中国ビジネス 変調の現場

中国 過熱経済の底流


日本経済新聞 2004/11/9〜

中国ビジネス 変調の現場

荒れる労働者 コスト上昇

 旺盛な対中投資を続ける日本企業。だがビジネスの現場では右肩上がりの成長が鈍り始めている。金融引き締めという政策の影響だけでなく、コストの上昇など、表面化するリスクにさいなまれる企業が増えている。晴天続きだった中国ビジネスの最前線に、曇りが目立ってきた。

社員食堂で暴動
 進出企業を震かんさせた、その騒動は、部品メーカーが集まる広東省東莞市で起きた。9月6日夜、タ食をとる社員でごった返す日系企業の食堂。若者数人が突然立ち上がり、いすを振り上げ窓ガラスを割り始めた。悲鳴をあげる女子社員。ひとときの団らんは修羅揚と化した。 社員の一人は「食事がまずくなったから」と語る。食堂を運営する給食会社がコストを抑えるため質を落とした。ささやかな不満が大勢の逮捕者を出す引き金となった。
 工場の社員数は約5千人。多くが「民工」と呼ぶ内陸部からの出稼ぎ労働者だ。寮で暮らし食事も工場の食堂でとる。社員の「唯一の楽しみ」を軽視した経営者への不満は「給料が安い」「寮が汚い」など、雪だるまのように膨らむ。激した200人が市内をデモ行進し、公安当局と激突。中核メンバーら約50人が連行され、工場の操業は止まった。
 日系企業が集中する上海市など華東地域に比べて、広東省の民工の平均給与は200元(約2600円)近く安い。六畳くらいの部屋に20人を詰め込む寮は少なくなく、残業代を規定通りに払わない企業も目立つ。
 「世界の工場」を支える民工が反旗を翻す。1−6月に広州市当局へ提訴された労働争議は1万6千件。半年で昨年1年間と同じ規模だ。10月6日には深セン市で3千人規模のストが発生。日本貿易振興機構(JETRO)広州事務所でも今夏以降、労働問題の相談が増え始めた。
 同省では労働力不足も深刻化してきた。日本CMKの東莞工場では毎月約100人を採用しているが「昨年までは300人くらい応募があった。今は100人集めるのがやっと」。省内で不足する民工は200万人とされる。

人手確保困難に
 広東省の人手不足は上海に波紋を広げる。同市青浦区。1993年に進出した中堅衣料品メーカー、小島衣料(岐阜市)の小島正憲社長は今春、「工場を閉めようか」と悩んだ。縫製員の確保が難しくなったからだ。工場では日本向けに婦人服を月6万着生産している。従業員は800人で大半が地方出身者だ。
 年間で約200人は他社に移ったり、帰郷したりする。湖北省や安徽省の高卒者を採用し補ってきたが「広東省の企業が湖北省までスカウトに来るようになり、学生を確保しづらくなった」。
 操業を維持するには離職者を減らすしかない。今年に入って、平均1000元だった給与を1200元に大幅アップ。それでも一部は、より条件の良い企業へ逃げていく。
 幹部から「利益は出ているのだから」と説得された小島社長は工揚閉鎖を思いとどまり、逆に1億円の投資を決意した。来年初めまでに冷暖房を完備した新しい独身寮を建設。結婚後も働けるよう家族寮も併設する。
 13億の人口を抱える中国ビジネスの魅力は長く「農村部から間断なく供給される無尽蔵な安価な労働力」とされた。これまでは労働者の柔軟性も現地での機動的な経営を助けてきた。そのモデルが崩れつつある。
 「コストがかさんでも給与を上げたり福利厚生面を充実させたりして、社員の働く意欲を引き出さなければ」(労働争議を経験した日系工場の責任者)。ビジネスの前提を切り替えないと、成功はおぼつかない。

土地・電カ・水が不足

 江蘇省にある開発区。「工場をよそに移してほしい」。日系工場のトップは管理委員会からの突然の通告に耳を疑った。

立ち退き通告
 同社は原料を輸入し製品はすべて日本に輸出する典型的な労働集約型の工場だ。立ち退きの理由は「技術集約型の企業を集めるから」。管理委員会が提示した代替地は電気や水道などインフラが未整備な沼地だった。
 中国各地で土地を巡るトラブルが起きている。明治製菓は広東省広州市で計画していた工場建設を凍結した。香港企業との合弁で1993年に同市に進出、スナック菓子などを生産してきた。製品の8割を国内で販売しており、需要は着実に増加。生産能力を増やすため、市内に約2万6千平方メートルの土地を手当てし、工場新設を目指した。
 2月に開発区と工場用地の譲渡契約を交わしたが、直後にそこが農地であることが判明。政府が着工を認可しなかった。開発区が工業用地への転用手続きを怠っていた。
 企業誘致の担当者は近くにある保税区での建設を再提案。保税区は製品を全量輸出するのが原則だが「国内販売しても問題ない」。「没問題(問題ない)」を繰り返す担当者が信じられず、計画を白紙に戻した。
 農業振興を最優先課題に掲げる温家宝首相は今春以降、農地の保護を強力に推し進め、4月には非農業への転用を全面的に禁じた。11月に入って転用禁止は一部解除したが、「土地管理を強化せよ」との基本姿勢は崩していない。
 土地問題と並び、日系企業を悩ますのが電力不足だ。最も深刻なのが浙江省。今年の夏は大半の工場が週3日の停電を強要された。
 同省嘉興市で自動巻き線機を製造している田中精機(嘉興)。竹田周司董事長は語る。「6月から火、水、木曜日が停電になった。7月になると1日置きに変わり、電気が来る日でも突然の停電が頻発した」
 1日置きに操業を止めていては生産計画を立てられない。8月に入って約10万元(130万円)を投じ中古の発電機を設置した。ところが、原油の高騰により重油代が上昇。発電コストは1キロワット時当たり2元と、電力会社の電気料金の3倍近くになっている。
 華東地域は今冬も夏場と同水準の1700万キロワットの電力が不足する見通し。浙江省はその約半分を占める。省都杭州市に世界最大の白物家電工場を建設する松下電器産業。計画を指揮する林義孝常務も「自家発電機の導入を検討する」と話す。割高だろうが、電気がなけれぱ工場は動かない。
 中国政府は来年1月から、電力や鉄鋼、製紙、ビールなど7業種について、工業用水の取水制限を始める。国が定めた基準量を上回る取水には割増金を課すほか、排水の再利用も義務付ける。急速な工業化に伴い、全国的に水不足が深刻になっているためだ。

水道料が急上昇
 降水量が少ない首都北京市では、すでに今夏から上下水道とも料金が上昇。市北東部に合弁工場を持つアサヒビールによると、水道が約3割、下水は2割高くなった。工場のビール生産量は年5万キロリットル。ビンや醸造タンクの洗浄に必要な水はその7倍の35万キロリットルに上る。環境保全とコスト低減のため、洗浄水を再利用する装置を設け、年間の水使用量を25万キロリットルにまで減らす考えだ。
 土地、電力、水。工場を動かすのに必須の“操業インフラ”の供給が間に合わない。特に取水制限の対象が広がる可能性は強く、工場進出の大きな障害となるだろう。

 

反日感情の壁に苦しむ

 キャノンの製品を買うなーー。9月18日、中国のあるウェブサイトで突然、こんな内容の書き込みが相次いだ。この日、キャノンは日本で主力の新型デジタルカメラを発売していた。予期せぬ「キャノンたたき」の原因は発売日にあった。

歴史問題を重視
 旧日本軍が中国の東北地方侵略を開始したのが1931年9月18日。中国人が「恥の日」と呼び毎年反日機運が盛り上がる。年間100種類以上の新製品を発売するキャノンに「この日を発売日に選んだ意図は全くなかった」が、一部の中国人は反日運動のための格好の材料として飛びついた。
 キャノンは今年、中国で2003年比約4割増の5億ドル(約540億円)を売り上げる計画で、中国事業は収益の屋台骨に育っている。反日感情を刺激して中国での販売に影響を及ぼすことがないよう、日中の歴史問題がかかわる日には、たとえ日本市場であっても新製品の発売を控えることを決めた。
 「重慶大爆撃を日本企業としてどう考えるのか」。ある日本企業の営業マンは重慶企業との商談中に相手からこう切り出されたじろいだ。その後、相手側のぺ−スで交渉を進めざるを得なくなった。この担当者は重慶大爆撃など日中間の歴史問題を勉強し直し、交渉時に対等に議論できるよう理論武装を急いでいる。
 日本企業が中国で反日感情の壁に苦しむケースが増えている。小泉首相が靖国神社への参拝継続を表明、中国側が猛反発するなど日中の政治関係がぎくしゃくしていることが背景にある。8月、みずほコーポレート銀行が申請していた江蘇省無錫市の支店新設が突然却下されたときも、日本の金融業界では中国が反日感情を考慮したためとの見方が広がった。
 靖国問題などを背景に日本の首相訪中は一向に実現しない。政府首脳が自国企業のトップを引き連れて訪中しトップセールスを展開する欧州各国との格差は大きい。
 10月20日。川崎重工業など日本6社は中国鉄道省へ在来線を現在の2倍の時速200キロメートルへ高速化する新型車両の納入を決めた。だが、受注車両数は当初予想の半分強にとどまった。
 「日本の新幹線の技術は高く価格も安い。事業全体の7割は任せたい」。8月初め日本6社は鉄道省からささやかれていた。ところがその後、ライバルの仏アルストムが急激に追い上げた。決め手は大統領の訪中だ。
 10月8日に訪中したシラク大統領は胡錦濤国家主席らと会談、「台湾独立につながるすべての活動に反対します」など中国側が喜ぶ発言で中仏蜜月ムードを盛り上げた。中国側は仏政府の貢献ぶりを高く評価し、アルストムヘの車両発注を含む合計5500億円の商談をお土産に用意した。

首相の言動影響
 中国の経済成長に伴い日本企業の中国事業も拡大してきた。だが、欧米や韓国企業との競合が激しくなっている。「日本の首相は訪中しないばかりか反日感情を刺激する言動が多く企業の足を引っ張っている」。ある商社マンは苦言を呈する。実際「小泉首相が靖国神社を参拝すると日本車を買い控えようとの動きが起こる」(中国の新聞の経済担当記者)という。
 最近の日中関係は政治は冷たく経済は熱い「政冷経熱」と表現されるが、政治に引きずられて経済関係も冷たくなりつつあるとの指摘も出ている。日中の政治関係の今後の行方次第では、日本企業が中国ビジネスで一段と苦戦を強いられる場面が増える可能性がある。

 

「一点集中」から脱却

 電子部品商社の高千穂電気は今年初め、遼寧省大連市で電子機器を受託製造するEMS工場を稼働させた。テレビ用基板の実装作業を請け負う。
 取引先となる電子部品メーカーは華南地域が最大の集積地。なぜ2千キロ以上も離れた大連に進出したのか。「広東省にはすでに千以上のEMSが出ており、競争が厳しすぎる」。工場を運営する大連高千穂の柿沼亨総経理はこう説明する。
 基盤の実装は機械作業が多いが「検査を含め1ラインに10人以上を配置する必要がある」。人件費が高騰する華南に今から進出しても「とても採算が合わない」。
 日系企業はビジネスリスクが高まる広東省や上海市を避け、東北地方などを見直しつつある。上海市によると、海外からの1−9月の直接投資額は契約べースで前年同期比3.0%増にとどまった。新型肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)の影響で投資契約が停滞した2003年と、ほとんど変わらない水準だ。

台湾回帰広がる
 中国ビジネスで日系企業に先行してきた台湾勢。彼らの間では中国そのものから去っていく動きも目立ってきた。
 「故郷に帰って来るサケのよう」。台湾の陳水扁総統は6月30日、半導体メーカーの南亜科技とドイツ企業の合弁工場の完成式典でこうあいさつした。台湾北部の桃園県に投じる資金は22億ドル。世界最大のDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)工場となる。
 最近は南亜科技のように台湾重視の企業が増加。「電力不足を嫌い台湾に戻る企業が増えてきている」(当局)といい、今年6月末までに44社、224億台湾ドル(約750億円)分の投資が回帰した。
 中国から東南アジアヘシフトする台湾企業も目立つ。今年上半期の対べトナム投資は約2億6100万ドルと前年同期比68.3%も増加。すでに工場進出した二輪車メーカーなども一斉に生産増強に乗り出した。東南アジアの見直し機運は日本企業にも広がる。
 ラオス国境へ160キロメートルのタイ東北部、コンケン県。7月29日、スイッチやコネクターを生産する松下電工の新工場が本格稼働した。
 コンケンを選んだ決め手は人件費の安さ。タイ松下電工の矢野尾脩社長は「中国では給与にその6割に相当する年金や医療保険など法定福利費を上乗せしなければならず、総人件費を比べるとタイの方が安いケースもある」と指摘する。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)が3月に発表したアジア主要都市のコスト比較によると、バンコクの労働者の賃金は重慶市や藩陽市とほぼ同じ。工業用地の地価は北京市並みで工業用の水道料金は北京や大連より安い。矢野尾社長も「コスト競争力でタイは中国に負けない」と語る。

巧みに使い分け
 中国の日系自動車メーカーとしては最も成功しているホンダ。同社は中国と東南アジアを巧みに使い分ける戦略だ。
 武漢市で生産する小型スポーツ多目的車(SUV)「CRーV」は自動変速機(AT)など6部品をインドネシアから、パネルなど4部品はタイ、バンパーはマレーシアから調達。広州市で生産するミニバン「オデッセイ」には、タイからドアなどの金型を供給している。四輪車を生産するホンダのタイ・アユタタ工場は、中国への部品供給基地としても重要度を増している。
 優秀な人材、巨大な市場……。中国には他の地域にはない魅力がある。ただ、過度の集中投資はリスクも大きい。この地の実情をつぶさに把握し、的確な投資判断を下せるか。チャイナ・ビジネスの成否はブームに踊らない冷静さにかかっている。


日本経済新聞 2005/1/27--

中国 過熱経済の底流

市場原理を無視 地方の乱開発止まらず

 中国は2004年、2年連続となる9%超の成長を遂げた。ただ実態をみると、短期的な利益を求めて農民から格安で奪った土地を乱開発するといった動きが、投資増加の形で国内総生産(GDP)を押し上げた面もある。市場原理を無視した投資主導の発展には危うさが伴う。過熱が収まらない中国経済の底流を探った。

 中国東北三省の一つ遼寧省。その西方にある朝陽市の北票地区で、消えたはずの工業団地が今なお操業を続けている。「地元や企業が1千万元(約1億3千万円)以上も投入したのに、撤収などできっこない」。工業団地の関係者はこう語った。朝陽市政府が建設手続きを問題にし、撤去を命じたのが昨年1月12日。1年後の今も進出した十数社が操業をやめる気配はない。
 地方政府は地域振興を名目に、競って工業団地や開発区をつくった。土地代や税率を違法に安くして企業を誘致することも多い。中央政府はこれが投資過熱の元凶と考え、昨年、4813カ所の開発区を停止した。だがこれで改まるほど事態は簡単ではない。
 国土資源省の担当者は「一部地域は形式的に開発区を取り消したことにして、ひそかに企業誘致を続けている」と認める。プロジェクトの名前から「開発区」の三文字を外し、前と同じまま運営している例も多いという。
 中央の意向に背いてまで地方が開発に走る背景には、市場原理とは無関係に決まる3つの低コストがある。1つは
不当に安い土地代。農民から半ば強制的に農地を巻き上げ、企業に安く払い下げて開発区をつくる。
 遼寧省北票地区の工業団地は土地を失った農民への補償金が1ムー(667平方メートル)で毎年500元(約6500円)。江蘇省塩城市の工業団地は農民への補償金は明らかではないが、業者へ土地を払い下げる際の金額が1ムー当たり1千元と安く問題になった。
 2つ目は
低労賃。農地を手放した農民は、農地を衣替えしてできた開発区にとって格安な労働力となる。沿岸部の大都市や外資系企業で働く場合を除けば毎月の給与は数百元程度とみられる。それでも賃金の未払い問題が頻繁に報じられる。
 3つ目は
低金利だ。昨年の10月末に利上げに踏み切ったとはいえ、貸出基準金利は1年で5.58%。中国社会科学院の何帆博士は「物価上昇を考慮すれば実質金利はゼロに近づく」と指摘する。今の金利水準については「多くの負債を抱える国有企業を守るために低く抑えられている」(金融筋)との見方もある。
 地方の乱開発について野村証券北京事務所の神宮健シニアエコノミストは「市場メカニズムが働かず、やればもうかる仕組みになっており、完成したプロジェクトに経済的価値があるかは疑問」と語る。中長期的に利益を上げる技術水準は乏しく、“もうかる仕組み”には裏金やわいろも含まれるとみられる。
 中央政府も農民からの土地の強制収用が問題の根底にあると考え、昨年から農地の転用を厳しく制限している。だが土地の収用を巡るトラブルで農民が暴動を起こす例が最近も表面化している。過熱投資は中国の社会問題と深く絡みあって解きほぐすのが難しく、今年も中央と地方の綱引きが続きそうだ。

力不足の消費 価格下落でも買い控え

 「内需拡大の中心は投資から消費に移すべきだ」ーー。1月上旬、北京で開かれた経済フォーラムで中国国家統計局チーフエコノミストの姚景源氏の発言が注目を集めた。「中国の国内総生産(GDP)に占める最終消費の比率は世界の平均水準より20ポイント前後低く、投資は逆に20ポイント前後高い」と桃氏は指摘する。
 個人消費を示す社会消費品小売総額は2004年に前年比10.2%増(実質)となり、前年の伸び率を1ポイント上回った。それでも、経済全体をけん引するには力不足だ。日本や米国では最終消費の対GDP比率は60−70%台だが、中国では2000年の61.1%から03年に55.5%まで落ち込み、投資への依存度が高まっている。今、投資が冷え込めば、失業増や社会不安につながりかねない。
 消費の力不足を象徴する現象の一つが、過熱経済の下でも根強い消費財デフレの懸念だ。今月中旬に北京で開催された中国の電器量販店の業界会合。「昨年の売上高は前年比150%増」など景気の良い報告が相次いだにもかかわらず、参加者の表情はさえなかった。原因はその場で伝えられた「昨年末のテレビ在庫は1千万台」という報告だ。年間販売量の3分の1弱に達するだけに「今年の販売価格や粗利水準は考えたくない」と関係者は頭を抱える。
 1−11月の消費者物価は前年同期比4.0%上昇した。だが内訳を見ると、食品が同10.4%と大幅上昇した影響が大きく、「衣類」「家庭設備」「交通・通信」は軒並み低下している。
 価格下落は必ずしも購買意欲の刺激につながっていない。北京市内の自動車ディーラーは「客はもっと値段が下がるのを見越している」と嘆く。メーカー各社は買い控え防止に躍起だ。東風汽車は昨年末「購入後に値下げがあれば補てんする」という異例のキャンペーンを展開した。
 都市部では「消費の一巡」現象も出始めた。
 世界一の規模を誇る中国の携帯電話市場。昨年11月末時点での保有台数は3億3千万台と全人口の4分の1で、成長余地は大きくみえる。
 だが、北京、上海といった都市部に限れば世帯あたりの保有台数は昨年1−3月期に1台を超えた。もはや携帯電話を持つことは珍しくない。人より早く買うことが中・高所得者の証しという「ミエの需要」は減退しつつある。ある部品メーカーは「携帯電話の部品の発注は減速に転じている」と指摘する。
 「8億の農村住民の消費を伸ばすことが重要」。国家発展改革委員会マクロ経済研究院の陳東h副院長は強調する。中国政府は農村を中心に、個人消費の拡大策に重点を置き始めた。昨年には一部地域で農業税を免除、今後全国に広げる方針で、農民の可処分所得の増大に努めている。
 だが消費奨励策が有効に働かない可能性もある。一人っ子政策の結果、中国でも高齢化社会の到来が予想され、特に農村部では老後を保証する養老年金不足が深刻化しつつある。家計に将来不安が重くのしかかる。
 中国が個別企業にとって世界有数の有望市場であることに間違いはないが、
「13億人市場」の潜在力を実際の購買力に変えるまでの道は平たんではない。


日本経済新聞 2005/3/4

中国、揺らぐ低コスト構造 原料・電力価格に市場原理
 先行ナフサは15%上昇 外資の収益に影響必至

 中国政府は低めに統制してきた原材料や電力の価格に相次ぎ市場原理を導入した。エチレン原料であるナフサ価格を生産企業ごとに順次自由化しているほか、今年から電力価格も主な燃料である石炭価格と連動させることを決めた。自由化した製品はいずれも今後値上がりする可能性が高く、外資などの工場の生産コストにも影響を及ぼすことは必至だ。
 ナフサやガソリンなど石油製品や電気料金は物価への影響力が大きいため「国民生活の安定を維持する」などの名目で政府が価格を低めに抑えてきた。この結果、原料や燃料である原油や石炭価格の高騰を部分的にしか反映せず、生産会社の利益も圧迫してきた。
 業界関係者によるとナフサに関してはまず、国営エネルギー大手、中国石油化工(シノペック)が生産・販売する製品の価格を自由化。昨年まではナフサ価格をガソリン価格の9割にあたる1トン400ドル弱に抑えてきた。自由化で2月の価格は15%前後上昇し、1トンあたり460ドル(約48200円)を超えた。
 中国では国営の中国石油(ぺトロチャイナ)もナフサを生産・販売している。現段階では同社のナフサ価格はまだガソリン価格の8割に定められているが、近く自由化されるとみられている。
 石油製品の原料である原油価格の高騰が続く中、まずナフサに市場原理を導入することで、国有エネルギー大手の利益を確保する狙いがあるとみられる。石化製品の需要拡大を見込み今年、英BPが上海で年産90万トン、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが広東省で同80万トンの巨大エチレンプラントを稼働させる。外資各社は収益計画の見直しを迫られそうだ。
 
 中国国家電力監督管理委員会は発電燃料の約8割を占める石炭価格と電気料金の連動制導入を決めた。石炭価格の上昇幅が6カ月以内に5%以上になると、電気料金も上がる仕組み。コスト変動分の7割を電気料金に反映させ、残りの3割は電力会社が負担する。工業用電力が対象で、生活用と農業用には適用されない。石炭不足が深刻になっており、石炭価格の上昇により電気料金が上がる可能性が高い。

 中国ではエネルギーや水の不足を背景に、ガスや水道料金も上昇している。原材料やエネルギー、水などの価格上昇によって、「世界の工場」を支えてきた中国の低コスト構造が今後、揺らぐ恐れも出てきた。


日本経済新聞 2005/5/23

景気指標 決壊した中国繊維ダム

 中国の繊維輸出は決壊したダムの奔流に似ている。流れをせき止めていた世界貿易機関(WTO)の「繊維協定」が昨年12月末で失効し、破壊的な価格競争力を持ち中国製品が世界市場にあふれ出しているからだ。
 洪水の"被害”は二大市場の米欧を見ると分かりやすい。米国の今年1−3月の中国からの繊維輸入額は49億7500万ドル。昨年の同期に比べ58.2%も増加した。欧州連合(EU)の15カ国でも21.2%増の18億5800万ドルに跳ね上がっている。
 だが、中国製品のシェアが伸びて割を食ったのは、米欧それぞれの国内繊維業だけではない。米国ではメキシコからの輸入が同期間に6.5%減ったのを筆頭に、コスタリカ、ドミニカなど中米諸国への打撃が大きい。
 欧州ではポーランド、ブルガリアなど東欧のほか、チュニジア、モロッコ、エジプトなど北アフリカ勢のシェア低下が目立つ。米欧が裏庭に擁する新興国や途上国の繊維業が、わずか3カ月で水没してしまったのだ。
 米政府は慌ただしく緊急輸入制限(セーフガード)を発動。EUも発動準備に入っている。これを不服として中国はWTO提訴も辞さない構えだ。対立の構図は一見すると大国間の貿易摩擦だが、その裏側には、より深刻な危機が潜んでいる。強大になった中国が他の途上国の産業の芽を踏みつぶす「南南問題」である。
 貿易自由化の歴史の中で、繊維は長い間、特別扱いだった。WTO体制に組み入れる過渡的な措置として1995年に導入したのが「繊維協定」であり、米欧は協定の許す範囲で中国製品に数量的な輸入枠を設けていた。協定期間は最初から10年と決まっていた。ダム決壊は、いわば時限装置によるシナリオ通りの工程といえる。
 ただ一つの誤算は水圧がこれほど高いとは誰も予想していなかったこと。激流は米欧だけでなく他の途上国も巻き込み、世界経済の安定を根本から揺るがしている。残された解決策は人民元の改革による為替調整しかないだろう。


産経新聞 2005/7/2

ASEANとのFTA発効 高まる中国の存在感

 東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国との間で合意されていた物品の
自由貿易協定(FTA)が1日発効した。約7千品目について20日以降、段階的に関税を引き下げる予定で、東南アジアに対する中国の存在感がさらに高まりそうだ。
 ASEANと中国の間では、2003年7月に、自由貿易地域実現のための道筋を示した「包括的経済協力に関する枠組み協定」が発効。農産品や一部鉱工業品については、すでに早期関税引き下げ措置(アーリーハーベスト)が実施されている。
 物品に関するFTAは昨年11月に合意されたもので、アーリーハーベスト対象品以外の鉱工業品を中心とした物品に対する関税の段階的削減と撤廃を進める。今回の引き下げ対象となる通常の品目は、
10年1月1日までに関税が撤廃される。引き下げが先延ばしになっている、特に保護が必要な品目についても、15年までに関税率を50%以下に引き下げるという内容だ。
 関税削減は、当初1日から始まる予定だったが、ASEAN事務局によると、手続き上の遅れから、今月20日以降にずれ込んだ。
 ASEANと中国との貿易額は増加の一途をたどっている。特にASEAN先進国の一つであるタイにとって、中国は日本に次ぐ二番目の輸入相手国で、中国の順位は昨年、米国を追い越した。
 タイのタクシン首相は中国との国交三十周年を機に北京を訪問中で、FTA対象分野をさらに拡大する予定だ。同首相は訪問を前に「(中国とのFTAは)脅威ではなく、生産を効率的に行えるようにする好機だ」と中国メディアに述べている。
 一方で、識者や業者の間では、安価な中国製品がASEAN内に押し寄せることに対する警戒心が依然として根強い。
 タイ・タマサート大のアクソンシー教授は、特にタイとインドネシア、フィリピンは革製品、繊維など労働集約型産業で中国と競合すると指摘。こうした品目が安価で中国から流れ込む一方で、「中国へ輸出できる品目は少ない」とみている。アーリーハーベスト実施後、タイではニンニク栽培業者らが中国からの輸入品の打撃を受け、一部の農家からFTAに対する不満が高まっている。タイ紙ネーションは「中国はASEAN産品のほとんどを生産できる」として、ASEAN側の過度の期待を戒めている。
 一方、カンボジアやベトナムなどASEAN後発国については、アクソンシー教授は「中国からの投資が高まり利益を得る」と分析している。


日本経済新聞 2005/12/29

中国石油化工へ1500億円補てん 中国政府

 中国政府は国有石油大手の中国石油化工集団(シノペック)へ石油精製事業の赤字補てんのために100億元(約1500億円)を支給した。原油の国際価格が高騰するなか、ガソリンなど石油製品の価格は政府が低く抑えているため国内での石油精製事業が赤字になっている。補てん資金が海外での油田買収を加速する原資に使われるとの見方もある。
 政府がシノペックヘ支給した100億元のうち94億1500万元は、同社の子会社で香港市場に上場している中国石油化工の2005年の税引き前利益に計上される。
 国有石油各社は国内販売より3−4割高く売れる輸出を優先する傾向を強めており、今夏は国内でガソリンなど石油製品の不足が深刻になった。石油各社は国内の石油製品価格を引き上げるよう政府に求めているが、政府はインフレ抑制のためエネルギーの大幅値上げには慎重だ。精製事業の赤字補てんで値上げを避けつつ国内向け供給を促す狙いがある。
 中国石油化工の2005年6月中間決算は精製部門が赤字とはいえ、石油化学事業などが好調で純利益は24億ドルと前年同期比17%増えた。業績が好調な企業へ政府が資金支援をするのは異例だが、油田買収の加速による資金需要の拡大が背景にあるとみられる。


日本経済新聞 2005/1/19

「中国でデフレ」警告 著名学者「4−6月にも」

 中国のエコノミスト、樊綱・中国経済改革研究基金会国民経済研究所所長は18日、上海市内で講演し「(中国で)デフレの兆候はすでにみられる。第二四半期か年後半にも陥る可能性がある」と語った。景気過熱が指摘された2003−04年に鉄鋼やセメントなどに過剰投資したツケが顕在化し、価格の下押し圧力が一段と強まっていると警告している。
 経済政策の決定にも影響力がある樊氏は「能力過剰は多くの企業の投資を縮小させ、需要を低下させる」と指摘。「今年は能力過剰がもたらす各方面への圧力に強い関心を払う必要がある」と述べた。樊氏のほかにも、北京大学の林毅夫氏ら他の中国の有力な経済学者の間でデフレ懸念が広がり始めている。
 中国の昨年1−11月の消費者物価上昇率は前年同期比 1.8%。原材料価格上昇などにもかかわらず政府目標の4%を大きく下回っている。


日本経済新聞 2006/2/21

外資大国の虚実
 選別が始まった 「世界の工場」狭まる門

 上海から車で約3時間の距離にある江蘇省の南通経済技術開発区。多くの工場が並ぶ一角に東京ディズニーランドの2倍以上、約200万平方メートルの畑が広がる。王子製紙が約2200億円を投じて年産120万トンの製紙工場を建設する予定地だ。本来なら年内に完成・稼働するはずだったが、畑には今なお青い葉っぱをつけた大根が並ぶ。

方針変更で難航
 2002年5月、「王子が中国生産を検討」との情報をインターネットで目にした南通開発区のトップ、顧螢所長(33)はすぐさま王子の上海事務所に乗り込んだ。工場へのバス路線を新設するなど手厚い優遇策の提案もあり、王子は強く請われる形で進出を決めた。
 ところが05年春、中央政府が年産30万トン以上の外資の製紙工場は合弁に限る方針を発表。単独出資での進出を予定していた王子は計画の練り直しを迫られた。王子側は「遠くないうち認可は下りる」(上海事務所)と強気だが、再申請の後も当局からのOKはまだ出ない。
 外資の生産拠点設立認可がなかなか下りないケースが相次いでいる。
▼仏ルノーは資本提携する日産自動車の中国側パートナー、東風汽車(湖北省)との合弁で06年に広州で乗用車工場を立ち上げる計画。だが「政府が承認を出さない」(業界関係者)ため着工のメドが立たない。
▼韓国ポスコが福建省で進める年産1千万トンの製鉄合弁事業。昨年7月、外資は筆頭株主になれないなどの内容を盛り込んだ鉄鋼政策が発表されたのを受けて、10月に修正計画を再申請した。
 鉄鋼、自動車、紙 ……。いずれも投資過熱と過剰生産が問題になった業種だ。王子が計画する印刷用コート紙の新工場も、中国全体の300万トン強という生産能力を一気に4割押し上げる。急騰していた鋼材価格は昨年春から下落に転じ、自動車は値引き販売が常態化している。並行して国内企業が疲弊した原因が外資の大量進出にあるとの議論が昨年から新聞紙上をにぎわし始めた。

「技術向上せず」
 政府の姿勢変更の背景にあるのは、単なる景気過熱の問題だけではなさそうだ。中国の輸出の6割、工業生産の3割は外資系メーカーが担う。世界でも例のない「外資大国」となった中で「中国にとって外資は本当に有益なのか」と本質的な存在意義を問う声も出始めた。
 国家発展改革委員会国有資産研究センターの高梁主任は2月に発表した論文で「外資導入は国内の技術向上に役立ってい
ない」と指摘した。外国メーカーとの資本提携が相次ぐ自動車産業でも、基幹部品から独自開発した国産車はまだ少ない。一方で「低賃金で労働者を働かせ利益を搾取する外資は断った方がまし」(呉瑞林・江蘇省副省長)などの批判もあがってい
る。
 象徴的なのは外資優遇税制の見直し議論だ。中国の企業所得税率は一般の国内企業が33%。外資は10%台。地域によっては一定期間全額免除される。中国の外資誘致の原動力ともいえる措置だ。だが財政省の楼継偉次官(50)は昨秋「優遇税制の撤廃は外資誘致や税制の連続性に影響を与えない」と発言。撤廃に前向きな姿勢を示した。
 四川省成都市には今なお欧米企業の進出が相次ぐ。ただしその中身は米IBMのコンピューターソフト開発製造拠点など。「IT(情報技術)産業の都」を目指すための優遇税制は知識集約型産業に狙いを絞っている。改革開放政策が打ち出されて約27年。「中国が必要な外資を選別する傾向が出てきた」(高島竜祐日中経済協会北京事務所所長)のだ。
 低廉な労働力だけをあてにした海外メーカーにとって「世界の工場」の門は狭くなりつつある。商務省によると05年の海外からの対中直接投資は実行べースで前年比0.5%減の603億2500万ドル。減少したのは1999年以来だ。役立つ外資を選別しようとする中国の方針が影響しているとの見方もある。
 「世界の工場」となった中国の変化は、世界の物価動向や産業配置を大きく変えた。その原動力となった外資優遇策が変われば、世界経済は再び変革の波に直面する。企業も「選ばれる企業を目指すのか、それとも中国以外に目を向けるか」という新たな選択を迫られることになる。


新華社 2006/3/3

Govt may raise electricity prices
http://news.xinhuanet.com/english/2006-03/03/content_4251973.htm

The government plans to raise electricity prices under a mechanism linking the charges to rising coal costs, the China Securities Journal reported Thursday, quoting an official at top generator Huaneng group.

The increase would be around 0.01 yuan (US$0.125) per unit, usually one kilowatt hour, the newspaper said.

In theory, the government has been
able to increase power tariffs since the beginning of 2005, to help generators absorb about 70 percent of increases in fuel costs.

But this would be the first rise since May, even though the coal market has been booming, and the government this year
abolished price caps for coal used in generating electricity.

Earlier this week, top power and coal producers missed a deadline to agree on coal prices for 2006 because
the power producers opposed increases they could not pass on to consumers.

Coal miners such as top player Shenhua Energy Co. and Yanzhou Coal Mining Co. want a 5 to 8 percent rise over last year's prices, while power producers such as Datang International Power Generation Co. and Huadian Power International Corp. are pushing for no change, industry sources said.

Power companies say higher fuel costs threaten their profits. However, the longer talks drag on, the less likely a significant price increase becomes because global prices for the fuel are expected to weaken, analysts say.

Despite the deadlock, coal supplies have continued based on last year's prices, ensuring the country's fast-growing economy is not starved of power.

The energy-policy setting National Development and Reform Commission recently submitted a draft report on the coal industry to the State Council, or Cabinet, which calls for the continued implementation of policies linking coal and power prices, the paper said.

Officials are also considering changes to the price control system for fuels like gasoline and diesel, but are concerned that higher energy costs might spark inflation or social unrest.

(Source: Shenzhen Daily/Agencies)


日本経済新聞 2006/3/30

韓国双竜自動車 中国合弁工場を断念
 研究拠点併設せず不認可に 技術の流出警戒

 韓国4位の双竜自動車は筆頭株主の中国・上海汽車集団と進めてきた中国での合弁工場の建設計画を断念したことを明らかにした。
工場の新規建設に研究開発拠点などの併設を義務づける中国政府が計画を認可しなかったためとしている。双竜自は中国戦略の根本的な練り直しを迫られる。
 双竜自は上海汽車と合弁で中国に完成車工場を建設し、スポーツ・ユーティリティー・ビークル(SUV)などを量産する計画だった。自動車産業の競争力強化を狙う中国は新しい自動車産業政策で、新規メーカーの設立には研究開発拠点とエンジン工場の設置を義務づけている。双竜自は中国への技術流出を警戒、研究開発拠点とエンジン工場の建設を計画に盛り込まなかった。
 合弁生産の道が閉ざされたことを受け、双竜自は中国に部品を輸出し、上海汽車の工場で組み立てるノックダウン生産や現地メーカーへ技術供与してライセンス生産するなど、他の方法を模索。中国市場への本格進出はあきらめないとしている。双竜自は2005年、
上海汽車が株式の約49%を取得、中国企業の傘下に入ったが「当社は韓国企業であり、技術流出は大きな問題だった」としている。上海汽車とはプラットホーム(車台)の共同開発など技術交流も進めている。


日本経済新聞 2006/12/22

外資優遇税制 中国、2008年にも廃止
 法人税25%程度に 国内企業の強化に軸足

 中国政府は外国企業に対する税制優遇を2008年にも廃止する。企業所得税(法人税)の税率は現在、多くのメーカーで10%台だが、25%程度に引き上げる。初めて黒字が出てから2年間は企業所得税を免除している制度も一定期間後に廃止する。業種などを問わずやみくもに外資を導入してきた経済政策を改め、国内企業の競争力の向上へと軸足を移す。
 24日に始まる全国人民代表大会(国会に相当)の常務委員会で企業所得税法の改正案を審議。来年3月の全人代の本会議で法案を可決し、08年1月から実施するとの見方が有力だ。
 
企業所得税率は33%が原則だが、外資系のメーカーや一部の商社などには優遇制度がある。全国五十数カ所にある中央政府指定の経済開発区では15%に下げ、200−300カ所あるとされる地方指定の経済開発区では24%に軽減している。
 改定後は国内企業、外国企業ともに約25%の税率を適用する見通し。一方で、ハイテク企業や環境保護に役立つ製品を作る企業などに適用する税率は10%台と軽くする。産業構造の高度化に向けて優遇税制の重点を変える。
 黒字が出てから2年間は企業所得税を免除し、その後3年間は税率を半分にする「二免三減」制度も08年1月から5−8年後にやめる可能性が大きい。
 作った製品を輸出に回す比率が7割を超す企業には現在、「二免三減」の期間が過ぎた後も10−12%の低い税率を適用しているが、改正後は廃止する見通し。巨額の貿易黒字で欧米と頻繁に通商摩擦が起きており、輸出を奨励する意味が小さくなったからだ。
 中国に進出している日系企業の間では「かねてうわさされていたことであり、時代の流れ。やむを得ない」(機械大手)という声が多い。「外資が差別されるのは困るが税率の統一には反対できない」(商社)とあきらめの声が漏れる。「二免三減」の適用を受けるために、08年1月までの間、一時的に外資の進出が増えるとの観測もある。
 企業所得税の外資優遇撤廃は税制の公平を掲げる財政省が約3年前から主張し、地方政府や商務省の反対で先送りされてきた。外資主導で高成長を続けたが、国内企業は力をつけてないとの声が強まり、政府の方針が固まった。人民日報は20日付で「法改正の機はすでに熟した」と報じた。

中国の外国企業に対する現在の企業所得税率
(メー力ー、一部の物流企業商社などが対象)
    「二免三減」 6年目以降
黒字化から
2年間
その後
3年間
中央指定の開発区   O%   7.5% 輸出比率7割超の企業など 10%
その他             15%
地方指定の開発区   O%   12% 輸出比率7割超の企業など 12%
その他             24%

改正の方向
 国内、海外企業とも:約25%の税率を適用(国内は現状33%)
 「二免三減」制度:08年1月から5−8年後にやめる可能性
 輸出比率7割超の企業などの特例:改正後は廃止
 ハイテク企業や環境保護に役立つ製品を作る企業:10%台


日本経済新聞 2006/12/26

移転価格税制 中国、運用を厳格化 見なし利益率5%適用通告

 中国政府が、中国に進出する外資系企業が本国へ所得を移すのを防ぐ「移転価格税制」の運用を強化している。広東省にある事務機の現地工場に対して5%の見なし利益率(売上高に対する利益を事前に想定した比率)を適用、それに見合った法人税を課すと通告し始めた。
 移転価格税制は企業が進出先で申告すべき所得を、本国の本社など海外関連会社に移転したと認定された場合に適用される。広東省内の複数の外資系事務機関係者によると、同省税務担当者が「北京の国家税務総局の決定で、事務機業界の工場では5%未満の利益率は認められない」と主張、過去にさかのぼって納税を求めているという。
 広東省にはリコーや富士ゼロックス、キャノンなど日系の事務機工場が集積している。中国政府は移転価格の根拠となる詳細なデータの提出を義務づける規定作りを進めるなど、「移転価格税制の運用を厳格化する方向にある」(外資系会計事務所)が、「5%と一方的に見なし利益率を通告してきたのは今回が初めて」(日系工場)という。


2006/12/29 日本経済新聞

中国、工業用地値上げ 地方の乱開発抑制 最低価格設定・納付金2倍

 中国政府は2007年1月から、地方当局が開発業者やメーカーに工業用地を払い下げる際の価格を引き上げる。売却時の最低価格を設定するとともに、地方が土地売却益の一部を国などに納める額も2倍に増やし、価格上昇を促す。投資過熱の原因の一つである地方の乱開発と耕地の減少に歯止めをかける。中国で工場を設ける企業にとっては負担増になる。

 工業用地の最低価格は全国を15に分類。最も高い上海市徐匯区などは1平方メートル当たりで840元(約1万2800円)になる。中国紙は今回の措置により「売却価格は40−60%高まる」との政府関係者のコメントを報じている。
 これまでは3分の1の自治体しか最低価格を定めていなかった。工場を誘致するため規定を破って工業用地をただで開発業者に提供する自治体もあった。このため中央政府が全国基準を決め、監視を強めることにした。
 農地を買い上げ、開発業者に売ってもうける市や県などの自治体が、売却代金の一部を中央政府や省に納める金額も2倍に増やす。納付額は全国を15に分類したうち最も高い地域で1平方メートル当たり140元にする。中央と省は納付金を耕地の保護や拡大などに使う。
 05年に市や県が土地の売却で得た利益が763億元なのに対し、納付金はその3分の1しかなく、地元がもうけすぎだと批判が出ていた。市や県は納付金の増加分の一部を土地の売り先に転嫁する見通しで、工場などの建設コストの上昇要因になる。
 地元政府が破格の安値で土地を売却してきた背景には財政収入増加という地域振興だけでなく、開発業者からの贈賄など政府担当者の"個人利益"も絡んでいた。今回の政策でコストを高めることで、粗悪品しか造れない工場の乱立を防ぐ。農家への補償を増やし、社会不安を防ぐことも狙う。

中国政府が決めた最低譲渡価格
  最低価格
単位:元/m2
 
1等   840 上海市の徐匯、静安など9区
2等   720 上海市浦東新区、北京市朝陽、崇文など8区
3等   600 広州市雲、海珠など6区、セン市福田など4区
4等   480 重慶市渝中など6区、大連市沙河口など4区、蘇州市虎丘など4区、
無錫市濱湖など4区、杭州市西湖など6区
5等   384 天津市塘沽区
 国土資源省資料より作成


低コス卜依存 中国、是正目指す

 中国がコストの安さだけを売り物に外資を呼び込む方針を見直し始めた。工業用地の売却価格の引き上げもその一環だ。典型的なのが税制。鋼材などを輸出する際に、増値税(付加価値税)を払い戻す額を9月から削減した。中国を輸出基地と思って進出した外資には打撃になった。
 外資系のメーカーに対する法人税の優遇措置撤廃も29日の全国人民代表大会(全人代)の常務委員会で事実上決まる。これまで法人税率が10%台の企業が多かったが、2008年にも税率が原則25%に高まる。中国政府の方針は過度の低コストに依存した経済構造の是正を目指したものだ。
 政府の指導で人件費も上がり始めた。今年だけで30近い省や直轄市が労働者に支払う最低賃金を引き上げた。東北部の黒竜江省のように64%上げた地域もある。
 工場労働者のほとんどは農家出身で、工場用地はもとは耕地。賃金と土地代の引き上げは農民の犠牲に支えられた成長を続けることが難しくなったことを示している。外資ばかりを優遇する法人税制にも国内企業から不満が高まっている。


2007/2/3 日本経済新聞夕刊

米、中国をWTO提訴 「企業に不当な補助金」 進出の日本企業にも影響

 米政府は2日、中国政府が補助金を使って不当に自国産業を保護しているとして同国を世界貿易機構(WTO)に提訴した。補助金の対象は鉄鋼やIT(情報・技術)など多様で、過去にWTOに提訴した2件の事例よりも業種や製品が大幅に増えた。補助金の一部は日米などの資本が入る合弁企業にも流れているとみられ、外資各社の対中戦略にも影響を与えそうだ。
 シュワブ米通商代表部(USTR)代表が同日、記者会見で明らかにした。中国の補助金政策が「米国の労働者と企業に損害を与え、不公平な競争条件をもたらしている」と強調。日本や欧州の当局との連携にも意欲を表明した。中国による知的財産権の侵害問題についても、WT0提訴の可能性を排除しない考えを示した。
 中国政府の補助金は国内企業の経営支援が狙いとされる。同国政府は鉄鋼など製造業へ格安で土地を払い下げたり、自動車など輸出型企業へ大型融資を実施してきた。昨秋、鋼材や繊維を輸出する際の付加価値税還付率を下げる実質増税に踏み切り、輸出増を批判する米国などへの配慮も見せた。しかし、その後も鋼材輸出の増加は止まらず、米国などから対策が不十分だと指摘されていた。
 USTRや商務省は中国政府が国内企業向けに適用している法人税の減税や低利融資、中国製品購入を促すための減税などが米国製品の参入を排除するための「不当な補助金」にあたると認定。中国側の対応が遅いためWTO提訴に踏み切った。
 補助金の恩恵を受けてきた中国内の企業の業種は鉄鋼、木材製品、紙、ITなど多岐にわたる。このうち約60%が外資系企業で、米国や日本などから資本が入った企業も含まれる。シュワブ代表は昨年春から「十分な証拠」をもとに中国に是正を促してきたと指摘。その上で「中国は補助金をなくすために何の行動も起こさなかった」と批判した。
 米国は2004年に中国製の半導体を優遇する付加価値税、06年には輸入自動車部品に高率を適用する関税で中国をWTOに提訴した。半導体分野では中国政府が優遇税制の廃止に応じ、和解が成立している。
 米政府が今回、WTO提訴に動いた背景には対中強硬論が勢いを増す米議会へめ配慮もうかがえる。米国の対中貿易は輸出の伸びが輸入の急拡大に追いつかず、年々赤字が膨らんでいる。年明けからの議会で多数を握った民主党を中心に、不均衡是正を政府に迫る声が強まっていた。


2007/3/16 日本経済新聞夕刊

中国首相「市場安定へ制度整備」全人代閉幕 外資優遇税制を廃止

 中国の第十期全国人民代表大会(全人代=国会に相当)第五回会議が16日午前、外資への優遇税制を廃止する企業所得税(法人税)法などを採択して閉幕した。温家宝首相は閉幕後の記者会見で、株式市場について「我々の目標は成熟した資本市場を建設することだ」と述べ、相場の安定に向けて制度整備を進める考えを表明した。外貨準備を運用するための新会社を設立する方針も示した。
 温首相は市場の安定のために「上場企業の質の向上と、公正で透明な市場システムの確立、市場に対する監督の強化とくに法制度の改善」の3つの改革を進めると強調。上場企業の監査を厳しくし、投資家に対する情報開示を拡充し、違法な投機的取引への取り締まりを強化する考えを示唆した。
 上海の株式相場については「市場の発展に注目しているが、健全性にもっと注目している」と述べ、市場の急拡大よりも相場の安定を重視する考えを示した。
 閉幕式で採択した
企業所得税法は外資系企業の多くで10%台に抑えてきた優遇税率を5年かけて撤廃。一方で政府が重要だと認めるハイテク企業は内外を問わず15%の低率を適用する。私有財産の不可侵を明記した物権法も採択。宅地や農地の使用期限を事実上、廃止し「私有地」扱いを認める。
 今年の経済・外交政策の基本方針を示す政府活動報告も採択した。2007年の経済成長率の目標を8%前後に設定。高成長を続け、都市部の失業率を4.6%以下に抑えることを目指す。

全人代の閉幕式で採択した法律、報告

▽政府活動報告
 ・2007年の経済成長率の目標を8%前後に設定
▽国民経済社会発展計画
 ・社会消費財小売総額(小売売上高)の伸び率目標を12%に設定
▽中央地方予算
 ・2007年度の中央財政の赤字を2450億元に抑制
▽物権法
 ・私有財産の保護を強化
▽企業所得税法
 ・内外資とも税率を25%に一本化
▽最高人民法院の活動報告
 ・裁判の質の向上や公正さの改善を進める
▽最高人民検察院の活動報告
 ・2006年に職務犯罪で立件した公務員は5年連続で4万人超

毎日新聞 2007/3/17

中国全人代閉幕 格差解消 険しく 指導部に危機感

 中国の温家宝首相は16日、全国人民代表大会(全人代=国会)閉幕後に行った内外記者会見で、格差に象徴される矛盾の解消
に向け、強い決意を示した。今秋の第17回共産党大会をはさみ、胡錦濤国家主席、温首相がそれぞれ現在の任期(5年)を終える残り1年間が社会のゆがみを是正する猶予期間といえるだろう。だが、胡錦濤指導部が強調する「中国の特色ある民主政治」の実現は容易ではない。
 「艦隊の速度は、その中の最も速い艦船で決まるのではない。最も遅い船で決まる」。温首相は人ロ13億の中国を艦隊に例え、弱者救済の意義を強調した。過去4年連続で2ケタの経済成長を続ける中国の勢いは無敵艦隊のようだが、その内実はぜい弱だ。
 「弱者、とりわけ農民の弱者は社会でかなりの比重を占める」(温首相)との現状認識の通り、収入だけではなく、環境汚染や教育機会の不均衡など弱者へのしわ寄せは拡大するばかりだ。
 今年の全人代では、私有財産の保護を明記した
物権法が採択され、成立した。「公有制」を基本としてきた中国に大きな転機をもたらす物権法は、胡指導部が権利意識を強める庶民の声を反映させたといえる。だが、「社会の公平と正義こそ社会主義制度の最も価値あるもの」(温首相)とする平等原則をさらに崩す危険性すらある。
 事態をさらに深刻化させているのが、弱者支援の過程にも介在する
公務員の腐敗だ。胡主席は全人代の分科会で「憂国意識を高めよう」と異例の呼びかけをした。公権力の不正行使は昨年1年間で公務員ら4万人以上が立件された汚職犯罪を生んだ。憂うべき状況との胡主席の指摘は危機感の表れでもある。
 温首相は来春、2期目に入るのは確実だが、調るい未来図を描く作業は難しい。第11期5カ年計画の初年度の昨年、環境保全の目標値を達成できなかったこともあり、今年は数値目標を定めなかった。目標が絵に描いた餅に終わるのを懸念し、指導部批判が高まるのを避けたとの見方もできる。
 温首相は「民主、法制、自由、人権、平等、博愛とは資本主義特有のものではない」と強調した。社会主義制度のもとで「特色ある民主政治」の実践を目指し、政治体制改革には慎重姿勢だが、志向が多様化する国民にどこまで支持されるかは不透明だ。

三農問題 根深く 戸籍改革また先送り

 16日に閉幕した中国全人代の政府活動報告で、温家宝首相は、発展から取り残された農村部への財政支出を大幅に増やし、農民の教育・医療などの機会確保と農業の生産性を同時に向上させ、都市部との格差を縮小していくと繰り返した。「農業・農村・農民」の「三農問題」解決が現政権の最優先課題であることを強調したものだ。
 だが、人口の7割を占める農民の生活改善を妨げる最大要因ともいわれる「戸籍制度」の改革は今回も先送りされ、問題の根深さが浮き彫りになった。
 中国の戸籍制度は、国民の戸籍を「都市住民」と「農民」に二分化し、戸籍の移動を墓本的に認めない。1950年代に毛沢東が国民の食糧配給や就職などの生活全般を管理する計画経済体制を行き渡らせるために確立した制度だ。
 経済の自由化が進んだ90年代以降、農村から都市部に流れ込んだ大量の農民出稼ぎ者は、都市の住民が受ける医療保険や年金、教育など政府による福祉の恩恵が受けられない。このため都市住民との所得格差が広がっている。
 政府は92年に戸籍制度改革の起草小委員会を作り、都市住民と農民の戸籍を統一し、戸籍の異動を自由化する草案を作った。
 しかし、都市部の政府に巨額の財政負担が生じる懸念から、埋もれたままだ。
 「中国青年報」が全人代開幕前にインターネットで実施した調査では、回答者の92%が戸籍制度の改革が必要と指摘。全人代と並行して開かれた国政助言機関の全国政治協商会議でも多くの委員から見直しの指摘が出たが、改革の道筋はまだ見えていない。


2007/4/12 日本経済新聞

鋼材輸出 中国、税還付を撤廃 半数の品目で 貿易黒字拡大歯止め

 中国政府は鋼材の輸出時に適用している増値税(付加価値税)の還付を、15日から半分強の品目で撤廃する。鋼材製品159品目のうち83品目で撤廃、残りは還付率8%を5%へ下げる。低価格鋼材の輸出急増が欧米との摩擦を引き起こしている点に配慮し、輸出への実質増税によって貿易黒字の弧大を抑えこむ狙いだ。
 中国では国内の流通段階で17%の増値税が課せられるが、輸出奨励のため輸出品の増値税は一定額が還付されている。鋼材の還付率は現在8%で、建設用など低価格鋼材は撤廃。ステンレスや特殊鋼など高付加価値製品は5%へ下がる。
 政府は昨年9月に鋼材の増値税還付率11%を8%へ下げたが、過剰能力を抱える鉄鋼各社の輸出拡大は続き、1−3月の輸出は1413万トンで前年同期比118%増えた。還付率の大幅な見直しで輸出急増に一定の歯止めがかかるとの見方もあり、輸出に依存する国内鉄鋼各社の整理統合が進む可能性もある。
 税関当局によると、1−3月の中国の貿易黒字は464億4千万ドルで、前年同期の約2倍。このまま黒字拡大が続けば、米国などから貿易構造改革へ向けた圧力が一段と強まる見通しだ。


日本経済新聞 2007/5/2           移転価格税制 中国、運用を厳格化 見なし利益率5%適用通告

移転価格税制 日中二重課税 初の解消
 中国進出2社に税還付 指導料など控除認める

 日中税務当局が、企業と海外子会社との取引に伴う税額を調整する移転価格税制に関連し、中国に進出している日系企業2社への二重課税の解消で合意したことが1日、明らかになった。中国に進出した海外子会社が国内の本社に「経営指導料」などを支払ったとみなし、これを費用として子会社の課税所得から差し引けると中国当局が認定した。税務リスクの軽減につながり、中国への投資を後押しする公算が大きい。
 今回の二重課税の解消については日中の税務当局が正式に合意し、取り扱いを協議してきた。今回判明したのは、中国・蘇州にある日本メーカーの100%出資子会社と、同・山東省にある日本と中国企業の合弁会社。両社はすでに日本と中国で納税を済ませているが、その後の協議で中国側が課税所得の減額に応じた。国税庁によると、中国が課税後の協議で減額に応じたのはほとんど例がないという。
 最終的に日中税務当局が合意したのは、「製造ノウハウ」や「経営指導」などの費用認定の方法。現地子会社が親会社の製造技術やノウハウなどの無形資産を使って部品などを生産した場合、その対価を親会社などに支払うのが通例。今回協議の対象となった2社はこうした無形資産の対価について、日本国内の本社に支払った費用として課税所得から差し引いて申告していた。
 中国当局はこれを費用として認めずにいったん追徴課税。両社はこれを不服として日中当局に申し立て、二重課税の解消を要請した。1日までに中国当局は一部を費用として認める一方、日本側はその分だけを課税所得と認定。両国が税還付することにした。
 移転価格税制を巡っては、日米欧で親会社に支払う費用の認定について国際的に統一基準を模索している。中国が課税基準を国際標準に近づけてきたことで、中国への投資リスクは低下するとの見方も出ている。
 中国への投資に際してはかねて税務の取り扱いが不安定で、日本企業などから不満が出ていた。中国は自国から他国に低い価格で輸出された製品などについては、「価格が低すぎる」として課税を強化する例も多いとされる。
 日本と諸外国が移転価格税制での二重課税解消を目的に取り組んだ相互協議は、2005年度末で237件と、4年間で1.5倍に増えた。企業は課税される前でも申告すれば、適正な親会社への支払額の調整を当局に要請できる。


2007/5/21 日本経済新聞夕刊                Blackstone 発表

中国政府 米投資会社に出資 30億ドル、外貨準備を運用

 企業買収を専門とする米大手投資会社のブラックストーン・グループ
(ニューヨーク市)は20日、中国政府から30億ドル(約3600億円)の出資を受け入れると発表した。中国政府による投資会社への投資は初めて。年内に予定しているブラックストーンの株式上場に合わせ、中国政府が近く設立する外貨準備の運用機関を通じ出資する。中国が高利回りを求めて世界一の外貨準備の積極運用に動き始めた。
 ブラックストーンは運用残高が約800億ドル
(約9兆6千億円)と世界最大規模で、主力の企業買収ファンドは、投資を始めた87年からの利回りが年30%ほどと業界最高水準にある。年内にニューヨーク証券取引所への上場を目指しており、上場後の時価総額は推計で400億ドル(約4兆9千億円)。中国政府は今後、ブラックストーン株を4年超保有するが、株式保有比率は全体の10%未満にとどめるという。
 中国の外貨準備は昨年末で2005年比3割増の約1兆700億ドル
(約130兆円)と日本を上回って世界一だが、運用先は米国債に偏っており、利回りは年4%程度にとどまる。このため株式・債券からヘッジファンドまで投資する中東、シンガポールや韓国のように、外貨準備を運用する専門会社を設立する準備に入っている。
 買収ファンドヘの出資は、リスク分散と投資利回りの向上を目指して運用を多様化するのが狙い。中国政府が高リスク商品にも資金を振り向けることで、株や商品、不動産などさまざまなリスク資産の価格にも影響が出そうだ。
 一方、日本の外貨準備残高は約9千億ドルある。短期・長期の米国債への投資が中心で、通貨や運用対象の分散化を求める声もある。

ブラックストーン・グループ
 米国最大の投資会社。1985年にピーターソン元商務長官らが創業。運用残高は約800億ドル
(約9兆6千億円)と世界最大規模で、企業買収や不動産投資などを、幅広く手掛ける。年内をメドにニューヨーク証券取引所への上場を目指している。


May 20, 2007 Blackstone

Chinas State Investment Company to Acquire
Non-Voting Minority Stake in Blackstone

The soon to be established state foreign exchange investment company (State Investment Company) in China and The Blackstone Group L.P. (Blackstone) announced today that the State Investment Company has agreed to make a $3 billion investment in Blackstone in the form of non-voting common units. The purchase price per common unit will be 95.5% of the public offering price in Blackstones planned initial public offering. The number of non-voting common units purchased by the State Investment Company will be reduced if necessary so that the State Investment Companys equity interest in Blackstone immediately following the planned initial public offering remains under 10%. The State Investment Company has agreed to hold its investment in Blackstone for at least four years.
Lou Jiwei, head of the working group of the State Investment Company, said:
We are very pleased to be able to make the State Investment Companys very first investment in such a well-respected firm as Blackstone.
Stephen A. Schwarzman, chairman, chief executive officer and co-founder of Blackstone, said: We are pleased to welcome the State Investment Company as an equity owner of our firm. We are proud to be part of such a significant transaction for both of our organizations.
The $3 billion sale of non-voting common units to State Investment Company will close concurrently with Blackstones planned $4 billion initial public offering.

About State Foreign Exchange Investment Company
The Chinese Government is establishing an investment vehicle with respect to the foreign exchange reserve of the People
s Republic of China (PRC). This state foreign exchange investment company (formal name yet to be determined) will report directly to the State Council of the PRC.

About The Blackstone Group
The Blackstone Group is a leading global alternative asset manager and provider of financial advisory services. The Blackstone Group is one of the largest independent alternative asset managers in the world. Its alternative asset management businesses include the management of corporate private equity funds, real estate opportunity funds, funds of hedge funds, mezzanine funds, senior debt funds, proprietary hedge funds and closed-end mutual funds. The Blackstone Group also provides various financial advisory services, including mergers and acquisitions advisory, restructuring and reorganization advisory and fund placement services.


日本経済新聞 2007/5/29

中国、油田開発相次ぐ 海外の技術・資金で成果
 渤海湾では10億トン級

 中国で大型油田が相次いで見つかっている。海外企業との技術協力や投資拡大などの努力が奏功。中国北部の渤海湾では過去30年の間で最大級となる埋蔵量10億トンの油田などが発見された。原油の輸入依存度が4割を超えた中国にとって頭打ちになった国内生産の拡大は安全保障の面でも重要なテーマになっていた。相次ぐ新油田発見は、自給率の低下に歯止めをかける上で一定の効果がありそうだ。

輸入増批判かわす狙いも
 今月初め、渤海湾の大型油田を発見したと発表したのは中国の石油最大手、中国石油天然気集団(CNPC)。中国の専門家は、近くの鉱区も合わせると国内需要の約60年分にあたる200億トンになるかもしれないとの見通しを示している。
 CNPCは黒竜江省の大慶油田で、深さ3千メートル以下に1億トン以上が埋蔵される可能性がある新たな原油の層も見つけた。中国石油化工(シノペック)は渤海湾で約700万トンの油田を見つけた。
 中国の石油会社はノルウエーやカナダなどの外資とも協力して、油田を探す技術を高めてきた。大手3社は2007年に06年より3割多い合計約3350億元(約5兆3千億円)を投じて、国内外で油田・ガス田の探査や開発に力を入れる計画。こうした成果が表れたともいえる。
 06年の原油輸入は1億4500万トンで05年比14%増えた。中国の輸入急増が世界の原油価格を押し上げているとの指摘もある。国内での相次ぐ油田発見は輸入急増を抑えるのにある程度の効果はありそう。ただ今後の具体的な生産計画が煮詰まっていない今の段階では、これらの油田が国内生産をどの程度押し上げるのか、具体的な効果は見えない。
 一方で「政府の思惑がエネルギー関係の公表数字に影響を与えることがあり、どこまで正確なのかわかりにくい(日本の石油関係者)との見方もある。昨春、シノペックが四川省で見つけた中国で最大級とされる天然ガス田。新華社は一時、5千億ー5500億立方メートルが埋蔵されるとの見通しを伝えた。当局は最近、3560億立方メートルだったと予想を下回る数字を発表している。
 国内埋蔵量が豊富であることをアピールすれば、世界の需給逼迫観測を後退させ、原油価格の上昇抑制にもつながる。「中国はスーダンなど政情不安国にカネをつぎ込んで原油を買いあさっている」との批判もある。国内油田の発見を積極的にアピールする背景に、中国の輸入増に対するさまざまな批判をかわそうとの思惑をかぎ取る向きもある。


中国内で最近発見された主な原油・天然ガス田(中国紙などより作成)

場所 企業
(グループ)
埋蔵量の見込み
2007 渤海湾 CNPC 原油10億トン
黒竜江省 CNPC 原油1億トン以上の可能性
新彊ウイグル自治区 シノペック 不明
四川省 シノペック ガス1000億立方メートル
渤海湾 中国海洋石油 不明
2006 渤海湾 シノペック 原油700万トン
新彊ウイグル自治区 CNPC ガス1500億立方メートル
黒竜江省 CNPC 原油2億5000万トン
渤海湾 中国海洋石油 原油5000万トン
四川省 シノペック ガス3560億立方メートル

 


2007-09-29 Xinhua

China's state forex investment company debuts

 China Investment Corporate Ltd. (CIC), the country's long-awaited state forex investment company set up to make better use of its huge foreign exchange reserve, was inaugurated on Saturday.

    "We will maintain transparency of company operations on the premise of safeguarding our commercial interests," said Lou Jiwei, the company's newly-appointed board chairman, who is also deputy secretary-general of the State Council, or the cabinet.

    Analysts said CIC's debut was a major move China had made to increase the value of its 1.4-trillion-dollar forex reserve, the world's largest.

    The CIC, with a registered capital of 200 billion U.S. dollars, is a solely state-owned company, according to company sources.

    The state-owned Central Huijin Investment Corporation was merged into the new company as a wholly-owned subsidiary company, the sources said.

    The company will mainly pursue combined investment in overseas financial markets, and it will also take over existing businesses of the Central Huijin, which has injected capital into domestic financial institutions to support their reforms, such as shareholding reforms of China's state-owned banks, said the sources.

    The CIC will operate in a completely commercial way despite its governmental backup, the sources stressed, explaining that "it will deal with its forex investment business independently by persisting in the principle of separating government functions from company management."

    It will try to maximize the proceeds via long-term investments within a range of acceptable risks, the sources said.

    "As a state investment institution, the company will work to ease the pressure of rising forex reserve and absorb market liquidity," said Li Yang, director of the finance research institute of the Chinese Academy of Social Sciences (CASS).

    The same views were echoed by Zhuang Jian, a senior economist of Asian Development Bank China Resident Mission. He said China's central bank would be able to shake off some hedging pressures through buying forex with returns from special treasury bonds.

    The Ministry of Finance (MOF) will keep pouring forex into the new company following issuances of special treasury bonds, according to company sources.

    China's legislature approved the special issuance of 1.55 trillion yuan treasury bonds for the new investment company in June.

    So far, the ministry has issued more than 700 billion yuan (93.3 billion U.S. dollars) of special treasury bonds, with 600 billion yuan to the central bank and 100 billion yuan targeting the general public. It will issue another 100 billion yuan of treasury bonds by the end of this year.

    "The establishment of CIC is regarded as a landmark in deepening the reforms of China's financial system," said the company's board chairman.

    Other board members include two executive directors Gao Xiqing and Zhang Hongli, five non-executive directors -- Zhang Xiaoqiang, Li Yong, Fu Ziying, Liu Shiyu and Hu Xiaolian, two independent directors Liu Zhongli and Wang Chunzheng, and one director who will be elected from the company's employees.

    Gao Xiqing is now vice-chairman of the National Council for the Social Security Fund. Zhang Hongli and Li Yong are vice-ministers of finance. Zhang Xiaoqiang and Wang Chunzheng are vice-ministers of the National Development and Reform Commission (NDRC), the nation's top economic planner. Fu Ziying is assistant to minister of commerce. Liu Shiyu is a central bank vice-governor, Hu Xiaolian head of the State Administration of Foreign Exchange (SAFE) and Liu Zhongli was former finance minister.

    Gao Xiqing was also appointed the company's general manager and Zhang Hongli, Yang Qingwei, Xie Ping and Wang Jianxi were appointed as deputy general managers.

    Yang Qingwei is currently department head of fixed assets investment with the NDRC. Xie Ping is now the general manager of the Central Huijin Investment Corporation and Wang Jianxi a vice board chairman of the Central Huijin.

    Hu Huaibang, Commissioner of Discipline Inspection with the China Banking Regulatory Commission, took the post as chief supervisor.

    "The company's principal purpose is to make profits," said the CASS researcher, "the appointments will favor a good outcome as most of the incumbent executives are experienced investment professionals and policy makers", he said.

    In May, the new company, still in preparation, made its first investment in non-voting shares, valued at 3 billion U.S. dollars, in the U.S. private equity firm, the Blackstone Group.

    "The company would help China realize the resource allocation on a global scale and reduce the economy's reliance on export," said the researcher.

    China's exports rose by 27.6 percent in the first half of 2007,exceeding imports growth of 18.2 percent, lifting the trade surplus to 112.5 billion dollars.


FujiSankei Business i. 2007/9/12

週内にも国有投資会社…中国紙、外貨準備の運用本格化

中国紙、中国証券報は11日までに、外貨準備を運用する国有の投資会社が、週内にも正式に設立される見通しになったと報じた。社名は「中国投資有限公司」で、国務院副秘書長(中央政府の副官房長官に相当)の楼継偉氏や、全国社会保障基金理事会副理事長の高西慶氏ら実務派が経営幹部を務めるとしている。

 同紙は他にも経営幹部として米証券大手ゴールドマン・サックスのアジア地区責任者、胡祖六氏らの名も挙げた。中国は同会社の投資先第1弾として、米投資銀行のブラックストーン・グループに対し、約30億ドル出資することを決めている。

 中国の外貨準備高は昨年、日本を抜いて世界トップの座にあり、6月末で1兆3326億ドル(約153兆円)に達したと発表されている。新華社電によると、マクロ経済政策を統括する国家発展改革委員会の張暁強副主任はさらに、7月末段階で1兆4000億ドルに近づいたと述べている。

 米国債への投資が中心だった中国は、外貨運用の効率化や分散投資が課題となっており、投資会社の設立で「国家ファンド(SWF)」として海外での運用やM&A(企業の合併・買収)などによる収益増をめざす。

 中国政府は1兆5500億元(約23兆円)の特別国債を発行して外貨準備2000億ドルを中国人民銀行(中央銀行)から調達し、投資会社の資本金に充てる方針だ。このうち第1期の6000億元については、すでに発行済みとなっている。


日本経済新聞 2007/12/6

中国、金融引き締め強化 来年方針決定

 中国共産党・政府は5日までの3日間、来年の経済政策の基本方針を話し合う中央経済工作会議を北京で開き、金融引き締めを一段と強化する方針を決めた。不動産などのバブル懸念に加え、消費者物価上昇率も約11年ぶりに6%を超え、インフレ圧力が強まっているためだ。利上げの加速や、銀行に融資量を抑えるよう指示する「窓口指導」の拡大で対応する見通しだ。
 新華社電によると、会議には胡錦濤国家主席、温家宝首相を含め、10月中旬の共産党大会で新たに選出された9人の政治局常務委員が全員出席。金融政策の基本方針を中立に近い「穏健」から、インフレ抑制重視の「引き締め」に変えることを決めた。「マクロ経済調整で金融政策はより大きな役割を果たすべきだ」との認識で一致。インフレ抑制に向け、銀行融資の総量と増加ぺースを抑える方針を決定した。
 ここ10年続いた「穏健」な金融政策方針の下でも実際の政策運営には利下げから利上げまでかなり幅があった。今年に入ってからはすでに5回の利上げを実施するなど引き締め色を強めており、今回の決定でこうした傾向が一段と強まる。ただ、
企業の資金繰りが逼迫し、景気の失速懸念も出るような場合には柔軟に政策を見直す構えとみられる。
 会議では、歳出を絞り込まない「穏健」な財政政策と引き締め方向の金融政策を通じて、景気過熟とインフレの抑制という二つの主要な目標の実現を目指す方針も確認した。

中国の経済政策・重点8項目

・経済の安定的で比較的速い発展を保持する
・農業と農村経済の発展を強化する
・技術革新の能力を高め、産業構造の高度化を推進する
・省エネと廃棄物削減を進める
・積極的、確実に都市化を進める
・改革を全面的に深化させ、科学的発展観と調和のとれた社会を推進する
・開放型経済の水準を高め、対外開放の新局面を切り開く
・庶民の生活改善に力を入れ、社会の調和を促進する

主眼はインフレ抑制 物価高騰に庶民が不満
 中国共産党・政府が5日に打ち出した金融引き締め強化の主眼はインフレ圧力の緩和にあり、バブル懸念が強まる資産価格の抑制も狙っている。物価や住宅価格の高騰に、庶民の不満が高まっているためだ。弱者重視の調和のとれた社会の構築を掲げる胡錦濤政権にとって、見過ごせない状況になっていることの反映だ。
 2007年の国内総生産(GDP)は5年連続で2ケタ成長になるのが確実。景気過熱の懸念は強まっている。ただ中央経済工作会議では来年の経済政策の重点8項目の中で「経済の安定的で比較的速い発展を保持する」を挙げており、成長率の大幅な鈍化につながる急激な引き締めは意図していないとみられる。
 今回の引き締め強化方針は、10月中旬の共産党大会で2期目に入った胡錦濤政権が掲げる弱者重視の路線にも沿ったものだ。10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比6.5%上昇。庶民が最も多く口にする豚肉など食品価格の上昇が最大の原因だ。住宅問題も政権への不満につながりかねないほど深刻になっている。
 中国人民銀行(中央銀行)は5日午後、会議を開き、マクロ調整を強化する方針を確認した。今後は利上げや預金準備率引き上げのぺースを速める可能性がある。銀行業監督管理委員会は共産党大会以降、一部業種向けの融資に限っていた「窓口指導」を融資の総量規制に拡大しており、今後さらに規制を強めるとの見方も多い。


日本経済新聞 2008/8/1

中国 繊維の輸出抑制策緩和 製品への税還付率上げ

 中国政府は31日、衣料品など繊維製品の輸出抑制策緩和を発表した。製品輸出時に受ける税金払い戻しの率を引き上げる実質減税を8月1日から実施する。貿易黒字削減を狙って輸出抑制策を強化してきたが、繊維産業は人民元高や人件費上昇も加わり業績が悪化。景気下支えへ政策見直しを余儀なくされた。

 財政省と国家税務総局の発表によれば、一部の織物や衣料品などを対象に付加価値税の一種である「増値税」(税率17%)の還付率を現行の11%から13%に引き上げる。繊維製品の還付率は2006年9月に13%から11%に引き下げられており、約2年ぶりの見直しとなる。
 繊維製品は中国の輸出額の1割強を占める重要産業。だが、主要輸出先である米景気の低迷や急激な人民元高で輸出競争力が低下。08年1−6月の衣料品および付属品の輸出額は前年同期比3.4%増の499億6千万ドルで、伸び率は前年同期(21.7%増)より大幅に減速した。
 人民元は今年に入ってからだけで米ドルに対し約7%上昇。さらに原油高など原料高もコスト上昇要因となっている。7月初旬には温家宝首相や李克強副首相ら政府首脳が江蘇省や浙江省の繊維産地を視察。業界内には近く増値税の還付率が見直されるとの期待が高まっていた。
 今回の繊維産業支援に続き、業績悪化が深刻な他の輸出産業や中小企業に向けた支援策が打ち出される可能性もある。
 繊維業界側も政府が支援の姿勢に転じたことで一息ついた格好だ。還付率の引き上げ幅は2%にとどまるため、現実には「人民元高による競争力の低下や原料費上昇をカバーできる水準ではない」(大手商社幹部)との声もあるが、政策変更を追い風に、高付加価値製品へのシフトなどを急ぐとみられる。
 一方、銀や純度が高い亜鉛、環境負荷が大きい一部化学品などについては8月1日から輸出時の増価税払い戻しをやめる。環境汚染物質の輸出防止の一環とみられる。


中国失業率 6月末4% 輸出産業「救済」狙う 政府、失業者増を警戒

 中国政府が輸出規制の緩和に踏み出した背景には、米経済の減速で苦境に立たされた輸出産業を「救済」する狙いがある。中国の高成長をけん引してきた輸出産業の経営悪化を放置すれば、失業の急増につながりかねないからだ。
 インフレ抑制に向け金融引き締め政策はすぐに変えられないため、政府は当面、今回のように財政政策を通じて景気下支えを図る構えだ。
 中国人事社会保障省は31日、今年6月末の都市部の登録失業者数が835万人で、失業率は昨年末と同じ4.0%だったと発表した。
 中国の失業率は2003年末の4.3%をピークに低下し続けてきたが、ここにきて下げ止まり感が出ている。外需の減少で景気の減速傾向が鮮明になってきたためだ。
 中国では毎年2千万人の新規労働力が生まれている。これらの人々に職をつくり社会不安を防ぐには、成長の維持が欠かせない。中国政府が今回、貿易政策を輸出の抑制から刺激にかじを切った理由はここにある。
 共産党・政府内では、金融引き締め政策の見直しと人民元相場の上昇抑制を求める声も日ごとに強まっている。しかし金融政策の転換はインフレの加速を招く恐れがある。今回の財政政策による景気刺激策の背後には、党・政府内の「物価重視派」と「景気重視派」の政治的な妥協の産物という面も見え隠れする。


2008/8/25 asahi

中国、止まらぬ賃金上昇 「所得倍増計画」に企業悲鳴

 中国での賃金上昇が止まらない。「世界の工場」として多くの国の企業が進出する沿岸部の都市では今年、最低賃金が前年比で約2割上昇。広東省は12年までに所得を2倍にする計画を打ち出した。人民元高や原材料の高騰も響き、企業の経営環境は厳しさを増している。

 7月3日、広東省深セン(センは土へんに川)の北部にある日本の中小企業向け工業団地「テクノセンター」に、1枚の通知が届いた。深セン市の労務当局からだった。

 「今月から最低賃金を月900元(約1万4千円)とする」


 6月までの最低賃金は750元。一気に20%の引き上げだ。深セン市政府は04年から毎年、最低賃金を引き上げており、この3年でほぼ2倍になった。「上がるのは覚悟していたが、まさか2割とは」。テクノセンターの佐藤征洋社長はため息を漏らす。

 賃金の上昇は、消費者の購買力を底上げし、企業にとってもプラス効果が大きい。ただ、コストの削減に追われる中小・零細企業には負担となってのしかかる。

 テクノセンターには、自動車や機械の部品などをつくる49社が入っている。いずれも大企業からのコスト削減要求に苦しむ中小企業だ。入居企業の一つ、プラスチック加工業の日彩化工は、原油高の影響で赤字に転落した。そこに、今回の賃上げ。川副哲社長は「月1500万円の人件費が約300万円増える。苦しいよ」と訴える。

 深センの経済特区内は7月に中国で初めて最低賃金が1千元の大台に乗った。上海も4月、840元から960元に改定された。7カ月前に12%引き上げたばかりで、上昇ペースが速まっている。

 さらに広東省は7月初め、個人所得を12年までに07年の倍にする計画を明らかにした。08年から少なくとも3年間は、最低賃金を毎年、1割以上引き上げるという。

 上がっているのは最低賃金だけではない。「高温手当」という新たな制度が、今年から各都市で始まった。6月から10月まで、気温が33度以上の職場だと月150元、33度未満なら100元を支払う制度だ。

 広州でメガネレンズを製造するHOYAも、6月から約400人の従業員に高温手当を払い始めた。現地法人の北田信孝社長は「工場は冷房がきいているけど、全員に100元払っている」という。

 賃上げの最大の要因は、物価の高騰だ。中国の消費者物価指数の上昇率は2月から3カ月連続で8%台。肉など食料の値上がりが激しく、「物価上昇以上に給料を上げないと、実質減収になる」(上海の精密機械メーカー)という事情がある。

 賃金への不満は、ストライキにつながることもある。

 広東省東莞で複合コピー機を製造するコニカミノルタ。2月末、4800人の従業員のうち約500人が昼食後に職場放棄を始めた。職場放棄は翌週にもあり、規模は1千人近くに膨らんだ。

 現地法人の鈴木誠一社長は「会社が史上最高益という情報をネットで容易に入手できるようになり、待遇改善を求める動きにつながりやすい」と話す。

 05年から20%以上切り上げられた人民元、天井知らずの原材料高……。台湾企業でつくる深セン台商協会の黄明智会長は「今年に入って、深センだけで台湾企業の約8%、約150社が閉鎖、またはベトナムなどへ移転した」と話す。

 台湾や香港の企業には、家具やおもちゃ、靴製造などの労働集約型が多い。総コストに占める人件費の比率が3〜4割と高く、急激な人件費上昇は経営にとって致命的だ。

 ただ、日本企業の工場が閉鎖に追い込まれた例は少ない。自動車や精密機械など付加価値の高い商品が多く、コストに占める人件費の比率が10%前後と低いためだ。

 しかし、テクノセンターの佐藤社長は、人件費の上昇がさらに続いた場合への危機感を募らせる。「これからは日本と同じように機械化を進め、なるべく人を使わない工夫も必要になってくる」


日本経済新聞 2008/11/18

ミャンマーの石油パイプライン 中国が経営権 インド洋に足がかり

 中国南西部の昆明からミャンマー領土を横断してベンガル湾に抜ける石油と天然ガスのパイプライン計画で、ミャンマー軍事政権が中国に経営権を付与したことが17日、分かった。パイプラインを設置・運営する企業への中国側の50.9%出資を認可し、このほど中国政府との間で合意文書を作成。中国はかねて模索していたインド洋への南下戦略に大きな足がかりを得た形だ。
1948年の独立(当時ビルマ)後、ミャンマーが天然資源など主要産業の経営権を他国に与えるのは初めて。中国は商業・軍事の両面で模索するインド洋への南下の経由地としてミャンマーを重視しており、今後はミャンマー軍事政権の中国傾斜と呼応して両国の接近がさらに加速する可能性がある。
 ミャンマーが中国と共同で建設するのは中東からタンカーで輸送した石油と、ミャンマー沖で採掘した天然ガスをそれぞれ中国国内へ最短距離で輸送する2本のパイプライン。中国は中東などからの石油・ガスの輸入を主導できるようになり、特に中東からの石油はマレー半島南西部のマラッカ海峡を経由して輸入する必要がなくなり、完成後は調達日数を7日間短縮できるという。
 日本経済新聞が入手した合意文書によると、ミャンマー西部のベンガル湾に面したチャウピュー近郊のマデ島にガス集荷基地と石油タンカー専用港を建設し、中部マンダレー近郊、シャン州ラーショーなどを経由して中ミ国境の町ムセから昆明へと結ぶ計画だ。天然ガスは韓国の大宇グループを中心にベンガル湾で開発するガス田「A-1」「A13」から送る。
 事業主体となる企業には、中国石油天然気集団(CNPC)が50.9%を出資。ミャンマー側は国営石油ガス企業(MOGE)などが49.1%を保有する。総事業費は石油パイプラインが15億ドル、天然ガスは10億4935万ドル。

周辺国、強まる警戒感 ミャンマー 国際批判回避狙う
 新パイプライン建設を巡る合意は「南進」を探る中国と、人権問題などで国際批判を浴びる中、孤立回避へ中国を後ろ盾としたいミャンマーの利害が一致した結果といえる。中東へのアクセス改善によるエネルギー安全保障の強化とともに、軍事面でもインド洋進出を目指す中国にはインドや東南アジアが警戒を強めており、地域情勢に波紋を広げる可能性もある。
 中国は資源・軍事安保に外洋進出が必要とみて、海軍力の増強に動いている。中国南部の海南島に原子力潜水艦を配備したとの情報もあり、領海内の防衛を重視した「沿岸型」から、洋上進出能力を高める「近海型」の海軍への転換も図っている。
 今回の合意に基づくパイプラインが稼働すれば、警備などの目的で中国が軍事的にもベンガル湾やインド洋に進出する余地が生まれるとの見方もある。そうした中、インドがミャンマー西部の国境地域で河川輸送の改善に向けた両国共同事業を強化するなど東南、南西アジアでは中国けん制を狙う動きも出ている。

2008/11/20 straitstimes.com

China to Myanmar pipelines
Oil and gas pipes will let China bypass Malacca Strait to access neighbour's crude

China will start building oil and gas pipelines through Myanmar next year, which will enable it to bypass the Strait of Malacca for crude oil imports from the Middle East, state media said yesterday.

The pipelines running into China's south-western Yunnan province will also strengthen the country's access to the rich energy reserves in Myanmar, reports said.

Yunnan will start constructing the pipelines in the first half of next year. Mr Mi Dongsheng, head of Yunnan's Provincial Development and Reform Commission, was quoted by the China Daily as saying that the move was part of a plan to spend 72 billion yuan (S$16.1 billion) on energy projects next year.

Running from the Myanmar port city of Kyaukphyu on the Bay of Bengal to Yunnan's provincial capital Kunming, the pipeline for gas will cost US$1 billion (S$1.53 billion), and the one for oil US$1.5 billion, Japan's Nikkei newspaper reported.

State-owned China National Petroleum Corporation (CNPC), China's biggest oil producer, will hold a 50.9 per cent stake in the project, which it co-manages with the other stakeholder, Myanmar Oil & Gas Enterprise, the paper said.

In May, CNPC said it would jointly explore for oil and gas in Myanmar and the country's seabed with South Korea's Daewoo International, but gave no details.

Analysts said that in addition to Yunnan, the other provinces and regions in south-western China would also benefit from the pipelines.

The pipelines had been discussed in Yunnan, as well as between the province and Myanmar, for at least five years, but were put on the back-burner. The reason the project has been revived could be China's drive to boost its economy to withstand the fallout from the global financial crisis.

China's demand for oil has also expanded rapidly in recent years to fuel its double-digit economic growth, with imports coming close to 200 million tonnes last year, up more than 10 per cent from 2006, the China Daily said.

'Geopolitically, having alternative routes for energy supplies into China is attractive,' said Mr Jason Feer, a Singapore-based analyst with Argus Media, an energy market research firm.

'The Strait of Malacca is a very busy waterway. It's a quite narrow one. There's always been concerns that it could be disrupted because of terrorism or piracy.'

Around 80 per cent of China's oil imports, from areas such as the Middle East and Africa, are currently transported through the strait, earlier Chinese media reports said.

But some analysts doubt the Myanmar project will take off, as the investment is so huge that it may be a better option to continue depending on the Malacca Strait.

The major sea route has maintained a good security record in recent years, although imports would take at least seven days longer to reach China.

Few Western companies invest in Myanmar because of its poor human rights record and continued detention of Nobel Peace Prize laureate Aung San Suu Kyi, which has led to a broad range of United States and European sanctions.

China, typically wary of supporting or imposing sanctions, is one of Myanmar's few diplomatic allies, and has shown no reservations about investing in its military-ruled neighbour, eyeing its natural gas, oil, minerals and timber.