読売新聞 1992/4/19

三井東圧・三井石化 来年4月メド合併検討
 一貫生産目指す 両社社長が詰めの協議 業界再編に拍車

 三井グループの総合化学メーカー、三井東圧化学と石油化学メーカー、三井石油化学が合併する方向で検討を始めた。業界筋が18日、明らかにした。両社は先週末に沢村治夫・三井東圧化学社長、竹林省吾・三井石油化学社長が会談、残された問題点について最終的な詰めを行っており、合意すれば、新社名は「三井化学」として、来年4月をめどに合併、社長には沢村・東圧社長、会長には竹林・三井石化社長の就任が有力となっている。新会社は、原料から最先端の精密化学分野まで一貫生産体制を持ち、売上高は約7700億円と、三菱化成、住友化学工業に並ぶトップクラスの化学メーカーになる。
 三井東圧化学はバイオテクノロジーや高機能プラスチック製品の生産など幅広い分野の製品を手がける総合化学メーカー。三井石油化学工業は化学製品の原料の生産が主で、エチレンの生産能力は年間64万トンの大手石油化学メーカーだ。
 化学業界は、最近の景気後退で需給バランスが崩れ、化学製品の市況が軟化、大手メーカーの業績は、いずれも経常利益が前年比2−5割減っている。
 両社も、業績が悪化しているため、同じ三井系の2社が合併し、原料から製品まで効率の良い一貫生産体制作りを目指している。すでに事務レベルの協議で具体的な合併条件を煮詰めており、4月1日には、両社長が初のトップ会談を行った。17日には第二回会談を行い、新会社の社名や合併比率などは合意したものの、法的な存続会社をどちらにするかについては両社の思惑が一致しなかった。このため、合併自体が白紙に戻る可能性もなお残されている。
 両社は、今週も社長間で折衝を続け、合意できれば、6月の株主総会後には覚書に調印することを目指している。
 ただ、両社の合併は、化成品のシェアを一挙に拡大するなど、業界に与える影響も大きい。このため、業界再編による体質強化を期待する通産省も「独占禁止法上の問題をクリアする工夫が必要」としており、公正取引委員会の了解を得なければならない。また、両社は、労働組合の了解を取り付けるための協議も進める。
 三井グループ2社の合併への動きが明らかになったことにより、ライバル関係にある三菱グループの三菱化成と三菱油化、日本興業銀行系の東ソー、丸善石油化学なども含め、業界再編が加速されそうだ。

国際競争力を強化
 三井東圧・石化の合併検討 収益向上に狙い

 三井グループの化学メーカー2社が合併の検討に入ったのは、国際競争力を失いつつある日本の化学メーカーの生き残り策でもある。
 アメリカのデュポン、ドイツのBASFなどを代表とする欧米の化学メーカーは、売り上げが日本企業の4、5倍の規模があり、それぞれの国の製造業の代表的存在。資金力も余裕があり、膨大な研究開発費を投じて国際競争力を強化し、アジア、日本市場にも進出しようとしている。「小規模乱立」で、過当競争体質の日本企業の敗色は濃厚だ。
 一方、韓国、台湾などアジア各国・地域でも化学工業が成長、こちらは安売りを武器にして、市場シェアを高めようとしている。
 今後、日本の化学業界が国際競争に生き残るためには、過当競争体質から脱却、研究開発力を強化して高付加価値の製品を開発、収益力をつけることが急務となっており、現在、エチレンメーカーを中心に十数社の化学メーカーを集約することが課題となっている。


日本経済新聞 1992/4/21

三石社長 三東圧との合併交渉 「当分の間は凍結」

 三井石油化学の竹林省吾社長は20日、三井東圧との合併問題について「当分の間は交渉を凍結する」と述べ、当初考えていた来年中の合併は不可能との見通しを明らかにした。交渉が緒についたばかりの段階で検討内容が外部に漏れたため、1年程度の冷却期間を置くことにした。ただ合併そのものは「ご破算にする積もりはない」としている。