毎日新聞 2003/1/29                      発表文

ラクラク運べる丸い天然ガス 三井造船が固形化 輸送費3割減

 三井造船は28日、海外で産出された天然ガスを現地で「天然ガスハイドレート」(NGH)と呼ぶ固体に加工して輸入・貯蔵し、必要な時にガスに戻すシステムの実証運転を世界で初めて開始したことを明らかにした。08年の実用化をめざす。
 液化天然ガス(LNG)にして運ぶ従来の方式は液化施設や専用船が必要だが、新方式は設備を簡素化できるため、輸送・貯蔵コストを約3割削減できるという。
 天然ガスは、石油や石炭に比べ二酸化炭素(CO
)排出量が少ないクリーンエネルギーだが、液化には氷点下162度の極低温を保つ必要がある。NGHは、体積はLNGの約5倍とかさばるものの、氷点下15度前後で取り扱えるため、コストを大幅に下げることが可能。極低温を維持する際のエネルギーも省けるので、3割の省エネにもなるという。
 実証プラントを三井造船千葉事業所(千葉県市原市)に設置。天然ガスと水に数十気圧をかけてシャーベット状にし、脱水して直径2ミリ未満の氷の粉末にする。このNGHを常温にすると、ガスと水が分離し、天然ガスに戻る。
 日本周辺の海底などには、メタンガスと水が反応してできたシャーベット状の天然の「メタンガスハイドレート」があり、新技術はこれを人工で再現した。粉末を扱いやすいようにするため、
直径約2センチの球形に固め、冷凍状態で運搬・貯蔵する。プラントの紛末生産能カは日量600キロ。
 新システムが実用化されれば、採算上、LNG設備を建設できず、商業化をあきらめていた中小天然ガス田の開発を促し、クリーンエネルギーの安定供給に貢献できるという。国内では、天然ガスのパイプライン網を持たない都市ガス会社にも、NGHを冷凍トラックで配送することが可能となり、天然ガスの普及促進につながることも期待されている。


2003/01/16 三井造船

天然ガス・ハイドレート(NGH)による天然ガス輸送一貫システム実証プラント完成、運転を開始

 三井造船株式会社(社長:元山登雄)は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の平成14年度「戦略的産業技術実用化開発費助成事業」として、千葉事業所(千葉県市原市)内で建設中であったハイドレートによる天然ガス輸送を想定した、ハイドレート製造の実証プラント(能力600kg/日)を完成し、メタンガスによる運転を開始します。

 今回完成した実証プラントは、メタンガスと水とを接触・反応させ、高純度のハイドレートを高速で連続的に生成、脱水、冷却、製造するプラントです。
 
ハイドレートを輸送に適したペレットに加工し、ペレットを再度ガス化して高圧ガスを回収する小型装置も連結しており、NGHの製造から再ガス化までの一連のプロセスについて連続運転することを可能としました。

 NGHは、水分子がガス分子を取り囲んだ包接水和物で単位体積あたり約170倍の天然ガスを包蔵することができます。
 また、マイナス162℃という極低温下での操作が必要なLNG(液化天然ガス)方式に比較し、製造時は数十気圧下でプラス数℃、輸送・貯蔵時は大気圧下マイナス10数℃の条件で容易に扱うことが可能なため、NGH輸送は、LNG方式では不採算となる中小ガス田の開発に適用可能な方式として注目されています。

 現在全世界で約2.5兆立方m3/年の需要がある天然ガスは、クリーン・エネルギーとして注目されており、先進国のCO
2削減行動や発展途上国の工業化等により、2030年にはその需要が約2倍に膨れ上がると予想されています。

 三井造船では、本プラントの運転を通じて、プロセス条件の検証および各種エンジニアリング・データを取得することで、天然ガスハイドレート(NGH)海上輸送システムの開発をさらに加速するとともに、国内における新しいガス貯蔵・輸送・利用システムの実用化を進めていきます。


[三井造船のNGH製造プロセスの特長]

1.高速NGH製造
  攪拌・バブリング法の採用により、NGH生成時に発生する反応熱を効果的に除去でき高速でのNGH製造を実現した。
   
2.機械的脱水工程が不要
  通常はスラリー状のNGHを生成したのち、高圧遠心分離機等の機械的な脱水を必要とするが、本プロセスでは、NGH製造プロセスそのものに脱水機能をもたせることにより機械的脱水を不要とし、初期投資や所要動力の低減、またシステムのシンプル化を可能とした。