日本経済新聞 2007/5/31

韓国ポスコ 低コスト新型炉が稼動 設備投資・生産費2割減 再編にらみ技術力強化


 韓国の鉄鋼最大手ポスコは30日、独自開発の新型製鉄炉を稼働させたと発表した。高炉を使った従来工法と違い、事前に鉄鉱石加工などの必要がないため設備投資や生産コストを約2割減らせる。長期的には高炉に代わり、自動車向けなどの高級鋼材への対応も視野に入れる中核技術と位置づけ、インドで計画中の一貫製鉄所でも採用する。世界的な鉄鋼再編が進む中、新型炉の技術で日本、ブラジル、欧州などの企業に先行し、競争力強化で生き残りを図る。

 製鉄工法を巡っては、神戸製鋼所も従来に比べて原料費を3分の1に抑えられる独自の製鉄法を開発し、2009年をメドにインドで実用化する方針(注 同社は否定)。世界でも小規模の実験炉を稼働させた例はあるが、ポスコは他社に先がけて本格量産にこぎ着けた。李亀沢会長は30日「世界再編へ競争が激しさを増す中、ポスコの競争力向上に大きく寄与する」と強調した。
 新工法を使ったポスコの実用化一号炉は、浦項製鉄所(慶尚北道浦項市)に1兆600億ウォン(約1400億円)を投じて建設した。生産能力は年150万トン。
 ポスコは1基で年間300万トンを生産できる高炉を持つ。新型炉の年産能力はその半分だが、新型炉を2基建設し、高炉1基と同じ生産能力を確保しても、設備投資は高炉1基より2割安い。ポスコは高炉の代替は十分に可能と判断。2010年にも更新期を迎える旧型高炉の建て替えのさい、新型製鉄炉に替えることも検討する。
 高炉を使った従来工法は、原料である鉄鉱石を焼結炉で、石炭はコークス炉でそれぞれ加工したうえで高炉に投入する。新工法は鉄鉱石と石炭をそのまま炉に投入できるため、前工程の焼結炉とコークス炉が不要。このため、設備投資は従来の8割程度で済む。
 世界の鉄鉱石生産量の8割を占め、塊状の鉱石より価格も20%安い粉末状の鉄鉱石が使えるため、原料費も高炉に比べて低く抑えられる。石炭も高価なコークス用より20%安い一般の石炭を使用できることから、生産コストは高炉より15%安くなるという。
 前工程を省くことで、硫黄酸化物(SOx)と窒素酸化物(NOx)の排出量はそれぞれ従来工法の3%、1%となり、環境への負担も少ないという。
 ポスコは1号炉に続き、2010年末に稼働予定のインドの一貫製鉄所にも新工法を採用する。亜鉛などの不純物を多く含むインドの鉄鉱石も利用可能で、インドやべトナムなど新興国で最適な工法とみている。ポスコはインドで鉄鉱石の採掘権を獲得している。
 良質な鉄鉱石の価格は世界的に高騰しており、今後は低品位の鉄鉱石をどう生かすかが、鉄鋼メーカーのコスト競争力を左右する展開になることも予想される。ポスコよ新技術を外販せず、自社の製鉄所のみで使用、コスト競争力強化の切り札とする考えだ。

 

神戸製鋼所 新還元溶解製鉄法「ITmk3」

 ITmk3(アイティー マークスリー)=Iron making Technology Mark Three

「ITmk3」プロセスとは、当社が開発を進めてきた次世代の新製鉄法で、従来の高炉法による製鉄(第一世代)、天然ガスをベースとしたミドレックス法等の直接還元製鉄(第二世代)に続く第三世代の製鉄法と位置付けています。粉鉱石と粉炭を造粒した上で回転炉床炉(RHF)に投入し、10分程度という非常に短時間でRHF内部にて還元・溶融・スラグ分離を一気に行い、粒鉄を製造する画期的なプロセスです。

当社では、1996年から「ITmk3」の研究開発を開始し、1999年10月には当社加古川製鉄所に設置した年産3,000t規模のパイロットプラントにおいて、連続操業による粒鉄の製造に成功し、2000年12月に実験を完了しました。

その後、更なるスケールアップを伴う実証を行うにあたり、共同研究パートナーを募ってきました。

その結果、(2001/11)米国ミネソタ州政府及び北米最大の鉱山会社「クリーブランド クリフス社」、大手電炉メーカー「スティール ダイナミックス社」等が出資する「メサビ ナゲット社」との間で商品化に関する覚書(MOU)を締結致しました。
@ミネソタ州に多数立地する鉄鉱山の競争力を向上させ、産業の振興と雇用を創出させようとする州政府、にて還元しA鉄鉱石を山元粒鉄にすることにより高付加価値化し、市場に提供しようとする鉱山会社、保しようとすB良質の鉄源を安価かつ安定的に確る電気炉メーカー、りましたC本プロセスの商品化を目的とする当社、それぞれの意向が合致.


2007/5/30 中央日報

ポスコがFINEX竣工…世界初

ポスコが100年の伝統を持つ溶鉱炉工程に代わる製鉄設備を世界で初めて完成した。 15年間の研究開発の末、ポスコだけの工程開発に成功し、本格的な鉄鋼設備の輸出に乗り出すことになった。

ポスコは30日、慶尚北道(キョンサンブクド)浦項製鉄所で、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領、金栄柱(キム・ヨンジュ)産業資源部(産資部)長官など国内・海外から1000人余が出席した中、年産150万トン規模のFINEX工場で竣工式を行った。 ポスコが開発した次世代製鉄新技術であるFINEX商用化設備を稼働したのだ。 盧大統領と李亀沢(イ・クテック)ポスコ会長らが竣工ボタンを押すと、FINEXの溶融炉下部から1200度を超える溶解鉄が流れ出た。

李亀沢会長は祝辞で「世界主要鉄鋼会社が大型化を通じて競争力を強化し、後発鉄鋼会社の挑戦が強まる状況の中、FINEX工場の竣工はポスコの競争力向上に大きく寄与するはず」とし「FINEX工場竣工で来年には年間3400万トンの粗鋼生産が可能で、世界4位から2位に浮上する可能性がある」と述べた。

昨年を基準に世界1位はアルセロール・ミタル(1億1798万トン)。日本の新日鉄(3370万トン)とJFE(3202万トン)が2、3位を占めた。


東亜日報 MAY 31, 2007

「夢の製鉄工程」 ポスコがのファイネックス工法で鉄鋼史を書き換える

●15年投資―研究が結実
14世紀頃に発明された溶鉱炉の工法が近代製鉄技術に一線を画す出来事だとすると、ポスコのファイネックス工法は「21世紀の現代製鉄技術」の新しい幕を開けるシグナルだとの評価が出ている。

鉄鉱石や石炭を一度に入れて鉄を溶かす従来の溶鉱炉は、大量に鉄を溶かすことはできるが、環境汚染に経済性が低いという弱点があった。鉄鉱石や石炭を溶鉱炉に入れる前に、粉状の鉄鉱石と石炭を塊として作るため、それぞれ焼結工程やコークス工程を経なければならなかったためだ。

しかし、ファイネックス工法は、この二つの工程をなくし、溶鉱炉の短所を一気に解消した。自然状態での粉の鉄鉱石(粉鋼)と石炭を加工しなくても、すぐ使えるようになったわけだ。

これを受けて、ファイネックス設備への投資費と鉄鋼の製造コストは、同規模の溶鉱炉設備に比べて、それぞれ20%と15%が削減された。

5%の価格差をめぐって世界の鉄鋼業界が激しい競争を繰り広げていることを考えると、ファイネックス工法は従来の溶鉱炉に比べて35%の価格競争力を備えることになる。

また、工程が減ることによって、環境汚染物質も画期的に減った。同規模の溶鉱炉に比べれば、窒素酸化物と硫酸化物はそれぞれ1%と3%が、飛散ごみは28%まで減少した。

●ベトナムーインドなどに建設推進
ファイネックス工法のすごさは、100年以上の歴史を持つ先進国の鉄鋼メーカすら失敗した溶鉱炉の代替工法を成功させたということからも分かる。

日本のディオス(DIOS)工法や豪州のハイスメルト(HISMELT)工法など、世界各国の鉄鋼メーカーは粉末状の鉄鉱石を直接原料として使える工法の開発に乗り出したが、量産には至らなかった。

DIOS法(石炭直接利用溶融還元製鉄技術)は、粉・粒状の非粘結炭、鉄鉱石を高炉法で必要なコークス法、焼結法によらず直接使用するもの。非粘結炭は直接、鉄鉱石は予備還元したのち、溶融還元炉に装入し、溶銑を生産する技術。
石炭利用総合センターと日本鉄鋼連盟が開発

2003年1月、西豪州クイナナに於いて、ハイスメルト(HIsmelt)のプラント建設が始まった。
ハイスメルトのプロセスは、コークス炉や焼却炉を使う事なく粉鉱石を直接高品位の銑鉄(鉄分96%)に転換する画期的溶融還元製鉄法であり、この技術のほとんどはリオティントによって開発された。

国際鉄鋼協会(IISI)のイアン・クリスマス事務総長は同日、竣工式に送った画像メッセージで、「ファイネックスは世界の鉄鋼産業に膨大な影響力を発揮するだろう」としながら、「ポスコが現在は勿論のこと、未来においても世界最高の鉄鋼会社だということを立証した」と高く評価した。

ポスコでは浦項(ポハン)製鉄所の古い溶鉱炉設備をファイネックス工法に取り替える一方、ファイネックス工法を世界の標準技術として作り上げる計画だ。とりわけ粉鉱の埋蔵量に豊富なインドやベトナムで頭角をあらわすことになると見られる。

李会長は、「インドで推進している一貫製鉄所をファイネックス工法で推進している」としながら、「今後、ベトナムやインドでの追加投資が行われれば、ファイネックスが有力だ」と説明した。

しかし、ポスコはファイネックス工法を戦略的な核心技術として活用するものの、技術の流出を最大限食い止めるために技術移転ではなく、自主的な投資方式で進める計画だ。

すでに、ファイネックス関連技術を保護するために、海外20ヵ国余りで58件の特許を出願している状態だ。

●ポスコ、世界第2位に浮上する可能性
ポスコは今後、ファイネックスの常用設備だけで年間150万トンの鉄を溶かしたものを生産する計画だ。これを受けて、ポスコの粗鋼生産能力は来年3400万トンに増え、粗鋼生産高基準で世界4位から2位に浮上するものと展望される。

ここにインドやベトナムなどに現在建設中または今後追加で建設する一貫製鉄設備施設を考慮に入れれば、ポスコは10年後には総合粗鋼の生産量が4200万トンに増え、世界トップのアルセローミタルとも競争できるようになる。

また、「買収合併(M&A)の危険」から脱し、世界有数の鉄鋼メーカーとの競争で比較優位を占めるのに役立つものと見られる。一方、盧武鉉大統領は、「ファイネックスは我々が世界で初めて開発した革新的な技術であり、世界の鉄鋼史を書き換える快挙だ」としながら、「ポスコは韓国国民に自信を持たせた誇らしい企業だ」と語った。