるため、発送前に名前と住所をチェックすることが必要となる。

しかし、この法律では、FedExのような輸送業者にはできないことを求めている。例えば、許可なしでは輸出できないモノを含んでいるかどうかを確認することを求めている。荷物が許可が必要かどうかなど、一般の輸送業者には判断不能である。

しかし、この法律は輸送業者に需要家が法律に違反していないかどうかをチェックする責任を負わせており、やらないとペナリティを課すこととなっている。
(CEOによると、
1日に扱う貨物は約1500万個にもなるが、一つでも違反が発覚すれば、1個あたり25万ドルの罰金を支払わねばならないという。)

毎日、何百万もの荷物の中味をチェックさせられる。実際にも、経済的にも、多くの場合に法律的にも不可能なのに。
需要家は荷物を封をして送ってくる。仮にやればプライバシー違反である。しかも免責条項はない。

以下、詳細に記載した後で、裁判所に以下のことを求めている。

a) 商務省が原告に本命令をすることを永久に禁止

b) Export Administration Regulationsの規定を原告に適用するのは違法であると宣言すること。

c)  原告にコストと費用(弁護士費用を含む)を支払うこと。

d) 適当と思われる追加の救済策

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Huaweiは5月24日、FedExを利用して日本から中国へ送った同社の小包2つが本来の目的地に届かず、米国へ送られていたことを明らかにした。
FedExはほかにも、ベトナムから香港とシンガポールのHuawei支部に送られることになっていた小包2つも米国に転送しようとしており、そのうち1つはすでに回収されたが、もう1つは未回収だという。Huaweiはこれら4つの小包には書類しか入っておらず、技術関連の情報は入っていないとしたと伝えた。

FedExはこの誤配送を謝罪し、「不注意に誤配送」されたことを「後悔している」と表明した。同社はこの出来事は外部からの圧力によるものではないとした。

中国国営通信の新華社は6月1日、中国当局が調査に乗り出すことを決めたと伝えた。調査理由について、中国の顧客の「合法的な権益を著しく損ねた」としている。

中国商務省は5月31日に、中国企業の正当な利益を損ねる外国企業をリスト化する方針を示しており、FedExがこれに載ると推測されている。

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FedExは6月23日、もう一つのミスを発表した。ルールを読み誤った過剰反応と見られる。

技術情報誌の記者がHuawei P30 スマホを米国の同僚に発送した。FedExはこれを発送者に返送し、米国とHuawei及び中国政府との問題で輸送できないと伝えた。

その後、FedExは公式に、Huawei製品はHuaweiとブラックリストに載っているHuaweiの子会社以外には輸送すると述べた。

Huaweiは、同社は現在、FedExもUPSも利用していないと述べ、同社製品を輸送しないのはFedExの権利にはないとし、報復すると述べた。

中国の外務部は詳細な説明を求めている。

 


2019/6/28    米製薬大手AbbVie 、 しわ取り薬「ボトックス」のアイルランドの製薬会社 Allerganを買収

米製薬大手AbbVieは6月25日、 しわ取り薬「Botox」のアイルランドの製薬会社 Allerganを約630億ドルで買収すると発表した。

Allerganの株主は1株当たりAbbVie株 0.8660株と現金120.30ドルを受け取る。1株当たりの買収額は合計で1株188.24ドルと、前日の終値に45%上乗せした水準となる。

債務を含む買収総額は830億ドル。 新しいAbbVieは旧AbbVie株主が83%、Allergan株主が17%所有することとなる。

AbbVie は、主力の関節リウマチ治療薬「Humira」が欧州で安価の後発薬の競争にさらされ、主要市場の米国では2023年に特許が切れることから、ポートフォリオの多様化を迫られていた。

Humira(Adalimumab:ADA)は遺伝子組換えによって作られたヒト型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体製剤。

米国で2002年に、日本では2008年に承認され、 世界80カ国で約37万人の患者に投与されている。
TNF阻害薬としては「レミケード」、「エンブレル」に次いで3剤目の生物学的製剤で、「レミケード」同様に抗体によってTNFαの働きを阻害する。関節で過剰に産生されているTNFαの働きを阻害する事によって関節リウマチの痛みの改善だけでなく、関節破壊進行を抑え る。

買収により、Humiraの比重が薄まるとともに、成長分野の製品を取り込む。

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AbbVie Inc.は米国の製薬会社で、2013年初めに、米Abbott Laboratoriesからスピンオフして誕生した。

同社はアイルランドの製薬大手Shire Pharmaceuticalsに買収提案をしていたが、Shireは2014年7月、買収で合意した。

しかし、AbbVie は2014年10月15日、Shire Pharmaceuticals 買収を撤回すると発表した。
米政府が9月22日に節税目的の本社移転の
抑制を狙った新規則を発表したため、国外に会社を設立することを含む買収効果が不透明になったと判断した。

2014/10/20 買収・合併による節税目的の海外移転禁止の動き強まる    

AbbVie は2015年3月4日、同業のPharmacyclics Inc を210億ドルで買収することで合意したと発表した。

これにより、AbbVie はPharmacyclicsの血液癌治療薬 Imbruvica ®(一般名:ibrutinib)を手に入れる。

AbbVieは
世界ナンバー1のブロックバスターの関節リウマチ薬Humira ®に依存している (2014年の総売上高の60%を占める) が、2016年の特許切れにより2017年頃から販売の減少が予想されており、今回の買収で癌分野へパイプラインを広げ、これに備える。

2015/3/9 米国の製薬会社 AbbVie、同業のPharmacyclics Inc を210億ドルで買収

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Allergan はWatsonによるActavis、ActavisによるAllerganと、二度にわたる買収で、いずれも買収された会社の社名を新社名にしている。

本社を税率の低いアイルランドに移すため、Pfizerが買収したが、米国の新たな税制では本社移転による恩恵がなくなり、断念した。
最近、Carl Icahnが同社の株を大量に取得したとされる。

2014/10/22 米製薬会社 Allergan を巡る買収合戦
2015/11/26 Pfizer、アイルランドのAllerganを買収
2015/7/29 後発薬最大手のTeva、米 医薬大手の Allerganから後発薬事業買収
2016/4/7 Pfizer とAllergan、合併計画断念

Allergan Plc は2016年9月20日、バイオ医薬品大手の米Tobira Therapeutics Inc. を最大16億9500万ドルで買収することで合意したと発表した。

2016/9/23 Allergan、バイオ薬大手のTobira Therapeuticsを買収 

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新しいAbbVieの状況は次の通り。(2018年ベース:百万ドル) 

  旧AbbVie 旧Allergan 新AbbVie
売上高 32,753 15,787 48,540
うちHumira 19,936   19,936
  比率  61%   41%
営業損益 6,383 -6,248  
純損益 5,687 -5,143  

Allerganの2016年の純損益は 14,695百万ドル

Humiraの比重が薄まるとともに、成長分野の製品を取り込む。

新会社の主要製品:

このうち、旧Allergenの製品は次の通り。

 


2019/6/29    JDI、一部の支援は決まるが、依然、不安 

ジャパンディスプレイ(JDI)は6月27日、中国の嘉実基金管理から合計522億円のコミットメントレターを受領したと発表した。
JDIの需要家の米国のAppleからの支援の出資100百万ドルを含んでいる。

但し、この総額はこれから出資を募るもので実現するかどうかは未定である。また中国政府からの介入がないことを前提にしている。

この時点では、香港のOasis Management からの150百万ドル については連絡なしとしていたが、翌28日に出資決定の通知を受領したと発表した。
いろいろの条件がついている。

嘉実基金管理は不足の場合、追加で200百万ドルをだすとしていたが、これについては触れていない。

全部がうまくいっても、85〜117億円がまだ不足する。

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JDI は6月18日、都内で株主総会を開いたが、その席で、台湾勢が抜けた穴を埋めるため、香港ヘッジファンドのオアシス・マネジメントなどと「800億円はきちんとした形で調達できるよう交渉している」と述べた。いずれも6月27日までに機関決定する予定としていた。

2019/6/20 ジャパンディスプレイ 株主総会

その時点での計画は以下の通り。

中台連合の支援
 @出資  420億円
 ACB-1  180億円
 小計    600億円
 BCB-2  200億円
 合計    800億円

台湾のTPK Holding は離脱(通知済)
同じく
Cosgrove Global も離脱予想(未通知)→その後離脱通知

新たに香港のOasis Management が150百万ドル(160億円)

中国の嘉実基金管理
 当初の190百万ドル(210億円)+200億円を、
200百万ドル(220億円)+200億円に。

 不足の場合、更に200百万ドル(220億円)

以上により、合計800億円

 

JDIは通知期限の6月27日夜、以下の発表を行った。

1) 中国の嘉実基金管理から下記のコミットメントレターを受領
  @ 200百万ドルを300百万ドル(322億円)に変更
     追加の100百万ドルはAppleから支援を受けて行うもの

  A 200億円

  合計 522億円だが、いずれも投資家から出資を募るもので、出資を確保できない可能性がある。
  また、いずれも、中国政府からの介入がないことを条件としている。

2) Oasisについては連絡なし。

3)  当面必要な@出資+ACB-1の600億円に対し、現在の手当ては322億円で278億円不足、OASISが参加しても 117億円不足で、鋭意協議中。

4) 先にAppleから支援があったが、更に追加された。

前回:前受金に対する債権相殺を2年間にわたり、半額繰り延べ
今回:3/4に相当する金額を繰り延べ

6月28日に以下の追加発表を行った。

1) Oasisから、150百万米ドル(約161億円)〜180百万米ドル(約193億円)の出資の内部の機関決定がなされた旨の報告を受けた。

2) 下記の条件付き:

@ JDIの主要顧客(Apple)から製品の購入中止又は購入量の大幅な削減の検討又は決定に関する通知を受けていないこと、
A
出資が完了するまでの間において、JDI株式の終値が30円を下回ったことがないこと
B 今回の調達資金(Oasis分を含む)が
600億円以上であること

まとめると、次の通り で、85〜117億円がまだ不足する。また、これらはいずれも条件付きであり、実際に払い込みが済むまでは安心できない。
また、Oasisの条件の、Appleからの購入量の削減については大丈夫だろうか。白山工場の一時停止
(今後の休止の可能性も)などからみると、Appleから購入量の大幅削減の通知を受けているのではないのだろうか。

   

当初案

2019/6/17 JDI 発表

6/27 

JDI発表

状況 あり得る
ケース
台湾 TPK Holding
宸鴻集団
230百万ドル
(250億円)
離脱 通知受領
Cosgrove Global 130百万ドル
(140億円)
機関決定の通知 未受領
  →
離脱 通知
中国 Harvest Tech Investment Management
嘉実基金管理)
190百万ドル
(210億円)
190百万ドルについては200百万ドルに増
 
200百万ドル
(220億円)

自社 200百万ドル
Apple 100百万ドル
 (計 322億円)

(CB-2)         200億円 200億円についても機関決定。 200億円

 

200億円
  不足の場合、更に出資 200百万ドル
(220億円)

未定

香港 Oasis Management 離脱社代替 150百万ドル  150百万ドル
(160億円)
150180百万米ドル
(約
161億円〜193億円)
合計 800億円   800億円 683億円〜715億円

付記  7月12日発表

 1) Harvestは追加で100百万ドル出す。
 2) 為替レートなどで合計が800億円未達の場合、差額をOasisが出す。
 3) 
臨時株主総会を8月29日を目処に開催


2019/6/29 米中首脳会議、「米は追加関税課さず」

トランプ大統領と習近平国家主席は6月29日、大阪市内で会談した。

両首脳は昼前から約1時間にわたって会談。通信機器最大手、華為技術(Huawei)への米商務省による制裁や、北朝鮮の核開発問題を巡っても意見を交わしたとみられる。

会談では、習主席が、「中米関係の発展に関する根本的な問題について意見を交わし、協調、協力、安定を基調とした中米関係を推進したい。」「中国と米国は協力すれば共に利益を得られ、戦えば共に傷つく」とし、「両国関係を発展させる根本的な問題について意見を交わしたい」と語りかけた。

トランプ大統領は通商協議について「少しつまずいたが、我々はまた近づいている。きっと公正な合意がまとめられる。ものすごくいい成果を期待している」「公正な貿易を実現できれば、米中は歴史をつくることができる」と応じた。

会談で、中米が平等と相互尊重に基づいて経済貿易協議を再開することで合意した。米側は、中国の輸出品に再び新たな関税を上乗せしないと表明、両国の経済貿易チームは具体的な問題について討議する。

会談終了後、トランプ大統領は「素晴らしい会談だった。期待以上といえるだろう。協議は再開する」と記者団に語った。
米中首脳会談に続いて開いたトルコとの首脳会談の冒頭で、「(両国関係は)再び軌道に戻った」と語った。

トランプ大統領はHuaweiへの事実上の禁輸措置に関連し「アメリカ製品をこれからも売ることを認めていきたい」と述べ、米企業によるHuaweiへの部品販売などを認める考えを示した。
「大量の米国製品がHuaweiのさまざまな製品に使われており、取引を続けてもかまわないと思っている」と述べた。「安全保障上問題がないところは、装備・設備などを売ってもいい」とし、この問題については「今後どうなるのか見極めたい」と語った。

付記

米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は6月30日、Huaweiに対する制裁緩和について、禁輸対象リストに同社を残し続けると明らかにした。

「一般的な恩赦ではない」と説明した。米商務省は「Entity List」に引き続き掲載する。米国製品などを輸出する企業に対しては、汎用品の取引にのみ輸出許可を出す。

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トランプ大統領はこの後、韓国を訪問するが、ツイッターで出来れば北朝鮮の金委員長に挨拶したと述べた。

After some very important meetings, including my meeting with President Xi of China, I will be leaving Japan for South Korea (with President Moon).
While there, if Chairman Kim of North Korea sees this, I would meet him at the Border/DMZ just to shake his hand and say Hello(?)!

 


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