2010/6/30 日本経済新聞

JX、 ベトナムに製油所 事業費最大8000億円  国営大手の計画に出資

石油国内最大手のJXホールディングスは ベトナムで製油所の建設・運営に乗り出す方針を固めた。国営エネルギー大手ペトロベトナム(PVN)が進める2つの建設計画に出資、実現すれば総事業費は 最大で約8000億円に達する。日本政府は6月策定のエネルギー基本計画でエネルギー企業の海外展開を後押しする姿勢を示しており、JXの大型投資で日越 の経済協力が進展する。日本の官民が狙う社会インフラの輸出にも追い風になりそうだ。

 PVNのタン会長がJXの西尾進路会長らと都内でこのほど会談。PVNの製油所計画への協力要請に対し、JXは参画する意向を表明した。 JXが海外で製油所を建設・運営するのは初めて。ベトナム政府の承認を受けた後に合弁会社を設立するが、出資比率などの詳細は今後詰める。

 JXはまず、同国中部ズンクワットでPVNが運営する第1製油所の拡張計画に参加する。2016年稼働で、事業費は約1000億円。さらに 20年稼働予定の南部ロンソンの第3製油所の新設計画(事業費約7000億円)に加わる。

 第1製油所の拡張後の精製能力は1日当たり約17万バレル、 第3製油所は同約20万バレル。計37万バレルはJXの国内精製能力のほぼ4分の1に相当する。生産するガソリンや化学品原料などは主にベトナム国内に供給、アジア向け輸出も検討する。

 JXとPVNは近く作業部会を設置、技術面を含めた具体的な交渉に入る。JXは重油成分が多い割安な原油から石油製品を精製する低コスト技 術を供与。石油に含まれる硫黄分を減らして大気汚染を抑えたり、精製時の二酸化炭素(CO2)排出量を減らしたりする環境技術も提案する。

 日本のガソリンなど燃料油の需要は09年度に22年ぶりに2億キロリットルを割り込み、今後も年3%強の減少が続く見通し。JXは国内では 精製能力の3割削減を決めている。ベトナムの国内需要は日本の10分の1程度で、ほぼ輸入に頼っている。20年に需要が倍増するとの予測もあり、JXは新 興国シフトを急いで新たな収益源を確保する。

 JX傘下の新日本石油がベトナム沖の油田開発に参加するなどPVNとの関係は深い。JXは投資負担の軽減へ日本の政府系金融機関からの資金 調達を視野に入れ、石油化学メーカーとの共同事業も検討する。

 PVNは石油精製や電力、港湾など総額250億ドル(約2兆3千億円)の事業計画に対し、日本企業の出資を要請している。出光興産と三井化 学は14年ごろに操業開始予定の第2製油所計画に参画する方針。東京電力もPVNの石炭火力発電所の建設・運営に協力することで合意した。

 経済成長を背景にベトナムではインフラ建設の需要が膨らみ、日本企業は受注活動を強化。ただ閣議決定した高速鉄道計画が議会で否決されるな ど、過度の投資熱を警戒する見方もある。