2006-5-1

ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は  2015 http://blog.knak.jp
 



2015/4/1    パナソニックが米国自動車部品カルテルでの集団訴訟で和解

米国の消費者らが複数の自動車部品メーカーを相手取って起こしていた集団訴訟で、被告のなかの1社であるパナソニックがこのほど和解に基本合意した。
原告と被告が3月19日にミシガン州の連邦裁判所に報告した。

パナソニックの部品を使った自動車の購入者等が集団訴訟をしたもので、パナソニックと他の部品メーカー(東海理化、デンソー、市光工業を含む)が部品価格でカルテルを結んでいたとしている。

対象となった部品は転舵角センサー、スイッチ、HIDバラストの3つで、それぞれ区分して訴訟が行われた。

パナソニックは数ヶ月前から和解の交渉を始め、本年2月に大筋で合意した。

パナソニックは解決金として、転舵角センサーで約630万ドル、スイッチで約530万ドル、HIDバラストで約550万ドル、合計1710万ドルを支払う。 z

それに加え、パナソニックはそれぞれの集団訴訟の原告に対し、資料、証言、インタビュー、その他の情報を提供する。
原告側はこれら資料を他の被告企業との訴訟で使用できる。

原告側は、裁判手続き無しでこれらの資料を得られるのは非常に役立つ、パナソニックの協力は原告側の立場を非常に強化すると歓迎している。
他の日本企業にとっては大きな痛手となる。

付記

日立オートモティブシステムは3月26日にミシガン州の消費者らと4674万ドルの支払いで和解した。
オルタネーターやスターターなどの部品に関するもの。

ーーー

米国では自動車部品カルテルで、現在までに32社が司法省と和解し、総額24億38百万ドルの罰金を払っている。
うち4社が外国法人で、残りは全て日本企業である。

また、責任者が合計50名起訴され、うち29名が禁固刑・罰金刑を受けている。

このうち、パナソニックは2013年7月に司法省との間で罰金4580万ドルの支払いで和解、責任者1名が2013年9月に起訴されている。

最新リスト  2014/11/19 米国、自動車部品カルテルの摘発続く

独禁法による訴訟とは別に、自動車部品の需要家や自動車ディーラー、消費者等による集団訴訟が相次いだ。

2013年2月に日本精機が初めて和解に応じ、600万ドルを支払った。

矢崎総業と米国のTRW Automotive Holdingsの独子会社は2014年6月4日、和解案に合意した。
2014年9月の矢崎の発表によると、
和解金は自動車の購入者に7600万ドル、販売店に2400万ドルの合計1億ドルとなっている。

和解の実績は以下の通り。

    司法取引での罰金 集団訴訟
日本精機 自動車用計器 2012/8 100百万ドル 2013/12 和解額 600万ドル
Lear Corp. wire harnesses     −−−− 2014/5   和解額 875万ドル
Autoliv Inc seatbelts, airbags, steering wheels 2012/6 1450万ドル 2014/6/3   和解額    6500万ドル
矢崎総業 wire harnesses 2012/1 470百万ドル
社員6名が禁固刑と罰金
2014/6/4 和解額 1億ドル
TRW Deutschland seatbelts, airbags, steering wheels 2012/7 510万ドル 2014/6/4 和解額 非公表
ティラド ラジエータ等 2013/9 1375万ドル 2014/10  和解額  975万ドル

2014/6/19  矢崎総業、ワイヤーハーネスの価格カルテル問題で米国の集団訴訟で和解 

 


2015/4/1  改正独禁法施行 

2013年12月に成立・公布された独占禁止法改正法が4月 1日から施行される。

改正法の主なポイントは以下のとおり。

(1)1947年の独占禁止法制定以来、60年以上にわたり続いてきた公正取引委員会の審判制度が廃止される。

(2)公取委が行う排除措置命令等に対する抗告訴訟については、専門性の確保等を図る観点から、東京地方裁判所の専属管轄として、第一審の審理が行われる。
  東京地方裁判所では、3人又は5人の裁判官の合議体により審理及び裁判を行うこととする。

(3)適正手続の確保の観点から、排除措置命令等に係る意見聴取手続について、予定される排除措置命令の内容等の説明、証拠の閲覧・謄写に係る規定等の整備を行う。

詳細は、http://www.jftc.go.jp/houdou/teirei/h27/1_3/kaikenkiroku150325.files/150325shiryou_2.pdf

ーーー

2006年1月4日施行の改正独禁法の附則で、「政府は、この法律の施行後2年以内に、新法の施行の状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、課徴金に係る制度の在り方、違反行為を排除するために必要な措置を命ずるための手続の在り方、審判手続の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」とされた。

公取委は同年10月16日に「独占禁止法の改正等の基本的考え方」を発表したが、審判制度については変更なしとした。

経団連は同年11月20日、「独占禁止法の抜本改正に向けた提言」を発表、そのなかで公取委の審判の廃止を主張した。

2007/11/26  経団連の独禁法改正に向けた提言

独禁法改正案が2009年6月3日に成立、同月10日に公布された。

審判制度については、「2009年度中に見直す」との付則を設け、先送りすることとなったが、衆参両院の付帯決議で審判制度を廃止する方向性を明示した。

2009/6/5   独禁法改正案成立

政府は2009年129日、公取委の審判制度を廃止し、東京地方裁判所に機能を移管すると発表した。

公取委は「独禁法違反の判断には経済と法律の専門的な知見が必要」として廃止に反対したため、東京地裁は専門性の高い裁判官を養成する。
(審判官7名のうち、2名は裁判官が公取委に出向している。)

2009/12/12 公取委の審判制度廃止

改正法案は2010年3月の国会に提出されたが、その後長期間継続審議となり、2012年11月に審議未了により一旦廃案になった。

政府は2013年5月24日に同内容で閣議決定し、同年12月7日未明に参院本会議で可決、成立した。
2010年3月に改正案が提出されて以来、3年9カ月かかって成立した。

2013/12/7 速報 改正独禁法が成立

公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとするとなっており、2015年1月の閣議で4月1日施行が決定、公布された。

財界の長年の要望がようやく実現することとなる。


2015/4/2 AIIB創設メンバー 参加申請 締め切り 

中国が主導して設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバーとなるための申請が3月31日、締め切りを迎えた。

博鰲アジアフォーラム(Boao Forum for Asia) の2015年度年次総会で習近平国家主席が3月28日に基調講演を行い、AIIBは「開放的なものであり、世界各国からの参加を歓迎する」と述べ、最高指導者みずから各国の参加を呼びかけた。

最終的に申請したのは53カ国・地域に達した。(一部の国は報道によるもので、創設メンバーの総数は4月15日頃に確定する見通し。

付記 その後の参加 
     UAE、イラン、マルタ

このうち、台湾政府は3月31日に中国当局に正式申請したが、参加の際の台湾の名称や地位について中国側との協議は完了していない。
中国の国務院台湾事務弁公室は4月1日、「ふさわしい名称でのAIIB参加を歓迎する」との談話を発表した。
台湾はアジア開発銀行(ADB)には「中国台北」の名称で「地域」として加盟している。

報道によると、北朝鮮が参加を表明したが、北朝鮮の金融・経済体制が国際機構に参加できる水準に達していないとして中国に拒否された。

オバマ大統領の特別代表として中国を訪問したルー財務長官は3月30日、李克強総理と会談、ルー長官は、「中国がアジアのインフラ建設の分野でより大きな役割を発揮することを歓迎する。二国間や多国間の分野で関連の協力を強化していきたい」と述べた。

麻生財務相は3月31日、加盟国を代表する理事会の体制などが不透明なため、現時点での参加は見送る考えを示した。
日本政府はこれまでに中国側に対して、AIIBが発足した場合、貸し付けの際の審査や担保の基準をどのようにするかなど考え方を問い合わせているものの、現時点で明確な返答が得られていないという。

主要グループでの参加、不参加国は下記の通り。アジアでは日本のみが不参加となっている。

  参加 不参加
G7 4 英、仏、独、伊 3 日、米、加
G20 13 中国、ロシア、英、仏、独、伊、
インド、ブラジル、豪、韓、インドネシア、
サウジ、トルコ
7 日、米、加、EU、メキシコ、
南ア、アルゼンチン
BRICS 4 ブラジル、ロシア、インド、中国 1 南ア
ASEAN 10 全メンバー 0  

参加申請国は下記の通り。

    アジア 中央アジア 中近東 欧州 オセアニア その他
1 10/24
 
(BRICS)
中国
インド
カザフスタン、
ウズベキスタン
クウェート、
オマーン、
カタール
     
モンゴル
スリランカ、パキスタン、
バングラデシュ、
ネパール
(ASEAN)
ミャンマー、ラオス、
タイ、ベトナム、
カンボジャ、マレーシア、
シンガポール、
フィリピン、ブルネイ
22 11/25 インドネシア          
25 11/28   タジキスタン サウジ   NZ  
26 12/31 モルディブ          
27 2/7     ヨルダン      
28 3/12       (G7)英国    
31 3/17       フランス、
ドイツ、
イタリー
   
32 3/18       ルクセンブルグ    
33 3/20       スイス    
34 3/23 香港特別区          
35 3/24       オーストリア    
37 3/26 韓国   トルコ      
43 3/28       オランダ
デンマーク
スペイン
  (BRICS)
ロシア
ブラジル
グルジア
44 3/29         豪州  
46 3/30       フィンランド   エジプト
53 3/31 〔台湾〕 キルギス イスラエル スウェーデン
ノルウェー
ポルトガル
アイスランド
   
53カ国・地域 21カ国・地域 4カ国 7カ国 15カ国 2カ国 4カ国
中国拒否 北朝鮮          

 


 

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2015/4/3   新潟県、水俣病 3人の異議認める

新潟県の泉田知事は4月2日、水俣病特別措置法(特措法)に基づく救済策で一時金の支給の対象と認められず、新潟県に異議を申し立てた92人のうち、3人を救済対象とし、2人を棄却したと発表した。残る87人も審査を進める。

3人については水俣病の典型的な症状である手足のしびれが確認できたが、2人には症状がみられなかった。

3人のうちの70代女性2人は水俣病の被害者団体「阿賀野患者会」のメンバーで、支援する弁護士などが3月30日に2人の異議が認められたことを明らかにしていた。

特措法を巡って行政が異議を認めたのは初めて。

県は数日以内に医療費などが無料になる被害者手帳を支給する方針だが、環境省は下記の通り、異議申し立て自体を認めておらず、原因企業の昭和電工からの一時金が支給されるかどうかは不透明。

付記

昭和電工は、新潟県が独自に認めた被害者3人に対し、他の認定被害者と同額の一時金210万円を支払うことを決めた。
5月22日に昭電側から被害者の代理人に連絡があったという。昭電側は「県が認めた人は随時、支払い手続きを進めたい」と話している。

ーーー

厚労省は2014年8月29日、水俣病被害者救済特別措置法に基づく救済措置に係る判定結果を発表した。

2010年5月1日から2012年7月31日まで救済に係る申請を受け付けた。
各県における判定結果は以下の通り。(新潟県は暫定値)
 
  一時金対象 療養費対象 該当せず 合計 従来の保健手帳(廃止)から被害者手帳への切替
水俣病
(チッソ)
熊本 19,306 3,510 5,144 27,960 14,797
鹿児島 11,127 2,418 4,428 17,973 1,998
新潟水俣病
(昭和電工)
新潟
(暫定)
1,811 85 77 1,973 29
合計
67.3%

 32,244

12.6%

 6,013

20.1%

9,649

100%

47,906

 

16,824

判定基準 手足の先の感覚(触覚、痛覚)が鈍いなどの症状 左には当たらないが、しびれや震え等の一定の症状    

判定無しで切替

救済処置 一時金210万円 療養費
(医療費自己負担分など)
   

医療費自己負担分支給

療養費
(医療費自己負担分など)
療養手当
(月12,900〜17,700円)

救済法は原則、1969年11月30日までに生まれた人を救済対象に指定している。
熊本県では、その後に生まれた466人からも申請があり、へその緒でメチル水銀摂取が確認できるなどした4人が救済対象に認められた。

2014/9/1 水俣病被害者救済特別措置法の判定結果 (経緯を含め、記載)

ーーー

水俣病被害者の救済措置に申請し、対象者に当たらないとの関係県の判定を受けた患者の一部が、行政不服審査法第6条に基づく異議申立書を出した。

しかし、環境省は、救済措置の判定は行政処分ではなく、行政不服審査法に基づく異議申立ての対象には当たらないと法律の解釈をしている。

環境省 「救済措置に関するQ&A」では以下の通り説明している。
https://www.env.go.jp/chemi/minamata/shinsei/pdf/qa_kankyosho.pdf

行政機関のすべての行為が行政不服審査法上の「処分」に当たるわけではない。
法律により、行政機関が、相手方に対して優越的に、相手方の権利義務を形成したり、その範囲を確定したりするような効力のある一方的な行為は、行政処分に当たるとされている。

特措法は、水俣病被害者を救済し、紛争を終結させるために、救済の基本的な考え方や当事者の役割を定めたに過ぎない。

関係県が行っている判定は、国家賠償訴訟での和解協議で合意された救済対象者の基準に当てはまるかを確認する作業であり、行政機関が処分者として基準を定め、優越的かつ一方的に判定する行政とは異なる。

したがって、救済措置の判定は、行政不服審査法上の「処分」の概念には当てはまらず、異議申立ての対象にならないと考えている。

これに基づき、熊本、鹿児島両県も申し立てを却下している。

しかし、新潟県は異議申し立てを認め、審理することとした。

泉田裕彦知事は2013年3月15日、以下の発表をおこなった。

療養費及び療養手当は、県の判定結果により水俣病被害者特措法第5条第7項に基づいて関係県が支給することとなっています。
すなわち、県の判定結果が、申請者の法的地位に変動をもたらすことになります。

従って、同法に基づき定められた救済措置の方針により判定を行うことに処分性が認められますので、異議申立てを行政不服審査法に基づき受理したものです。

なお、人間には誤りというものがあり得るものです。司法であっても裁判をより慎重に行い国民の権利を守るため、三審制をとっています。

本件においても、判定結果に違和感を感じている人がいる以上、異議申立てを受けて真実を追求していくことが必要と考えており、この度、異議申立ての審理を行うものであります。『患者の結果理解に必要』なため、異議申立ての審理を行うものではありません。

今回の決定は、この異議申し立てに基づく審理の結果である。
 

環境省は、救済対象者の基準に当てはまるかを確認する作業に過ぎないとするが、判定基準は「手足の先の感覚(触覚、痛覚)が鈍いなどの症状」や「左には当たらないが、しびれや震え等の一定の症状」など、単純にYes か No かを決めるようなものではなく、県による「範囲を確定したりするような効力のある一方的な行為」であり、新潟県の判断の方が妥当と思われる。



2015/4/4   希少疾病治療薬メーカーの買収 続く    

希少疾病治療薬メーカーの買収が続いている。

イスラエルのTeva Pharmaceutical Industriesは3月30日、米国の Auspex Pharmaceuticals, Inc.  を総額32億ドルで買収する。
負債の肩代わり分を含めると総額は35億ドルとなる。
買収価格は
最新の株価終値に42%のプレミアムを上乗せしたもの。

中枢神経系の障害治療薬で市場シェアを拡大する狙い。

米カリフォルニア州に本社を置くAuspexはまだ市販薬品はないが、ハンチントン病や遅発性ジスキネジア、トゥレット症候群に関連した不随意運動を治療する医薬品 SD-809 の開発を進めている。

昨年には、SD-809の第3相臨床試験でハンチントン病患者に対し有意な効果が認められ、本年半ばまでにFDAへ申請し、2016年には承認を得て米国内で発売できると見込んでいる。

このほか、特発性肺線維症治療用のSD-560を開発中。 

ーーー

米国のHorizon Pharma plcは3月30日、米国のHyperion Therapeutics, Inc.を約11億ドルで買収することで合意した。
買収価格は、過去60日の平均株価に35%のプレミアムを上乗せしたものとなる。

Horizonは 買収により尿素サイクル異常症の2つの治療薬RAVICTI とBUPHENYLを取得する。
尿素サイクル異常症は
尿素合成経路の代謝系に先天的な異常があり、高アンモニア血症の症状などで発症するもので、米国の患者数は約2100人。
この2つの治療薬の2014年の売上高はそれぞれ3080万ドルと1億1360万ドルであった。

Horizon PharmaはUnmet Medical Needs に向けての医薬品の開発、製造、販売を行うスペシャルティ・バイオ医薬企業で、 関節炎、炎症、奇病に使用される医薬品5品目を販売しており、今回の買収で7品目に増える。

同社は本年2月にアイルランドのダブリンにGlobal Corporate Headquarters を開所した。
 


2015/4/6     米医療保険大手、米薬剤給付管理事業大手を買収  

米医療保険大手UnitedHealth Groupは3月30日、薬剤給付管理(Pharmacy Benefit Management :PBM)事業大手のCatamaran Corporation(旧称 SXC Health Solutions、当初名はSystems Xellence) を約128億ドルで買収すると発表した。

傘下のPBM企業OptumRxと統合 し、医薬品の高額化が進む中、買収による規模拡大で製薬会社に対する交渉力を高め、コスト軽減につなげる。

Catamaranは年間4億件以上、OptumRxは約6億件の処方箋を扱っており、統合PBMは年間10億件以上の処方箋を扱うこととなる。

ーーー

薬剤給付管理(PBM)事業は日本にはない業種である。

米国には日本のような国民健康保険制度はなく、自由診療が基本である。

公的医療保険としては、65歳以上の高齢者と65歳未満の身体障害者・末期腎臓疾患患者を対象とするMedicare(2012年で4,890万人が対象)と、低所得者をカバーするMedicaid(5,090万人が対象)がある が、中心となっているのは民間保険会社が提供する医療保険である。

しかし、高額な保険料に加え、慢性病患者等は更新を拒否されたりする弊害があり、医療保険に入っていない人も2012年で人口比で15.4%の4780万人も存在していた。

2010年3月にObama Care法が成立、低所得者に補助を行うことにより、国民の健康保険加入率を抜本的に向上させる内容であるが、共和党が廃止を求めているほか、違憲判決も出され、難航している。Obama Care法でも薬価基準制度は導入されておらず、薬価は製薬会社が自由に設定できる。

Obama大統領も、薬価基準を採用しないことで、強力な医薬業界がObama Care 法に反対することを回避した。
大統領自身が医薬業界から多額の選挙資金の献金を受けている。

一般的な医療保険を扱う保険会社はHMO(Health Maintenance Organizations) と呼ばれる。

日本のように保険適用薬剤の指定や薬価基準がないため、非常に高額の治療費になる可能性があり、野放しでは医療保険は成り立たない。

このため、HMO保険会社は下記のような対応策を取っている。

・高品質かつ安価な薬を選択し、推奨医薬品リスト(Formulary)を設定し、 掲載医薬品のみを保険対象とする。
  リストにない医薬品は自己負担となる。

・製薬会社とのリベート、ディスカウント交渉
  製薬会社も
Formularyに載せてもらわないと売れないため、積極的に対応する。

・処方箋を通じての薬歴情報の蓄積

・薬局に薬剤情報の提供

HMO保険会社と提携して、これらの作業を行うのがPBMで、薬剤請求とコスト管理を行い、Pharmacy Benefit のManagementを行う。

また、米国では医薬分業が徹底しているが、近くに薬局がないなどで、通信販売が多い。これもPBMの重要な事業の一つである。

日本では一般用医薬品のネット販売がようやく認められたが、処方箋医薬品は薬剤師による対面販売しか認められていない。米国ではそのような規制はない。

 

1970年代に医薬品費が高騰したのを受け、PBMがスタートした。

1980年代にPBM会社は保険薬局チェーンのマネジメントを行うようになった。
  現在、PBM会社は契約薬局との間にオンラインネットワークでつなぎ、処方箋情報を集め、代金の支払いを行っている。

1990年代に入り、推奨医薬品リスト(Formulary)設定が始まり、通信販売も広がった。
 薬剤費引き下げのため Formularyにジェネリック医薬品の搭載が増えたことが、ジェネリック医薬品の普及に繋がった。

2000年代には、慢性疾患患者の疾病管理プログラムも実施されるようになった。


現在、150社程度のPBMがあるとされるが、上位7社が70%以上を占める。

2012年の処方箋取り扱い件数での順位は下記の通りで、ここではOptumRx は合併後のExpressとCVCに次ぐ3位、Catamaranは7位となっている。

 ソース:http://www.drugchannels.net/2012/04/esrx-mhs-analysis-of-ftc-decision.html


 


2015/4/7    国際がん研究機関、 米モンサントの除草剤に発癌性の恐れを発表   
 

世界保健機関(WHO)の専門組織、国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer :IARC)は3月20日、米モンサントが開発した除草剤 Glyphosate に発がん性の恐れがあるとする報告書を公表した。

人での発がん性を示す証拠は限られているものの、動物実験や薬理作用などの研究結果に基づいて判断したとし、5段階分類で上から2番目にリスクが高く 「人に対する発がん性が恐らくある」ことを示す「2A」に位置付けた。
   http://www.iarc.fr/en/media-centre/iarcnews/pdf/MonographVolume112.pdf

IARCは5つの有機リン農薬の発がん性を評価してきたが、評価の概要をLancet Oncologyに発表した。
   http://www.thelancet.com/pdfs/journals/lanonc/PIIS1470-2045%2815%2970134-8.pdf

ーーー

付記

「科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体」Foodcom.net の「編集長の視点」で松永和紀さんがこれについて詳しく説明している。
   http://www.foocom.net/column/editor/12412/

ーーー

Glyphosateは「Roundup」の商品名で知られる除草剤の主成分で、日本を含む多くの国で使われている。

日本ではラウンドアップの商標権、生産・販売権は2002年に日本モンサントから日産化学に譲渡されている。(現在、輸入販売)

各製品の評価は以下の通り。

    人体での証拠 動物での証拠 発ガンメカニズム 分類
テトラクロルビンホス 殺虫剤 不十分 十分 2B possibly carcinogenic
to humans
パラチオン 殺虫剤
マラソン 殺虫剤 限定的:
非ホジキンリンパ腫
前立腺
同上 遺伝毒性、酸化ストレス、炎症、受容体媒介効果、細胞増殖orアポトーシス 2A probably carcinogenic
to humans
ダイアジノン 殺虫剤 限定的:
非ホジキンリンパ腫、
白血病、肺がん
限定 遺伝毒性、酸化ストレス
グリホサート 除草剤 限定的:
非ホジキンリンパ腫
十分 遺伝毒性、酸化ストレス


日本モンサントは同日、下記の発表を行った。

私たちはEUおよび米国のグリホサートタスクフォースのメンバーとともに、下記の理由から今回のIARCの分類には同意できません。

新たな試験研究やデータが用いられていないこと:IARCで検討された研究結果は、そのいずれもが過去に規制当局機関によって評価検討済みのもので、直近では欧州連合(EU)を代表してドイツ政府が実施しています。

  • 評価にとって重要な科学的データが評価から除外されていること
    IARCはグリホサートが人の健康にリスクを与えないという結論を支持する多くの科学的研究、特に遺伝毒性研究を受け取りながらも、これを意図的に無視しました。
     
  • 結論が科学的データに裏付けられたものでないこと
    IARCの分類は、世界中の国々で公衆の安全性に責任を持つ何百人もの科学者が加わって実施した、数多くの、複数年にわたる、包括的な評価と整合性がありません。
     
  • IARCによる分類が、グリホサートとがんの発症の増加との間の関連を確立するものではないこと
    IARCの分類については、広い視野で考えることが重要です。IARCは、コーヒー、携帯電話、アロエべラ抽出物、野菜のピクルスといった多くの日常的な製品や、理容師/美容師、揚げ物料理のコックなどの専門の職業についても、カテゴリー2に分類しています。

日産化学は3月24日、下記発表を行った。

グリホサートは、米国環境保護庁(U.S. EPA)では最もリスクの低いE に分類され、欧州連合およびFAO/WHO 合同残留農薬専門家会議(JMPR : Joint Meeting on Pesticide Residues)においては、がんとの因果関係はないとされています。

また、2015 年1 月、ドイツ政府はEU を代表した4 年間にわたるグリホサートの評価を完了しました。
ドイツ規制当局では、IARC が考慮したデータに加え、さらに多くの研究を精査したうえで、ヒトに対して発がんリスクを有するとは考えにくいと結論づけています。

以上のことから、弊社はグリホサートに発がん性は無いと判断しております。

IARC は、世界保健機構(WHO)の下部組織であり、公表されている限られた文献情報に基づき、物質や環境等の因子に発がん性があるかどうかという可能性を評価し、5つのグループに分類しています。

今回グリホサートを2A としましたが、WHO の他のプログラムによる「グリホサートに発がん性がない」という評価と矛盾しています。加えて、WHO 飲料水水質ガイドラインは、グリホサートが人の健康に害を示さないと結論付けています。

農薬に関しては、日本を含む各国の規制当局が、発がん性を含む様々な項目についての適正なガイドラインに沿った多数の試験成績を基に、継続的かつ厳正に審査したうえで使用を認可しています。

現在までのところ、農林水産省はなにも発表していない。

ーーー

Monsantoは除草剤 Roundup を販売する一方、特定の除草剤に耐性を持つ遺伝子を組み込むことにより、除草剤をまいても枯れないようにした除草剤耐性作物を販売している。

普通、除草剤は選択性(効果を発揮する雑草が決まっている)であるため、農作物を栽培する際には、数種類の除草剤を数回にわたり散布しなければならない。

しかし Roundup のような非選択性の除草剤を使い、その除草剤に耐性を持った作物を栽培すれば、農作物以外の雑草だけを効率的に枯らすことができるため、わずか1〜2回の散布で済み、コストや労力が削減される。

同社はRoundup Ready のブランドで、大豆、トウモロコシ、ワタ(綿)、ナタネなどのグリホサート(Roundup)耐性作物を商品化している。

ーーー

フランスのジャーナリスト Marie-Monique Robin は、Monsanto社と除草剤耐性作物についてのドキュメンタリー(The World According to Monsanto)を作成、それを元にした本を出した。

NHKは2008年6月14日にBS世界のドキュメンタリーで「アグリビジネスの巨人 “モンサント”の世界戦略」を放映した。

本は2008年にフランスで出版され、2010年に英訳が出版された。
 
  タイトル  The World According to Monsanto
  サブタイトル  Pollution, Corruption, and the Control of the World's Food Supply

本年に出た邦訳 「モンサント――世界の農業を支配する遺伝子組み換え企業」の内容紹介は以下の通り。

世界43か国で、遺伝子組み換え種子の90%のシェアを誇るモンサント社――。この世界最大級のバイオ化学企業は、これまで、PCB、枯葉剤…と、史上最悪の公害をくり返し、多くの悲劇を生み出してきた。そして現在、遺伝子組み換え作物によって、世界の農業を支配しようとしている。

いかに同社が、政治家と癒着し、政府機関を工作し、科学者に圧力をかけ、農民たちを訴訟で恫喝することによって、健康や環境への悪影響を隠蔽し、世界の農業を支配下に収めてきたか。本書は、3年にわたる調査によって、未公開資料、科学者・政治家・農民たちの証言をもとに、その驚くべき実態を明らかにした、世界が瞠目した話題騒然の書である。

同書はまず、Monsantoの「体質」を批判している。

PCBや枯葉剤Agent Orange(ダイオキシンを含む)の毒性を当初から知りながら、それを隠し、学者に安全だとの報告書を作成させて利用し、当時のEPAなどを篭絡して販売を続け、それを追求する人間を迫害してきた。PCBを河川に流出させて多くの人に危害を与えた。

乳牛に投与される遺伝子組み換え成長ホルモン Bovineの場合はFDAも篭絡され、問題ありと知りながら承認を与えた。

Monsantoの人間が監督官庁に、監督官庁の人間がMonsantoにという人事が頻繁に行われている。まさに「回転ドア」である。

Roundupについては、多くの研究者がRoundupの発がん性を問題にしてきたとしている。

一つの研究は、通常はDNAの損傷があれば修復したり、アポトーシスにより異常DNAの拡大を防ぐが、Roundupがこの機能を阻害するため、癌が発生するとする。

但し、Roundupの原体(active ingredient )のglyphosateだけではこれは起こらない。glyphosateには細胞に入り込む能力を持たないからという。
Roundupに含まれるpolyethoxylated tallowamine (POEA)が問題ではないかとする。

農薬登録は glyphosateの安全性評価だけで行われており、POEAなどを含む Roundup のデータはチェックしていない。

また、ウニの細胞分裂に影響を与えるという研究もある。
遺伝子組み換え作物の普及を妨げないよう、発表を禁止された。

FDAは遺伝子組み換え植物が除草剤に対して耐性をもつという特異な性質を持つのに特別な扱いはせず、従来の植物と同等であるという「実質的同等性の原則」を採用した。
反対派は、少量の食品添加物でもチェックするのに、野放しはおかしいと批判する。


本書によると、PCBやAgent Orange の場合は、Monsantoも専門家(ほとんどがMonsantoの息がかかっている)も監督官庁のEPAも問題なしとしてきたのが、実際はそうではなかった。

今回のケースがどうであるかは知らないが、報告を機に、公正を期すため、いくつかの研究機関で原体 glyphosate 及び 製品 Roundup の再調査をしてはどうか。

Monsantoにとっては、仮にRoundupが禁止されると、Roundup耐性作物(Roundup Ready) は意味を持たなくなるため、徹底的に争うとみられる。


 
2015/4/7 福建省のパラキシレン工場で爆発事故 
 
福建省漳州市古雷港経済開発区にある騰龍Aromatic PX (年産能力80万トン)のプラントで4月6日午後7時ごろ、大規模な爆発事故が発生した。

約30キロメートル離れた場所でも爆発に伴う炎や煙が目撃された。

消火活動には、地元消防隊430人ほか、人民解放軍の化学防護隊120人、洗浄車5台などが投入された。また南京軍区175医院の専門家数名も現地入りしている。
地元メディアによると14人が負傷し、うち2人が重傷という。
被害者の数はさらに拡大する可能性もある。
現場では有毒なガスが発生しているということで、消防などは周辺の住民を避難させるとともに爆発の原因を調べている。

ーーー

2006年11月、台湾資本のDragon Group(騰龍グループ)は福建省厦門の海滄投資区で芳香族とPTAプラントの建設に着工した。

2006/7/31  台湾資本のDragon Group、福建省厦門でPXからPETまで一貫生産へ 

しかし、「事故が起こると何千トンもの毒物が放出される」といった内容の記事がインターネットに次々掲載され、大きな反対運動が起こった。

このようなメッセージも流された。
「騰龍グループはパラキシレン計画を開始した。非常に毒性の強い化学品が製造されると、厦門全体が原爆にやられるようなもので、みんなが白血病にかかり、奇形児が生まれる。我々は健康な生活をしたい。国際機関はこのような計画は住宅地から100km離すことを義務付けている。厦門は16kmしか離れていない。子孫のために、この情報を皆に知らせよう」

2007年12月、福建省と厦門市当局は騰龍アロマティックスの海滄投資区での芳香族計画を取り止め、これを福建省Zhangzhou市の古雷半島に移転させることを決定した。
2009年5月、古雷半島で2年遅れで建設が始まった。

2007/6/11 中国のインターネット反対運動が石化計画を止める

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その後、パラキシレンに対する反対運動は各地に広まった。

Sinopecは2012年10月、浙江省寧波市で計画していたパラキシレン工場の拡張を中止することを決めた。

2012/10/30   寧波で大規模デモ受け、SinopecのPX増設取り止め

遼寧省大連市で2011年8月、大孤山石化産業園区の大連福佳・大化石油化工有限公司のパラキシレン工場の撤去を求める市民およそ1万2,000人が市政府庁舎前に集まり、抗議を始めた。

8月8日に台風が接近した際、工場から約50mの距離にある防波堤が決壊、防波堤のすぐ近くに保管されていたパラキシレンが漏れ出す恐れが強まり、付近住民らが避難する騒ぎとなった。

市政府は当初、工場の移転を一つのオプションとして検討するとし、同時に有毒物質を出来るだけ早く取り除くとしていたが、夕方になり工場の即時操業停止と早期移転を決定し、抗議活動は収束した。

2011/8/15 中国・大連で化学工場の撤去求め デモ  

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人民日報は2013年7月30日付で、「世界的にも、パラキシレン産業は何十年も事故を起こしていない」と主張する論説を掲載した。

韓国や日本、台湾などから中国に輸入されるパラキシレンが急増してきたことを説明し、生産施設が必要と力説した。

Q&Aで、「パラキシレン生産設備はすでにかなり多いのに、どうしてまだ必要なのですか?」との問いには「この10年で、わが国のパラキシレン自給率は9割から5割に下がってしまいました。世界におけるパラキシレンの需給を見れば、もっとも不足している国は中国です」と回答。

「パラキシレンの生産は安全ですか?」との問いには、「全世界でパラキシレンは数十年間も生産されてきましたが、大きな事故はいまだに発生していません」などと紹介した。

しかし、同日の朝、古雷港経済開発区にある騰龍Aromatic PX の試運転中のプラントで爆発炎上事故が発生した。未使用の水素ガス用パイプに水素を通して圧力を測定しようとしたところ、パイプが裂けて爆発したという。

工場敷地から約100メートル離れた場所にある商店では、住居部分の2階の窓ガラスがすべて割れた。1階部分の店舗ではシャッターが歪んで開けられなくなった。商店主は「寝ていた子供も驚いて目を覚まし、爆弾だなどと言い出した」、「台風に襲われた時より怖かった」などと話した。

 

今回、このいわくつきのプラントで爆発事故が発生した。

今後、パラキシレン工場への反対の動きが強まるのではないかと見られている。
 


2015/4/8   韓国、イスラム国占領のガス田で巨額損失のおそれ 

韓国ガス公社(KOGAS) が2011年に権利を取得したイラクのガス田が、イスラム国(IS)に占領されて事業が中断している。

すでに投資された3538億ウォン(390億円)の回収が難しいことに加え、未払い金を含む2兆9249億ウォン(約3200億円)を追加で投資する必要があることが4月3日、監査院の監査で明らかになった。

問題となっているのはシリアとの国境に近いAl-Qaim の近郊のAkkasガス田。

イラク政府は2009年6月の第一次入札にAkkasガス田とMansuriyahガス田を出したが、どこも応札しなかった。

2010年10月の第三次入札で、Kogas とカザフスタン国営 KazMunaiGasの連合が落札した。
契約生産数量は日量4億立法フィートで、報酬は原油換算5.5ドル/バレルとなっている。

2010/10/26 イラクでの天然ガス田開発、韓国連合が2ガス田を落札

その後、KazMunaiGasが撤退し、権益比率はKOGAS が75%、イラン国営石油が25%となっている。

 

2013年4月1日、KOGASが契約している現地会社の従業員がガス田から帰宅途中に武装勢力に襲われ、2名が殺され、1名が誘拐された。
まだ準備段階のため、KOGAS従業員はまだ現地に派遣されていなかった。

現在も米国など国際同盟軍の空襲が続いているうえ、イスラム国の勢力がすぐに弱まる見込みもなく、近寄れない状態が続いている。

KOGASは権益の売却を考えているが、買い手は見つからない。

同社ではAkkasガス田について、「新規投資は全く考えていない」としているが、監査院によると、イラク政府との契約では、未払い金と現場運営費は今後も投入しなければならないこととなっている。

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これとは別に、韓国石油公社などが参加する韓国コンソーシアムは2008年2月、イラクの北部クルド自治区内の油田4つの鉱区の開発とインフラ建設を並行して進める内容の覚書をクルド自治政府と締結した。

コンソーシアムは石油公社 38%、SKエナジー 19%、デソン産業、三千里(サムチョンリ)、ボムア資源開発(各 9.5%)、GSホールディングス、マジュコ通商(各 4.75%)、ユーアイエナジー(5%)などが構成している。

クルド自治政府の州都である Irbil 近くの3鉱区とクルド北部地域のドフク鉱区を合わせて4ヵ所の鉱区が対象で、4つの鉱区の埋蔵量は、最低10億バレル以上、多ければ20億バレルに上るものと期待され た。

2008/2/20 韓国エネルギーコンソーシアム、イラク油田開発

イラク政府はこれを問題視し、参加企業をイラクの入札から除外した。

2009/4/7 イラクの油田開放、クルド人自治政府と契約の韓国企業を除外

しかし、クルド地区の石油開発は失敗に終わっている。

2011/9/20 韓国のイラク・クルド地区の石油開発は失敗 


2015/4/9 米司法省の カルテル捜査対象者の雇用中止要請   

4月6日付けの日本経済新聞にこの記事が載った。

カルテル事件などを捜査する米司法省反トラスト局が昨年、捜査対象になった従業員を継続雇用しないことを企業に求める新たな方針を示し、米独禁法の専門家から疑問の声が上がっている。

カルテルの捜査対象になった企業が司法取引をして有罪を認める場合、企業による司法取引とは切り離されて別途捜査を受ける従業員について、その従業員を雇い続けると他の従業員の捜査協力に悪影響があるか、その従業員が価格決定などに影響を与えられる場合は雇用を続けるべきではないとの内容 。

これに対し弁護土は、「まだ起訴もされていない段階の従業員には『推定無罪』の原則が働く。その段階で雇用を打ち切るのは有罪を前提とした措置になる」と憲法上の問題があると指摘する。


これは、2014年9月10日にGeorgetown University Law Center で行われたGlobal Antitrust Enforcement Symposiumで司法省反トラスト局長のBill Baer 司法次官補が行ったスピーチである。

全文 http://www.justice.gov/atr/public/speeches/308499.pdf


問題となる箇所の概要は下記の通り。

日本でのカルテル事件では極めて悪質な場合のみ個人が起訴されるが、米国では殆どの場合、企業と同時に個人も起訴される。問題となるのは、企業が罪を認めて司法取引を行う場合で、追求された個人が罪を認めない場合である。

その場合、司法省はその個人を企業の司法取引の対象外( “carved out”)として指名し、追って起訴する。

司法省は2013年に“carved out”対象を犯罪行為に関与したと信じる理由のある人間、及び捜査の対象となる可能性がある人間に限るとの決定を行った。
Principles of Federal Prosecution に基づき、その人間のカルテルでの役割、会社での地位、その人間が他の共犯者摘発に役立つかどうかなどを考慮し、個々に決定する。

起訴以前にこのことが公開されることを避けるため、司法取引書の秘密添付書類に名前を記載し、裁判所に公開しないことを要請する。

企業が 司法取引を行った後、司法取引の条件のコンプライアンスプログラムを作成し、きちんと改善しましたとしながら、有罪の可能性のある役員で、責任を認めず、司法取引からcarved out されている役員を雇用し続けている企業がある。

会社としてはその人間が有罪であると知っているが、本人はカルテルでの責任を認めず、上位の地位にあり、価格決定責任を有する人間を雇い続けるなら、その企業がコンプライアンスの文化を持っているとは考え難い。
企業がその人間を、重要な権限を持つポジション、直接・間接に共謀行為を続けられるポジション、企業のコンプライアンス計画を監督するポジション、その人間の犯罪行為について証言する人間を監督するポジションで雇い続ける場合、その会社が新しいコンプライアンスプログラムを本気で実行することに強い疑問を持つ。

そのような場合、反トラスト局としては、企業が有効なコンプライアンスプログラムを実行するかどうかを確認する手段として、裁判所による保護観察を求めることを検討する。
有効なコンプライアンスプログラムを確保し、再犯を防ぐために必要な場合、
監視担当者設置を含めた保護観察を求める権利を保持する。

台湾の液晶パネルメーカーAU Optronics(友達光電)の例がある。

カルテルの裁判で、陪審は同社を有罪とし、共謀企業も罪を認めたが、同社は違法だとは認めず、コンプライアンスのコミットもせず、責任者(起訴されたが米国から逃亡)の雇用を続けている。地裁は反トラスト局の主張通り、3年間の保護観察期間の命令を下した。有効なコンプライアンスプログラムを作成、実行すること、それを監視し、裁判所と反トラスト局に報告する監視担当者を置くことが求められた。

ーーー

「推定無罪」との関係は難しいところである。

司法省自身、おそらく「推定無罪」の原則に立ち、起訴以前にこのことが公開されることを避けるため、司法取引書の秘密添付書類に名前を記載し、裁判所に公開しないことを要請する。しかし、起訴もされていないのに解雇せよということは、「公開」よりもはるかにひどい。

裁判になった場合、裁判所はどう判断するであろうか。

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スピーチでは有効なコンプライアンスプログラムの重要性を強調している。

有効なコンプライアンスプログラムとは、再び問題を起こさないということである。("should not need to see us again.")
再度問題をおこせば、大きなペナルティを覚悟すべきであるとする。

ブリヂストンの例を挙げている。

ブリヂストンは数年前にマリーンホース事件で有罪となった。しかし同社はそのとき、自動車の防振ゴム部品の価格カルテルに参加していることを明らかにしなかった。
この結果、同社は保護観察下におかれ、425百万ドルの罰金を課せられた。これは過去4番目に高額な罰金で、うち100百万ドル以上が初めの段階でこれを報告しなかったために増額された。(同社が保護観察下の置かれていたことは、これまでは明らかになっていない。)

同社は2014年2月の発表で、下記の通り述べている。

ガバナンス・コンプライアンス体制の更なる徹底

当社グループでは、マリンホースに関する2007 年5 月のカルテル捜査及び2008 年2 月の外国公務員に対する不適切な支払の可能性についての自主公表を受けて、2008 年よりコンプライアンス教育の強化、ガバナンス体制の改革、不正行為防止の為の規程新設などの種々の施策により再発防止策を実行してまいりました。今回のカルテル行為は、これらのガバナンス・コンプライアンス体制の強化・改革をきっかけに2008 年に終了したものです。しかしながら、結果として2008 年時点で本件を見つけ出すことができなかったことについては、会社として真摯に反省をしており、今後信頼回復に向けて、国内外の全てのグループ会社において、「更に上」のガバナンス・コンプライアンス体制の徹底を図ってまいります。

 


2015/4/10  DuPont、「物言う株主」と株主総会で対決   

DuPontは4月6日、来る5月13日の株主総会に向け、株主に対して同社の過去の実績、今後の方針などを説明する詳細資料を発表した。

昨年来、物言う株主(Activist)のNelson Peltz が率いる米Trian Fund Management が会社の分割を要求しているが、DuPont が反対姿勢を崩さないので、要求の実現を目指すため、Peltz氏を含めて4人の取締役を選任するよう求めている。

資料では、DuPontのこれまでの方針、今後の方針が正しいこと、Trianの要求する会社分割がいかに問題であるかを説明、Trianが退任を求めている4人の現取締役が適任であるとし、逆にTrian が推薦している4人の取締役候補が経験などの点からDuPontの取締役には適していないとしている。

1. Proven Track Record of Success
2. DuPont's Strategy for Higher Growth and High Value
3. Highly Qualified Board and Best-in-class Corporate Governance
自社のPR
4. Trian's High Risk Breakup Proposal
5. Trian's Proxy Fight
Trian の問題点
6. Concluding Remarks  

http://dupontdelivers.com/media/2015/03/Investor-Presentation-4-6-2015.pdf

ーー 

Trian Fund Management はDuPont の業績が期待値よりはるかに悪いとし、次のように主張する。

DuPontの企業構造を評価し、現経営陣が現状のままで最高水準の業績を達成できるか、又は事業を分割する必要があるか、検討すべきだ。
過剰な本社費をカットし、生産性を上げろ。
資本のアロケーション(研究・設備投資、M&A、バランスシート改善、増配等)を再検討せよ。
企業ガバナンスの改善

Trianの主張 http://trianwhitepapers.com/wp-content/uploads/2015/02/DuPont-White-Paper.pdf
同詳細とDuPontの実績の分析  http://trianwhitepapers.com/wp-content/uploads/2015/02/DuPont-White-Paper.pdf

Trianの具体的提案は下記の通り。

1. 既に発表されているPerformance Chemicals部門に加え、DuPontを2社に分割する。
     GrowthCo      (Agriculture, Nutrition and Health, Industrial Biosciences)
     CyclicalCo/CashCo    (Performance Materials, Safety and Protection, Electronics and Communications)
   景気変動に左右される。現金回収〔償却費+利益〕は大きい。
   
 
   金額は2013年の売上高
   
2. 無駄な本部費をカットし、ゼロベース予算をたて、各セグメントで業界一の増収・増益を達成するタイムフレームをつくる。
  各部門に配賦しない10億ドルの本部費を含む過剰な本社費 20〜40億ドルがある。官僚的かつ無責任。
  2014年9月のDuPont宛の書簡では、DuPontが持株会社として、ゴルフ場や1252席の大劇場、さらには217室のホテルなど、無駄な経費を支出しているとしている。
   
3. CyclicalCo/CashCo とGrowthCo の間で、株主に貢献するような資本のアロケーション
   
4. コーポレートガバナンス

なお、DuPontは機能化学品部門を2015年央にスピンオフし、The Chemours Company の社名で別途上場することを決めている。
また、Performance Coatings 部門は2012年に売却済み。

2012/9/5   DuPont、Performance Coatings事業をCarlyle Group に売却

2013/7/29 DuPont、Performance Chemicals 事業の売却を検討 付記

Trian は分社化で年間20億〜40億ドルのコスト節減となると主張している。
 

これに対するDuPontの反論は下記の通り。  

分社化により年間20億〜40億ドルのコスト節減となる根拠は無い。

新たな2社の形成、債務の移行や税法上の変更に関連する費用を含めると、分社化には40億ドルがかかる

・更に、分割により管理費の重複や税効果の減などで、毎年10億ドルのコストが余分にかかる。

・現在は、下記のように異なる部門にまたがる研究開発で新製品が生まれているが、分割によりシナジー効果がなくなる。 


DuPont 5月13日の株主総会に備え、議決権行使助言サービス大手との会合を予定している。

なお、DuPont はTrianの要求している4人の取締役候補のうち、Nelson Peltz ほか2人は拒否、1人だけは受け入れてもよいとしているとされる。

 


2015/4/11  トヨタ、中国・メキシコに新工場 1500億円投資  
 

トヨタ自動車が2018〜19年に総額1500億円を投じ、中国、メキシコに新工場を建設すると報じられた。

中国では広州汽車集団との合弁会社がある広州市内に小型車「Yaris(日本名ヴィッツ)」を最大で年間10万台つくれる規模の新工場を設ける。

付記

4月11日の報道によると、トヨタ自動車は別途、第一汽車集団との合弁会社である天津一汽トヨタで数百億円を投じて年産10万台規模の工場を新設し、2018年にも稼働させる方向だという。

メキシコでは中部のグアナファト州に最大で年間20万台生産可能な工場を建設する。
トヨタにとっては本格的なメキシコ進出で、北米向けに「カローラ」の新型車を輸出する。

現在、カローラをつくるカナダと米ミシシッピ州の工場のうち、カナダは大型車をつくる拠点に衣替えする。

付記 トヨタは4月15日、計画を発表した。

  メキシコ(新工場) 中国(広汽トヨタ 第3ライン)
時期 2019年生産開始 2017年内に新設、順次生産開始
場所 グアナフアト州 広州市南沙区(既存ライン近接地)
生産車種 カローラ  新型車
生産能力 年間約20万台 年間約10万台
(需要に応じ能力拡大を検討)
総投資額  約10億ドル 約525億円

トヨタは2008年ごろまで生産能力を年20万〜30万台規模で増やし、グローバル展開を進めたが、リーマン・ショック後の需要急減で固定費がかさみ連結営業赤字となり、収益体質改善のために2013年から工場新設を凍結してきた 。

2013年稼働のタイ工場以来、5年ぶりの大型投資に踏み切る。

 

日本の自動車業界の海外進出による輸出減少は円高のせいと言われた。

しかし円安になっても輸出は増えず、逆に減少している。

2014/8/7    円安と自動車輸出  

最新の統計では下記の通りで、2014年は、国内生産はほぼ前年並みに対し、海外生産は増加しており、輸出は大きく減少している。

 
輸出実績(千台)
  2011 2012 2013 2014 前年比 2011年比
ト ヨ タ 1,395 1,750 1,701 1,582 -120 187
日   産 663 633 501 425 -76 -238
マ ツ ダ 651 672 788 761 -26 111
三   菱 432 361 335 369 34 -63
ダ イ ハ ツ 22 10 8 8 0 -14
ホ ン ダ 235 215 125 31 -94 -204
富士重工 298 379 471 542 71 243
ス ズ キ 234 176 136 118 -18 -116
3,930 4,196 4,066 3,836 -230 -94


本年に入り、日産が米国への輸出向けに国内生産を増やすとか、ホンダが輸出採算の改善を受け、輸出を増やすとの記事が出た。

しかし、日産は海外需要が好調で、海外工場がフルになったため、余剰能力のある日本の稼動を上げるというものである。
ホンダは英国工場が販売不振で1ラインを停止することから、今夏のモデルチェンジを機に小型車「ジャズ」の生産を寄居工場に切り替えるものである。
両社とも、2011年比では200千台以上の輸出減となっており、日本の余剰能力の活用であって、工場を新設する訳ではない。

トヨタが円安のなかで日本での増設ではなく、海外での増設を決めたのは、グローバルな競争に勝ち抜くためには、現地生産は欠かせない戦略であるということである。

円高だけがこれまでの自動車の輸出減の原因ではなく、円安になっても輸出増にはすぐにはつながらない。

 

円安だけでは日本経済の再建はできず、第三の矢の成長戦略(=規制緩和)が絶対的に必要である。


2015/4/11 重低音で火を消す音波消火器    

Virginia 州のGeorge Mason Universityの学生の Viet Tran とSeth Robertson が重低音で火を消す音波消火器 “wave extinguisher” を開発した。

5月に Computer Electrical Engineering 学部を卒業するが、2月に大学のYouTubeにビデオを公開、これが広まった。

http://edition.cnn.com/2015/03/27/us/sound-fire-extinguisher/

二人は、Defense Advanced Research Projects Agency (DARPA) がこの計画を進めてきたがうまくいかないのを知り、開発を進めた。

DARPAの実験(一旦消えるが再度火がつく)   二人の “wave extinguisher” (完全に消火)
 

“Wave extinguisher” は低周波を火元に浴びせて、炎の周りの空気をかき乱すことによって酸素の供給を断つ仕組みで、600ドルで製作した。

燃焼には、熱と燃料と酸素が必要で、一つでも欠けると消える。大きなスピーカーを使って 30〜60 hertz の低周波の音波で酸素を取り除き、消火する。

音波で火を消す装置の利点は、化学物質や大量の水を使う方法と比べ、消火活動で建物などに与えるダメージを抑えられること。

まだ実用には遠いが、将来的には家庭での火災や、ドローン(無人飛行機)につけて、ビル火災や森林火災に使うことを目指している。

また、宇宙ステーションでは、消火器では中味が全体に広がってしまうため、重力と無関係に音波を発射できるこのシステムは最適だとしている。

二人は本件の特許を仮出願している。



2015/4/13 Shellが英BG Groupの買収で合意   

Shell は4月8日、英の天然ガス生産大手のBG Groupを470億ポンド(702億ドル)で買収することで合意したと発表した。石油業界では過去10年強で最大の買収となる。

現金と株式交換による買収で、1株当たり現金で383ペンスとShellの株式 0.4454株が与えられる。
換算した買収価格は1株約1350ペンスとなり、取引日90日平均に約52%上乗せした水準となる。

BGの株主は統合後のShellの株の19%を所有することとなる。

オーストラリア、ブラジル、中国、EU などで独占禁止当局との交渉が必要になる可能性がある。

Shellでは本買収に伴い、2016-18年の資産売却額を300億ドルに増やす方針を示した。


付記

BGグループを買収する取引を完了した

 

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BG Group は1986 年に民営化された英国ガス公社 British Gasを前身とする天然ガス事業を主体とするエネルギー企業。
1999 年に主に英国以外の事業、資産を引き継ぎ、英国以外のガス田の開発、生産、LNG 事業、パイプライン事業、発電事業を行う会社として設立された。

2004 年末の時点において、東南アジア、カザフスタンを含む世界20 カ国で事業活動を行なっているが、その中心エリアは、大西洋に面した欧州、北米、南米である。

LNG 事業の推進に積極的で、トリニダード トバコ、エジプト等で LNG事業を展開しており、米国への最大の LNG 供給業者となっている。

世界的な原油価格の下落を受け、石油業界では買収観測が高まっており、BG Groupはたびたびターゲット企業として指摘されていた。

2014年の損益は、石油価格の下落と生産量の減少が響いたほか、オーストラリア資産などで89億ドルの評価損(税引き前)を計上し、赤字となった。

  (百万ドル) 2013 2014 増減
営業損益 Upstream 4,967 3,947 -1,020
LNG Shipping & Marketing 2,643 2,544 -99
Others 6 46 40
合計 7,616 6,537 -1,079
減損損失等 -3,453 -7,954 -4,501
減損損失等 込み 4,163 -1,417 -5,580
継続事業純損益 2,205 -1,051 -3,256

ーーー

深海油田開発およびガス分野で強力なポートフォリオを持つ2つの企業の世界的な統合が実現する。

Shellが世界で持つ権益と、BG Groupの権益は、相互補完的であり、統合で極めてバランスの取れたグローバル・ポートフォリオが完成 する。

Shell カタール、オーストラリア北西部、ブルネイ、マレーシア、サハリンなどにプレゼンスがあり、BG Groupは北米の Sabine Pass、オーストラリア東部のQCLNG (Queensland Curtis LNG)、タンザニア、ブラジルなどにプレゼンスがある。

また両社の油田が隣接している場所も幾つかあり、それらに関してはオペレーションを統合することでコスト削減が出来る見通し。
(Shell では全体で2018年に25億ドルのシナジー効果を見ている。)

天然ガスは生産した天然ガスを液化し、LNG船で運び、消費地で再度ガスにして(regas) 消費者に届ける必要があるが、ShellとBG Group の合併 で No.1の、グローバル展開できるLNG会社が誕生する。

上流
 
LNG
 
生産量のアップ

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世界のエネルギー会社での統合会社の地位は下記の通りとなる。(単位:億ドル、バレル/日)

  企業価値 時価総額 売上高 石油換算
生産量
ExxonMobil 4,196 3,554 3,648 5,300
PetroChina 3,014 3,518 3,336 4,400
Shell 2,408 1,887 4,211 3,900
BG 611 591 193 606
Shell + BG 3,019 2,478 4,404 4,506
Chevron 2,263 2,014 1,923 3,500
Sinopec 1,559 1,249 4,514 1,600
Total 1,502 1,210 2,120 2,700
BP 1,404 1,248 3,536 4,100
ConocoPhillips 1,029 803 520 2,000
企業価値=株式時価総額+有利子負債ー現預金
企業価値と売上高は2014年、時価総額は2015/4/8
Source : Bloomberg News
 
天然ガス生産量 (日量 10億立方フィート)
 
Exxon 11.1
Shell 9.3
BG 2.1
Shell + BG 11.4
BP 7.1
Chevron 5.2

 


4月10日付けのFinancial Times は、本買収について、原油価格回復が成否を握るとして、下記の問題点を挙げている。

Shellが取引の際に使う原油価格の長期予想は「北海ブレントで1バレル 70〜110ドル」

実際に原油価格が90ドルまで上がれば、買収は財務的に素晴らしい。
原油価格が回復しない場合、買収が寄与するかどうか、疑問。

買収価額が高すぎるのが問題。

年間25億ドルのコスト削減が実現できるか。

買収でブラジルでの最大の外国石油会社となるが、プロジェクトが遅れるリスクがある。

ブラジルでは、Petrobras の幹部が契約の見返りとして複数の大手建設会社から賄賂を受け、賄賂の大部分が主に連立与党の政治家に流されたという疑惑で揺れている。


2015/4/14   京都大学iPS 細胞研究所、Cellular Dynamics Internationalと提携へ     

日本経済新聞によると、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授は4月8日、富士フイルムホールディングスが買収する米ベンチャーCellular Dynamics International, Inc.と iPS細胞関連の有力特許の相互利用などを推進する考えを明らかにした。

Cellular Dynamicsは山中教授の特許の実施権をすでに得ているが、癌になりにくい安全なiPS細胞を作ったり、iPS細胞から心臓の細胞を育てたりするための特許を幅広く保有し、高品質なiPS細胞製品を世界中の研究機関に供給している。

山中教授は、それぞれの特許を相互に利用できるようにするクロスライセンス契約の締結など「これまで以上に深い協力ができると期待している」と話した。

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山中教授と、オタマジャクシを使って最初のクローンを作りだした Sir John Bertrand Gurdon がノーベル医学生理学賞を受けたが、ウィスコンシン大学のJames  Thomson 教授も山中教授と同じ2007年11月に人間の受精卵を使わずに皮膚細胞からiPS細胞ができると発表している。

Cellular Dynamicsは、そのJames Thomson 教授が創始者の一人である。

Cellular Dynamicsが持つ特許の範囲は、体の様々な細胞からiPS細胞を作製する技術、iPS細胞から心筋や糖尿病治療への応用が期待される膵臓のベータ細胞を作る技術など幅広い。中でも2013年に成立した、プラスミドと呼ばれる環状DNAを使ってiPS細胞を作る技術は、がんになりにくい安全なiPS細胞を得るのに不可欠とされる。

Cellular Dynamicsが米国で取得している特許

 ・多能性幹細胞からの膵臓のベータ細胞などへの分化誘導

 ・ヒトES細胞などを自動培養する方法と機器

 ・血液の細胞の初期化によるiPS細胞の作製

 ・少量の末梢血からのiPS細胞の高効率作製

 ・ウイルスを使わないiPS細胞の作製法

 ・多能性幹細胞からの心筋細胞の作製

 ・ヒトES細胞やiPS細胞の血液の前駆細胞への分化誘導

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参考

iPS細胞での癌の発生の一つの理由は 、レトロウイルスベクターと呼ばれるウイルスを通じて導入される4つの遺伝子のうちに、がん化のおそれのあるc-Myc があることだが、これを除いた3つの遺伝子のみの導入での iPS細胞の作成に成功している。
他方、プラスミドの細胞内への導入では、細胞のゲノムの改変を起こしにくく、がん化などの異常を起こす心配がないとされる。

もう一つは、目的の細胞に育たずiPS細胞のまま残ったものが無秩序に増殖し、癌化するもの。

産業技術総合研究所と和光純薬はこのたび、残った未分化の iPS細胞を取り除く試薬を開発した。

レクチン(糖結合タンパク質)の一種がヒトiPS/ES細胞に特異的に結合することが分かったため、細胞内に取り込まれるとタンパク質合成を阻害し細胞死を引き起こす緑膿菌由来外毒素を末端部分に融合させた組換えタンパク質(薬剤融合型レクチン)を考案した。

薬剤融合型レクチンを培養液に添加すると、未分化のiPS細胞のみがほぼ死滅するが、分化した細胞には影響を与えない。
    https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2015/pr20150410/pr20150410.html

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Cellular Dynamicsは、良質なiPS 細胞を大量に安定生産する技術に強みを持っており、大手製薬企業や先端研究機関など多くのユーザーとの供給契約、開発受託契約を締結している。
現在、創薬支援や細胞治療、幹細胞バンク向けのiPS 細胞の開発・製造を行っており、既に創薬支援向けでは、心筋や神経、肝臓など12 種類の高品質なiPS 細胞を安定的に提供している。

また同社は、
California Institute for Regenerative Medicine とのiPS 疾患細胞バンクの樹立、
National Eye Institute へのドライ型加齢黄斑変性症の臨床試験開始届を行うための前臨床試験用 iPS 細胞受託を進めるなど、
米国でのiPS 細胞供給ビジネスを積極的に展開している。

Cellular Dynamicsは本年2月、2人のHLA "Super-donor" からGMP基準のiPS細胞を樹立したと発表した。
HLA "Super-donor"
は父母から引き継いだHLA(白血球抗原) の型が同じ人(例 A-B-C / A-B-C)で、HLA型のどちらかが同じ人(A-B-C / X-Y-Z)になら免疫拒絶なしに移植できる。
この2つのiPS細胞で、米国人の計19%がカバーできる。

これは山中教授が進めているiPS細胞バンクと同じ構想である。
日本人の場合、75名の"Super-donor"(ホモドナー)で80%をカバーできる。

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富士フイルムHDは、3月30日、株式公開買付けによりCellular Dynamics を買収することで同社と合意した。
発行済普通株式の総数を約307 百万米ドルで取得する。


富士フイルムは、写真フィルムの研究開発・製造などで培ってきた技術やノウハウを活用して、再生医療に必要なリコンビナントペプチド(RCP)を開発している。

2010年には国内で再生医療製品事業を展開するジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)と資本提携を行い、41.29%の株式を取得したが、2014年12 月には持株比率を50.33%とし、連結子会社とした。J-TECは再生医療で皮膚や軟骨を手がけている。

2010/9/3  富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと資本提携

今回、Cellular Dynamics 買収を通じ、iPS 細胞を使った創薬支援分野に参入する。

さらに、Cellular Dynamics のiPS 細胞関連技術・ノウハウと富士フイルムの高機能素材技術・エンジニアリング技術やJ-TEC の品質マネージメントシステムとのシナジーを発揮させ、再生医療製品の開発加速、再生医療の事業領域の拡大を図るとともに、再生医療の産業化に貢献していくことを目指す。

富士フィルム会長は、「iPS細胞を使った治療はこれからだが、細胞治療にも取り組みたい。例えばパーキンソン病や加齢黄斑変性の分野では臨床研究への応用も十分ありえるだろう」と述べた。


2015/4/15 高浜原発、再稼働認めず 福井地裁が仮処分決定     

関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めを住民らが求めた仮処分申請で、福井地裁(樋口英明裁判長)は4月14日、再稼働を認めない決定をした。

仮処分は正式裁判の判決が確定するまでの間に差し迫った危険や損害が起き、申し立て側の損害が回復不能となることを避けるため「仮の状態」を定める手続き。
仮処分で原発の運転を禁止する決定は初めてで、決定はすぐに効力を持つ。

決定では「10年足らずの間に各地の原発で5回にわたって想定を超える地震が起きたのに、高浜原発では起きないというのは楽観的な見通しに過ぎない」と指摘、そのうえで、原子力規制委員会の新しい規制基準について、「深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような厳格な基準にすべきだが (伊方最高裁判決)、新しい規制基準は緩やか過ぎ、適合しても原発の安全性は確保されていない」と指摘し 、以下の通り述べた。

原子力規制委員会委員長の「基準の適合性を審査した。安全だということは申し上げない。」という川内原発に関しての発言は------ 文字どおり基準に適合しても安全性が確保されているわけではないことを認めたにほかならないと解される。新規制基準は合理性を欠くものである。

関電は高浜3、4号機の再稼働を今年11月と見込んでいるが、今後の司法手続きで仮処分の取り消しや執行停止がない限り、再稼働はできない。
関電は決定を不服として福井地裁に異議申し立てと執行停止の申し立てをするとみられる。

付記

福井地裁は5月18日、関電が申し立てた仮処分の効力を一時的に止める執行停止について却下した。

付記

福井地方裁判所は12月24日、2015年4月の再稼働しないよう命じた仮処分の決定を取り消し、事実上、再稼働を認める判断をした。

高浜原発3号機と4号機は2015年2月、原子力規制委員会の審査に合格し、福井県の西川知事が再稼働に同意している。

関電は来月にも再稼動させる方針。

ーーー

原子力規制委員会は2月12日、高浜3、4号機について「新規制基準に適合する」と結論付け、再稼働に向けた合格証にあたる「審査書」を正式に決定した。

関電は津波の想定を最大6.2メートルまで高めて防潮堤を設置。地震による揺れで最大級の想定も約2割引き上げて設備の耐震性を高めた。

ーーー

樋口裁判長は2014年5月、関電大飯原発3、4号機の運転差し止めを住民らが求めた訴訟で、地震対策の不備などを指摘し、「地震で原子炉の冷却機能が失われたりする具体的な危険がある」として再稼働を認めない判決を出した。

2014/5/30 大飯原発差し止め訴訟判決 

この訴訟は控訴審で係争中のため判決が確定しておらず、差し止めの効力は発生していない。

滋賀県の住民らが関西電力大飯原発3、4号機と高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを求めた仮処分申請で、大津地裁は2014年11月、住民側の申請を却下する決定をした。

この決定に失望した9人の住民が2014年12月5日、関西電力を相手取り、福井地方裁判所に大飯原発3、4号機と高浜原発3、4号機の運転差し止めを求める仮処分を申し立てた。

住民側は保全すべき権利として「人格権の妨害予防請求権」を主張、大飯原発3、4号機の運転差し止めを認めた2014年5月の福井地裁判決を引用し「250キロ圏内の住民の人格権が侵害される具体的な危険がある」としている。
「再稼働は時間の問題であり、原発が運転すれば福島原発事故のような具体的な危険が顕在化する」として保全の必要性を訴えている。

一方、関電側は原発で事故が起これば危険があるのは当然の前提とした上で、「適切に管理できるかが判断されるべき」と主張。
地震や津波などの安全対策を十分に行っているとし「放射性物質が異常に放出するような事故が起きることは考えられない」と反論している。

本年3月11日の第2回審尋期日に裁判所は、申立てのうち原子力規制委の安全審査に合格した高浜3、4号機については緊急性を認めて審理を分離し、差止請求についての決定を出す方針を明らかにした。大飯3、4号機の差し止め審理は、審尋の次回期日を5月に指定した。

慎重な検討を求める主張を退けられた関西電力は樋口裁判長ら3人の裁判官の忌避を申し立てたが、福井地裁は「裁判の公正を妨げる事情があるとは認められない」として却下する決定をした。

関電側は「議論が尽くされず、審理が終結したことは不当」とし、名古屋高裁金沢支部に即時抗告したが、高裁は4月9日付けで関電側の忌避の抗告を棄却した。

なお、樋口裁判長は4月1日付で名古屋家裁に異動したが、名古屋高裁が福井地裁判事職務代行を発令し、引き続き担当している。

ーーー

菅義偉官房長官は記者会見で、「国は当事者ではない。あくまでも仮処分であり、事業者の対応を注視したい」と述べた。同時に「粛々と再稼働を進めていきたい」と強調し、原発再稼働方針に変更はないとの考えを示した。

付記

原子力規制委員会の田中委員長は4月15日、「十分に私どもの取り組みが理解されていない点がある」とし、事実関係に誤認があると下記の通り反論した。

福井地裁 委員長
原発では過去に想定を上回る。 過去の教訓を反映したうえで想定を見直している。
想定未満の地震でも炉心損傷の危険がある。 仮に想定を超えても炉心損傷につながらない対策を求めている。
使用済み核燃料を保管するプールが堅固でない。
使用済み燃料プールに水を送る設備の耐震性が「Bクラス」
きちんとプールの水位を管理すればリスクは大きくない。
最も高い「Sクラス」
原発の新規制基準は緩やかに過ぎ、合理性に欠く。 世界的に最も厳しいレベルにあると国際的に認知されている。
基準や審査内容を直ちに見直す考えはない。


 


2015/4/15 AIIB 創設メンバー 57カ国で決定    

中国財政省は4月15日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に57カ国の参加が決まったと発表した。これで創設メンバーが確定した。

4月15日の発表でポーランド、南ア、アゼルバイジャンが加わり、57カ国となった。

中国は4月13日に台湾を創設メンバーから除外すると述べた。 「今後も各方面の意見を聞き、妥当なやり方で台湾の参加問題を解決したい」としている。
また、これまでに申請していた香港も認めていない。(独立国でない)

既報のとおり、報道によると、北朝鮮が参加を表明したが、北朝鮮の金融・経済体制が国際機構に参加できる水準に達していないとして中国に拒否されている。

  参加 不参加
G7 4 英、仏、独、伊 3 日、米、加
G20 14 中国、ロシア、英、仏、独、伊、
インド、ブラジル、豪、韓、インドネシア、
サウジ、トルコ、南ア
6 日、米、加、EU、
メキシコ、アルゼンチン
BRICS 5 ブラジル、ロシア、インド、中国、南ア 0  
ASEAN 10 全メンバー 0  

 

  アジア 旧ソ連 中近東 欧州 オセアニア その他
10/24
 
(BRICS)
中国
インド
カザフスタン
ウズベキスタン
クウェート
オマーン
カタール
     
モンゴル
スリランカ、パキスタン
バングラデシュ
ネパール
(ASEAN)
ミャンマー、ラオス
タイ、ベトナム
カンボジャ、マレーシア
シンガポール
フィリピン、ブルネイ
11/25 インドネシア          
11/28   タジキスタン サウジ   NZ  
12/31 モルディブ          
2/7     ヨルダン      
3/12       (G7)
英国
   
3/17       フランス
ドイツ
イタリー
   
3/18       ルクセンブルグ    
3/20       スイス    
3/23 香港特別区          
3/24       オーストリア    
3/26 韓国   トルコ      
3/28   (BRICS)
ロシア
  オランダ
デンマーク
スペイン
  (BRICS)
ブラジル
グルジア→ジョージア
3/29         豪州  
3/30       フィンランド   エジプト
3/31 〔台湾〕 キルギス イスラエル スウェーデン
ノルウェー
ポルトガル
アイスランド
   
4/3     UAE、イラン      
4/9       マルタ    
4/15   アセルバイジャン   ポーランド   南ア
 
57カ国 19カ国 7カ国 9カ国 17カ国 2カ国 3カ国
拒否 北朝鮮          
Pending 香港、台湾

付記

中国は参加57カ国のうち、域内が37カ国、域外が20カ国と発表した。(国名は明らかにせず)
注目されていたロシアが「アジア太平洋域内国」に入った。

アジア、大洋州、旧ソ連、中東の37カ国が域内、欧州17カ国とブラジル、エジプト、南アの合計20カ国が域外になると見られる。

出資は、中国の主張を取り入れ、域内が75%、域外諸国が25%との案が有力となっている。

 

 


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