(平成11年12月19日) 論壇

http://www.rondan.co.jp/html/news/agf/cartel.html
味の素国際カルテル事件

 

 1996年に味の素は飼料添加物リジンに関して米司法省と 1000万ドル (日本円に直すと約10億円) の罰金で司法取引が成立しているのだが、今年10月末にはシカゴ連邦地裁で量刑が確定するはずであった。

 米国内法に詳しい弁護士の話によると、普通一般的に言えばよほどのことがないかぎり、つまり判事の心証を害さなければ司法取引通りの罰金で結審するものであるそうだ。
 ところがこのシカゴ連邦地裁の意向でこの量刑が
3ヶ月後に延期されたのだ。当然理由は明らかにはされていないが当方の調査によると以下のことが考えられる。

 第
1番目が現地で任務にあたっていた弓本氏 (役職名等不明) が個人的にも罰金日本円に直し約二千数百万円が課せられすでに納められているのであるが、実質的には味の素が負担していたということが明らかになってしまったのではないかということである。

 日本企業的な考えで言えば当然弓本氏自身に負担さすべきものでもなく、一サラリーマンに払えるものでもない。当然なんらかの方法をとり会社が支払っている。しかしこれは前出の弁護士によれば米国内においては法廷侮辱罪となり、カルテルなど問題にならないほどの重大な犯罪となるとのことである。

 米の司法当局に漏れてしまったことについてもいろいろとり沙汰されている。 この時の解決に向けて任にあたっていたのが例の味の素利益供与事件で逮捕された野口氏なのである。 野口氏が一部始終を同じく一緒に逮捕された石神氏に資料提供し、石神氏の米国内人脈を通じリークしたのではないか
(味の素社員による) とも噂になっているのである。

 第
2番目が海外事業の最高責任者である山田専務 (当時) に対する米司法省の取り扱いにある。
 この事件に関し日米犯罪人引渡し協定に基づき米側から召喚状が出されたが、日本の司法当局、あるいは日本政府が拒否したがために米司法省及びシカゴ地裁判事の心証を害したと言うものである。 当然今でも山田氏が米国に入国しようとすれば、即刻身柄を拘束されてしまう状況にあるのだ。

 第
3番目が新たなカルテル疑惑である。
 これは本年
10月に味の素つまりグルタミン酸ソーダという化学調味料 (味の素側はイメージが悪いということでうまみ調味料と表現している) の販売で国際的な価格協定を結んでいるとして米国のユーザー企業から現地法人を含め4件の訴訟が提起されているのだ。

 味の素は
1995年に前記の飼料用添加物リジンのカルテル事件では翌年に米司法省に対し有罪を認めており、それ以来やめたとしているのだ。今は民事訴訟の段階ではあるが米司法省による刑事訴訟となると味の素にとって大変な問題となってくるのだ。

 つまりは再犯となるだけに米司法省による強制捜査ということもありうる状況であると言えるのだ。

 以上
3点によるものだとすると味の素は大変な窮地に追い込まれたことになる。

 米国内に限らず国内も含めて商売の常識
(前出味の素社員) という味の素の体質からかんがみてヨーロッパでも同様の訴訟が (パルスィートという人工甘味料に関して) 提起されていたり、国内での異常な公正取引委員会との接待等の癒着もうなづけると言うものだ。

 ここで今回のカルテル疑惑についてもう少し背景について調査を進めると、提訴されたのは武田も含まれている。武田は本年
9月にやはり米司法省にビタミンカルテルで摘発されているのだ。

 その際米司法省の発表によると
「武田はグルタミン酸ソーダについて調査に協力している」 となっている。 前出弁護士によると米司法省は積極的に調査協力するものには寛大な措置を取っており、カルテルに参加していても、当局の認知前に申告すれば刑罰を軽くする場合が多いそうである。

 うがった見方かも知れないが武田はビタミンカルテルの際全てを報告して罪の軽減を図ったのではないかともとれる。 そうなると当然味の素にも米司法省による調査が入っていると考えられる。

 こうした場合味の素は前科がありしかも米司法省にたいし全面協力すると言いながら、しかも江頭社長が
「もうやめた」 といいながら続けていたことになる。

 
10月末の原告側の訴状の中には提訴の直前までカルテル行為は続いていたと明記されているのだ。 本年になってとくに米司法省は厳罰姿勢を強めており,これからの動きに眼を離せない。

 司法取引による罰金
1000万ドルと言ってもこれだけではない。 原告側への損害賠償金、原告側弁護団費用、味の素側弁護団費用と数百万ドルがかかっているのである。 当然これらの費用は国内においても株主代表訴訟の対象ともなってくるのだ。

 さらに味の素は今回も山田氏以下に責任を押し付け味の素本体経営陣は知らなかったでとおすつもりなのであろうか。

 そうすると思い起こさせるのは利益供与事件だが、いまだ公判中の石神氏によれば石井弁護士、鳥羽、稲森、清水の各氏、メルシャンからは鈴木氏、山縣氏、村上氏らを証人申請し、会社の犯罪であることを立証する予定であるということだ。
 そうなると前例を見ない企業犯罪の一端が暴かれるかも知れない。

 その石神氏だが前作
「汚れ役」 に引き続き社内から提供された資料をもとに次回作を執筆中とのこと。 春先には出版されるようなので公判との絡みもあり注目せざるを得ない。

 しかしこの
「汚れ役」 も前記のカルテル事件もほとんどのマスコミが取り上げていない。 膨大な広告料を武器に自己に不都合な記事を押さえ込む味の素が悪いのか、金に目がくらみ真実を報道できないマスコミがだらしないのか、癒着状態の日本の警察はさておいて米司法省と石神氏に期待するということなのであろうか。

 そのだらしないマスコミがらみで味の素が思わず墓穴を掘ったようである。

 今夏
200万部をこえるべストセラーとなった 「買ってはいけない」 週間金曜日刊だが味の素が事実を示せと抗議をしたところ、1972年頃に阿佐ヶ谷で味の素を混入しての暴力バーの昏睡強盗の記事やフィリッピンでの食用犬の殺害に味の素がつかわれている現地の記事などを逆につきつけられてしまったようである。

 いくら金にものを言わせテレビコマーシャルの量をふやしても、批判は高まるばかりである。