公益資本主義について

 

2023/4/1  Chat GPT テスト
原丈人の「公益」資本主義を批判せよ
 
 
原丈人氏が提唱する「公益」資本主義とは、企業が社会に対して貢献することを重視した経営理念のことです。この理念には、企業が単に利益を追求するだけでなく、社会的責任を果たすことが求められます。

一方で、この「公益」資本主義に対する批判としては、以下のようなものが挙げられます。

まず、企業が社会的責任を果たすことは重要ですが、そのためには利益を生み出すことが必要です。企業が利益を上げなければ、社会的責任を果たすための資源を持ち得ないこともあります。そのため、企業が社会的責任を果たすためには、まず経済的な成長が不可欠であるという考え方があります。

また、企業が社会的責任を果たすことは、政府や非営利団体などの他の組織と協力することが必要です。企業が単独で社会的課題を解決することは困難であり、他の組織と連携することが求められます。

さらに、原氏が提唱する「公益」資本主義は、どのような「公益」を重視するかによって、価値観が左右されるという問題もあります。企業が社会に貢献するためには、どのような価値観を重視するかについて議論が必要であり、これには多様な意見が存在します。

以上のように、企業が社会的責任を果たすことは重要ですが、そのためには利益を生み出すことが必要であり、政府や非営利団体などの他の組織と協力することが求められます。また、「公益」資本主義を実現するためには、多様な価値観を尊重し、議論を行うことが必要であると言えます。

 

 

図書館で次の2冊を借りた。

1.原 丈人 「公益」資本主義 英米資本主義の終焉 文春新書

2.スズキトモ 「新しい資本主義」のアカウンティング

 

しかし、原氏の本を読み始め、馬鹿らしくなって、飛ばし読みで済ませた。スズキ氏の本はパラパラと見ただけ。

原 丈人 「公益」資本主義

公益資本主義の12のポイント 

1.「会社の公器性」と「経営者の責任」の明確化

   上場企業は公器    それぞれへの対応は異なる。

2.中長期株主の優遇

   株主権利は5年以上     

3.にわか株主の排除

   超高速取引  

4. 保有期間でCapital Gain 税率を変える

5.  Stock option 廃止

6.新技術・新産業への投資の税金控除

7.  株主優遇と同程度の従業員へのボーナス支給

8.ROEに代わる企業価値基準ROC Return on Company

9.四半期決算の廃止

10 社外取締役制度の改善  中長期視点、リスクのある新事業、公正な配分

11 時価会計、減損会計見直し

12 日本初の新しい経済指標

 

以下に感想を述べます。

 

1.現在の資本主義の問題を列挙し、だから公益資本主義がよいのだという論調である。

 しかし、列挙している問題は、主に米国での、特にひどい例であり、日本ではあまり例がない問題である。

アメリカン航空が、経営危機に陥った時に、経営陣は340億円の給与削減を実施し、業績が回復したら、経営陣は200億円ものボーナスを受け取ったことを何度も例に挙げ、「会社は株主のモノ」であるいう考えがいかに倒錯したものであるかを、強調している。

 こんな企業は一時的に利益をあげたとしても、永続せず、没落する。

   「短期利益の最大化」 はあり得ない。  
   R&Dを削ると、競争に負ける。
   製品市場での競争、労働市場での競争がある。

 
 また、これまで問題が出ると、それに対処する法律で不正を規制してきた。 
   
    独禁法、労働法、税法、会社法、公害防止法、各業界の業法(農薬、医薬、食品、JIS、ーーー)

 既存の法律の抜け穴を使った手法での利益稼ぎであり、法律が後追いになるのは止むを得ない。
 
  今後も法規制で対処すればよい。
  
   現在、多国籍企業がTax Havenを使い、脱税するのも、各国で課税するよう、動いている。

   原氏が主張するにわか株主の排除の一つとしての超高速取引禁止も検討されている。

 
 逆に、仮に公益資本主義を採用したとしても、抜け穴を探す人間が出てくる。社会主義経済でも問題は多数あった。

 

 米国では貧富の差が大きいのは事実。日本では大金持ちは例外。

 トランプのように遺産によるもの(米国の連邦遺産税の基礎控除額 が1,140万ドルと大きい)もあるが、
 アップル、グーグル、テスラ、アマゾン等々、新規事業を成功させたケースも多い。

 大きなリスクの代償として、社会に大きく貢献し、創業者利益を得ている。それを批判、否定するのはおかしい。
 逆にチャレンジして失敗する例は件数として はるかに多い。
  
 (日本では、リスクをかけて事業をやり、創業者利益を得るような例がほとんどないのが問題である。経済の停滞の原因である。)

 米国では、黒人や、メキシコ等の移民など、低所得層が多いのは確かである。 

 しかし、
定年のない米国で16歳以上で職につかない人口が1億人もいる。コロナで400万人が離職し、復職しない。
   働かなくてもよい人が1億人もいるというのは驚きである。(「少数の大金持ちと、大半の貧乏人」ということでもない。)

  

  いずれにせよ、米国の特殊な例を強調し、現在の資本主義はよくなく、公益資本主義をとるべきだとの主張はおかしい。

 

下記に公益資本主義の問題点を挙げる。

 

2.「企業は社会の公器」との主張

 企業は財サービスの提供で社会に大きな貢献をしている。数十年前をくらべ、生活は完全に変わった。

 更に従業員に職を与えており、税金を政府、市町村に払っている。

 企業の存続自体が社会貢献である。

 

  また、企業は「法人」であり、意思を持たない。事業に関係することを除き、何に寄付をするかなどは決められない。

 社会への貢献は、企業から恩恵をうけている個人(需要家、株主、労働者・・・)がやればよい。

  米国では、所得や財産が大きい人が慈善事業や教会、政治家への寄付などを行っている。 美術品の遺贈等も非常に多い。
     
     FacebookのZuckerbergが450億ドルを慈善事業に寄付
     Bill Gates夫妻が3兆円以上の私財を寄付して財団を設立、Warren Buffettがこれに300億ドルを寄付

3.「労働者」 

 企業の一員ではあるが、「市価ベース」での報酬を得ている。

会社に拘束され、会社が決める報酬で働かざるを得ないのではなく、もっと高い報酬を出すところがあれば移ればよい。

日本では、中途採用があまりなく、また、従業員にも他社が少々報酬が高くても、終身雇用制のメリットを重視する傾向が強い。

しかし米国ではそれらがなく、報酬のより高い企業に転職するケースが多い。

日本でもスーパーや飲食店などの従業員は、報酬により転職するケースが多い。

 

 スズキ氏は「失われた30年で」で従業員給与が横ばいから下向きになっているのを問題としている。

 これについては渡辺努氏の「世界インフレの謎」で説明している。

みんなが物価が上がらないと予想、賃上げを要求せず、企業側も競争相手も賃上げをしないため、労働者を引き抜かれる恐れがなく、賃上げをしなかった。
その結果、横ばいが続いた。

最近は「物価が上がる」との予想が増えてきた。このため企業側も賃上げを考えるようになった。

ユニクロは大幅賃上げを決めた。

同社は今後、東京本部に加え、米・ニューヨークの本部機能も強化する方針。正社員の賃金制度を国内外で統一し、国際水準に近づけることで、国内人材を海外へ、海外人材を国内へと柔軟な異動も可能になるとみられる。
従来、役職手当は部長などの管理職を対象に支給されていた。今回それを廃止し、基本給と各期の業績によって決まる賞与に一本化する。「フラットで機動性が高い組織運営の実態に沿うよう」(ファストリのリリース)、制度上のギャップを取り除いて国をまたいだ人材交流をしやすくする。

半導体関連では、韓国や台湾の企業に移る人が増えた。高給で雇われた。

今回、台湾のTSMCが九州に進出、高給で従業員を雇っているため、給与水準は一気に上がっている。

 要は、企業が労働者を搾取しているのでなく、「市価基準」で労務費が決まり、その「市価」が低かったということ。

 従業員への利益配分論について 5)で述べる。

 

4.新技術・新産業への投資

  企業は既存の競争相手だけでなく、新規参入者とも競争している。

 そのなかで、研究開発や新規投資を削り、配当を増やすような企業は無い。もしあれば、そんな企業は早晩、競争に破れ、撤退をやむなくされる。

 投資を辞めてまで配当をしているような企業はなく、仮にあれば、そんな企業は早晩潰れる。
 

 但し、やみくもにやっても失敗する。シャープは液晶テレビにこだわり、敗退した。

 どうするかが取締役会の責任である。

 

5.「株主」

 原氏は、株主を単なる企業の構成員の一部とみており、配当その他を「株主優遇」としている。

 しかし株主は構成員の単なる一部ではない。

 事業を始めるには元手がいる。

 日本が遅れている次世代半導体(2ナノ)の設計・製造基盤確立に向け、Rapidusが設立された。

  パイロットラインで2兆円、量産ラインで3兆円かかるとみている。台湾のTSMCの進出で技術者の労務費は急騰している。

  5年間収入無しで、その後、@開発がうまくいかない、A開発コストが倍増(よくある例)、B台湾・韓国の競合者がさきに開発して需要をとられた、等々で失敗するリスクが大きい。

 これは国策事業で若干異なるが、これと同様、どんな事業でも失敗するリスクはあり、逆に現在成功しているのは、むしろ幸運な例外である。

 
 株主は、そういうリスクを覚悟して事業に投資する。事業が失敗すれば、誰もその投資を補償してくれない。

 ソフトバンクの傘下の投資ファンドの事業では、2023/4-12の9か月間の累計の投資損失は5兆68億円にのぼっている。

 他の関係者は、消費者は市価で買って満足を得、原料供給者は市価で販売し、労働者は他の会社と同水準の報酬を得ている。企業は当然、存続・成長のためのR&D投資、設備投資を行い、諸税金を払っている。

 それらの差し引きが損益であるが、それは投資の結果であり、投資家に帰属すべきものである。

 うまくいけば高配当を受けられるが、赤字になれば減配となり、赤字が資本金を食いつぶせば倒産し、投資家は投資額全額を失う。

 投資がなければ、消費者は製品を買えず、原料供給者は供給できず、労働者は雇用されない。投資のお陰で、他の関係者は常に市価基準での報酬を得るが、株主だけはその補償はない。

 たまたま高収益で高配当の企業をやり玉に上げるが、事業設立時点で実現できずに出資金を失う投資家、赤字で配当をもらえない株主、企業が倒産して出資金がゼロになる株主は世の中に多数存在する。

 

 原氏は、既存企業の株を買った株主の高配当をやり玉にあげている。

 しかし、株式会社制度では、当初リスクを負って投資した投資家と、うまくいってから株を買った株主とに違いは存在しない。

 最初の投資家の権利と義務(失敗したときに損失を負担する義務)が「株式」に移り、株式の売買でそれが新株主に移転するだけである。

 最初の投資家は、事業が成功すれば、株価が高騰し、高値で売却して利益を確保する。

 あらたな株主は高い株価で株を買い、配当を得るが、企業が倒産し、株価がゼロになれば、大きな損を負担する。

 ずっと株を持っていようが、短期間で売却しようが、株を持っている期間は、権利と義務を負っている。

 
 原氏が例に挙げたようなひどいやり方で株価を上げた場合、企業が衰退し、株価が下がる可能性が強いが、高い株価で買った株主は自己責任で買ったのであり、誰も補償しない。

 
 当初の出資者もその後の株主も、自己責任で大きなリスクを負担して出資・株の購入をしており、会社が儲かったときに高配当を得るのは当然である。

 

 原氏は「株主優遇と同程度の従業員へのボーナス支給」を主張する。

 記述のとおり、企業の同じ構成員ではあるが、株主は配当や原資の保証を得ていない。従業員は市価ベースでの報酬を得ている。 そのうえで、なぜ同程度のボーナスを支給するのか。

 特に貢献した社員の報酬を上げるのは当然である。他社に高給で引き抜かれる恐れもある。

 但し、一般社員にも利益を配分するのはおかしい。

 それなら、企業が赤字で配当がない場合、従業員は給与を辞退するのか。会社が倒産し、株主が出資金を失った場合、従業員は過去の報酬を返納するのか。

 リスクを負担せず(会社が倒産すれば他社に移れば良い)、市価ベースでの報酬を得ている従業員と、自分の財産の将来を企業に任せている株主とは全く立場が異なる。
 

 また、株主優遇と同程度の従業員へのボーナス支給」によると、業績により各企業の給与水準が異なることになる。
 新規の成長事業では市価基準では労務費を払えるが、まだ利益がないため利益配分はなく、総報酬が減ることになり、人を集められないことになる。
 

 
 仮に「公益資本主義」を実施し、原氏の主張のようにした場合、誰が新しい事業に投資するのだろうか。

 自分の資金を投資し、失敗すればそれを失う。事業が成功し、儲かっても、配当は制限され、市価ベースの報酬を払っている従業員に、本来の自分の利益を追加で与える義務がある。

 多分、誰も投資しないだろう。

 既存企業の場合も、儲かっている時の配当は制限され、減配や倒産の場合は得べかりし利益を保証されない。
 誰も株を買おうとせず、株価は下がり、新規投資のための増資もできない。

 国に投資をさせるのか? 社会主義社会で既に失敗は明らかである。

 

 因みに、化学工業各社の配当利回りは下記の通り。

  2022/3配当 2023/2/10に
買った株主
株価 利回り
住友化学  24円 467円 5.1%
三菱ケミ  30円 749円 4.0%
信越化学 400円 19,550円 2.0%
日産化学 122円 6,030円 2.0%

  現在のマイナス金利下での預金利息よりは当然高いが、預金が1000万円まで保証されるのに対し、株価値下がりを保証されないことを考えると、通常時の預金利息と比べ特別に高いとはいえない。

     現時点では住友化学、三菱ケミカルの利回りは高いが、今後の値上がりが期待できないと見られている。逆に信越や日産は更に値上がりすると見られ、利回りは低いが買われている。

        なお、住化の株価は2006年に1000円を超えている。このときに買った株主は、資産が半減している。2012年には200円を割っている.

 

なお、スズキ氏は「株主還元の急増」を批判している。

 20世紀の終わり頃までは、企業の投資は銀行融資に頼っていた。石化コンビナートが多数あるのは、銀行系列ごとに競争で導入したためである。

 その後、銀行融資から増資に変わっていった。日本の産業の成長を支えた日本興業銀行が役目を終えて、みずほに参加した。

 以前は株主軽視で、1割配当(額面50円で年5円)さえしておけば十分との考えであった。株価が500円になれば1%にしかならない。銀行利息がはるかに高いときである。

 その後、株主重視にかわり、配当額が増えた。

 安いときとの比較のため、倍率が増えるのは当然で、従業員給与の伸び率と比較するのはおかしい。

 

以上、現在の資本主義の批判、それによる公的資本主義の主張は、間違っている。「資本主義」ではない。