日本経済新聞 2007/4/12

エネルギー 日中企業6件合意
 新日石と石油最大手CNPC 燃料電池などで協力

 12日午前に開催された日中エネルギー協力セミナーで、日本と中国のエネルギー関連企業や研究機関が6件の合意文書に調印した。
 新日本石油は中国最大の石油会社、中国石油天然気集団(CNPC)と長期協力の覚書を交わした。燃料電池やコジェネレーション(熱電併給)の技術協力を拡大。海外での石油・天然ガスの開発についても交流を進める。両社はこれまでも石油製品や液化石油ガス(LPG)の融通などで協力関係にあり、これを拡大する。
 Jパワー(電源開発)は中国の発電会社・中国電力投資集団と風力など再生可能エネルギーの導入・開発で協力する。九州電力と住友商事は、発電会社の中国大唐集団と内モンゴル自治区での風力発電所建設で協力する。
 このほか、国内の石炭発電装置のメーカーなどで組織する石炭エネルギーセンターが中国電力企業連合会と中国側の既設石炭火力発電所の効率向上や環境改善で協力する。日中両国のエネルギー研究機関が省エネについて共同研究することも決まった。


日中企業・研究機関間で12日結ばれた案件

日本側  中国側  内容
新日本石油 中国石油天然気集団  新エネルギー分野・海外資源開発などで協力強化
Jパワー 中国電力投資集団  再生可能エネルギーの開発などでの協力拡大
九州電力、住友商事 中国大唐集団  再生可能ネルギーの共同開発
国際協力銀行、石炭エネルギーセンター 中国電力企業連合会  中国の既設石炭火力発電所の効率化、環境対策促進
日本エネルギー経済研究所 中国国家発展改革委  省エネルギー政策の共同研究
三井物産 中国海洋石油  LNGスポット取引の売買基本契約

 

2007/4/12 新日本石油

中国石油天然ガス集団公司との長期的協力に関する覚書締結について

 当社(社長:西尾 進路)は、本日(4月12日(木))、中国最大の石油会社である中国石油天然ガス集団公司(総経理:蒋 敏(ジャン ジエミン)、以下「CNPC」という)と、これまでの長期にわたる協力関係、両社のもつ優位性を最大限に発揮し、共に発展するべく、長期的協力に関する覚書を締結しましたので、お知らせいたします。

 当社とCNPCとの関係は、1973年の中国連合石油有限責任公司(CNPCの海外事業部門、以下「チャイナオイル」という)との大慶原油取引にさかのぼり、近年では、2004年7月にチャイナオイルと石油製品の受託精製契約を締結し、毎年契約数量を拡大するなど、さらに良好な関係を築いております。

 今後、両社は、本覚書の締結を機に、各分野での協力案件を順次検討し、さらなる長期的な協力関係を構築してまいります。

1.締結日(場所):2007年4月12日(於:ホテルニューオータニ(東京都千代田区))

2.調印者:   当社   会長   渡 文明
    CNPC   総経理   蒋 

3.協力範囲・内容:

 (1)原油・石油製品・液化石油ガス(LPG)貿易の拡大
 (2)海外での石油・天然ガス資源開発およびエネルギー安全保障における交流・協力強化  
 (3)石油・液化天然ガス(LNG)・LPGの共同輸送および備蓄施設の管理・活用  
 (4)石油精製・石油化学分野での技術交流
 (5)サービスステーションの経営管理および潤滑油の生産・販売
 (6)安全・環境保護および省エネルギー分野における協力関係の強化
 (7)再生可能エネルギー・新エネルギーにおける協力関係の強化
 (8)人材の養成および交流の強化

<現状のCNPCグループとの業務提携(参考)>
1.
受託精製契約(契約先:チャイナオイル)
(1)契約数量: 5万バーレル/日 (年間約291万KL)
    契約数量推移 (単位:万バーレル/日)

年度 04年 05年 06年 07年
数量  2  3  4  5

(2)契約期間: 2007年4月 〜2008年3月(1年間)
(3)受託場所: 新日本石油精製鰍フ製油所
          (室蘭、仙台、根岸、大阪、水島、麻里布)
(4)受託原油: 中東原油

2.
LPG年間購入契約(契約先:チャイナオイル)
(1)契約数量: 年間10万トン程度
(2)契約期間: 2007年4月 〜

3.
石油化学製品(プロピレン)の輸出(契約先:チャイナオイル)
(1)契約期間: 2007年4月 〜
(2)対象製品:プロピレン(自動車のバンパー、衣装ケース、紙おむつに使用される高吸水性樹脂、アクリル繊維などの原料)

4.高付加価値型SS実験店の展開(契約先:中国石油天然ガス股?有限公司、以下「ペトロチャイナ」)
 2006年1月、北京市内のサービスステーション(SS)においてペトロチャイナとの合作で高付加価値型SS・Dr.Driveサービスを開始した。ペトロチャイナが所有・経営するSSにおいて当社の技術指導のもとにDr.Driveを展開し、高付加価値型SSの事業性・有効性を検証するもの。

5.冷凍機油・絶縁油の事業展開(契約先:ぺトロチャイナ)
 ペトロチャイナの主力油田であり、主力製油所である「克拉瑪依(カラマイ)石油化工廠(中華人民共和国・新疆ウイグル自治区)」にて2003年度から高品質の冷凍機油および変圧器用絶縁油を製造し、当社が中国国内の日系および現地の冷凍・空調用圧縮機メーカーや変圧器メーカーに販売している。

販売実績 (単位:千KL)

03年 04年 05年 06年
数量  0.2  4  8  10

 


平成19年4月12日 九州電力

中国大唐集団公司及び住友商事株式会社との「再生可能エネルギー協力枠組協定」の締結について

 当社は、本日、中国・温家宝首相の来日に合わせて開催された「日中エネルギー協力セミナー」において、中国大唐集団公司(以下、大唐集団)及び住友商事株式会社(以下、住友商事)と再生可能エネルギーの開発に関する協力枠組協定を締結いたしました。

 当社は平成17年より大唐集団及び住友商事と中国・内蒙古自治区における風力発電プロジェクトを共同で検討しております。今回は、これを含めより広い観点から協力の枠組について協定するものです。

 当社といたしましては、中国の国有5大発電会社の1社である大唐集団及び住友商事と協力枠組協定を締結することにより、中国における再生可能エネルギーの開発を通じ中国社会への貢献ができるものと考えております。

【協定の概要】

○協力の内容:中国国内外における再生可能エネルギーの開発及び技術や知見の情報交換に関する協力
           (※排他的な協定ではない)

○締結日:平成19年4月12日(木曜日)

○締結者:当社 藤 光昭 副社長
       大唐集団 若愚(ザイ・ルォユゥ) 総経理
       住友商事 中井戸 信英 副社長

参考 大唐集団の概要
    ・会社設立 2002年
    ・本社所在地 北京市
    ・従業員数 80,000人(2005年)
    ・発電設備容量 4,166万kW(2005年)
    ・売上高 8,830億円(2005年)
    ・当期利益 586億円(2005年)


2007年4月12日 石炭エネルギーセンター/国際協力銀行/中国電力企業連合会

中国既設石炭火力発電所のリノベーション促進事業で日中協力

 財団法人石炭エネルギーセンター(中垣喜彦会長、JCOAL)と国際協力銀行(篠沢恭助総裁、JBIC)は、本日の日中エネルギー閣僚政策対話のオープニングにおいて、日本国甘利経済産業大臣、中国馬国家発展改革委員会主任立会いの下、中国電力企業連合会(趙希正理事長、CEC)と中国における既設石炭火力発電所のリノベーション(効率性向上及び環境改善)事業の促進に向けて協力する覚書(MOU)を締結した。
 この事業は、CEC が取組む中国の既設石炭火力発電所の効率性向上と環境改善に向けた設備診断や改修に対して、JCOAL が日本側参加企業を通じて助言、解析、評価等の支援を行うもので、JBICは改修事業のCDM化や同事業に対する金融面での支援等にかかる検討を行う。
 中国では、2006年からの第11次5ヶ年規画で厳しい省エネ目標や環境汚染低減目標を設定しており、既設の中規模(20〜30万kW級)の石炭火力発電所の効率性改善や環境改善が極めて重要な課題になっている。これまで新設石炭火力発電所の建設ラッシュが続いていたが、電力の需給アンバランスが縮小してきたことから、中国の電力各社は既設の石炭火力発電所の改善に力を入れ始めている。
 中国の主要エネルギーである石炭の半分以上は石炭火力発電所で使用されており、石炭火力発電設備容量は2005年で3億kW を越え、中国全体の発電設備容量の7割を占めている。その石炭火力発電設備のうち90% は40万kW 未満(10〜40万kW が800基以上ある)の既設石炭火力で、運転開始から10年以上経過しているものが多いことから、高効率化と環境対策が喫緊の課題になっている。中国電力各社は、高効率化と環境汚染物排出低減を政府に約束している。
 中国の石炭火力発電所の熱効率は平均で34.6%(2003年:2005中国電力年鑑)と、日本の石炭火力の41.1%(同)に比べて6.5ポイント以上低く、日本の高度な発電設備診断能力、改善技術による協力が期待されている。
 CEC の調査によれば、既に70件以上のリノベーションの希望が寄せられており、中国側のこの事業に対する技術及び資金面での支援に対する期待は極めて大きい。
 (注)中国の30万kW クラスの既設石炭火力発電所でタービンのローター交換等の改修を実施した場合に、約5%程度の効率アップで年間の石炭使用量が約10万トン削減でき、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の発生量は約20万トン削減できることが期待される。
 なお、本事業のCDM化については(株)三菱総合研究所(谷野剛代表取締役会長)が全面協力することになっており、既に発電所の改修に係る方法論をCDM理事会に提案している。

【用語解説】
<中国電力企業連合会>
 1988 年中国国務院が批准して設立した非営利団体。
 理事長 趙希正、副理事長 謝振華、孫玉才
 会員会社:2大送電会社及び5大電力を含む1,440 社
 主要業務内容
  電力産業の政策的研究、政府への政策立案、立法などの提言、産業発展計画と構造改革プランの作成、
  電力産業の規則・規定の作成、国際協力、技術導入の推進、国内シンポジウム、国際フォーラム等の主催等。

<CDM(Clean Development Mechanism)>
 京都議定書目標を負う国(先進国及び旧ソ連・東欧諸国)が、目標を負わない国(途上国)において温室効果ガス排出削減プロジェクトを実施し、その結果生じた排出削減量をクレジットとして自国に移転することができるスキームのこと。

【中国のデータ資料】
中国の石炭火力発電設備基数比率(10万kW以上:2004)
  10〜20万kW未満  337基
  20〜30万kW未満  209基
  30〜40万kW未満  285基
  40〜80万kW未満  47基

中国の石炭火力発電設備容量比率(10万kW以上:2004)
  10〜20万kW未満  19%
  20〜30万kW未満  21%
  30〜40万kW未満  45%
  40〜80万kW未満  15%

中国の石炭火力発電設備容量比率(2004)
    〜10万kW未満  40%
  10〜20万kW未満  12%
  20〜30万kW未満  13%
  30〜40万kW未満  27%
  40〜80万kW未満  8%

● 2004年の中国の総発電設備容量:44,238万kW
   石炭火力合計容量:32,948万kW
   そのうち、10万kW以上合計容量:19,971万kW
   10万kW未満合計容量:12,977万kW

●中国の石炭火力発電所の発電端平均熱効率は、2003年現在34.6%。現在の日本の平均効率(41.1%)より6.5ポイント低い。
  (以上、2005 中国電力年鑑より)