クミアイ化学、三井化学、日産化学、ブラジルのイハラブラスに出資

2011/10/1 日本経済新聞

 三井化学とクミアイ化学工業、日産化学工業の3社は、ブラジルの日系農薬メーカーに出資する。現地資本が持つ2割弱の株式を買い取る。ブラジルは穀物を中心に農産物の生産量が拡大しており、農薬も成長市場とみて事業を拡大する。
 3社が出資するのはサンパウロ州の農薬メーカー、イハラブラス。出資比率は三井化学アグロ(東京・港)が10%超、日産化学が3%、すでに18%を出資するクミアイ化学は22%になる見通し。

 筆頭株主は28%の日本曹達で変わらない。

いずれも譲渡元は日系現地法人、カヤタニ社(AGROINVEST KAYATANI S.A.)となっており、理由はわからないが「カヤタニ社は今回、全保有株式を3社に分譲したことになる」という(クミアイ化学)。

クミアイ化学によると、もともとイハラブラス社は、クミアイ化学の前身であるイハラ農薬と三井物産が1965年に共同で設立した農薬製造会社(当時は INDUSUTRIAS QUIMICAS MITSUI−IHARA S.A)だった。その後のブラジル経済の悪化で経営が維持できなくなり、カヤタニに経営権を譲渡したいきさつがある。

イハラブラス社の全容は、日本ではつかみにくい。資本金や株主構成なども正確には不明である。
しかし、大手株主は(1)日本曹達 28%(2)住友商事 22%(3)クミアイ化学 22%(関係会社分を含む)の順となっており、今回の三井化学と日産化学は新規の資本参加となる。現地資本も多少入っているもようだ。

イハラブラスは、ブラジルでは第9位の農薬メーカーだが、三井化学によると、現地では同社が開発した新規殺虫剤事業化のため、政府に製造販売承認を申請中である。
 

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2011/10/6 三井化学

ブラジル農薬会社「イハラブラス」の株式取得について
−農業化学品事業のグローバル展開の加速−
 

 三井化学アグロは、ブラジル連邦共和国の農薬会社であるIharabras S.A.につき、同社株主であるAgroinvest Kayatani S.A.との間で株式譲渡契約を締結し、9 月26 日(ブラジル現地時間)にイハラブラスの発行済み株式の11.89%を取得いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。

1.株式取得の目的
 三井化学株式会社(社長:田中 稔一)は、2011 年度中期経営計画において、農業化学品事業を景気変動による影響を受け難い「重点5 事業」の一つとして位置付け、早期拡大を図っています。
 この中期経営計画の基本戦略に基づき、三井化学グループで農業化学品事業を行っている三井化学アグロは、海外事業の一層の拡大のため、成長が見込まれるブラジル市場における事業強化を重要な戦略課題の一つとして位置づけています。
 一方、イハラブラスは、三井化学アグロで生産する農薬原体(*1)を使用した製剤(*2)の製造・販売を通じ、これまで良好な関係を築いてきた重要なパートナーです。
 今回の株式取得により、三井化学グループでは現地有力企業であるイハラブラスとの関係を強化し、同地域での事業ノウハウ・情報の取得、当社薬剤の市場拡大及び新規薬剤の開発促進につなげ、農業化学品事業の更なる強化・拡大を図ってまいります。
   *1 原体:農薬の有効成分
   *2 製剤:原体の希釈・調合・加工等を行い、そのまま農業に使用できる状態にした製品

2.イハラブラスの概要
(1)社名 Iharabras S.A. Indústrias Químicas
(2)主な事業内容 農薬の製剤製造・販売
(3)設立 1965 年3 月18 日
(4)所在地 ブラジル サンパウロ州 ソロカバ市
(5)代表者 Julio Borges Garcia
(6)売上高(2010 年) 498 百万ブラジルレアル(約249 億円)

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2011/10/6 日産化学工業

日産化学工業は、アグロインベストカヤタニ社(AGROINVEST KAYATANI S.A. ADMINISTRAÇÃO, EMPREENDIMENTOS E PARTICIPAÇÕES)との間で株式譲渡契約を締結し、イハラブラス社(IHARABRÁS S.A. INDÚSTRIAS QUÍMICAS)の発行済み株式3%を9月30日(ブラジル現地時間)に取得いたしました。
 

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2011/10/6 クミアイ化学工業

当社は、ブラジル連邦共和国(以下「ブラジル」)の農薬会社であるIharabras S.A. Industrias Quimicas(以下「イハラブラス社」)の株式を追加取得いたしました。この取得により、平成24 年度期首(平成23 11 1 日)からイハラブラス社を持分法適用会社として適用する予定ですので、下記の通りお知らせいたします。

1.株式取得目的

当社は広大な農業市場をもち、高い成長が見込まれるブラジルに早くから着目し、1965 3 月イハラ農薬株式会社(現・当社)と三井物産株式会社との合弁で農薬製造販売会社、INDUSTRIAS QUIMICAS MITSUI-IHARA S.A.(現・イハラブラス社)を設立いたしました。その後、一部株式の保有を残し、経営権を現地日系法人のAgroinvest Kayatani S.A.(以下「カヤタニ」)に譲渡しましたが、農薬原体の供給および製剤の技術提携など、イハラブラス社との友好的な協力関係は継続してまいりました。

今般、当社は海外において有望な複数の農薬原体の登録・上市を見込んでおり、グローバル展開の更なる強化・拡大のため、また、世界の人口増加等に対応して世界規模での食糧増産に寄与することが見込まれるブラジル市場における事業強化の一環として、カヤタニよりイハラブラス社の発行済み株式3.15%を取得いたしました。今後イハラブラス社との関係をさらに深め、同地域での当社薬剤の市場拡大及び新規薬剤の開発・上市を促進し、事業の更なる拡大を図ってまいります。

今回の株式取得により、当社(現地非連結子会社のK-I CHEMICAL DO BRASIL LTDA.出資分を含む)がすでに出資している株式と併せ、所有持分割合が22.00となりますので、イハラブラス社を持分法適用会社として、平成24 年度期首(平成23 11 1 日)から適用する予定です。


 

Iharabras

On March 18, 1965 Ihara was born from the idealistic entrepreneurs association of Brazilian and Japanese, in order to participate in the progress of Brazil to provide more modern farming techniques, productive and profitable.

The first was Indústrias Químicas Mitsui Ihara S/A from the purchase of Agropecuária e Comercial Maracanã S/A de São Paulo, with strong participation by Mitsui & Co. Ltd and Ihara Chemical & Co., both Japanese.

In 1968 other companies have joined the society, as the Kumiai Chemichal Industry Co. Ltd, Nippon Soda Co. Ltd, Mitsubishi Corporation, Sumitomo Corporation, Sumitomo Chemical Co. Ltd, Takeda Chemical Industries Ltd and Toho Chemical Industry Co. Ltd.

In 1972, Mitsui & Co. Ltda relinquished its equity stake, allowing Kumiai Chemical to become the controlling shareholder. At the same time, the present name of Iharabras S/A came into use.

Through a 1984 share-transfer agreement, Agroinvest Kayatani S.A, a Brazilian group, acquired 66% of Iharabras’ shares and thus became the controlling shareholder. In 1997, Agroinvest Kayatani reduced its stake to 51.2% by transferring a portion of its shares to a Japanese group, although it still retained voting control.

Agroinvest Kayataniは名前の通り、アグリビジネス分野への投資を目的とした投資会社である。同社の主な出資者は日系人一世、ニ世で何らかの形で農業に関ってきた人々で構成された会社であった。この中にイ社の現社長、クニカズ・ニノミヤ氏もいた。ニノミヤ氏を含め、ア・カヤタニの関係者にとり農業それ自身が彼らの人生でもあった。これは、イ社の会社ロゴ ”Agricultura é a nossa vida - 農業はわれらが人生” として、今日でもイ社の事業精神のバックボーンとなっている。ア・カヤタニの参画(出資比率66%)により、成長への基盤ができると同時に、従来にも増して農業生産の現場に入り込み、生産者の声を自社製品の販売・製造にできる限り反映させていった。その一環として、1986年にはイ社自らが農業生産者となり、生産者の立場から自社製品の品質向上を目的に、バイア州の野菜農場(Bagisa)に出資した。現在では、化学・農薬メーカが農業生産者となる例は、大手同業他社に少なからず見られるが、この時代に小規模企業のイ社が自ら農業生産者になったのも、ア・インベスチ関係者が農業を自らの人生として捉え、常に農業への貢献に拘った結果であった。なお、イ社の成長にともないア・カヤタニの同社への出資比率は現在では18%まで下がり、代わって日本の化学・農薬メーカと商社がイ社の過半数を占めている。

カルドーゾ政権が誕生した時を同じくして、イ社の業績は飛躍的に拡大していくこととなった。その最大の要因は、イ社の現社長ニノミヤ氏が伝統的な経営が主体であったアグロビジネスに近代的経営の手法を導入したことであった。ニノミヤ氏は1984年のア・インベスチのイ社への参画にともないイ社に入社した。ニノミヤ氏は1964年にLuiz De Queiroz高等農学校を卒業し翌年、南米最大の農業協同組合に発展したコチア農業協同組合(農業関連以外の様々な分野に進出したためコチア産業組合とも呼ばれる)に入社し、ブラジル農業に関ることとなった。1993年にイ社の社長となったニノミヤ氏は、積極的に近代的経営手法を取り入れた。その代表例が債権回収である。ブラジルでのビジネスで多くの企業が経験するのは債権回収の問題である。特にアグリビジネスにおいては、農産物の収穫が天候に左右され、生産者の収入も相対的に不安定となる。したがい、債権回収率の向上は企業の業績に直結する大きな課題の一つである。この債権回収にニノミヤ社長が取り入れた手法は、財務部門の権限と関与を強化することであった。ブラジルの企業では販売部門に製品販売から債権回収まで一任するのが一般的だが、イ社では財務部門が大きな権限を持ち、客先との取引開始から代金(債権)回収まで深く関与する体制を確立した。これにより、イ社の債権回収率は飛躍的に改善され、現在では同業の多国籍企業と比較しても、はるかに高い回収率を誇っている。

 

 

クミアイ化学

 1949年(昭和24年)6月 - 静岡県清水市(現:静岡市清水区)に庵原農薬株式会社を設立。
 

1962年(昭和37年)

1月 - イハラ農薬株式会社に社名変更。
11月 - 東京証券取引所市場第二部に上場。

1968年(昭和43年)

10月 - クミアイ化学工業株式会社に社名変更。
11月 - 東亜農薬株式会社を吸収合併。
12月 - 本社を東京都千代田区へ移転。