村山 治 「市場検察」 文藝春秋


第一部 グローバル化の波を
 第1章 公取委員長の供述
  若き実力者中村喜四郎の政治生命を絶ったのは、公取委員長の供述だった。当時の首相宮沢も"取引仲介"したという驚愕の証言

 第2章 アメリカの圧力
  のちに検事総長にのぼりつめることになる但木は、日米構造協議で米国と直にわたりあった経験があった。独禁法強化への道

 第3章 取引の裏側
  そもそも検察は埼玉土曜会事件の刑事告発をうけるつもりはなかった。梅沢供述にたよる検察側の弱みはそこにあったのだが

第二部 標的は大蔵省
 第4章 大蔵省キャリアに手をかけられず
  二信組に始まる金融破綻処理は、金融機関から大蔵幹部への度を超す便宜供与も明るみにだす。現場の検事は色めきたつ

 第5章 国税庁を敵にまわすのか
  石油商泉井は政官界に巨額献金と接待を繰リ返していた。特捜部は再び大蔵ルートを追うが、そこには国税庁がからんでいた

 第6章 杯をことわらない
  法務省・検察のなかで、原田・松尾・但木の「だんご3兄弟」が、ラインを固めつつあった。一方、現場派の石川も台頭する

 第7章 ついに聖域へ
  大蔵汚職事件の捜査をめぐって法務・検察はふたつにわれる。キャリアに手をかけるべきか否か。複雑な力関係が影を落とす

 第8章 石川達紘を「整理」する
  大蔵汚職捜査を指揮した石川・熊崎に対する大蔵官僚の怒りは凄まじかった。恨み節は法務・検察首脳に繰リ返し届けられた

第三部 市場か政治家か
  第9章 党費たてかえを追う
   KSD事件。参議院のドン村上正邦を受託収賄容疑で逮捕。その捜査のなかで、自民党の魔法の箱「国民政治協会」の存在が

  第10章 自民党の魔法の箱
   KSD事件の三年後に発覚した目歯連事件。特捜部は宿題だった「国民政治協会」を使った迂回献金疑惑にとリ〈むのだが

  第11章 検事総長は市場にこだわる
   検事総長の松尾は日歯連捜査には消極的だった。そんなおリ金融庁からUFJ銀行の検査妨害の刑事告発の話が持ち込まれる

  第12章 日歯連事件捜査異聞
   自民党の中枢を直撃することになる迂回献金捜査は断念。ヤミ献金に標的を移すが、野中広務は訴追対象から外されることに

  第13章 政界捜査は司法制度改革と取引されたか
   01年のKSD事件、04年の日歯連事件と同時並行で進んでいたのが、原田・松尾・但木らがかかわる司法制度改革だった

  第14章 特捜部長の蹉跌
   大蔵汚職捜査をめぐる争いで石川・熊崎が「整理」された後、井内顕策は現場派を代表する検事の一人だった。その井内も

第四部 司法取引
  第15章 「市場検察」宣言
   「これからの検察は、経済ルール違反の摘発にカをいれる」検事総長となった松尾は最初の年頭訓示でたからかに宣言した

  第16章 仲間を売る
   80年代の公取や検察とは違う。かつては敬遠してきた「談合」にも果敢に斬リ込む。そして06年には課徴金減免制度が導入

  第17章 劇薬の生まれるまで
   仲間を売れば、課徴金を逃れられる。日本の「談合」風景を一変させた課徴金減免制度は「司法取引」の日本的な導入だった

  第18章 切れる刀 「司法取引」
   日本では「司法取引」が認められないため、長く日本の検察は供述を積み上げていくことで事件を構成してきた。その限界も

  第19章 市場の番人
   公取委と並ぷ「市場検察」のもうひとつの柱は証券監視委だ。だがライブドア・村上ファンド事件で、その問題点も露呈した

  第20章 市場からの不信
   検事総長の但木は、証券監視委の委員長に佐渡賢一を送りこむ。刑事事件になる前に、市場の暴走をどうチェックするのか

  エピローグ 復讐する「改革」
   では、市場と官僚組織はそもそも親和性があるのか? 法務・検察自身を誰がチェックするのか? 「市場検察」に潜む矛盾