2004/11/30 富士経済GROUP

中国・アジアプラスチック市場調査を実施
―LCP(液晶ポリマー)は中国市場で2008年には2003年の5倍規模へ−
http://www.group.fuji-keizai.co.jp/press/pdf/041130_04074.pdf

 総合マーケティングビジネスの兜x士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町社長原務03-3664-5811)は、世界の経済発展を支え、各方面からの注目を一身に集めつつある中国・アジア市場のプラスチック市場の調査を行った。その結果を報告書「2005年中国・アジアプラスチック市場の現状と将来展望」にまとめた。

<調査結果の概要>
汎用樹脂とエンジニアリングプラスチックの市場規模予測
  2003年    汎用樹脂 5,354万トン   エンジニアリングプラスチック 234万トン
  2008年予測 汎用樹脂 6,976万トン   エンジニアリングプラスチック 367万トン

 近年、不安定な中東情勢や中国の経済成長に伴うエネルギー需要の急増等により、世界規模で原油価格が高騰している。そのため樹脂の需給バランスは慢性的な供給不足に傾き、国内樹脂メーカーも度重なる値上げに踏み切っている。しかしながら今もって需給のひっ迫状態が解消される見通しはなく、数ヶ月先の動向さえ予断を許さない状況が続いている。
 注目市場としては、中国市場がアジアだけでなく世界経済の中心的な役割を果たすまで成長している。殊に中国国内では2008年の北京オリンピックや2010年の上海万国博覧会を控えた大規模工事が計画され、今もなお数多くの世界的な有力メーカーが事業の拡大に努めていることから、今後ともその動向と影響力を注視する必要がある。

<注目品目>
1. 汎用樹脂
●PVC(塩化ビニル)
 2003年    アジア市場 1,169万トン
           中国市場    650万トン
 2008年予測 アジア市場 1,577万トン(対03年比135%)
           中国市場    950万トン(対03年比143%)

 これまで日本国内のPVC市場は一貫して縮小傾向を辿っていたが、環境問題への認識改善をはじめ、事業再編や収益改善策、合理的な価格体系への転換など業界の努力が実り、今後需要は横ばいで進むとの見方が強まっている。
 アジア地域の中ではとりわけ中国にて大幅な需要の拡大が期待されている。主なポイントとして、大型公共工事の発生、中国政府によるコストパフォーマンスの良い塩ビ窓枠・サッシの普及促進策、販売用住宅・店舗の需要増、外資加工メーカーの進出加速などがあげられる。これらの需要も含めると、アジア地域の市場は年率6%前後の増加基調で推移するものと予測される。

●PMMA(メタクリル樹脂)
 2003年    アジア市場 30万トン
           中国市場  13万トン
 2008年予測 アジア市場 49万トン(対03年比163%)
           中国市場  23万トン(対03年比180%)

 PMMA市場は中国市場で継続的に拡大する見込みである。光学部材用としてLCDのバックライトに使用されているため、液晶の生産拠点が集中している韓国と台湾、そして今後の中国で市場の拡大が見込まれる。また自動車用途でも使用されており、アジアの生産拠点となっている中国とタイで需要の増加が有望視される。全体的に中国需要をターゲットとした設備増強が続くものの、それ以上に供給タイトとなる可能性もあり、今後の価格動向の変化によってはPCなど他の透明樹脂へ代替する可能性も指摘されている。

2.エンジニアリングプラスチック
●PC(ポリカーボネート)
 2003年    アジア市場 104万トン
           中国市場   40万トン
 2008年予測 アジア市場 176万トン(対03年比169%)
           中国市場   91万トン(対03年比228%)

 PCの特徴は様々な物性に対応可能な点にあり、電気・電子、自動車、精密機器、医療、雑貨などの幅広い分野で使用されている。アジア市場では、台湾を中心として光メディアの割合が高く、特にDVDの伸びが光メディア向けの需要を牽引している。電気・電子・OA向けの需要は中国市場で顕著な伸びが見られ、今後エコ対応グレードなど付加価値製品の需要も拡大する見込みである。
 日本市場における光メディア向けの用途需要は横ばいだが、液晶用に使用されるシート・フィルム・包装向けの需要に増加傾向が見られる。

●POM(ポリアセタール)
 2003年    アジア市場 33万トン
           中国市場  15万トン
 2008年予測 アジア市場 51万トン(対03年比155%)
           中国市場  31万トン(対03年比207%)

 日本市場では、2003年以降自動車部品のモジュール化が進んでいる。POMは耐油性にも優れることから、モジュール化の進展に伴い、燃料系部品における市場の伸びが期待される。自動車向け部品の用途はタイでも需要が増加しつつある。日本を除くアジア地域では、電気・電子機器向けの用途が拡大しており、中国では、安定・低コスト生産を狙った大型設備投資が今後とも活発化しゆく見込みである。なおPOMは、玩具類(ミニカー、人形など)、スポーツ用品、ジッパーなどその他に分類される用途の割合が高い。

●PBT(ポリブチレンテレフタレート)
 2003年    アジア市場 30万トン
           中国市場   9万トン
 2008年予測 アジア市場 44万トン(対03年比147%)
           中国市場  18万トン(対03年比200%)

 汎用電気製品からハイテク製品まで中国への生産シフトが進み、自動車向けやフィルム向けに需要の拡大しているPBT市場でも、ますます中国・アジアに需要の集中する傾向が見られる。PBTの用途はPA(ポリアミド)のように広範囲ではなく、自動車、電気・電子部品向けの用途構成比率が高い。更なる市場の拡大を進めるためにも新規の用途開発が強く求められており、今後はPBT単独の分野からABS樹脂やPET、PCなどとのアロイ化を進めることで、従来の単独の樹脂では対応しきれなかったマーケットの新規開拓が期待されている。

●LCP(液晶ポリマー)
 2003年    アジア市場 2万トン
           中国市場  0.6万トン
 2008年予測 アジア市場 5万トン(対03年比250%)
           中国市場  3万トン(対03年比500%)

 携帯電話やノートPCなど、狭ピッチコネクタ需要の高まりによって市場が拡大している。携帯電話の小型化がますます進み、LCPを必要とする状況は当面継続すると見られる。また、液晶パネルの大型化につれてバックライトの光も強くなるため、耐熱性の高いバックライトボビンが必要となっていることも市場拡大の要因である。大型液晶の需要は今後さらに高まると予想され、耐熱性に優れるLCPの需要も引き続き増加すると見られる。


調査対象
分類品目名
 汎用樹脂
  ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル(PVC)
  ポリスチレン(PS)ABS樹脂(ABS)メタクリル樹脂(PMMA)
 エンジニアリングプラスチック
  ポリカーボネート(PC)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、
  ポリアセタール(POM)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、
  ポリブチレンテレフタレート(PBT)、GF強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET)
 スーパーエンジニアリングプラスチック
  ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)

調査期間 2004年9月〜10月
調査方法 弊社専門調査員による対象企業および関連企業・団体などへの面接取材による
        情報収集、各種公的データ、既存刊行資料を参考にして分析した。