日本経済新聞 2009/5/2

三井住友 日興の法人部門とコーデなど2社 5400億円で買収発表

 三井住友フィナンシャルグループ(FG)は1日、米シティグループ傘下の日興コーディアル証券と日興シティグループ証券の大半の事業を10月に買収することでシティと最終合意したと発表した。買収額は5450億円。三井住友は買収する法人業務について、出資先の大和証券SMBCに統合することも視野に、大和証券グループ本社との連携を強化する。シティ本体と投資銀行部門などで業務提携することも併せて表明した。

 買収はまず日興コーデが新設する「新・日興証券」が、買収対象となる事業を継承。三井住友はこの新会社の全株式を10月1日付で取得する。
 1日、記者会見した三井住友FGの北山禎介社長は「法人・個人の幅広い顧客層を対象に商品やサービスを充実させる」と買収の意義を強調。日興が抱える顧客基盤や営業網を活用した証券ビジネス強化に意欲を示した。
 三井住友は日興グループと競合関係にある大和証券グループとも法人取引専門証券の大和証券SMBCを設立するなど親密な関係にある。三井住友銀行の奥正之頭取は「3社にとってメリットになるような建設的な協議を進めていく」と強調。そのうえで「大和証券SMBCに新日興証券の法人部門を統合していくのが有力な選択肢になる」と述べ、将来的に法人分野を集約したいとの意向を示した。

「負けられない」三井住友 高額提示で勝負、異例の早期決着

 米シティグループが日興コーディアル証券の売却を突然宣言したのが、1月16日。それから3カ月以上にわたった日興の買収合戦。3メガバンクの戦いを制したのは、三井住友フィナンシャルグループだった。
 2月下旬の一次入札を経て、日興コーデの二次入札の締め切り口りは4月20日に設定された。みずほフィナンシャルグループの陣営では、二次入札の前からあきらめムードが広がっていた。
 みずほが最大額として想定したのは約4千億円。一方で三菱UFJと三井住友が5千億円超を用意しているとのうわさも伝わっていた。みずほのある幹部は「日興と最も相乗効果が見込めるのはうちのはずだが、取れる見込みはほぼなくなった」と話した。
 実際、三菱UFJは一次入札で約5千億円を提示していた。ただ、グループ内では賛否が二分。「日興は旧三菱銀行と親密だった。うちが獲得すべきだ」と主張したのは三菱UFJ証券幹部。ほかのグループ幹部には「米モルガン・スタンレーとの提携に集中すべきだ」との慎重論が強かった。
 意見がまとまらない中で問題が起きた。三菱UFJ証券で約5万件の顧客情報が流出。顧客の批判が強まる中で新たな買収に打って出にくくなり、熱意は急速に冷めていった。二次入札で三菱UFJが提示した価格は約3千億円だった。
 一方の三井住友。「何でもかんでも三菱UFJでは面白くないだろ」。4月初旬、三井住友首脳がこう漏らした。
 三井住友と三菱UFJ両社のライバル意識は根深い。同じ旧財閥系の歴史、関西での旧住友銀行と旧三和銀行の対立……。三菱UFJは3月、三菱UFJ証券とモルガン・スタンレー証券の統合を発表。三井住友にとって日興の争奪戦は「負けられない戦」になった。
 三井住友が提示した価格は5千億円を超えた。他の二行を大幅に上回る値段だ。約1週間後の4月28日午前。三井住友と米シティは日興買収について大筋で合意した。二次入札の後は、通常のM&A(合併・買収)では考えられない「スピード決着」だった。

毎日新聞 2009/5/2