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2024/10/16 Googleが小型原子炉建設を支援−新興企業 Kairos Powerと電力購入契約  

Googleは10月14日、米国の小型モジュール型原子炉(SMR)スタートアップのKairos Powerと電力購入契約を結んだと明らかにした。2035年まで50万キロワットの電力を調達する。これは、AI データセンターキャンパス1カ所に電力を供給できる規模である。

Kairos Powerは、溶融塩冷却技術を使用するSMRを建設する計画で、送電網への供給開始後、Googleが電力を購入する。

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米エネルギー省は2020年12月、以下5社のチームを支援先として選定した。

    開発費 DOE支援
Kairos Power フッ化物塩冷却高温炉(KP-FHR)の開発 7年間で総額6億2,900万ドル 3億300万ドル
Westinghouse Electric Company ヒートパイプ冷却炉:eVinci超小型炉 7年間で総額930万ドル 740万ドル
BWXT Advanced Technologies TRISO燃料及びSiCマトリックスを利用するBWXT新型原子炉(BANR) 7年間で総額1億660万ドル 8,530万ドル
Holtec Government Services 軽水炉(PWR):Holtec SMR-160 7年間で総額1億4,750万ドル 1億1,600万ドル
Southern Company Services 溶融塩化物炉実験(MCRE) 7年間で総額1億1,300万ドル 9,040万ドル

米原子力規制委員会(NRC)は2023年12月12日、Kairos Powerが開発しているフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR(Kairos Power Fluoride salt-cooled High temperature Reactor」の実証炉「Hermes」(熱出力3.5万kW)について、第4世代の原子炉としては初の建設許可を発給すると発表した。

Kairos Powerは、テネシー州オークリッジにある米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク」に建設する計画で、2024年の着工に向けてサイトの最終準備作業を進め、2026年までに同炉を完成させる方針。

Kairos Powerはは2024年7月30日、米エネルギー省の「東部テネシー技術パーク」内の建設予定サイトで熔融塩実証炉「Hermes」の土木工事を開始した。

同社が最終的に建設を目指している商業規模の「KP-FHR」は熱出力32万kW、電気出力14万kWで、冷却材としてフッ化リチウムやフッ化ベリリウムを混合した熔融塩を使用。燃料にはTRISO燃料(ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料)を用いるとしており、同炉では固有の安全性を保持しつつ電力と高温の熱を低コストで生成可能になるという。

「Hermes」は「KP-FHR」の熱出力を約10分の1に縮小した非発電炉となる予定。Kairos Powerは「KP-FHR」の商業化に向けた段階的アプローチの重要ステップとして、クリーンで安全かつ安価な核熱の生産能力を「Hermes」で実証する。
NRCは現在、「Hermes」の隣接区域で同炉を2基備えた実証プラント「Hermes2」を建設するための許可申請書を審査中で、Kairos PowerはこれらのHermesシリーズで得られる運転データやノウハウに基づき、技術面や許認可面、建設面のリスクを軽減。「KP-FHR」のコストを確実化し、2030年代初頭に商業規模の「KP-FHR」の完成を目指すとしている。

Kairos Powerは「Hermes」の建設許可申請書を、2021年9月と10月の2回に分けてNRCに提出した。NRCは今年6月に同炉の安全性評価報告書(SER)最終版を完成させたのに続き、今年8月には環境影響声明書(EIS)の最終版を取りまとめた。

「Hermes」の建設計画に対しては、テネシー峡谷開発公社(TVA)が2021年5月に設計、許認可、建設、運転等でKairos Powerに協力すると発表。テネシー州政府やオークリッジ市、東部テネシー経済審議会なども、同計画への支持を表明している。

Kairos Powerのヘイスティングス副社長は、「過去50年以上の間に、米国で水以外の冷却材を使用する原子炉の建設が認められたのは初めて」と指摘。「Hermes」の完成後は運転認可の取得が別途必要になることから、「申請前の協議で築いた信頼関係に基づきNRCとは今後の審査でも協力していきたい」と述べた。 

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Kairos Power FHR (KP-FHR) は、ペブル形状の TRISO 燃料(ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料)と低圧フッ化物塩冷却剤を組み合わせた新しい先進的な原子炉技術で、効率的で柔軟な蒸気サイクルを使用して、核分裂熱を電気に変換し、再生可能エネルギー源を補完する。

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次世代原子炉ではNuScale Powerの小型モジュラー炉が注目されていた。

米オレゴン州の原発メーカーNuScale Power は2017年1月12日、開発を進めてきた次世代原子炉の小型モジュラー炉(SMR)を使った初めての発電所を建設・運転するための認可申請を米原子力規制委員会(NRC)に提出した。

発電所の所有者は
Utah Associated Municipal Power Systems で、アイダホ国立研究所(Idaho National Laboratory )内に建設され、操業はEnergy Northwestが担当する。

IHIは2021年5月27日、NuScale Power, LLCへ出資し、日揮とともにSMR事業に参画すると発表した。


しかし、
NuScale Power は2023年11月8日、米西部アイダホ州での小型原発の建設計画を中止すると発表した。

実現すれば米国初の案件となるはずだったが、インフレや金利高で建造費などが高騰しており、経済性が見込めなくなった。

2021/5/31 日揮とIHI、小型モジュール原子炉事業に参画

 


2024/10/21   GM、米リチウム鉱床権益取得に6億2500万ドルを拠出

カナダの鉱山会社、Lithium Americasは10月16日、米大手自動車メーカーのGeneral Motorsが、同社の米西部ネバダ州の
Thacker Pass鉱山のリチウム鉱床の権益を取得するために 現金と信用状で合計625百万ドルを拠出すると発表した。

GMは競争が激しい市場で電池関連材料の中国依存を減らすことを目指している。

Lithium Americasによると、GMは
Thacker Passの権利の38%を買い取る。計625百万ドルのうち430百万ドルが第1期工事に充てるための現金、195百万ドル が信用供与契約(下記)となる。

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Lithium AmericasとGMの関係は2023年1月に遡る。

Lithium Americasは2007年に設立された企業で、この時点では米国のほか、アルゼンチンでのリチウム開発プロジェクトも手掛けていた。

2023年1月31日にGM と当時のLithium Americasはネバダ州のThacker Passリチウムプロジェクトの開発に向けて共同投資を行うことを発表した。本合意に基づき、GMはLithium Americasに対して650百万ドルの株式投資を行う。

GMの株式投資は2回に分けて行う予定で、1回目の出資完了後、GMは拘束力のある供給契約を通じて、同プロジェクトのフェーズ1で生産される炭酸リチウムの独占アクセス権と、フェーズ2生産分の優先交渉権を獲得する。

2023年2月16日に1回目の出資320百万ドルが行われた。

この時点では、GMはLithium Americasに650百万ドルの出資をすることで、Thacker Passリチウムプロジェクトの開発に参画し、リチウムを取得することとしていた。

2023/11/16 ExxonMobil、アーカンソー州でリチウム生産 : GMはネバダ

 

Thacker Pass鉱山は ネバダ州とオレゴン州との州境の南側にあるネバダ州フンボル ト郡に位置する。

リチウム鉱床は約1630万年前に形成され現在は活動を停止している1,200平方キロの大規模火山McDermitt Calderaに位置する。火山噴火時に形成されたリチウムを豊富に含む湖が再度の火山活動により干上がり、地表近くに鉱床が形成されたという。

リチウムの埋蔵量は米国最大で、炭酸リチウムに換算して年間8万トン、最大で100万台分のEVバッテリー用のリチウム生産が可能になると見込まれている。

Lithium Americasは自然保護活動家や牧場主、先住民(Paiute、Shoshone、Washoe の先住民3族からなるReno-Sparks Indians)との長期にわたる複雑な裁判に勝訴後、2023年3月に建設作業を開始した。

2023年10月1日に Lithium AmericasがLithium Argentina Corp. と改称するとともに、北米の事業を分離し、新Lithium Americas Corp. とした。

分離の完了に伴い、GMは2回目の出資契約をLithium Americas Corp. との間で締結した。これに基づき、GMは、一定の前提条件が満たされることを条件として、新Lithium Americasの株式を330百万ドルで購入する。

GMはまた、新Lithium Americasと投資家権利契約を締結し、GMのオフテイク契約は新Lithium Americasに譲渡された。

GMは、新Lithium AmericasおよびLithium Argentinaの両社の株式の約9.4%を保有する最大株主となる。

今回(2024年10月)の合意は、上記の2回目の出資契約の330百ドル相当の投資に代わるものとなる。

即ち、Lithium Americasに追加の330百万ドルの出資は行わず、現金と信用状で合計625百万ドルを拠出し、Thacker Pass鉱山のリチウム鉱床の権益 38%を取得する。

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Lithium Americasは2024年3月に米国エネルギー省 (DOE)から、先進技術車両製造ローンプログラムに基づき、23億ドルのローンの条件付きコミットメントを受けた。

2025年半ばに予定されているDOEローンの最初の引き出しに先立ち、同社はDOEローンに関連する準備金口座(建設予備費、立ち上げおよび維持資本用)に約195百万ドル(現金または信用状による)を調達する必要がある。

GMの今回の拠出625百万ドルのうちの195百万ドルの信用状は、このエネルギー省ローンの準備金口座への資金供給に使用される。

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今回の計画 のまとめ:

2023年1月の契約時には、GMはLithium Americasに650百万ドルの株式投資を行い、リチウムを確保するという構想であった。

GMはまず、2023年2月16日に1回目の出資320百万ドル を行った。これにより旧Lithium Americasの9.4%の株主になった。
その後、
Lithium Americasは
新Lithium AmericasおよびLithium Argentinaに分割され、GMは両社の9.4%の株主である。GMはLithium Americas社の筆頭株主となる。

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Lithium Americas とGMは、Thacker Pass鉱山のリチウム鉱床開発のためJVを設立する。

GMは現金および信用状で 625百万ドルを拠出し、Thacker Pass の権益の38% 保有する。

  • 新Lithium Americasと投資家権利契約を締結し、現金330百万ドルを支払う。
  • フェーズ 1 の最終投資決定 (「FID」) 時に現金 100百万ドル を拠出する。
  • DOE ローンの最初の引き出し前に 195百万ドルの信用状を供与

Lithium AmericasはThacker Pass の権益の残り 62% 保有し、GM に代わってプロジェクトを管理する。

Lithium Americas は、プロジェクトの 62% の所有権に対して、JV に 387百万ドルの資金を拠出する。

 ・211百万ドルはJV の締結日に拠出される。2024 年 8 月以降の設備投資の支出は控除され、この金額が減額され、その他の調整も行われる。
 ・残りは、フェーズ 1 の
最終投資決定時に 拠出。
 ・2024 年6 月30 日現在、Lithium Americas の現金および現金同等物はおよそ 376百万ドルである。

GM が JV に株式持分の対価として提供する信用状195百万ドルには利息がなく、DOEローン要件と一致する満期となるが、Thacker Pass によって生み出される現金に置き換えられると、この要件は取り消される。

JV レベルで取締役会が設立され、JV を監督し、プロジェクトの予算と事業計画を承認し、GM のベンダー要件 (GM のHuman Rights Policy を含む) に沿ったポリシーを実施する。

合弁取引の締結に伴い、GM は Thacker Pass の第2 フェーズの生産量の最大38% について 20 年間の追加オフテイク契約も締結し、第2 フェーズの残りの生産量については優先オファー権を保持する。GM の合弁投資には、DOEローンの融資契約に関連するものを含む特定の前提条件が適用される。


Thacker Passリチウムプロジェクトは2026年下半期の操業開始を目指しており、生産が開始された場合、米国最大のリチウム鉱山となる見込みである。

同プロジェクトで生産される炭酸リチウム量は、最大100万台/年のバッテリーセル分に相当するとLithium Americas社は見積もっている。

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なお、分離したLithium Argentinaの事業は下記の通り。

アルゼンチン北西部のフフイ州、カタマルカ州、サルタ州は、チリおよびボリビアと共に「リチウムトライアングル」を構成する。

同社はフフイ州、サルタ州でリチウム事業を行っている。

 ・アルゼンチン北部のフフイ州では、Caucharí-Olaroz リチウム計画の 44.8% を所有する。

計画:Olaroz塩田と Caucharí 塩田からのリチウム塩水を蒸発させ、リチウムを取得

JV:中国のGanfeng Lithium (贛鋒鋰業) 46.7%、Lithium Argentina 44.8%、Jujuy Energia y Mineria Sociedad del Estado 8.5%

能力:Stage 1 40,000 tpa,  Stage 2 at least 20,000 tpa

投資:979百万米ドル

 サルタ州では下記事業を行っている。

 ・ Pastos Grandes計画(FS段階)

   Pastos Grandes塩湖のリチウム塩水からのリチウム

   Lithium Argentina 85%、 Ganfeng Lithium (贛鋒鋰業)15% 

 ・ Sal de la Puna Project(FS段階)
 
   Pastos Grandes
塩湖のリチウム塩水からのリチウム(上記と同じ)

   JV:Lithium Argentina 65%、 Ganfeng Lithium (贛鋒鋰業)35%

 
 なお、同地ではGanfeng Lithium (贛鋒鋰業)が別の事業も行っている。

  


2024/10/24 徴用工原告の1人が韓国政府の解決策受け入れに転換 

日本による強制徴用被害を象徴する人物である梁錦徳さん(95)が10月23日、尹錫悦政権における強制徴用解決策「第三者弁済案」を受け入れた。

梁錦徳さんは同日、韓国行政安全部の傘下機関「日帝強制動員被害者支援財団」で、2018年の大法院の強制徴用確定判決に伴う賠償金と遅延利息を受け取った。

1944年、日本による強制徴用により三菱重工業名古屋航空機製作所で重労働に当たった梁錦徳さんは、1992年から韓日両国を行き来して強制徴用被害を証言してきた。

梁錦徳さんはこれまで、日本戦犯企業ではなく民間の寄付金形式による財団支援金で被害者への賠償金を支給する尹政権の解決策について「過ちを犯した人がいるのに、謝罪する人は別なのか。そんなお金は受け取れない」と反対してきた。

 

韓国大法院は2018年、日本製鉄や三菱など強制徴用を行った日本企業の損害賠償責任を認める判決を下した。

韓国大法院は2018年10月、日本製鉄強制徴用の被害者が出した損害賠償訴訟で日本製鉄の上告を棄却(原告の請求認容、当社敗訴)した。日本製鉄(旧新日鉄住金)に対し、戦時中に日本の工場に動員された4人の韓国の元労働者に1人あたり 1億ウオン(約1000万円)の賠償を命じたソウル高裁判決が確定した。

韓国大法院は2018年11月29日、三菱重工業の上告を棄却し、同社に対し、第2次世界大戦中に同社の軍需工場で労働を強制された韓国人の元徴用工らに対する賠償支払いを命じる判決を下した。

1件は、元女子勤労挺身隊員の女性4人と親族1人に対し、それぞれ最大で1億5000万ウォン(約1500万円)の賠償を命じた。この女性らは1944年、名古屋市にあった三菱重工の航空機製作工場で、無償労働を強制されたと話している。
もう1件の訴訟では、原告6人(うち生存者2人)にそれぞれ8000万ウォン(約800万円)の賠償支払いが命じられた。

日本は「1965年の韓日請求権協定により個人請求権は消滅した」という従来の見解を固守し、韓日関係が悪化した。

これに対して尹政権は2023年3月、行政安全部傘下の同財団が民間の寄付金を募って大法院賠償判決を受けた被害者に賠償金を支給できるようにする第三者弁済案を解決策として打ち出した。その財源には1965年の韓日請求権協定で支援を受けた大手製鉄会社ポスコが寄付した40億ウォン(現在のレートで約4億4000万円)が基になっている。

2023/3/9 韓国、元徴用工解決策を発表


これまで大法院で賠償判決を受けた被害者15人のうち11人が1人当たり2億−3億ウォンの判決金と遅延利息を受け取りした。そのうち生存者は1人だった。

韓国政府の解決策を拒否した4人のうち、生存者は梁錦徳さんと李春植さん(104)の2人だったが、この日、梁錦徳さんが政府の解決策に同意した。残る李春植さんも近く、財団から判決金を受け取るという。

付記

韓国政府関係者は10月30日、原告の李春植さんが政府傘下の財団から賠償金相当額と遅延利子を受け取ったと明らかにした。

2018年に韓国最高裁で日本企業に対する勝訴が確定した原告のうち、存命する2人がいずれも政府の解決策を受け入れたことになる。

勝訴が確定した原告は15人。11人の原告の遺族が解決策を受け入れたが、2人の原告側は拒否している。 

原告の支援団体は同日、梁さんが認知症を患っており、本人の意思による決定なのか不明だとする立場を表明した。
 

梁錦徳さんの賠償金受け取りは現在裁判中の他の強制徴用被害者たちにも影響を及ぼすものとみられる。

2018年の大法院判決以降、同様の強制徴用賠償訴訟は現在、韓国全国で約80件行われており、原告は約1200人に達する。韓国政府はこのうち200−300人が勝訴する可能性があるとみている。
 


2024/10/25 BRICS首脳会議

BRICSの首脳会議が10月22日 から24日まで、ロシアのカザン(モスクワの東約800kmに位置するタタールスタン共和国の首都)で開かれた。

中国の習近平国家主席ら各国首脳が22日に相次いでカザンに到着し、同日午後にはロシアのプーチン大統領と首脳会談を開いた。

国連のAntonio Guterres 事務総長がBRICS サミット出席のため到着した。同事務総長にとって2年以上ぶりのロシア訪問だが、ウクライナからは非難を浴びている。

クレムリンは、Guterres 国連事務総長は24日にプーチン大統領と会談し、ウクライナ紛争について話し合う予定だと述べた。

ウクライナの非難に対し、事務総長の報道官は、この訪問は「重要な加盟国を多く擁する組織」への定期的な参加の一環であり、ウクライナ紛争に関する「彼の一貫した立場」と「公正な和平への条件」を再確認する機会だと説明した。

インドのモディ首相も和平仲介者としての立場を示し、22日のプーチン大統領との会談で紛争の早期終結を訴えた。

今回のBRICS首脳会議は2024年1月にエジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)が新たに加盟国になってから初の首脳会議となる。

BRICSは2023年8月の首脳会議で、加入を申請している国のうち、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6カ国を正式に招待することが決まった。2024年1月付で正式なメンバーとなる。

2023/8/26  BRICSに6カ国が新しく参加

しかしアルゼンチンは、2023年12月に就任したハビエル・ミレイ大統領が加盟を見送った。

サウジについては、ロイター通信が本年2月にサウジ当局者の話として「加盟を検討中」と報道。サウジ国営メディアは「加盟の招待を受けている」と報じ、不明確な状態が続いていた。

最終的に、サウジアラビアは加盟資格を認められたものの、加盟していないとの見解を示している。

現在の加盟国は、既存の5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南ア)と2024年1月1日 加盟の4カ国(エジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦:UAE)の合計9カ国になった。

首脳会議の全体会合が23日に開かれた。

プーチン大統領は、2024/25年のBRICS諸国の平均経済成長率は3.8%で、世界の成長率は3.2─3.3%になると予想。「BRICSが世界経済で主導的な役割を果たす傾向はさらに強まるだろう」と述べ、その主な要因として人口増加、都市化、資本蓄積、生産性向上を挙げた。

プーチン大統領は「30か国以上が関係強化の意思を示している」と述べた。

その上で「BRICSがダイナミックに発展し、世界情勢における権威と影響力を強めているのを目の当たりにしている」と述べグローバル・サウスと呼ばれる新興国などを中心に、BRICSの影響力が拡大することに期待感を示した。

全体会合では「公正な世界発展と安全のための多国間協力の強化」をテーマに議論が行われ、「カザン宣言」が採択された。

カザン宣言では、

・ロシアやイランを含むBRICSの一部加盟国に科された「一方的な制裁措置」が対象国の最貧困層の人々を苦しめていると非難し、国際法に反する一方的な経済制裁の撤廃を求めた。

・BRICS穀物取引所や越境決済システムなど基本合意された共同プロジェクトが示された。

プーチン大統領は「BRICS諸国は世界有数の穀物、豆類、油糧種子の生産国であることから、BRICS穀物取引所の開設を提案した」と説明。

この取引所は「食料安全保障の確保という特別な役割を考慮すれば、製品や原材料の公正で予測可能な価格指標の形成に貢献する」と述べた。

取引対象はいずれ原油やガス、金属などに拡大する可能性がある。

・BRICSの枠組みにおける金融協力について、加盟国間の決済における自国通貨の使用拡大を引き続き検討する。

・BRICSの国々との関係強化などを目指す「パートナー国」の資格を設けることを支持した。

ロシアの大統領補佐官によると、「パートナー国」として13カ国のリストが合意された。ブラジル紙によると、トルコやインドネシア、マレーシア、タイ、キューバなどが含まれている。

 

BRICS首脳はまた、ドル支配の世界金融システムを回避して相互に貿易できるようにする、共通の越境決済システムの構築を支持した。


ブラジルのルラ大統領はオンラインで首脳会議に参加し、BRICS諸国が代替決済手段を構築する時が来たと述べた。

インドのモディ首相は、BRICS諸国の金融統合に向けた歩みを歓迎すると述べ、中国の習近平国家主席はBBRICS諸国の金融・経済協力の深化を促した。

プーチン大統領は演説の中で、BRICS投資プラットフォームの創設も呼びかけた。このプラットフォームはBRICS諸国間の相互投資を促すもので、グローバルサウスの他の国々への投資にも利用できる。

2024/10/28 米インテルへの制裁金は無効 EU裁判所、2022年判決を支持

欧州連合(EU)の最高裁判所に当たる欧州司法裁判所は10月24日、EU競争法に違反したとして欧州委員会が米半導体大手インテルに科した制裁金10億6千万ユーロ(約1700億円)を無効とする判断を下した。


欧州委は、インテルが独占的な地位を乱用してEU競争法に違反したとして、2009年に制裁金支払いを命じた。

この訴訟では、一般裁判所が2014年に欧州委の決定を支持したが、欧州司法裁が2017年、一般裁判所に審理を差し戻した。

一般裁判所は2022年の判決で「欧州委の分析は不完全だった」と指摘し、制裁金を無効とした。

今回、欧州司法裁判所は欧州委の決定を取り消した2022年の一般裁判所の判断を支持した。

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欧州委は2009年5月13日、インテルが2002〜2007年にかけて自社製のパソコン向けのCPU(中央演算処理装置)の販売を巡って市場の独占的な地位を利用して公正な競争を損ねたと判断し、10億6000万ユーロの制裁金を科すことを決めた。

インテルが1997年から2007年までの間、x86CPU(x86中央演算処理装置)市場において70%以上の市場シェアを有していたと認定した。

その上で、同社が顧客であるDell、HP、Lenovo、NEC等のパソコンメーカーに対して、(1)条件付リベートを供与していたこと、具体的にはパソコンメーカーが必要とする全て又はほぼ全てのx86CPUの供給をインテル社から購入することを条件にインテル社がパソコンメーカーに対してリベートを支払うというもの 、及び(2)x86 CPUを搭載した競合他社の製品の発売時期を遅らせる見返りとして金銭を供与していたことが、EU競争法違反に該当すると判断した。

単独企業に対する独占禁止法違反の制裁金としては、当時、過去最高である。

欧州委員会が課した制裁金額事件別上位10 件(〜09年12月)

順位 事件 制裁金額
(億ユーロ)
企業別順位  億ユーロ
1位 自動車ガラスカルテル事件(2008年)
 ※旭硝子及び日本板硝子現地法人が対象
 他に、
板ガラスカルテル
  13.8 BSaint-Gobain(仏)  9.0
HPilkington(英)     3.7
 (日本板硝子現地法人)
2位 天然ガス輸入カルテル事件(2009年)   11.1 CE.on(独)/GDF-Suez(仏) 各社5.5
3位 インテル(米)支配的地位の濫用(2009年)   10.6 @インテル(米) 10.6
4位 エレベータカルテル事件(2007年)
 ※三菱エレベータ現地法人が対象
   9.9 Eティッセンクルップ(独)4.8
5位 マイクロソフト(米)
 規制当局処分(2004 年3月)の不遵守(2回目)(2009年)
   9.0 Aマイクロソフト(米) 9.0

 

インテルは欧州委の判断を不服としてEU司法裁に訴え、2014年には一般裁判所が欧州委の判断を支持する判決を出した。

インテルは上訴し、最高裁にあたる欧州司法裁が2017年、欧州委の決定が正当だったか再審理するよう一般裁に指示した。

EU司法裁判所の一般裁判所(ルクセンブルク)は2022年1月26日、欧州委員会が2009年にEU競争法違反で米インテルに巨額の制裁金を科した判断を無効とする判決を示した。

判決文は「欧州委の分析は不完全だ」と指摘した。リベートが反競争的かどうかを立証できていないという。

理由1:欧州委員会決定は不正確な法的分析に基づいていた

欧州委員会は、 パソコンメーカーが必要とする全て又はほぼ全てのx86CPUをインテル社から購入することを条件にインテル社がパソコンメーカーに対してリベートを支払うという条件付きリベートが、いわゆる「忠誠リベート」に該当 し、支配的地位にある企業がそのような忠誠リベートを提供した場合、その性質上当然に市場における競争を制限する効果があるものとして、実際に競争を制限する効果があったかを立証する必要はないとの立場を採った。

これに対して、2017年欧州司法裁判所では過去の先例は、支配的地位にある企業が忠誠リベートを提供した場合、競争を制限する効果があったと単に推定するものであり、企業が競争を制限する効果がなかったとの一応の証拠を提出したときには欧州委員会は実際に競争を制限する効果があったことを立証する必要があると判断した。

その結果、欧州委員会の違反決定は、不正確な法的分析に基づくものとした。

理由その2:欧州委員会が実施した経済分析には誤りがあった

欧州委員会は、本来必要とされていないと主張していた経済分析を実施していたが、その前提としたデータに誤りがあったため、当該経済分析を無効とするべきとのインテル社の主張を認めた。

理由その3:欧州委員会は欧州司法裁判所が示した規範を適切に分析し、考慮しなかった。

2017年欧州司法裁判所判決では、企業には競争法違反がなかったとの一応の証拠を提出した場合、欧州委員会が競争法違反を立証するためには、当該企業の市場での支配的地位の程度、リベートが適用される市場の割合、リベートが供与される条件、適用期間及び金額、参入を阻止する戦略の有無といった事項を分析する必要があるとの判断をした。

本判決では、2017年欧州司法裁判所で示された各事項は、欧州委員会が「最低限」検討しておくべきもので、欧州委員会の決定では問題とされたリベートが適用される市場の割合を適切に分析せず、リベートの適用期間に関しても正確な検討がなされていないため、リベート金額や参入を阻止する戦略の有無を検討するまでもなく、欧州委員会の決定には誤りがあったと判断している。

  https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2022/13239.html から

今回の判決は、欧州委の立証に高いハードルを課したもので、今後の競争政策に影響が出る可能性がある。

欧州委は、パソコンメーカーが必要とする全て又はほぼ全てのx86CPUの供給をインテル社から購入することを条件にインテル社がパソコンメーカーに対してリベートを支払うという条件付きリベートが、いわゆる「忠誠リベート」に該当すると判断した上で、支配的地位にある企業がそのような忠誠リベートを提供した場合、その性質上当然に市場における競争を制限する効果があるものとして、実際に競争を制限する効果があったかを立証する必要はないとの立場を採っていた。

これに対して、2017年欧州司法裁判所では、単に「忠誠リベート」に該当するだけでEU競争法違反が認定されるという形式的なアプローチではなく、実際に競争を制限する効果があったかというより実質的な判断が求められるとした。

今後、欧州委員会にとってはEU競争法違反を立証する負担が増えることになる。


2024/10/29  武田薬品と提携の中国企業、胃癌向けの抗がん剤承認申請取り下げ、大腸癌向けは中国、米国、欧州、日本で承認済み

武田薬品工業が中国のバイオ企業のHUTCHMED (和黃醫藥)と共同販売する抗がん剤フルキンチニブ(fruquintinib)(HUTCHMED の商品名ELUNATE® 、武田の商品名フリュザクラ®)について、HUTCHMEDが中国で胃がん治療向けの承認申請を取り下げたことが分かった。臨床試験(治験)で有効性を証明できず、現在の研究データでは承認を取得するのが困難と判断したという。日本経済新聞が報じた。

フルキンチニブ はHUTCHMEDが開発した大腸がんに対する抗がん剤で、2018年に中国で承認された。血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)1/2/3に高い選択性を有する阻害薬で、経口投与され、バイオマーカーの状態にかかわらず、治療抵抗性の転移性大腸がん(mCRC)の様々なサブタイプで使用される可能性がある。


血管新生が阻害される結果、栄養供給を妨げることなどにより腫瘍の増殖を抑制するといった作用機序を有している。

 

武田薬品は2023年1月に、HUTCHMEDとの間で全世界(中国本土、香港およびマカオを除く)及びすべての適応症を対象としたフルキンチニブの開発および商業化に関する独占的ライセンス契約を締結した。契約一時金として4億米ドルを支払い、開発や販売の達成に応じたマイルストン(最大730百万米ドル)及び売上に応じたロイヤルティを支払う。

HUTCHMED は適応を広げるため、胃がん、子宮内膜がん、腎臓がん向けでも開発を進めていた。

胃がん向けでは既存の抗がん剤との併用で治療につなげる計画だったが、生存期間を延ぱす効果を証明できなかったという。

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大腸癌向け承認:
 
(中国)

2018年9月に中国国家食品薬品監督管理局(NMPA)により販売承認され、2018年11月に中国でELUNATE®(爱优特® )の販売名で上市された。

(米国)

2020年に米国食品医薬品局(FDA)より、切除不能な転移がある大腸がん(mCRC)患者の治療薬として、その開発においてファストトラック指定を受けた。

2022年12月にHUTCHMEDは米国FDAに対してフルキンチニブの新薬承認申請(NDA)の段階的申請を開始した。

2023年5月25日に治療歴を有する転移性大腸がん(mCRC)の成人患者の治療薬として、フルキンチニブの新薬承認申請(NDA)が、米国食品医薬品局(FDA)より優先審査指定された。

2023年11月8日に、化学療法、抗VEGF療法、および抗EGFR療法(RAS野生型で医学的に適切な場合)の治療歴がある転移性大腸がん(mCRC)成人患者に対して、米国食品医薬品局(FDA)によって承認された。
バイオマーカーのステータスにかかわらず、治療歴を有するmCRC患者の治療薬として、米国で承認された、最初で唯一の3種類のVEGF受容体キナーゼすべてに対して選択性を有する阻害薬である。

(欧州)

2024年6月21日に、化学療法、抗VEGF療法ならびに抗EGFR療法による治療歴があり、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合剤又はレゴラフェニブのいずれかによる治療中に進行したもしくはこれらに不耐の転移性大腸がん(mCRC)成人患者に対する単剤療法として、欧州委員会(EC)によって承認された。

(日本)

武田薬品は2024年9月24日、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)1/2/3に対して選択性を有する経口のチロシンキナーゼ阻害剤 「フリュザクラ®カプセル1mg/5mg」(一般名:フルキンチニブ) について、「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」を効能又は効果として、厚生労働省より製造販売承認を取得した。

承認は主に、米国、欧州、日本およびオーストラリアで実施された国際共同第3相試験であるFRESCO-2試験の結果に基づいている。

 


2024/10/29  東北電力女川原発2号機、10月29日に再稼働、被災原発では初、中国電力島根原発2号機も燃料装荷を開始

東北電力は10月25日、女川原発2号機の再稼働について、原子炉を10月29日午後に起動すると正式に発表した。

付記

東北電力は、11月3日開始予定の女川原発2号機の発電と送電を延期した。発電機の試験中に原子炉内の中性子を計測する機器を入れる際、途中で動かなくなり作業を中断 した。

付記

東北電力女川原発2号機 11/13午前9時に再起動

5月27日に安全対策工事が完了、9月に原子炉に核燃料560体を装填する作業を実施した。10月29日の原子炉起動を経て11月上旬に発電を再開し、12月の営業運転開始を予定している。

女川2号機は2011年の東日本大震災で被災し、運転を停止していた。震災では約13メートルの津波が押し寄せ、かろうじて津波はかぶらなかったものの、地下から浸水して冷却ポンプが故障するなどした。

再稼働すれば、2011年の東日本大震災の被災地に立地する原発として初めてで、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)としても初の再稼働となる。 末尾の「原子発電所の現状」参照

電力各社が原発を動かすには福島第1原発の事故後にできた新たな規制基準を満たす必要がある。これまでに国内12基が再稼働し、女川2号機が13基目となる。

 

原子力規制委員会は2013年6月19日、福島第1原発事故の教訓を踏まえた新しい規制基準を決定した。7月8日に施行した。

テロ対策などを盛り込んだ「過酷事故対策編」、既存設備の安全対策を強化する「設計基準編」、活断層調査の強化や津波防護策を定めた「地震・津波編」の三つに大別される。

基準には、最新の安全対策を義務付ける「パックフィット制度」が導入され、既設原発も対象になる。

2013/6/21  原子力規制委員会、原発新基準を決定

2013年12月 東北電力が設置変更許可申請書、工事計画及び保安規定の変更申請書を提出した。

女川原発は2011年3月の東日本大震災のときには1、3号機が運転中で、2号機は定期検査中だった。
東北電力は、3基ある原発のうち、安全対策の進みが早い2号機を優先させる方針で、2013年12月に再稼働申請を行った。被災した原発としては初の申請となった。

原発の耐震設計の基準となる基準地震動を580ガルから1000ガルに、津波の想定も13.6mから23.1mに引き上げた。
(東日本大震災で、607ガルの揺れが観測された。)

2014年1月から審査が行われた。

審査は難航した。176回の審査会号と8回の現地調査等を実施、598回のヒアリングが行われた。

原子力規制委員会の更田委員長代理は2017年3月8日の定例会合で、東日本大震災の影響で原子炉建屋に多数のひびが見つかった東北電力女川原発2号機について「前例がなく、審査は技術的に極めて難しい」と指摘した。

東北電力は2018年度後半以降に2号機を再稼働する計画だったが、審査に合格できるかが不透明になった。

2017/3/17  東北電力女川原発の審査、難航

建屋のひびは震災の揺れとコンクリートの乾燥収縮が原因とみられ、建屋の機能に影響はないが、補修するなどの計画を東北電力が示し、規制委が妥当と判断するまで約2年かかった。
 

原子力規制委員会は2019年11月27日、安全対策の基本方針が新規制基準を満たすと認める審査書案を了承した。審査は2013年12月の申請以来、約6年を要し、これまでに適合した原発では最長。事故対策費は当初想定を超える3400億円程度に膨らんだ。

地震の想定を約2倍に引き上げ、全国の原発で最も高い標高29メートル、総延長800メートルの防潮堤をつくるなどの対策を妥当と判断した。

事実上、新規制基準に適合したこととなり、東日本大震災の被災原発としては日本原子力発電の東海第二原発(茨城県)に続き2基目。

規制委員会は2020年2月26日に審査書を了承し、設置変更を許可した。

地元宮城県内の市町村長会議は2020年11月9日、立地自治体である女川町、石巻市、宮城県の3者会談に判断を委ねることを決めた。

宮城県の村井嘉浩知事は11月11日、原発がある女川町と石巻市の市町長と会談し、再稼働に同意することで一致、知事は再稼働に同意すると表明した。「稼働することにより、地元企業の受注に伴う雇用の創出や経済波及効果が見込まれる」と説明した。

2月に規制委の安全審査に合格し、6月には国の原子力防災会議が地元自治体による避難計画を了承した。8月には再稼働に向けた全7回の住民説明会を終えている。

 

東北電力女川原発2号機の再稼働を巡り、石巻市の住民が2021年5月28日、東北電の再稼働の差し止めを求める訴えを仙台地裁に起こした。重大事故を想定した広域避難計画の実効性を問う。

原告は原発から16〜25キロの緊急防護措置区域に住む男女17人。住民らは「女川地域原子力防災協議会は避難計画の実効性を調査、確認していない」と主張し、「交通渋滞で30キロ圏内を脱出できない」「病院や高齢者・障害者施設の入院患者や入所者は避難困難」と計画の問題点を列挙。計画の実行可能性や実施体制を疑問視し「住民らの生命や身体を侵害する具体的危険性がある」「無用な被曝を強いられ、人格権が侵害される具体的な危険性がある」と訴えた。

一方、東北電力側は、合理性があると了承を得られた避難計画であり、改善点があるとしても、ただちに実効性がないとはいえないと反論。避難が必要になるような重大事故が起こる具体的な危険性について原告側は主張・立証していないとし、避難計画を巡る判断にかかわらず、請求を棄却すべきだとした。

仙台地裁は2023年5月24日、原告側の請求を棄却する判決を言い渡した。

裁判長は「放射性物質が異常に放出される事故が起きる具体的危険を認めるに足りる証拠がない」として請求を退けた。「避難の前提となる放射性物質が異常に放出される事故の発生を立証すべき」とした。
避難計画の内容については判断しなかった。

住民側は仙台地裁の判決を不服として控訴した。

2024年4月の弁論で裁判長は、広域避難計画で原発5〜30キロ圏の緊急防護措置区域の住民らに求める「段階的避難」の是非に関し「具体的な議論がかみ合っていない」と指摘。原告側が提出した意見書の一部に対する反論を東北電側に求め「さらに議論を深めたい」と述べた。

7月の弁論で、住民側は「事故発生時は渋滞が想定され検査場所が開設できず、住民は被ばくを強いられる」「避難に使うバスは、必要な台数を把握していない」など避難計画に実効性は無いと指摘した。東北電力側は、事故が発生する具体的危険について原告が立証していないなどとして、請求棄却を求めた。

これで結審し、判決期日は11月27日に指定された。

原告団長は「再稼働前に判決を得られなかったのは極めて残念だが、裁判官の良識に期待して11月27日を勝利判決をもって迎えらるように頑張りたい」と述べた。

付記

東北電力女川原発2号機の重大事故を想定した避難計画に実効性がないとして、原発から半径30キロ圏内の住民16人が運転の差し止めを求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁(倉沢守春裁判長)は11月27日、住民側の請求を棄却した。

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中国電力は10月28日、島根原発2号機の安全対策工事が完了したと発表した。

新規制基準への対応として設置や改造を行った設備に対して、使用前事業者検査を進めるとともに、原子力規制委員会による使用前確認に対応してきた。
10月28日に燃料装荷までに行う使用前事業者検査および使用前確認が終了したことをもって、安全対策工事を「完了」とした。

10月28日13時に燃料装荷を開始した。燃料装荷の終了までは、1週間程度を見込んでいる。

2号機に核燃料が入るのは、2012年2月以来、約12年8カ月ぶり。12月上旬にも、原子炉を起動し、再稼働させる方針で、営業運転は来年1月上旬を見込む。

付記 

中国電力は11月3日、島根原発2号機の原子炉に核燃料を入れる作業を完了した。12月上旬に原子炉起動。

なお、東京電力柏崎刈羽 6、7号機は2022年7月に特定重大事故等対策が完了したが、地元の理解が得られていない。

原電東海原発は、2024年9月に特定重大事故等対策が完了する予定であったが、防潮堤工事のうち鋼製防護壁において確認された不具合への対応やその他工事の進捗状況等を踏まえ、特定重大事故等対処施設を含めた安全性向上対策工事の終了時期を2026年12月に変更した。

東海原発も地元の理解が得られていない。

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再稼働原発の現状 12基   2024/10

関電 美浜 3号 停止中 10/15 機器冷却用の配管から海水漏れで運転停止
関電 大飯 3号 運転中  
4号  
関電 高浜 1号 運転中  
2号  
3号  
4号  
九電 玄海 3号 運転中  
4号  
九電 川内 1号 運転中  
2号 停止中 9/14〜12/25の予定で第27回定期検査
四電 伊方 3号 運転中  

 


2024/10/30  米内務省、リチウムプロジェクトを認可

米国内務省は10月24日オーストラリアのリチウム大手 Ioneer 南ネバダ州の大規模なリチウム・ホウ素鉱山Rhyolite Ridge Projectの最終承認を与えた。

ネバダ州 Esmeralda County Rhyolite Ridge Lithium-Boron Project の承認は、4年間の連邦許可および環境審査プロセスを経て行われた。

建設されると、7,000エーカーの巨大なプロジェクトは23年間稼働し、毎年約37万台の電気自動車に供給するのに十分な量のリチウムを採掘することになる。 ​​

現在、米国でリチウムを生産している鉱山は、エスメラルダ郡にあるAlbemarleのシルバーピーク鉱山Silverpeak lithyum だけだが、両者は非常に近い場所にある。

Silverpeak lithyum:

Albemarle Corporation は、ノースカロライナ州に本拠を置くアメリカの特殊化学品製造会社で、リチウム、臭素、触媒の 3 つの部門で運営されている。
北米唯一のリチウム鉱山
Silverpeak lithyum を運営し、チリ (Atacama塩湖) と西オーストラリアにも拠点を持っている。

チリと米国ネバダ州でリチウムを採掘・生産し、ドイツのLangelsheim でリチウムコンパウンド、リチウムメタルの生産をしている。
Albemarleは
オーストラリアにある世界最大級のグリーンブッシュ鉱山で天斉リチウムと提携している。

このプロジェクトは、絶滅危惧野生植物の Tiehm’s buckwheat(タイムソバ)の唯一の既知の個体群のために確保された重要な生息地への鉱山の侵入に反対する保護団体からの激しい反対も引き起こした。

連邦政府の決定が掲載された直後に生物多様性センターは米国連邦政府に絶滅危惧種法に基づく訴訟の意向を通知した。

内務省の魚類野生生物局は、Ioneerの保護対策と組み合わせれば、最終的な鉱山計画がタイムソバの生存を危険にさらしたり、その重要な生息地に悪影響を与えたりする可能性は低いと判断した。連邦政府の土地管理者によると、Ioneer 社は、計画の一環として、プロジェクト施設の再設計と移転、Tiehm ソバの繁殖作業への資金提供、正式な Tiehm ソバ保護計画の策定など、野生の花の保護策を策定したという。

リチウム抽出には大量の水が必要である。Ioneer 社は、過剰に割り当てられた流域であるエスメラルダ郡のFish Lake Valleyから水源を得る予定である。ネバダ州の地下水は、同地域の帯水層の複雑さから十分に理解されていないが、過去50年間に農業によりFish Lake Valley の地下水が一部地域で最大200フィート減少した。 連邦政府の土地管理者は、プロジェクトの最終環境レビューによると、採掘により谷の地下水が採石場周辺で最大300フィート減少し、周囲の地盤が最大10インチ沈下する可能性があると推定している。

プロジェクトの承認は、電気自動車のバッテリーに不可欠な鉱物であるリチウムの国内生産を増やすバイデン政権の取り組みの一環である。ライオライトリッジは「国内のリチウム生産に不可欠な非常に特別な鉱床」であると付け加えた。

リチウムとホウ素の両方を大規模に生産している鉱山は世界中どこにもない。Ryolite Ridgeは北米で唯一知られているリチウムホウ素鉱床であり、世界で知られている2つの鉱床のうちの1つで ある。もう一つはセルビアのJadar Basinである。

Ioneerは2021年6月にRhyolite Ridgeリチウムプロジェクトで生産する炭酸リチウムに関し、韓国の前駆体大手EcoPro Innovationと最大3年間のオフテイク契約を締結した。Ioneerは、EcoPro Innovationに対し2千t/年、オプションとして追加で5千t/年の計7千t/年の炭酸リチウムを供給する。同プロジェクトの資源量は146.5百万t(Li 品位:1,600ppm、炭酸リチウム換算品位:0.9%)、マインライフは26年とされる。

トヨタ自動車とパナソニックが共同出資する電池会社、プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)は2022年8月、豪企業 Ioneerが米ネバダ州で開発するリチウム鉱床から車載用電池のリチウムを調達する契約を結んだ。

Ioneer は5年にわたり年間4000トンの炭酸リチウムをPPESに供給する。PPESはイオニアから調達したリチウムを米国内で製造する電気自動車(EV)用電池部品に使うと確約している。ノースカロライナ州で電池工場を新設する可能性を検討していると報じられていた。

 

Rhyolite Ridge Projectの建設は来年にも開始される可能性があり、生産は2028年に開始される予定。  Ioneerは、鉱山の存続期間中、この鉱山が年間1億2500万ドルの賃金を生み出すと予想している。

 


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