米最高裁判所は5月13日、消費者団体による訴訟を認める判断を下した。

状況は下記の通り。

iPhone などでは、アプリケーションソフトはApp Storeからしか追加することができない。
ソフト開発者はアプリケーションソフトを独自に配布することができず、App Storeに申請後、同社の審査を経て登録されるのを待つ必要がある。
アップルは30%もの高額なアプリ手数料(いわゆるアップル税)を徴収している。

グーグルやマイクロソフトはAndroidやWindows Mobileでも同様の配信サービスを提供するが、App Storeと異なりアプリケーションソフトの登録を原則自由化し、厳格な審査は行わない。また、開発者がこれらの配信サービスを利用せず独自にソフトウェアを配布することも妨げていない。

 

消費者団体は、これらのことから、アップルがApp Store以外でのアプリ配信を認めないことが独禁法違反であり、高額なアプリ手数料(いわゆるアップル税)を徴収していることが独占権の行使だと主張し、提訴した。

これに対し、アップルは「直接の製品購入者だけが独禁法に基づいて損害賠償を請求できる」という1977年の最高裁のイリノイ・ブリック判決(Illinois Brick Co. v. Illinois)を盾に、消費者団体には原告の資格がないと主張した。(同判決については後記)

同社の言い分は次の通り。

アプリの販売者は開発者であって、アップルではない。

アプリの価格を決めて売っているのは開発者である。アップルは単に販売の場を提供しているだけで、手数料はその対価である。

アップルを訴えられるのは、アップルに手数料を払っている開発者だけである。需要家には原告の資格はない。

これについては裁判所で争ったあと、最高裁に送られ、昨年11月末から審議が行われた。

今回最高裁は5対4で、「ユーザー側にも訴える権利はある」と認めた。

リベラル派判事4人の意見に賛同した保守派のBrett Kavanaugh判事は、App Storeの顧客はアップルから直接購入していると考え、イリノイ・ブリック判決に反しないと判断した。

今回の判断はアップルが独禁法に違反しているとするのではなく、単に消費者団体が訴えるのは可能としただけである。最高裁は「原告のアップルに対する独占禁止法違反の事実を査定することも、アップルの他にあるかもしれない防御も考慮していない」としてい る。

しかし、当初は訴訟そのものが成立しないとの見方が主流だったため、影響は決して小さくはない。アップルがApp Storeのビジネスモデルや手数料の見直しを迫られる可能性が生じたことになる。


原告側弁護士はこれまで、過払いの消費者を代表して数億ドルを求める意向を明らかにしている。