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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2020/1/15 米、中国の「為替操作国」解除 

米財務省は1月13日公表の半期為替報告書で、中国の「為替操作国」への指定を5カ月ぶりに解除した。

https://home.treasury.gov/system/files/136/20200113-Jan-2020-FX-Report-FINAL.pdf

ーーー

2019年8月5日、人民元相場が対ドルで1ドル=7元台に下落した。中国人民銀行は6日、基準値を1ドル=6.9683元に設定したと発表した。基準値としては2008年5月以来、約11年ぶりの元安水準となる。
制裁関税の影響を緩和するために中国政府が人民元安を容認しているとの見方が広がった。

これを受け、米財務省は8月5日、中国を「為替操作国」に指定したと発表した。

2019/8/6 米、中国を為替操作国に指定

米財務省は4月と10月に連邦議会に半期為替報告書を提出するのが通例だが、2019年10月の公表を見送って中国側の出方を見定めていた。

米国と中国は2019年12月に貿易交渉の「第1段階の合意」で合意し、1月15日に調印を行う。これには人民元政策を透明にする為替条項を盛り込む。

White Houseは“Historic Phase One Trade Agreement”で合意したと誇った。

中国は、知財、技術移転、農業、金融サービス、通貨、為替レートの分野での構造改革に同意した。
効果的な実施のための強力な紛争解決制度を含んでいる。

USTRはFact Sheet を発表したが、通貨については「通貨切り下げや為替レートの目標設定をやめる。透明性、説明メカニズムを推進」としている。

2019/12/16  米中貿易協議、第1段階で合意 

1月13日の上海外国為替市場では、米中貿易協議における第1段階の合意署名を控え、1ドル=6.89元まで上昇、2019年7月末以来5カ月半ぶりの高値をつけた。

米政権は中国の通貨安誘導の懸念が和らいだと判断し、 「為替操作国」への指定を5カ月ぶりに解除した。

ーーー

米財務省は為替操作国に指定する条件として(1)対米貿易黒字の規模(2)経常黒字の規模(3)継続的な通貨売り介入――を掲げている。

  従来の基準 2019/5より改正
@重大な対米貿易黒字 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上 同左
A実質的な経常黒字 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上 GDPの2.0%以上
B外為市場に対する介入 GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入
(12カ月のうち、8カ月
同左
(12カ月のうち、6カ月

財務省は2016年4月の報告で、3つの基準全てに当て嵌まる国はないことを確認したが、3つの基準のうち2つに該当する国を「監視リスト」に載せ、監視していくこととした。

2016/5/2 米、日本や中国などを為替操作「監視リスト」に

これまでと今回のリストは下記の通り。

  日本 中国 韓国 台湾 ドイツ スイス インド アイルランド ベトナム イタリア マレーシア シンガポール
2016/4
2016/10
2017/4
2017/10
2018/4
2018/10
2019/5
 

@A

@

A

@A

 

 

@A

@A

@A

@A

AB
2019/8   操作国                    
2020/1
@A

@

@A

@A

@A

 

@

@

@A

@A

AB

中国は、2016/10以降は@の1つしか基準を超えていないが、対米貿易黒字が膨大なため、次回の報告書でも自動的に指定される。今回も同様である。

台湾は2017/4に1つしか基準を超えず、その後、外れた。

韓国は2019/5に@が基準から外れたが、引き続きリストに残った。今回@Aでリストに残った。

アイルランドとベトナムは前回の2項目から1項目に減った。これが続けばリストから外れる。


今回の報告のまとめ。

 


2020/1/16 T-Mobile/Sprint 合併承認を巡る裁判

T-Mobile/Sprint 合併承認を巡る裁判で、合併を認めた米政府側が裁判所に「合併は公共の利益になる」とする文書を提出したのに対し、合併反対の州側が裁判所に反論を提出した。

T-Mobile/Sprint側と州側の最終弁論は1月15日に行われ、2月末までに判決が行われる。

 

付記

米連邦地方裁判所は2月11日、合併が消費者に悪影響を及ぼすとして差し止めを求めていた複数州の訴えを退けた。

米ニューヨーク州は2月16日、上訴しないと表明した。他の自治体も訴えを取り下げる公算が大きい。
両社は2月11日に、州側が上訴しないことを条件に4月1日にも合併手続きを完了する方針を示した。

ーーー

ソフトバンクグループ傘下で米携帯4位のSprintと同3位でドイツテレコム傘下のT-Mobile US, Inc. は2018年4月29日、経営統合することで合意したと発表した。



2018/5/2 ソフトバンクとドイツテレコム、子会社 Sprint とT-Mobile USの統合で合意 

米司法省は2019年7月26日、ソフトバンクグループ傘下の米携帯通信4位 Sprintと、同3位T-Mobileの合併を条件付きで承認すると発表した。
新規参入をめざす衛星テレビ大手Dish Network Corpにプリペイド式携帯事業や周波数帯を売却することを条件に合併を認めた。

Dish NetworkはSprintの子会社 のプリペイドモバイル事業(Boost Mobile、Virgin Mobileなど)を約15億ドルで、800MHzの無線周波数帯を約35億ドルで取得し、合計930万人にのぼるその顧客を取得する。
Dishはこれらの資産を3年間売却できない。
Dishは携帯電話サービスを提供することになり、7年間の移行期間中はT-Mobileのネットワークを利用できる。

米連邦通信委員会(FCC)は10月16日、合併計画を3:2で承認した。連邦当局の承認を得たことで、合併の実現は下記の一部の州による差し止め訴訟の行方が焦点となる。

米ニューヨーク州など10の自治体が6月11日、携帯大手3位と4位の合併は消費者の不利につながるとして、T-Mobile と Sprintの合併を差し止めるよう米裁判所に提訴した。

訴訟はNew York、California両州が中心となり、Colorado、Connecticut、Maryland、Michigan、Mississippi、Virginia、Wisconsin、Washington DCが名を連ねた。

その後、訴訟への参加、離脱、合併賛成が相次いだ。現状は次の通り。

合併反対  13州+DC 合併賛成 9州
New York
California
Connecticut
Hawaii
Illinois
Maryland
Massachusetts
Michigan
Minnesota

Oregon
Pennsylvania
Virginia
Wisconsin
Washington, D.C.
Arkansas
Florida
Kansas
Louisiana
Mississippi
 
Nebraska
Ohio
Oklahoma
South Dakota

ーーー

司法省と連邦通信委員会(FCC)は裁判の当事者ではないが、2019年12月20日に裁判所に合併の承認を求め、“Statement of Interest”を提出した。

"Statement of Interest"は、米国裁判手続法第517条(28 USC §517)に基づくもので、司法長官が連邦や州の裁判所に係属中の事件において合衆国の利益 (interests of the USA)について考慮させることができる、というもの。

司法省とFCCの合併承認は、Dish Network Corp を新しくこの事業に参入させることで公共の利益になるとし、合併禁止は米国消費者にとって大きな、長期的な利益を損なうとしている。

これに対し、原告側を主導するニューヨーク州とカリフォルニア州の弁護団は1月8日、司法省とFCCはおざなりにしか見えない調査(“what appears to be only a cursory examination”)で承認したもので、政府の主張は無視すべきだと主張する文書を裁判所に提出した。

州側の主張は次のとおり。

合併に反対する州の人口は米国全体の43%を占め、賛成側の州の人口のほとんど2倍に達する。

州側は政府よりも厳しい調査を行った結果、T-Mobile/Sprint とDish Networkが承認根拠となる合併条件を守らないと思われる証拠が見つかった

T-Mobile/Sprint はDish Networkが全国の通信市場で競争相手にならないだろうと見ている。
例えば、ドイツテレコムのCEOなどが価格競争が減ることが合併の理由の一つだと認めている。

ーーー

1月15日の最終弁論では、主張を提出するが、それぞれ30ページに制限されている。

T-Mobile/Sprint は、“failing firm” defense(破綻企業の抗弁)は行わないが、「Sprintは将来的に重要な競争相手にはならないため、合併でSprintが抜けても競争が著しく減るということにはならない」と主張するとみられる。

「破綻企業の抗弁」は、合併を認めないと、単に対象企業が破綻するというだけでなく、対象企業の資産が市場から退出してしまって市場が非競争的になるとの主張

しかし、州側は過去にこれと異なる主張をしている。

Sprintは財政的に安定しており、National carrier としてやっていける。

現在のSprintの状況は2011年のT-Mobileの状況に似ている。T-Mobileが立ち直ったように、Sprintも立ち直れる。同社は5年間、毎年約50億ドルを投ずる計画を立てていた。

Sprintは他にも戦略的にいろいろの代替案を持つ。Sprintは2018年にDishとの合併を検討していた。

Dish Networkについても見方が異なっている。

州側は、Dishは衛星テレビ業者で通信の経験はなく、需要家もネットワークも販売店もブランドも持っておらず、同社の市場参入はSprintに代わることにはならないとする。

 これに対しT-Mobile/Sprint 側は、Dish は多くの人材を持ち、今後について適切な計画を提示していると反論、古い技術を持たないためコストは安いとする。
もし合併条件を守らなければ、莫大な罰金を課されるとし、州側主張に反論している。

 


2020/1/17  米中「第一段階貿易合意」に署名 

米中両国は1月15日、トランプ大統領や中国の劉鶴副首相が参加してホワイトハウスで「第一段階貿易合意」の署名を行った。

 

米中両政府は2019年12月13日、貿易協議の「第一段階」で正式合意したと発表した。

制裁関税での合意は以下の通り。

米国 2500億ドル分は25%の関税を維持
1200億ドル分は15%の関税を半分の7.5%に引き下げ(署名の30日後に)
12/15実施予定の1600億ドル分への15%追加課税を延期
中国 12/15実施予定の5%&10%追加関税を延期(自動車関税 25%+10% も延期)

2019/12/16  米中貿易協議、第1段階で合意 

この時点では口頭での合意で、これから文書化して署名する段階であった。双方の発表には一致していない部分もあり、2019年5月には中国が(口頭で合意した)外国企業に対する技術移転強要を是正する法整備を拒否し、トランプ大統領が「中国は約束を破った」として追加関税を課す対中制裁の強化を決めた例もあり、実際に調印されるかどうか、不安もあった。

実際に中国側には追加関税が撤廃されなかったことへの不満があると報道された。

しかし、最終的に12月の合意のままで文書化され、署名された。

付記

米通商代表部(USTR)は1月21日、中国との貿易交渉を巡る「第1段階の合意」が2月14日に発効すると正式に明らかにした。同日付で約1200億ドル分の中国製品に対する制裁関税を現行の15%から7.5%に引き下げる。

付記

中国国務院関税税則委員会は2月6日、米国から輸入する約750億ドル分の製品の追加関税率について2月14日に引き下げると発表した。2019年9月に課した追加関税の税率を10%から5%に、5%から2.5%にそれぞれ引き下げる。

米通商代表部(USTR)は合意文書Fact Sheet を公表した。

Fact Sheet によると、合意は以下の7項目。

知財(IP) 企業秘密、医薬関連知財、原産地表示、商標、模造品対策等の分野での多くの懸案事項
技術移転 中国は外国企業の中国進出や政府承認の取得等の見返りに技術移転を求める永年の慣行を止めることに同意。
技術移転、ライセンスは市場条件に基づく。
中国政府は外国の技術を取得するための海外投資支援をやめる。
農業 貿易の構造的障壁を取り除き、米国の食品、農業製品・海産物の輸出の大幅拡大をサポート
農業製品・海産物への非関税障壁を取り除く。
金融サービス 幅広い金融サービス業者に対する永年の貿易・投資バリアを取り除く。
通貨 通貨切り下げや為替レートの目標設定をやめる。透明性、説明メカニズムを推進。
貿易拡大 中国は2年間で2000億ドル以上の財・サービスの輸入(2017年比で)
輸入増は、製造製品、食料、農業・海産物、エネルギー製品、サービスを含む。
2021年以降も数年間、同じ傾向を続け、米中貿易のリバランスに。
紛争解決 合意違反なら必要な措置を取る。
両国高官は定期協議を月1回開き、USTR代表と中国副首相も定期的に会談する。
(米政府高官は「中国が合意内容を守らなければ、制裁関税を再発動する」と明言)

 中国は米国からモノとサービスの輸入を2017年比で2年で2000億ドル増やすが、輸入拡大規模の内訳は下記の通り(億ドル)。

  2020 2021 合計
工業品 329 448 777
農畜産品 125 195 320
LNGなど 185 339 524
サービス 128 251 379
合計 767 1,233 2,000

2017年の米国の中国向け財・サービスの輸出は合計 1,863億ドル(輸入は 5,235億ドル)

政府の購入額を協定で決めるなら分かるが、国全体の輸入増額(目標ではなく実額)を決めるのは極めて異常である。
国の輸入額は景気によっても増減するし、品質・価格などで購入元も変わる。品質や価格を保証せずに購入を強制するのはおかしい。

中国の総輸入額が増えなければ、他国からの輸入が減ることになる。

中国の劉鶴副首相は、輸入は市場原理に基づいて行われるため、今回の合意で中国に農産品を輸出する他の国に影響は及ばないとの考えを示した。
中国企業は消費者のニーズや市場の需給に基づいて米農産物を輸入するとし、「中国市場は今や国際市場の極めて需要な一部分となっている。いかなる国も好きなだけ中国に輸出できるわけではない。輸出品に競争力があることが必要となる」と述べた。

中国に本拠を置く穀物トレーダーは、「国有企業への輸入要請や割当制の導入など、ある程度の政府介入があるだろう」と述べた。

ーーー

今回は第一段階に過ぎず、米国は制裁関税第1〜3弾(2500億ドル分)は25%の関税率を堅持し ている。

米国の対中制裁関税:

  当初 8/23 発表 10/11 12/13
@〜B
 2500億ドル
@ 340億ドル  2018/7/6    25% 2019/10/1 30%予定
(→10/15に延期)
 
引き上げ延期 
(25%維持)
25%据え置き
A 160億ドル 2018/8/23  25%
B 2000億ドル 2018/9/24   10%
→2019/5/10  25%
C 3000億ドル 一般  1200億ドル 2019/9/1  10% 9/1   15% 7.5%に引き下げ
消費財 1600億ドル 2019/12/15    10% 12/15  15%  予定 発動見送り

中国も産業補助金の見直しなど構造改革は拒んだままである。

米国は中国のMade In China 2025(中国製造2025)計画で、全ての政府補助金の廃止を求めている。

今回の第一段階合意分は中国が既に改善を進めている項目がほとんどである。

しかし、残る項目は中国が簡単に下りれるものではない。中国製造2025計画は国の将来を左右するものである。

難航は必至である。

トランプ大統領も、「早期に第2段階の交渉を始める」と述べつつ、「合意は11月の 大統領選挙後になるかもしれない」とも話す。


2020/1/18  米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)実施法案可決 

北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)実施法案が米上院で可決され、ホワイトハウスに送付された。

付記 2020年7月1日 発効した。

 

米議会下院は12月19日、法案を可決し、上院へ送付した。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 192 193   385
反対 2 38 1 41
棄権 3 2   5
合計 197 233 1 431

2019/12/13 米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の内容を一部修正、米議会で協定承認へ


上院では大統領の弾劾裁判が始まるが、これは他の上院の課題より優先されねばならない。このため、上院ではそれまでの可決を目指し、日程を繰り上げて討議された。

民主党側は下院での可決後、2019年内の採決を求める書簡を出したが、この時点では、上院で多数派を握る共和党上層部は弾劾裁判が終了するまでUSMCA実施法案を扱わないことを明言していた。

関連する7つの委員会で審議され、まず財政委員会、予算委員会、環境・公共事業委員会で可決、歳出委員会、保険・教育・労働・年金委員会(HELP Committee)、商業委員会、外交委員会で1月15日に可決された。

1月16日に上院本会議で89対10の賛成多数で可決された。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 51 37 1 89
反対 1 8 1 10
棄権 1     1
合計 53 45 2 100

共和党の反対はToomey議員で、サンセット条項(加盟国全ての合意がない限り協定発効後16年目に失効する規定)に対する反対に加え、大統領貿易促進権限(TPA)法に違反することを問題視している。

TPA法は大統領に通商一括交渉権を付与する。

TPA法では、大統領は最終的な協定文書を議会に提出してから実施法案を提出するまでに30日以上の期間を設けなければならないとの規定がある。
USMCAについては、最終的に民主党主導の修正交渉の結果が反映されたテキストが2019年12月13日に公開され、同日に実施法案が下院に提出された。

トランプ大統領は直ちに署名するとみられる。

付記 トランプ米大統領は1月29日、実施法案に署名した。

しかし、USMCAの発効には時間がかかると見られる。   

メキシコはすでに法案を通しているが、米国による修正分の承認が必要である。
カナダは1月終わりに始まる下院で議決する予定。


付記

カナダ議会は3月13日、USMCAの実施法案を承認した。カナダ総督による手続きなどを経て成立する。
米国、メキシコは既に承認済み。3カ国全てが批准の通知を終えた後、原則3カ月で発効する。


付記

米通商代表部(USTR)は4月24日、NAFTAに代わる新協定「USMCA」が7月1日に発効すると発表した。
新型コロナウイルスの影響もあり、自動車メーカーや議会から発効延期を求める声もあったが、11月の大統領選に向けて公約を実現したい政権側が押し切った。



2020/1/20
 広島高裁、伊方原発3号機運転差し止め

山口県東部の住民3人が、四国電力伊方原発3号機(出力89万キロワット)の運転差し止めを求めた仮処分申請の即時抗告審が1月17日、広島高裁であった。
森裁判長は申し立てを却下した2019年3月の山口地裁岩国支部の決定を取り消し、四国電力に運転差し止めを命じる決定を出した。

運転禁止の期間は、山口地裁岩国支部で係争中の差し止め訴訟の判決言い渡しまでとした。

仮処分はただちに効力が生じるため、四国電力は決定の取り消しを求める保全異議と仮処分の執行停止を高裁に申し立てる方針。

3号機は現在は定期検査のため停止中だが、検査が終了する4月以降も運転できない状態が続く見通しになった。

四国電力は、決定文の詳細を確認の上、速やかに不服申立ての手続きを行うとしている。

伊方原発3号機が司法判断で運転できなくなるのは2017年以来、2度目。前回は2018年9月の異議審で運転再開が認められた。

ーーー

伊方原発3号機は2016年8月12日、5年3ヶ月ぶりに再稼動した。

この原発は下記の問題を抱える。

 避難計画に弱点を抱える。
  佐多岬の先端側の住民約4700人が孤立する恐れ。

 中央構造線断層帯への地震の影響の懸念    

2016/8/13  伊方原発3号機 再稼動

同原発について住民の仮処分申請が相次いだ。(後記)

ーーー

今回の裁判は、対岸の山口県東部の住民3人が山口地裁岩国支部に求めた仮処分申請である。
避難計画の策定が義務付けられていない原発から30〜40キロ圏にある島しょ部の住民で、理由は以下の通り。

伊方原発周辺の海底に延びる中央構造線が活断層である。
地震による被害や阿蘇カルデラが噴火した場合は火砕流が到達する危険性がある。

山口地裁岩国支部は2019年3月15日、これを却下した。

佐田岬半島沿岸部には活断層が存在するとはいえず、基準地震動の評価に不合理な点はない。
阿蘇山は運用期間中、巨大噴火の可能性が十分に小さいと判断できる。

原告は即時抗告した。双方の主張は下記の通り。

四国電力:伊方原発周辺の中央構造線が活断層ではない。
     海上音波探査によって最も近い活断層も伊方原発の沖合8キロ地点にあると確認されている.

原告: 原発の沖合600メートルにある中央構造線も活断層の可能性がある。
    地震が起きた場合は伊方原発に四電が想定する2〜3倍の揺れが生じる。

今回、広島高裁は運転差し止めを命じる決定を出した。

阿蘇の破局的噴火については、過去の破局的噴火による火砕流が伊方原発の立地場所に到達した可能性は否定できないが、何らかの前駆現象が無いのにそれをもって立地不適とするのは社会通念に反する 。

2017年12月13日の広島高裁 の仮処分決定は巨大噴火の恐れを停止理由としたが、今回はこれは採らない。

しかし、破局的噴火に至らない程度の最大規模の噴火を想定すべきで、噴出量を20〜30立方キロとしても、噴火規模は四国電力想定の3〜5倍に達する。四国電力の降下火砕物や大気中濃度の想定は過少で、これを前提とした規制委の判断は不合理。

原発敷地から2キロ以内に存在する中央構造線について、四国電力側の調査は不十分で、横ずれ断層である可能性は否定できない。

四国電力は周辺海域で海上音波調査を実施し、敷地近くに活断層はないことを確認したとし、地震動評価を行っていない。

中央構造線断層帯長期評価(第2版)には、佐田岬半島沿岸に存在すると考えられる中央構造線を「現在までのところ探査がなされていないために活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる」と記載があり、海上音波探査では不十分なことを前提にしていると認められる。

これらを考慮すると、中央構造線自体が正断層成分を含む横ずれ断層である可能性は否定できない。
その場合、地表断層から伊方原発敷地までの距離は2キロ以内で、仮に十分な調査で活断層だと認められた場合、地震動評価をする必要がある。

しかし、四国電力は十分な調査をしないまま原子炉設置変更許可申請し、規制委は問題ないと判断した。規制委の判断には、その過程に過誤や欠落があったと言わざるを得ない。


差し止めは、並行して行われている差し止め訴訟の判決が出るまで。


後記の通り、2017年12月に広島高裁が火山の噴火リスクを理由に伊方3号の運転差し止めの決定を出したが、四国電力の不服申し立てで決定が取り消された。

関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた2014年5月の福井地裁判決、高浜原発3、4号機の差し止めを命じた2015年4月の福井地裁、2016年3月の大津地裁判決も上級審などで判断が覆っている。

東京電力福島第1原発事故後、安全性の保証をせずに大飯原発3、4号機を再稼働させたとして、福井県の住民らが関西電力に運転差し止めを求めた訴訟で、福井地裁は2014年5月21日、現在定期検査中の2基を「運転してはならない」と命じ、再稼働を認めない判決を言い渡した。

名古屋高裁金沢支部は2018年7月4日、運転差し止めを命じた一審・福井地裁判決を取り消し、原告側の請求を棄却した。

2014/5/30 大飯原発差し止め訴訟判決 

関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めを住民らが求めた仮処分申請で、福井地裁は2015年4月14日、再稼働を認めない決定をした。

福井地方裁判所は12月24日、2015年4月の再稼働しないよう命じた仮処分の決定を取り消し、事実上、再稼働を認める判断をした。

2015/4/15 高浜原発、再稼働認めず 福井地裁が仮処分決定 

大津地裁2016年3月9日、高浜原発3号機と4号機について、「福島の原発事故を踏まえた事故対策や緊急時の対応方法に危惧すべき点があるのに、関西電力は十分に説明していない」として、運転の停止を命じる仮処分の決定を出した。

2016/3/10   高浜原発3、4号機、運転差し止め仮処分決定 

大阪高裁は3月28日、高浜原発の3号機と4号機について、「原子力規制委員会の新しい規制基準は不合理ではなく、原発の安全性が欠如しているとは言えない」として、大津地裁が運転停止を命じた2016年3月の仮処分の決定を取り消し仮処分の決定を取り消し、再稼働を認めた。

2017/3/28 大阪高裁、高浜原発3・4号機の再稼働認める判断

ーーー

伊方原発の運転差し止め仮処分申請の状況は下記の通り。
 

広島、愛媛両県の住民4人が、「重大事故の危険がある」と運転差し止めを求めた仮処分申請
広島地裁 2017年3月30日、住民側の申し立てを却下
住民側 決定を不服として抗告
広島高裁 2017年12月13日、運転の停止(2018年9月末まで)を命じる仮処分の決定
 阿蘇山で巨大噴火が起きて原発に影響が出る可能性が小さいとは言えず、新しい規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理
  2017/12/15 広島高裁
異議審
広島高裁
2018/9月25日、四国電力が申し立てた異議を認め、仮処分決定を取り消し。
 阿蘇カルデラの破局的噴火について社会通念上、想定する必要がなく、立地は不適でないと判断
  2018/9/27 広島高裁異議審、伊方原発3号機の運転再開を認める 

 

上記に続き、2018年10月以降の運転差し止めを求めた仮処分申請
広島地裁 2018年10月26日、申し立てを却下

 巨大噴火が阿蘇で発生する可能性は非常に低く、事故が起こるリスクは、直ちに除去しなければならないほど差し迫った危険には当たらない。 

伊方3号は2018年10月27日未明に再稼働した。

 

愛媛県の住民による仮処分申請

伊方原発は南海トラフ地震の震源域にあり、中央構造線断層帯も近い。四国電の地震や津波の想定は不十分。
重大事故が発生した場合、住民も甚大な健康被害を受ける。

松山地裁 2017年7月21日、住民側の申し立てを却下する決定。
高松高裁 2018年11月15日、松山地裁決定を支持し、運転を認める決定。

  阿蘇カルデラで運用期間中に「破局的噴火」が起きる根拠は不十分で「立地が不適とは考えられない」とした原子力規制委員会の判断を追認

 

大分県の住民による仮処分申請

原発事故が起きれば危険が及ぶ。阿蘇カルデラが破局的噴火をした場合の危険性など。

大分地裁

2018年9月28日、住民側の申し立てを却下する決定

 

 


2020/1/21 英国のEU離脱関連法案、上院で審議 

英議会下院は1月9日、英国がEUから離脱するための関連法案を賛成多数で可決、法案は上院に送付された。

2020/1/10    英下院、EU離脱法案を可決 1月末の離脱実現へ

上院では1月14〜16日の3日間、委員会での審議が行われた。

特に下記の点が問題とされた。

・ 移行期間を11カ月とし、延長を認めないとした点

・ 子供が難民と認められた場合に、その親を難民と認めない点(親が難民の場合は子供を難民として入国を認めるが、逆は認めない)

Theresa Mayの案では認めたが、今回は認めない。EUでは親子の合流を認めない唯一の例となる。

下院では修正案が出たが、348対252で否決された。

野党は、ジョンソン首相は選挙前には労働者や難民児童の保護について妥協することを約束したが、選挙で過半数を取り、約束を破ったと批判している。

上院本会議では1月20日に委員会からの報告が行われ、必要な場合、法案の修正が行われる。
1月21日に本会議で修正案の採決が行われる。

上院には法案の否認決議はなく、修正案の決議だけである。

修正案は下院に送られる。

下院は1月22日にこれを審議するが、与党が過半数を持つため、修正案は否決されると見られ、再度上院に送られる。

どちらかが妥協するまでは修正案が上院と下院を行き来することとなる。卓球戦(parliamentary ping-pong bout)と呼ばれる。

もし決着しなければ、1月末の離脱も難しくなる。

ーーー

上院は一代貴族、世襲貴族、聖職貴族で構成される。

聖職貴族は、国教会の高位聖職者であるカンタベリー大主教、ヨーク大主教、ロンドン主教、ダラム主教、ウィンチェスター主教の5人と、そのほかの21名の教区主教をあわせた計26名。

世襲貴族は1999年のブレア政権の改革で、世襲貴族議員の互選で選ばれる90名に固定された。死亡時には世襲貴族議員の互選で後任が選ばれる。

一代貴族は首相の助言に基づく女王の勅許状によって叙爵される。首相退任時に退任する首相が次の首相に叙爵候補リストを残すケースと、総選挙時に引退を表明した庶民院議員たちを叙するケースが多い。
一代貴族が急増することが懸念されるが、今回、首相交代と総選挙で、24名の純増となり、総数が800人に近づいた。

  一代
貴族
世襲
貴族
聖職
貴族
合計
聖職貴族     26 26
Conservative 198 46   244
中立派 157 30   187
Labour 176 4   180
Liberal Democrat 90 3   93
Democratic Unionist 4     4
Green 2     2
諸党 9     9
無所属 42 7   49
議長 1     1
合計 679 90 26 795

 

 


2020/1/22 カナダ、Huawei 孟晩舟・副会長審理開始  

2018年12月にカナダで逮捕された中国通信機器大手、華為技術の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)の米国への身柄引き渡しの可否を判断する審理が1月20日に始ま った。

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カナダ司法省は2018年12月1日、中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei Technologies)の創業者 任正非(Ren Zhengfei)の娘である孟晩舟(Meng Wanzhou)副会長 兼 最高財務責任者(CFO)をバンクーバーで逮捕した。

米司法省は、イランへの輸出に対する米国の制裁にもかかわらず、華為技術が同国に製品を販売したかどうかについて捜査を始めていた。 8月22日に孟氏の逮捕状を取り、11月29日に孟氏がバンクーバーに立ち寄ることを把握し、犯罪人引渡協定に基づき、カナダに逮捕と身柄引き渡しを求めていた。

2018/12/10 華為技術(Huawei Technologies )の副会長の逮捕

孟氏の弁護団は米側の政治的な意図に基づいた不当な訴追だとして無罪を主張した。

カナダの裁判所は12月11日、同氏の保釈を認める決定を下した。

条件として1000万カナダドル(約8億5千万円)の保釈金を支払 い、GPS(全地球測位システム)付きの追跡装置を身につける。夜間の外出は禁じられ、パスポートは押収される。

米司法省は2019年1月28日、Huawei と孟晩舟 Huawei副会長を起訴した。

司法省の起訴はは2つの案件で行われたが、孟晩舟については、 イランとの取引関係における銀行詐欺と通信詐欺である。

米国の法律および規制では制裁対象国であるイランに関連した米国を通じた米ドル建て決済を含む銀行サービスを禁じており、一般的に金融機関は米国の法律や規制を遵守するために、イラン事業に関係がないことを確認する。IEEPA(International Emergency Economic Power Act :国際緊急経済権限法)により、イランは金融制裁の対象となっている。

華為技術はイランとの取引を香港のSkycom Techを通して行っていたが、米ドルの決済は米国の銀行を通して行っている。

実際にはSkycomは華為技術の子会社で、イランに事務所を有している。このため、取引は 華為技術によるイランとの取引であり、本来なら米国の銀行は取引ができない。

華為技術 および孟晩舟がイラン事業に関して米国の金融機関および米国政府を長期的に欺いたことを訴えの対象とした。

米国は孟副会長の引き渡しを正式に要請し、カナダ司法省は受理した。

2019/2/1 米司法省、Huawei を起訴 

孟被告は2019年3月1日、ブリティッシュ・コロンビア上級裁判所に提出した訴状で、カナダ政府と王立カナダ騎馬警察(RCMP)、カナダ入国管理局(CBSA)による公民権侵害を訴えた。

RCMPに逮捕される前、CBSAが不当な主張を根拠に自分を拘束し、所持品を調べ尋問した 。

当局はその場で孟副会長を逮捕し、カナダ人権憲章に基づく権利を侵害した 。

勾留は「違法」で「恣意的」なもので、当局は勾留の理由や弁護士を呼ぶ権利、黙秘権を意図的に教えなかった 。

カナダ政府は3月1日、米国への身柄引き渡しに関する審理を認めると明らかにした。

カナダと米国の犯罪人引き渡し条約に基づき検討した結果、「手続きを進めるための要件は満たされており、十分な証拠があると確信した」としている。

一般に、引渡し請求の対象となる行為は双方の国において重大犯罪とされていなければならないという「双方可罰性の原則」がある。また、基本的に他国からの引き渡し請求に応じる義務はない。

カナダの法律では同国の法律で違法とみなされない限り、身柄を他国に引き渡すことを禁じている。

カナダの前駐中国大使はイラン制裁違反に関して「カナダはイラン制裁措置に署名していない」としており、犯罪人引渡条約の対象にならない可能性がある。 しかし、カナダ当局は、カナダでも詐欺罪に該当すると主張している。


孟晩舟被告の米国への身柄引き渡しを巡る予備審理は、2019年3月、5月、9月に行われた。

Huawieは2019年5月9日、ステートメントを出した。

第1に、孟に対する嫌疑は事実に基づいていない。孟の事業活動が銀行職員もすべてを把握するなかでオープンかつ透明性を保って行われていた。

第2に、孟の公民権が繰り返し侵害された。

第3に、孟への嫌疑はカナダでは犯罪ではない。カナダはイランに関連した金融サービスについては制裁を行って おらず、引渡し請求は双方可罰性を満たしていない。

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中国政府は、孟被告が昨年12月に居逮捕されたわずか9日後、カナダ人2人を拘束した。
元外交官で独立系シンクタンク「国際危機グループ」に勤めていたMichael Kovrig と、中国を拠点とする実業家で北朝鮮旅行の手配をしていたMichael Spavor で、2019年5月に正式に逮捕された。

Michael Kovrigが非営利のシンクタンク、国際危機グループのために働きながら、スパイ活動と国家機密窃盗に関与し、中国の法律に「著しく違反」したとし、北朝鮮旅行の事業を手掛けるMichael SpavorはMichael Kovrigの主な協力者で、情報が渡されていたとする。

報道では、拘束されて1年になるが、2人は弁護士をつけることもできず、家族に面会できない状態が続いている。

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1月20日に始まる審理では、米国の起訴内容がカナダの法律上でも違法とみなされるかどうかが争点となる。

引渡し請求の対象となる行為は双方の国において重大犯罪とされていなければならないという「双方可罰性の原則」があり、カナダの法律では同国の法律で違法とみなされない限り、身柄を他国に引き渡すことを禁じている。

米国の法律および規制では制裁対象国であるイランに関連した米国を通じた米ドル建て決済を含む銀行サービスを禁じており、これの違反が問題とされた。

上記の通り、カナダの前駐中国大使はイラン制裁違反に関して「カナダはイラン制裁措置に署名していない」としており、カナダの法律では違反にはならないと見られている。

逮捕時の手続きが適切だったかどうかも焦点にな る。

カナダでは逮捕や拘束する際、逮捕の理由や弁護士を呼ぶ権利について説明を受ける権利が法律で定められている が、孟氏側はそういった説明なしに拘束され、人権が侵害されたと主張している。

 

報道によると、審理は23日ごろまで続き、裁判所の判断は後日示される。

双罰性が認められれば、6月に逮捕手続きの正当性の審理に移る。
双罰性が認められない場合、カナダ当局は上訴できるが、孟氏はカナダ国外に出ることが可能になる。


2020/1/23 トランプ大統領の弾劾裁判が開廷 

米上院で1月16日、トランプ米大統領のウクライナ疑惑をめぐる弾劾裁判が開廷した。

既報 2020/1/13   トランプ大統領の弾劾手続き開始へ 

この日の手続きは儀礼的なもので、実際の弁論は21日から始まる。100人の上院議員全員が陪審員になって、「権力乱用」と「議会妨害」で弾劾訴追されたトランプ氏を罷免するかどうか裁く。

まず、弾劾管理人を率いるシフ下院情報委員長(民主党)が訴追決議を読み上げ、「トランプ大統領は弾劾裁判と、すべての公職資格の剝奪、そして罷免に値する」と述べた。

その後に裁判長を務めるロバーツ最高裁長官が宣誓を行い、続いて各議員が宣誓書に署名した。


ホワイトハウスの弁護団は1月18日、下院による弾劾訴追を「憲法違反」と批判し、無罪を訴える内容の準備書面を上院に提出した。 野党・民主党が主導した下院の弾劾訴追を「自由な選挙で大統領を選ぶ米国民の権利に対する危険な攻撃だ」と批判、「2016年大統領選の結果を覆そうとする違法な企てだ」と訴えた。

ウクライナへの軍事支援を凍結した背景として、ドイツなど欧州各国が公平な分担をしているかについて疑問があったとしている。
政敵のバイデン前副大統領親子の捜査をウクライナに求めたことについても、ウクライナの汚職対策への取り組みを重視していたと説明した。
いずれも違法性はなく、「権力乱用」にはあたらないと反論した。

大統領が下院の調査に協力しないよう政府職員に指示した「議会妨害」についても、行政府には秘密保持の権限があり、議会への妨害にはなりえないと主張した。

検察官役の下院代表委員7人も1月18日、上院に準備書面を提出した。

トランプ氏が軍事支援凍結などでウクライナに圧力をかけ、バイデン氏らの捜査をウクライナに求めたのは、「個人の政治的利益のために外国政府に米大統領選に介入するよう求めた」行為と断定 、「米国の民主的価値観と国家安全保障への損害を防ぐため、トランプ氏を有罪にして罷免すべきだ」と求めた。

新たな証人招致や証拠提出を認めるかなどを巡り、共和・民主両党の対立が19日も続いた。

トランプ米大統領は、ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)に出席するため、弾劾裁判の審理が上院で始まる21日にスイス入ったが、スピーチの後、帰国した。

 

共和党の McConnel上院院内総務が1月20日、裁判の進め方に関する決議案を提出した 。これは単純過半数で議決される。

検察官役の下院民主党議員団とトランプ氏の弁護団は、意見陳述の機会をそれぞれ24時間ずつを与えられる。
午後1時から始め、1日12時間で2日間としたが、これでは休憩をいれると毎日翌朝2時までやる必要があり、与党からも反対が出たため、1月21日に各3日間とするよう修正された。

双方の意見陳述のあと、質疑応答が16時間行われる。

その後、証人尋問や新しい情報を検討するかどうかについて、4時間の議論のあと採決される。

証人尋問は過半数の賛成で実施される。上院の勢力は共和党53人、民主党47人のため、証人尋問には共和党から4人の賛成が必要となる。
穏健派議員のうち少なくとも4人は証人尋問を排除しない立場を示しており、可決される可能性はある。


焦点となるのはボルトン
前米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の 証人招致である。共和党指導部は想定外の新疑惑が浮上して情勢が一変する事態を懸念する。

ボルトン氏は1月6日、「上院が証言を求める召喚状を出せば応じる」と表明した。

同氏はこれまで、議会証言に応じるかを裁判所に委ねるとしていた。下院での弾劾調査で民主党はボルトン氏に証言を要求したが、裁判所の最終判断に時間がかかるため証言を断念した。

対ロシア強硬派として知られるボルトン氏はロシアの脅威にさらされるウクライナ向け支援の継続を主張し、トランプ氏と一対一で面会して支援再開を促したとされる。
それに対する大統領の発言など、証言内容によってはトランプ氏に打撃になる可能性もある。

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なお、トランプ大統領がウクライナに政敵の捜査を進めるよう圧力をかける目的で、同国への支援を凍結させた問題で、米国の政府監査院(GAO)は1月16日、議会が承認したウクライナへの支援を留保したことが法律違反だと認定した。

GAOは、トランプ政権によるウクライナ支援の凍結について、「議会が立法した内容を大統領が自らの優先政策と置き換えることは、法の誠実な執行上、認められていない」と指摘した。

1974年制定の執行留保統制法(ICA)は、議会が決定した支援を政府が留保するのを違法としている。また、政府が支援を遅らせたり止めたりする場合は、事前に議会下院に通告しなければならないと定めている が、 トランプ政権は、この事前通告をしなかった。

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CNNテレビが1月20日に公表した世論調査(16〜19日実施)では、トランプ氏の弾劾裁判について、「有罪で罷免されるべきだ」と回答した人は51%で、「無罪で罷免されるべきではない」の45%を上回った。

罷免には陪審員役を務める上院議員の3分の2の賛成が必要である。

 


2020/1/23 英上院、EU離脱関連法案を承認、1月末のEU離脱が確実に 

英上院は先週の委員会の論議を経て、1月20日と21日に本会議を開いた。

2020/1/21 英国のEU離脱関連法案、上院で審議

先ず、1月20日に3件の修正案を可決した。

1) EU離脱後に英在住のEU市民に自動的に居住権を与えるとともに、居住権を証明する物理的な証書を交付する内容で、270対229の賛成多数で可決された。

 政府の方針では、EU市民がブレグジット後に居住権を獲得するためには2021年6月までに内務省に申請手続きを行う必要があり、居住権の証明はオンラインでしか行われない。

2) 英裁判所のどの判決が欧州司法裁判所の判決より優先されるかについて、政府の決定権を排除するもの

3) 英国内のあらゆる裁判所の判決について、EUの判例に反することが可能かどうかを英最高裁判所の判断に委ねることとを可能にするもの

1月21日に問題の子供の難民の扱いに関する修正案が300対220の賛成で可決された。

親が難民の場合は子供を難民として入国を認めるが、子供が難民と認められた場合にその親を難民と認めないことが問題となった。

子供の頃ナチスから逃れて英国にきた Lord Dubs が修正案を提出した。

これに関し政府側は、そのような親子が再会できるようEUと協定を結ぶつもりだが、EU離脱法案には含めないとしている。

最後に5つ目の脱退通知をする前にスコットランドや北アイルランドの分権議会の同意も必要とするという修正案が可決された。

1998年の分権法では、分権議会の立法事項にも及ぶ立法をするときは、事前に分権議会の同意を得ることが確認され、それが以後慣行となった(Sewel conventionと呼ばれる)。

分権議会に移譲された立法権のなかにはEU法が関わるものもあり(農漁業や環境分野の立法など)、分権議会に対してEU法を遵守する義務を課している。
EU脱退となれば、1998年分権法のEU法遵守義務規定も廃止する必要がある。

下院では与党が多数を占めるため否決する予定で、法案が上院と下院を行ったり来たりする卓球戦(parliamentary ping-pong bout)となる可能性があった。


下院は1月22日、上院の修正案を否決した。

これを受け、上院は再度の修正を諦め(卓球戦をやらず)、EU離脱関連法案を原文のまま承認した。

1月23日にも女王の裁可(royal assent)を得て、正式に法律となる。

1月31日のEU離脱が確実となった。

ジョンソン首相は数日中にEU離脱協定に署名し、欧州理事会(EU首脳会議)とEUの行政執行機関、欧州委員会の首脳も1月24日にブリュッセルで署名する見通し。1月29日の欧州議会での正式承認で批准手続きが完了する。

 


2020/1/24 EastMed gas pipeline計画 スタート 

イスラエル、ギリシャ、キプロスの3国は1月2日、EastMed gas pipeline 建設計画の契約に署名した。イタリアが署名をすれば有効となる。

EastMedラインは、EUのエネルギー不足を補うため、代替ガス源を提供する目的で計画されたもので、東地中海で近接するキプロスのAphroditeガス田、イスラエルのLeviathanガス田の天然ガスをヨーロッパに送る1,900キロメートルのパイプラインである。

Leviathanガス田をスタートし、キプロスのコンプレッサーステーションを経由、ギリシャのクレタ島に上陸、その後、ギリシャのペロポネス半島を経由してギリシャ西岸のThesprotiaに到着する。
その後は、計画中のPoseidon pipelineを使い、イタリアにつなぐ。能力は年間100億立方メーター。

建設コストは70億ドルで、7年かかるとされる。開発はギリシャのガス会社のDEPAとイタリアのEdisonの50/50JVのIGI Poseidon S.A. が担当する。

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イスラエル、ギリシャ、キプロスとエジプト、ヨルダン、パレスチナ、イタリアの7カ国・地域は2019年1月に「東地中海ガスフォーラム」を創設した。

本年1月16日に開いた閣僚級会議では、イスラエルとエジプトのLNG欧州輸出計画や、イスラエル沖から欧州に向けたパイプライン計画を踏まえ、さらに協力を進める方針を確認した。

 

既報の通り、この地域ではキプロスとトルコが争っている。

天然ガスの発見で、トルコはトルコ系住民の住む北キプロス・トルコ共和国も権利を持つとし、南北で大陸棚での探査について協定を結ぶことを要求したが、キプロスはこれを無視した。

キプロス政府はENIやExxonMobil、Shellなどに採掘権を与えた。

これに対し、トルコが排他的経済水域を設定し、探索のための掘削を始めた。

トルコは2019年5月中旬、100隻以上の軍艦を投入して、同島の近隣で大規模な海上演習を実施した。さらにエルドアン大統領は6月、「地中海東部でのトルコと北キプロスの権利を守る」と宣言。資源をめぐる対立は複雑化している。

欧州連合(EU)は2019年7月15日、度重なる警告にもかかわらずキプロス沖でガス採掘を実施しているトルコに対し、対抗措置を取ることを決めた。

2019/7/18    EU、キプロス沖でのガス採掘めぐりトルコに対抗措置

トルコは、トルコ国内経由で欧州につながるTrans-Anatolian gas pipeline(TANAP)があるため、欧州への新しいパイプラインは不要であるとしており、東地中海でトルコとトルコ系キプロスの権利を無視するどんな計画も失敗すると警告した。

トルコの排他的経済水域が支障となるが、これに加え、トルコとリビアは2019年11月に地中海の境界を決める協定を結んだ。
トルコのエルドアン大統領は演説で「トルコとリビアの承諾がないまま、両国間の海域で採掘したり、パイプラインを通したりすることは不可能になった」とけん制した。

イスラエルはトルコと話し合う考えはあるとしている。

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イスラエルは東地中海の沖合で開発した豊富な天然ガス資源を使って周辺国への輸出に乗り出し た。

エジプトとヨルダンに対してはすでにあるパイプラインを通じてイスラエル産ガスを供給し冷え込んだ関係の改善を図ろうとしてい る。

イスラエルは1月15日、沖合で採掘したガスをパイプラインでエジプトに供給し始めた。

イスラエル海域のLeviathan ガス田とTamarガス田のパートナーはエジプトのDolphinus Holdingsに約200億ドルの天然ガス供給の契約を締結した。 

米国の Noble Energy とイスラエルの Delek Drilling は両ガス田の主要オーナーであるが、Egyptian East Gas Co と組んでEMEDというベンチャーを設立し、EMG海底パイプラインの権益の39%を520百万ドルで取得した。

イスラエルからエジプトへの最初の天然ガス輸出となる。


2020/1/25 液体のり成分ポリビニルアルコールでがん治療効果向上 

東京工業大学 科学技術創成研究院は1月23日、化学生命科学研究所の野本貴大助教と西山伸宏教授の研究グループが、液体のりの主成分であるポリビニルアルコールを中性子捕捉療法用のホウ素化合物(ボロノフェニルアラニン=BPA)に加えるだけで、その治療効果を大幅に向上できることを発見したと発表した。

さらに、京都大学研究用原子炉にて、マウスの皮下腫瘍に対するその治療効果を検討した結果、ほぼ根治することを確認した。

本研究成果は2020年1月2日に米国の「Science Advances」に掲載された。
   https://advances.sciencemag.org/content/6/4/eaaz1722

本研究の臨床応用を目指し、がん治療法に使う薬BNCTを開発しているステラファーマの協力を得て研究を進める。

ーーー

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、ホウ素(10B)に対して熱中性子(エネルギーの低い中性子で、単独では細胞傷害性がほぼ無い)を照射することにより核反応を起こし、細胞傷害性の高いアルファ粒子とリチウム反跳核を発生させて、それによりがんを治療する方法である。

従来の方法では治療することが困難な再発性のがん、多発性のがんに対しても有効で、「手術」、「化学療法」、「放射線治療」、「免疫療法」に続く、第5のがん治療法として大きな期待を集めている。

現在、臨床で主に使用されているホウ素化合物はボロノフェニルアラニン(BPA)という物質で、選択的にがんに集積することができる。BPAの臨床試験はステラファーマが行っている。

しかし、BPAはがんに長期的に留まることができず、その滞留性を向上させることが強く望まれていた。

がん細胞では細胞膜上にLAT1というアミノ酸を取り込むためのタンパク質がある。

LAT1は細胞外のBPAを取り込む際に細胞内のアミノ酸を排出するが、チロシンなどの細胞外のアミノ酸を取り込む際に細胞内のBPAを排出することもある。その結果、細胞外のBPA濃度が低下すると細胞内のBPAが流出してしまう現象が起きる。

野本助教と西山教授は、スライムの化学を利用してポリビニルアルコールにBPAを結合することにより、結合させた物質ががん細胞に選択的かつ積極的に取り込まれ、その滞留性を大きく向上できることを発見した。

洗濯のりとホウ砂を混ぜるとスライム(粘液)ができる。これはホウ砂から生じるホウ酸イオンが化学反応により複数のポリビニルアルコールをつなぐためで、この化学反応を応用した。

ポリビニルアルコール(PVA)は、多くのジオール基を持っており、このジオール基はホウ酸やボロン酸と呼ばれる構造と水中でボロン酸エステル結合を形成することができる。

BPAをPVAに結合させたところ、PVAに結合したBPA(PVA-BPA)は細胞に取り込まれる。従来のBPAが細胞質に蓄積するのに対し、PVA-BPAはエンドソーム・リソソーム(細胞内小器官)に局在するようになった。

その結果、がん細胞に取り込まれるホウ素量が約3倍に向上し、細胞内で高いホウ素濃度を長期的に維持することが可能となった。

 

最近の臨床研究においては、BNCTの普及を目指した加速器型中性子線源が主流になっている。しかし、現状の加速器型中性子線源による熱中性子の産生量では、浅い部位のがんに適応が限定されると考えられている。

治療の適応を深部まで拡げるためには、がん組織内のホウ素濃度を長期的に高く維持することが求められており、この点において本研究成果のPVA-BPAは大きく貢献できるものと期待される。

PVA-BPAは製造が容易である上に治療効果も非常に優れていることから本研究成果は極めて実用性が高いと考えられる。


2020/1/27 WTO紛争処理の暫定組織設置へ 

世界貿易機関(WTO)の上級委員会が2019年12月10日、新規案件の審理を開始できない事態に陥った。

WTO紛争解決制度は、いわゆる二審制をとっており、第二審として最終的な裁定を行う上級委員会(Appellate Body)は、7名の委員で構成され、3名で一事案の審理を担当する。

委員の任期が到来する中、上級委員の任命の在り方など、WTOにおける紛争解決制度や上級委員会の在り方に不満を持ち、これらについて議論するまでは選考プロセスの開始に賛成できないとする米国と、これに反発するその他の国の間での意見の不一致が生じ、後任が選べず、空席が続いていた。

米国は、中国政府による産業補助金や知的財産権の侵害といった問題で、WTOが疑わしきは罰せずという原則に基づき中国に有利な判断を下したことを問題視している。
従前より、加盟国が紛争解決手続をコントロールすべきとする見解を主張している。
紛争解決機関の承認もなく上級委員が自ら、委員の任期延長を決定していること批判している。

2019年12月10日に、残る3名のうち2名の任期が切れて1名だけになり、委員3名で一つの紛争案件を担当する規定により、新規案件の審理が事実上不可能な状況となった。
案件を審理する小委員会(パネル)は存続するが、パネルの判断に不満がある場合に上訴する上級委員会が開けず、機能不全となる。

米国は12月9日、上級委員の選任を改めて拒否した。上級委がWTO規則を超越したり度外視した判断を下していると批判した上で、委員の新たな選任を支持しないと表明した。

 

これに対し、EUは緊急措置として代替の上訴制度を独自に設置することを提案し、1月24日、中国、カナダ、ブラジルなど16カ国と合意した。合意国間の通商紛争のみに適用する枠組みとなる見通し。

参加国は以下の通り。「参加を希望するWTOメンバーに開かれている」としているが、米国と日本は参加していない。

EU、ノルウェー、スイス
カナダ、メキシコ
ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、グアテマラ、パナマ、ウルグアイ
オーストラリア、ニュージーランド
中国、韓国、シンガポール

EUの通商担当のホーガン欧州委員は「我々は上級委の行き詰まりに対し、永続的な解決策を探る努力を続ける」との声明を出した。


日本が不参加の理由について、政府関係者は「今回はあくまで暫定措置。日本は恒久的な改革を重視している」とした。

どの国も恒久的改革を重視しているが、機能不全となったため、やむを得ず暫定措置をつくったもので、不参加の理由にはならない。米国だけが除け者になるのを避けるための忖度と見られても仕方ない。

ーーー

ランプ米大統領はダボス会議で1月22日、WTOについて「劇的な」行動を取ると宣言した。
WTO事務局長によると、トランプ大統領は以前からのWTOに対する不満について議論し、WTOを改革したい意志を明確にした。改革のあり方について協議するため事務局長を米ワシントンに招待しれたという。

WTOの非公式閣僚会合が1月24日、スイスのダボスで開かれた。
会合には日本を含めた35カ国・地域が出席した。紛争処理のほか、漁業補助金、投資円滑化などについて協議した。6月の閣僚会合で成果を出すため、加盟国は協議を続ける。

WTO事務局長は、暫定的な紛争処理の仕組みについて言及しなかったものの、会合で各国WTO紛争処理の改善を含む今後の改題について協議したと話した。
「選択肢はある。改善策を追求しているところだが、まだそこに至っていない」とし、「近いうちにもっと前進できると自信を持っている」と話した。
 


2020/1/27   伊方原発で「ほぼ全電源、一時喪失」のトラブル 

1月25日午後3時45分ごろ、四国電力伊方原発で3号機の定期検査中、「ほぼ全ての電源が一時的に喪失する」トラブルがあった。

電気を供給する送電線の部品の取り換え作業中に、異常な電流が流れた場合に電線を遮断する装置が作動し、停電が起きた。作動した原因は分かっていない。

廃炉作業が行われている1号機と廃炉が決まっている2号機は3秒程度後に別の電源から受電した。
定期検査中の3号機は10秒程度後に
非常用ディーゼル発電機が起動し、その後別の電源に切り替えた。

1号機は廃炉が決定していて燃料が搬出済み。2、3号機の使用済み核燃料プールの水温にも異常はなかった。

3号機は昨年12月26日に定検入りしたが、1月12日には制御棒が誤って約7時間引き抜かれた状態になった。同20日には使用済み核燃料プール内で、燃料の落下を示す信号が発信されるなど、定検中のトラブルが相次いでいる。

 

付記

四国電力は3月17日、原因と再発防止対策を盛り込んだ報告書を公表した。

原子炉の核分裂反応を抑える制御棒を引き抜いたトラブルは、金属製の軸の内側に鉄の酸化物がたまった影響で十分な動作ができなかった結果、発生した。

保管プールの中で核燃料が点検用のラックの枠に乗り上げたトラブルについて、操作の難しさを作業員全員で共有できていなかったなどとしている。

点検中の停電で電源を失ったことについては、遮断機に付属する装置の一部がショートして壊れたことが直接的な原因であった。

総括的に改善が必要な点として軽微な気づきなどを収集し、反映させることが不十分だったことなど5つをあげ、基本ルールの徹底という原点に立ち返るとしている。

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山口県東部の住民3人が、伊方原発3号機の運転差し止めを求めた仮処分申請の即時抗告審が1月17日、広島高裁であり、裁判長は四国電力に運転差し止めを命じる決定を出した。

2020/1/20 広島高裁、伊方原発3号機運転差し止め 

四国電力は、伊方原発で重大なトラブルが相次いでいることを受けて、広島高裁が出した3号機の運転を認めない仮処分の決定について、異議の申し立てを当面見送る異例の対応を取ることを明らかにした。

異議の申し立てに期限はなく、四国電力は異議を申し立てる方針自体は変わらないとしているが、時期については相次ぐトラブルの原因究明や安全対策を進めていく中で検討していくとしている。

このため、伊方原発3号機は運転できない状態が長期化する可能性が出てきた。

 


2020/1/28    武漢で コロナウィルスによる肺炎の感染者用の病院を10日間で建設

春節(旧正月)の大晦日にあたる1月24日夜、湖北省武漢市蔡甸区の知音湖畔の武漢火神山病院の建設現場は一晩中明かりがともり、建設チームが病院の建設を急ピッチで進めた。

新型コロナウィルスによる肺炎の感染者を集中的に収容し治療するためのもので、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行期間に北京で短期間に建設された北京小湯山SARS病院を参考にしたもの。

病院の建設は中国建設技術局が主導し、多くの企業が参加する。

1月23日に着工し、2月1日に完成し、2月2日に軍に引き渡される。

病院は25,000平方メートルの面積をカバーし、1,000ベッドを提供する。

付記 2月2日に軍に引き渡された。

1月26日24時現在、国家衛生健康委員会が30省・自治区・直轄市から報告を受けた新型コロナウィルスによる肺炎の感染者は2,744人に上り、このうち重傷者は461人、死者は80人。すでに回復して退院した人は51人。感染の疑いがある人は5,794人に上る。

海外での患者は、香港8人、マカオが5人、台湾が4人で、タイ7人、日本3人、韓国3人、米国3人、ベトナム2人、シンガポール4人、マレーシア3人、ネパール1人、フランス3人、豪州4人としている。
(日本では1月26日に4人目が確認された。)

中国政府は1月27日、全国的な感染の拡大を受け、今月30日までだった春節(旧正月)の休日を2月2日まで延長すると発表した。各地の幼稚園や小中高校、大学の授業再開も延期される。

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2003年に非定型肺炎SARSが流行した時期に、北京の小湯山医院の隣接地にSARS専用の病院である小湯山SARS医院がわずか7日で建設され、SARSの流行を封じ込めた。

2003年にSARSの流行がピークに達した時、北京市の主な病院は病人であふれかえり、ベッドが不足していた。

国務院は4月22日、 100万元を投資して、小湯山地区に40.3ヘクタールの土地を確保し、世界最大の野外感染症病院を最速で建設することを決定した。

中国衛生部と北京市人民政府が主導し、22日の夕方、北京建設委員会は約4,000人の労働者と約500台の重機を派遣し、北京市にある大手ゼネコン6社すべてが建設に参加した。

4月23日に建設が開始され、7日後の4月29日に病院は完成し、4月30日に中国人民解放軍小湯山SARS医院と名付けられ 、引き渡された。

1階建の病棟で、軽量の建築材料を使用した。病棟、医療スタッフの居住エリア、事務エリア の3つの機能エリアに分かれている。

同病院はその後、廃墟となり、2010年に撤去された。

 

付記

武漢市では火神山病院の建設に続き、1月26日には江夏区で雷神山病院の建設を始めた。

中国国家発展改革委員会は、両病院の建設プロジェクトに中央政府予算から3億元(約47億円)を投じることを明らかにした。主に医療設備の購入に充て、患者や専門家、治療やそのための資源を集中させるという。

    建設開始 ベッド数 開業
火神山病院 蔡甸区 1/24 1,000 2/3
雷神山病院 江夏区 1/26 1,600 2/5

病棟の建設

 



2020/1/29 デジタル課税を巡る問題 
 
フランスのMacron 大統領は1月20日、米国などのIT大手を対象にフランスが独自導入した「デジタル課税」に米政府が対抗措置を検討している問題で、両政府が解決を探る協議を年内は継続することでトランプ米大統領と合意したと表明した。 電話会談で決めた。 

フランス側が年末まで課税を凍結する見返りに、米側は報復関税を年内は発動しない。

米仏両国は、経済協力開発機構(OECD)で議論が進められているデジタル課税の国際ルールづくりで最終解決を目指す。
2020年末までにはOECDによって国際課税規範が改正される見込みで、それがフランス税法よりも優先される可能性が高い。国際課税規範改正に向けた協議は、140近い国が参加して1月末に開かれる会議で始まる。

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フランス上院は2019年7月11日、Digital Services Tax 法案を可決し、Macron大統領は7月24日にこれに署名、これが法律となった。

課税事業 (i) ユーザーが他のユーザーとコンタクトしたり、商品やサービスを購入するデジタルインターフェースの供与
(ii) フランスのユーザーに広告する業者にデジタルインターフェースでサービスを供与
課税対象企業 課税事業の全世界売上が750百万ユーロ以上で、
フランスのユーザーからのそれが25百万ユーロ以上
税率 対象売上高の3%
課税開始 2019/1/1に遡及
 

米通商代表部(USTR)は2019年12月2日、フランスが導入したデジタルサービス税が米国のIT企業を不当に差別していると断定し、24億ドル分に相当するフランスの63品目に最大100%の制裁関税をを検討すると発表した。追加関税を課す対象として、スパークリングワインやチーズ、ハンドバッグなどを含む品目リストの原案をFederal Register に提示した。

対象規模は米企業が被る損害に基づき算定した。

2019/12/5 米、仏デジタル税に制裁関税検討 

USTRは、フランスだけでなく、オーストリア、イタリア、トルコの調査に入るとしている。

オーストリアはオンライン広告の売上に5%課税する案を公表
イタリアは2020年からの3%課税を表明
トルコは7.5%課税の2020年中の施行を目指している。

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英国:

フランスが課税を延期した一方、英国のジャビド財務相は1月22日、ダボスの世界経済フォーラム年次総会の討論会で、「デジタル課税」を計画通り4月に導入する考えを示した。
独自課税は「一時的」とし、経済協力開発機構(OECD)で議論している国際的な合意が得られれば取りやめると説明した。

英国のハモンド財務相は2018年10月29日、大手IT企業を対象とする新たなデジタル税制を2020年4月から導入すると公表した。

IT企業が英国のユーザーから稼いだ収入に2%の税率を課す。

世界の売上高が年間5億ポンド(約720億円)以上の事業部門が新税の対象になる。

新税導入により年4億ポンド(約570億円)の税収を確保する。

英財務省関係者は「ベンチャーや起業家への投資を妨げる目的ではない。そのために対象企業の売上高に下限を設けた」と説明した。

2019/3/12  EU、デジタル課税合意見送り、仏英など独自課税へ

討論会に同席したムニューシン米財務長官は、英国が計画を取り下げないなら報復措置を取ると警告した。 「自動車会社への課税を検討する」とした。

 

付記

英政府は2020年3月12日、大手IT企業を対象にした新たなデジタル課税を4月に導入することを正式に決めた。米国は今後、英に対し報復に出ると思われる。
 

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経済協力開発機構(OECD)は2019年10月9日、高収益を上げている多国籍大企業(デジタル企業を含む)の消費者向け活動の拠点がどこにあるか、どこで収益を上げているかにかかわらず、確実に納税するための新枠組み案を公表した。10月17日からの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に報告し、2020年1月の大筋合意に向け、各国は詰めの議論に入る。

一部の利益とそれに対する課税権を多国籍企業の市場がある国・地域に割り当てることを提案している。

対象は連結の売上高が7.5億ユーロ以上で、利益率が10%超の「消費者向け」ビジネスを行う大規模企業
採掘産業、コモディティ、金融サービス等は除外)

対象となるグローバル企業の利益を分割し、それぞれに別個に課税する。

通常利益 一般的な利益
(OECD案では利益率10%分)
従来通り 恒久的施設(Permanent Establishment) を置く国が課税権を持つ。
超過利益 ブランド力や知名度といった「無形資産」で全世界の消費者から稼いだ利益 各国での売上高の割合に基づいて課税

「2020年までに合意に達することができなければ、各国が一方的措置を執るリスクが高まり、すでに脆弱なグローバル経済にさらにマイナスの影響を及ぼすことになる。それを座視するわけにはいかない」としている。

OECD案で合意に達することができるかどうか、注視される。


2020/1/30 iPS細胞から作製した心筋細胞シートの移植

大阪大学は1月27日、重症心筋症の治療に向け、iPS細胞から作製した心筋細胞シートの医師主導治験の実施を発表した。心臓への移植は世界初。
重症心不全の治療は現在、心臓移植や補助人工心臓の装着が主流で、新たな治療法の確立が求められている。

大阪大学大学院医学系研究科の澤 芳樹 教授(心臓血管外科)らの研究グループは、日本医療研究開発機構の支援のもと、iPS細胞から作製した心筋細胞による心筋再生治療の開発を進めてきた。
これまで、虚血性心筋症で心臓の機能が低下したブタにiPS細胞から作った心筋細胞をシート状に加工して移植する研究を実施し、心臓の機能を改善させることに成功している。

さらにiPS細胞からヒトに移植可能な安全性の高い心筋細胞を大量に作製し、シート化することに成功した。

細胞をシート状にして幹部に貼り付ける技術は、東京女子医科大学の岡野光夫教授によって開発された。

まず、培養した細胞シートを培養皿から取り出す技術を開発した。
タンパク質分解酵素などを使用すると、重要な働きをするタンパク質が分解され、十分な機能を果たせない。
このため、温度に応答する高分子を利用する。培養皿の表面にこれを薄く敷き詰め、37℃に設定し、細胞を増殖させシートにする。温度を20℃に下げると高分子が親水性に変わり、皿と細胞の間に水が浸透するため、きれいに剥がすことができる。

シートの積層化には、細胞シート回収面にゼラチンなどの支持材を固定したスタンプ型積層機器を開発した。

シートに血管内皮細胞を少量混ぜると、細胞シート内に毛細血管網ができる。3層の細胞シートごとに血管がつながるのを待って、次の3層の細胞シートを重ねていくと30枚の細胞シートからなる厚さ約1ミリの心筋細胞が完成した。

厚生労働省の再生医療等評価部会は2018年5月16日、iPS細胞から作った心臓の筋肉細胞をシート状にして重症心不全患者の心臓に移植する大阪大の臨床研究計画を、臨床研究の患者の対象を厳しくすることなどの条件付きで承認した。

2018/5/19 iPS細胞の心臓病臨床研究、承認

チームは1月に第1例目の被験者にiPS細胞由来心筋細胞シートを移植した。

移植したのは虚血性心筋症の患者で、京都大が備蓄する第三者由来のiPS細胞から心筋シートを作り、開胸手術で患者の心臓表面に直径4〜5センチ、厚0.1ミリのシート3枚(心筋細胞約1億個)を張り付けた。手術は約2時間で終わり、経過は順調という。

シートから出るたんぱく質が心臓の働きを改善する。(動物実験では改善確認済) 
今回の治験では、移植後1年間、がん化や免疫拒絶反応などの症状、心臓の機能、運動能力を観察する。

国の承認を得るための臨床試験の1例目に当たり、最終的に計10人に移植して安全性と有効性を確認する。5年以内の実用化を目指している。

今回の治療法では、iPS細胞を用い、品質基準を満たした心筋細胞を事前に大量に作製・保存しておくことができるため、培養時間を大幅に短縮できることから緊急の使用も可能である。

懸念材料としては、心筋シートはiPS細胞由来の約1億個の細胞でできており、未熟な細胞が混ざった場合、がん化したり良性腫瘍ができたりする恐れは否定できない。
また、シートは移植後3カ月で消失する。それまでの間にシートから分泌されるたんぱく質「サイトカイン」が心機能を回復させると想定されるが、ヒトでは未知数 である。

 

iPS細胞から作製した組織の移植は網膜細胞神経細胞角膜細胞が既に行われ、今回の心筋細胞が4例目となった。

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慶応義塾大学の福田恵一教授らの研究チームは2019年5月27日、iPS細胞を使い心臓病の治療を試みる臨床研究を学内の審査委員会に申請した。

慶大が計画を進めるのは「拡張型心筋症」という心臓病で、心筋梗塞などがきっかけで心臓の壁が薄くなり、血液を押し出す力が弱まる。国内に数万人の患者がいる。臨床研究で20〜80歳の患者3人を対象にする。
 


2020/1/31 iPS細胞由来軟骨移植による関節軟骨損傷の再生、これを含め年内に5件の移植手術計画 

厚生労働省の作業部会は1月24日、iPS細胞から作った軟骨組織を、膝関節の軟骨を傷めた患者に移植して治療する妻木範行・京都大教授らの臨床研究について、計画の実施を了承した。近く最初の移植手術を行う。

ヒトの関節は、2つの骨が擦り合わさって動いており、骨同士が擦り合わさる部分は関節軟骨で覆われている。関節軟骨は特有の構造を持ち滑らかなため、関節をスムーズに痛み無く動かすことができる。

膝の関節軟骨がけがなどにより損傷した「膝関節軟骨損傷」では、膝を動かしたり歩いたりする際に違和感や痛みをともなう。
関節軟骨には血管が存在せず、損傷しても自然修復が起きにくい
現在は別の関節から軟骨の組織を手術で取り出して移植する治療が行われているが、患者の負担が大きいことが課題になっている。

グループは細胞リプログラミング技術を使って誘導した軟骨細胞から軟骨組織を作り、その軟骨組織を損傷部に移植し、関節軟骨を再生する研究を行ってきた

今回、交通事故やスポーツで膝の軟骨を損傷するなどした20〜70歳の患者4人が対象で、iPS細胞を使って直径数ミリの軟骨組織を作り、患部に移植する。1年かけて安全性を確認するほか、周囲に残っている軟骨と一体化し、痛みを緩和できるか確かめる。

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SankeiBiz(2020/1/28)によると、iPS細胞を使った再生医療の臨床研究は年内に5件の移植手術が計画され、対象が大きく拡大する見通し。

加齢黄斑変性(理化学研究所) 2014年 網膜細胞
パーキンソン病(京都大) 2018年 神経細胞 京大がiPS細胞でパーキンソン病治療臨床試験へ
角膜上皮(大阪大) 2019年 角膜細胞
重症心不全(大阪大)虚血性心筋症 2020年 iPS細胞から作製した心筋細胞シートの移植 
重症心不全(慶応大)拡張型心筋症 年内予定
網膜色素変性症(神戸アイセンター病院) 下記 1)
脊髄損傷(慶応大) iPS細胞で脊髄損傷治療
再生不良性貧血(京都大) 下記 2)
膝の軟骨損傷(京都大) 本記事

1)神戸アイセンター病院は2019年12月、「網膜色素変性に対するiPS細胞由来網膜シート移植に関する臨床研究」に関して、大阪大学第一特定認定再生医療等委員会への臨床研究の審査に関する申請を行った。

大日本住友製薬は理化学研究所と連携し、iPS細胞由来網膜の立体組織形成と網膜色素変性治療の実用化に向けた研究開発に取り組んでおり、本臨床研究について、神戸市立神戸アイセンター病院と連携する。

大日本住友製薬は、加齢黄斑変性、パーキンソン病、網膜色素変性、脊髄損傷等を対象に、他家iPS細胞を用いた再生・細胞医薬事業を推進している。

2)   京都大学iPS細胞研究所は京都大学医学部附属病院と連携し、「「血小板輸血不応症を合併した再生不良性貧血」患者を対象とするiPS細胞由来血小板の自己輸血に関する臨床研究」を計画してきた。

2018年7月20日に、厚生労働大臣に、本研究に係る再生医療等提供計画を提出した。

再生不良性貧血などで血小板が不足すると、血小板輸血が行われるが、輸血後も血液中の血小板数が上昇せず。血小板輸血不応になる場合がある。その原因の一つに、輸血血小板が異物として認識され、自身の免疫細胞が輸血血小板を破壊することがある。

患者自身の細胞から作製した血小板であれば、自身の免疫細胞に破壊されず輸血の効果が得られると期待できる。

 


2020/1/31 英のEU離脱 手続き完了 1月31日離脱

英下院は1月22日、EU離脱関連法についての上院の修正案を否決し、これを受け、上院は再度の修正を諦め、EU離脱関連法案を原文のまま承認した。

エリザベス女王は23日、EU離脱関連法法案を裁可した

首相は24日、EU離脱協定案に署名した。

欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は24日、英国のEU離脱に係る協定に署名した。

欧州議会は1月29日の本会議で、英国のEU離脱に係る協定を賛成多数で可決した。751名の議員の単純過半数で可決されるが、賛成が621、反対が49、棄権が13だった。

EU理事会は1月30日にこれを承認し、手続きが完了した。

英国時間1月31日午後11時に英国はEUを離脱、同時に移行期間に入る。

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欧州委員会は1月27日、「1月31日の英国のEU離脱に関わる質問と回答」を公表、移行期間を含めてBrexit以降に想定される状況と、その留意点などを明らかにした。

中央ヨーロッパ時間の2月1日午前0時(英国時間1月31日午後11時)に英国はEUを離脱、同時に移行期間に入る。

2020年12月31日までの移行期間中は、英国はEU諸機関での代表権を失うが、英国へのEU法の適用は継続する。
この結果、移行期間中はEU・英国双方の市民や消費者、企業、投資家、学生、研究者などは、これまでどおり活動することができる。

移行期間中は英国はEU関税同盟、Single Marketに留まる。

EUと英国は移行期間中に、通商協定を含む将来関係についての合意を目指す。

離脱協定によると、移行期間の延長は1回に限り、1年あるいは2年の期間でされるが、そのためには、6月30日までに双方で合意・決定する必要がある。
(英国は延長なしとしているが、FTA交渉などを期間中にまとめるのは困難とされており、延長なしでは「合意なき離脱」と同じ状況になる恐れがある。)

英国による新たな国際協定の準備・策定について手続きを進めること自体は認めるが、移行期間中の発効・適用開始については、EU側の明確な承認が必要。

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英国は欧州議会からも離脱し、英出身の73人の欧州議員はその身分を失う。議席の一部はほかの加盟国に割り当てられ、議会の定数は751から705になる。

EUと英国は2019年4月11日に英国の離脱期限を10月31日まで再延長することで合意したが、EUはその時点で、英国の離脱を前提に下記の通り、5月23日〜26日の欧州議会選挙の準備をしていた。 (実際には離脱延期となり、英国も73人の議員を選んだ。)

英国のEU脱退によって空席となる73議席のうち、46議席は無くし、総議席数は751から705に削減する。

残り 27議席は下記の通り再配分する。

フランス(+5議席)、スペイン(+5議席)、イタリア(+3議席)、オランダ(+3議席)、アイルランド(+2議席)、スウェーデン(+1議席)、オーストリア(+1議席)、デンマーク(+1議席)、フィンランド(+1議席)、スロヴァキア(+1議席)

今後はこれにより行われると見られる。


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