(日本経済新聞 2001/12/23

  新日鉄と日新、包括提携  鉄鋼半製品の融通や資材調達 住金・神鋼と4社連合

 新日本製鉄と日新製鋼は鉄鋼事業で包括提携する。鉄鋼製品の半製品となる鉄源の融通、共同物流や資材調達などで協力する。
新日鉄は既に提携した住友金属工業、神戸製鋼所と合わせ4社連合を結成する。4社による高炉を含めた設備の統廃合を検討し、来秋に経営統合するNKKと川崎製鉄に対抗する。
 千速晃新日鉄社長と田中実日新会長兼社長が合意、具体的な内容の詰めに入った。新日鉄と日新は既にステンレスの母材となる熱延鋼板を相互供給しており、「提携を鉄鋼事業全般に広げる」(日新首脳)。鉄源融通や資材・機材の調達だけでなく、需要減退で収益性が落ちている建材向け表面処理鋼板などでも協力する可能性がある。  

 両社は12月初め、
ステンレス事業の統合交渉を凍結した。日新の普通鋼事業の収益が大幅に悪化、収益の柱であるステンレス事業の分離が難しくなったため。日新は提携をてこにコストダウンを進めるとともに呉製鉄所(広島県呉市)の稼働率向上を図り、普通鋼事業の立て直しを急ぐ。  
 今後は新日鉄、住金、神鋼、日新の4社間で鉄源を相互に融通する体制を作り、コスト競争力を高める。西日本にある住金の和歌山製鉄所、神鋼の加古川製鉄所と神戸製鉄所、新日鉄の広畑製鉄所と大分製鉄所などに「日新の呉製鉄所を加えて生産体制の最適化を考えた方が効率が上がる」(新日鉄幹部)と判断した。


(日本経済新聞 2001/12/22)

  NKK/川鉄 生産能力200万トン削減 鉄鋼、3拠点体制に  
   統合計画発表 2003年、事業別に5社

 NKKと川崎製鉄は21日、経営統合計画を発表した。統合後の新名称は「JFEグループ」で、来年10月をめどに持ち株会社を設立、2003年4月をめどに鉄鋼、エンジニアリングなど5事業会社を傘下に置く。統合比率は川鉄1に対しNKK0.75。グループの中核となる鉄鋼会社は設備を集約し、鋼材生産能力の1割弱に当たる200万トン程度削減し、収益力項向上をめざす。
 JFEグループは年間粗鋼生産量2500万トンと新日本製鉄に匹敵する規模になる。新名称のJFEは日本を示すJ、コア事業となる鉄鋼(鉄)の元素記号FeとエンジニアリングのEを組み合わせた。
 持ち株会社のJFEホールディングスの社長には下垣内洋一NKK社長、会長には江本寛治川鉄会長が就任する。事業別再編後の鉄鋼会社、JFEスチールの社長には数土文夫川鉄社長、会長には半明正之NKK副社長が就き、JFEエンジニアリングの社長には土手重治NKK副社長がそれぞれ就任する。  
 持ち株会社は株式移転により設立。NKK株1株に対し持ち株会社株0.75株、川鉄株1株に対し同1.0株を割り当てる。NKKが米鉄鋼子会社、ナショナル・スチールをUSスチールに売却することを前提に算定し、最近の株価に見合った比率になった。
 
 経営統合によるコスト削減効果は2005年度で年間800億円。このうち自然減を中心にした6千−7千人の要員削減などで300億円、生産・補修・物流コストの低減や設備集約などで200億円を見込んでいる。
 
 2006年3月期に連結で売上高はほぼ現状並みとしているが、経常利益2千億円(2002年3月期予想は単純合計でゼロ)をめざす。
 事業別再編後は持ち株会社の傘下で鉄鋼、エンジニアリング、都市開発、半導体、研究開発を手掛ける5社体制になる。鉄鋼事業では製鉄所を再編。京浜(NKK)と千葉(川鉄)、福山(NKK)と水島(川鉄)をそれぞれ一体運営し、東日本、西日本の2製鉄所にする。鋼管を生産する知多製造所と合わせ3拠点体制となる。数土川鉄杜長は「聖域を設けずに検討し鋼材生産能力を200万トン程度削減したい」と述べた。
 グループ会社の再編も進める。建材、容器事業で2003年4月をめどにグループ会社同士を合併させる。容器では大証二部上場の川鉄コンテイナーと鋼管ドラムが合併、新日鉄子会社の日鉄ドラムを抜きドラム缶国内最大手になる。
                              
 海外事業を見直し経営資源の集中を図る。NKKがナショナル・スチールを売却するほか、
川鉄は21日、欧米アジアで展開している機能樹脂事業を米ゼネラル・エレクトリックに売却することで合意した。

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新名称は「JFEグループ」   
持ち株会社 」FEホールディングス
統合比率  川崎製鉄1:NKK 0.75
設立時期  2002年10月めど
人事    会長は江本寛治(川鉄会長)、社長は下垣内洋一(NKK社長)
事業形態  2003年4月めどに持ち株会社傘下に鉄鋼など5つの事業会社
収益目標  2005年度に経常利益2000億円、売上高経常利益率7.5%


2002/08/06 川崎製鉄、日本金属工業

川崎製鉄(株)と日本金属工業(株)との相互協力の拡大について

 川崎製鉄株式会社(所在地:東京都千代田区、社長:數土文夫)と日本金属工業株式会社(所在地:東京都新宿区、社長:木村良悦)とは、双方の競争力強化のため、平成12年1月より実施してきた、クロム系ステンレス鋼とニッケル系ステンレス鋼の中間製品の相互供給に加え、生産、原材料・資材調達、物流など多面的に相互協力の拡大を図っていくことで、合意いたしました。
 相互協力の具体策については、今後、両社の実務者レベルを中心とした推進チームを発足させ検討を進めていく予定です。
 現時点で、検討を進めることで合意している内容は以下のとおりです。

【合意内容】
1. 両社は、極薄製品を含めたステンレス製品の一部について、冷延工程での生産委託等、相互に協力し、双方の競争力を強化する。
2. 両社は、建材プロジェクトにおいて、双方の競争力を有効活用し、多様な素材ニーズに対応すべく相互に協力する。
3. 両社は、原材料・資材調達、物流面でのコストダウン推進のため、相互に協力する。

 


朝日新聞 2002/9/28

住友金属支援、グループ中心に500億円出資

 鉄鋼大手の住友金属工業は、住友グループの資本支援と、昨年業務提携した新日本製鉄の協力を得て、採算が悪化していた主力の和歌山製鉄所(和歌山市)について、中核的な薄板製造設備を04年までに休止するなど、抜本的な再建策の検討に入った。住友グループを中心に総額約500億円の出資を仰ぎ、合わせて新日鉄との間では資本提携に踏み込むことも調整している。薄板事業は自動車や家電製品向けだが、これを同社最大拠点の鹿島製鉄所(茨城県鹿嶋市)に集約。過剰設備の廃棄を進め、1兆6000億円を超す有利子負債の圧縮を目指す。

 同社は昨年度が1047億円の赤字だったが、今年度は輸出増などの業績回復で150億円の黒字(いずれも連結当期ベース)を見込み、余力のあるうちに抜本リストラを進める。和歌山は同社の2大生産拠点の一つだが、過去の生産競争で抱え込んだ過剰設備の合理化を検討せざるを得ないと判断した。

 和歌山の薄板の製造設備の休止で年間約150万トンの粗鋼が余る見込みだが、需要が急成長中の中国や台湾など海外の鉄鋼メーカーに売る方向で調整している。

 一方、集約先の鹿島では、生産能力の関係から新たに100万トン分しか薄板生産を増やせない。このため和歌山の休止に見合う残り50万トン分については、昨年12月に提携した新日鉄から調達し、需要家への供給を持続する計画だ。また、和歌山の高炉やシームレスパイプなど、ほかの主要生産部門は稼働を続ける。

 鉄鋼業界は27日に2位NKKと3位川崎製鉄の経営統合でJFEホールディングスが発足、最大手の新日鉄と提携している4位の住金、5位の神戸製鋼所の「新日鉄陣営」との競争が激化している。新日鉄陣営による住金鹿島製鉄所への集約を軸にした提携は、これまでで最大級。金融機関の不良債権処理が加速するなか、有利子負債を積極的に減らす狙いもある。


日本経済新聞 2002/9/28

「JFEグループ」スタート
  設備集約、追加を検討  下工程中心、新日鉄も対抗か

 NKKと川崎製鉄が経営統合し27日発足した「JFEグループ」は追加の設備集約を実施する方向で検討に入った。第一弾の計画実現にメドがついたため、自動車、家電向け表面処理鋼板や建材などに使う形鋼、鋼管類をつくる下工程を対象に一段のライン集約を狙う。
 高炉、転炉で半製品の鋼材をつくるまでの上工程に対し、それ以降の圧延やメッキ処理で板を生産したり、パイプ状などに加工したりするのが下工程。
 5月にまとめた高炉2基廃棄と下工程35ラインのうち6、7ラインを休止する計画について持ち株会社JFEホールディングスの江本寛治会長は27日の会見で「(休止は)大半を来年4月の鉄鋼事業統合までに実行できる」とした。
 「年間粗鋼生産2500万トンレベルは維持する」(ホールディングス幹部)ため高炉の追加廃棄はしない方針。しかし、下工程は「集中生産の組み合わせなどを工夫すれば、さらに集約の余地がある」と見ている。下垣内洋一ホールディングス杜長は「事業が重なる子会社同士は早期に統合する」とし、グループ全体の設備合理化を加速する考えだ。
 国内の過剰設備は小規模な高炉もさることながら下工程設備が深刻化。鋼材内需が減少する一方、アジア中心に半製品需要が拡大するなか、設備の2、3割程度が余剰と見られている。しかし品種ごとにラインが分かれており、顧客との関係から1社単独では廃棄に踏み切りにくかった。
 一方、ライバルの新日本製鉄はJFEに対抗する形で神戸製鋼所、住友金属工業と相次ぎ提携。今後、設備集約まで踏み込む可能性は少なくない。2社間提携を3社の枠組みまで広げ、下工程などの生産集約へ発展させるかが注目される。

販売価格 高い方に統一
 JFEグループとして経営統合したNKKと川崎製鉄は両社の間で販売価格に差があった場合は高値に統一する方針を打ち出した。今後両社の各営業担当部局で「取引先ごとに取引条件を洗い出し、高値に合わせる形で値上げ交渉していく」(NKK)構えだ。
 両社は独占禁止法により26日まで共同の営業行為が認められていなかったが、「今後は2つの価格は存在しない」(持ち株会社であるJFEホールディングスの下垣内洋一社長)として統合2社の販売価格差をなくす。
 鋼材の店売り(一般流通)市揚では「昨年末まではNKK、川鉄間で統合後の主導権を意識するシェア争いがあったが、鋼材価格が上昇し始めた今年は極端な競合がなくなった」(千葉県浦安市の問屋)という。他の高炉の営業担当者も「鋼材価格安の是正を一つの目標とした統合だけに、両社の協調営業は価格の強材料となる」と見ている。

 


日本経済新聞 2002/11/3

新日鉄・住金ステンレス統合 来年10月で合意

 新日本製鉄と住友金属工業は来年4月に予定していたステンレス事業の統合を同10月に延期することで合意した。新日鉄は事業統合で設立する新会社に光製鉄所(山口県光市)で手掛けるチタン製品の生産の一部委託も検討する。
 両社はステンレス事業の統合時期について、受注や生産に関する両社のシステムを一体化するのに時間がかかることなどから先延ばしする方向で調整していた。
 ステンレス生産・販売の統合会社は新日鉄の光製鉄所の薄鋼板や線材・棒鋼の製造設備、八幡製鉄所(北九州市)の厚鋼板の製造設備、住金の鹿島製鉄所(茨城県鹿嶋市)の薄鋼板の製造設備などを分離し設立する。
 光製鉄所のステンレス鋼板や線材の圧延ラインではチタンの圧延もしている。このため、新日鉄はチタンの薄板や線材の生産をステンレス事業の統合会社に委託する方向で検討に入った。統合会社への出資比率は新日鉄が住金を上回り主導権を持つ。両社は統合会社の収益力を高めるため、合計で7つあるステンレス薄鋼板の圧延ラインの一部を休止し稼働率を引き上げる方針だ。