2006/5/18 日本経済新聞

ソニー、フィルム内製化 液晶TV用
 2子会社合併、収益性向上

 ソニーは17日、部品製造子会社のソニーケミカルとソニー宮城(宮城県多賀城市)を7月1日付で合併すると発表した。液晶テレビに使う機能性フィルムの内製化で、テレビ事業の収益性向上を図る。薄型テレビの急激な値下がりで、メーカー各社の利益率は悪化する懸念がある。重要部品を内部に取り込む動きは、同様他社や素材、部品各社の戦略に影響を与えそうだ。
 ソニーケミカルとソニー宮城を合併し、ソニーの全額出資でソニーケミカル&インフォメーションデバイスを発足させる。資本金は54億8千万円。新会社は旧2社から人員の大半を受け入れ、正社員は約2900人になる。今年度の売上高は1800億円を目指す。
 ケミカルの正社員は1100人で2005年度売上高は763億円。宮城の正社員は1800人、前年度の売上高は758億円だった。
 新会社は戦略事業として、液晶テレビに使う光学フィルムや偏光フィルターなど各種機能性フィルムの量産を目指す。ケミカルが持つ化成品の技術と、磁気テープの基盤材料などで蓄えたソニー宮城のノウハウを組み合わせ、画質向上に役立つ部品を開発する方針。


2006年05月17日 ソニー

ソニーケミカルとソニー宮城を統合し『ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社』を設立
テレビ用液晶パネルモジュール向け化成デバイス事業などを強化
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200605/06-0517B/index.html

 ソニーケミカル株式会社(以下、ソニーケミカル)とソニー宮城株式会社(同、ソニー宮城)は、2006年7月1日付で会社統合を行い、ソニーケミカルを存続会社とする「ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社」を設立※1します。

 ソニー株式会社は、記録メディア事業に加え、テレビ用液晶パネルモジュール向けの化成デバイス※2事業を強化することを目的に、2006年5月1日付けで「ケミカルデバイス事業本部」を、ソニーグループのデバイス事業を統括するコアコンポーネント事業グループ内に新設しました。
 今回統合するソニーケミカルとソニー宮城は、いずれも「ケミカルデバイス事業本部」が主管する国内の基幹事業所です。両社の開発リソースや技術などを統合することで、記録メディアや化成デバイス領域におけるより強力な開発・製造体制を構築、事業本部と一体となった事業推進を行ないます。

 新会社の「ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社」では、ソニーケミカルが持つ化成品技術と、ソニー宮城が記録メディアビジネスなどで培った材料・プロセス技術を一体にすることで更なる事業の拡大を目指します。特に、拡大が著しい液晶テレビのパネルに用いられる
機能性フィルムなどの化成デバイス分野にリソースを集中させることで、ソニーの「BRAVIA」向け液晶パネルモジュールや低温ポリシリコン液晶モジュールなどへの応用利用を拡大し、また、これら製品の商品力強化にデバイス面からも貢献する予定です。

※1. 所定の手続きを経た後に正式設立となります。
※2. 化学合成技術を用いて作られるデバイス。


●「ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社」の概要(予定)
〔英名〕 Sony Chemical & Information Device Corporation
〔所在地〕 本社所在地:東京都品川区
〔代表者〕 代表取締役社長:月丘誠一
〔資本金〕 54.8億円(ソニー(株)100%)
〔売上高〕 約1,800億円(連結売上高約2,100億円) (2006年度計画)
〔業務内容〕 機能性フイルム、リジッド基板、フレキシブル基板、異方性導電膜、工業用接着剤、接着テープ、熱転写/昇華型熱転写リボン、磁気テープ、光磁気ディスク、リチウムイオン電池電極材・活物質、磁気ヘッド、ジャイロセンサ、トランス、ICカード(FeliCa)、タッチパネル、薄膜形成用電子材料などの開発、設計、製造および販売
〔従業員数〕 約2,900名(正規従業員)

<ご参考>
●「ソニーケミカル株式会社」の概要

工業用接合材料、ディスプレイ用光学フィルム、エレクトロニクス機器向けプリント配線板、熱転写プリンター用リボンの開発・設計および製造・販売を担当するソニーグループにおける化成デバイス事業の基幹事業所です。

〔英名〕 Sony Chemicals Corporation
〔設立日〕 1962年3月
〔所在地〕 本社 :東京都品川区
      鹿沼事業所 :栃木県鹿沼市
      根上事業所 :石川県能美市
      西日本営業所 :大阪府大阪市
〔代表者〕 代表取締役社長 :月丘誠一
〔資本金〕 54.8億円(ソニー(株)100%)
〔売上高〕 約763億円 (2005年度実績)
〔業務内容〕 リジッド基板、フレキシブル基板、異方性導電膜、工業用接着剤、接着テープ、熱転写/昇華型熱転写リボンなどの開発、設計、製造および販売
〔従業員数〕 約1,100名(正規従業員)

●「ソニー宮城株式会社」の概要

記録メディア(磁気テープおよび光ディスク)やリチウムイオン2次電池用電極、昇華型プリンター用リボン、磁気・光学デバイスおよび高純度金属加工などを行なう、デバイス事業の量産拠点です。

〔英名〕 Sony Miyagi Corporation
〔設立日〕 2000年4月
〔所在地〕 本社 :宮城県多賀城市
      なかだ事業所 :宮城県登米市
      豊里事業所 :宮城県登米市
      くりこまファクトリー :宮城県栗原市
〔代表者〕 代表取締役社長 :杉山正義
〔資本金〕 48.8億円(ソニー(株)100%)
〔売上高〕 約758億円 (2005年度実績)
〔業務内容〕 磁気テープ、光磁気ディスク、リチウムイオン電池電極材・活物質、 磁気ヘッド、ジャイロセンサ、トランス、ICカード(FeliCa)、タッチ パネル、薄膜形成用電子材料等の開発、設計、製造
〔従業員数〕 約1,800名(正規従業員)


日本経済新聞 2007/9/15

先端半導体 ソニーが生産撤退 
 ゲーム機用MPU設備 東芝に1000億円で売却 映像・音響事業に集中

 ソニーは来春にも最先端半導体の生産設備を東芝に売却する。ゲーム機用MPU(超小型演算処理装置)「セル」などの製造ラインで売却額は1千億円弱。ソニーは最先端半導体の生産から事実上撤退、経営資源を映像・音響機器などに集中させる。半導体国内最大手の東芝はソニーへの主要供給元となることで世界シェア拡大を狙う。部品から最終製品まで様々な製品を抱える国内電機大手がそれぞれの得意分野に特化する形で国際競争再編に踏み出す。


 両社は現在、詳細を詰めており、1,2ヵ月以内にも契約する見通しだ。対象はソニーの生産子会社ソニーセミコンダクタ九州の長崎テクノロジーセンター(長崎県諫早市)にあるシステムLSI(大規模集積回路)製造ライン。新型ゲーム機「プレイステーション3(PS3)」の心臓部としてソニー、東芝、米IBMが共同開発したセルのほか、ゲーム機、ビデオカメラ用の画像処理LSIなどの生産設備が含まれる見通しだ。設備は現在のソニーの拠点内に置いたまま所有権を来春にも東芝に移す。
 これに合わせて東芝とソニーは共同出資の新会社を設立。新会社は東芝が買い取る製造ラインを借りてシステムLSIの生産を手がける。東芝が過半を出資して経営権を握り、生産に責任を持つ。ソニーも半導体の主購入者として一定の関与を残す。ソニーのゲーム子会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)も一部出資する方向で調整している。
 製造ラインで働く従業員については新会社への出向などの形をとってソニーが雇用を継続する方向だ。ソニーはセルを自前生産するために約2千億円を投じた。回路線幅45ナノ(ナノは10億分の1)メートルの技術を使う次世代品(現行は65ナノ)では投資額はさらに膨らむ見通し。ソニーは今後もセルの開発は続けるものの、巨額の投資が必要な生産を東芝にまかせることで浮いた資金を次世代テレビなどの開発にあて最終製品での競争力を高める。ビデオカメラやデジタルカメラなどの「目」として使う半導体である画像センサーについては業界首位のシェアを持っており、今後も事業を維持・拡大する。
 東芝の半導体事業の売上高はフラッシュメモリーを中心に2006年度で1兆3千億円弱と国内最大だが、システムLSIでは3位にとどまる。
 国内の大手電機メーカーは部品を含めた様々な製品を手がけることで相乗効果を狙う戦略をとってきたが、開発・生産への投資が膨らむ中で経営資源が分散。個別製品での世界シェアを落とす結果にもなった。

転機の半導体戦略 自社利用中心に限界

 ソニーによる最先端の半導体生産設備の売却は国内大手電機メーカーの半導体戦略が転換期を迎えたことを意味する。電機大手はデジタル家電や情報機器の性能を高めるには自ら半導体生産を手がける必要があると考え、巨額の投資がかかる事業を維持してきた。しかし、自社製品への利用が中心では売り上げ拡大に限界があり、各社の収益を圧迫する要因にもなっていた。
 ソニーの高性能MPU(超小型演算処理装置)「セル」はそうした"完全自前主義"による技術戦略の象徴。ゲーム機だけでなくパソコンやデジタル家電をネットワーク化するための中核半導体として「プレイステーション」の生みの親である久多良木健ソニー元副社長が中心となって作り上げた。同社の将来を支える半導体として巨額の設備投資にも踏み切ったが、セルを搭載した「プレイステーション3」の販売が伸び悩み、経営を圧迫している。
 こうした国内大手の半導体事業と対極にあるのが米インテル。自らは最終製品を手がけず世界のパソコンメーカーにMPUを販売し、高収益を確保した。最終製品でも米アップルは携帯音楽プレーヤー「iPod」であらゆる部品を外部から購入してヒットを生んだ。
 ソニーは多額の投資がかかる最先端半導体の生産から事実上手を引く一方、最終製品の付加価値に直結する半導体設計などの開発機能は社内に残し、グローバルな競争に対抗する戦略だ。