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2024/2/15 米議会上院 ウクライナ支援の予算案可決  成立は不透明な状況

アメリカ議会上院はこれまで与野党の対立で宙に浮いていたウクライナへの軍事支援の予算について、2月13日、緊急の予算案を可決した。

緊急予算案は953.4億ドル(約14兆円)にのぼる。ウクライナやイスラエル支援に加え、インド太平洋地域向けの予算も計上した。

2月7日に否決された予算案から、トランプ前大統領の介入で政治問題になっている米国の国境不法移民対策の予算を除外し、ほぼ、前回と同じものである。

2024/2/9  米連邦議会の混迷 

  バイデン案 2/7 否決 2/13 可決
ウクライナ支援 614億ドル 601億ドル 600.6億ドル
米国国境不法移民対策  136億ドル 202億ドル

   除外

イスラエル支援 143億ドル 141億ドル 141億ドル
ガザ支援 92億ドル 100億ドル 91.5億ドル
インド-太平洋 74億ドル 48.3億ドル 48.3億ドル
紅海対策   24.4億ドル 24.4億ドル
その他   63億ドル 47.6億ドル
合計 1060億ドル 1180億ドル 953.4億ドル

少数の共和党議員が、米国は海外に多額の金を送るよりも国内問題に焦点を集めるべきだと主張、ウクライナへの支援予算に反対し、徹夜で議場を支配した。

しかし、22人の共和党議員が、ウクライナを見捨てるとロシアのプーチン大統領を大胆にし世界中の安全保障を危うくするとし、大多数の民主党議員とともに賛成票を投じ、早朝に70 対 29で可決した。

民主党系3人はガザ地区の民間人死亡増加を懸念して反対した。

  共和党 民主党系 合計
民主党 民主系無所属 無所属
賛成 22 46 1 1 70
反対 26 2 1   29
棄権 1       1
合計 49 48 2 1 100

         民主系無所属はSanders, King 両議員、無所属は元民主党のSinema議員

ただ、野党・共和党の下院議長は、国境の危機的な状況への対応を怠っているとして、この予算案に否定的な考えを示していて、予算案が成立するかは依然、不透明な状況である。

ジョンソン下院議長は共和党の超保守派議員から、移民政策で譲歩を引き出すことなしにウクライナ支援法案を可決させないよう圧力を受けている。超保守派議員が求めているのは亡命希望者全員を強制的にメキシコにとどまらせること、国境に壁を建設することなど、民主党にとっては受け入れがたい内容である。

なお、トランプ前大統領は2月10日、Social Media PlatformのTruth Socialで、米政府の対外国支援を返済義務が生じる融資又は紐付き融資に限定すべきだと表明した。反対してきた対ウクライナ追加支援の条件に浮上する可能性がある。

“We should never give money anymore without the hope of a payback, or without "strings" attached. The United States of America should be "stupid" no longer !

 


2024/2/16 レゾナック、石油化学事業のパーシャル・スピンオフ検討開始

レゾナックは2月14日、石油化学事業の持続的成長に向けた選択肢の一つとして、パーシャル・スピンオフについて検討を開始したと発表した。

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昭和電工は2019年12月18日、日立化成を株式公開買い付け(TOB)により買収すると発表、1株あたり4630円で2020年3月24日から4月20日までTOBを実施した。

TOBの結果、87.61%を取得した。4月28日付で昭和電工の連結子会社になり、その後全株式を取得し、6月23日に完全子会社とした。

昭和電工は連結子会社化した日立化成の社名を2020年10月1日付で「昭和電工マテリアルズ」に商号変更した。

昭和電工は2023年1月1日に持株会社体制へ移行、昭和電工マテリアルズと統合し、「レゾナック」Resonac)になると発表した。

2022/10/3 昭和電工、来年1月に昭和電工マテリアルズと統合、「レゾナック」に改称

昭和電工と昭和電工マテリアルズの統合による組み換えと、組み換え後の新セグメントの2023年12月期の実績は下記の通り。


同社はポートフォリオ最適化に向けた流れとして、下記の9つの事業を売却した。

2021年  昭光通商(商社)、アルミ缶事業、食品包装用ラップフィルム事業、アルミ圧延品事業、プリント配線板事業、蓄電デバイス・システム事業

2022年  セラミック事業、ISOLITE(自動車等の断熱部品事業)

2023年  診断薬事業

 

今回、石油化学事業のパーシャル・スピンオフの検討を開始した。2〜3年後の実行を念頭に、本年度末に向け、検討を進める。

同社は今後、半導体・電子材料事業に経営資源を集中することで、成長を促進する。

一方、同社にとって石油化学事業は、連結売上高の約20%を占める柱の事業の一つであり、「安定収益事業」と位置付けている。日本の社会インフラとしての役割を果たす公共的な側面があり、将来にわたって同事業の持続的・安定的な運営を行う必要がある。

そのため、スピンオフにより、独立した上場会社として石油化学のグリーン・トランスフォーメーションを実現可能とする取り組みを加速し、さらなる成長と競争力の強化を目指すことにした。

分離対象は大分コンビナート事業で、アンモニアなどを製造する川崎市などの化学品事業は含まない。

レゾナックHDが石化事業を新会社として分割し、新会社の株式20%未満を保有する。残りの株式を現物配当として同社の既存株主に分配する。

新会社は東京証券取引所に上場させる。2023年度の税制改正で始まった「パーシャル・スピンオフ」という事業再編の仕組みを使う。レゾナックHDは実質非課税で事業を切り離すことができる。

スピンオフ税制は、100%の分離を前提とするものであり、スピンオフ元親会社に子会社株式を一部残すパーシャル・スピンオフは、課税対象のままであった。

スピンオフ税制の適格要件が、2023年4月から緩和され、パーシャル・スピンオフにおいても、一定の要件を満たせば課税対象外となった。これにより、スピンオフ親会社は、スピンオフ会社株式の20%未満であれば保有できることになった。


高橋社長は、「石化事業を手放すのではなく、独り立ちさせることが目的」で、「他の会社と組む話が進めば、JVなど他の手法もありうる」と述べた。

 

参考  同社の大分コンビナートの構成は下図の通り。クラッカーはレゾナックが所有・運営。

   日本ポリエチレン:日本ポリケム ( 三菱ケミカル100%)  58%
            日本ポリオレフィン( レゾナック65% / Eneos 35%)  42%

   サンアロマー:レゾナック 65% / Eneos 35%

   NS スチレンモノマー:レゾナック 49% / 日鉄ケミカル&マテリアル 51%

            日本エラストマー:旭化成 75% /  レゾナック 25%


2024/2/19 BP のアフリカ西部のLNG計画 進展

BPは西アフリカのモーリタニアとセネガルの国境の沖合のGreater Tortueガス田で石油ガスの開発を行っており、Greater Tortue Ahmeyim (GTA) LNG project (浮体式液化天然ガス生産設備船FLNG でLNGを生産する計画)を進めている。

JVのGreater Tortue FLNG Phase1 の相手は、米国の石油会社 Kosmos Energy と、モーリタニアの 国営PETROSEN 、セネガルの国営Société Mauritanienne des Hydrocarbures (SMH) である。

権益比率は、BP 61%、Kosmos Energy 29%、PETROSEN 5%、SMH 5%である。

モーリタニア・セネガル沖では長らく中小独立系企業が探鉱を行ってきた。2012 年に Kosmos Energy が同海域での探鉱に参入すると、アフリカでの豊富な経験を活かし、 Tortue を含む有望なガス層を相次いで発見した。

 同海域の有望性が明らかになると、BP が参入し、Tortue ガス田開発が加速した。Tortue ガス田はモーリタア・セネガル国境に跨るものの、両国間の速やかな権利関係確定により順調に開発が進んだ。その後、ガスの販売は全量 BP が引き受けることが発表された。(JOGMEC 報告)

左下のCairn Energy は、現在の社名 Capricorn Energy で、英国を拠点とする独立したエネルギー会社

BPは2月15日、浮体式液化天然ガス生産設備船(FLNG) Gimi がモーリタニアとセネガルの国境に到着したと発表した。Golar LNGが所有、運営する Gimi FLNG船は2023年11月にシンガポールを出港、9000海里を航行して現場に到着した。

Greater Tortue Ahmeyim (GTA) LNG project の第1期は年230万トンのLPGを生産する。20年以上生産を続ける見通しで、モーリタニアとセネガルをグローバルなLNGのハブにすると見られている。

計画では、120km沖合の深海の石油層からガスを採掘し、海底パイプで沖合生産・貯油出荷船(FPSO)に送り、ガスを処理して重質油を取り除く。その後、ガスはパイプラインでGTA Hub のFLNG(Gimi)に送られ、4系列の液化設備で処理され、貯蔵される。Gimi は125,000m3 のLNGを貯蔵できる。

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2018年12月に、Grater Tortue Ahmeyim LNG事業のフェーズ1としてLNG生産年間250万トンの計画で最終投資決定(FID)がなされた。

2019年2月には、Golar LNGがBPにFLNG設備を提供することが発表され、Golarの子会社のGimi MSとBPの間でFLNG Gimi号の賃貸・操業契約が締結された。

Golar LNG は、天然ガスの液化および液化天然ガス(LNG)の再ガス化、貯蔵、積出のための海洋インフラストラクチャーを設計、所有、運営する。FLNGセグメントは、FLNG船やプロジェクトの運用を含む。LNG船のFLNG船への改造や、FLNG船の新規建造と顧客からの運航請負を行う。

さらに、2019年3月には、TechnipFMCがGreater Tortue Ahmeyim LNGプロジェクトで展開されるFPSOユニットの設計、調達、建設、据付および試運転(EPCIC)に関する契約をBPと締結したと発表した。

そして、2020年2月、Kosmos Energyとそのパートナー企業はBP Gas Marketing Limited.と、Grater Tortue Ahmeyimプロジェクト第1段階より20年間、年間245万トンのLNGについて販売契約(SPA)を締結した。


2024/2/20  「網膜色素変性」に対し、光遺伝学を使った遺伝子治療の治験開始へ

慶応義塾大学の栗原俊英准教授らの研究チームは遺伝性の目の難病で失明や視力低下した患者に対し、視覚を再生する治療の臨床試験(治験)を2024年度にも始める。神経活動を光で操作する「光遺伝学」の技術を応用する。

網膜色素変性は遺伝子の変異によって、目の網膜で外から入ってきた光を感知するセンサーの役割を果たす「視細胞」に障害が生じる進行性の病気 である。国内の患者数は約3万人、世界では150万人以上といわれる。

遺伝子変異で視細胞(光を感じるセンサー)に障害があると、夜盲、視野狭窄となり、病気の進行で、視力低下、中途失明も起こる。

慶応義塾大学医学部眼科学教室の栗原俊英准教授、堅田侑作特任助教らの研究グループは、2023年10月16日、名古屋工業大学神取秀樹教授らが創出した「キメラロドプシン」という独自の光センサータンパク質を用い、光遺伝学(オプトジェネティクス)を利用した高感度な視覚再生効果及び網膜変性の保護効果を世界で初めて、マウスで確認したと発表した。

https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2023/10/16/231016-1.pdf

近年さまざまな技術を応用した治療法の開発が活発に進められており、その一つが光遺伝学(オプトジェネティクス)という技術である。これを応用して患者の目の中でも働くことのできる光センサー遺伝子を送り込んで視覚を再生できることが知られており、現在海外では治験も複数行われている。

しかし、従来の光センサータンパク質は直射日光のような非常に強い光でないと反応できず、実用化に課題がある。

名古屋工業大学の神取秀樹教授らが創出した「キメラロドプシン」を用いて、栗原俊英准教授らが高感度な視覚再生遺伝子治療法として応用する研究を行った。

動物型と微生物型のロドプシン(光センサータンパク質)を組み合わせることで、高感度で、視サイクル(動物型ロドプシン再生に必要な代謝経路)不要で働くという特徴を両立。

これをAAVベクター(遺伝子を届けるための入れ物)に搭載し、網膜双極細胞で発現させることにより高感度な視覚再生を行い、視細胞で発現させることで網膜変性の保護を行う。

本研究では、網膜色素変性のモデルマウス(rd1)に対して、キメラロドプシンをコードする遺伝子を搭載した AAV ベクターを硝子体内へ投与し治療する実験を行ったところ、無治療マウスでは光応答が無いのに対し、治療マウスでは強い光はもちろん、街灯のある夜道程度の弱い光でも反応が確認された。

さらに、同じウイルスベクターを網膜下投与で視細胞に発現させたところ、無治療マウスに対し、治療したマウスでは網膜変性の進行が抑制される効果が確認された。


2024/2/21 戦時中の「徴用」をめぐる問題で韓国の原告が日立造船の供託金を受領

太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、日立造船に賠償を命じた判決が韓国で確定した裁判の原告側は、日立造船が裁判所に預けた供託金を賠償にあてるために受け取ったと明らかにした。一連の裁判で、原告側に日本企業の資金が渡るのは初めて。

供託金は、日立造船が韓国国内にある資産の差し押さえなどの強制執行を防ぐためのもので、6000万ウォン、日本円にして670万円余りが裁判所に預けられていた。
 

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韓国最高裁は2023年12月28日、戦時中に朝鮮半島から動員された元徴用工や朝鮮女子勤労挺身隊員らが三菱重工業と日立造船に損害賠償を求めた計3件の訴訟で、企業側の上告をいずれも棄却した。両社に賠償を命じた一、二審判決が確定した。

名古屋の航空機工場で働いた元挺身隊員ら2人と広島に動員された元徴用工14人が三菱重工を訴えた計2件と、大阪に動員された元徴用工1人が日立造船を訴えた1件。原告側の弁護士は、計17人に対する賠償と遅延利息を合わせた総額はおよそ30億ウォン(約3億2800万円)に上るとの見方を示した。

最高裁は一連の訴訟で、戦時中の動員は「日本の不法な植民地支配と直結する反人道的な不法行為」であり、被害者の慰謝料請求権は日韓請求権協定の対象外との判断を踏襲している。12月21日には、2018年の最高裁判決から3年以内に提訴した場合は賠償請求権の消滅時効は成立しないという趣旨の判断も示した。


このうち、日立造船の敗訴が確定した訴訟で、同社が2019年に賠償金相当額を「供託」していたことが判明した。

2019年1月11日にソウル高裁は日立造船の控訴を棄却する判決を言い渡したが、日立造船はこの直後に「強制執行を防ぐため」として、6000万ウォン(約670万円)を韓国の裁判所に供託した。同社の在韓資産が没収されることを避けるためである。

今回の最高裁の判決を受け、原告側はこの供託金を訴訟の賠償金として受け取る手続きを行った。

ソウル中央地裁は2024年1月23日、日立造船被害者のLさん側が供託金を賠償金として受け取るために申し立てていた差押取立命令の申立てを認めた。

今回、原告が実際に供託金を賠償に当てるために受け取ったことが明らかになったわけで、日立造船が賠償金を支払ったことになる。

原告の代理人は「日本企業によって事実上の賠償がなされる点に意味がある」と説明した。

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日本政府は、元徴用工問題は日韓請求権協定によって「請求権問題は完全かつ最終的に解決された」という立場で一貫している。

新日鉄住金(現・日本製鉄)、三菱重工業など日本企業は、日本政府の見解をもとに、支払いに応じていない。

それに対し、大法院判決は「請求権協定は植民地支配の不法性を前提としていないから不法性を前提とする損害賠償請求権は協定の対象外であり、成立する」という論理を展開している。

韓国の朴振外相は2023年3月6日、元徴用工問題の解決策を正式に発表した。韓国最高裁が日本企業に命じた賠償金の支払いを韓国の財団が肩代わりする。

骨子:

・ 韓国政府傘下の公益法人「日帝強制動員被害者支援財団」が原告に判決金相当の金額を支払う。

新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業を相手取った3件の訴訟で判決が確定している。韓国外務省によると賠償対象となる元徴用工は故人を含め15人いる。

聯合ニュースによると15人分の判決金と利子の総額は40億ウォン(約4億円)規模になる。遺族を含む原告に支給する。

・ 係争中の訴訟も、原告の勝訴が確定した場合は財団から支給する。

韓国の裁判所では、元徴用工らが日本企業に賠償などを求めた同様の訴訟が多数、係争中。

・ 肩代わりの財源は民間の自発的貢献により調達

1965年の日韓請求権・経済協力協定に基づく日本の経済協力で恩恵を受けた韓国鉄鋼大手ポスコなどが想定されている。

付記 韓国鉄鋼大手ポスコは3月15日、元徴用工を支援する韓国政府傘下の財団に40億ウォン(4.1億円)を拠出すると表明した。

被告の日本企業の資金拠出は前提としていない。日本政府は、元徴用工問題は1965年の協定で最終的に解決済みとの立場で一貫し、大法院判決は国家間の約束を覆す「国際法違反」と主張してきた。被告の日本企業の拠出がなければ、日本側も受け入れが可能となる。

別途、経団連と、韓国側のパートナーとなる全国経済人連合会は共同で「未来青年基金」(仮称)を設立する予定で、基金は留学生への奨学金支給など若者世代の交流増進に活用されるという。

・ 原告に判決金の受け取りに理解・同意を求める努力を継続する。

・ 歴史問題の真の解決に向けた研究と、未来世代に対する教育を強化

朴外相は「膠着した日韓関係をこれ以上放置せず、国益の次元で悪循環の輪を断ち切る」と話した

2023/3/9 韓国、元徴用工解決策を発表

日本政府の「元徴用工問題は1965年の協定で最終的に解決済み」との考えに基づき、日本企業はこれに基金を拠出していない。

原告の多くはここから判決金相当の金額を受けたが、それを拒否する原告もいる。原告への支払により、基金の枯渇が懸念されている。

この状況下で、日立造船が実質的に賠償金を支払うという事態が発生した。

日本政府は、韓国政府が示した解決策の枠組みには影響しない例外的なケースとみている。


2024/2/26 中国の造船企業、世界初のアンモニア燃料動力コンテナ船の建造を受注  日本郵船はアンモニア燃料アンモニア輸送船を建造

ベルギーの海運大手CMBの研究開発企業CMB.tech はこのほど、中国船舶集団上海船舶研究設計院が独自に開発・設計した世界初のアンモニア動力コンテナ船の建造を発注した。人民日報が報じた。

同船は20フィート標準コンテナ(TEU)を約1400基積載することができ、アンモニア燃料エンジン、アンモニア燃料貯蔵タンク、供給システム、注入システムを搭載する。同船は複数の革新的設計を採用し、積載能力をより向上させ、複数規格 (20 feet, 26 feet, 30 feet, 40 feet and 45 feet) のコンテナを積載することが可能だという。

全長約150メートル、全幅約27メートルで、青島揚帆船舶製造で建造される。引き渡しは2026年半ばを予定。

本船のオーナーは、窒素肥料世界最大手のYara International のグループ会社Yara Clean Ammonia と欧州近海船会社のNorth Sea Container Line (NCL) で、引き渡し後は主にノルウェーとドイツを結ぶ航路に就航する。オーナーのYara Clean Ammoniaが燃料アンモニアを供給する。

アンモニア燃料の利用を推進するため、Yara Clean Ammoniaは業界の他社と共同で、ノルウェーをはじめとしたスカンジナビア諸国の港湾施設に、クリーンアンモニアの貯蔵および補給ネットワークの建設を目指している。

中国船舶集団によると、年間約1万トンの二酸化炭素排出量の削減が期待できるという。

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日本郵船は1月25日、アンモニアを燃料に使いアンモニアを運ぶ外航船の建造を発表した。2026年11月の完成を目指す。

日本郵船、ジャパンエンジンコーポレーション、IHI原動機、日本シップヤードの4社は、2023年12月に世界初となる国産エンジンを搭載したアンモニア燃料アンモニア輸送船(AFMGC: Ammonia-fueled Medium Gas Carrier)の建造に関わる一連の契約を締結した。

2021年10月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業の採択を受けた。

船種 40000m3型アンモニア燃料アンモニア輸送船
引渡時期 2026年11月(予定)
造船所 ジャパンマリンユナイテッド蒲L明事業所
搭載エンジン @主機:ジャパンエンジンコーポレーション製
    アンモニア燃料Dual Fuel (DF)2 ストロークエンジン 

A補機: IHI原動機製
     アンモニア燃料Dual Fuel  (DF)4 ストロークエンジン

※主機:プロペラを回して船の推進力得るためのエンジン
    補機:船内の電気を賄う発電機を駆動するエンジン

ーーー

アンモニア燃料船の開発をめぐる国際競争は激化している。日刊工業新聞のまとめでは下記の通り。


2024/2/28 米国商務省、CHIPS法に基づく半導体メーカーへの最初の補助金支給

バイデン大統領は2022年8月9日、国内半導体産業支援法「CHIPS法」案に署名し、同法が成立した。

法案の総額は約5年で約2,800億ドルとなり、その多くはエネルギー省や商務省、国立科学財団(NSF)、国立標準技術研究所(NIST)といった連邦政府機関の研究開発プログラムなどへの予算の充当となる。

産業界向けのCHIPSに関する5年間で527億ドルの予算の内訳は次のとおり。

  1. 商務省製造インセンティブ(390億ドル):半導体の設計、組み立て、試験、先端パッケージング、研究開発のための国内施設・装置の建設、拡張または現代化に対する資金援助。
       うち、60億ドルは直接融資または融資保証に使用可能。
     
  2. 商務省研究開発(110億ドル):商務省管轄の半導体関連の研究開発プログラムへの予算充当。
  3. その他下記(27億ドル)

2022/7/29 米議会、「CHIPS法」を可決 


商務省はこの390億ドルのインセンティブの実質第1号として、2月にGlobalFoundriesに15億ドルを支給する。

2023年12月にNew HampshireのBAE Systems の施設に35百万ドル、2024年1月にMicrochip Technologyに162百万ドル支給を発表したが、本格的な支給はこれが最初。

GlobalFoundriesは米国の半導体製造企業で、ファウンドリとしてはTSMC、Samsungに次いで世界第3位グループ。

半導体受託製造シェア(2022/10〜12、台湾トレンドフォース情報)

TSMC 台湾 58.5%
サムスン電子 韓国 15.8%
UMC (聯華電子) 台湾 6.3%
GlobalFoundries 米国 6.2%
その他   13.2%

2008年にAdvanced Micro Devices(AMD)が半導体製造部門を分社化し、The Foundry Companyが発足した。

2009年3月にアブダビ政府傘下の投資会社 Advanced Technology Investment Co. (ATIC)が65.8%、AMDが34.2%出資して、これをGlobalFoundries とした。

2023/4/24      米半導体メーカー、ラピダスへの技術共有でIBMを提訴

GlobalFoundriesは商務省との合意に基づいて、ニューヨーク州Maltaに新しい半導体生産施設を建設し、同地およびバーモント州Burlingtonの既存施設を拡張する。

この15億ドルのGlobalFoundries助成金には、16億ドルの融資が付随し、これにより2つの州全体で125億ドルの全体的な投資が生み出される見込みという。

商務長官は報道陣に対し、「GlobalFoundriesがこれらの新しい施設で生産するチップは、われわれの国家安全保障にとって不可欠なチップです」と述べた。

商務長官は今月、多数の応募者と積極的に協議中であり、3月末までに複数の発表を行う予定だと語った。ロイターに対し、「これらの企業とは非常に複雑で困難な交渉をしている。これらは非常に複雑で、この国でこれまでになかった規模と複雑さの施設だ。TSMC、サムスン、インテルなどが提案している施設だ。これらは新世代の投資であり、これまでにこの国で行われたことのない規模、複雑さだ」と述べた。

GlobalFoundriesのチップは、衛星や宇宙通信、防衛産業、車両の盲点検知や衝突警告、Wi-Fiや携帯電話などに使用されている。GlobalFoundriesのCEOは声明で、「産業全体として、今後は米国製チップの需要を増やし、優れた米国の半導体技術労働力を育成することに注力する必要がある」と述べている。

GlobalFoundriesは、大規模なグローバルな製造拡張の一環として、2022年9月にシンガポールに半導体製造工場を開設した。40億米ドルを投じた同工場は2万3000m2のクリーンルームを備え、年間45万枚(300mmウエハー換算)の生産能力を有する。

今回のニューヨーク州Maltaの新施設拡張により、GMを含む自動車部品メーカーや製造業者にチップの安定供給が確保される。
GlobalFoundriesとGMは2月9日に、GMが米国製プロセッサを確保するための長期契約を発表した。GMのマーク・ロイス社長は、「GlobalFoundriesのニューヨークへの投資は、GMが需要に対応し、米国の自動車革新を支援するための堅実な半導体供給を確保する」と述べている。

Maltaの新施設では、現在米国内で製造されていない高付加価値のチップが生産される予定。

 


2023/2/29 米議会指導部、年度予算案を3月22日までに成立させることで合意 

米連邦議会のジョンソン下院議長(共和党)ら上下院指導部は2月28日、政府機関の一部閉鎖を回避するための新たな「つなぎ予算」で合意した。現行のつなぎ予算の最初の失効期限が3月1日に迫り、対応を求められていた。

米議会上院と下院は1月18日、3回目のつなぎ予算案を可決した。19日に迫る連邦政府機関の一部閉鎖を回避するための同予算案はバイデン大統領に送付され、 大統領は19日、これに署名し、同法が成立した。

今回のつなぎ予算案は 退役軍人省やエネルギー省、農務省、運輸省、住宅都市開発省向けを3月1日まで、他の機関 (金融・サービス、商務・司法・科学、労働・保健・教育、国防、国土安全、内務・環境、立法、外交の8分野)の資金を3月8日まで手当てするもの。

歳出カットは実施せず、ウクライナとイスラエルへの軍事支援は含まない。

2024/1/22 米国つなぎ予算案成立、政府機関の閉鎖回避

ジョンソン氏らは今回、審議が難航している2024会計年度(23年10月〜24年9月)予算案を、3月22日までに成立させることで合意した。

共同声明によると、与野党交渉担当者は24会計年度予算案の一部(12本の予算のうちの6本で、退役軍人省やエネルギー省、農務省、運輸省、住宅都市開発省向け)で昨年合意したレベルにすることで合意。これについて最終文書を策定し3月8日までに上下院で可決させる。
残る6本の歳出分野でも詰めの交渉を進め、3月22日までに可決させる。

これらの手続きを進める時間を確保するため、今週中に新たなつなぎ予算を成立させる。現行のつなぎ予算の失効期限は3月1日と8日だったが、新たな失効期限は3月8日と22日となる。

ただ、共和党の一部保守強硬派は大幅な予算削減を求めており、先行き不透明な面もある。

米下院は2月29日、つなぎ予算の延長に関する法案を賛成320票、反対99票で可決し、上院に送付した。上院は29日中の法案可決を急ぐ。

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ただし、ウクライナ、イスラエルや他の同盟国への950億ドルの緊急支援予算については、下院で進展はない。
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上院はこれまで与野党の対立で宙に浮いていたウクライナへの軍事支援の予算について、2月13日に緊急の予算案を可決した。

  バイデン案 2/7 否決 2/13 可決
ウクライナ支援 614億ドル 601億ドル 600.6億ドル
米国国境不法移民対策  136億ドル 202億ドル

  除外

イスラエル支援 143億ドル 141億ドル 141億ドル
ガザ支援 92億ドル 100億ドル 91.5億ドル
インド-太平洋 74億ドル 48.3億ドル 48.3億ドル
紅海対策   24.4億ドル 24.4億ドル
その他   63億ドル 47.6億ドル
合計 1060億ドル 1180億ドル 953.4億ドル

2024/2/15 米議会上院 ウクライナ支援の予算案可決 成立は不透明な状況

西側同盟国はジョンソン下院議長がこれをどう処理するか、注目している。バイデン大統領が2月27日に議会指導者をWhitehouseに集め説得した。

なお、下院は除名された共和党のSantos議員の後任に民主党員が選任され、共和党 219 対 民主党 213(欠員 3 )となっている。

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イスラエル支援に関しては、米国内で民主党のリベラル系支持者やアラブ系住民を中心にイスラエルの軍事作戦への批判が高まっている。

米国は2月8日、武器を供与する同盟国や友好国に対して、国際法に沿った使用などの誓約を求めることを決めた。

米政府は2月27日、ガサでの民間人被害を防ぐため、イスラエルに対し米国供与の武器使用の際に国際法を順守することを誓約する書面を3月中旬までに提出することを求めた。期限までに提出されない場合、武器供与の停止の可能性がある。


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