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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2011/12/1  太陽電池で米国と中国が互いに貿易障壁調査開始

中国商務部は11月25日、米政府による自国の再生可能エネルギー業界への政策支援や補助金拠出が貿易障壁に当たるかどうか、調査を始めたと発表した。

来年5月25日までに調査結果を公表し、貿易障壁が存在すると判断した場合は、WTOへの提訴など相応の措置を講じるとしている。

米商務省が11月9日に、反ダンピング課税と相殺関税について調査すると発表、ITCが12月5日までに反ダンピング課税などを課すか仮決定する。

これに対し、中国商務部は11月10日、これに対し、「重大な関心を寄せている」とのコメントを出した。

今回の調査はこれに対する対応と見られている。

ーーー

米商務省は10月にドイツの太陽電池大手SolarWorld の米国子会社など7社から、「中国メーカーは政府支援を受けて生産・販売コストより安くパネルを販売している」として、関連調査と100%超の関税適用をするよう請願を受けた。

SolarWorldは本年初めに太陽電池パネルの大幅値下がりによりカリフォルニアの工場を閉鎖しており、中国の輸出業者のダンピングで米国のメーカーは根こそぎにされると批判している。

米商務省によると、中国からの太陽電池パネルの輸入は2009年の640百万ドルから2010年に1,500百万ドルに急増した。

ダンピング課税に賛成するグループは、免税、安い原料、安い土地代や電気水道代、有利な借入金、輸出保険、輸出支援など、中国政府による実質的な補助金に対し、相殺関税を課するよう求めている。

他方、中国からの安い輸入パネルで太陽発電を推進している米国のメーカー25社The Coalition for Affordable Solar Energyはこれに反対し、太陽電池の価格上昇で米国の需要は減少し、10万人の職が失われるとしている。

ループには、米国のMEMC Electronic Materials やSolar City、中国のSuntech Power(尚徳電力)やYingli Green Energy(英利緑色能源)の子会社が含まれる。

中国最大の太陽発電ディベロッパーCECEP(節能環保集団公司は早速、関税によりコストが高くなり過ぎるとして、カリフォルニア、ニュージャージー、テキサスでの5億ドルの太陽発電計画を中
断した。

中国のSuntech Power(尚徳電力)やYingli Green Energy(英利緑色能源など大手4社の会長は11月29日、北京で会見を行い、「我々の成功は技術とマネジメントの結果であり、中国の業界は特別な扱い、特別な支援を得ていない」とし、米国勢は経営判断の誤りを中国勢に押し付けていると主張した。

中国商務部は、 米国の太陽電池メーカーは自身の競争力からくる問題を中国製品との競争のせいにしていると強調、米政府が中米経済貿易関係を傷つけないことを望む」とけん制した。

11月22日には、中国の複数の太陽電池メーカーが米国製ポリシリコンの輸入に関して反ダンピングと反補助金調査を行うよう求めた。

中国商務部は今回の調査開始について、中国の企業が米国の政策は中国の再生可能エネルギー製品の米国への輸出に対する貿易障害になると主張していると述べた。

中国の業界団体は、ドイツのSolarWorld の米国子会社が2007年に米国で新工場を建設した際に4300万ドルの補助金を得ていると指摘している。

調査対象にはワシントン、マサチュセッツ、オハイオ、ニュージャージー、カリフォルニア州の政策も含まれ、風力発電、太陽発電、水力発電関連の製品も含まれる。

米国の太陽電池の全世界輸出は56.3億ドルで、輸出と輸入の差のネットでは18.8億ドルの輸出となっており、 対中国でも輸出の方が多い。中国からの輸入も米国メーカーによるものも多い。
紛争がエスカレートすると米国メーカーに悪影響を与える可能性もある。

ーーー

なお、太陽電池市場は供給過剰により価格下落が進み、中国の主要メーカーも全社が赤字になっており、各社とも年間出荷予想を下方修正している。

中国メーカー自身が過当競争で疲弊しており、サンテックのCEOは「今後6カ月から9カ月内で業界再編が進む」と予測している。


2011/12/2 ユーラシア経済同盟 

ロシア、カザフスタン、ベラルーシの首脳は11月18日、ユーラシア経済同盟に関する文書に調印した。

ユーラシア経済同盟は、来年3月のロシア大統領選に立候補を表明し大統領職復帰が確実視されているプーチン首相が先月に創設を提唱、まず3カ国で経済統合を進め、旧ソ連中心の地域統合「ユーラシア同盟」につなげようとのプーチンの長期的外交戦略実現の第一歩になる。

最終的には統一経済圏の創設へと移行する。

ユーラシア経済同盟は、加盟を希望する国々へ扉を開く。有力な加盟候補として、タジキスタンとキルギスが挙がっている。

2012年1月1日から3国の圏内では、統一経済圏を形成する17の合意が発効するが、それとともに関税タリフ政策、関税調整がスタートする。共通の国境を形成するなかで、具体的なタリフ政策、自然独占、通貨および信用貨幣政策の調整が新たな方向性となってくる。

付記

ロシアのプーチン大統領は2014年5月29日、カザフスタンとベラルーシ両国の首脳とともに「ユーラシア経済同盟 Eurasian Economic Union」を正式発足させる条約に署名した。
1億7000万人以上を抱える貿易圏を通じ、米国や欧州連合(EU)に挑む。

キルギスとアルメニアも年内の加盟を目指していることが明らかになった。

付記

ユーラシア同盟は2015年1月に発足するが、2014年10月10日、アルメニアの参加が正式に決まった。
キルギスタンの参加のロードマップも示した。

ーーー

1991年12月8日、ソビエト社会主義共和国連邦の消滅と独立国家共同体(CIS:Commonwealth of Independent States)の創立が宣言され、1993年にはソ連邦を構成していた15か国のうち、バルト三国を除く12か国が加盟した。

その後、トルクメニスタン、ウクライナが事実上の準加盟国(あるいは加盟国としての任務の拒否)になり、2008年8月の南オセチア紛争(ロシア-グルジア戦争)により2009年8月にグルジアが脱退したため、現在の正式加盟国は9か国である。

バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)はCIS設立前に独立したため加盟せず、2004年5月1日にEUに加盟した。(NATOにも参加)

加盟国は必ずしも利害が一致せず、調印された数百の協定も強制力がないために有名無実となっている。

2000年11月、ベラルーシ、カザフスタン、タジキスタン、キルギス、アルメニアはロシアとの緊密な関係を保ち、「関税同盟」を基礎にしてユーラシア経済共同体を結成した。

これに対して、グルジア、ウズベキスタン、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバはロシアから距離を置く政策を取り、これら諸国の頭文字を取ってGUUAMと称される組織を形成した。その後、ウズベキスタンが離脱、GUAMとなった。

付記  赤:関税同盟青:GUAM

正式加盟国(9) 
    ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、タジキスタン、キルギス、アルメニア、
  ウズベキスタン、アゼルバイジャン、モルドバ
客員参加国(2)
  トルクメニスタン、ウクライナ
旧加盟国[脱退]
  グルジア
 

ウクライナは2014年3月、ロシアがクリミア自治共和国を併合したことで、CISから脱退する手続きを開始した。

ーーー

ロシアのプーチン首相は10月3日、旧ソ連のベラルーシとカザフスタンの3カ国で結成した関税同盟をベースに、将来的には超国家連合「ユーラシア連合」(ユーラシア・ユニオン)にまで拡大・発展させる構想を明らかにした。
共通の経済政策や為替政策を持った超国家連合を目指す。

2010年1月1日から関税同盟の加盟国(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン)は原則統一された税率を適用し、加盟国間の輸出入は免税となる。

キルギスの参加についてはすでに承認されており、タジキスタンも参加への関心を示しているほか、モンゴルも幾度となく関心を表明している。

ソ連崩壊を「20世紀最大の地政学上の悲劇」と公言するプーチンにとって、ロシアと周辺国を束ねて米欧や中国との対抗軸にするのは悲願で、大統領復帰後のロシアの針路を示したもの。

プーチン首相が新聞「イズベスチア」に寄稿した論文で、関税同盟と統一経済圏が、将来のユーラシア経済同盟の基礎となるとし、「我々は、現代世界における極の一つとなり、ヨーロッパとアジア太平洋を結ぶ役割を担うような、強力な国家間組織のモデルを提案する」と述べている。

2011年11月18日、CIS諸国は、CISの枠内に自由貿易ゾーンを創設することに関する条約に調印した。

ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、モルドバ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、アルメニアの計8カ国が署名。
比較的ロシアと距離を置くトルクメニスタンやウズベキスタン、アゼルバイジャンの3カ国は、年末までに条約加盟を検討するという。

更に、ロシア、ベラルーシ、カザフスタンは、ユーラシア経済同盟についての宣言草案をまとめた。
(3国の首脳は11月18日、ユーラシア経済同盟に関する文書に調印した。)

CIS首相評議会では又、CIS諸国内での通貨調整や通貨管理政策の基本的原則についての合意や、2020年までの鉄道輸送の戦略的発展のコンセプトに関する決定にも調印がなされた。 

付記

EUは12月5日、2012年からグルジア及びモルドバとFTA締結交渉を始める方針を発表した。

旧ソ連邦

  準加盟
   モルドバ   永世中立宣言、EU加盟を標榜
   ウクライナ  CIS合意に調印したが、正式的にCIS憲章を承認せず
   トルクメニスタン 1990年永世中立国、2005年CIS加盟資格を永久停止

  脱退
   グルジア   1993年CIS参加、2009/8 ロシア-グルジア戦争により脱退

    非加盟
   バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)
           CIS設立前に独立、2004年5月EUに加盟、NATOにも参加

ーーー

ロシアはこれまで非ロシアの姿勢をとるCIS諸国に対しては、石油や天然ガス価格の引き上げ措置を取り、これが欧州諸国にも影響を与えてきた。

2007/1/10 ロシア・ベラルーシ 石油抗争

2007/1/15 ロシアーベラルーシ石油抗争 解決

2009/1/2 ロシア、ウクライナ向け天然ガス供給停止

ロシアとベラルーシは2011年11月、天然ガスの販売価格を引き下げることで合意した。
両国政府は2012年の天然ガスの販売価格について、2011年比で3割安い1000立方メートルあたり164ドルで合意。ベラルーシにとり20億ドルの値下げにつながる見込み。

ベラルーシはロシアが主導する旧ソ連諸国の経済統合を支持しており、ロシアはその見返りとして値下げに応じた。   

ロシアの国営ガス企業ガスプロムが、ベラルーシの国営パイプライン運営会社ベルトランスガスの株式の5割を保有するが、残りの株式5割を25億ドルで取得し完全子会社にすることでも合意した。


2011/12/3  Saudi Aramco、バングラデシュで製油所建設を計画 

Saudi Aramcoはバングラデシュに25億ドル程度を投資し製油所を建設することを計画、 バングラ政府の経済関係局(Economic Relations Division)に提案した。
経済関係局はエネルギー省にAramcoの意向を伝えており、エネルギー省ではこれを検討中で、間もなく結果をAramcoに伝えるとしている。

バングラ国営Bangladesh Petroleum Corporationの子会社のEastern Refinery Ltd の能力は年140万トンだが、Aramcoの計画はこれをはるかに超える年産700〜800万トンとされる。
Aramcoでは一部をバングラ国内で販売、残りを海外に輸出する考え。

Bangladesh Petroleum は原油を中東に頼っており、現在の輸入元はAramcoとUAEのADNOCが主で、2011年に原油を125万トン輸入したが、2012年にはこれが140万トンに増える。

他方、石油製品については、Bangladesh Petroleum は本年度(2011/7-2012/6)に前年度比で27%増の650万トン程度の輸入が必要となる。

バングラ政府が電力ソースとして天然ガス依存を減らすため石油燃焼発電所を建設しており、石油の輸入は増大している。
産業、輸送部門での石油需要も増大している。

本年度の石油製品輸入のために約62億ドルが必要で、値上がりもあって前年度比で53%も増大しており、Bangladesh Petroleum では資金不足に陥り、Islamic Development Bank Groupに融資を求めている。

このような状況下で、Aramcoの製油所計画はバングラにとって好ましいものとなっている。

Aramcoの計画にBangladesh Petroleumが一部参加する可能性もある。


2011/12/5  第一三共子会社 Ranbaxy、米国で「リピトール」の後発品を発売 

第一三共は12月1日、連結子会社の インドのRanbaxy Laboratoriesが高コレステロール血症治療剤アトルバスタチン(Atorvastatin )を米国にて発売したと発表した。

11月30日にPfizerのアトルバスタチン(商品名Lipitor)の特許が切れた。Ranbaxyは同日付で、略式新薬承認申請に対する販売承認を米国食品医薬品局(FDA)より取得した。また、同社は発売から180日間の独占販売期間を得た。

Ranbaxyは、今回の米国での発売に際し、Teva Pharmaceutical USAとのコラボレーションに関して合意 、Tevaに対して、発売から180日間の独占販売期間の売上高に応じた一定の支払いを行なう。

Ranbaxyは2003年以降、長期間にわたり、Pfizerとの間でLipitor の特許について争っていた。

2008年6月、両社はこれに関して和解を行った。
これは両社間だけのもので、Pfizerと他社との間の特許抗争には無関係としている。

対象となる特許は以下の通り。
 基本物質特許 (米国で2010年に失効)
 光学異性体特許(同 2011年)
 プロセス、結晶型特許(同 2016、2017年)
 多剤混合薬特許(同 2018年)

和解により、Ranbaxyは2011年11月30日にLipitorの後発薬を発売する。
RanbaxyはLipitor特許にチャレンジした最初の後発薬メーカーであるため、発売に当たり180日の独占期間の権利を得ることとなる。

Ranbaxyはまた、時期は異なるが、これをカナダ、ベルギー、オランダ、ドイツ、スウェーデン、イタリア、豪州で販売する権利を得る。両社の間の各国での特許紛争は終結する。

ーーー

アトルバスタチン(商品名Lipitor)は高コレステロール血症治療剤で、Pfizerより創製され、日本ではライセンス契約によって2000年5月からアステラス製薬(契約当時は山之内製薬)が製造・販売している。

セジデム・ストラテジックデータ鰍フ調査では2010年の世界の大型医薬品売上高のNo.1で、売上高は12,023百万ドルとなっている。米国では9月までの9か月で7,890百万ドルを売っている。

アトルバスタチンは2008年に米ラスカー賞を得た遠藤章・東京農工大名誉教授が発見したスタチンの一種で、スタチンはHMG-CoA還元酵素の働きを阻害することによって、血液中のコレステロール値を低下させる 。

遠藤氏は三共(現第一三共)の研究者だった1973年、コメの青カビがつくるスタチンを発見。これが血液中のコレステロール値を下げることを動物実験で確認した。

2008/9/16 米ラスカー賞に遠藤章・東京農工大名誉教授

略式新薬承認申請(ANDA=abbreviated new drug application)は米国でのジェネリック医薬品の承認手続きで、その参照とする先発医薬品との化学構造および生物学的同等性を示すデータなどの提出だけ で 製造・供給を承認する。

ANDAを申請する場合、後発版の製造・使用・販売により先発医薬品の特許が侵害されないとの証明書(下記の4つのケース)をFDAに提出すれば、特許権者である先発企業に通知され、証明書を提出した最初の後発企業に180日のジェネリック薬先発 (独占)期間が与えられる。(先行者利益を与えることにより、訴訟費用を負う誘因を与えるのが趣旨)

1. 新薬に関する特許情報がFDAに提出されていない(パラグラフI)、
2. 新薬の特許はすでに有効期限が切れている(パラグラフII)、
3. 今後特定の日付に新薬の特許の有効期限が切れる(パラグラフIII)、
4.  新薬の特許が、無効、法的強制力がない、
  または後発薬の製造、使用、もしくは販売によって侵害されることはない(パラグラフIV)

Ranbaxyは長期間にわたり、Pfizerとの間でLipitor の特許について争い、2008年6月に和解を行ったため、Lipitor特許にチャレンジした最初の後発薬メーカーとして180日の独占期間を獲得した。

今回、RanbaxyはTeva Pharmaceutical とのコラボレーションを行う が、その背景は以下の通り。

米国食品医薬品局(FDA)は2008年9月16日、Ranbaxyの医薬品30種以上の輸入を一時停止した。
これを解除するには数百億円の罰金を払う必要があるとの見方がある。

医薬品の安全性に問題はないが、Ranbaxyのインドのデワスとパオンタ・サヒブにある2つの工場で、製造器具の洗浄状況、生産管理、品質管理などに関する記録の保存に関して問題が改善されていないためとしている。
また、FDAが問題の2工場を査察した際、抗生物質の取り扱い方法にも問題が発見されたという。

2009/1/8 第一三共、ランバクシーの評価損計上

Ranbaxyは当初、後発品の原体をインドでの生産を検討していたが、現状では米国への輸入が認められていないため、Teva Pharmaceuticalに原体の生産を委託する。製剤は米国子会社のOhm Laboratories, Inc. で行う。

これにより、RanbaxyはPfizerの特許切れの翌日から直ちに販売することが可能となった。
Teva はこの代償として、
Ranbaxyの利益の一部を受け取る。

また、RanbaxyはTevaの米国の強力な流通チャネルを利用して拡販するメリットもある。

Tevaは12月1日、FDAからアトルバスタチン の略式新薬承認を得たと発表した。2012年5月にRanbaxyの180日の独占権が終了した時点で販売する。

ーーー

Pfizerはこの動きに対応し、対応策を取っている。

11月初めには、今後出てくる後発品に対応するため、値下げを行った。
Pfizerは、RanbaxyのFDAとのトラブルを材料にして、値下げの代わりに医療保険会社に対して後発品を使用させないようにしようとした。
(しかし最大の医療保険会社のWellPointは後発薬の使用をサポートすることを発表し、Pfizerの試みは失敗した。また3人の上院議員がPfizerのこの動きを問題視している。)

また、PfizerはWatson PharmaceuticalsにPfizer製の低コスト版の「公式後発薬」を供給した。これはPfizer製のため、FDAの承認は必要としない。
Wal-Mart はWatsonの後発薬を扱うと発表した。

この結果、Ranbaxyの後発薬の販売価格は当初想定より40%は低くなると見られており、米国での製造コストがインドで製造するより高いこともあり、Tevaへの支払いも含め、同社の利益は当初想定よりかなり少なくなる。

Tevaが承認を得たのに続いて、MylanやインドのDr. Reddy’s Laboratories などもRanbaxyの6か月独占が過ぎた後の販売を狙い、FDAの承認を求めている。


2011/12/6 米加を排除した「中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)」発足 

米国とカナダを除く米州33カ国の首脳らが12月2日、「中南米カリブ海諸国共同体Community of Latin American and Caribbean Nations:CELAC」設立のためベネズエラの首都カラカスで会合を開いた。

米国の影響力が強大で、「中南米支配」の象徴とみられている米州機構(Organization of American States:OAS)に対抗した組織で、米国とカナダを排除し、この地域の諸国の自決権を促し、経済、政治、社会の結束を図る。

反米左派のベネズエラのチャベス大統領は演説で「植民地化され、500年以上、搾取され耐えてきた。我々で団結し、貧困や格差を無くし、平和と民主主義を守るために協力しあおう」などと語った 。
キューバのカストロ国家評議会議長は「うまくいけばラテンアメリカ諸国の独立後200年で、最も大切で歴史的な出来事だ」と語った。

一方、米国との関係悪化を望まない穏健路線の首脳たちは「米国抜き」を強調することを避けている。メキシコのカルデロン大統領は、「調和と繁栄を目指そう」と述べるにとどまった。

2008年12月にブラジルに33カ国の代表が集まり、米国の支配から自立した平和の地域統合をめざす「サルバドル宣言」が採択された。

2010年2月に首脳会議を準備する外相会議がメキシコ南東部で開催された。
会議では、メキシコの外相が米国・カナダを除く自主的地域新機構の創設は歴史をつくるものだと挨拶した。

2011年7月にベネズエラで第三回会合を開催。チャベス大統領は「独立200年に当たるこの年には機構発足の合意にこぎつけたい」とコメントした。

首脳会議は3日、「カラカス宣言」を採択し、CELACが正式に発足した。

ブラジルのルセフ大統領は、「我々が最も懸念すべきことは、経済、金融危機だ」と指摘し、「ラテンアメリカ諸国が経済成長を続けるためには、近隣諸国とより密接な関係を結ぶことが重要だ」と強調した。

カラカス宣言は、独立200年を迎えるラテンアメリカの国々が、政治、経済、社会、文化の統合を目指し、経済格差を減らすため South-South economic cooperation を進めるという目標を打ち出した。地域間の経済協力を深めることや、バイオ燃料など環境面で協力するなどの具体的な計画も示した。

22のコミュニケの中には、
・キューバに対する米国の経済・商業・金融封鎖の中止の必要性
・アルゼンチンのフォークランド諸島への権利の承認
に関するものがある。

ーーー

この地域には現在、以下の組織がある。

1)南米南部共同市場 (Mercosur)

   加盟国
    (1)正式加盟国:アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラ
    (2)準加盟国:ボリビア,チリ,コロンビア,エクアドル,ペルー

   目的
    (1) 域内の関税及び非関税障壁の撤廃等による財、サービス、生産要素の自由な流通
    (2) 対外共通関税の創設、共通貿易政策の採択及び地域的、国際的経済・貿易面での立場の協調
    (3) マクロ経済政策の協調及び対外貿易、農業、工業、財政・金融、外国為替・資本、サービス、税関、
        交通・通信などのセクター別経済政策の協調
    (4)
統合過程強化のための関連分野における法制度の調和

2)ラテンアメリカ統合連合(Latin American Integration Association:ALADI)
  GATTに正式に承認された地域経済統合体
 
  加盟国(13カ国)
   アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、キューバ、エクアドル、メキシコ、ニカラグア、パラグアイ、
   ペルー、ウルグアイ、ベネズエラ 
   (パナマが加盟手続き中) 

  目的
   1)域内特恵関税の設定、
   2)全域協定(全加盟国が参加する協定)、
   3)域内部分協定(域内の一部の国のみが参加する協定)、
   の3点を通じた経済的特恵地域の設置により、漸進的かつ段階的にラテンアメリカ共同市場を達成

3)ラテンアメリカ経済機構(Latin American Economic System:SELA)

  加盟国 27か国

  目的
   共通の経済問題を協議し、全世界的な視野で経済戦略を検討し、資源開発を効果的に行う

4)中米統合機構(Sistema de la Integracion Centroamericana:SICA) 

  加盟国:グアテマラ、エルサルバドル、コスタリカ、ニカラグア、ホンジュラス、パナマ、ベリ−ズ
  準加盟国:ドミニカ共和国
  域内オブザーバー:メキシコ、チリ、ブラジル、アルゼンチン、ペルー
  域外オブザーバー:台湾、スペイン、ドイツ、イタリア、日本、オーストラリア、韓国

  目的
   地域の経済社会統合を図り,和平・自由・民主主義・開発を達成

5)カリブ共同体(Carribbean Community:CARICOM)

  加盟国:15か国
  準加盟国:5か国

    目的
    1) 加盟国間の経済及び貿易関係の調整と法制度の強化、持続的発展と経済的統合の継続及びそれらの利益の公平な分配、加盟国の経済的自立等を目的とした共同市場制度の設立により、加盟国の経済統合を目指す。
    2) 加盟国間の外交政策の調整
    3) 国民の利益となる共通のサービスや事業の効果的実施や、国民間の理解と、社会的・文化的・技術的発展の促進等を含む機能的な協力

6)  米州機構(Organization of American States:OAS

  加盟国 35か国(日本を含む59カ国とEUが常任オブザーバー
      うち、キューバは1962年除名、2009年に
除名決議無効を決定
          但し、キューバは復帰を拒否
      ホンジュラスは2009年に軍事クーデターで構成国資格停止

   目的
  南北アメリカの国々の平和と安全保障・紛争の平和解決や加盟諸国の相互躍進

7) 北米自由貿易協定(NAFTA)

  米国、カナダ、メキシコ3国間の自由貿易協定

各組織の参加国は以下の通り。

    CELAC Mercosur ALADI SELA SICA CARICOM OAS NAFTA
北米 Canada            
USA            
中米 Belize      
Costa Rica        
El Salvador        
Guatemala        
Honduras       ○*  
Mexico    
Nicaragua      
Panama      
カリブ Anguilla              
Antigua and Barbuda          
Bahamas          
Barbados        
Bermuda              
British Virgin Islands              
Cayman Islands              
Cuba        
Dominica          
Dominican Republic        
Grenada        
Haiti        
Jamaica        
Montserrat              
Saint Lucia          
Saint Kitts and Nevis          
Saint Vincent and the Grenadines          
Trinidad & Tobago        
Turks and Caicos Islands              
南米 Argentina    
Bolivia △→○      
Brazil    
Colombia      
Chile    
Ecuador      
Guyana        
Paraguay      
Peru    
Suriname        
Uruguay      
Venezuela        
 
合計 加盟国 33 5→6 13+1 27 7 15 35 3
準加盟国   △ 5→4     △ 1 # 5    
オブザーバー         * 5      



2011/12/7 丸紅、カナダのアルミ製錬所の権益拡大

丸紅 は11月29日、カナダ・ケベック州投資促進公社との間で、 Aluminerie Alouette製錬所の6.66%権益を約1.8億米ドルで追加取得すること で合意したと発表した。
これにより丸紅の権益比率は現在の6.67%(アルミ権益数量:38千トン)から13.33%(同:76千トン)に増加する。

Alouette 製錬所はケベック州の水力発電電力を利用して高エネルギー効率・低環境負荷の操業を 行う、年産能力575千トンを誇る米州最大のアルミ製錬所で、1992年に操業を開始した。

株主は以下の通り。

丸紅   13.33%(6.67%)
ケベック州投資促進公社     6.67%(13.33%)
Rio Tinto Alcan   40%
Norsk Hydro   20%
Austria Metall   20%

Alouette 製錬所は現在の年産能力575千トンを930千トンに増強する計画を推進しており、事業化調査を 2012年に開始する予定。
必要な追加設備投資は約20億カナダドルの見込みで、ケベック州電力公社との間で追加電力供給に関する基本合意書を締結している。

 

丸紅はAlouetteのほか、ベネズエラのVenalum、豪州のBoyne 及び Portlandのアルミ精錬計画などに参加しており、今回の追加権益取得により、丸紅が全世界で保有するアルミ権益数量は年産約16万トンから約20万トンまで増加 する。

2016年には権益は277千トンとなり、日本の商社では三菱商事を抜いて首位になる見通しという。(日本経済新聞)

丸紅のアルミ権益 ソースMETI 非鉄金属産業戦略(2006/6)
精錬会社
(主導会社)
国名 生産能力 引取比率 地金引取量
Alouette カナダ 550,000 6.67% 36,700
Boyne U
(
Comalco)
豪州 250,000 8.00% 20,000
Portland
(Alcoa)
豪州 345,000 22.50% 77,600
Asahan
(日本アサハン)
インドネシア 235,000 3.00% 7,100
Albras
(Vale)
ブラジル 430,000 1.80% 7,700
合計       149,100

 ーーー

なお、住友商事は2010年9月にマレーシアのアルミニウム製錬事業に参画した。

2010/10/6 住友商事、マレーシアでアルミニウム製錬事業へ参画


2011/12/8 新元素 Flerovium(原子番号114) とLivermorium(原子番号116)

国際純正及び応用化学連合(IUPAC)は12月1日、本年6月に新元素であることを認めた2つの元素(原子番号114と116)の名前を発表した。意見募集などを経て半年後に正式に決まる。

この2つの元素は10年以上前に、ロシアのドゥブナ合同原子核研究所(Joint Institute for Nuclear Research in Dubna)と米国のLawrence Livermore National Laboratoryがドゥブナでの共同実験で発見した。

両研究所の科学者が、原子番号114をFlerovium(記号Fl)、原子番号116をLivermorium(Lv) と命名した。

付記

日本化学会は2012年6月22日、2つの元素の日本語名を決めたと発表した。

それによると、114番元素を「フレロビウム」、116番元素は「リバモリウム」。
 

Fleroviumはロシアの核物理学者Georgiy N. Flerov (1913-1990)から取った。

ドゥブナ合同原子核研究所の創設者で、その中の研究所はFlerov Laboratory of Nuclear Reactionsと名付けられている。
1989年に FlerovとLawrence Livermore のKen Huletが両研究所の共同研究を始めた。

LivermoriumはLawrence Livermore National Laboratoryの名前 と、研究所所在地のLivermore市(カリフォルニア州)から取った。

なお、原子番号103のLawrencium(Lr)はLawrence Livermore National Laboratoryの創設者のE.O. Lawrenceから名付けられた。

ーーー

これまで認められた最新の元素は原子番号112のCopernicium(Cn)で、1996年にドイツ Darmstadt の重イオン研究所(Centre for Heavy Ion Research、GSI)の加速器で初めて合成された。Sigurd Hofman 教授のチームは、荷電した亜鉛イオンビームを鉛原子に衝突させることで、これを生成した。

同研究所はコペルニクスに因んでCoperniciumと命名した。

2009/8/26 112番目の元素 Copernicium

原子の核は重くなると壊れやすく、放射線を出しながら分裂などにより、より軽い原子核に変わってしまう。
このため天然にはほとんど存在せず、93番元素の
Neptunium(Np)以上の元素は原子核反応によって人工的に合成されている。

今回の二つ以外にも原子番号113、115、117、118の4種が報告されているが、IUPACはまだ認定していない。

2004年2月に上記の米ロ共同研究チームが、「115番新元素の原子核の初合成に成功し、その崩壊連鎖上の原子核として原子番号113の原子核も発見した」と発表した。
しかし、崩壊連鎖が既知の原子核まで到達していないため、現在はこれら元素の命名権を獲得するに至っていない。

理化学研究所は2004年9月に原子番号113の発見に成功したと発表した。
世界最高のビーム強度を有する理研線形加速器
で原子番号83のビスマスに、1秒間に2.5兆個の原子番号30の亜鉛ビームを80日間照射し続け、約100兆回の衝突を行わせ、原子番号113の原子を1原子合成し、確認することができた。

原子番号117と118は上記の米ロ共同研究チームが発見している。


2011/12/9  福島原発、汚染水処理問題

東京電力は12月3日、福島第1原発敷地内の放射性汚染水処理システムで、米Kurion社製装置の放射性物質吸着用部品を取り換えることで、浄化能力を向上させる計画を発表した。12月6日に交換する。

従来は、放射性物質を吸着するゼオライトを入れた鉄製の容器に汚染水を通し、放射性物質濃度を数万分の1〜数十万分の1に低減していた が、新しい部品は吸着性能が高い「フェロシアン化合物」を添加したものとする。

これまで、Kurionのセシウム吸着設備とArevaの除染装置をつないだ系列と、8月に採用したセシウム吸着設備Sarryの系列を並行して運転していた。

2011/7/5  循環注水冷却が本格稼働

2011/8/20  福島原発、汚染水浄化装置 サリー 本格稼働へ

ところが、11月30日の朝日新聞の報道によると、Arevaの除染装置は9月以降、使われていないという。

この結果、Kurionのセシウム吸着設備単体では性能が低下したため、部品を取り換えることとしたもの。

フェロシアン化合物を添加したものを使うことで、Kurionの装置単体でも安定的に数十万分の1程度まで除去できる ほか、従来部品より使用期間が長いため、交換頻度が減り、放射性廃棄物も抑制できるという。

Arevaの高速凝集沈殿装置では汚染水に薬剤を注入し、放射性物質を凝集沈殿させ、上澄みを次工程に回す。
沈殿した超高濃度の放射性廃液(スラッジ)は現在、建屋の貯留槽内に仮置きしている。

スラッジの表面の放射線量は毎時1シーベルトを超えるとみられ、これの処理方法が決まっていない。
仮置き量が増大したため、休止を決断したという。

KurionやSarryの場合は、凝集沈殿ではなく、ゼオライトなどの固形物に放射性物質を吸着させ、上澄みを次工程に回す。
廃棄物は貯めて容器ごと捨てる仕組みで、
容器の線量は毎時4ミリシーベルト程度スラッジより扱いやすいが、廃棄物の総量は膨大になる。
これの最終処分も決まっていない。

Arevaでは、毎回容器を交換するなど手間のかかるSarryに比べて、スラッジは扱いがシンプルであるとし、経駿を重ね、廃液の処理法を知って いると主張している。東電に協力を提案したが、受け入れられていないという。
(東電では「廃炉に向けた中長期的な計画の中で取り組んでいきたい」と話すにとどめている。)

これまでのトラブルについては、緊急に対応する必要があり、十分に準備できなかったため(Sarryは準備に2か月ほど多くかけた)としている。

ーーー

東京電力は12月4日、淡水化装置(蒸発濃縮装置)周辺の堰内に水が溜まっていることを確認したと発表した。堰内に溜まっている漏えい水は約45立方メートルと推定している。

蒸発濃縮装置のVVCC蒸発器上流に設置されている廃液予熱器(熱交換器)出口側のRO濃縮水(蒸発濃縮装置の処理原水)配管との接続フランジ部から漏えい跡が確認されたため、当該箇所からの漏えいの可能性が高いと推定している。

その後の調査で、コンクリート製の堰にひび割れがあり、そこから堰外の側溝に漏えいした水、約300リットルが漏れ出ていることを確認した。

4日時点の放射性セシウムは1リットル当たり18ベクレルで、海洋への放出限度以下だったが、 ストロンチウムについては除去されておらず、海に流出した放射能の量は260億ベクレルと推定されている。
東京電力は、「放射性物質は海で薄まるため、排水路近くの海にいる魚を毎日食べても、1年間の被ばく量は3.7マイクロシーベルトで、人の健康や環境への影響はほとんどないと考えている」としている。

逆浸透膜型淡水化装置は継続運転しており、淡水化処理した水は十分にあることから、「原子炉注水への影響はない」としている。

淡水化システムは当初、放射性物質を吸着、沈殿させた後に「逆浸透膜」の装置に通して作られた真水を原子炉の冷却に再利用していたが、汚染水を4割しか再利用できていなかった。

東電は8月から蒸発濃縮装置を導入した。
この蒸発濃縮装置は逆浸透膜を通した後に出る濃い塩分の廃液からさらに真水を取り出すことができ、2段階で淡水化すれば、再利用率が8割まで上がる。

   (Sarry導入による2系列化で処理量は上記から倍増している)

ーーー

東電は12月5日、福島第1原発で貯蔵している低濃度汚染水を来年3月にも海洋に放出する計画をまとめ、全国漁業協同組合連合会に説明した。
全漁連の服部会長は、漁業に深刻な影響が出かねないとして、東京電力に抗議、海に放出しないよう伝えた。

放出するのは建屋地下などに流入した汚染水から放射性物質を分離処理後の水で、原子炉への注水などに利用しているが、注水に必要な量以上の処理水が発生しており、来年3月にも貯蔵しきれなくなるおそれがあるという。

9万6000トン余りが放出の対象で、放射性ストロンチウムなども処理し、法令で定める周辺海域での基準値以下まで下げるとしている。


2011/12/10  最近の人民元の動き 

ゆっくりと上昇していた人民元は、11月4日に終値としては最高の6.3392人民元/ドル(一時最高値は11月9日の6.3365人民元)をつけたが、その後下落している。

12月9日の人民元終値は6.3647人民元/ドルとなった。
同日朝に中国人民元が設定した中心レートは6.3352人民元/ドルで、これに対し0.47%安となり、値幅制限の下限の0.5%ギリギリとなった。

11月末から連日、下限に張り付いている。

エコノミストは人民元のこの動きの原因として、大企業による強いドル需要や、国内市場でのドル資金不足が要因とみており、複数のディーラーは、外国人投資家が最近、ドル先高観を背景に米ドルに対し元を売っていると指摘している。

この動きを受け、国務院新聞弁公室は7日、以下の通り説明した。

中国政府はこれまでレートを操作したことはなく、人民元レートは市場の動きや市場の需給に伴って変動するものであり、市場が調節するものである。

レートは市場の変動に伴って変化するものであるため、人民元レートはさらに上昇する可能性もあれば、さらに低下する可能性もある。

12月9日のレートは、中国が「人民元相場の弾力性を強化する」とし、2008年8月から固定していた人民元を再び管理フロート制に戻した2010年6月19日の前日の終値 6.8262人民元に比して 7.25%の人民元高となっている。

外資系投資銀行のエコノミストらは一様に最近の動きを「一時的な現象に過ぎない」との見方を示しており、長期的には人民元レートの上昇が続いており、2012年の対米ドル上昇率は3―5%になると予想している。


2011/12/12 ユーロ新条約、最大26カ国参加へ 

EU首脳会議は12月9日、ユーロ圏の政府債務危機への総合対策を盛り込んだ議長総括を採択し閉幕した。
財政規律強化のための新条約の制定は英国の反対で決定できず、ユーロ圏を中心とした条約とする。
(EU条約改正には加盟27カ国の全会一致の批准が不可欠)

付記
EUは12月16日、新条約の原案をまとめ、加盟27か国に送付した。来年1月中の条約案合意を目指す。
ユーロ圏17か国のうち少なくとも9か国が批准した後で発効するという手順となっている。

参考 2011/11/7   EU 金融危機

EU首脳会議のポイントは以下の通り。

1) 財政規律強化のための新条約の制定(通貨統合から「財政統合」への一歩)

構造的な財政赤字の水準に新たな基準を導入、将来の財政赤字をゼロにする「均衡予算」の達成・維持を各国憲法や基本法などで義務づける。
一時的な景気悪化で税収が落ち込むなどの場合は、名目GDP比で0.5%の構造的財政赤字まで容認する。

財政赤字がGDP比で3%を上回った国には自動的に制裁
(もともとユーロ圏諸国には財政赤字がGDP比3%以下など厳しい財政規律が義務付けられ、罰則もあるが、過去に違反した独仏両国を含む各国は制裁はされておらず、骨抜きになっていた。)

  ドイツは「EU司法裁判所による各国への執行の強要」案を取り下げ
  フランスは欧州委員会に強大な権限を与えるドイツの案を拒否

財政計画のEUへの事前提出

ーーー

英国が主権制限を懸念して拒否、孤立化。

英国の下記主張を独仏が拒否。
・欧州銀行監督機構(EBA)が英当局の権限を抑えるのをやめる
・EBAの本部の所在地をロンドンから別の場所に移さない
・各国で金融規制に関するEUルールの適用を柔軟に変えられるようにする

ユーロ圏17カ国に非ユーロではブルガリア、デンマーク、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、チェコ、スウェーデン、ハンガリーの9か国が参加の検討を表明 、最大26か国で制定。
2012年3月までの署名を目指す。

キャメロン英首相は次のとおり述べた。
・条約改正は英国の利益にならないから賛成しなかった。
・単一通貨に入っていなくて良かった。
・ユーロ圏諸国が団結して問題を解決することを願う。
 しかし、英国の利益に対する保護措置がなければ、条約改正ではなく、別の取り決めが望ましい。
・EUに加盟していることは英国の利益。英国のEUへの影響力は維持される。

仏独が推進する金融取引税の導入に対する強い反対が背景とされる。

2) 欧州安定メカニズム(ESM)の稼働前倒し

欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の後継となる欧州安定メカニズム(ESM)を予定より1年前倒しし2012年7月に設立。
資金力の上限を5,000億ユーロに制限し、銀行免許を付与しない。

欧州金融安定基金(EFSF)を2013年半ばまで存続させ、4400億ユーロ規模のEFSFとの併用で、イタリアやスペインなどの国債購入、欧州銀行への資本増強、資金繰り難に陥った国への緊急融資などに充てる財源を多めに確保。

但し、債務残高は以下の通りで、イタリアなどの危機打開には不足。
  ポルトガル 1,613億ユーロ
  ギリシャ  3,294億ユーロ
  スペイン  6,418億ユーロ
  イタリア  18,428億ユーロ

3) 国際通貨基金(IMF)を使った新安全網の整備

ユーロ圏各国などが、IMFに計2000億ユーロを融資
うち1500億ユーロはユーロ圏加盟国が拠出
IMFは、この資金で財政悪化国を金融支援

日本など先進国や中国など新興国の協力による規模拡大を期待

付記 12月19日、各国財務相は電話会談を開いたが、英国が反対し、1500億ユーロの合意に止まった。
    このため、G20などに資金要請を行った。

4) 財政悪化国の再建支援

民間金融機関に借金の棒引きを求める措置は、ギリシャ救済に限定する

5) 「ユーロ共同債」導入は検討継続

ドイツが強硬に反対

ーーー

クロアチア政府は2011年12月9日、EU加盟条約に調印した。28か国目の加盟で、2013年7月に加盟する。

クロアチアはEU加盟に向け、民主化・経済改革を進めてきた。観光業を中心に2000年以降は毎年4〜5%の経済成長を遂げたが、2008年の世界的な金融危機で失速。景気回復に手間取る一方、政府債務が拡大しており、財政の健全化と景気対策の両立という難しいかじ取りを迫られる。

EU首脳会議はセルビアが目指しているEU加盟候補国入りについて来年3月まで決定を先送りすることを決めた。
セルビアがコソボとの関係正常化交渉を再三中断してきたことなどを受け、コソボとの協力協定を来年2月までに締結するようセルビアに求めた。

他に候補国となっているのは、マケドニア旧ユーゴスラビア、トルコ、アイスランド、モンテネグロ。


2011/12/13 中国、WTO加盟から10年 

中国は1995年10月にWTO加盟を申請、2001年11月10日にカタールでのWTO閣僚会合が加盟を承認、12月11日に加盟が発効した。

国務院新聞(報道)弁公室は12月7日、中国のWTO加盟10周年にあたり、白書「中国の対外貿易」を発表した。

この30年余り、中国は対外開放を拡大し、外資を導入、利用し、先進技術を導入し、国内産業の改造・高度化を進め、国際分業・競争に全面的に加わり、対外貿易の飛躍的発展を実現した。
モノの輸出入総額は1978年の206億ドルから2010年には2兆9740億ドルに増え、2年連続で世界のモノ貿易の輸出第1位、輸入第2位の大国となった。

しかし、中国は輸出産業がグローバル産業チェーンのローエンドに位置し、資源、エネルギーなど要素投入と環境コストが比較的高く、企業の国際競争力、一部業種のリスク抑制能力が相対的弱い。

WTO加盟後、中国の対外貿易体制は徐々に国際貿易ルールに合致したものになり、統一、開放の、多国間貿易規則にかなった対外貿易制度を確立した。

対外貿易の発展は中国経済の近代化と総合国力の向上を促すだけでなく、中国経済を世界経済の一部にし、経済のグローバル化を世界各国・地域の共同の繁栄にプラスの方向に進めている。

中国政府は対外貿易の不均衡問題を非常に重視し、一連の政策・措置をとり、貿易黒字の急増を抑え、大きな成果を収め、対外貿易が均衡しつつある。

中国政府は対外貿易にまだ不均衡、不調和、持続不可能の問題のあることをはっきり認識しており、貿易発展パターンの転換を急ぎ、対外貿易の持続可能な発展を実現している。

第12次5カ年計画期(2011―15年)に中国は開放を一段と拡大する。
中国は貿易パートナーと共に世界経済・貿易の発展において直面しているさまざまな挑戦(試練)に共同で対応し、繁栄を共有し、ウィンウィン(共に勝者になる)を実現する。

12月9日付の人民網日本語版は「WTO加盟から10年間の十大ニュース」を掲載した。

(1)中国が世界一の輸出国、世界2位の輸入国に

2009年に中国が世界一の輸出国になるとともに世界2位の輸入国になった。

WTO加盟以来、貨物貿易の輸出入規模は2001年の5098億ドルから2010年は約3兆ドルに増加し、輸出は約 6倍、輸入は5.7倍、それぞれ増加した。

(2)中国が世界の多国間貿易体制の中核メンバーに

2008年7月、中国はWTOの多角的貿易交渉(ドーハラウンド)におけるさまざまな形式の話し合いに初めて参加した。
同年11月には、中国の指導者が初めて主要20カ国・地域(G20)による首脳会合(金融サミット)や経済サミットに出席した。

(3)対外貿易経営権の開放が民間企業の国際市場開拓を推進

2004年7月1日、中国は計画を半年前倒しして、WTO加盟時の承諾事項の対外貿易の経営権を開放、50年にわたって行われてきた対外貿易権の審査許可制が廃止され、登録制が取って代わった。

民間企業の国際市場開拓への意欲をかき立て、また中国の対外貿易の輸出の大幅増加や民間経済の急速な発展に新しい動力を提供することになった。

(4)関税めぐる承諾の履行で企業や国民にプラス

2005年1月1日、WTO加盟時の承諾事項を踏まえて、WTOルールに合致しない非関税措置(輸入割当制や許可証の発行など)を全面的に撤廃し、これにより中国のWTO加盟後の過渡期が基本的に終了した。

同時に、中国は承諾事項を踏まえて、関税の全体的な水準の引き下げに努めている。
  1986年 43.2%→2001年(WTO加盟時)15.3%→2011年現在 9.8%

(5)WTOルールに合致した市場経済法律システムを構築

2004年7月1日、「中華人民共和国対外貿易法」の修正が施行され、中国がWTO加盟時に承諾した関連の法律法規の全面的な整備を履行した。WTOルールに合致した貿易体制が徐々に構築され、社会主義市場経済の法律システムが一層整えられた。

(6)政府の職能がWTO理念の浸透を加速

2004年7月1日、行政許可の範囲、権限、プロセスを設定するとともに、行政許可に対する審査や監督などについて明確な規定を打ち出した「中華人民共和国行政許可法」が施行された。

WTOが提唱する「非差別的」、「透明性」、「公平な競争」、法律制度に基づく精神といった原則的な理念が、ますます人々の間に浸透するようになった。

(7)国内企業・外資系企業の所得税率を一体化

2008年1月1日、「中華人民共和国企業所得税法」が施行された。
   
2008/1/4 中国、新企業所得税法施行

これにより国内企業・外資系企業に統一的な所得税率を適用し、各種の企業が平等を土台として公平な競争を展開できるようにし、国内企業に実質的な恩恵を与えただけでなく、海外から導入する投資の質を引き上げ、外資系企業の投資構造を改善するのにもプラスになった。

(8)伝統的な優勢産業のエネルギーを発揮

WTOのデータでは、2010年の中国の繊維製品輸出額は770億ドルで、世界市場に占めるシェアは30.7%、衣料品の輸出額は1300億ドルで、世界シェアの36.9%を占めた。

WTO加盟からの10年間に、繊維製品・衣料品、家電製品、電子情報製品といった中国の優勢産業の潜在能力が極めて大きく発揮され、国内需要を満たしただけでなく、「メードインチャイナ」の名を世界にとどろかせることになった。

(9)自動車社会へと進む中国 生産・販売は世界一

中国は2009年に初めて米国を抜き、世界一の自動車生産・販売大国になった。

2001年の生産台数はわずか246万7千台だったが、2010年の生産台数は1826万4700台、販売台数は1806万1900台に達した。

(10)紛争解決機関を利用した経済的権利の防衛が当たり前のことに

WTO加盟からの10年間、中国の対外貿易規模が急速に拡大するのに伴い、貿易摩擦も増え、紛争解決機関を利用して経済的権利を貿易することが、当たり前のことになりつつある。

WTO加盟後、海外で中国に対して発動された貿易救済措置としての反ダンピング調査、反補助金調査、反保障措置調査は累計約 690件に達し、対象金額は約400億ドルに上り、中国は何年も連続して世界で反ダンピング・反補助金調査を最も多く発動された国となった。

保護主義に反対し、多国間貿易制度を保護することが、長期的な任務となっている。


2011/12/14    Qatar Petroleum とShell、カタールの石化計画でHeads of Agreement を締結

Qatar Petroleum とShellは12月4日、カタールの石化計画でHeads of Agreement を締結した。
カタールの
Ras Laffan Industrial Cityでのワールドスケールの石油化学コンプレックス開発の範囲や原則を決めた。

付記 Qatar PetroleumとShellは2015年1月14日、計画中止を発表した。建設費が高過ぎるとしている。

両社は2006年2月に覚書を締結、2010年12月にMOUを締結し、共同でFeasibility study を実施してきた。

計画には以下のものを含む。主にアジアの成長市場での販売を目指す。

・ワールドスケールのスチームクラッカー:原料はカタールの天然ガス
・モノエチレングリコール:能力150万トン、シェルのOMEGA法使用
・リニアアルファオレフィン:能力30万トン、シェルのSHOP法使用
・オレフィン誘導体

Qatar Petroleum が80%、Shellが20%を出資する。

 OMEGA法:

ShellのEOプロセスと三菱化学の触媒によるMEG法を統合したもので、MEGの選択率を99%以上まで高めた
一般的にはEO触媒でエチレンと酸素を反応させてEOをつくり、そのEOを水と反応させグリコールをつくるが、OMEGA法では触媒プロセスのみでEGをつくる。

韓国の湖南石化、サウジのPetroRabigh、シンガポールのShellで使用している。

 SHOP:Shell Higher Olefin Process

Shellが開発した linear alpha olefinsの製造プロセスで、エチレンのオリゴマー化とオレフィンメタセシスで製造する。

Qatar PetroleumとShellは2007年に戦略的パートナーシップ契約を締結し、川上から川下全般で、双方が関心を持つインターナショナルな計画を一緒に行うこととしている。

Qatar Petroleum InternationalとShellは2009年11月に、両社が50/50JVQPI and Shell Petrochemicals (Singapore)を設立し、シンガポールの住化主導の2つの石化会社、Petrochemical Corporation of Singapore (PCS) とThe Polyolefin Company (TPC)のShell持分を肩代わりする契約に調印した。

2009/11/26 カタール石油、シンガポールのPCS、TPCに出資

Qatar PetroleumとShellは現在、カタールで2つのプロジェクトを行っている。

1)Pearl GTL:世界最大のGTL(Gas-To-Liquids)計画

立地:Ras Laffan Industrial City  
所有:カタール政府とのDevelopment and Production Sharing Agreement 
     資金負担は全額Shell
運営:Shell
製品:GTL 日量14万バレル(2系列合計)
   天然ガス液とエタン 原油換算日量12万バレル
開発費:180ー190億ドル
建設:日揮/KBRのJV

2) Qatargas 4

立地:Ras Laffan Industrial City  
所有:Qatar Petroleum 70%、Shell 30%
運営:Qatargas Operating Company
製品:LNG 年産780万トン
   天然ガス液 日量7万バレル
建設:千代田化工/TechnipのJV

参考 2010/12/21 カタール、LNG増産工事完了で年産 7,700万トン体制 

ーーー

カタールの既存の石油化学については、

    2006/6/1 湾岸諸国の石油化学ー2 カタール

付記 最新版  2013/1/17    カタールの石油化学の現状


2011/12/15 自動車向け炭素繊維複合材料の開発が進展

帝人は12月9日、GMとの間で今後GMが世界で市場展開する量産車に向けて共同で熱可塑性炭素繊維複合材料(CFRP)の製品開発を行う契約を締結したと発表した。

東レはドイツのダイムラーと生産JVを設立することで合意しており、三菱レイヨンもドイツのBMWの電気自動車用にプレカーサーを供給している。
今回の帝人の提携で、炭素繊維の世界シェアの約7割を握る3社が欧米の大手自動車メーカーと組むことになる。

炭素繊維は、通常の鉄に比べて10倍の強度と4分の1の軽さを有することから、熱可塑性CFRPが車両の部品に使用されることで、劇的な車両の軽量化が期待できる。

炭素繊維と、3社の炭素繊維事業の状況については、2006/9/9 炭素繊維 参照。

1)帝人

帝人は11月30日、熱可塑性樹脂を使用した炭素繊維複合材料(CFRP)によるコンポジット製品の事業化を加速するため、松山事業所内にパイロットプラントを設置すると発表した。
世界初となる「炭素繊維からコンポジット製品の成形加工までを1分以内で連続一貫生産するパイロットプラント」としている。

設備投資額は20数億円で、速やかに着工し、2012年年央の稼働開始を予定する。

同社は世界に先駆けて、既に熱可塑性CFRPによるコンポジット製品を1分以内で成形する量産技術を確立しており、コンポジット製品の量産成形技術に加え、独自のCFRP接合技術を用いることで、極限まで車体骨格を軽量化したオール熱可塑性CFRPのコンセプトカーを製作している。

自動車業界での理想的なタクトタイム(工程作業時間)は1分前後と言われている。

同社は本年3月に、複合材料開発センターと、100%子会社で炭素繊維・複合材料事業の中核会社の東邦テナックスとの連携により、熱可塑性CFRPを1分以内で成形する画期的な量産技術を世界に先駆けて確立した。

従来は5〜10分程度かかっており、生産性の面から量産車向けの部品として使用するには課題があった。

今回のGMとの共同開発契約締結に伴い、帝人はこのコンポジット製品を量産する技術を活用することにより、今後GMが世界で市場展開する乗用車、トラック、クロスオーバーなどの量産車に向けて共同で熱可塑性CFRPの製品開発を行う。

帝人は共同開発の場として、複合材料の用途開発機能とマーケティング機能を集約した「Teijin Composites Application Center」を来年早々に米国北東部に設置、GMの研究員を受け入れる。

共同開発により、GMは、主力車種に熱可塑性CFRPによるコンポジット製品を導入するポテンシャルを持つことになる。
一方、帝人は、一部の高級車などに限られてきたCFRPの用途を量産車へと拡大する。

帝人はGMを選んだ理由として、高級車ではなく、量産車に炭素繊維を搭載するという目標が一致したためとしている。
2020年頃には年100万台の自動車に搭載し、1500億〜2000億円の売上高を目指す。

なお、GMとLGは8月25日、LGによるバッテリー供給での協力関係を拡大し、電気自動車を共同で開発すると発表している。
  
2011/8/29 韓国LG、GMと電気自動車の共同開発へ 

帝人の炭素繊維・複合材料事業については http://www.teijin.co.jp/about/fields/carbon/index.html

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東レ

東レは2008年に名古屋事業場にオートモーティブセンター(AMC)を開所し、炭素繊維、熱可塑性樹脂、製造プロセス、評価・分析技術等を融合した、自動車向けの最適材料の開発を続けている。

東レは9月9日、次世代型の電気自動車(EV)「TEEWAVE AR1」を試作したと発表した。
車体基本構造には熱硬化炭素繊維複合材料(CFRP)製のRTM一体成型モノコックとCFRP製衝撃吸収体を採用、車体重量は846kgと、鋼板主体の従来型のEVに比べて4割以上軽量化し、同時に高い車体剛性と衝突安全性を実現した。

2011/9/14 東レ、次世代型電気自動車を試作

同社は2011年1月、ダイムラーAGとの間で、東レが開発した炭素繊維複合材料 (CFRP)の革新的成形技術である「ハイサイクルRTM成形技術」を活用してCFRP製自動車部品を製造・販売する合弁会社(東レ 50.1%、ダイムラー 44.9%、その他 5.0%)を設立する契約を締結した。

また同社は2011年6月、オランダのTenCate Advanced Compositesとの間で、航空機用途向け熱可塑性樹脂複合材料用の炭素繊維の長期供給基本契約を締結したが、合わせて、自動車に使用される熱可塑性複合材料における市場開拓および製品の共同開発を検討していくことにも合意した。

東レの炭素繊維複合材料事業については http://www.toray.co.jp/ir/pdf/lib/lib_a144.pdf

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三菱レイヨン

三菱レイヨンはドイツの炭素繊維メーカーのSGL TechnologiesとJVを設立し、BMW向けの炭素繊維のプレカーサー(ポリアクリルニトリル繊維)の供給を行っている。

The Carbon Companyとの愛称を持つSGL TechnologiesとBMWは2010年1月、炭素繊維複合材料の展開のため合弁会社SGL Automotive Carbon Fibersを設立した
BMWが2015年までに発売を予定している電気自動車 “Megacity Vehicle”の基幹部品用炭素繊維を製造する。

三菱レイヨンは2010年4月、SGL Automotive Carbon Fibersに炭素繊維のプレカーサーを供給するため、SGL Technologiesとの間で合弁会社MRC−SGLプレカーサー」を設立した。

出資比率は三菱レイヨンが66.66%、SGLが33.34%で、製造拠点は 三菱レイヨンの大竹事業所内とする。
2011年4月に量産を開始した。商業生産開始はで、生産能力は、当初3年間に7千トン/年規模まで高める。

モノの流れは以下の通り。

MRC−SGLプレカーサー 大竹 プレカーサー
SGL Automotive Carbon Fibers  米ワシントン州 焼成→ラージトウ炭素繊維
  同上(中間材工場) 独 バイエルン州 →各種織物
BMW部品工場   成形加工→炭素繊維複合材料
BMW   次世代環境対応車“Megacity Vehicle”

三菱レイヨンの炭素繊維・複合材料については http://www.mrc.co.jp/pyrofil/ 

 


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