(日本経済新聞 2002/4/27)  

押し切られた公取委
 国内幹線シェア5割以上 「競争は活発に」承認説明に苦労

 「何の相談もなく経営統合を発表して、既成事実化しようという態度は許せない」。公取委幹部は今も日航、日本エアにないがしろにされたことへの憤りを隠さない。だが、現実には日航、日本エアと国交省は公取委を軽視し続けた。
 公取委にとって、経営統合の事前審査で、落としどころを見つけないまま異議を公表することは賭けだった。両社が統合を強行して審判・裁判手続きに入れば、長期にわたり大変な労力を要する。公取委には避けたいシナリオだったはずだ。
 統合反対を強硬に主張する一部委員と、最終的には承認せざるを得ないとする事務局も一枚岩ではなかった。こうした内部事情も両社や国交省に筒抜けとなり、公取委は完全に足元を見られた。承認時期についても「6月末の株主総会までの段取りを考えれば、4月中の決着が必要」とする両社に押し切られた。
 26日の承認発表でも、公取委は3月の中間報告との整合性の説明に苦労していた。統合会杜は返上後も約180便、全日空は約160便の羽田発着枠を持つのに、新規航空会社は返上分を割り当てられても1社あたり10便程度に過ぎない。大きな格差があっても、公取委は「競争が活発に行われる」と強調した。
 産業界には「
国内幹線シェアが5割を超える場合が認められるのならば、どんな経営統合も交渉次第で認められるのでは」との声もある。航空業界の国際競争を考えれば統合承認はぎりぎりの判断だが、公取委が指導力を発揮しなければ競争政策の強化は難しい。


日航・日本エア 減収要因 年250億円

 日本航空の兼子勲社長と日本エアシステムの船曳寛真社長は26日、都内で記者会見し、羽田空港発着枠の9便返上と国内線普通運賃の一律1割値下げで年間250億円の減収要因になることを明らかにした。船曳社長は新設する持ち株会社の会長職就任を辞退したことも表明した。
 公正取引委員会が両社の統合計画を承認したことについて、両社長は当初計画の修正を余儀なくされたが、「コスト削減や増収効果もあり統合メリットは大きい」と強調した。
 両社は経営統合を計画している10月に、両社の羽田発着枠192便のうち9便を国に返上。2005年に予定されている羽田の発着枠再配分時までに新規航空会社用として枠が不足した場合には、さらに3便分を上限に返上するという。
 普通運賃の1割引き下げと合わせ、特定便割引運賃と事前購入割引運賃を導入する計画も明らかにした。羽田枠返上と値下げは年間250億円の減収要因となるが、利用者増などで200億−250億円の増収が見込めるとしている。
 10月に設立する持ち株会社の会長に就任する予定だった船曳社長は会長職ではない代表取締役となる。船曳杜長は「統合を進めるにはトップを一本化した方がよいと判断した」と説明した。

 

 


 

日本経済新聞夕刊 2003/3/28

国内線値上げ断念 JAL、公取委の拒絶受け

 公正取引委員会は28日、日本航空システム(JAL)が計画している6月からの国内線普通運賃引き上げを認めない方針を決め、JALと所管官庁の国土交通省に通知した。JALはイラク戦争に伴う燃料費上昇や旅客減少を理由に普通運賃の約1割上げを公取委に打診していたが、公取委は「現時点では実際に国内線にまで悪影響が及ぶかどうか不確定」としてこれを拒絶した。
 昨年10月に日本航空と日本エアシステムが統合して誕生したJALは、
経営統合の条件として国内線の普通運賃を1割下げ、急激な経済環境の変化がなければ3年間はその水準を維持することを公取委に約束した。このため、普通運賃の改定には公取委の承認が必要。
 JALは「イラク戦争のぼっ発は急激な経済環境の変化に当たる」と主張したが、公取委はこれを退けた。これを受け、JALは6月の普通運賃上げを断念。自由に設定できる割引運賃のみを平均500円前後引き上げるにとどめる。
 JALは普通運賃上げについては、イラク戦争による経営への影響を改めて調査し、4月以降に公取委と再調整する。仮に値上げが承認された場合、実施時期は最も早くて7月となる。


日本経済新聞 2003/4/26

JAL国内線、7月値上げ SARS影響、公取委容認 普通運賃11%

 日本航空システム(JAL)は25日、7月1日から国内線片道普通運賃を11%(全路線平均2600円程度)、引き上げることを決めた。公正取引委員会がイラク戦争や新型肺炎の発生は「急激な経済環境の変化にあたる」と値上げ容認に転じたため。全日本空輸も追随する見通し。大幅値上げにより、比較的堅調な国内需要に影響が出る可能性もある。
 JALは値上げを28日に国土交通省に届け出る。値上げ後の片道普通運賃(通常期)は羽田−大阪線が現在より1800円高い1万8500円、羽田−札幌が2800円高い2万8千円、羽田−福岡が3100円高い3万1千円になる見通し。普通運賃は昨年10月の経営統合前の水準に戻ることになる。
 普通運賃を利用する人の割合は、国内線利用者の1割程度。JAL傘下の日本航空、日本エアシステムの値上げによる今年度の増収効果は約70億円と見られる。割引運賃についても引き上げを検討しており、往復割引や回数券などもほぼ連動して値上げする可能性が大きい。割引率が高く、旅行需要喚起型の事前購入割引や特定便割引運賃などは小幅上げにとどめる模様だ。
 日航と日本エアは経営統合する際に公取委に普通運賃の1割引き下げと、急激な経済環境の変化がない限り3年間値上げしないことを約束した。イラク戦争による旅客減を理由に、
3月にも公取委に普通運賃の引き上げを打診したが、「急激な経営撮境変化に当たるのか見極める必要がある」として認められなかった。
 今回は新型肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)の影響も加わり、年900億円の減収になると説明。公取委は「国際線の状況を見ると急激な環境変化と判断できる」と回答した。