太古の地球を覆う大気は、二酸化炭素(CO2)濃度が現在の数百倍も高かったと推定されています。その大量のCO2はどこへいったのか? いまでは、森林が多くのCO2を吸収し、炭素を体内に固定して地球温暖化の抑制に有効であることが知られており、健全な森林の育成や砂漠緑化などの取組がさまざまに行われています。ところが太古の地球では、海底の鉱物がより大量にCO2を封じ込めていたことがわかってきたのです。

 オーストラリア西北部のピルバラには、約35億年前の海底で噴火した玄武岩層(海洋地殻)が露出しています。その玄武岩層を調査したところ、現在の海洋や生物などが固定していると推測される全炭素量の約4倍の量を、当時の海洋地殻が固定していることが確認されました。海洋に溶け込んだCO2が玄武岩中のカルシウムイオンなどと反応し、炭酸塩鉱物として沈殿することで、大気中の濃度を大きく低下させたわけです。

 現在の地球では、大気中のCO2濃度が当時に比べると著しく低いために、この太古のCO2固定メカニズムは起こっていません。これを人工的に機能させることができれば、非常に有効な温暖化対策になります。世界で1年間に排出されるCO2を人工的に海洋地殻に固定するには、100平方キロメートル程度の面積があれば十分であり、海洋地殻の面積全体からみるとごく小さな点ぐらいの大きさでしかないのです。まさに海洋地殻は、無尽蔵の可能性を有しています。

アイスランドの電力会社レイキャヴィク・エナジーは2017年10月11日、マスメディアを集めて新しいプロジェクトを披露した。プレゼンテーションのタイトルは、「二酸化炭素という怪物を石に変える方法」だ。

「CarbFix」と呼ばれるこのプロジェクトは2016年、試験運用で素晴らしい成果を上げたことを論文で明らかにした。その仕組みは、地熱発電所から回収した二酸化炭素(高温の地下水を汲み上げたときに発生する火山性ガスに含まれている)を、水に溶かしたうえで地下に送り込むというものだ。すると二酸化炭素は、玄武岩層に含まれるカルシウムなどと化学反応を起こし、石灰石のような炭酸塩鉱物に変化する。

どのような場所であっても、地中に送り込まれた二酸化炭素は最終的に必ずこうなるが、通常は数百年から数千年の時間がかかる。ところが、この地域の玄武岩層に送り込まれた二酸化炭素は、数カ月で変化を開始し、95パーセントが石化するのに2年程度しかかからなかった。このプロジェクトの手法が、二酸化炭素を貯蔵する方法として大きな注目を集めたのはそのためだ。

研究チームはこれまで二酸化炭素のみを地中に貯留する実験を行っていたが、2012〜2013年に実施したパイロットプロジェクトでは、250トンもの二酸化炭素、水、硫化水素の混合物を深さ400〜800メートルの玄武岩層にポンプで注入して経過を観察してきた。その結果、大半は数か月で炭酸塩鉱物に変化し、2年以内に95%が鉱物化したという。

「この実験によって、大量の二酸化炭素を地中に注入し、非常に安全な方法で貯留できることが示された。玄武岩が多い地域にある発電所は世界中に数多くあり、将来的にはこれらの施設でも同じ手法が使えると考えている」

ヘトリスヘイジ発電所の付近には玄武岩や水が潤沢にあるため、二酸化炭素1トン当たり30ドルという低コストで鉱物化することができる。プロジェクトの成果が見え始めた2014年以降、既に約5千トンもの二酸化炭素が地中に注入されたという。一方、二酸化炭素の排出量が多い火力発電所では二酸化炭素1トン当たり25トンの水が必要な上、蒸気からCO2を分離して地中に注入するにも多くの費用が掛かるため、トータルでは二酸化炭素1トン当たり130ドルのコストがかかる。
 

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海藻類は光合成によるCO2の吸収能力が非常に優れていることがあります。海藻類のCO2吸収効果を熱帯雨林と比べた結果、ホンダワラやワカメは約2倍以上のCO2吸収効果があり、中でもコンブは地球上の光合成をする生物の内、最も高い能力を持っています。

光合成に必要な太陽の光が届く深さ70〜80mぐらい迄ですが、地球の酸素の3分の2は上図のブルーカーボンと言われる浅いところに住む植物プランクトンや海藻による光合成で作られています。
森林より海藻の方がたくさん酸素を作っているのですね。海藻の大事さがよく判ります。

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海草場における一次生産(光合成)により,海草場内の炭素や陸から流入した炭素が取り込まれる.水中の炭素減少に応じて,大気中のCO2が海水に吸収される.海草場によって吸収された炭素の一部は,底泥内に埋没し,数千年スケールで隔離貯留される.