ライブドア vs フジテレビ 

経緯

ニッポン放送が新株予約権

鹿内氏、ニッポン放送株の返還を要求

新株予約権発行差し止め、ライブドア仮処分申請で地裁決定 

地裁異議申し立て審決定                         

東京高裁決定

フジ、新たな防衛策 ソフトバンク系が筆頭株主

2005/4/18 フジとライブドア和解発表

ニッポン放送争奪 弁護士たちの70日戦争


2005/2/13 TV朝日 

サンデープロジェクト ライブドア堀江社長

フジTV案 

 1)ニッポン放送株を25%取得し、ニッポン放送のフジ持株の議決権を消す。
 2)流動株を減らし、上場廃止

堀江社長

 全て織り込み済み
 そうでないと経営者失格。

 1)ニッポン放送を増資すれば25%以下になり、議決権は復活
 2)上場廃止しても資産価値はあるため困らない。
     売り逃げ目的でない。
 3)今もフジの外人持株は多く、ニッポン放送の議決権が消えると外人持株が20%を超え、
   免許取り消し。
 4)ニッポン放送のフジ持株を買い増し、25%以上にする案。
    フジの議決権も消える。

 5)フジのTOB担当の証券会社がTOB発表前にTOB価格以下で鹿内家からニッポン放送株を購入
   (鹿内一族は、フジのTOB発表前の今年初め、保有株を大和証券SMBCに売却)
   インサイダー取引?

 


日本経済新聞 2005/2/18

ニッポン放送株 復権狙う鹿内家と確執 割安の「親」会社生む


 ライブドアとフジテレビジョンによる買収戦の渦中にあるニッポン放送。同社が狙われる理由は何なのか探った。

Q ニッポン放送株は投資対象として魅力的なの。
A 同放送に目をつけたのはライブドアだけではない。村上世彰氏率いる「村上ファンド」や米国の運用会社などがフジの筆頭株主であることや割安であることに早くから注目、投資してきた。
 株主の持ち分に当たる株主資本が総資産に占める割合を示す株主資本比率が昨年9月末で75%。約1700億円と株主資本の大半を占める資本・利益剰余金を使えば大幅な増配も可能だ。
 財務のよさは、フジサンケイグループの資本上の中核企業なればこそ。ニッポン放送の時価総額は約2千億円にすぎないのに、保有するフジテレビ株の時価は約1300億円に及ぶ。
 収益面でも出資先のグループ会社が支える構造だ。売上高の半分以上は、56%を出資する映像・音楽子会社のポニーキャニオンによるもの。本来のラジオ事業は売上高の4分の1、営業利益は5億円止まりだ。

Q そうした会社がなぜ中核企業として上場しているのかな。
A メディアの歴史を振り返れば、ラジオが「親」であるのは不思議ではない。ただニッポン放送などが1957年に設立したフジテレビ(当時は富士テレビジョン)がテレビの普及に伴って急成長したのに、市場の変化に合わせたグループ再編が遅れた。背景にあるのは、実質的な創業者である鹿内一族との確執だ。

Q 確執とはどういうことなの。
A フジサンケイグループを一大メディア集団に育てたのが鹿内信隆氏と春雄氏の親子。両氏の死去後、信隆氏の二女の夫である鹿内宏明氏がグループ議長に就いたが、92年にトップの座を追われた。だがその後もニッポン放送の大株主として復権をうかがってきた。
 ニッポン放送をまず96年に上場したのは、上場に伴う増資で鹿内一族の持ち株比率を下げ、影響力を薄める狙いから。そのうえで翌年にはフジも上場させ、増資で一族の影響力を一段とそいできた。昨年に宏明氏が一族で保有するニッポン放送のほぼ全株を大和証券SMBCに売却、親子関係を普通の姿にする環境がようやく整ったが、ライブドアの登場で目算が狂った。


毎日新聞 2005/2/19

ニッポン放送株 取得資金800億円調達
 リーマンへのCB波紋 「既存株主にしわ寄せ」の批判

 ライブドアがニッポン放送株の取得資金800億円を調達するため、米国系のリーマン・ブラザーズ証券に割り当てた転換社債型新株予約権付き社債(CB)が、市場に波紋を広げている。リーマンはリスクなしに10%の値ざやを稼げる有利な条件になっており、ライブドアも償還(返済)する必要がない「錬金術」のような手法に見える。
 しかし、このCBはライブドアの株価暴落のリスクと隣り合わせで、「既存株主にしわ寄せが行く仕組み」(市場筋)との批判が出ている。
 CBはあらかじめ決めた価格(転換価格)で普通株式に転換できる社債。発行企業の株価が転換価格を上回れば、株式に転換、売却し利益が出る。株価が上がらない場合、社債のまま持ち続ければ利息を得られ、満期には元本が返済される。
 発行企業にとっては、公募増資などで資金調達すると、大量の新株が一気に市場に放出され、株価が暴落するリスクが高まる。CBなら徐々に株式に転換されるため、需給悪化を回避しやすい。
 リーマンが今回引き受けたCBは「転換価格修正条項付きCB」(MSCB)というタイプ。通常は固定されている転換価格が、市場の株価に連動して上下する。
 転換価格は当初450円だが、毎週見直され、ライブドアの株価が下がっても下限の157円までは引き下げ可能。しかも、転換価格は前週末3日間の加重平均価格より10%低く設定される条件のため、リーマンはCBを株式に転換して即座に売れば、1割の値ざやを稼げる。
 このCBは無利息で、リーマンに長期保有のメリットはないため、すべて株式に転換される可能性が高い。そうなれば、ライブドアは800億円を返済しなくても済むことになる。
 さらに重要なのは、契約の中に、ライブドアの堀江貴文社長が保有する自社株の一部をリーマンに貸与する条件が盛り込まれている点だ。CBを株式転換しても株券の受け渡しまで日数がかかり、即座に売却できないため、その間に株価が下落して値ざやを得られなくなる恐れがある。株券をあらかじめ借りておけば、下落前に売却し、値ざやを確保しやすい。実際、リーマンは既に借り株の売却を始めている。
 これらは「リーマンに非常に有利な条件」(大手証券)で、市場では「年間売上高300億円のライブドアが800億円もの買収資金を確保するため、リーマンの無理な要求をのんだ」との見方が強い。過去にMSCBを発行したのは、資金調達手段が限られる経営再建中の企業などに多い。
 この契約ではCB発行額は800億円に固定されているため、転換価格が下がるほど転換後の株数が増える。ライブドアの発行株式総数は6億4300万株だが、下限転換価格の157円ですべて転換されれば5億960万株も増える。企業価値が上がらない限り、発行株式数が増える分だけ1株当たりの価値(株価)は低下する。ニッポン放送買収が失敗すれば株価は長期低迷する可能性もある。そうなれば、既存の株主が損害を受けることになる。


日本経済新聞 2005/2/24

ニッポン放送が新株予約権 フジテレビの子会社に
 60%分を割り当て 買収対抗狙う

 ニッポン放送は23日、フジテレビジョンを引受先として新株予約権を発行することを決めたと発表した。予約権の行使でフジは最大60%の議決権を上積みできることになり、同放送の子会社化を確実にする。買収戦を展開するライブドアは既存株主の不利益になる発行だとして法的手段に訴える方針で、同放送の経営権を巡る争いは、舞台が法廷に移る可能性が出てきた。

▼新株予約権
 あらかじめ決められた価格で株式を取得できる権利のこと。2002年の商法改正で従来の制限が緩和され、権利だけを単独で発行できるようになった。予約権を持つ者が権利を行使すると、権利行使価格と同額が株式発行企業に払い込まれるため、資金調達手段などに利用される。半面、発行済み株式数が増加して1株あたりの利益が薄まるため、株価の下落などで既存株主の利益を損なう面もある。    

 フジは新株予約権を購入することを機関決定していないが、日枝久会長は「個人的に賛同する」と語り、フジとしても予約権の購入に前向きな姿勢をみせた。購入代金は158億円にのぼる。
 この新株予約権を持つと、1株当たり5950円を払い込めば、フジはニッポン放送の新株を総額約2800億円で最大4720万株買える。新株予約権の発行日は株式公開買い付け(TOB)期限後の3月24日で、権利行使の期間は3月25日から6月24日まで。同放送の発行済み株式数3280万株を大幅に上回る新株を手に入れ、TOBの結果にかかわらず議決権の66%以上を得られる。
 一方ライブドアの議決権比率は、フジがすべて権利行使すると現在の40.5%から15.9%に低下する。
 フジは、ニッポン放送の株式を対象に3月2日を期限として、1株5950円でTOBを進めている。その途中で、ライブドアが約40%の同放送株を取得、過半の株式を取得するまで買い進む姿勢をみせていた。フジは新株予約権を行使することで株式の過半を保有し、子会社にできる。
 株数の増加によりニッポン放送株の1株あたり価値は低下しかねないが、フジは「5950円でニッポン放送株を買い取る」としており、TOBへの応募を促す狙いもあるとみられる。ニッポン放送の亀渕昭信社長は「フジサンケイグループに残ることが株主価値を高めるためのベストの方法だ」と語った。
 ニッポン放送は同日、保有するフジの株の一部22万株を今月25日から約2年間、大和証券SMBCに貸し出すことも発表した。議決権も大和SMBCに移る。フジがニッポン放送を子会社にすると、同放送が保有するフジ株の議決権が無効となり、フジに対する外資の議決権べ−スの出資比率が20%を超えて外資規制に抵触する恐れがある。これを避けるため議決権を移動する狙いもあるようだ。


ライブドア発行差し止め申請へ
 ライブドアの堀江責文社長は23日深夜、東京・六本木の同社本社で記者団の質問に答え、フジテレビジョンに対するニッポン放送の新株予約権発行の差し止めを求める仮処分を、24日にも東京地裁に申請する考えを明らかにした。同時に「ニッポン放送株の過半数の取得を目指す」との方針に変わりがないことを強調した。
 堀江社長は「ニッポン放送の経営陣が決議したこととは思えない。フジテレビの強い意志が働いてやらされたのではないか」と発言。「フジ以外の株主に非常に大きなリスクを背負わせる決定だと思う」との見方を示した。
 その上で、新株予約権の発行を決議したニッポン放送に対して、取締役会の議事録の閲覧請求をする意向も明らかにした。さらに両社の取締役を兼務する村上光一フジ社長など「取締役個人に対する賠償責任なども考えている」と語った。


NHK 2005/3/6

ニッポン放送株の返還を要求

 この問題は、大和証券SMBCが、去年5月にフジサンケイグループの元議長で創業者一族の鹿内宏明氏夫妻から、保有していたニッポン放送の株式の8%とそこから出る利益を受け取る権利を信託受益権という形で買い取ったものです。
 その後、大和証券SMBCは、この信託受益権を株式に転換し、今回のフジテレビによる公開買い付けに応じる方針を決めました。しかし関係者によりますと、鹿内氏らは、この信託受益権の買い取りにあたって、大和証券SMBCは、フジテレビが公開買い付けを行うことを知りながら告げなかったほか、投資家への情報開示も不適切だったなど法律に違反している疑いもあるとしています。
 このため鹿内氏らは、違法行為があった場合には、契約の解除ができるという規定に基づき、大和証券SMBCに売却した株式の返還を求めているほか、フジテレビに対しても、大和証券SMBCから株式の買い取りを行わないよう求めています。また大和証券SMBCが公開買い付けに応じた場合には、フジテレビに対しても株式の返還を請求するなど法的措置も辞さないとしています。
 フジテレビは、7日までに目標としていたニッポン放送株の25%を超える取得がほぼ確実になっていますが、この中には、大和証券SMBCの8%分も含まれているため、今回の問題の展開によっては、フジテレビの株の取得にも影響が出そうです。
 ニッポン放送株を巡るこうした一連の問題について、大和証券SMBCは、いっさい違法性は無いとしています。


Financial Times March 4 2005

Horimon plays his cards well

Who said the dotcom boom was over? It is not in Japan, where Takafumi Horie is the latest business poster boy. The 32-year-old chairman of Livedoor, an internet upstart that is trying to swallow the giant Nippon Broadcasting Systems by any means necessary, is said to be blowing the winds of modernity through Japan's consensus-driven capital markets.

The establishment hates him and his cunning hostile bid. Many on the outside have a sneaking regard for the man thumbing his nose at old Japan.

Horie's nickname, Horimon - after the cartoon monster, Pokemon - has become synonymous with brash and outrageous behaviour. An icon of youth, teenage girls are lining up to buy shares in his company. (Well, that's what he says at least.)

Horie's crusade has nothing if not vaulting ambition. Asked yesterday if he was trying to emulate Rupert Murdoch, chairman of News Corporation, he said he was not. Murdoch was just a media mogul, he said. Horimon had his heart set on bigger things: running a media, IT and financial conglomerate all rolled into one.

It looks as if Nippon Broadcasting is not the only company that should be watching its back.


日本経済新聞 2005/3/25

フジ、新たな防衛策 ソフトバンク系が筆頭株主
 ニッポン放送保有株貸す ライブドア影響力排除

 フジテレビジョンは24日、ソフトバンク系のベンチャーキャピタル、ソフトバンク・インベストメント(SBI)がフジの議決権の14.67%を握る筆頭株主になったと発表した。ニツポン放送が保有するフジ株をSBIに貸すことで、同放送は実質的にフジの株主ではなくなる。ニッポン放送の経営権を握ったライブドアの影響力が、フジに及ぶのを防ぐ狙いとみられる。ソフトバンクグループの登場で、フジとライブドアの攻防は一段と激しさを増す。
 同時にフジ、ニッポン放送とSBIの3社は、メディア関連の新興企業に投資するベンチャーキャピタルファンド「SBIビービー・メディアファンド」を共同設立することも発表した。ニッポン放送は昨年末時点で、フジ株を57万3704株(総議決権の23.8%)保有する筆頭株主だった。2月に大和証券SMBCに22万株(同9.13%)を貸し出した。SBIには残り35万3704株を期間5年で貸す。議決権もSBIに移り、一時的にフジヘの議決権をすべて失う。

 ニッポン放送株をライブドアは議決権べ−スで過半を取得。フジも4割近く保有し、商法の規定で同放送のフジヘの議決権は消滅している。ただ、ライブドアが同放送の経営権を握った後、増資してフジの持ち分を薄めると議決権が復活する。ライブドアはニッポン放送経由でフジヘの影響力を発揮できるようになる。SBIへの貸株は、こうした事態を未然に防ぐ狙いがある。
 この日会見した北尾吉孝SBI最高経営責任者(CEO)は、フジ株を保有することについて「関係強化が狙いで(買収への防衛を)意図したものではない」と話した。フジ幹部も同日「結果的に防衛策にはなることは否定しないが、コンテンツ(情報の内容)事業への投資は以前から考えていた」と述べた。
 ライブドアは2月上旬にニッポン放送株を大量に取得。傘下入りを拒んだ同放送は、フジを引受先として新株予約権の発行を決議した。ライブドアはこれを差し止める仮処分を申請。今月23日には東京高裁が発行を認めないとの判断を下し、ライブドアが支配権を握るのがほぼ確実になっていた。
 今回の策に対し、ライブドアが法的手段に訴えることも考えられる。訴えが認められるかどうかは、専門家の間でも見方は分かれている。
 一方、共同出資で設立するファンドは、映像・音楽などのコンテンツ、メディアやブロードバンドに関連した事業を手掛ける新興企業に投資する。フジが160億円、ニッポン放が20億円、SBI側が20億円をそれぞれ出資する。ファンド運営はSBI側が担当、フジ側がメディア事業のノウハウを提供する。
 事業面での緊密さを打ち出すことで、ライブドアから法的措置をとられた場合に、法廷闘争を有利に運ぼうとする狙いもあるとみられる。

貸株・借株
 株式の保有者と第三者が一定期間、貸し借りする株券。「株券消費貸借」という契約を結び、借り手は期間の終了後に株券を返還するとともに賃借料を支払う。貸し出された株券の所有権は借り手に移るため、株主名簿には借り手の名が記される。株主総会で議決権の行使のほか、通常、配当金を受け取れるなど、株を購入せずに普通の株主と同様の権利を得ることができる。

 


2005/4/18 和解発表  

日本経済新聞 2005/4/19

 フジはまず、ライブドアの子会社でニッポン放送株の32.4%を保有するライブドア・パートナーズを5月23日付で買収する。買収総額は670億円。これによりニッポン放送に対するフジの出資比率は68.87%となり、ニッポン、放送の子会社化を実現する。
 ライブドア保有株の買い取り価格は1株6300円。ライブドアの推定平均取得価格6286円よりわずかに高く、TOB(株式公開買い付け)価格5950円を上回る。(注1)
 6月下旬のニッポン放送株主総会で、フジはニッポン放送の議決権の3分の2以上を握る。

 フジはさらに9月1日をメドにニッポン放送を完全子会社とする計画だ。(現金株式交換 注2)

 ライブドアが求めていた放送とインターネットを融合した業務提携については、両社が新設する、業務提携推進委員会で具体的内容を協議する。
 業務提携の効果を高めることも狙いライブドアはフジに対し、5月23日付で440億円の第三者割当増資を実施する。フジは堀江社長に次ぐライブドアの第二位株主となる。(注3)
 両社の和解が成立したことに伴い、ソフトバンク・インベストメントは同日、借りていたフジ株をニッポン放送に返却する予定だと発表した。

フジテレビ・ライブドアの基本合意およびフジテレビ・ニッポン放送の基本合意による今後の再編手続について
https://www.release.tdnet.info/inbs/44120490_20050418.pdf

   
ライブドア・パートナーズ株式譲渡価額: 21 億円
株式の買取りと同時に、フジテレビは、ライブドア(子会社等を含む)のライブドア・パートナーズに対する貸付金債権を買い受け、または弁済することに合意しておりますので、買収価額の総額は670 億円となります。
 

 
   

注1 ライブドア側の問題〜短期売買差益返還規制

まず、この和解が成立するとLD側としては今年に入ってから買ったニッポン放送株式をフジテレビに売却するわけですが、証券取引法上、
10%以上を有する大株主が6か月以内に行った株の売買で利益を得た場合には、発行会社(この場合ニッポン放送)は、株主に対して、その利益の返還を請求することができることになっています(証取法164条)。
ちょっと古くなりますが堀江社長が2月の最初の会見で「売ったら利益を返さないといけない(ので売るつもりはない)」と言っていたのは、多分、このことだと思います。
ただ、これは前にどこかで書いたと思うのですが、大株主となった会社の株式を売る場合、つまり、
持株会社を通じて間接的に保有している場合に、持株会社の株を売る場合には適用がない形になっています。
利益返還規制を法的主体をまたがる形で適用するのは技術的に簡単ではないため、これを立法の不備というのは可哀想なのですが、少なくとも株式取得のためのSPCを使えば、これは比較的容易に回避できてしまいます。

今回の場合は・・・・ライブドア・パートナーズがほとんどの株式を保有していて、ライブドア本体の持株比率は10%未満に留めているので・・・ライブドア・パートナーズ株式の売却に際しては短期売買差益返還規制を心配しなくていいことになると思われます。
http://blog.drecom.jp/fallin_attorney/archive/164

注2 現金株式交換

現金株式交換って、会社法現代化で認められるもので、しかも、
年凍結になったんじゃなかったっけ、と、思う方がいらっしゃるかも知れませんが、現在でも産業活力再生法で主務大臣の認可をとれば可能ですし、実例も既に何件もあります。
今回の一連の騒動をきっかけに会社法本体への導入が凍結された現金株式交換を使って、フジテレビ−ライブドアの処理がなされたら、何だか皮肉というか、痛快というか、個人的には、このシナリオが一番魅力的だったりします。  
http://blog.drecom.jp/fallin_attorney/archive/164

注3 (発表文)

証券取引法に基づく諸手続を経て、フジテレビはライブドアが実施する第三者割当増資を引き受ける予定です。基本合意された第三者割当の内容は下記の通りですが、払込期日までに実施されるフジテレビによるライブドアのデューディリジェンスの結果によっては、当該内容は変更または本資本参加は中止される可能性があります。


日本経済新聞 2005/4/19

妥協の和解 両者に代償
 ライブドア 440億円プラス 株式価値は希薄化
 フジテレビ 影響力を排除  負担の増加880億円

 フジテレビジョンとライブドアの争いが和解で決着した。フジはニッポン放送の完全子会社化にこぎつけたが、当初見込みより900億円近くも負担が増える。金銭面では約440億円の資金を得たライブドアの判定勝ちといえそう。ライブドアも、買い集めた株の高値での買い取りを迫るグリーンメーラーの汚名を着せられないためには、フジとの提携を実のあるものにする必要がある。

買収防衛、双方の損得勘定 (○はメリット、●は支出・デメリット)

ライブドア(プラス443億円)   フジテレビジョン(888億円負担増)
●ニッポン放送取得金額  1030億円
○同株の売却額  1033億円
○フジからの出資分   440億円

  差し引き 443億円のプラス       

●株主価値の希薄化、株式数62%増、
    株価2割安に (2月1日比)





●同株買い取り(TOB分含む)及び    
   ライブドア・パートナーズの買収 1780億円
●ライブドアヘ出資  440億円
●増配  100億円
●新ファンドなどその他の防衛策  273億円

 合計2593億円支出(当初計画は1705億円)
 差し引き888億円マイナス

○フジと業務提携実現
●フジ本体への出資を断念
○知名度向上
●グリーンメーラーの汚名懸念



○ニッポン放送を子会社化
○フジ本体を防衛
●イメージ低下

横やりで取得額上昇
 和解にあたって、フジが「最も優先した」(日枝久会長)ニッポン放送の完全子会社化は実現するが、予想以上の出費を強いられる。もともとの計画では、1株5950円の株式公開買い付け(TOB)で1705億円をかけて完全子会社化する算段だった。
 ところがライブドアの横やりで、和解での取得額は6300円に上がった。フジ本体の防衛策にも資金を投じざるをえなかった。大幅増配など株主にとり歓迎すべきものもあるが、当初計画を900億円近く上回る出費になった。
 さらに、和解での買い取り価格がTOB価格を上回ったことで、株式市場には「一般株主を軽視する」との否定的な印象を与えてしまった。ライブドアの株主になることで同社株の株価下落リスクも背負い、二人三脚で企業価値向上に取り組まざるをえなくなる。
 一方、ライブドアはニッポン放送株を1株平均6286円で取得しており、損失を出さずに1千億円超の資金を回収できる。第三者割当増資で440億円もの資金が手元に入る。ただ、一連の資金調達で発行済み株式数が約4億株も増加。1株当たりの価値が希薄化し、株価には下落圧力がかかる。2月初旬の450円から現在は350円近辺と約2割下がった。増資で得た資金をより収益の見込める事業に投じ、企業価値を上げる必要がある。
 提携の具体案作りがこれからである点もマイナス。堀江貴文ライブドア社長は「フジはライブドアの株価が上昇しないと損をするので、相当の努力をされると思う」と期待をみせる。しかし、
フジがライブドア株を保有する義務があるのは2007年9月末まで。この後は提携に見切りをつけ売却する公算がある。
 業務提携で実りがないと、ライブドアは法の抜け道を使い大量取得したニッポン放送株でマネーゲームをしただけとされ、今後のM&A戦略に支障をきたしかねない。

リーマン100億円利益
 一方、ライブドアが発行した転換社債型新株予約権付社債(CB)を引き受けたリーマン・ブラザーズ証券グループは、ライブドア株のカラ売りとCBの株式への転換を組み合わせた売買益や、つなぎ融資の金利などにより、推定で百億円程度の利益を得たようだ。


日本経済新聞 2005/5/16

ニッポン放送争奪 弁護士たちの70日戦争
 知識と経験総動員 フジ側 内なる攻防も

 ライブドアによるニッポン放送の敵対的企業買収ーー。産業界のみならず世間が注目した大攻防劇は、両陣営の弁護士が知恵と知識を総動員した「法務戦争」でもあった。当事者の声とともに70日間の舞台裏をたどった。

 時間外取引という奇襲攻撃を受けたフジサンケイグループ。顧問弁護士らの意見も参考に、すぐに30前後の対抗策を俎上に載せた。ニッポン放送が有力子会社、ポニーキャニオンなどの経営悪化を理由に倒産法適用を申し立てる可能性をちらつかせ、ライブドアの勢いをそぐ、との案まであった。
 ただニッポン放送はなかなか反撃に出ない。しびれを切らしたフジはまずフジ株の売却(または貸株)と優良子会社の売却を迫ったが、事務レベルでの調整は難航した。

■2・23 毒薬への道
 打開の糸口となったのは都内のホテルで開かれたグループ首脳の会合。フジ会長の日枝久、社長の村上光一、ニッポン放送社長の亀渕昭信、副社長の天井邦夫、両社の顧問弁護士、そして産経新聞社社長の住田良能が集まった。
 フジ株を持ったままライブドア傘下に入るなーー。「妥当な価格で株を手放しても損害はない」とフジ側が説得したものの、ニッポン放送側は折れなかった。
 そもそもフジ防衛のために虎の子の資産を売却するのは妥当だろうか。売却益には総額500億円もの税金もかかる。ニッポン放送の経営陣が全幅の信頼を置く顧問弁護士、中村直人(45)はかねて、会社に損害を与えることで取締役陣が特別背任に問われるリスクを指摘、強硬に反対していた。株主代表訴訟リスクもあった。ニッポン放送は取締役の責任軽減策を導入していなかった。
 結局、ニッポン放送がフジに第三者割当増資をして関係をより強固にするとの防衛策をこの日の会談で選択。資金使途が明確でないと違法になるが、中村も「企業価値の防衛目的であれば認められる可能性もある」と判断した。
 同日夜、フジ側の長島・大野・常松法律事務所で増資の細部を詰める作業を急いだ。その際、浮上したのが予約権だった。増資準備の予約権なら資金使途はそう問題にならないかもしれない。ニッポン放送株公開買い付けの結果をみて、最低限の資金で子会社化できる。差し止められても、会社に損害はなく代表訴訟リスクも少ないと読んだ。

■3・11 仮処分決定
 「代理人に加わってほしい」--。ライブドアが予約権の発行差し止めを申し立てる数日前。資金面で協力したリーマン・ブラザーズ証券グループ関係者が、似た事件で勝訴歴を重ねていた弁護士、新保克芳(50)に頭を下げた。
 両陣営で、裁判所に提出する意見書を頼む外部識者の獲得競争も白熱した。「相手側から既に頼まれた。申し訳ないが…」。ニッポン放送側には経済産業省「企業価値研究会」座長を務める東大教授の神田秀樹、法制審議会会社法部会長を務めた同じく東大教授の江頭憲治郎ら重鎮が名を連ね、予約権利用の防衛策が認められていい場合もあるとの見解を寄せた。
 しかし東京地裁は3月11日、「(予約権は)市場に対する毒薬である」と主張したライブドアの言い分を認め、差し止め判断を示した。

■4・18 和解へ
 4月16日夕、地下に車寄せを持つ都内の法律事務所。和解協議のため双方の首脳や弁護士10人が集まった。ソフトバンク・インベストメント(SBI)への貸株など、防衛の鎧を重ねたフジの日枝らは、別室で内輪の最終協議をするライブドア社長の堀江貴文らを待った。
 フジ側では弁護士と相談の上、堀江側がさらに条件を加えてきた場合の対応策も準備していた。だが、攻め手を失いライブドアは株価も低迷、玉(資金)もつきかけていた。会談の部屋にいつものTシャツ姿で現れた堀江は一時入院した日枝の体調を気遣い、米国出張の土産話をした。
 和解で本丸として狙われたフジがライブドアの主要株主になるという意外な結末に、ホリエさんら若い人には企業防衛という意識がないようだねーー」。ある関係者はこうつぶやいた。

フジテレビ弁護士 原 寿氏
 予約権、勝算五分と見た

ー 決着をどう採点する。
 「80点をつけてもいい。フジがすべての意思決定権を握っていたわけではない。ポニーキャニオン株売却や、フジ株の売却・貸株をやるのはニッポン放送だ。これらの焦土作戦は差し止められるリスクはないが、刑事責任や代表訴訟のリスクがある。防衛策としての即効性と経営者リスクという総合的な視点から、ニッポン放送が慎重に判断したのは当然だろう」
 「今回、弁護士として誰を代理しているのか考えさせられた。従業員や長期保有の一般株主などのことを考えれば、より強力な防衛策を打ち出すのがいいのかもしれない。しかし、経営責任を問われる現実的な可能性がある場合にはなかなかその策は選べない」

ー TOB価格を引き上げなかった。
 「買い付け前に第三者評価を受け、評価価格の枠内で買い付け価格を設定した。当然、枠の上限まで引き上げればどのような効果があるのかは検討した。その間、ニッポン放送の株価は上がり、枠の上限を上回った。また堀江さんは、時間外取引後、短期売却はしないと表明しており、価格をある程度引き上げても応じないと考えた」

ー 新株予約権は発行が差し止められた。
 「勝算は五分五分とみていた。買収されれば企業価値が損なわれることを裁判官に説得できれば勝てるし、主要目的ルールという従来の枠組みで判断されれば負けると考えていた。残念ながら、裁判所は企業価値防衛という我々の主張について判断を避けた」
 「法律家の一人として企業価値の判断はまだ裁判官がすべきではないと思う半面、裁判所が判断しなければならない時代になりつつあるような気もある」

ー 予約権の規模が大きすぎたため、差し止め判断になったとの見方もある。
 「内部でもそうした議論はあった。我々は企業価値の毀損を確信していたが、高裁は相手が(高値買い取りを狙う)グリーンメーラーなどでない限り、予約権利用の防衛策は違法だとみている。発行量が少なくてもやはり差し止めになったのではないか」

 72年(昭47年)東大法卒、75年弁護土登録、80年米ハーバード大ロースクール修了。長島・大野・常松法律事務所代表。57歳。

ライブドア代理人 三井拓秀氏
 乱暴な防衛策、自信得た

ー 時間外取引には厳しい批判が出た。
 「業界慣行を破ったかもしれないが、法的には許されていた手法だ。実際、過去にも時間外取引による企業買収は何度も検討された。他の人から見れば、やりたかったことをライブドアに先にやられたということではないか」
 「ルールがあいまいな場合、米国では証券取引委員会(SEC)や内国歳入庁(IRS)などが法の解釈、運用について見解を事前に文書で出す。日本でも似た制度はあるが、きちんと運用されていないように感じる。日本では実行に移すものがリスクをとらなければならない」

ー ニッポン放送は新株予約権で防衛に動いた。
 「発行内容があまりに乱暴で、ライブドアヘの対抗目的が明白だった。悪くても8割は勝てると思っていた。もしライブ
ドアとフジの持ち株比率が同等になるような発行規模であれば、委任状争奪戦などを通じ最終判断を株主に委ねる余地があり、司法判断は変わったかもしれない」
 「相手方は意見書で各界のオーソリティー(大御所)を押さえ、防衛の陣立てはりっばだった。しかし裁判所は、(ニッポン放送側が争点にすえた)企業価値の問題について踏み込んだ判断をしなかった。司法ができることには限界があると認識したうえで、適正な結論を出した」

ー 高裁決定では、予約権を用いて対抗するのが妥当なケースとして、買収先企業の資産を担保に買収資金を借り入れるLBO(レバレッジド・バイアウト)など4類型を明確に示した。
 「LBOが必ずしも会社を食い物にするとは限らない。これから議論し洗練された防衛ルールを作るべきではないか」

ー 今回の事件を機に企業防衛論が高まった。
 「日本の企業社会にこれほど広範なインパクトを与えた訴訟はない。遅きに失するかもしれないが、様々な制度改正、ガバナンスや上場の意義を考える上で格好の案件だった。冷静に議論すれば企業経営を変革するいいきっかけになると思うが、現在耳にする防衛議論は何を守ろうとしているのか、良くわからない」

 74年(昭49年)東大法卒、77年弁護士登録。83年米コロンビア大ロースクール修ア。三井法律事務所代表。57歳