2005/2/18 大阪ガス

メタンを原料としたリサイクル可能な生分解性プラスチックの高性能化および連続生産の技術を開発しました
http://www.osakagas.co.jp/Press/pr05/050218.htm

 大阪ガス株式会社(社長:芝野博文)は、メタンを原料としたリサイクル可能な生分解性プラスチック「ポリヒドロキシブチレート(以下、PHB)」の高性能化および連続生産の技術を開発しました。PHBは、微生物によりバイオガス※1や天然ガス中のメタンを原料として生産されます。廃棄後は、微生物によりバイオガスに戻し、再びPHBの原料にリサイクルできる環境に優しいプラスチックです。(別紙1参照)今回の技術開発により耐久性、耐熱性の向上および安定生産を実現したことで、PHB用途の格段の広がりが期待できます。
 
 現在プラスチックは、日本で年間約1500万トン生産されていますが、大部分がPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PB(ポリ塩化ビニール)等の石油系プラスチックです。これら石油系プラスチックの廃棄・焼却にかかわる環境問題から、代替材料としてバイオマス由来プラスチックや生分解性プラスチックが注目されています。しかし、これらのプラスチックは、耐久性、耐熱性が低く、コスト高であるため、限定的な利用にとどまっています。(別紙2参照)
 
 そうした中当社は、生分解性プラスチックの一つであるPHBに着目しました。PHBは微生物※2が細胞内でメタンをPHBに変換、蓄積する性質を利用して生産されます。この方法は以前から知られていましたが、生成されるPHBの重合度※3が低いため脆く、生産量が安定しないという課題がありました。
 そして今回、当社は沼津工業高等専門学校(校長:久賀重雄)の協力のもと、重合度の高いPHBを蓄積する微生物の選定に成功し、さらに安定生産・コストダウンが可能となる連続生産技術を開発しました。(別紙3参照)
 
 今回、開発した技術の特長は以下のとおりです。

(1) 最適な微生物の選定による耐久性、耐熱性の向上
  最適な微生物の選定により、重合度が高く耐久性に優れたPHBを生産することに成功しました。衝撃強度が高いABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)やPC(ポリカーボネート)と同等の耐久性を実現しました。また、耐熱用部品に多用されるPPを上回る耐熱性(150℃以上)を有することに成功しました。※4これにより、多用途でのPHBの利用が可能となります。
(2) 連続生産技術の開発による安定生産およびコストダウンの実現
  微生物の増殖とPHB蓄積を両立した培養条件※5の発見により、世界で初めて連続生産技術を開発しました。これにより、安定した生産が可能になるとともに、生産コストを他の生分解性プラスチックと同程度にすることが可能となり、汎用プラスチックとしての利用が期待できます。

 PHBをゴミ袋や、フォーク・トレー等の食器・食品包装材に使用すれば、食べ残しの生ゴミ等とともに回収後、PHBの原料に再利用することで、生ごみ処理も含めた循環型社会の実現が期待できます。(別紙4参照)また、自動車、家電製品の部品等での利用・リサイクルも期待できます。その他、PHBはアンモニア分解を促進する性質を持っており、廃PHBを水質浄化材として下水処理場や河川等に設置することも可能です。※6
 
 当社では、今後、事業化に向けてビジネスパートナーを募り、生産・供給体制の検討を行う予定です。  

※1 バイオガス:
生ごみ、食品廃棄物、家畜糞尿等の有機廃棄物を空気のない状態で発酵させることにより発生するガス。主成分はメタン。
      
※2 PHBは、特定の微生物が飢餓状態に備えて微生物の菌体内に蓄積する物質(人間で言えば肝臓等に蓄積されるグリコーゲンの役割に近い)。微生物だけでなく人間の体内にも存在する天然物であるため、他の生分解性プラスチックに比べ特に嫌気状態での生分解性に優れる。

※3 重合度:
  PHBは複数のヒドロキシブチレートが重合している。重合度が高い(結合するヒドロキシブチレートが多い)ほど耐久性に優れる。従来のPHBが、約1千個のヒドロキシブチレートが結合していたのに対し、今回の生産技術では20倍となる約2万個のヒドロキシブチレートが結合している。
   
※4 耐久性プラスチックは、家電・OA機器類の外枠、自動車部品、玩具等で使われ、主な材料としてABS、耐衝撃性ポリスチレン等が使用される。耐熱性プラスチックは、台所用食品容器類、飲料容器、耐熱性の必要な自動車・家電部品等に使われ、主な材料としてPP、PET等が使用される。
   
※5 微生物が飢餓状態に陥ったときにPHBを蓄える性質を利用した生産方法である。しかし、微生物が飢餓状態では増殖しないため、菌体の増殖とPHBの生産を別工程で行う必要があった。そのため、連続生産ができず生産が安定しなかった。
   
※6 下水や産業排水に含まれるアンモニアは河川汚染の原因となるため、放流前に除去する必要がある。通常、脱窒菌が硝酸を窒素に還元するためのエネルギー源としてメタノールを加えているが、これを廃PHBで代替することにより、コストダウン、省資源となる。河川では同じ仕組みで自然とアンモニアが浄化されている。