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2013/4/15  イレッサ訴訟、患者側の全面敗訴確定 

「イレッサ」訴訟で東京高裁で敗訴した患者側が上告していた件で、最高裁は4月12日、製薬会社アストラゼネカへの請求に対する上告を退ける判決を言い渡した。国への請求については、最高裁は既に4月2日に原告の上告を受理しない決定をしており、患者側の敗訴が決まった。

大阪高裁で敗訴した患者側も上告中であったが、最高裁は同日付で原告の上告を棄却する決定を下した。

これにより、一連の訴訟は終結した。

ーーー

イレッサは英国のAstraZenecaが開発した肺がん治療薬で一般名はゲフィチニブ。

厚生労働省は2002年7月、世界に先駆けて、申請から半年で輸入承認した。
2002年8月に発売され、2カ月の間に、1万人以上の患者に投与された。

がんの増殖、転移に関係する分子を狙い撃ちにする「分子標的治療薬」で、正常細胞を傷つける抗がん剤より副作用が軽いと期待されたが、市販開始直後から間質性肺炎などによる副作用死が相次いだ。

厚労省は同年10月、同社に、全国の医療機関に緊急安全性情報を出して注意を呼びかけるよう指示した。
その後、患者の同意を得た上で投与することも記された。

厚労省によると、2012年末時点で、イレッサの副作用とみられる報告は2350例あり、このうち862人が死亡している。

イレッサは特定の遺伝子変異を持つ患者に効果が高いことが分かっており、2011年11月からはこれら患者に限定して投与され、昨年1年間で約7500人に新たに投与された。

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イレッサで深刻な副作用を受けた患者と副作用によって死亡した患者の遺族計15人が、国とアストラゼネカに損害賠償を求めた訴訟で、東京、大阪両地裁は、原告側の和解勧告の上申書に基づき、事前に協議して、2011年1月7日に和解勧告した。

しかし、政府は1月28日、東京、大阪両地裁の和解勧告に応じないことを決めた。アストラゼネカも勧告受け入れを拒否した。

2011/1/31 政府、イレッサ訴訟で和解勧告拒否

その後の地裁判決と高裁判決の概要は以下の通りで、ともに高裁で原告側の逆転敗訴となっていた。

東京 東京地裁 判決 国とア社に1760万円の支払いを命じる
ア社 イレッサは特定の患者に高い効能、効果があり、製造上の欠陥はない
当初の添付文書の記載では医師らへの情報提供が不十分で、指示・警告上の欠陥
(PL法上で規定する「通常の安全性を欠いた状態」)
添付文書に致死的となる可能性を記載していれば、間質性肺炎で死亡することはなかった
国は承認前の時点で副作用による間質性肺炎で死に至る可能性があると認識
安全性確保のための必要な記載がない場合、国は記載するよう行政指導する責務がある。
間質性肺炎の危険性を目立つように記載するよう指導しなかった国の対応は違法
東京高裁 判決 地裁判決取り消し、遺族側主張を全面的に退ける
ア社 イレッサには有用性があり、製造における設計上の欠陥はない
イレッサの初版添付文書に警告欄がなく、副作用が致死的になり得るとの記載がなくても、指示・警告上の欠陥ではない

専門医が処方する薬剤
専門医であれば間質性肺炎による死亡の可能性を認識
国内の治験で死亡例はなく、海外の死亡例も因果関係があるとまでは言えない

欠陥があるとの前提事実がない以上、規制権限の不行使が違法かどうか論じるまでもない
大阪 大阪地裁 判決 ア社原告9人に計6050万円の支払いを命じる
ア社 警告欄に記載するなどして注意喚起を図るべきだった。
緊急安全性情報配布(2002/10)前は製造物責任法上の欠陥があり、賠償責任あり。
添付文書に関する行政指導は必ずしも十分ではないが、当時の知見のもとでは一定の合理性がある。
国家賠償法上の違法はない。
大阪高裁 判決 大阪地裁判決を取り消し、原告側の全面敗訴
ア社 担当医は肺がん治療を手掛ける医師であり、添付文書の重大な副作用欄を読めば、間質性肺炎の危険性を認識できた
副作用欄の4番目だからといって、担当医が致死的でないと理解するとは考えにくい
治験や海外症例などを含め、副作用の間質性肺炎による死亡は11例あったが、因果関係が明確と言えるのは1例で、「一般的な副作用を超える副作用を予測することは困難だった」
イレッサ自体に問題がない以上、責任はない

今回、最高裁第3小法廷は以下の判断で、5人の裁判官全員一致の意見で上告を棄却した。

医薬品は人体にとって異物であり、何らかの副作用が生じることは避け難い。製造物責任法上、副作用に関する添付文書の記載が適切かどうかは、副作用の内容や程度、医師の知識と能力、記載の形式や体裁といった事情を総合考慮し、予見できる副作用の危険性が十分明らかにされているといえるかどうか、という観点から判断すべきだ。

イレッサの輸入が承認された時点では、国内の臨床試験で副作用の間質性肺炎による死亡例はなく、国外でも間質性肺炎での死亡例にイレッサ投与との因果関係を積極的に認められるものはなかった。このため、他の抗がん剤と同程度の間質性肺炎の副作用が存在するにとどまると認識されていた。

製薬会社のアストラゼネカはこの認識に基づき、添付文書に「警告」欄を設けず、医師らへの情報提供目的で設けられる「使用上の注意」欄の「重大な副作用」欄の4番目に間質性肺炎を記載した。難治の肺がん治療を行う医師がこの記載を読めば、イレッサには他の抗がん剤と同程度の間質性肺炎の副作用があり、投与によって患者が間質性肺炎を発症した場合、死に至る危険性があることを認識するのは難しくなかったのは明らかだ。

一方、ア社の緊急安全性情報は、イレッサの投与を始めてすぐに症状が表れ、急速に進行する間質性肺炎の症例が把握されたことを受けて出されたものだ。このような間質性肺炎の症状は、承認までの臨床試験では予見できなかった。急速に重篤化する間質性肺炎の副作用があることを前提に、後に改訂された添付文書のような記載がなかったからといって、当時の添付文書の記載が不適切だったとはいえない。

以上によれば添付文書は、承認の時点で予見できる副作用を記載したものとして適切だった。

判決では裁判長を除く4人が補足の意見を付けた。

輸入販売開始後の約3カ月間で報告された死亡例は17件あり、危険性を予見することはできなかったのかについて、2人の裁判官は、「具体的ではなくとも概括的な予見の範囲内にあったと考えることも可能」と指摘した。
但し、予見に基づいた記載をするとしても「危険の具体的内容が明らかでない限り、一般的・概括的な記載にならざるを得ない」として警告としての効果を疑問視し、当時の記載が不適切だったとはいえないとした。

2人の裁判官は「イレッサは、新薬を早く使いたいという患者の望みと安全性を考慮し、国の判断によって輸入販売が始まったもので、患者だけに我慢を求めることには疑問も残る。新たに開発された薬の副作用のリスクは社会が広く分担し、被害者保護と救済を図ることも考えてほしい」として被害対策の必要性を指摘した。

医薬品による副作用被害については、製薬企業が基金をつくり医療費などを給付する「医薬品副作用被害救済制度」があるが、抗がん剤は原則として救済の対象外となっている。

あらかじめ相当の頻度で重い副作用の発生が予想される医薬品については、健康被害が生じてもこれを受忍すべきという考え方。

抗がん剤の副作用のみを救済すれば、(医薬品でない)放射線治療など他の治療の副作用に苦しむ患者らとの間に不公平感が生まれる可能性があること、がん患者の場合、症状の悪化が薬の副作用によるものかどうか判断するのが難しいことなどで見送った経緯もある。

弁護団は「最高裁の判決は極めて不当で受け入れがたいが、今回の訴訟を通じて被害の悲惨さを伝えたことで、医療現場の安全対策に多くの改善を促すことができた。国や企業は改めて今回の問題を検証し、同じような薬による被害が出ないようにすべきだ」と述べた。


2013/4/16 三菱商事・三井物産出資の豪Browse LNG計画、採算合わず計画見直し

Browse LNG開発計画を主導するWoodside は4月12日、事業評価の結果、James Price PointでのLNG建設は投資基準に合致しないと判断したと発表した。

JV相手と早急に協議し、海上生産(浮体式LNG)への切り替え、既存LNG設備へのパイプライン建設や現計画の縮小案など、他の案の検討をを行う。パートナーの1社のShellは
もともと海上LNG施設を希望していた。

本計画の概要は以下の通りで、沖合で採掘したガスをパイプラインで圧送し、James Price Pointに建設する施設で精製、液化、出荷する予定だった。

プロジェクトパートナー
  East JV West JV 合計持分
Woodside 34% 17% 31.3%
三井物産・三菱商事 16% 8% 14.7%
(Chevron)  (16.67%) (20%) (17.2%)
Shell 25% 35% 26.6%
(BHP Billiton)  (8.33%) (20%) (10.2%)
PetroChina 8.33% 20% 10.2%
BP 16.67% 20% 17.2%
合計 100% 100% 100%
ガス・コンデンセート田位置 西オーストラリア州Broome市沖合425km 北西大陸棚Browse 地域
陸上プラントサイト予定地 西オーストラリア州Kimberley地区James Price Point
BrowseはTorosa(Scott Reef)ガス田、Brecknockガス田、Callianceガス田に分かれている。
年間LNG生産量 1,200万トン(400万トン×3系列)
将来的には2,500万トンまで拡張可
埋蔵量
(Woodside社見積もり)
ガス:15.5兆立方フィート、
コンデンセート:4億1,700万バレル
最終投資決断 2013年上半期
2012/5/8  三井物産と三菱商事、豪ブラウズLNGプロジェクトに参画

2012/12/18 BHP Billiton、PetroChinaに豪州LNG事業権益を売却
Woodsideでは「豪州の他のLNG事業と同様に強いコスト上昇圧力に見舞われた」と話し、投資額450億ドルとされる計画は「経済的な要件を満たさない」と述べた。

豪州では人材不足や賃金の高さを反映し、石油・ガスに従事する労働者の賃金は年間で14万豪ドルと各国平均の倍近い。また、昨夏導入の炭素価格制度(炭素税)や豪ドル高もコストを押し上げている。
 
LNG建設予定地とその周辺にアボリジニの文化遺跡があり、海はクジラの繁殖地で季節になると回遊してくるなどの理由で環境保護団体が計画に反対を続けていた。
 
豪州ではこの発表を受け、西豪州のLNG開発全体に遅れが出る可能性もあるとされている。
 
 
4月1日には米国のシェールガス開発会社GMX Resourcesが採算が合わないとしてChapter 11の申請を行ったと発表した。

2013/4/5  米国のシェールガス開発会社が破産法申請 

今後、LNG価格が値上がりする可能性もある。

2013/4/16   丸紅、韓国にLNG輸送

丸紅は4月15日、韓国のSK Shipping と共同で、フランスのTotal の英国法人と新造LNG船2隻の長期傭船契約を締結したと発表した。

丸紅とSK Shippingはこのたび、共同でLNG船を保有・運航管理する船舶保有会社2社を設立した。(報道では、丸紅が49%、SKが51%出資)

韓国の三星重工との間でLNG積載容量各180,000m3のLNG船2隻の建造契約を締結、Total Gas & Power Charteringとの間で最長30年間の傭船契約を締結した。

1隻は豪州 Ichthys LNGプロジェクトから、1隻は米国のシェールガスを原料とする初のLNGプロジェクトとなるSabine Pass LNGプロジェクトからのLNG輸送に投入される予定で、2017年1月および10月に竣工する。
LNG船は2015年に拡張される予定のパナマ運河を通峡可能な最大船型となる。

LNG供給先は韓国ガス公社(Kogas)で、同社は1社単独では世界最大のLNGの買い手で年間3千万トンを輸入している。

豪州のIchthys LNGプロジェクトは国際石油開発帝石(INPEX)が主導の計画で、生産開始は2016年12月末の予定。

Ichthys ガス・コンデンセート田の埋蔵量は、年間800万トン超のLNGを約20年の長期にわたり生産できる規模。
産出される天然ガスを、Darwinに建設する陸上プラントで液化し、年間840万トンのLNGと年間約160万トンのLPGとして生産・出荷する。
また、洋上貯油・出荷施設(FPSO:Floating Production, Storage and Offloading)等から日量約10万バレル(ピーク時)のコンデンセートを生産・出荷する。

権益比率は以下の通り。

INPEX 66.070
Total 30.000
東京ガス 1.575
大阪ガス 1.200
東邦ガス 0.420
中部電力 0.735

LNGについては既に、下記の通り、2017年から15年間の長期LNG売買契約を締結している。

買主 LNG年間販売量
東京電力 105万トン
東京ガス 105万トン
関西電力 80万トン
大阪ガス 80万トン
九州電力 30万トン
中部電力 49万トン
東邦ガス 28万トン
CPC社(台) 175万トン
TOTAL社(仏) 90万トン
INPEX 90万トン
合計 832万トン

Totalは2017年1月から韓国ガス公社(Kogas)に供給する。報道では年120万トンとなっており、30万トンはINPEX枠からの購入かと思われる。

2012/1/16 国際石油開発帝石、豪州イクシスLNGプロジェクト 最終投資決定 

米国のCheniere Energyはルイジアナ州Sabine Pass の海外からのLNG受入基地に天然ガスのLNG化設備を建設しているが、2010年9月に米国がFTAを締結している国(将来締結した国も含む)に限定して輸出許可を取得、更に、2011年5月、条件付きですべての貿易相手国への輸出を認められた。

売買先は下記の通りで、韓国のKogasは2017年から年350万トンを輸入する。

輸出先 数量
万トン/年
供給開始 契約期間
BG Group (英) 350 2016 20年間
同上 追加 200 2016 同上
Gas Natural(スペイン) 350 2016 同上
Gail(インド) 350 2017 同上
Kogas(韓国) 350 2014→2017 同上
合計 1,600    

2012/2/24 米国からのLNG輸入問題

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丸紅は2010年にノルウェーのBW Gas との協業によりLNG船の共同保有・運航事業分野に参入した。
BW Gasの子会社が保有していたLNG船8隻を共同保有している。(丸紅49%、BW Gas 51%)

2011年にはカナダの海運大手Teekayと共同で、海運世界最大手のデンマークのA.P. Moller-Maersk A/S からLNG運搬船8隻(6隻は単独、2隻は権益)を買収した。(丸紅48%、Teekay 52%)

同社では、今後増大が予想されるシェールガスを原料とするLNGの輸送をはじめ、LNG輸送ビジネスを拡大していく計画で、2020年をメドに20〜30隻に増やすとしている。


 


2013/4/17  水俣訴訟、最高裁判決 

水俣病未認定患者の遺族が熊本県に認定を求めた2件の訴訟の上告審判決が4月16日、最高裁第3小法廷で言い渡され、いずれも患者側の勝訴となった。 (判決要旨 下記)

水俣市の女性については県の上告を棄却した。女性を患者と認めなかった県の処分を取り消し、認定するよう県に義務付けた二審・福岡高裁判決が確定した。

豊中市の女性については、女性を患者と認めなかった2審・大阪高裁判決を破棄し、審理を同高裁に差し戻す判決を言い渡した。

水俣病について最高裁が判断を示すのは、行政責任を確定させた2004年10月の関西訴訟判決以来9年ぶり。

高裁判決では、裁判所が患者認定審査をできるというものと、県の裁量を重視し、司法は県の判断が不合理かどうかを審理するというものに 分かれていたが、今回、司法が独自に審査しうるとして県の判断を覆した。

また、環境庁の「手足のしびれや視野狭さく、運動障害など複数の症状の組み合わせ」を条件とするという「(昭和)52年判断条件」に基づく高裁判決を破棄した。
「52年基準」に合うものは個別的な因果関係について立証の必要がないとするものにすぎず、それ以外でも諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、水俣病と認定する余地を排除するものとはいえないとした。

これまで「52年判断条件」に基づいて行ってきた政府の水俣病収拾策と、それを前提にしたチッソの事業再編に影響が出るのは必至である。

付記

最高裁判決を受け、石原伸晃環境相は4月19日の閣議後記者会見で、「判決の趣旨をしっかり踏まえ、(運用改善の)具体化を急ぐよう指示した」と述べ、検討を始めたことを明らかにした。

熊本県水俣市の溝口チエさん(故人)を水俣病患者と認定するよう命じた最高裁判決を受け、熊本県は4月19日、チエさんを患者として認定した。蒲島郁夫知事は24日に水俣市でチエさんの遺族に会い、謝罪する。

認定審査業務にあたる熊本、鹿児島両県の担当者は「これまでも症状の組み合わせだけでなく、総合的に判断してきた」と主張するが、溝口さんを除く認定患者2975人のうち、単一症状のみでも「総合的判断」で認定された患者は4人しかいない。

付記

熊本県は5月2日、豊中市の女性の遺族が水俣病と認定するよう求めた訴訟で、近く控訴を取り下げることを決めた。
女性を患者と認めた一審・大阪地裁判決が確定後、水俣病と認定する見通し。

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この訴訟は、水俣病と認定されなかった患者2人の遺族が司法に救済を求めているもの。

熊本の女性は1974年に水俣病認定を申請したが、認定に必要な検診が完了しないまま1977年に死亡した。
県は20年後の1994年に生前のカルテなどを探す作業を始め、1995年に判断資料がないとして申請を棄却した。
遺族は2001年に棄却取り消しを求めて提訴、2005年には県に対し認定を命じるよう求める「義務付け訴訟」を追加提訴した。
女性の生前の診断書に「四肢末端に知覚鈍麻を認める」との記述があることなどから「2004年の水俣病関西訴訟最高裁判決に従えば水俣病」と主張したが、県側は「腎臓病による尿毒症が原因」と反論した。

豊中の女性は1953年ごろから手足にしびれが出始め、1978年に認定申請した。
しかし、熊本県は「感覚障害や運動失調など2つ以上の症状の組み合わせ」で水俣病と認める「52年基準」に当てはまらないとして、1980年に退けた。
女性ら関西に移り住んだ人々は、国などに賠償を求めて提訴した。(関西訴訟)
最高裁の勝訴判決が確定した後も、国は認定基準を見直さず、熊本県の棄却処分に対する女性の不服審査請求も退けたため、女性は2007年5月に提訴した。

この2件のこれまでの裁判の概要は以下の通りで、県の認定と司法判断について、両高裁で意見が分かれている。

    原告 1977年基準:
「感覚障害や運動失調など
2つ以上の症状の組み合わせ」
水俣病の
基礎的症候
原告のケース
水俣市
女性
熊本地裁 敗訴     病状に関する客観的な資料が乏しい
福岡高裁 勝訴 不十分 各症状で可能性の程度はさまざま 裁判所が患者認定審査をできる
四肢末端の知覚鈍麻と口の周辺の感覚障害あり。
メチル水銀の曝露歴を有すると推認。
県主張の尿毒症は医学的知見から認められない。
熊本県の棄却処分は違法、水俣病認定をすべき
豊中市
女性
大阪地裁 勝訴 医学的正当性の
根拠なし
四肢の感覚障害 総合考慮し、水俣病
大阪高裁 敗訴 相当 感覚障害だけでも、
「個別具体的事情を総合考慮」
県の裁量を重視、司法は県の判断が不合理かどうかを審理
違法となるのは「現在の科学水準に照らし、審査に重大な誤りがあった場合」に限られる
(1992年10月の伊方原発訴訟最高裁判決)
変形性頸椎症が原因の可能性もある。
県判断は現在の医学的知見からも合理性、
手続きに過誤や欠落はない
水俣市女性  福岡高裁  2012/2/29 水俣病訴訟、遺族が逆転勝訴
豊中市女性  大阪地裁  2010/7/19 大阪地裁、国の基準を否定し、水俣病認定を義務づけ
   大阪高裁  2012/4/17 水俣病認定で原告逆転敗訴

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水俣病の認定問題の経緯は以下の通り。

1956 5月1日 水俣病公式確認
チッソ付属病院の細川院長が水俣保健所に「原因不明の中枢神経症患者が多発している」と報告
1968 水俣病を初めて公害と認定
1969 公害健康被害救済特別措置法制定、患者認定制度始まる
 
補償協定の概要
項目 内容                                  
一時金 Aランク 1,800万円/人+近親者慰謝料(最高1,900万円)
B     1,700      +近親者慰謝料(最高1,270万円)
C     1,600 
年金 170〜67千円/人・月
医療費 患者医療費全額を支払い
その他
継続補償
医療手当、介護費、温泉治療費、針灸、葬祭費
患者医療生活基金(チッソが7億円拠出)からの支給
1971 環境庁事務次官通知
水俣病の要件として、手足のしびれなどの主症状のうち「いずれかの症状がある場合」と明記。
1977 環境庁環境保健部長通知(事務次官通知を覆す)
「手足のしびれや視野狭さく、運動障害など複数の症状の組み合わせ」を条件
(「(昭和)52年判断条件」として今に至る。これまでの認定は2,975人のみ)
1995 村山内閣 政治解決策
「メチル水銀の影響が否定できない者」を救済対象 

約1万人の未認定患者を対象に、四肢末端優位の感覚障害がある場合は「医療手帳」、感覚障害以外で一定の神経症状がある場合は「保健手帳」を交付。
医療手帳はチッソから一時金260万円、国・県から医療費自己負担分全額、月額約2万円の療養手当などを支給。
保健手帳は医療費自己負担分などを上限付きで支給してきたが、関西訴訟最高裁判決後に医療費自己負担分は全額支給に改めた。
2001 関西訴訟・大阪高裁判決
「汚染された魚介類を多く食べ、指先や舌先の感覚に障害があれば認定できる」
「52年判断条件」を事実上否定。
2004 最高裁 大阪高裁の基準を支持
国は、「最高裁の判決は有機水銀中毒症の判断基準であり、水俣病と有機水銀中毒は別」とし、水俣病認定基準の見直しは行わないことを言明。
2009 「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法」可決  最終解決策
2010/4/16 水俣病「救済措置の方針」を閣議決定 
2010 2010/11/15  チッソ、事業再編計画の認可申請
2011 2011/1/12 チッソ、「事業再編計画」に基づく、新会社「JNC株式会社」を設立

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判決要旨

■水俣病の定義

水俣病とは、魚介類に蓄積されたメチル水銀を口から摂取することにより起こる神経系疾患と解するのが相当。

■水俣病認定

個々の患者の病状についての医学的判断だけでなく、原因物質の摂取歴や生活歴、種々の疫学的な知見や調査の結果などを十分に考慮した上で総合的に検討する必要がある。
水俣病に罹患しているかという現在や過去の確定した客観的事実を確認する行為であり、行政庁の裁量に委ねられるべき性質のものではない。

■司法審査のあり方

県側は、裁判所の審査と判断は(1)「52年基準」に不合理な点があるかどうか(2)公害被害者認定審査会の判断に過誤・欠落があって、これに依拠した行政庁の判断に不合理な点があるかどうかといった観点で判断されるべきだと主張する。

しかし、裁判所においては、諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、個々の具体的な症状と原因物質との間に個別的な因果関係があるかどうかなどを審理の対象として、水俣病に罹患しているかどうかを個別具体的に判断すべきだと解するのが相当。

■「52年基準」の合理性と限界

手足の先の感覚障害だけの水俣病が存在しないという科学的な実証はない。

「52年基準」は、複数の症状が認められる場合には通常水俣病と認められ、個別的な因果関係について立証の必要がないとするもので、多くの申請について、迅速かつ適切に判断するための基準として定めたという限度で合理性を有する。

「52年基準」の症状の組み合わせが認められない場合でも、諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、水俣病と認定する余地を排除するものとはいえない。

■結論(裁判官5人全員一致)

  福岡高裁判決:

今回の判決と同趣旨と認められるので、県側の上告を棄却する。

  大阪高裁判決:

水俣病認定にあたっては県知事の判断に不合理な点があるかどうかという観点から審査すべきだとしている。
今回の判決と異なる判断であり、破棄は免れない。
原告が水俣病に罹患していたかどうか、さらに審理を尽くさせるため、大阪高裁に差し戻す。


2013/4/18  米財務省、日本に通貨安競争の回避を要求、中国は為替操作国とせず 

米財務省は4月12日、議会に為替報告書(Semi-Annual Report on International Economic and Exchange Rate Policies)を提出した。

特にアジアの多くの国での為替レート管理を問題にしている。

日本に関しては、日銀の金融緩和策が円安・ドル高につながったことに関連し、「競争的な通貨切り下げを慎むよう引き続き迫っていく」と明記した。

中国については
「為替操作国」との認定は見送った。財務省は1992−94年に中国を為替操作国と認定したが、それ以来、どの国に対してもこうした認定は行っていない。

1)日本

日本は経済を復活させ、成長させるために、国内経済で競争を不当に制限している規制を緩和することにより、国内経済を活性化するための抜本的で徹底した手段をとることが必要である。

マクロ経済の刺激策は短期的には有効でも、構造改革の代わりにはならない。

日本に対して、G-7とG-20で合意した約束、即ち、国内の手段を用いて国内目的の達成を目指す姿勢を維持し、通貨安競争を避け、競争目的のために為替相場を目標としないよう求める。

財務省は日本の政策をきっちりと見守っていく。

 

参考

G7財務相・中央銀行総裁会議は本年2月12日、緊急共同声明を発表、各国の財政・金融政策は「国内目的の達成に向けられており、為替レートを目標にはしないことを再確認する」と初めて明記し、「通貨安競争」をしないことを申し合わせた。

2月16日のG20財務相会議は2月16日、「競争的な通貨安を回避する」、「金融政策は国内の物価安定や景気回復を目的とすべき」などを明記した共同声明を採択、日本を名指しすることは避けながらも、世界的な通貨戦争の観測の抑制に努めた。

G7、G20で各国が日本を名指しで批判しなかった理由について、竹中平蔵氏が田原総一朗氏との対談(3月24日:東京プレスクラブ)で次のように述べている。

リーマン・ブラザーズの倒産のときに、まずアメリカが金融緩和して、言ってみればドル安政策打った。 (田原) 

米国、英国も、欧州全体が金融緩和をやっており、「日本は一番遅れてやったわけで、その一番遅れて、しかもその程度はまだアメリカよりも充分じゃないわけで、日本だけが批判されるという風に考える方がおかしい」

(その時、日本がやらなかったのは)「それは白川さんだからやんなかったんじゃないですか。---- 基本的には、(民主党政権が)経済成長に対して関心を払わなかったっていうのが一番大きいです。分配のことばっかりやった」

ダボス会議でドイツのメルケル首相が円安を批判したが、「そのとき皆なんて言ったかっていうと、『ドイツが言うなよ』って言ったわけですよね。ドイツはギリシャとスペインのせいでユーロが下がりましたと。そうすると漁夫の利を得たような形で輸出力が強いドイツがわーっと、 一人勝ちになっちゃったわけでしょ。だからそんなこと言うのはおかしい」 

ーーー

2)中国

人民元は4月初め時点で、2010年6月の弾力化前と比べ、米ドルに対し10.0%引き上げられた。(グラフの通り、その後もさらに上昇)
両国の物価の差を勘案すると、人民元は2010年6月から2013年2月までで実質16.2%上がったことになる。

中国の経常収支黒字は2007年にはGDPの10.1%あったが、2012年には2.3%に減っている。

中国政府は資本の動きの自由化に向かっていろいろの手を打っている。

これらを勘案し、財務省は中国を為替管理国とは見做さない。

しかしながら、人民元は依然として著しく過小評価されており、介入も再開されたように見える。人民元の更なる切り上げが必要である。

財務省は今後も、人民元の動きを注視し、通貨変動の幅を広げ、透明性を高め、強く、バランスの取れたグローバル経済を支えるよう中国政府の政策の変更を求めていく。

付記

中国人民銀行の易綱・副総裁は4月17日のIMF春季会合のパネルディスカッションで、近い将来、人民元の変動幅を拡大する計画であることを明らかにした。また、今後数年かけて人民元の自由化を着実に推し進めていく方針も示した。


2013/4/19  Saudi Aramco、Manifa 油田の操業開始

Saudi Aramcoは4月10日、世界で5番目に大きいManifa油田の操業を開始した。

170億ドルを投じたManifa油田は7月までにArabian heavy原油を日量50万バレル生産し、来年末までに日量90万バレルまで増やす。

原油はJubailにあるSATORP(フランスのTotal とのJVのSaudi Aramco Total Refining and Petrochemical )の製油所のほか、建設中の2つの製油所、サウジアラビアの南西端にあるJizanの製油所と、西海岸のYanbuで建設中のSinopecとのJVのYanbu Aramco Sinopec Refining Co.(YASREF)のワールドクラスの製油所で精製する。

SATORP   2009/6/22 Saudi Aramco、製油所建設を再開
Jizan Refinery   2012/11/19  Saudi Aramco、Jizan製油所建設契約を締結
YASREF   2011/3/25  Saudi Aramco と Sinopec、サウジで製油所建設

ーーー

サウジの主な油田は以下の通り。

  日量
万バレル
ガワール (Ghawar) 500
サファーニア (Safaniya) 150
クライス (Khurais) 120
マニファ (Manifa) 90
シャイバ (Shaybah) 東南部 75
カティフ (Qatif) 50
クルサニア (Khursaniyah) 50
ズルーフ (Zuluf) 45
アブカイク (Abqaiq) 40


2013/4/19 テキサスで肥料工場爆発、被害者多数 

テキサス州のWaco市の約30km北にある人口2600人余りの町WestにあるWest Fertilizer 社の肥料工場で、4月17日夜、原因不明の火災が起きたあと、2度にわたって大規模な爆発があった。

報道によると、同工場には肥料原料の無水アンモニアが25トン保管されていたとされる。
(付記 その後の調べで、硝安が245トン、無水アンモニアが50トンと判明)

無水アンモニアのタンクで火災が発生し、消防が消火中に、大爆発が起こった。

爆発の衝撃は、アメリカ地質調査所でマグニチュード 2.1を記録、現場から北におよそ100km以上離れたダラスでも揺れを感じた住民がいたという。

この爆発で133人が入居していた老人ホームを含む住宅など75棟が倒壊したり壁が吹き飛んだ。

村長は、35人から40人の消息が掴めず、亡くなったのではないかとしている。そのうち、6人が消防士、4人が救急医療士。
地元警察は、負傷者が160人以上にのぼるとしている。

付記
消防隊員ら12人が工場敷地内で、他に、高齢者施設の入居者を含む住民3人が死亡した。約200人が負傷した。
被害総額は1億ドルに及ぶ。

漏出や爆発の恐れがあることから、付近の住民約2800人の多くは避難し、周辺への車の進入も禁止された。

今のところ、原因は不明。硝安の爆発とか、ガス状態の無水アンモニアが放水で爆発したとかの説が述べられている。

警察はテロの可能性については、「現時点で事件性を示すものは何もないが、その可能性を排除しない」としている。

工場を運営する会社は、昨年、安全管理に問題があるとして、連邦政府から罰金を科されていた。

ーーー

Westの南のWaco市は1993年に“Waco siege”事件が起こった場所。

1993年2月にDavid Koreshに率いられたキリスト教系カルト教団Branch Davidianが武装して立て籠もった。

2月28日に武器の不法所持の容疑でアルコール・タバコ・火器局が強制捜査に乗り出し、武装した捜査員100名が突入を試みた 。
信者達は応戦し、捜査官4名、信者6名が死亡した。
その後、立てこもりは51日続いた。

4月19日、FBIは19台の戦車、装甲車、武装ヘリを前面に立てて突入を試みた。
建物の一角から出火、信者のほとんどが脱出せず、死亡した。
最終的には
Koreshを含む81名(子供25名を含む)が死亡した。生存者はわずか9名。
集団自殺と扱われているが、政府の弾圧ではないかとの疑問も呈されている。

たまたま、今回の爆発は集団自殺のあった4月19日の2日前にあたるため、関連付ける向きもある。


2013/4/20  週刊文春 「中国猛毒食品」キャンペーン 

週刊文春が「中国猛毒食品」キャンペーンをしている。

3月28日号 告発キャンペーン(1)

大気汚染だけじゃない
あなたが食べている「中国猛毒食品」

4月4日号 大反響! 告発キャンペーン第2弾 戦慄の現地ルポ

世界的スクープ 
悪臭漂うドブ川で野菜栽培、発がん性ホルモン剤注入で鶏肉肥大…
「中国猛毒食品」生産農家を直撃!
「死んだ豚を川に捨てたのは俺だ」
 犯人農民の告白

「中国人も食べない日本向け食品」リスト

4月11日号 禁断のレポート! タブーに挑む告発キャンペーン第3弾

スーパー、コンビニ、外食産業…
保存版 
「中国猛毒食品」はこうして見破れ!

冷凍食品 おそうざい 激安ファストフードは危険がいっぱい
安全検査済み を信じるな! 中国人のインチキ検査の実態

4月18日号 列島震撼「中国猛毒食品」 告発キャンペーン第4弾

鳥インフルH7N9は日本に上陸している!

▼決死の上海ルポ 死亡男性は社員食堂の調理師
▼汚水で日本向け手羽先を“洗浄”する鶏肉工場

権威が警告「感染者はすでに数万人」パンデミックの恐怖
鶏肉年間19万トン輸入加熱処理済みを信じるな!

4月25日号 最大のタブーを限界まで書く 告発キャンペーン第5弾

「中国産食材」を使う外食チェーン全32社 実名アンケート

付記 5月2日・9日 ゴールデンウィーク特大号

告発キャンペーン第6弾
あなたはそれでもチキンナゲットを食べますか?
マクドナルドの中国産鶏肉が危ない!
中国の契約養鶏場で“抗生物質漬け”の鶏が大量死

ーーー

これに対し、科学ライターの松永和紀さんが、Foodcom.net の「編集長の視点」で「“中国猛毒食品”のトリック」 として批評している。

「いかに、中国製が怖いか、危ないか、書いてあるのだが、中国製への不安を煽る時にこれまでたびたび用いられてきたトリックが使われている」とし、以下の4点を挙げている。

(1)猛毒とリスク—中国産食品の違反事例、リスクは高くない

食品衛生法に基づき設定されている基準、規格はなかなか厳しく、一品目、違反品を食べたところで健康影響はない、というレベルで設定されている。
中国の違反は、アフラトキシンのような強い発がん物質が検出されたり、抗生物質が基準を大幅に超えたりする食品もあることはあるが、多くは基準を少し超えた程度のもの。このような違反品に対して「猛毒食品」と表現するのは、読者に対するごまかし、“偽装”ではないか?

食品別の解説の記述に誤りが多い。

リスクの大きさは摂取量によって変わるのに、大量投与の動物実験の結果を引いて危ないと論じている項目も目立つ。

(2)違反数と違反率—中国産の違反率は低い

中国産は少量多品目であり、検査数はほかの国に比べて圧倒的に多い。そして、違反の割合は、全体平均に比べて大幅に少ない。

2011年度の中国の違反率は0.25%。
韓国が0.58%、台湾が0.68%、ベトナムは1.1%、タイが0.78%、欧州は0.48%、イタリアが0.77%、アメリカは0.80%である。

(3)品目の種類—品目によってリスクは大きく異なる

水産物は微生物が付きやすく管理が難しく違反が出やすい。しかもエビや貝類など加工度が低い状態で食べる割合が多いため、リストに並べると消費者へのインパクトはとても大きい。

国産の水産物を検査すればおそらく、微生物については相当数の汚染が見つかるはずだ。
私たちは、国産食品の汚染は、実は把握せずに食べている。

(4)検査数 —「1割しか検査していない」は、タメにする議論

「残りの9割は検疫をスルーして国内に入ってきます」と言っている。

検査というのは、そういう性質のものだ。違反の蓋然性の大きさに応じて対応を変えて輸入検疫は行われている。

(5)ピンとキリの混同—中国国内の“キリ”が日本に輸入される可能性

たしかに、劣悪な食品も相当数あるだろう。だが、それが日本に輸入されているか、というと、まったく別の問題である。今、中国で日本向け食品を製造したり加工したりしている日系企業や日中の合弁企業などの安全管理のレベルはすさまじく高い。

中国の食品の品質、安全性はピンからキリまで。その中のピンが、日本に輸入されている中国産のかなりの割合を占める。だからこそ、輸入検疫における中国産の違反率は低い。

但し、中国のレベルの低い食品を排除できない、キリの日本企業もあり、そういう観点から見た時に、実は最近、中国産食品の中に、気になるものがあり、もしかすると、これは将来、大きな綻びになるかもしれないという予兆のような違反が見られるとしている。

別途、「生のジビエ料理なんて紹介しちゃダメ! 週刊文春さん」として、週刊文春のエッセーに記載されている鹿料理(生の刺身、レバー、ハツ、脳みそ)を「これらの怖さ、はっきり言って、中国産の比ではない」としている。

「この原稿を書きながら、背筋がゾクゾクしてきた。それくらい、このエッセイは危ないんです! そんなこともわからない雑誌が特集する『中国猛毒食品』。信じますか?」

ーーー

同氏は、農林漁業生産者(一次産業)が加工(二次産業)、販売(三次産業)まで手がける「6次産業化」についても 、現状は、食品衛生やリスク管理に対して責任を持てるような状況ではないとして、懸念を表している。

無責任な「6次産業化」が、心配    

6次産業化への懸念に、多くの反響をいただきました


2013/4/22   TPP閣僚会合、日本の交渉参加を正式承認 

環太平洋経済連携協定(TPP) の交渉参加11か国は、4月20日の閣僚会合で、日本の参加を全会一致で承認した。

TPP閣僚会合の共同声明の要旨は以下の通り。

 ・各国が日本との2国間の協議を完了したことを確認。日本は他の参加国と同様、妥結に向けて迅速に交渉する
 ・日本は各国の国内手続きが完了したあとで交渉に参加できる
 ・日本の交渉参加でTPPは世界のGDPの40%近く、世界の貿易の約3分の1を占める
 ・日本の交渉参加はTPPの経済的な重要性を高め、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)への道筋を支える

日本は7月下旬にマレーシアで開催が検討されている次々回会合から交渉に合流する見通し。

米国には、新たな交渉参加国を認めるために米議会で90日間以上議論するという取り決め(90日間ルール)がある。
米通商代表部(USTR)は全参加国の同意を受け、議会に合意を通知する。

付記 オバマ政権は4月24日、米議会に対し日本の交渉参加を通告した。

日本の交渉参加に当たっては、ブルネイ、チリ、マレーシア、メキシコ、シンガポール、ベトナムの各国は早期に賛成したが、その他の国々は簡単には賛成せず、いろいろな条件が付いた。(後記)

ーーー

環太平洋戦略的経済連携協定 (Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement) の参加国は以下の12か国となる。

各国は以下の順で参加した。

2006/11 TPP(通称P4)発効 シンガポール
ニュージーランド
ブルネイ
チリ
(計4か国)
2010/3 (拡大)TPP
政府間交渉開始
米国
オーストラリア
ベル―
ベトナム
2010/10 追加参加 マレーシア
(計9か国)
2011/11 Broad outlineに合意  
2012/11 追加参加 カナダ
メキシコ
(計11か国)
2013/2 日米共同声明  
2013/4 追加参加支持 日本
(計12か国)

2011年11月に参加9か国は合意の概要(Broad outline)を発表した。これ以外の交渉内容は公表されていない。

1.包括的な市場アクセス(関税その他の非関税障壁を撤廃)
2.地域全域にまたがる協定(TPP参加国間の生産とサプライチェーンの発展を促進)
3.分野横断的な貿易課題(TPPに以下を取り込みAPEC等での作業を発展させる)
   ・規制制度間の整合性:参加国間の貿易を継ぎ目のない効率的なものとする
   ・競争力及びビジネス円滑化:地域の経済統合と雇用を促進する
   ・中小企業:中小企業による国際的な取引の促進と貿易協定利用を支援
   ・開発:TPPの効果的な履行支援等により、参加国の経済発展上の優先課題が前進
4.New trade challenges:革新的分野の製品・サービスの貿易・投資を促進し、競争的なビジネス環境を確保
5.Living agreement:将来生じる貿易課題や新規参加国によって生じる新しい課題に対応するため、協定を適切に更新

ーーー

カナダ、メキシコの参加に当たっては、次の秘密の覚書があったことが分かった。

1: 遅れて交渉した国は、既に交渉を始めている9ヵ国が合意した事項(条文)を、原則として受け入れ、再協議は認められない。
2: 交渉を打ち切る権利は、9ヶ国にあり、遅れて交渉入りした国には認められない。

日本政府は、日本の場合にこういう条件は付けられてないとしている。

安倍首相は2月22日のオバマ大統領との日米首脳会談で、自民党の参加条件である「聖域なき関税撤廃が前提でない」ことを確認し、参加に踏み切った。

日米共同声明

両政府は、日本が環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉に参加する場合には,全ての物品が交渉の対象とされること、及び、日本が他の交渉参加国とともに、2011年11月12日にTPP首脳によって表明された「TPPのアウトライン」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認する。

日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティが存在することを認識しつつ、両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する。

両政府は、TPP参加への日本のあり得べき関心についての二国間協議を継続する。これらの協議は進展を見せているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税措置に対処し、及びTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべき更なる作業が残されている。

米国との間では、以下の交渉が行われた。(4月12日 TPP政府対策本部発表)

  日本が他の交渉参加国とともに、「TPPの輪郭」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことを確認するともに、日米両国が経済成長促進、二国間貿易拡大、及び法の支配を更に強化するため、共に取り組んでいくこととなった。
     
  この目的のため、日米間でTPP交渉と並行して非関税措置に取り組むことを決定。
    対象分野:保険、透明性/貿易円滑化、投資、規格・基準、衛生植物検疫措置等
     
  また米国が長期にわたり懸念を継続して表明してきた自動車分野の貿易に関し、
  TPP交渉と並行して自動車貿易に関する交渉を行なうことを決定。
 対象事項:透明性、流通、基準、環境対応車/新技術搭載車、財政上のインセンティブ等
TPPの市場アクセス交渉を行なう中で、米国の自動車関税がTPP交渉における最も長い段階的な引き下げ期間によって撤廃され、かつ、最大限に後ろ倒しされること、及び、この扱いは米韓FTAにおける米国の自動車関税の取り扱いを実質的に上回るものとなることを確認。
     
  日本には一定の農産物、米国には一定の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティが両国にあることを認識しつつ、TPPにおけるルール作り及び市場アクセス交渉において緊密に共に取り組むことで一致

非関税措置については、米国側発表では以下の通りとなっている。

保険   かんぽ生命との公平な競争環境
透明性    
投資   外部取締役の役割強化などを含む日本企業へのM&Aの機会増
知的財産    
規格・基準    
政府調達    
競争政策    
急送便   日本郵便の手がけるEMS(国際スピード郵便)
SPS(植物検疫)   日本の食品添加物の審査手続きを早めて効率を上げるよう求める

両国の合意があれば、これら問題以外にも付け加えることができる


ニュージーランドとオーストラリアは「すべての品目を交渉のテーブルに載せる」「交渉を遅らせない」「高い水準の自由貿易を実現する野心がある」の3点を挙げ、「保証」を求めた。

カナダとの交渉は自動車関税の扱いで難航した。
日本は米国との事前協議で日本車の関税撤廃時期の先送りで合意したが、カナダが「カナダと米国の自動車産業は一体である」として、米国並みの条件を要求した。
最終的に、自動車関税をTPP交渉とは別に交渉するというカナダの提案をのんだ模様。

今後、米やカナダとの事前協議を踏まえ、日本に関税維持を求める国が増える懸念もある。

逆に、日本が「聖域」とする「コメ」「麦」「乳製品」「牛肉・豚肉」「砂糖やデンプンなど甘味資源作物」の5品目については何も決まっていない。

参考

 2010/11/10  TPP参加と農業問題
 2011/11/7    番外編 記事紹介 「TPP亡国論のウソ」:「農業の守り方を間違った」
 2011/11/16  環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉
 2013/3/18  TPPで関税撤廃した場合の経済効果についての政府統一試算

2013/4/23  丸紅、ロシア Rosneft と戦略的パートナーシップ契約締結 

丸紅は4月18日、ロシア最大の国営石油会社 Rosneft との間で、極東LNG事業及び石油ガス鉱区の共同探鉱・開発に関する戦略的パートナーシップ契約を締結したと発表した。

丸紅はこれまで、Rosneftとの間で原油・ナフサ等の引取り、石油化学プラント事業における機器納入、サハリン島における共同物流事業等を通じて長年に亘る提携関係を構築してきた。

とりわけサハリン1プロジェクトにおいては、丸紅は日本側パートナーであるサハリン石油ガス開発の主要株主として、Rosneftと緊密な協力関係にある。

今回締結した戦略的パートナーシップ契約は、ロシア極東地域におけるLNGプロジェクトの実現に向け、マーケティング、プラントの設計・建設、資機材の供給、ファイナンス、輸送、エンジニアリング等を共同で検討、推進するものであり、Rosneftが保有する石油ガス鉱区の共同探鉱・開発も視野に入れるもの。

Rosneftは現在、サハリン1の天然ガスのLNG基地建設を計画している。
サハリン島やハバロフスク地方を対象に建設場所の候補地を選考しているが、サハリン1計画の原油輸出基地であるDe-Kastriになると見られている。

サハリン1プロジェクト
事業主体 Exxon Neftegas(ExxonMobil 子会社、オペレーター) 30.0%
サハリン石油ガス開発(SODECO)
     日本政府   50.00 %
     伊藤忠グループ   18.12  
     石油資源開発   14.46  
     丸紅   11.68  
     国際石油開発帝石   5.74  
30.0%
ONGC Videsh (インド) 20.0%
Rosneft
   
           
Sakhalinmorneftegas-Shelf 11.5%
Rosneft-Astra 8.5%
開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ
推定可採
埋 蔵 量
@石油    約23億バレル
A天然ガス  約4,850億立方メートル
出荷 原油:不凍港 De-Kastriから海上輸送
天然ガス:検討中の基地でLNGに加工、海上輸送
 
参考 サハリン2プロジェクト
事業主体   当初 現在
Shell                     55%  27.5%-1株
Gazprom  ー  50.0%+1株
三井物産  25%   12.5%
三菱商事  20%   10.0%
開発鉱区 ピルトン-アストフスコエ、ルンスコエ
推定可採
埋蔵量
@原油 10億バレル
A天然ガス 4,080億立方メートル
出荷 原油:サハリン南端プリゴロドノエから海上輸送
天然ガス:プリゴロドノエでLNGに加工、海上輸送
        能力年間960万トン(480万トンx 2基)
 
 
天然ガス輸入はガスを氷点下162度以下に冷やしたLNGを特殊なタンカーで運ぶ方法に頼っている。

天然ガスは輸送距離が4000キロ以下ならパイプラインを敷設した方がコストが安く、それ以上ならLNG船で運んだ方が有利といわれる。
(「パイプライン費用」 対 「液化費用+輸送費」 の比較)

サハリン1の天然ガスについては、首都圏まではわずか約2000キロのためExxonMobilはパイプラインを選択し て事業調査を実施し、2001年6月に日本海岸か太平洋岸のいずれかの海底にパイプラインを引いて2008年に天然ガスの供給を開始すると発表した。

しかし、最大の需要家である東京電力が購入に動かず、この計画は白紙に戻った。

当時、経産省、電力業界は一体となって原発の建設を推進しており、天然ガスの優先度が低いと考えていた 。
「天然ガスの発電コストは原子力の1.2倍」といった試算が行われていた。

さらに、パイプラインができれば途中で簡単に支線を引けるため、新規参入企業が発電所をつくるのを電力会社が恐れたとの説もある。

ExxonMobilは2006年11月に中国のCNPCとサハリン1の天然ガスの供給でMOUを締結したが、まだ最終合意に達していない。

2013年2月にExxonMobilとRosneftはロシアの太平洋岸にサハリン1の天然ガスの液化プラント建設を検討することで合意した。

これまでLNGの輸出はGazprom独占となっていたが、プーチン大統領は本年2月に徐々に輸出を自由化する意向を表明している。

既報の通り、丸紅はLNG輸送ビジネスを拡大していく方針。


2013/4/24 出光興産、コスモ石油と丸紅、三井物産、QatarのLaffan Refinery 2 計画に資本参加 

出光興産、コスモ石油、丸紅、三井物産とQatar Petroleum及びTatolは4月21日、Laffan Refinery 2計画の合弁契約に調印した。

日本側4社は2006年にLaffan Refinery計画に参加しており、同国とのパートナーシップを強化する。

Laffan Refinery 計画は単一構造の天然ガス田としては埋蔵量世界最大級を誇るNorth Fieldのコンデンセートを精製し、付加価値を高めて出荷するという、Qatarの戦略に沿って計画されたもの。

North Fieldで採掘されたガスは現地で分離、前処理される。
ガスとコンデンセートは海底パイプで
Ras Laffanに送られ、LPGが生産され、コンデンセートはナフサ等に精製される。

2010/12/21 カタール、LNG増産工事完了で年産 7,700万トン体制

Laffan Refinery 2が完成するとコンデンセートの精製能力は合計で約30万バレルとなり、世界最大となる。

4社は生産した石油製品を直接販売はせず、出資分の配当金を受け取る。

計画の概要は以下の通り。

  Refinery 1
 (
LR1)
Refinery 2
 (
LR2)
出資 Qatar Petroleum 51% 84%
ExxonMobil 10% -
Total 10% 10%
出光興産 10% 2%
コスモ石油 10% 2%
丸紅 4.5% 1%
三井物産 4.5% 1%
能力 146千b/d 146千b/d
立地

Ras Laffan 工業都市

原料 North Gas Field のコンデンセート
製品 Naphtha 61千b/d  60千b/d
Jet fuel 52千b/d 53千b/d
Gasoil * 24千b/d 24千b/d
LPG 9千b/d 9千b/d
着工 2006年4月  
完工 2009年9月 2016年下期
総コスト 約8億米ドル 約15億米ドル

* 現在、DHT(ディーゼル水素化精製)設備を建設中で、2014年第2四半期に完成する予定。
   LR1とLR2の
gasoil を超低硫黄ディーゼルに加工できる。

 

出光興産は以下のとおり述べている。

1979年以来33年間にわたってカタール国と原油取引を続けている。

最近ではQatar Petroleumから研修生の受け入れを行い、また、Laffan Refinery 1には副所長を派遣し、人的面でも関係強化を図ってきた。
Laffan Refinery
2においては基本設計段階から2名の技術者を派遣し、建設段階も継続して派遣する。


2013/4/25 インフルエンザの予防接種料金でカルテルの疑い 

公正取引委員会は4月23日、インフルエンザ予防接種の料金でカルテルを結んでいた疑いで、埼玉県吉川市の吉川松伏医師会(約80人)を立ち入り検査した。

関係者によると、吉川松伏医師会は数年前から、インフルエンザ予防接種の料金について医師会の会合などで、13歳以上は「4,450円以上」、2回の接種が必要な13歳未満の子どもでは「初回3,700円以上」と決めて会員に通知していた。

インフルエンザの予防接種で、公取委による立ち入り検査が明らかになったのは2003年の三重県四日市医師会以来、2例目。公取委は、ほかにも最低価格を決めていた医師会がないか調べる。

四日市医師会は、1件につき 3,800円以上とするよう決定していた。
公取委は2004年6月21日、四日市医師会に勧告を行った。

厚生労働省によると、インフルエンザの予防接種は2011年〜12年にかけての冬に約5000万人が受けたと推定される。

予防注射は 自由診療となるため、65歳未満の人は費用が原則的に全額が自己負担となる。
ワクチンの料金は1本2,000円程度とされるが、接種料金は医療機関が自由に決められる。

65歳以上の場合は一部を公費負担としている。文京区では65歳以上の場合は2,200円となっている。

全国300の医師を対象としたQLifeの調査(2008年)では接種費用は以下の通りとなっている。

13歳未満は2回の接種が必要。
  子供の1回目の接種費用の平均値は、病院 2,702円、診療所 2,525円。
  子供の2回目の接種費用の平均値は、病院 2,379円、診療所 2,160円となっている。

ワクチンそのものの料金は1本2,000円程度とされるため、赤字となるケースが見られるが、ワクチン接種を「来院経験がない人に営業する絶好の機会」と考え、接種料金を安く設定するケース があるという。

また、ワクチン1本に2人分の量が入っているため、日を指定して、続けて接種する医院もあるとされる。


2013/4/26    中国、丸紅の米穀物大手Gavilon買収を条件付きで承認 、GlencoreとXstrataの合併も

中国商務部は4月22日、丸紅による米穀物大手Gavilonの買収を厳しい条件付きで承認した。公告22号で明らかにした。

米欧の規制当局は承認済みで、中国の審査が長引いていた。

ーーー

丸紅は2012年5月29日、北米で穀物・肥料・エネルギーのトレーディング事業を展開するGavilon Holdings の持分すべてを取得すると発表した。
買収価額は36億ドルだが借入金が20億ドル程度あり、合計で56億ドル程度となる。

丸紅はこれまでに北・南米に穀物供給ソースを確保し、アジアを中心に販売力を強化してきたが、Gavilonが全米に持つ140を超える穀物集荷関連拠点を取り込み巨大な穀物集荷流通網を確保し、更に、Gavilonのブラジル、豪州、ウクライナなどの拠点を丸紅の持つ資産と組み合わせ、活用する。
世界の穀物貿易における2012年度の取扱量は、丸紅 25百万トン、Gavilon 30百万トンで、合計55百万トンとなる。

肥料分野では、Gavilonは、肥料受け出しターミナル・倉庫・肥料混合設備を、米国内の戦略拠点として59 ヵ所保有している。

丸紅は1987年にBayerから30百万ドルで米国第2位の農業資材ディストリビューターのHelena Chemicalを買収し、リテール事業を行っているが、リテール事業とホールセール事業を有することになり、相乗効果を狙う。
Gavilonはメキシコ、南米、アフリカ等にも15 ヶ所の輸入ターミナル・倉庫・肥料混合設備を保有し、世界20 ヵ国以上において肥料販売を行っている。

Gavilonは原油・天然ガス等を中心にエネルギー事業も展開しており、北米において約8百万バレルの原油在庫施設、約100億立方フィートに及ぶ天然ガス在庫施設および約50万バレルの石油製品在庫施設などの物流ネットワークを活用し、トレーディング事業を行っている。

ーーー

中国が厳しい条件を付けた背景には食料確保への懸念があるとみられる。

商務部による分析では、中国は世界最大の大豆輸入国で2012年の輸入は全世界の貿易量の60%を占める。

2012年の中国の大豆輸入は5,838万トン、うち丸紅の輸入量は1,050万トンで第一位であった。Archer Daniels Midland(ADM)やCargill、Bungeなどの大手は丸紅よりもはるかに少なかった。

丸紅の輸出の99%が中国向けであり、Gavilonは北米の大豆の集荷、保管、輸送の巨大能力を持つため、両社の統合で大きな強みを持つことになるとしている。

このため、2社の合併は「中国の大豆輸入市場への支配力を強め、競争を排除あるいは抑制する」可能性があるとし、
(1)中国向け輸出・販売業務を分離独立すること
(2)例外を除き、丸紅はGavilonから大豆を買い付けてはならない
(3)市場情報を交換してはならない――といった義務を課した。


これにより丸紅は、買収の狙いであったGavilonの大規模な米国のネットワークを利用できず、独自に大豆を購入しなければならない。
買収の狙いは主に中国向け輸出のためと思われ、高額での買収の意義が失われることにもなる。
 

米大豆協会では、丸紅とGavilonの連合が中国のような大規模な市場で供給を管理したり、価格操作を行うことは不可能であり、中国が課した条件は驚きだとしている。

商務部は同日、GlencoreによるXstrata買収も承認したが、XstrataのペルーのLas Bambas銅鉱山の売却を条件にしている。(下記)

丸紅の大豆の場合もGlencoreの銅の場合も、中国でのシェアはEUの独禁当局が問題とする30〜35%を下回っており、非常に厳しい規制である。

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中国商務部は4月22日、スイスの商品取引大手Glencoreと鉱山大手Xstrataの合併を厳しい条件付きで承認した。公告20号で明らかにした。

EUは欧州の資産を売却して事業を縮小することを条件に2012年11月に承認、南アも本年1月に条件付きで承認しており、中国の審査が長引いていた。

Glencore Internationalは2012年2月7日、同国の資源大手Xstrataを260億ポンドで買収し、対等合併すると発表した。

しかし、Xstrataの株主のカタールの政府系ファンド Qatar Holdingなどが合併条件の見直しを求めた。

Glencoreは9月7日、Xstrataの買収案を引き上げた。
Glencoreはまた、株主による承認を得やすくするため、合意の仕組みを変更する可能性についても提案した。

両社は2012年11月にそれぞれ株主総会を開き、合併案を承認した 。

2012/11/26 Glencore とXstrataの合併

中国商務部は合併会社は世界最大の銅の生産者になるため、中国企業が値上げを呑まされるのを恐れた。
これに対し、Glencore側からXstrataのペルーのLas Bambas 銅鉱山を売却する案を提示した。

今回の承認に当たり、この鉱山の売却の手続きが細かく決められている。

このほか、Glencoreは中国のメタル不足の懸念を緩和するため、2020年12月31日まで中国企業に対し最低量の銅、亜鉛、鉛を供給する。

付記

Glencore は2014年4月、Las Bambas copper mineを中国のMinmetals(中国五鉱集団公司)、CITICグループ(中国中信集団有限公司)、Guoxing Invstment(中国国信集団)の3社が設立したコンソーシアムMMG Ltd. に売却した。
対価は58.5億ドル+2014年初めからの投資額とされたが、総額は70億ドルであったことが8月に明らかになった。


2013/4/27 再び「エネルギー供給構造高度化法」について 

経済産業省は2010年7月5日、通称「エネルギー供給構造高度化法」に基づき、告示を出した。

日本の重質油分解装置の装備率を2013年度までに10%から13%程度まで引き上げることを目標に基準を定め 、引き上げを義務化した。

重質油分解装置の装備率 改善率
10%未満の企業  45%以上
10%以上13%未満の企業  30%以上
13%以上の企業  15%以上
重質油分解装置の装備率=重質油分解装置の処理能力÷常圧蒸留装置(トッパー)の処理能力

重質油分解装置の新設には500億円以上かかるとされ、内需が縮小する中で新増設は非現実的で、実質的にはトッパー能力削減しかないとされた。

本ブログでは、以下の理由で「官製の設備カルテル」ではないかとして批判してきた。

どういう原料を使って、どういう製品をつくるかは、企業の判断であり、重質油分解能力の向上を各社に義務付けるのはおかしい。
「重質油分解能力の向上」を
「重質油分解装置の装備率」にすり替えており、単なる告示で、違法に設備処理を強制している。

各社ともこれに対応していることから、「官民の設備カルテル」とみられる。

2010/7/21 エネルギー供給構造高度化法は第二の産構法か?

その後、(表面的には)これを公取委が問題にすることもなく、各社は順次、設備削減計画を発表した。

METIによる各社別の削減義務量と現時点での削減計画は以下の通り。(万bbl/d)

    付記  分解能力は増強後が34.5千バレルになる。表を修正した。(2014/7)

  トッパー
処理能力
改善達成
のための
トッパー
能力
トッパー
能力削減
義務量
トッパー能力削減計画
和シェル石油グループ 51.5 44.8 6.7 12.0  京浜・扇町 2011/9停止
JXグループ 179.22 137.9 41.4 58.0  下記
出光興産 64.0 55.7 8.3 12.0  徳山製油所 2014/3停止
コスモ石油 63.5 43.8 19.7 14.0  坂出製油所 2013/7閉鎖
東燃ゼネラル石油 66.1 45.6 20.5 10.5  分解能力 +0.65で基準充足
太陽石油 12.0 10.4 1.6    
富士石油 19.2 14.8 4.4 5.2  第1常圧蒸留装置 2010/11廃棄
極東石油工業 17.5 15.2 2.3    
合計 473.02 368.2 104.9  111.7  

太陽石油の重質油分解装置の装備率は20.8%となる。
装備率を2013年度までに現状の10%から13%程度まで引き上げることが目標であり、これ以上を求めるのが妥当か?

JXグループ

  原油処理能力(千バレル)  
2008/12 2014/3 削減量
室蘭製油所 180 0 -180 出光興産と製品スワップ 
仙台製油所 145 145 -  
根岸製油所 340 270 -70 2010/10 第2トッパー廃止
大阪製油所 115 0 -115 大阪国際石油精製に移管
 
PetroChinaとのJV化
水島製油所 455 345 -110 2010/6 A工場第2ストッパー廃止
麻里布製油所 127 127 -  
大分製油所 160 136 -24 2010/5 第1トッパー廃止
鹿島石油 210 189 -21 2010/5 第1トッパー能力削減
日本海石油 60 0 -60 2009/3 原油処理停止
合計 1,792 1,212 -580  

2013年4月26日の日本経済新聞の「私の履歴書」で渡文明・JXホールディングス相談役は以下の通り述べている。

(石油連盟会長の)5年間の任期中、最も力を入れたのは「脱石油」政策の見直しだ。会長に就任した時から訴え続けた。石油ショックによって、石油依存度を下げようと石油代替エネルギー法ができた。その後、依存度がどんどん下がっても、相変わらず石油だけ減らせというのは合点がいかない。

石連会長を退任する時には、主張がようやく認められた。代エネ法を廃止して、石炭なども含めて化石燃料の有効利用などをはかる、エネルギー供給構造高度化法を制定する方向が固まったのだ。

この新法に私はもう一つの狙いを託した。過剰設備の削減だ。石油製品を生産するトッパー(常圧蒸留装置)に重質油分解装置をつけると無駄を減らせる。経済産業省は同法に基づき、この装備率を13%とする告示を出した。
分解装置を増設するには巨額の資金を要する。従って装備率の低い会社は、分解装置をつくるより遊んでいるトッパーを廃棄する方が得策だ。

この結果、過剰設備対策が一気に進んだ。

過剰設備削減が 石油連盟の狙いであったことが分かる。

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なお、同氏はイラクのNasiriyah油田についても書いている。

同氏らの努力で日本側に権利が与えられる寸前までいったが、交渉団がバグダッドに行きながら、安全上の理由で石油省に行かなかったことで権利を失ったとされる。


2013/4/29 ヤクルトとダノン、戦略提携契約を終了 

ヤクルト本社は4月26日、ダノン (Danone) との間の戦略提携契約を解除することを決めたと発表した。
今後の協業関係に関する覚書を締結する。

付記 ヤクルトは2018年2月14日の取締役会でダノンとの間の覚書を改定することを決議した。

・ダノンはヤクルト株の一部を売却する。現状 21.52%(第一位)→7.66%(第一位)
  (ダノンは1兆円超での有機食品メーカー買収で負債が拡大、物言う株主から、効果が上がらない関係の解消の圧力を受けた)   

・これまで協同して行ってきた合弁事業、プロバイオティクス振興活動及び研究活動を継続する

・(i)ヤクルトが現在本格的に進出していないヨーロッパ市場(まず、スペインをテスト市場とする)におけるダノンによるヤクルト商品の販売
 (ii)医食同源プログラムを基礎として食と健康の関連に対する理解を深めるためのシンポジュームその他のイベントの開催等、
 新しい協働事業の実現可能性を検討することに合意

・ヤクルトが今後ダノンから取締役候補の推薦を受け入れることを確認

改定覚書の効力は、上記株式売却完了時に発生

付記

ダノンは2020年10月6日、ヤクルト本社の保有株式の残り6.61%を売却すると発表した。

ヤクルトは7日朝、インドやベトナムなど既存の協業は継続していくことで合意していると発表した。

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ダノンは2000年までにヤクルト株5%弱を取得した。
当時はヤクルト経営陣のデリバティブ取引による巨額損失(1998年に1057億円の特別損失計上)が発覚し、株価が急落していた。

両社の間に具体的な提携関係に至らないまま、ダノンは2003年に一方的に出資比率を20%に引き上げた。

両社は2004年3月に以下の内容の戦略提携契約を締結した。

食品及び飲料の分野における両社の世界的なリーダーシップを強化し、両社の成長をさらに加速することを目的とする。

この目的を達成するために、両社は、当面は海外プロバイオティクス分野(ヨーグルトや乳酸菌飲料)を中心に、
ヤクルトの技術力及び独創的な販売網と、
ダノンの世界的なプレゼンス及びマーケティング力を活用して、
両社の相乗効果を十分に発揮できる様々な協力を行い、互恵的な提携関係を構築する。

相互に取締役を派遣。

ダノンはヤクルトの独自の文化、ビジネスモデル並びに独立性を尊重し、実質的な支配権を追求しないと確約。
ダノンは契約後5年間は現在の持ち株比率を引き上げず、その後の5年間に付いても、仮に買い増しを行った場合でも、実質的に過半数となるような水準は超えない。

(2004年当時、ヤクルトの株主総会で議決権が行使される比率は全体の7割程度で、35%超の株式を保有することは、「実質的に」議決権の過半数を押さえることになる。)

戦略提携契約に基づき、2005年にインドに50/50JVのYakult Danone Indiaを設立、2006年6月にはベトナムにヤクルト80%/ダノン20%出資でYakult Vietnamを設立した。

2007年5月には買い増しをしない期限を2012年5月まで延長する「休戦協定」を結んだ。

2012年に入り、ダノンは株を35%まで買い増す考えを打診したが、3分の1以上を握れば経営の重要議案を否決できるため、ヤクルトは拒否し、比率を28%にとどめる妥協案も受け入れなかったとされる。

両社はその後も契約改定に関する協議を重ねてきたが、合意に至ることができず、今回、ヤクルトはダノンに対して戦略提携契約の解除を通知した。

ヤクルト会長は会見で「企業文化やマーケティング手法などの違いを縮めることができなかった」と述べた。

これにより、ダノンが現在の持株比率を引き上げないという同契約上の義務も失効した。
今後、ダノンがTOBなどに踏み切るかどうかが注目される。

なお、両社ともに友好的な関係を維持することを希望しており、今後の協業関係に関する了解事項を確認するために覚書を締結した。

・両社は、戦略提携契約のもとで協同してきた既存の合弁事業、プロバイオティクス振興活動および研究活動を継続する。
・今後も両社にとってメリットのある新たな協業の可能性があれば、これに取り組む。
・ヤクルトは今後もダノンから3名の取締役候補の推薦を受け入れる。

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ダノンは世界で初めてヨーグルトの工業化に成功した会社である。

ヨーグルトのバクテリア機能はパスツール研究所のメチニコフ所長が解明した。

メチニコフ(1845-1916)はロシア人で、
ヒトデの研究から、細胞性免疫の基礎となる「捕喰細胞」の研究で1908年にノーベル賞を受賞したが、「動脈が硬化するのは腸内の細菌が自家中毒の原因となる毒を作るためである」という「メチニコフの仮説」を考えた。

ブルガリアではブルガリア菌と呼ぶ細菌で作ったヨーグルトを毎日飲んでおり、長生きが多いことを知り、このヨーグルトが大腸内の細菌の繁殖を防ぎ、自家中毒を防ぐと信じた。毎日大量に飲用するとともに、自らヨーグルト製造会社を作って、製造と販売を行った。

1919年、スペインのIsaac Carassoが、パスツール研究所から乳酸菌の株を取り寄せ研究し、世界で初めてヨーグルトの工業化に成功した。
息子のDaniel の名前をもじり(DAN-ONE)、「DANONE」を商標にし、医師を通じて薬局で販売した。

このDaniel が1929年にフランスでダノン社を創設した

ダノンは、地盤とする欧州の成長が少子高齢化もあって先細りで、この15年余りで欧州の売上高比率は約80%から40%未満へと半減しており、全体の半分以上を新興国とアジア・オセアニアが占める。

このため、ダノンにとっては、ヨーグルト・乳製品部門と新興国市場での販売網を強化するため、アジア展開で成功しているヤクルトと組む効果は非常に大きい。

一方、ヤクルトのアジア・オセアニア事業は増収増益で順調に拡大しており、海外展開において提携のメリットは少ない。

ーーー

ダノンは中国で宗慶後氏のワハハグループとのJV「杭州娃哈哈集団」を設立し、「娃哈哈(ワハハ)」ブランドの炭酸飲料水を売り出したが、ワハハ側との争いの後、撤退している。

2009/10/5 ダノン、ワハハに中国JVの持株売却


2013/4/30  信越化学の2013年3月期決算 好調 

シンテックが好調で、半導体シリコンの減益を補い、増収増益となった。

但し、過去最高益の2008年3月期(シリコンの利益が最高であった)からは大きく下回っている。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益

 配当

中間 期末
2008/3 13,764 2,871 3,000 1,836 40 50
2012/3 10,477 1,496 1,652 1,006 50 50
2013/3 10,254 1,570 1,702 1,057 50 50
前年比 -223 74 50 51 - -
(2008/3比) (-3,510) (-1,301) (-1,298) (-779)    
2014/3予

未定

営業損益推移

シンテックが好調で、塩ビ・化成品がシリコンとシリコーンの減益分をカバーした。

  10/3 11/3 12/3 13/3 増減
塩ビ・化成品 196 197 237 456 219
シリコーン 249 341 337 286 -50
機能性化学品 139 129 147 145 -2
半導体シリコン 226 389 343 219 -124
電子・機能材料 307 361 382 409 27
その他 68 73 50 56 6
全社 -13 3 1 -0 -1
合計 1,172 1,492 1,496 1,570 74

 

Shintechの経常損益 (ドル建)は、3年間は2億ドル前後で停滞していたが、2012年は551百万ドルで前年比で2.2倍となり、過去最高の2006年の375百万ドルと比べても1.47倍となった。

米国内の需要回復は低水準に止まったが、中南米をはじめとした世界中の顧客への拡販により、高水準の出荷を維持した。
また、VCMの第2期 80万トンの増設が2011年に完成し、本年はフルにその効果が出たのが大きい。

立地 PVC VCM カ性ソーダ  
Texas州 Freeport  1,450   −   −  
Louisiana州 Addis   590   −   −  
PlaquemineT   600   800   530  
PlaquemineU   800  530  2011年完成
Addis  (270)   −   − Bordenから購入、廃棄
合計  2,640  1,600   1,060  

米国の他のPVCメーカーも損益が回復している。

Georgia Gulf は2013年1月にPPG IndustriesのCommodity Chemical Divisionと合併し、Axiall Corp.となった。

半導体シリコンは厳しい状況が続いている。
既報の通り、多結晶シリコンは半導体向け・太陽電池向けともに供給過剰に伴い市況は急激に悪化、当面、市況低迷は続くと予測される。

信越半導体グループの経常損益は今回は発表されていないが、2010年3月期以降、大幅減益となっており、2012年9月中間では更に悪化、前年同期比42%減となった。

今回、信越化学は特別損失に6,137百万円の投資有価証券売却損を計上した。

信越半導体は金属シリコンメーカーで世界大手5社の1社であるHemlock Semiconductorに24.5%を出資していたが、今回、その一部を売却し、売却損を計上した。売却により出資比率が2割を下回ったため、持分法の適用対象外となる。

Hemlock Semiconductorは1979年にDow Corningの100%子会社として設立された。
1984年に信越半導体と三菱マテリアルが加わり、3社のJVとなった。
  Dow Corning 63.25%、信越半導体 24.5%、三菱マテリアル 12.25%

今回の売却先は明らかになっていないが、Dow Corningと思われる。

従来、Hemlockは信越化学の持分法利益に貢献していたが、最近はシリコンの供給過剰に悩み、本年1月には400人のレイオフを発表している。


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