日本経済新聞 2006/12/22

サハリン2 株式過半譲渡で合意 三井物産など ロシア側に8800億円で

 ロシア・サハリン沖の資源開発事業「サハリン2」を進める英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事の3社は21日、ロシアの天然ガス独占企業ガスプロムに対し株式の過半数を譲渡することでロシア側と合意した。譲渡額は3社合計で74億5千万ドル(約8800億円)。2008年にも液化天然ガス(LNG)の日本向け輸出が始まるサハリン2の事業運営はロシア側が主導権を握り、ロシア政府の影響を強く受けることになった。
 シェルのファンデルフェール社長、三井物産の槍田松螢社長、三菱商事の小島順彦社長が同日、モスクワでガスプロムや産業エネルギー省の首脳らと会談して合意議定書に署名した。合意内容は@3社が株式の計50%プラス1株を譲渡するA事業コスト増大の一部をロシア政府が承認、ガスプロムも負担するB外資優遇策である生産分与協定(PSA)の枠組みは維持するーーなど。
 サハリン2の事業主体であるサハリンエナジー社にはシェルが55%、三井物産が25%、三菱商事が20%出資している。シェルが30%程度、三井と三菱が各10%程度を譲渡するとみられ、3社は現金で対価を受け取る。3社長らは同日夜(日本時間22日未明)、プーチン大統領に報告する。
 ガスプロムは東京電力など需要家との間で結んだLNGの供給契約を順守するほか、他のエネルギー事業でシェルなど3社と協力することも確認したもよう。環境問題などで工事が遅れていた同事業は08年のLNG輸出開始に向け前進する。
 サハリン2はサハリン沖で産出する天然ガスを液化して日本や韓国に輸出する事業。日本政府はエネルギーの安定調達と輸入先の多様化を狙って後押ししてきた。ロシア側が主導権を握ることで戦略見直しを迫られる可能性も出てきた。

日本、資源戦略見直し必至 
 サハリン沖開発、ロシア主導へ 供給、消えぬ不安

 ロシア・サハリン沖の資源開発事業「サハリン2」の主導権を同国の天然ガス独占企業ガスプロムが握る。三井物産など事業者側は供給契約の確実な履行を株式譲渡の条件としてきただけに、LNG(液化天然ガス)の出荷は当面影響を受けることはないとみられる。しかし今後の事業運営にロシアの意向が働くことは避けられず、収益計画の見直しは必至。エネルギー調達の自立を急ぐ日本の資源戦略も修正を迫られる。
 サハリン2の生産能力は年間960万トン。東京電力など日本の電力・ガス会社や韓国ガス公社が2008年から15−25年間に渡り引き取ることが決まっている。
 ガスプロムによる株式の過半数取得について、東京電力の勝俣垣久社長は「サハリンプロジェクトはロシアにとっても収益源。需要家に迷惑をかけ、国際的な信頼を損ねるようなことはしないはず」と指摘。東京ガスも「株主構成が変わっても契約には影響しない」(広報部)とみている。
 ただ、サハリン沖ではサハリン2に続き、大型の開発計画が多数予定されている。こうした事業は今後ロシア主導で進むとみられ、「サハリン問題の経緯を見ると(ロシアは長期安定的な資源調達先としては)一抹の不安がよぎる」(東北電力の高橋宏明社長)との声も漏れる。
 事業に参加する三井物産と三菱商事はガスブロム参加で「ロシア政府との関係も円滑に進む」(三菱商事の小島順彦社長)と期待する。しかし両社は工事が順調に進めば2010年以降、サハリン2事業でそれぞれ年100億円以上の利益を見込んでいた。株式を半分譲渡することで収益計画の下方修正は避けられない。

サハリーン2のLNG供給先
 数量は年間、単位万トン、カッコ内はオプション契約分

 東京電力  150(50)
 東京ガス  110(50)
 東邦ガス   50(7)
 中部電力   50
 九州電力   50
 東北竃力   40
 広島ガス   21
 西部ガス    0.85
 大阪ガス  交渉中
 シェル・イースタン・トレーデイング (北米向け) 180
 韓国ガス公社 150

ロシア 強硬派が外資外し

 ロシアが「サハリン2」事業の主導権確保を強行したのは、2007年の議会選と08年の大統領選をにらみ、プーチン政権周辺で外資を警戒する強硬派の力が増したことが背景にある。露骨な「外資はずし」で日米欧はロシア投資に不信感を強めている。
 ロシア科学アカデミー国民経済予測研究所のパッペ主席研究員はロシアが環境破壊を理由にサハリン2の工事免許を取り消そうとしたことについて、「ガスプロムの株式取得を後押しするプーチン政権の戦術だった」と分析する。
 プーチン政権は旧ソ連国家保安委員会(KGB)などを出身母体とする強硬派と、法律家や実務家など欧米の政策にやや近い立場の市場経済派とのバランスの上に成り立ってきた。しかし最近は強硬派の発言力がやや増してきている。ガスプロムは11月、KGB出身者を副社長に迎えた。
 ロシア国内には対外的なイメージ悪化を懸念する声もある。しかし、大勢は「世界的にエネルギー不足が深刻化するなか、ロシアの石油、ガスは(日本などの消費国に)不可欠」(ガスプロムのメドベージェフ副社長)との意見だ。
 サハリン2ではロシア政府と事業者が生産計画や利益配分を定めた生産分与協定(FSA)を結んだ。欧米政府も最も信頼性が高いはずの契約が骨抜きになったことに懸念を示している。ガスプロムは日本政府、伊藤忠商事、丸紅などが出資するサハリン1、英BPが出資するシベリアのガス田開発への参画にも意欲を示す。このため今後、ロシア向け海外直接投資に影響が出る可能性もある。
 欧米が警戒するのは、プーチン政権が資源供給を外交上の強力な取引材料として振りかざす姿勢を強めることだ。ロシアは1月に親欧米路線を取るウクライナヘの天然ガス供給を止めるなど、強権的な動きに出ている。
 海底ガス田の新規開発には西側の技術が欠かせないとされる。このため、ロシアからガスを調達している欧州各国では、外資はずしで「今後の供給が不安定になるのでは」といった不安が広がっている。

エネルギー価格高騰 資源国、国家管理強める 日本、調達で後手に
 ロシアなど資源国が石油・天然ガスの国家管理を強め、中国が油田獲得へ攻勢をかけるなか、日本のエネルギー資源確保に不透明さが生じている。天然ガスでは「サハリン2」以外でも、最大の輸入元であるインドネシアが対日供給を大幅削減する。日本の最大の自主開発油田だったイランのアザデガン油田も10月に開発権の大半を失った。
 中国やインドのエネルギー需要が急増し、石油や天然ガスの獲得競争が世界的に激しくなっている。日本も5月に「新・国家エネルギー戦略」を決め、国内企業が権益を持つ自主開発油田の比率を今の15%から2030年には40%まで高める目標を掲げた。
 ただ達成への道筋は険しい。日本企業が75%の開発権を持っていたイラン・アザデガン油田は同国の核開発問題に絡んで着工できず、開発権を10%まで縮小した。ロシアとは東シベリアの油田開発へ日本企業が参画する方向で交渉中だが、同国の天然資源への投資リスクが増大し決着のメドがつかない状況だ。
 資源国が国家管理を強めているのは、エネルギー価格高騰が長期化する見通しが強まっているためだ。米欧の石油メジャーですら資源国政府に譲歩する例が相次いでいる。経済産業省幹部は「オーストラリアなど輸入先の多様化を進めており、日本のエネルギー調達に当面不安はない」と語るが、原油・天然ガスの大部分を輸入に頼る日本の立場は先行き一段と苦しくなる恐れがある。
 政府は公的資金の活用で、日本企業の資源開発を後押しする考え。旧石油公団の機能を引き継いだ石油天然ガス・金属鉱物資源機構による探鉱への出資上限を来年度から25ポイント引き上げ75%とする。ただ資源国はエネルギーを外交の駆け引き材料にするなど、「資源獲得はカネだけでは解決できない」(経済産業省幹部)のも事実。政府開発援助(ODA)や技術協力なども含めた総合的な資源外交戦略が求められている。

課題を抱える日本の資源調達

アザデガン油田 日本企業の開発権を大幅縮小
東シベリア油田 太平洋パイプラインの建設交渉難航
サハリン1    中国と天然ガス供給交渉
サハリン2    ガスプロムが事業主体に
東シナ海ガス田 中国と共同開発へ交渉
インドネシア   対日LNG供給を大幅削減


2006/12/22 日本経済新聞夕刊

ロシア大統領 「サハリン2、全面支援」 株過半譲渡で合意 08年輸出開始へ道筋

 ロシアのプーチン大統領は21日、同国の天然ガス独占企業ガスプロムがサハリン沖の資源開発事業「サハリン2」に過半数(50%プラス1株)出資することが決まったことについて「ロシアは全面的に同事業を支援する」と述べ、歓迎の意を表明した。環境問題やコスト増加問題で事業停止の危機に直面した同事業はロシア主導で2008年の液化天然ガス(LNG)輸出開始への道筋がようやくついた。
 大統領は同日、サハリン2に出資する英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事とガスプロムのミレル社長、フリステンコ産業エネルギー相らと会い、「ロシアはサハリン2で幅広く緊密に協力する用意がある」と述べた。
 焦点の一つだった事業費の増加問題では、ロシア政府側は約100億ドルの増大分を経費として承認することに応じた。この結果、今後は新たに株主になるガスプロムも出資比率に応じて負担することになった。
 建設の過程で環境問題が発生し、工事取り消しや損害補償問題が発生している件について、フリステンコ氏は「サハリン2側は改善策を申し入れてきた」と述べ、解決に向けて動き出したことを明らかにした。22日に都内で会見した三井物産と三菱商事も「環境問題を含めサハリン2が直面している諸問題はすべて解決の道筋がついた」との認識を示した。
 シェル(持ち株比率55%)、三井物産(同25%)、三菱商事(同20%)はそれぞれ27.5%、12.5%、10%を総額74億5千万ドル(約8800億円)でガスプロムに譲渡することで合意した。


権益不足にシェル苦悩
 石油メジャーの英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが再び油田・天然ガス田の権益不足に悩むことになった。ロシア・サハリン沖の大規模な資源開発事業「サハリン2」の主導権をガスプロムに渡すことになり、これに匹敵する権益を確保するには時間がかかるためだ。
 石油会社が安定成長を目指すには大量の権益を押さえておくことが必要。その多寡を測る指標は確認埋蔵量だが、シェルでは過剰申告が発覚し、2004年以降、何度も下方修正を迫られた。
 05年末の確認埋蔵量は77億バレル超。サハリン2での持ち分が55%から27.5%に半減すると、「シェルは可採埋蔵量を最大でさらに1割、下方修正することになる」(証券アナリスト)との指摘が出ている。
 ライバルの米エクソンモービルや英BPが着実に権益を取得するなか、シェルはじわじわと差を広げられている。開発コストが割高なオイルサンド(超重質油の資源)に集中投資していることも不利になる。
 シェルの06年7−9月期決算は原油高にもかかわらず純利益が前年同期比34.5%減の59億4200万ドルに落ち込んだ。ナイジェリアの油田が反政府勢力の攻撃を受け大幅減産を強いられたのが打撃となった。米国の製油所事故などトラブルも多発している。傷ついた石油メジャーの活性化には時間がかかりそうだ。


日本経済新聞 2006/12/29     

事業費膨らむサハリン2 ロシアに利益補てん
 三井物産など3社が合意 4200億円の負担増

 ロシア・サハリン沖の資源開発事業「サハリン2」を進める英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事の3社がロシア政府と交わした合意の中に、3社がロシア側に利益を補てんする仕組みが盛り込まれていることが28日明らかになった。事業予算の増加に伴いロシア側の利益が目減りするのを防ぐためで、
3社の負担額は合計36億ドル(4250億円)前後にのぼるもよう。事業の基本的枠組みを維持する一方で、ロシア側の不満に配慮したものとみられる。
 シェルなど3社は21日、ロシアの天然ガス独占企業ガスプロムに株式の過半を譲渡することで同国政麻と合意。事業者と政府の利益配分を定めた生産物分与契約(PSA)の維持や、事業主体であるサハリンエナジー社が提出した事業予算の承認でも一致した。こうした公表済みの条項に加え、ロシアの利益減少を軽減するための条項が盛り込まれていることが分かった。
 1994年に交わしたPSAは生産の初期段階では事業者のコスト回収を優先し、ロシア側が利益を受けとるのは事業収益が一定水準に達してからと定めている。事業者がどれだけのコストを優先回収できるかはロシア政府の承認を経て決まる仕組みだ。
 ところがサハリンエナジー社は05年秋に、事業費が当初予定の2倍の200億ドル(約2兆3600億円)に膨らむという修正予算をロシア政府に提出。コスト増に伴い事業収益が一定水準に達するまでに時間がかかることになり、利益の受け取り時期が遅れるロシア側が反発していた。
 今回盛り込まれた条項では、総事業費を194億ドルとし、約100億ドルの増加分のうち36億ドルについてはコストとして勘定せず、優先回収の対象から除く。この結果、ロシア側の利益受け取り時期が早まり、事業費が膨らむにもかかわらずロシア側は当初想定に近い利益を得られる。
 ロシア側の情報によると、コストとみなされず優先回収の対象から除外される36億ドル分はシェルなど3社が負担。新たに株式の過半を取得するガスプロムは負担しない。三井物産や三菱商事は回収の見込みのない支出を本来の負担に上乗せすることになり、事業収益にはマイナスに働く。
 ロシアのフリステンコ産業エネルギー相は21日の3社社長との会談後、「ロシアの歳入に影響が出ないようにすることで合意した。負担は事業者が肩代わりする」と述べていた。シェルなど3社はロシア側の不満に配慮する見返りに、20年以上にわたる利益配分を保証するPSAの枠組みを崩さない確約を得たとみられる。

(三井物産事業案内)
サハリン−IIでは、生産分与契約(PSA)というスキームを導入している。ロシアで締結された初めての生産分与契約だ。これは、原油や天然ガス等埋蔵物の所有権を持つロシアに対し、開発の為の必要資機材・費用をサハリン・エナジー社が総て負担し、生産開始に伴い一定のロイヤルティーを支払った後、開発に要した費用を回収し、利潤を一定の割合でロシアとサハリン・エナジー社で分配する方式だ。ロシアにおいて当該契約を実行可能為らしめる生産分与契約法は 1996年1月11日に発効した。しかしながら、ロシアの他の法律と合致していない点も多く、整合性を保つ為の関連法改訂法がロシア議会での長期間に渡る審議の末、1999年2月17日、ようやく発効するに至った。

また、2006年12月までに、約6億米ドルをロイヤリティーや税として、ロシア政府に支払っています。


http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/sakhalin/hoppo/hoppo4.html

生産物分与による利益配分はプロジェクトによって異なる。サハリンUの場合、ロイヤリティを取り除いた残りの部分をまずコスト回収に向ける。したがって、開発当初はロシア側は生産物の分与による収入を得ることができない。収益が出た段階で収益率の割合に応じて以下のように配分される。

収益率 投資家の取り分 ロシア側の取り分
17.5%未満の間 90% 10%
収益率17.5%以上、24%未満の間 50% 50%
収益率24%以上の場合 30% 70%

RISK CARRIED BY RUSSIAN STATE; COMPANY PROFITS ASSURED
http://www.carbonweb.org/documents/SakhalinPSA.pdf

It is a central feature of typical Production Sharing Agreements that the oil company undertakes its investment at its own risk. In the event that fewer hydrocarbons are found than expected, that greater investment is required or that the oil or gas price falls substantially, the oil company makes a lower rate of return. These risks are the price that is normally
accepted for the prospect of making considerable profits if things go as planned (or indeed, better).

However, in the case of Sakhalin II, most of the risk is instead carried by the Russian state. Since the oil and gas fields had already been discovered by Russian companies before the PSA was signed, exploration risk was already removed from the outset. Moreover, by radically altering the standard PSA mechanism, SEIC has also transferred most of the risks of both
construction overspend and change in the oil / gas price to the Russian government.

It is usual in PSAs that the majority of the income (not usually all) from the first few years of production (cost oil) is used to recoup investment costs; once they have been covered, the remaining production (profit oil) is divided between the host country and the foreign oil company, in agreed proportions.

In marked contrast, in Sakhalin II, the Russian government only starts receiving its share of extracted oil revenues once SEIC has recovered both its costs AND a 17.5% real rate of return. Even after this point, the Russian government receives only 10% of the revenues for two years, and then 50% until SEIC has achieved a 24% real rate of return. Only after that does the distribution adjust to give the Russian government the long-term rate of 70%.

As a result, the Russian government only receives any share of the revenues (the available hydrocarbons) after SEICs profit is assured. Furthermore, as a result, the economic impact of any cost over-run is felt primarily as a loss of income to the state, rather than as a loss of profits to the consortium. This is of particular concern, given that in summer 2004 SEIC announced a cost increase on the project, reported to be from $10 billion to $12 billion.

In fact, during the operational phase of the project, SEIC could choose to invest more capital (for example, expanding by adding another LNG train), thereby continuing to deny the Russian state its share of hydrocarbons, which are only obtained after a return on invested capital has been achieved.

OTHER UNFAVOURABLE FEATURES OF THE PSA
The duration of the Sakhalin II PSA contract is indeterminate. The initial phase is set at 25 years, but the PSA contains the proviso that should the SEIC consider further exploitation of the fields to be economically practicableit can renew the licence, without any changes in the PSA terms, for a further five years, followed by a further five years ad infinitum. Such an indeterminate contract length has more in common with the oil concessionsagreed by Middle East rulers at the beginning of the 20th century than with a modern, standard PSA.

The royalty payable to the Russian government on volumes of oil extracted is low by international standards, at just 6%. Among the countries which use PSAs and where the field size and production levels are comparable to those in Sakhalin, royalty rates generally fall within the range 10% - 20%.

The profit tax (32%) is lower than the standard Russian national rate at the time of the PSA signing (35%).

There is no annual cost capas is usual in a PSA. Nor is there a statement of costs which are not eligible for recovery (as is frequently the case in PSAs): in short, the SEIC is free to charge almost anything it wishes in the concept of recoverable costs.

 


日本経済新聞 2007/4/19

サハリン2権益取得 外資3社に74億ドル ガスプロム 支払い最終合意

 ロシアの天然ガス独占企業ガスプロムは18日、サハリン沖資源開発事業「サハリン2」に出資する英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事から同事業の権益50%プラス1株を取得することで最終合意し4社が契約に調印した。株式譲渡額は総額74億5千万ドル(約8800億円)で、このうち三井物産に18億6250万ドル、三菱商事に14億9千万ドルが支払われる。
 ロシア天然資源省はすでにガスプロムが中心になって作成したサハリン2工事に伴う環境被害の回復計画を承認しており、事業推進の障害はなくなった。ロシア政府は2014年までの総事業費を当初計画のほぼ2倍の194億ドルに増やすことを同日付で承認した。
 正式調印を受け、三菱商事はサハリンエナジー株売却による「損益への影響は軽微」とするコメントを発表。三井物産は損益への影響を開示していないが、税引き前で100億ー200億円前後の売却益が出るもようだ。