過去3か月間近く拘束されていたアルワリード・ビン・タラール(Al-Waleed bin Talal)王子が1月27日、当局との「調停」合意後に釈放された。

同王子は昨年11月の一斉検挙で拘束された大物実業家や閣僚の中で最も著名な人物で、「アラブのWarren Buffett」と呼ばれ、投資会社Kingdom Holding Company の所有者である。

アルワリード・ビン・タラール王子は初代国王アブドゥルアズィーズ・イブン・サウード(Saud)の息子のタラール王子Talal )の息子。

父親のタラール王子は1960年代初めに財務大臣を務めたが、政治改革を主張し、Red Princeと呼ばれた。王位継承権を放棄して亡命した。

王子は、株式および土地への投資によって富を築いた。資産はおよそ200億米ドルで、世界で8番目、アラブ世界では一番の資産家である。『タイム』誌によって「アラブのWarren Buffett」と名づけられた。
王子が95%を保有するKingdom Holdingは、Citigroup、Apple、21st Century Fox、Twitterといった企業の大株主でもある。1991年に不良債権を多く抱え業績不振に陥っていたCiti Bankの株式10%を5億9000万ドルで取得し、救済した。その後、Citi の経営は持ち直し株価は上昇、王子は高いリターンを得て、次の国際投資へとつなげた。

政治とは一定の距離を置く一方、ムハンマド(Mohammad bin Salman皇太子が進める経済改革には好意的な発言を続けていた。

2015年12月、イスラム教徒入国禁止発言をした共和党のTrump大統領候補のアカウントに「おまえは共和党だけでなく全米の恥だ。おまえの勝利はありえないから大統領選から撤退しろ」罵るメッセージをおくり、Trumpから「まぬけ王子」と罵り返されるなど応酬を繰り広げて注目された。

アルワリード王子は他の容疑者と同様、釈放条件となっていた同国政府との金銭的合意に達した後に釈放された。 サウジアラビア政府筋はAFPに「司法長官が今朝、アルワリード王子との調停を承認し」、釈放に向けた条件が整ったと述べた。合意の詳細は公表されていない。

同政府筋は、アルワリード王子には汚職の罪があるとする一方、同王子は現在も Kingdom Holding Company の所有者かとの質問に対し、「確かにそうだ」と答えている。

Wall Street Journal は昨年12月に、サウジ司法当局が王子に対し釈放の条件として60億ドルを納付するよう要求したと伝えた。

欧米の複数のメディアは当局が拘束者らに対して、巨額の財産を放棄すれば釈放を認めるとの条件を提示していると伝え、一連の拘束を主導するムハンマド皇太子がみずからの権力基盤固めに加えて、経済改革に必要な資金の確保も同時に狙っているとの見方も出ていた。

王子が納付に合意した場合、資金を捻出するため保有する株の一部を売却する可能性もあり、注目が集まった。

王子は「支払えば罪を認めたことになる」として、支払う意思がないと述べたとも伝えられた。