ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2021/6/6   血液中の微量がん細胞を検出できるデバイス

熊本大学は5月21日、1mlの血液に含まれる微量ながん細胞を簡単に分離・補足できるマイクロフィルタデバイスを開発したと発表した。

がんに罹患した人の血液には、がんの原発巣から剥離したがん細胞がわずかに混入している。しかし、その量は血液1mL中に50億個ほど存在する赤血球や白血球などの血球細胞と比べて数個〜10個程度と言われており、分離・捕捉(検出)するのは非常に困難で 、がん細胞を検出するデバイスは開発されてきたが、高額な装置や試薬が必要であり、実用化する際のボトルネックになっていた。

今回、大型の装置を必要とせず、安価かつ簡便にがん細胞を分離・捕捉することを目的とし、独自のマイクロフィルタデバイスを開発した。

開発した機器は幅5マイクロメートルの細かな切り込みが入ったフィルターを備えており、がん細胞にくっつく「核酸アプタマー」と呼ぶ分子を表面に塗った。

血液を流すとフィルターが流体力によって動的かつ3次元的に変形し、切り込みの隙間が大きくなる。赤血球や白血球は通り抜けるが、 核酸アプタマーとくっついたがん細胞だけをこしとる。

がん細胞と核酸アプタマーとの選択的親和性を利用してがん細胞のみを捕捉する。

核酸アプタマーは特定の高次構造を形成することで、標的分子に対して抗体のように特異的かつ強固に結合する

核酸アプタマーは一本鎖DNAまたはRNAから構成され 、分子内で相補配列に依存して熱力学的に安定な固有の立体構造を形成することで,標的分子に特異的に結合する 。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsth/31/1/31_2020_JJTH_31_1_66-70/_pdf/-char/en

1ミリリットルの血液には、赤血球や白血球などの「血球細胞」が約50億個と大量にあることが分かっている が、 がん細胞の濃度を変えながら血液に混入させて機器で検出する実験をしたところ、がん細胞が5個だけでも見分けられる性能を確かめた。

血液検査のみの簡単な検査によるがんの早期発見や術後の管理、再発モニタリングなど、血液中のがん細胞を基にした新たながん診断技術実現への貢献が期待される。

がんの目印になる腫瘍マーカーを調べる検査で陰性と診断された患者(がんではないと診断)の血液からも、がん細胞を発見することができた。 がんを巡っては診断結果と異なる「偽陽性」や「偽陰性」の結果が出るケースも多いが、研究グループは腫瘍マーカーとの併用などによってがん診断の精度を向上できる可能性があるとみている。

 



2021/6/7
  仏 Sanofi、コロナワクチン を日本でも治験、製造も 

仏製薬大手 Sanofiは6月3日、日本で新型コロナウイルスワクチンの最終段階の臨床試験(治験)を始める方針を明らかにした。

実用化した際にはバイオ医薬品製造のUNIGEN(岐阜県池田町)に生産委託する方針も明かした。

Sanofiは 英GlaxoSmithKlineと組んで「組み換えたんぱくワクチン」を開発している。

Sanofiでワクチンを担当するSanofi Pasteurは、遺伝子組換えDNA技術をベースとするS-タンパク質COVID-19抗原を提供する。
遺伝子組換えDNA技術により、ウイルスの表面に検出されたタンパク質と正確に一致する遺伝子配列を作成することができる。抗原をコード化するDNA配列を、Sanofiが米国で開発に成功し承認された遺伝子組換えインフルエンザワクチンの基盤となったバキュロウイルス発現プラットフォームに組み込む。

GSKは、実証済みのパンデミックアジュバント技術を提供する。

両社は2020年5月中旬、最終段階の治験を数週間以内に開始する方針を発表した。

このワクチンは、米政府の爆速ワクチン計画(Operation Warp Speed)の対象に選ばれ、2020年7月31日に米政府が21億ドルを支払い、5000万人分を確保した。

しかし、SanofiとGSKは2020年12月11日、試験計画を遅らせると発表した。

第1/2相臨床試験で、18〜49歳の被検者においてはCOVID-19から回復した人に匹敵する免疫応答が示されたが、高齢者において十分な免疫応答が得られなかったことから、すべての年齢層において十分な免疫応答を得るために抗原の濃度を改善する必要性が示された。

2021年2月に改善された抗原を用いて第U相臨床試験を実施した

SanofiとGSKは2021525ワクチン候補の第II相臨床試験において成人全ての年齢層で強力な免疫反応を認めたことを発表した。

アジュバント添加遺伝子組換えタンパク質ベースワクチン候補は、全年齢層の成人で中和抗体を誘導し、95〜100%の抗体陽転率を示した

感染歴のある被験者では1接種後に高い免疫反応がみられ、強力なブースター(追加免疫)ワクチンとしての可能性が示された。

グローバル第III臨床試験は、今後数週間以内に開始される見込み

今回、これに基づき、下記の通り、第V相国際臨床試験の開始を発表したもの。

・第V臨床試験は無作為化二重盲検プラセボ対照、国際共同試験であり、米国、アジア、アフリカおよび南米を含む国々における18歳以上の35,000人以上の被験者を対象に行う。

日本でもこの試験を実施する。

・主要評価項目は、感染歴のない成人におけるCOVID-19症状の予防とし、副次評価項目として重症COVID-19感染の予防と無症候性感染の予防を検討 。

・臨床試験は2段階で行い、第1段階では当初の武漢株を標的とするワクチン製剤の有効性を評価し 、2段階では南ア変異株を標的とするワクチン製剤の評価を行 う。

最近の研究結果から 南ア変異株に対して産生された抗体は、他の伝染性変異株に対しても幅広い交差予防効果を示す可能性が示されてい る。
試験は
幅広い地域で行うよう計画されており、現在流行中の様々な変異株に対するワクチン候補の有効性を評価することができ る。

・第V臨床試験を補うものとして、ブースター (追加免疫)試験プログラム今後数週間以内に開始する予定

・第V相臨床試験で肯定的な結果が得られ、規制当局の審査が進めば、このワクチン候補は、グローバルにおいて2021年第4四半期に承認される見込み 。

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Sanofiは6月3日、新型コロナウイルスワクチンを日本で生産する方針を明らかにし、製造委託先の候補に、岐阜県揖斐郡池田町のバイオ医薬品製造UNIGENがあることを明らかにした。
駐日フランス大使ととも行なった工場視察後の記者会見で発表した。

「世界的に製造のネットワークを構築している。UNIGENとは歴史的に良好な関係を築いてきた流れの中で検討している」と述べた。

なお、UNIGENは、塩野義製薬が開発を進めている新型コロナウイルスワクチンの生産も予定している。

塩野義は、グループ会社のUMNファーマが有するBEVS(バキュロウイルスを昆虫細胞に感染させ、昆虫細胞内で目的タンパクを発現させる技術)を活用した遺伝子組換えタンパクワクチンを開発しており、国内で唯一BEVS技術を用いた遺伝子組換えタンパクワクチンの製造実績を有するアピ鰍ニそのグループ会社である涯NIGENと提携し、生産体制の立ち上げを進めている。



2021/6/8   エーザイとバイオジェンのアルツハイマー新薬、米で承認

米食品医薬品局(FDA)は6月7日、エーザイと米バイオジェンが共同で開発するアルツハイマー型認知症治療薬候補ADUHELM(一般名:アデュカヌマブ)について、脳内アミロイドβプラークを減少させることにより、アルツハイマー病の病理に作用する初めてかつ唯一治療薬として迅速承認(accelerated approvalしたと発表した。

従来の認知症薬とは異なり、認知機能の低下を長期的に抑制する機能を持つとして世界で初めて承認された。

アミロイド斑(プラーク)は、アミロイドβ蛋白が蓄積したもので、アルツハイマー病患者の脳にみられる。新薬はこのレベルを下げるもの。

今回の迅速承認は、アミロイドβプラークの減少に対するADUHELM効果を実証した臨床試験のデータに基づくもので、迅速承認の要件として、今後検証試験による臨床的有用性の確認が必要となる。

ADUHELMの有効性は、アミロイドの蓄積が確認されたアルツハイマーの初期段階(軽度認知障害および軽度認知症)の患者を対象とした2つの臨床第III相試験で評価された。

また、ADUHELMの効果は、プラセボ対照無作為化二重盲検用量設定第Ib相試験においても評価された。

 

付記

下記の通り、米国食品医薬品局FDA)の末梢中枢神経系薬物諮問委員会 は、 投票の結果、有効性に対して否定的な見解を公表していた。
諮問委員会の提言は拘束力はないが、提言に反する承認は異例。

今回の承認をめぐり、委員会のメンバーのうち、反対票を投じた大学の神経学者と、当日の採決に加わらなかった医療機関に勤める人物の2人が辞任した。委員会の反対にもかかわらずFDAが、条件付きで承認したことへの抗議だという。

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エーザイとBiogenは2014年3月に提携を開始した。

現状は次の通りで、アリセプトを除き、開発で提携している。

エーザイは今回のアデュカヌマブのほか、Biogenと共同開発しているアルツハイマー治療薬BAN2401について2022年度中に承認申請を目指している。

2020/9/24    エーザイ、認知症薬を2022年度に承認申請へ 

エーザイ アリセプト 〈提携対象外〉
(donepezil)
エーザイの杉本八郎博士らが開発
 
アルツハイマーでは、神経伝達物質のアセチルコリンが脳内で減少している。

アセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害することで、アセチルコリンの濃度を高める。

新規ヒト化モノクローナル抗体
「BAN2401」
 
2022年度中に申請
2007/12 スウェーデンのBioArctic Neuroscience ABから全世界の研究・開発、製造、販売の独占ライセンスを受ける。 アルツハイマー病の原因と考えられるベータ・アミロイド成分を除去
βサイト切断酵素(BACE)阻害剤
elenbecestat「E2609」 
 
x試験中止
エーザイが創製

 

アミロイド前駆体タンパク質のβサイト切断酵素であるBACEを阻害することでβアミロイドの総量を低下させる。
Biogen 抗アミロイドβ(Aβ)抗体  
aducanumab
(BIIB037)
 
→ 申請→FDA優先審査
 
 2021/6/7 迅速承認
Neurimmune社より共同開発およびライセンス契約締結のもとに導入 アミロイド斑(プラーク)は、アミロイドβ蛋白が蓄積したもので、アルツハイマー病患者の脳にみられる。

aducanumab 投与でアミロイドプラークのレベルを下げる

2017/10/27 エーザイとバイオジェン、アルツハイマー治療剤での提携契約を拡大 

 

本剤はBiogenが開発したもので、一旦は中止を決定していたものである。

両社は2019年3月21日、aducanumab(BIIB037)の有効性、安全性を評価する臨床第III相国際共同試験(ENGAGE試験、EMERGE試験)を中止することを決定したと発表した。
本試験において主要評価項目が達成される可能性が低いと判断されたことに基づくものであり、安全性に関する問題によるものではない。

しかし、結果を再分析したところ、高用量を投与した一部の患者に効果が確認できた。重篤な副作用も認められなかった。

両社2019年10月22日、早期アルツハイマー病患者を対象に臨床試験を実施した抗アミロイドβ(Aβ)抗体アデュカヌマブ(aducanumab:BIIB037)についてBiogenが米国食品医薬品局(FDA)との協議に基づいて、新薬承認をめざすことを発表した。

Biogenは2019年12月5日、2020年初めに米国で承認申請すると発表していたアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」について、投与した患者の認知機能の低下スピードが2割ほど遅くなったとする臨床試験(治験)のデータを学会で発表した。

投与量を増やした患者の認知機能の低下が22%抑えられたほか、日常生活への影響も40%抑えるデータを報告した。

専門家は「投与量が増えると効果が出ることが明確に示された」としている。

2020117日、アルツハイマー病治療薬候補であるアデュカヌマブについて、米国食品医薬品局FDA)の末梢中枢神経系薬物諮問委員会が開催された。
投票の結果は下記の通りで、
有効性に対して否定的な見解を公表した。

FDA諮問委員会の提言はFDAによる審査において考慮されるが、拘束力はない。

2019/10/24  Biogenとエーザイ、一旦治験中止したアルツハイマー薬の承認申請へ

FDAは当初、2021年3月に判断するとしていたが、追加データを求め、3か月延長した。

諮問委員会の提言は拘束力はないが、提言に反する承認は異例。

 


2021/6/9   世界初の脳腫瘍に対するウイルス療法、間もなく認可へ

厚生労働省の薬食審再生医療等製品・生物由来技術部会は5月24日、第一三共のがん治療用ウイルス「デリタクト注」(一般名:テセルパツレブ:teserpaturev)を条件及び期限付き(7年間)承認とすることで了承された。通常、1か月程度で正式承認される。

付記 

6月11日 承認を取得した。

デンカが第一三共からの委託を受けて、五泉事業所(新潟県五泉市)にて本品の生産を担う。
デンカは、が
ん治療用ウイルス製剤の実用生産を実現するため、2015年に本品の製造工程の開発に着手し、約20億円を投資して五泉事業所にてがん治療用ウイルス製剤の生産に必要な建屋建設と設備導入を進め、201710月の竣工を経て、商用製剤生産に必要な製造プロセスの確立により、国内医療機関に必要とされる製剤数の確実な供給が可能になった。

本製品については、7年間に有効性と安全性を評価するためのデータを収集し、改めて承認申請して審査することが求められる。

デリタクトは悪性神経膠腫(原発性脳腫瘍の中でも悪性度の高いグレード3、4)を対象疾患とし、標準治療後の治療選択肢となる。
厚労省によると、この患者数は年間概ね3600例で、同製品の適応患者はさらにしぼられることになる。
 

東京大学医科学研究所の藤堂具紀教授らにより創製されたもので、第一三共は藤堂教授と共同開発している。

東大側は、非臨床試験から治験製品製造、規制対応、治験実施まで製薬企業が全く関与せずにアカデミアだけで行った日本の医薬品・再生医療等製品開発の歴史に残るアカデミア主導創薬の成功例としている。
培養細胞や動物を用いた安全性や有効性の試験はもとより、臨床試験に用いる治験製品の製造も東京大学医科学研究所内の施設で研究チームが自ら行った。
 

藤堂教授らの研究グループは、単純ヘルペスウイルス1型(口唇ヘルペスのウイルス)に人工的に3つのウイルス遺伝子を改変(三重変異)した第三世代のがん治療用ヘルペスウイルス「G47Δ」の臨床開発を進めてきた。

悪性神経膠腫の一種の膠芽腫の患者を対象に東京大学医科学研究所附属病院で実施した医師主導治験(第II相臨床試験)において、「G47Δ」の高い治療効果と安全性が確認されたため、この治験を主試験として、2020年12月28日に悪性神経膠腫を適応症とする製造販売承認申請が行われた。

G47Δを初めてヒトに投与するいわゆるファースト・イン・ヒューマン(first-in-human)臨床試験は2009年から、膠芽腫を対象とした臨床研究として東京大学で5年間実施され、脳腫瘍内への投与が安全であることが確認された。

更に、有効性を検討する第II相臨床試験は、医師主導治験として、膠芽腫患者を対象に2015年から2020年まで実施し、高い治療効果と安全性を確認した。

G47Δの開発は、発明から実用化まで一貫してアカデミア主導で実施され、日本では新しい治療法開発の様式で成功に至った。厚生労働省の先駆け審査指定制度および悪性神経膠腫を対象とした希少疾病用再生医療等製品の指定を受けている。

今回、「G47∆」(一般名:teserpaturev)」を第一三共が「デリタクト注」の商品名で申請した。

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ウイルス療法は、がん細胞に感染させたウイルスが増えることによって直接がん細胞を破壊する手法で、革新的ながん治療法として期待される。

神経膠腫(グリオーマ)は原発性脳腫瘍のおよそ4分の1を占める代表的な悪性脳腫瘍である。

神経膠腫は悪性度に従って4段階に分けられ、悪性度の高い2つの段階のもの(悪性度 3と4)を悪性神経膠腫と呼ぶ。

神経膠腫の中で最も頻度が高く、また最も悪性度の高いのが膠芽腫(グリオブラストーマ)で、手術をしてから放射線治療と化学療法を行っても平均余命は診断から18カ月、5年生存率は10%程度で、治癒は極めて困難とされ、全く新しい機序による治療手段の開発が待ち望まれていた。
 

がんのウイルス療法は、がん細胞のみで増えることができるウイルスを感染させ、ウイルスが直接がん細胞を破壊する治療法で、遺伝子工学技術を用いてウイルスゲノムを「設計」して、がん細胞ではよく増えても正常細胞では全く増えないウイルスを人工的に造って臨床に応用する。

G47Δは、口唇に水疱ができる口唇ヘルペスの原因ウイルスとして知られている単純ヘルペスウイルス1型の3つのウイルス遺伝子を改変したもの。

単純ヘルペスウイルス1型は、がん治療に有利な特長を多く備えている。
1)ヒトのあらゆる種類の細胞に感染できること、
2)細胞を殺す力が比較的強いこと、
3)抗ウイルス薬が存在するため治療を中断できること、
4)患者がウイルスに対する抗体を持っていても治療効果が弱くならないこと

単純ヘルペスウイルス1型のゲノムから、正常細胞での増殖では必要でがん細胞では不要なウイルス遺伝子を取り除くことで、がん細胞だけで増えるウイルスを造ることができる。


 


 

がん細胞だけで増えるように工夫された遺伝子組換えウイルスは、がん細胞に感染するとすぐに増殖を開始し、その過程で感染したがん細胞を死滅させる。

増殖したウイルスはさらに周囲に散らばって再びがん細胞に感染し、ウイルス増殖、細胞死、感染を繰り返してがん細胞を次々に破壊していく。

一方、正常細胞に感染した遺伝子組換えウイルスは増殖できないような仕組みを備えているため、正常組織は傷つかない。

 

既存のがん治療用ウイルスに比べて安全性と治療効果が格段に高くなっている。

また、G47Δの特徴としてがん細胞を破壊する過程で、抗腫瘍免疫を惹起するために、G47Δを投与した部位のみならず、投与していないところにあるがんにも免疫を介して効果が期待でる。
さらに、G47Δは、がんの根治を阻むとされるがん幹細胞をも効率よく破壊することが判っている。

単純ヘルペスウイルス1型を用いたウイルス療法が、悪性脳腫瘍で治療効果を示すことがヒトで確認されて実用化に至ったのは、世界で初めて。

G47Δは脳腫瘍のみならず、あらゆる固形がんに有効であることが動物実験で示されており、今後さらに、可及的速やかに全ての固形がんに適応を広げることを目指している。
2013年からからは、前立腺癌と嗅神経芽細胞腫をそれぞれ対象とした臨床試験を実施した。
2018年からは、悪性胸膜中皮腫の患者の胸腔内にG47Δを投与する臨床試験も開始している。
 

藤堂教授は、全てのがんに効くと見ており、制度の変更を希望している。(現在は各がんについて臨床試験が必要である。)


 

2021/6/10  韓国地裁、元徴用工らの集団訴訟で訴え却下 

韓国人元徴用工や遺族計85人が日本企業計16社に計86億ウォン(約8億4700万円)の損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は6月7日、原告の請求を却下した。地裁は1965年の日韓請求権・経済協力協定に触れ、「訴訟で請求権を行使できない」と結論づけた。

「却下」は訴訟の要件を揃えることができず、本案の審理なく裁判を終わらせること。

5月28日の第1回口頭弁論で、原告・被告双方が求めた審理の延長に地裁が応じず、6月10日の判決期日を指定。さらに原告一人一人への連絡なしに期日を急遽変更し、7日に判決を言い渡した。

元徴用工をめぐっては既に2018年に日本企業に賠償を命じる最高裁判決が確定し、その後も同種訴訟で日本企業敗訴が相次いでいた。

韓国大法院は2018年10月、日本製鉄強制徴用の被害者が出した損害賠償訴訟で被害者の勝訴を確定した。日本製鉄(旧新日鉄住金)に対し、戦時中に日本の工場に動員された4人の韓国の元労働者に1人あたり約1000万円の賠償を命じた。三菱重工業に対する判決も確定している。

大法院判決(11対2の決定)は、戦時中に行われた日本統治下の朝鮮半島から日本本土の工場などへの動員は「日本政府の不法な植民地支配や、侵略戦争の遂行と結びついた日本企業の反人道的な不法行為」と認定していた。

2020/11/3 韓国地裁、朝鮮女子挺身隊訴訟で 三菱重工資産の売却へ手続き 

今回の判決は大法院(最高裁)判決を覆し、徴用問題に関連して正反対の2つの判決が当面共存することになった。1965年に日韓が修交し締結した協定および交渉内容に対して相反した意見となる。

今回の裁判官は、3月29日判決の下記の裁判を担当しており、判決はある程度予想できた。

ソウル中央地方法院は3月29日、元従軍慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で1月に勝訴した件で、原告が訴訟費用確保のために日本政府の資産差し押さえを求めたのに対し、これを否定する決定を行なった。

確定判決を有効としつつ、外国の資産への強制執行はその国家の主権侵害にあたる可能性を指摘し、韓国内の日本政府の資産を差し押さえた場合、「憲法上の国家安全保障、秩序維持、公共の福祉と相反する結果を招く」と懸念を示した。

2012/4/21    韓国地裁、慰安婦訴訟2件で原告側の訴えを却下 
 

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原告らは2015年5月、戦時中に日本本土の工場に強制動員されたとして、三菱重工業や日本製鉄、三井造船(現・三井E&S)、ENEOS、住友金属鉱山、三菱マテリアルなど17社を相手取り提訴した。
5月に入り、原告側が1社に対する訴えを取り下げて被告が16社となり、公示送達の効力が発生した後の5月28日に第1回口頭弁論が開かれ、即日結審していた。

日本企業側は、1965年の日韓請求権協定で解決済みとする日本政府の見解に沿って賠償責任はないと主張した。

判決で裁判所は、「原告側の請求権は韓日請求権協定によりすぐに消滅したり放棄されたとはいえない」が、「韓国国民が日本や日本国民を相手にして権利の行使をすることは制限される」とし、「この事件の請求を認めることは、国際法違反の結果を招き得る」と指摘した。

さらに、仮に原告の請求を認める判決が確定し、強制執行に至った場合、「国家の安全保障や秩序維持を侵害するため権利の乱用に該当する」とした。

大法院が日本の植民地支配を「不当」としたことについても「不当性は国際法的に認定されていない」とした。

大法院全員合議体のうち、「個人の請求権は行使できない」とした少数意見(2人)の法理を引き合いに出した。


原告側はすぐに控訴することを決めた。
韓国では、これが大法院に行った場合、控訴審の結果がどのように出てきても、大法院が3年越しに自分たちが下した判決を否定するのが容易ではないため、従来の判例を維持するという見方が支配的である。

付記 原告側は6月14日、裁判所の損害賠償請求訴訟却下判決を不服として控訴した。
 

 

韓国内では裁判官への批判が殺到している。

与党代表は判決直後「朝鮮総督府京城裁判所の判決なのか疑われる」という表現まで使って判決を猛非難した。該当判事を弾劾しようという青瓦台の国民請願掲示サイトへの投稿は1日で20万人以上になったという。


2021/6/10 米インフラ計画の交渉決裂 

バイデン大統領が上院共和党のグループとの間で進めていたインフラ投資計画(American Jobs Plan )を巡る交渉が決裂した。

サキ大統領報道官は、大統領が別の民主、共和両党の上院議員に接触し「超党派の提案をつくるよう求めた」と表明した。

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バイデン大統領は3月31日、国内のインフラの整備等に8年間で2兆2500億ドルを投入する新たな計画 American Jobs Plan を発表した。

2021/4/2 バイデン大統領、American Jobs Plan 発表、8年間で2兆2500億ドル投資

これに対し共和党は4月22日、対案として、期間5年、総額5,680億ドル計画を発表した。道路や橋などのインフラ事業とブロードバンドに絞ったもの。

ブロードバンドは政府案では1,000億ドルだが、共和党は650億ドルとした。

増税を見込んでおらず、電気自動車の利用料や未使用の連邦資金などで財源を賄うとしている。州や自治体に拠出を要請する可能性もある。

政府・議会間の調整は、議会側は民主党Chris Coons、共和党Shelley Capitoの両上院議員の主導で進められた。

バイデン大統領は5月21日,雇用計画法の歳出規模を当初案2兆2500億ドルから1.7兆ドルに縮小すると発表した。

新提案では、高速ブロードバンド向け投資が1,000億ドルから650億ドルに圧縮される。

道路や橋、主要インフラ向けも当初の1,590億ドルから1,200億ドルに減額される。

R&D、中小企業、サプライチェーン改善などの投資は別の法案に振り替える。

これを受け、米上院共和党は5月27日、9,280億ドル規模のインフラ投資計画の対案を新たに示した。

共和党案は8年間で道路や橋の整備など伝統的なインフラを中心に資金を投じる。政権側がめざす教育分野などへの支出は含まない。

政権側は企業増税で財源を賄うことを提案しているが、共和党は増税に反対し、新型コロナウイルス対策の未使用の財源を充てるなどと主張した。

バイデン大統領は共和党案を規模が小さいとして拒否し、ここで行き詰った。

大統領は6月8日、共和党Shelley Capito上院議員と短時間の電話協議を行った。

大統領はカピト議員の提示額が低すぎるとして、協議を打ち切る方針を固めた。

サキ報道官は声明で「大統領は、カピト上院議員のグループによる最新の提案ではこの国の基本的なニーズが満たされないという見解を伝えた」と述べた。「大統領が自身の計画を1兆ドル以上縮小する用意があったのに対し、共和党グループは新規投資分を1500億ドル上積みするにとどまった」とした。

カピト議員は声明で「真摯に交渉し、バイデン大統領の望む方向に向けて大きく進展していたことから、大統領の決定に失望している」と述べた。「大統領は財源として増税を含む提案をし続けた」とした。

大統領はツイッターへの投稿で「共和党との妥協点を見いだすことに尽力しているが、年収40万ドル以下の層に対する増税は拒否する」とし、富裕層や企業が公平な負担を求める時との認識を改めて示した。



2021/6/11 建設アスベスト給付金法が成立 

建材用のアスベストで元建設労働者らが健康被害を受けた問題で、国家賠償請求訴訟を起こしていない被害者らを補償する「給付金制度」に関する新法が、6月9日の参院本会議で全会一致で可決、成立した。

 

自民・公明両党は2021年2月、最高裁で東京、京都、大阪のアスベスト集団訴訟での国の賠償責任が確定したことを受けて、被害者の救済策を検討する合同の対策チームの初会合を開き、関係者へのヒアリングを行うなどしたうえで具体策を取りまとめる方針を確認した。

最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は5月17日、元建設作業員と遺族が、国と建材メーカーに損害賠償を求めた4件の訴訟の上告審判決で、規制を怠った国の対応は違法と認め、「違法状態が続いた1975〜2004年の被害に賠償責任が生じる」との初判断を示した。被害原因となった建材を製造した可能性が高い複数のメーカーの連帯責任も認めた。

これを受け、国と原告団、弁護団が、和解内容を盛り込んだ基本合意書に調印。国が最大1300万円の和解金などを支払うことで合意した。裁判外の被害者を救済する給付金制度の創設についても、基本合意書に盛り込まれていた。

2021/5/19  

最高裁、建設アスベスト訴訟で 国と企業の責任認める

これを踏まえ、訴訟に加わっていない被害者や遺族にも、給付金を支給するための法律が、可決・成立したもの。


建設石綿給付金法のポイント:

▽支給対象者は、石綿の吹き付け作業(1972年10月〜1975年9月)や、一定の屋内作業(1975年10月〜2004年9月)に従事した労働者や一人親方ら

▽石綿によって生じた健康被害の症状に応じて、1人550万〜1300万円を支給

▽被害者側の請求に基づき、厚生労働省に設置された審査会が審査を行い、厚労相が認定、支給する

▽独立行政法人・労働者健康安全機構に支払いのための基金を設置

 

厚労省は支給対象者数を2054年までの約30年間で計3万1000人と推計、支給総額は最大4000億円を見込んでいる。



2021/6/11   米上院、対中包括法案を可決

 米上院は6月8日、拡大する中国の影響力に対抗することを目的とした異例の超党派法案 United States Innovation and Competition Act を可決した。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 19 48 1 68
反対 31   1 32
合計 50 48 2 100

様々な分野で中国の影響力に対抗することが狙いで、「米国のイノベーションを一段と後押しし、今後数世代にわたって我が国の競争優位性を維持する内容」としている。

米国の技術や科学、研究に合わせて5年間で総額2500億ドルを投資する。

米国の技術や研究の強化に約1900億ドルを充てる。
米議会が1月に成立させた国防権限法に半導体生産を強化する方針を示したことを受け、半導体・通信機器の生産・研究の強化に約540億ドルを支出する。うち20億ドルは、深刻な供給不足に陥っている自動車向け半導体に充てられる。

政府補助金をてこに国産半導体の育成を急ぐ中国をけん制する狙いがある

 

上院案にはこのほかにも、米政府の端末で中国系動画投稿アプリ「TikTok」のダウンロードを禁止する内容や、中国政府の支援を受ける企業が製造・販売するドローンを購入できないようにする措置が含まれる。

また、米国でサイバー攻撃や米企業からの知的財産窃盗に関与した中国の組織に幅広い制裁を義務付けるとともに、人権侵害に用いられる可能性のある製品について輸出管理の見直しを規定している。

日本など同盟国との連携強化も盛り込んだ。経済安全保障から人権問題まで包括的な対応策を明記している。

同法案の成立には下院の承認も必要になるが、下院には別の対中法案が提出されており、上下両院は一本化も視野に入れて早期成立を目指す。

バイデン大統領は法案を称賛し、「われわれは21世紀を勝ち取るための競争のさなかにある。この法案でスタートの合図が鳴った。後れを取ることは許されない」と述べた。

 

中国外交部報道官は9日の定例記者会見で以下の通り述べた。

「米上院がこのほど可決したいわゆる『2021年米国イノベーション・競争法案』の中国に関わる内容は事実を歪曲し、中国の発展路線と内外政策を中傷し、『中国の脅威』を誇張し、中国に対する戦略的競争を鼓吹し、台湾地区・香港地区・新疆・西蔵(チベット)関連の問題において中国への重大な内政干渉を犯し、冷戦・ゼロサム思考に満ちており、交流と協力の強化という中米両国各界の一致した願いに逆行するものであり、中国側はこれに断固として反対する」。


2021/6/12  韓国公取委の強い姿勢

韓国紙に興味深い記事が出た。

Samsung Group がGroupの社内食堂の給食業務を100%子会社に全量発注しているのが独禁法上、問題となっており、Group側が自主的な是正策(「同意議決」)を提案したが、公取委はこれを拒否した。財界関係者は「同意議決の棄却は公取委がSamsungの主な役員を検察に告発し、巨額の課徴金を課すなどの制裁を行うという意味だ」と述べた。

Samsung電子、Samsung Display、Samsung電機、Samsung SDIの4社は系列企業のSamsung Welstoryに社内食堂の給食業務を全量発注し、取引条件をSamsung Welstory 側に有利に設定した疑いが持たれている。

Samsung Welstory は第一毛織の子会社であったが、第一毛織がSamusung 物産と統合し、現在はSamusung 物産の子会社。給食と食材事業を行う。海外進出を図っている。

これが問題となったため、Samsungは今年4月、大企業7社と「団体給食発注開放発表式」を行い、「系列企業や一族経営の会社に随意契約で発注していた社内食堂の団体給食に競争入札を導入し、中小企業などに門戸を開く」とした。

公取委によると、Samsungは是正策(「同意議決」)で、Welstoryが独占してきた社内食堂の運営を開放し、中小・中堅企業への発注を優先的に考慮するとした。給食、食材関連の中小企業375社に融資支援(総額1500億ウォン:149億円)、中小給食業者1000社に衛生、安全教育、メニュー開発コンサルティングなどの費用を支援(総額50億ウォン)、社会福祉法人、保育所など450カ所に食品安全改善支援(総額100億ウォン)などを行うことも提案した。

公取委関係者は「Samsungが5月12日に同意議決を申請し、6月2日に公取委全体会議で棄却を決定した」としている。「近く制裁のレベルが決定される」という。
 

なお「同意議決」の例で、Appleが韓国の移動通信会社に広告費、修理費を転嫁したとして、公取委の調査を受けていたが、本年2月にAppleが修理費の10%割引などに充てる1000億ウォン(99億円)規模の共生基金の創設を提示し、制裁を受けなかった例がある。

一部からは「Appleよりも大規模な共生支援金を提示し、社内食堂の発注も開放することを決めたのに厳しすぎる」との指摘もある。

 

そもそも、社内食堂業務を子会社にやらせるのが独禁法違反になるのか疑問だが、異様と見えるほどの多額の貢献を行なう解決策を提案したのを公取委が蹴り、罰金を課すというのは理解し難い。

韓国で財閥に対する批判が強まっている中で、Samsung電子の李在鎔副会長が2015年のSamsung 物産と第一毛織の合併にからんで前大統領への贈賄容疑で起訴され、有罪となり収監されている。
公取委がSamsungに対して一般よりも厳しい姿勢を示しているように見える。


2021/6/12 米国の重要部材のサプライチェーンの点検結果と対策 

バイデン米大統領は2月24日、重要部材のサプライチェーン(供給網)を見直す大統領令に署名した。半導体や電池など重点4品目で安定した調達体制を整える。有力企業を抱える同盟国や地域と連携して、中国依存からの脱却を目指す。

先ず重要4品目の供給網を100日以内に見直す。リスクを調べ、それへの対応策の提案を求める。

100-Day Supply Chain Review

担当 品目
商務長官 半導体と先端パッケージング
エネルギー省長官 電気自動車用を含む高容量電池
国防長官
(国家防衛備蓄を担当)
レアアースを含む重要な金属や特定の戦略的物質
保健福祉長官 医薬品及び医薬品有効成分

2021/3/1 米、半導体などの供給網見直し 

 

これを受け6月8日に報告書が公表された。

Building Resilient Supply Chains, Revitalizing American Manufacturing, and Fostering Broad-based Growth   100-Day Reviews under Executive Order 14017

国内の投資不足や競合国の不公正な貿易慣行により、米国の供給網が脆弱になっていると指摘している。

人工知能(AI)など先端技術のカギを握る半導体について「米国の生産シェアは30年間で37%から12%に低下し、輸入品への依存は米国の長期的な競争力を脅かす」と警告。

国内生産・研究開発支援に少なくとも500億ドルを投じるよう議会に要請したほか、日本や韓国など同盟国を巻き込んで世界的な安定供給体制を目指す「国際フォーラム」を開催する方針を示した。


主な勧告や対策案:

<USTRに「攻撃」チーム>

中国に狙いを定め、米国のサプライチェーンを損なっている不公正な通商慣行をやめさせるための新たな「攻撃チーム」を設ける。

チームを率いるのは中国など外国への制裁関税などの権限がある通商代表部(USTR)。

<商務省は通商拡大法232条>

商務省は米通商拡大法232条に基づく調査を検討している。モーターなどの応用品に使われるネオジム磁石の中国からの輸入問題が米安全保障にどう影響するかを調べる。

<供給制約で作業部会>

米国では木材から鉄鋼に至る供給制約の問題が国内のインフレの懸念をかき立てている。これを解決するため、米政権は作業部会を立ち上げる。
重点的に取り上げるのは住宅建設、建築、半導体、運輸、農業、食品など。

<国防生産法で医薬品生産>

バイデン政権は国防生産法を使って、50〜100の重要な医薬品を輸入に頼らず、自国で製造できるようにする取り組みを加速する。
朝鮮戦争中に制定された同法は、既に同政権がコロナ対策でワクチンや他の不可欠な医療用品の生産を増強するのに用いている。

<半導体支援>

商務省は半導体メーカーとエンドユーザーの間の情報の流れを円滑化し情報の透明性向上も進める。半導体不足問題の解決も担う。半導体不足は自動車などの製品の生産を阻害している。

<電池政策>

政府の新作業部会が鉱物の採掘許可に関する法律の手直しを検討する。電池に使われる重要な鉱物について、環境面や労働面や持続可能性の「最も高い基準」を順守しつつ、採掘や加工ができる場所を国内で指定することも検討する。


国際開発金融公社は、重要な鉱物プロジェクトへの国際的な投資を拡大する。

エネルギー省は、先端技術の自動車電池のメーカーを支援する融資に170億ドルを振り向ける。


2021/6/14 ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング、自家培養口腔粘膜上皮「オキュラル」の製造販売承認取得  

帝人子会社のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)は6月11日、世界初の角膜上皮幹細胞疲弊症に対する口腔粘膜上皮細胞を用いた再生医療等製品「オキュラル」の製造販売承認を取得したと発表した。

本品は、大阪大学大学院医学系研究科(脳神経感覚器外科学(眼科学))の西田幸二教授が開発した技術を導入して実用化した国産の製品である

ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングは2020年9月14日、角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした再生医療等製品である自家培養口腔粘膜上皮(開発名:COMET01)の製造販売承認申請を厚生労働省に行ったと発表した。

2020/9/18 富士フィルム子会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング、自家培養口腔粘膜上皮の製造販売承認申請

オキュラルは、2020年に角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした希少疾病用再生医療等製品に指定されている。

医薬品医療機器等法に基づき厚生労働大臣より指定された希少疾病を対象とする再生医療等製品で、当該指定を受けた場合には、試験研究費に対する助成金の交付、優先的な治験相談および優先審査の実施、再審査期間の延長等の優遇措置が受けられる。

希少疾病用再生医療等製品の指定には、当該再生医療等製品の用途に係る対象患者数が本邦において5 万人未満であること、また、代替する適切な治療法が無い、既存の治療法と比較して著しく高い有効性又は安全性が期待されるなどの医療上特に優れた使用価値を有することが必要とされている。

 

眼科領域では、20203月に製造販売承認を取得した自家培養角膜上皮「ネピック」(2020年3月19日承認取得)につづき、国内第2号の再生医療等製品。

iPS細胞からつくった目の角膜の細胞を患者に移植する大阪大の西田幸二教授(眼科)らのチームの「角膜上皮幹細胞疲弊症に対する他家 iPS 細胞由来角膜上皮細胞シー トの first-in-human 臨床研究」計画が2019年3月5日、厚生労働省の 厚生科学審議会 再生医療等評価部会で、患者への同意の説明文書の内容などに修正を求める条件付きで了承された。

2019/3/8 厚労省、iPS細胞の角膜移植臨床研究計画を了承

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ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングは富士フィルム子会社であった。

1999年2月1日、ニデック、INAX、 富山化学工業は、名古屋大学医学部口腔外科学講座の上田実教授の指導のもとにヒト組織・細胞を用いた移植組織の研究開発を進め、将来の事業化を模索することとし、新しいベンチャー企業としてJ-TECを設立した。

その後、J-TEC株主の富山化学は富士フィルムの完全子会社となった。
2021年初めのジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの大株主は富士フィルム(50.13%)、ニデック(10.40%)であった。

2021年に帝人がTOBを行ない、57.72%の応募全てを買い付けた。

2021/2/2 帝人、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングにTOB 


 

2021/6/14  小野薬品、新型コロナ治療薬「フォイパン」開発を中止 

小野薬品工業は6月11日、蛋白分解酵素阻害剤「フオイパン®錠」(一般名:カモスタットメシル酸塩)について、無症状から中等症の新型コロナウイルス感染症患者を対象にプラセボを対照とした国内第V相試験を行なっていたが、主要評価項目であるSARS-CoV-2が陰性化するまでの期間を達成しなかったため、開発を中止すると発表した。

フオイパンの有効性を示唆する基礎論文の報告およびヒト血中濃度の関係性を踏まえ、健康成人を対象に既承認用量を超えた用量での安全性確認のために第T相試験を実施し、その結果を踏まえて無症状から中等症のCOVID-19患者を対象とした第V相試験を実施したが、有効性が認められなかった。

無症状から中等症のCOVID-19患者を対象にプラセボを対照とした多施設共同二重盲検無作為化並行群間比較試験で、フオイパン1回600mg(77名)又はプラセボ(76名)を1日4回、それぞれ最大14日間経口投与した。主要評価項目はSARS-CoV-2が陰性化するまでの期間。

 

東京大・医科学研究所の井上純一郎教授らは2020年3月18日、急性膵炎の治療薬として国内で長年使われてきた点滴薬剤「ナファモスタット(商品名フサン)」が新型コロナウイルスの感染を阻止する可能性があると発表した。

2020年3月初めにドイツのグループはナファモスタットの類似の薬剤であるカモスタット(商品名フォイパン)の有効性を発表していた。

カモスタット(商品名フォイパン)は、小野薬品工業が創出し、1985年に発売した。既に物質特許は切れており、国内で多数の後発品メーカーが同じ成分の薬を販売している。

2020/3/18 急性膵炎治療薬が新型コロナウイルス感染阻止の可能性

 

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なお、フサンについては有望な結果が出ている。

コロナウイルスの場合、ウイルスのSタンパク質がヒト細胞の細胞膜のACE2受容体に結合したあとに、タンパク質分解酵素(TMPRSS2)で切断され、Sタンパク質が活性化されることが重要であるが、ナファモスタット(フサン)はTMPRSS2による切断を阻止し、ウイルスの侵入を阻止する。

2020/5/12 東京大学、アビガンとフサンの併用療法の臨床研究開始


東京大学・井上教授の研究チームの臨床研究では、フサンが変異ウイルスにも効く可能性があると分かった。

実験データでは、フサンの量を増やすとグラフが右下がりになるが、各変異株が同じ動きをしており、変異株にも効く可能性が強いとしている。

但し、医療現場が逼迫するなか、臨床試験が思うように進まないという。井上教授は「年内の承認」を目指している。

 

 

 


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