日本経済新聞 2002/4/26

中国がダンピング調査 石化・紙各社は戦々恐々   需給調整の輸出に暗雲

 石油化学や印刷用紙のメーカーが中国によるダンピング(不当廉売)輸出調査の行方をかたずを飲んで見守っている。日本製に安値輸出の疑いがかけられる事例が急増しているからだ。ダンピングの被害があったと判断されれば、中国などアジアヘの輸出拡大で需給を調整してきた国内市況にも弱材料となる。
 中国がダンピング調査中の品目は3月末時点で石化や紙、鋼材の12品目。昨年12月の世界留易機関(WTO)加盟前後から急に増えている。うち日本製の調査中品目は塩化ビニール樹脂(信越化学工業、東ソーグループ、鐘淵化学工業など)、ナイロン原料のカプロラクタム(宇部興産、三菱化学)、塗工印刷用紙(日本製紙)など5品目。塩ビ工業・環境協会の田代円会長は「なぜ塩ビが対象になったのか、全くわからない」と戸或いの表情をみせる。
 仮に中国が日本からの安値輸出で同国の産業に損害があったと認定すれば、
高率関税が最長5年課せられ、輸出が難しくなる。輸出減少で日本市場の需給が崩れる公算も出てくる。
 各社はダンピングに当たらないと応訴、事実関係の立証作業に入った。調査対象期間は内外の市況が低迷した昨年1年間が中心。中国側は、日本の国内価格より安値で輸出したj事例があり、中国企業が販売額の減少など損害を受けた可能性がある、とみているもよう。
 アジア価格の指標となる塩ビ樹脂の東アジア向け輸出価格(運賃込み)は昨年12月には1トン当たり410ドル前後と年初に比べて3割近く下がった。これに対し、国内市場では年初比2割前後の下落にとどまる。価格下落のピッチの違いを中国側が廉売とみなした可能性がある。
 日本勢は廉売の事実の有無よりも中国の産業
損害を及ぼしたとの見方を強く否定する。中国塩ビ樹脂市場は2001年に約490万トンの需要があり、うち200万トンを輸入でまかなう構造。輸入のうち日本製の比率は27%前後。田代会長は「需要に応じて輸出している。輸出が止まれば中国の加工産業が打撃を受ける」と説明。2001年の中国向け輸出量はほぼ横ばいとみている。
 中国の塩ビ需要は今後、窓枠や上下水管など建材を中心に「年率12%前後で拡大する」(日野清司・大洋塩ビ社長)と見る市場関係者もいる。 塗工紙は中国内需要が年間160万トンとされ、約100万トンを輸入に頼る。
 中国が反ダンピング措置を検討する背景にはけん制により国内産業の育成を急ごうとする思惑がある。損害の認定は「難しい」(経済産業省)ため、紙、石化ともに判定がどちらに傾くか予断を許さない。
  「国際需給が緩和する事態になりかねない」(日本製紙)との懸念から日本の製紙各社は3月積込からアジア向け輸出の1トン60ドル(約9%)値上げを表明している。

 


2002/4/27 日本経済新聞

政府、中国の相次ぐ対日ダンピング調査に懸念表明

 中国が化学品などで日本製品を対象に相次いでダンピング(不当廉売)調査を開始したことへの懸念を日本政府が公式に表明し始めた。先の世界貿易機関(WTO)の会合で「進行中の調査がWTOルールと矛盾しない内容となることを期待する」とけん制した。昨年12月の中国加盟後、通商ルール順守の問題を取り上げたのは初めてだ。
 日本が疑問視したのはプラスチック製品の加工に使う無水フタル酸など化学品3品目と、光沢のある印刷用コート紙に関する中国の対応。今年2月以降、日本の国内価格に比べて不当な安値で対中輸出しているのではないか、と矢継ぎ早に調査着手を発表している。
 中国側には競争力で劣る国有企業を保護する狙いがあるとみられる。WTO加盟に伴い、ダンピング価格差の算定方法、安値での輸入品流入による国内業界の損害認定のやり方などを明示した新たな「反ダンピング条例」を制定したものの、日本を含む既存加盟国側には「乱用につながりかねない規定も存在する」とWTO協定違反の可能性を指摘する声がある。

 


化学工業日報 2002/5/15

ダンピング調査、中国は適正対応を  経産省が要請  

 経済産業省は中国のアンチダンピング調査について適正な対応を強く求めた。13日、経済産業省で開催された中国国家経済貿易委員会との第七回定期協議のなかで、とくに急増している化学品のアンチダンピンク調査問題に触れ、今野秀洋経済産業審議官が「用途の違いなど実態を吟味したうえで調査に乗り出してほしい」と要請した。中国国家経済貿易委員会との定期協議は、日本側が今野経済産業審議官、中国側が謝旭人国家経済貿易委員会常務副主任がそれぞれ議長を務めて行われたもので、経済構造改革問題などとともにコピー商品被害などの知的財産権問題などが話し合われた。
 このなかで、とくに中国のアンチダンピング調査への対応について日本側から強い改善要請があった。 中国のアンチダンピンク調査が急増、WTO正式加盟後も複数の調査開始が決定されている。とくに化学品が集中的に調査対象となっており、日本側はカプロラクタムを例にあげ、「ナイロン原料とタイヤゴム向けの用途があり、あるとすればそれぞれ被害の状況は違うはず。調査対象の分類などが荒く、きちんと吟味し判別してほしい」と求めた。


日経 2002/5/28  

中国、消費大国の予兆 沿海部4億人市場 高額品伸びる

 中国が人口4億人の沿海部を中心に、消費ブームに沸いている。上海や広東省では、起業家や外資系に勤める人たちが乗用車やマンションなど高額品を購入し始め、海外旅行などサービスにもおカネをかけるようになっている。内陸部はなお発展が遅れているが、「消費大国」の予兆に日本や欧米の企業も争って参入している。

 「ポロ」完売
 「初回生産分はすべて予約で売り切れました」。独フォルクスワーゲン(VW)と上海汽車工業との合弁企業、上海大衆が4月に販売した小型車「ポロ」を扱う上海大衆のディーラーの鼻息は荒い。マイカー時代の到来を狙った1400tのポロは、欧州でもVWが3カ月前に発売したばかりの最新モデルだ。価格は12万7500元(約200万円)ー14万8千元(約235万円)。それでも4月だけで3千台余りを売り切り、年内に3万台を販売する。
 
 広州本田汽車(広州ホンダ)は今年の中国での年間生産台数を当初計画の5万5千台から4千台引き上げる。1999年から生産している「アコード」とともに4月から生産を始めたミニバンの「オデッセイ」の需要が当初予測をはるかに上回ったことが背景だ。
 
 「注文から納車までアコードで約1カ月、オデッセイで3カ月かかる」(広州郊外の特約店)。同社は富裕層の多い沿岸部を中心に特約店数を50店増やし、160店にする。上海市商業委員会によると、3月の自動車販売台数は5600台で前年同期比52.5%増えた。

 マンション熱
 消費者によるマンション取得も過熱している。北京ではマンションの建設ラッシュが起きている。天安門広場の北東約15キロの一等地、東直門周辺では、7万平方メートルの敷地に27棟の高層マンションを建設する「使館新城」(総戸数1360戸)やショツピングセンターとの複合施設「東方銀座」(同602戸)などがモデルルームを開設した。  
 来年8月完成予定の「東方銀座」は1平方メートル当たりの単価が1万3千元。北京市内でも指折りの高額マンションだが発売1ヶ月で約200戸が成約した。マンション取得に引っ張られ、住宅関連消費も堅調で、松下電工は大連市にホットカーペットなどを製造・販売する合弁会社を設立する。

 旅行もブーム
 消費は旅行などサービスヘも移っている。2年前から政府が始めた年3回の連続1週間の大型連休が定着、国家観光局によると、今年の5月1−7日の労働節(メーデー)の旅行者数は前年同期比18%増の8710万人だった。  
 上海の大手旅行会社、新亜国際旅行社の何文青副総経理は「今年は予算が1人当たり3千元(4万8千円)余りで友人で誘い合って東南アジアを中心に海外旅行客が急増している」と話す。香港では、宝石や金など高額品を購入する中国人旅行者が多い。香港観光協会の調べで、昨年中国からの訪問者1人当たり消費額は5169香港ドル(約8万2千円)と米州を抜きトップになった。

新興「白衿族」が主役 外資勤務 高い収入    

 中国の旺盛な消費を支えているのは、外資系企業に勤めるビジネスマンやOLなど「白衿族(中国語でホワイトカラー)」と呼ばれる新富裕層だ。1979年からの改革開放政策により、外国企業は上海や広東省など沿海部を中心に約40万社が進出している。外資系企業の方が政府や国有企業に勤めるよりも給与がはるかに高い。職種によって異なるが、「30代で平均月収が5千元(8万円)程度」(地元派遣会社)。上海でも平均の年間可処分所得は日本円換算で約21万円に過ぎない。外資系企業などの賃金はけた違いに高く、月収百万円を稼ぐ人も一部で出始めている。  
 中国で続々誕生する起業家たちも高額消費の一部を担う。2001年末の中国の私営企業数は約203万社。上海では今年3月末の私営企業数は、18万8千社を超え、上海の総企業数の半数を占めた。夫婦なら共働きするのが一般的な上、物価水準が低いために生活費の負担が小さく、まとまったおカネがたまる。こうした消費者は日ごろから無駄な消費をせずに、自動車など高額商品におカネをつぎ込む傾向がある。

全体の水準は日本の60年代
 13億の人口を抱え、年7%の経済成長を続ける中国は「世界の市場」として期待されている。経済指標から浮かび上がる中国全体の経済水準は1960年代の日本のレベルだが、上海はすでに日本でマイカーや家電がブームとなった75年の水準に達している。  
 2001年の1人当たり国内総生産(GDP)は中国は905ドルと日本で東京五輪が開かれた64年(847ドル)と同水準。都市住民のエンゲル係数は200年に初めて40%を割り込み、60年の日本の38.8%にほぼ並んだ程度だ。その中で上海や広州の1人当たりGDPは約4500ドルと、中進国の水準を超える。自動車業界では、1人当たりGDPが4千ドルを超すとモータリゼーションが始まるとされ、今まさにこの現象が起きている。
 ただ、内陸部をみると、最も貧しい地域の1人当たりGDPは上海や広州の10分の1に満たない。発展が遅れている農村部の1人当たり平均純収入は年額2366元(約3万8千円)にすぎず、地域格差はさらに広がっている。

中間層に厚み 上海では6割 
  上海社会科学院の王冷博士の話  

 上海は10年連続2ケタ成長を続け、たとえば上海市民の6割が中間層と呼べるようになった。中国では物価は安いし、基本的な生活の消費は問題ない。自動車や住宅の高額消費が伸びている背景には、ローンが普及したこともある。手付金として10万元支払う程度の消費に対して、今の市民は不自由に感じないほど余裕が生まれている。今年も公務員の給与を増やす予定で、収入減への不安もない。こうした消費傾向は、少なくともあと5年は続くだろう。

 


 

大前研一 「チャイナ・インパクト」から

朱鎔基による三大改革
 ・国有企業改革
   目標:赤字国有企業を3年で立て直し
   結果:
国有企業の赤字解消がほぼ達成された 
 ・金融改革
   目標:赤字国有企業への貸付けなどで累積した
不良債権処理
   結果:まだ不確定要素があるものの、改善スピードが向上
 ・行政機構改革
   目標:行政の腐敗の根絶、行政のスリム化
   結果:中央政府のスリム化はほぼ達成された

・・・世の中には、いまだに「やがて中国の崩壊がはじまる」と言って喜んでいる人たちがいる。だが、私に言わせれば、彼らの頭は3年は古い。つまり、ちょうど国際信託会社がバタバタ倒れ、外資が逃げている時代の認識で、「中国は中央集権で、共産党の一党独裁、沿岸部と内陸部に大きな格差があって、腐敗が蔓延している」という発想から一歩も先に進んでいない。
 とはいえ、3年前を振り返れば、当時は私も中国が栄えるわけはないと思っていたし、そういうことを書いたこともある。中国に対しては極めてネガティブだった。3年前の中国は明らかにそうだったのだ。どう分析してみても、繁栄の方程式から見放されていた。賃加工で安く生産しているうちはいいのだが、これはいずれどこかで行き詰まる。そういう危倶を私も持っていた。現に、99年の広東国際信託投資公司の破産、2000年の大連国際信託投資公司の破産の際には、華僑が金を引き揚げ始め、逃げ出していた。この時、まさに中国は崩壊するのではないか、と私も思った。
 ところが、現在は状況が一変した。朱鎔基革命で地方の自立化が進んだため、今の中国に中央集権という概念は当たらない。共産党一党支配も当たらない。当然だが幹部の腐敗は依然としてある。江沢民の親戚である福建省副省長が逮捕されたように、腐敗はまだそこいらじゅうに存在している。しかし、その腐敗が国全体を覆いつくしたり、あるいはアヘン戦争の時のように麻薬が蔓延したり、危険視された法輸功が中国全体を揺るがしたり、ということはもはやありえない。なぜなら繁栄している沿岸部は、われわれが思っているほど抑圧されていないからだ。皆自由に、どんどん前向きに事業に取り組んでいる。
 今の中国は、さながら「中国株式会社」という感じなのだ。かつて日本も同じように呼ばれたが、発展に向けた取り組みは今の中国のほうが徹底しているだろう。・・・・


朱鎔基による三大改革は本当に成功したのか?  

2002/6/6 毎日新聞

巨龍 その実像 第二部ゆらぐ
 実態見えぬ不良債権

 「5年後には不良債権比率を15%以下に下げる」。3月28日、東京都内で講演した中国人民銀行(中央銀行)の戴相竜行長(総裁)は、不良債券問題の改善に自信をみせた。4大国有商業銀行の貸し出しに占める不良憤権の割合は、公式発表では日本の銀行の約4倍に当たる25%。だが、専門家は「少なくとも40%以上」(国際金融筋)と分析する。
 原因は貸出先の大半を占める国有企業の不振にある。国有企業ごとに社員のための学校、病院など関連機関を抱える。改革を一気に進めれば大量め失業者を生み出し、社会不安を招く。逆に、改革が遅れれば不良債権がふくらむジレンマがある。 
 政府は98年に2700億元(4兆3200億円)の資本を4大商業銀行に注入。99年には不良債権を買い取る資産管理会社を設立して約1.4兆元(22兆4000億円)の債権を移す対策をとった。だが、「借りた企業がカネを返さない」(経済産業研究所の関志雄上席研究員)ため、新たな不良債権が次々と発生する。「年6〜7%の高度経済成長が続く限りたいした問題にはならない」との指摘もある。裏返せば、
成長率の鈍化は中国に致命傷となる。 

 


日本経済新聞 2003/9/19

強まる人民元切上げ論 輸出攻勢に日米欧反発

 ドル相場に事実上固定している中国の人民元相場の切り上げを求める声が日米欧各国で強まっている。20日にアラブ首長国連邦のドバイで開く7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議でも議題になる見通しだ。中国の存在感の高まりに比例して強まる人民元の切り上げ論の焦点を探る。

Q なぜ切り上げ要求が強まってきたの?
A 安価な中国製品の輸出攻勢が根底にある。競合する日本や米国の製造業者の経営が次第に悪化し「中国製品の価格が安いのは人民元が中国経済の実力に比べて安すぎるため」との批判が強まった。人民元が安いほど中国製品のドル換算の価格が下がり、米国や日本の製品よりも価格競争力が高まるからだ。
 現に日本では昨年度、中国からの輸入額が初めて米国を上回ったほか、米国も対中貿易赤字が昨年に初めて1千億ドルの大台を突破した。
 最初に人民元問題を提起したのは日本だ。昨年以降、塩川正十郎財務相が中国を念頭に「一部の国では事実上、為替が中央銀行の統制下にある」と主張。来秋の米大統領選をにらむ米国政府も今夏、有力な支持母体である米産業界の要求に沿う形で人民元批判を強め、切り上げ論が一気に盛り上がった。

Q 貿易黒字が膨らめば通貨に上昇圧力が働くはず。人民元はどう抑えているのだろう。
A 一般に貿易黒字が拡大すれば、輸出で稼いだ外貨を自国通貨に換える需要が増えるから、自国通貨高になりやすい。ところが人民元相場は1997年秋以降、1ド=8.28元前後でほとんど動いていない。中国通貨当局は毎日、人民元の対ドル相場を前日終値の上下0.3%以内に抑えるように制限する方針を示しているだけで、表向きは固定していない。だが実際には、中国企業が出したドル売り・元買いの注文分を、中央銀行である中国人民銀行がドル買い・元売り介入で吸収し、相場水準を維持しているんだ。
 人民元の取引時間は上海市の外為取引センターが開く午前9時半から午後3時半まで。参加者も中国資本の銀行と中国国内の外資系金融機関などだけだ。取引高は昨年時点で1日平均4億ドル弱で1千億ドルを超えるニューヨークや東京などの主要市場に比べて極端に少ない。実質的に中国当局の管理下にある。

Q 切り上げは実現するのか。
A 日米欧は20日のドバイでのG7財務相会議で、中国に人民元の切り上げを促す方向で一致する可能性が高い。全米製造業者協会(NAM)は中国の為替政策で米国内の製造業者が被害を受けたとして、米政府に世界貿易機関(WTO)への提訴を要求する意向を示すなど、日米欧の切り上げ要求は今後さらに強まりそうだ。
 だが中国が切り上げ要求をすぐに受け入れる可能性は低い。人民元の切り上げで輸出や外国資本による中国進出が停滞すれば、中国国内の雇用不安に拍車をかけかねない。中国では2006年ころまで農村部から都市部への労働者の大量流入が続く見通しで、失業者の急増は社会不安を招く恐れがある。
 それでも貿易黒字を抱え、外貨準傭が膨らむ一方の“独り勝ち”を続ければ、各国から反発が強まるのは必至。みずほ総合研究所中国室の細川美穂子研究員は「中国の国内情勢を考えると、切り上げ受け入れまでに3年程度かかるのではないか」と指摘する。各国との綱引きは長期戦になる公算が大きい。


人民網 2003年10月14日

輸出税還付システム改革に関する決定 国務院
   http://j.people.ne.jp/2003/10/14/jp20031014_33146.html

国務院は13日、現行の輸出税還付システム改革に関する決定を発表した。

改革の原則は(1)新たな未還付金を出さない(2)これまでの未還付金を清算する(3)還付システムを改善する(4)財源の共同負担化を進める(5)改革を推進する(6)発展を促進する――の6点。これまでの未還付金は中央政府が財源を負担し、改革後は新たな未還付金を出さないようにするとともに、中央政府と地方政府が財源を共同負担する新システムを整備する。また貿易システム改革を進展させ、輸出製品の構成を改善し、輸出効率の向上を図っていく。

改革の具体的な内容は次の通り。

1 輸出税還付率の引き下げ
 製品ごとに還付率を調整し、国が輸出を奨励する製品については現行の還付率のまま、または小幅な引き下げとする。一般製品は適正な還付率まで引き下げ、国の輸出制限品目、一部原料製品は大幅な引き下げ、あるいは還付廃止とする。調整後の還付率は17%、13%、11%、8%、5%の5段階とし、2004年1月1日から実施する予定。現在の輸出製品構成から見て、還付率は平均3ポイント前後下がる見込み。

2 中央政府による財政支援を強化
 2003年以降、中央政府は輸入増値税と消費税の税収増加分を、優先的に輸出税還付金に充てる。

3 中央政府と地方政府が輸出税還付金を共同負担する新システムを整備
 2004年以降は2003年の還付実績を基準とし、基準を上回る還付を行う場合には、中央政府が75%、地方政府が25%を負担する。

4 貿易システム改革の推進と輸出製品構成の改善
 法的保証システムの改善などを通じて、メーカー自身による輸出取り扱いを推進し、輸出代理システムの発展を促進するとともに、輸出コストを下げ、中国製品の国際競争力向上に努める。そのほか輸出税還付率を調整し、輸出製品の構成を改善して、輸出全体の効率・利益向上をはかる。

5 未還付金は中央政府が負担
 2003年までに蓄積された企業への未還付金、および増値税の中央・地方共同徴収体制化による地方政府減収分については、中央政府が全額を負担する。企業への未還付金は、2004年から貸付金利子の全額免除などの形で返還する予定。


日本経済新聞夕刊 2003/10/14

中国、輸出の税還付圧縮 実質増税 来年から 進出企業に打撃
 元切り上げ論かわす狙い

 中国政府は13日、国営の新華社通信を通じて、国内流通段階でかかる増値税(付加価値税、税率17%)の輸出時の還付率を現行の平均15%から約3%引き下げると発表した。来年1月から実施する。実質的な増税で、中国に進出した日米欧などの輸出企業は打撃を受ける。中国政府には貿易黒字への批判と人民元の切り上げ論をかわす狙いがあるとみられる。
 中国は国内で、製品に一律17%の増値税を課しているが、輸出奨励策として輸出品には還付制度を実施している。還付率は製品により異なる。
 発表によると電機、衣類(現行17%)、鋼材、玩具、化学繊維(同15%)などの主要製品は13%に引き下げる。原油や紙パルプ(同13%)などは還付を廃止する。
 輸出を奨励している農産品や農産物を原料とする加工品(同5−13%)、船舶、自動車などの完成品や部品(同17%)などは据え置く。小麦粉、トウモロコシ粉は5%から13%に引き上げる。
 中国政府が還付率引き下げを決めたのは財源不足という理由も大きい。中国紙などによると昨年末時点の未還付金は約2400億元(約3兆3600億円)で、今年末には3千億ー3千500億元に達するとされる。
 中国の輸出は、1−8月は前年同期比32.5%増。増値税の税収は、2002年に前年比15.3%増の6178億元、今年1−8月には前年同期比17.3%増となった。
 輸出の伸びを支えているのは日米欧などの国際企業だ。日本からもカジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングなど多くの企業が進出しており、中国の輸出に占める外資系企業のシェアは約6割に達する。
 こうした企業にとって還付率の引き下げは減益要因。「輸出価格の競争が厳しい中で、高い利潤を得ていない進出企業が(還付圧縮で)影響を受けるのは必至」(日本貿易振興機構北京センター)との見方もある。

増値税
中国政府が1994年1月、歳入不足を補うために導入した付加価値税の一種。
商品などの国内流通段階で課している。輸出促進のため輸出品については当初、
全額を還付していたが、不正な還付請求が横行し、税収を還付金が上回る事態になった。
このため還付率を段階的に引き下げてきた。

 


Economist Calls for Abolishment of Export Tax Rebate
  
http://www.china.org.cn/english/BAT/76684.htm

Abolishing or cutting tax rebates to Chinese exporters would help relieve the pressure for appreciation of the Chinese currency, said Chinese economist Lin Yifu.

Lin said recently in Beijing at a seminar sponsored by the Hongkong and Shanghai Banking Corporation Limited (HSBC) that for export-oriented Chinese enterprises, lowering the tax rebate rates means an effective appreciation of yuan.

Since 1985, China has adopted tax rebates for exporting enterprises. The central government paid back a certain proportion of the consumption taxes and value added tax (VAT) to the enterprises after they paid taxes for exported goods. The tax rebates were allowed by rules of the World Trade Organization and widely adopted in many WTO members.

In 1999, the currencies of Southeast Asian countries were devaluated against the yuan as a result of the Asian financial crisis, posing great challenges to China's exports. In order to increase exports and reverse the trend of deflation, the Chinese government raised the average tax rebate rates from six percent ofexport value to 15 percent.

Lin said China had lately seen a strong growth momentum in exports, which resulted in trade surpluses and relatively fast growth of foreign exchange reserve. He said these factors had raised the international expectation for an appreciation of the yuan. The speculative activities of some international investors also added upward pressure on the Chinese currency, he said.

Lin pointed out that it is now the right time for China to change the export rebate policy. A slash of tax rebates to exporters would immediately lower the growth rate of China's exports, thus shrinking the trade surplus and throwing a brake on the increase of foreign exchange reserves.

Past experience proved that Chinese enterprises are highly sensitive to changes in the cost of tax payment. It is estimated if the tax rebate rates were lowered by one percentage point, the growth of China's exports would slow down by 4.9 percentage points.

Li said if the Chinese government decided to cut export tax rebate rates, it would, by doing so, sent a clear signal to international speculators that the stability of yuan would remain intact. China would use other policy options to vent the appreciation pressure on its currency.

The possible reduction of tax rebates might affect 23 percent of Chinese enterprises that are export-oriented. However, appreciation of the yuan will have significant impact on all aspects of China's economy.

Li said readjustment of export tax rebate policy would be a more sensible choice for the Chinese government than revaluating the yuan.


日本経済新聞 2004/7/14

中国、電力不足広がる 北京市あすから「高温休暇」 輪番で操業停止

 電力消費が増える夏を迎え中国の電力不足が深刻化している。今年は昨年より1千万キロワット多い3千万キロワットの不足が予想され、影響は上海や広州など中南部から、北京など北部にも広がってきた。政府は発電能力を2020年までに2003年末比約2.5倍に拡大する方針を打ち出しているが、足元の供給力不足には対応できていない。電力不足が続けば企業活動に支障が出かねず、日系企業も対策を迫られている。

 北京市は今月15日から8月15日までの1ヶ月間、市内に工場を持つ6389社を対象に工場の操業を1週間ずつ停止する「高温休暇」を実施する。市当局は工場の操業停止に伴う社員の給与の減少を補うための対応策も検討している。
 6月末から記録的な猛暑が続いている広州市では、7月に入り工場だけでなく大型のショッピングセンターやホテルなど商業施設への電力制限にも踏み切った。電力供給量を30%削減する狙い。空調の設定温度を25度以上に定め無駄な照明も使わないように促している。また電力消費量が急激に増えた場合は街頭の一部の照明を消す。
 浙江省は企業の自家発電設備の導入を奨励。省都、杭州市のトップである王国平・共産党委員会書記は「企業が自家発電機の設備を購入した際には税制面で優遇する」と話す。
 電力が不足し始めたのは昨年から。昨年は22省・直轄市が電力の供給制限を実施した。今年は山東省や天津市が加わり、4月までですでに24に上る。
 中国全土の2003年末の発電能力は3億8450万キロワット。2004年末までに発電所新設などで10%増やすが消費量は12%増が見込まれ、需給ギャップは拡大する。今年予想される不足分の3千万キロワットは東京電力の発電量の半分程度に相当する。
 2020年までに石炭火力発電所を約2倍の6億キロワットに、原子力発電所を約6倍の4千万キロワットへ拡大。風力、太陽光など新エネルギー発電所も建設、総発電能力の拡大とともに石炭に依存していた燃料を多様化する。
 6月には産業向けの電力料金を平均で約6%値上げした。電力消費が多いアルミニウム、鉄鋼、セメントなど6業種についてはエネルギー効率が低い旧式設備を使っている工場向けの料金の上げ幅を約2割に設定。これらの工場の淘汰を通じ電力消費を減らす。
 政府は2006年には電力危機を回避できるとの見通しを示している。だが、発電燃料を十分に確保できるかといった問題もあり、不足を解消できるかは不透明だ。

日系企業も苦慮
 広東省や上海市周辺に進出する日系企業が電力不足への対応に頭を悩ませている。自家発電設備の購入も検討しているが、コスト面から二の足を踏む企業が多い。
 「ついに来たか」。これまで停電と無縁だった深セン市の経済特区内の日系工場の関係者はため息をつく。「特区内も停電対象になる」。地元紙が最近、こんな記事を掲載したからだ。政府から正式な要請はまだないが、同工場では「停電に備え生産計画の見直しに着手した」。 上海市近郊に進出する企業の多くは昨年来、休日シフトを敷いており現状では大きなトラブルはない。広東省でも大半が今春までに電力制限区域に指定され、各企業は生産見直しなどで対応している。それでも「夏場の需要を見越して休日返上でフル操業したくてもできない」(食品関連工場)と不満の声が漏れる。
 自家発電機を購入する企業も出てきた。広東省にある松下電器産業のエアコン工場では1200万元(約1億5600万円)を投じて、今月から電力制限日に稼働させた。
 もっとも、こうした企業はひと握り。発電機の燃料となる軽油の不足で「電カコストは2、3割上がる」とされるからだ。発電機も不足し、「今、注文しても冬場でないと手に入らないと聞いてあきらめた」工場もある。
 広東省の電力関係者は「電力不足は2006年には解消する」と強調する。だが、「鉄鋼や化学などエネルギー消費型の工場が続々と稼働する中、本当に確保できるのか」と電力不足の深刻化を懸念する声は多い。