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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2021/2/15 イタリア、ECB前総裁のマリオ・ドラギ氏が次期首相に 

欧州中央銀行(ECB)前総裁のマリオ・ドラギ(Mario Draghi)氏は2月13日、イタリア首相 に就任した。
新型コロナウイルス対策と低迷する経済の立て直しを行なう。

ドラギ氏は2011年11月1日から2019年10月31日までECBの第3代総裁を務めた。'Super' Mario と呼ばれる。

連立与党の中核だった「五つ星運動」と中道左派「民主党」に加え、1月に連立離脱した「イタリア・ヴィーヴァ」や、これまで野党であった中道右派の「同盟」や「フォルツァ・イタリア」なども含めた大連立内閣が発足した。

大臣のうち、8人はテクノクラートで、残りは連立の諸党から選んだ。「五つ星」から4人、「民主党」「同盟」「フォルツァ・イタリア」から各3人、「イタリア・ヴィーヴァ」と「自由と平等」から各1人が選ばれた。


イタリアでは以前から経済の立て直しが最優先課題であった。

2018/10/29 イタリア、来年度予算案で欧州委と対決

2019/5/10   イタリアの2019年度見通し、債務削減の対EU公約未達へ

昨年からは新型コロナ問題が発生、対策が急がれるなか、各党が政争を続けてきた。

 

2018年6月1日に 「五つ星運動」と「同盟」の連立で、法学者で政治経験のないGiuseppe Conteの第一次内閣が発足した。政治姿勢の異なる2つの党の連立で、当初から早期瓦解の可能性も指摘されていたが、2019年8月に、「同盟」が離脱、連立が崩壊した。

ライバル関係にあった「五つ星運動」と野党の「民主党」、その他が連立を組み、第二次Conte内閣が誕生した。

本年に入り、「民主党」から独立した少数政党「イタリア・ ヴィーヴァ」がConte首相を批判、連立を離脱した。

Conte首相は大統領に辞表を提出、新たな連立政権で第3次内閣を目指したが失敗した。


マッタレッラ大統領は欧州中央銀行(ECB)前総裁のマリオ・ドラギ氏を大統領府に呼び出した。ECB総裁として欧州ソブリン債危機を沈静化させた手腕が高く評価されている。

イタリア最大与党で議席の約3割を握る左派「五つ星運動」は2月11日、ドラギ前総裁を次期首相として支持することを決めた。党員によるオンライン投票で 賛成が59.3%、反対は40.7%だった。

与党の中道左派「民主党」やベルルスコーニ元首相率いる野党の中道右派「フォルツァ・イタリア(FI)」など、極右政党「イタリアの同胞」を除く全ての主要政党から幅広い支持を取り付けた。

ドラギ首相は、コロナ渦からの早期回復計画と、EUから与えれる復興基金(2000億ユーロ以上)をどのように使うかを早急に決めることが求められている。

欧州連合(EU)首脳会議は2020年12月10日、新型コロナウイルスで傷んだ経済の再生を目指す復興基金と中期予算の計約1兆8000億ユーロで合意した。承認を拒否してきたハンガリーとポーランドが妥協に応じた。

EU首脳会議は2020年7月17〜21日、90時間以上にも及ぶ連続協議の末、「歴史的」とも評される復興パッケージに合意した。
欧州理事会では中期予算計画(多年度財政枠組み)の議論で、予算の主要拠出国だった英国のEU離脱を受けて大幅な歳入減となる中、復興パッケージの予算規模などをめぐって加盟国間の対立が先鋭化していた。

2020/12/21 EU、コロナ復興基金と中期予算でようやく合意 

ーーー

2018年3月4日の総選挙では、パオロ・ジェンティローニ首相の「民主党」が大敗した。

イタリアでは絶対多数を占める政党はなく、多数の政党が乱立する。このため連立政権とならざるを得ないが、政策ごとに主張が異なり、なかなかまとまらない。また、仮に連立が成立しても、特定の政策で譲りあえない場合、離脱の可能性もある。

このため、総選挙後政治の空白が続いていたが、反EUの「五つ星運動」と「同盟」が連立することとなった。

  2018年選挙
元老
(上院)
代議院
(下院)
五つ星運動 112 +58 227 +118
同盟 58 +41 125 +107
(小計) (170)   (352)  
民主党 53 -52 112 -185
フォルツァ・イタリア 57 -41 104 +6
その他 41 -12 62 -46
合計 321   630  
(過半数) (161)   (316)  

2018年6月1日に両党の推す法学者で、政治経験のないGiuseppe Conteの第一次内閣が発足した。

「五つ星運動」と「同盟」は、反EUの立場では同じだが、政治姿勢の異なる2つの党の連立である。連立の早期瓦解の可能性も指摘されていた。

「五つ星」は失業者らへの最低所得保障など「ばらまき型」の経済刺激策を重視する。
同盟」は、EUの移民政策を批判、違法移民の強制送還の強化や、難民が域内で最初に到着した国で保護申請することを義務づけたEUのダブリン規則の見直しを強く求める 。

2018/6/5    イタリアの混迷 

その後、2019年8月に予想通り 連立が崩壊し、同盟が離脱した。

連立政権を構成する「同盟」党首のサルビーニ副首相が早期の解散総選挙を要求し、内閣不信任案を議会上院に提出した
これを受け、
コンテ首相は辞任の意向を伝えた。

同盟のサルビーニ党首右派ポピュリスト政権の誕生の可能性が生まれたが、五つ星運動と中道左派の民主党はサルビーニ政権誕生阻止することで共闘した。

ライバル関係
にあったこの2党、民主党出身のレンツィ元首相が2019年9月に旗揚げした テクノクラート、民主党内の反レンツィ派が2017年に結党した「自由と平等」を加え、連立組み換えに成功、第二次コンテ内閣が生まれた。

 

イタリアの連立政権の一角を成す少数政党「イタリア・ ヴィーヴァ」を率いるレンツィ元首相は、新型コロナウイルスによる経済悪化からの復興予算を巡って政府を批判してきた。

レンツィ元首相は2021年1月13日、コンテ首相がイタリアの問題に十分対処できていないと批判、その指示を受けた同党所属の2人の閣僚が辞任し、同党は連立を離脱した。

下院では連立与党は依然として過半を占めるが、上院では定数321のうち、18票減って148議席となり、過半数(161)を割り込んだ。

コンテ首相は議会で信任投票を求めた。1月18日の下院の信任投票では、賛成321、反対259で新任された。1月19日の上院の信任投票では賛成156、反対140の僅差で乗り切ったものの、絶対多数(161)には届かなかった。

コンテ首相は1月26日にセルジオ・マッタレッラ大統領に辞表を提出した。コンテ氏は新たな連立政権の樹立を目指した。

しかし、2度にわたる連立協議を通じて第3次内閣の発足を目指したが、各党派の合意取り付けに至らなかった。

 

 

合従連衡の経緯             与党〇、野党X
  第一次
コンテ内閣
第二次
コンテ内閣

2021/1

ドラギ内閣
五つ星運動
同盟

 離脱

民主党 民主党  分離
イタリア・ヴィーヴァ

 離脱X

フォルツァ・イタリア
混合会派
自由と平等
イタリアの同胞(極右)

 

 


2021/2/16     ファイザーワクチン「5回」問題

厚労省は2月9日、ファイザーのワクチンについて、1つの小瓶から6回分の接種ができることとなっていたが、国内の注射器では5回しかできないことを明らかにした。

現在、1つの容器で6回の接種を前提にしているため、計画されている供給量で接種を受けられる人数は2割近く減ると騒ぎになっている。

実は、ファイザーとの基本合意では1瓶5回を前提に6000万人分、1億2000万回分の供給を受けるとなっていた。

 

製品は、小瓶に1.8 mlの塩化ナトリウムを加えて希釈し、注射剤2.25 mlが得られる。
各患者に与える注射は0.3mlとなっている。

計算上では2.25 ml ÷ 0.3ml で、7回の投与すら可能である。

しかし、ファイザーは当初、1つの容器で5回の接種を前提にしていた。 下記の通り、注射器によって0.3ml以上使わざるを得ないものがあるため、安全を見て、全体をそれに合わせたと思われる。

 

日本で一般に使われている注射器は注射器の端に薬が残る構造になっている。残った分は捨てざるを得ず、1回で0.3ml 以上が必要となり、1瓶5回が正しい。

欧米ではその部分にゴムを詰め、薬が残らない Loaded 注射器が流通している。 日本でも一部使われている。

一般の注射器

Loaded type

この場合、1回0.3mlでよいため、1瓶で5回使っても、まだ余ることとなる。

ワクチンが欧米で投与され始め、貴重なワクチンを捨てることになると、このことが話題になった。

この状況を勘案して、1瓶6回に変更したと思われる。但し、欧米でも全てが Loaded注射器を使っているのではない。

欧州連合(EU)の機関である欧州医薬品庁(EMA)は、1月8日、ファイザー製ワクチンの使用のためのプロトコルを更新したが、この問題について下記のように述べている。

このワクチンの小瓶には、6回分の投与に十分な量が入っていることを認める(1瓶で6回使うことが公式に許可)。
ただし、そのためには、注射器や針の部分にワクチンが残る量が少ないものを使う必要がある。
標準的な注射器と針を使うと、6回分には足りない場合がある。

厚労省とPfizerは2021年1月20日、新型コロナウイルスワクチンについて、日本への供給契約を正式締結したと発表した。2021年に1億4400万回分(1人2回接種の場合7200万人分)が供給される。

しかし、基本合意での1瓶5回を前提にした6000万人分を1瓶6回に置き直しただけであり、供給される量は基本合意と同じである。

厚労省は今になって、国内で用意されている注射器では5回しかできないとするが、上記の事情は知っている筈である(知らなければおかしい)。また、日本にLoaded注射器が十分にないことも知っている筈である。

基本合意時の6000万人分を7200万人分に増やして発表すべきでなかった。 但し、Loaded型注射器なら1瓶で6回使用できるとすればよかった。

なお、ニプロでは増産を検討している。


付記

このタイプの注射器を生産している世界最大の注射器メーカーBecton Dickinsonは、このような注射器は「ニッチな製品」であり、需要は「伝統的に最小限にとどまっている」 ため、「このような製品の生産能力は限られており、生産能力を高めるには時間がかかる」としている。

 

ーーー

これまでの注射器ではワクチンに限らず、貴重な医薬品を必ず無駄にすることになる。

素人の疑問として、ローデッドタイプが発明された後、なぜ、早急に切り替えなかったのだろうか。既存のものに、薬を無駄にすることよりも大きな利点があるのだろうか。



 

出光興産は2月16日、石油精製を手掛ける子会社、東亜石油に対する株式公開買い付け(TOB)が成立しなかったと発表した。

TOBに応募した株式数は約47万株で、成立の下限とした約205万株を大幅に下回った。

 

東亜石油は、出光興産と経営統合した旧昭和シェル石油系で、川崎市で製油所を運営している。(経緯は下記)

出光興産は2020年12月15日、子会社の東亜石油にTOBを実施すると発表した。
買い付け期間は12月16日から21年2月2日まで、買い付け価格は1株2,450円。最大約150億円を投じて、残り全株の取得、完全子会社化を目指した。

出光興産は東亜石油の株を50.12%保有している。TOBの下限は205.9万株(これにより出光興産は2/3以上を確保)とし、これ以下の場合はTOBは成立しない。

発行済み株数 12,443,500  
うち自己株式 3,591 (12,439,909)
出光保有 6,234,425 50.12%
残り 6,205,484 49.88%
買付下限 2,058,875 16.55% (66.67%)

TOBが成立した場合、東亜石油は2021年4月26日に上場廃止となる。

出光興産は東亜石油を完全子会社化することで、グループの一体経営を図り、経営の効率化及び最適化、意思決定の柔軟化及び迅速化を実現し、国内石油製品需要の減少、脱炭素社会に向けた動きへ対応していくとしていた。

 

出光興産は2021年1月29日、東亜石油株のTOB期限を当初の2月2日から2月15日まで延長したと発表した。
東亜石油が2021年3月期業績予想の修正を発表し、買付届出書の記載を変更する必要が生じたためとしている。

出光興産の2,450円でのTOB発表直前の12月15日の東亜石油株価終値は1,997円であったが、その後、株価は上昇し、TOB価格を上回った。

米ファンドのCornwall Capital Management LP が東亜株を買い増しており、2021年1月28日の関東財務局への届出書によると、12月11日が226万株であったのが、その後買い増しを続け、1月28日には318万株になっている。

TOB最終日の2月15日の終値は3,010円で、TOB価格をはるかに上回る。

結局、TOBに応募したのは470,668株にとどまり、下限の205.9万株には達せず、不成立となった。

出光興産ではこれを受け、TOB価格については、公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置を実施の上、決定したとし、不成立に終わったことを踏まえて、今後は、従来と同様、グループの企業価値向上を目指すとしている。

ーーー

出光興産は2016年12月19日、公取委の承認を受け、シェルから昭和シェル株式 31.3% を158,978百万円(1株当たり1,350円)で取得した。

2016/12/20   出光興産、シェルから昭和シェル株式取得

出光興産は2018年7月10日、創業家(持株28.48%)のうちの、長男の出光正和氏(同1.16%)と同氏が社長を務める資産管理会社の日章興産(同13.04%)との間で統合等に関する合意書を締結したと発表した。

出光興産は同日、昭和シェル石油との間で、2019年4月に株式交換を通じて経営統合する合意書を締結した。

出光興産と昭和シェル石油は12月18日、それぞれ臨時株主総会を開き、経営統合について株主から承認を得た。2019年4月の統合が最終決定した。

2018/7/11 出光と昭和シェル、来年4月に統合 
 

各社の製油所とトッパー処理能力は下記の通り。(千bbl/d)

 

トッパー処理能力

当初 高度化法

*

昭和四日市石油 四日市 205 255 255
西部石油 山口 120 120 120
東亜石油 京浜

70

70 65
昭和シェル 扇町 120 0 0
昭和シェル合計 515 445 440
出光興産 北海道 140 160 150
千葉 220 220 190
愛知 160 175 160
徳山 120 0  
出光興産 合計 640 555 500

   * 残油処理装置の装備率の改善後能力

 


2021/2/19 昭和電工の2020年12月決算 

昭和電工は日立化成株式に対する公開買付けを行な い、2020年4月28日に87.61%を取得、同社を連結子会社とし、6月23日に完全子会社化した。2020年10月1日付で「昭和電工マテリアルズ」に商号変更した。決算では、2020年6月末を「みなし取得日」として計算している。

2019/12/25 昭和電工、日立化成にTOB 

2020年12月決算では、日立化成の買収で売上高は増加したが、黒鉛電極の無機部門の営業損益が前年比で1,216億円の減益となり、株主帰属損益は前年比1,494億円悪化の763億円の赤字となった。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 株主帰属
損益

配当

中間 期末
17/12 7,804 777 639 -133 374 0 5.0
18/12 9,921 1,800 1,788 -333 1,115 2.0 10.0
19/12 9,065 1,208 1,193 -214 731 5.0 8.0
20/12 9,737 -194 -440 -243 -763 0 6.5
増減 672 -1,402 -1,633 -29 -1,494

-6.5

21/12予 12,800 450 350   -140 0 6.5
                    株式併合のため、実際の配当は10倍

昭和電工マテリアルズの売上高は2020年(半年)が3,027億円、2021年予想は6,100億円。

営業損益

  17/12 18/12 19/12 20/12 増減 増減理由 20/12予
石油化学 334 203 172 49 -123

受払差、タイムラグ -45

115
化学品 165 174 137 135 -2   155
エレクトロニクス 219 124 49 91 43   125
無機 71 1,324 893 -323 -1,216 黒鉛電極低価法 -172 30
SDKマテリアルズ -63 -63

ノレン等償却 -280

100
アルミニウム 67 49 17 4 -13   35
その他 6 29 18 12 -6

新型コロナウイルス関連合計として全社で -186

10
全社 -84 -104 -78 -100 -22 -120
合計 778 1,800 1,208 -194 -1,402   450

なお、昭和電工マテリアルズの営業損益は-63億円だが、のれん償却と棚卸資産調整を除くと、実質ベースでは218億円程度の益である。

無機部門の中心は黒鉛電極である。

この部門は従来赤字を続けていたが、2017年度に若干の黒字となり、2018〜2019年度は一転大幅黒字となった。

昭和電工は2016年10月に、ドイツのSGL Carnbon GmbH より黒鉛電極製造の子会社 SGL GE Holding GmbHを買収すると発表した。 ドイツ、オーストリア、スペイン、アメリカ(2ヵ所)、マレーシアの6カ所に製造拠点を持つ。米司法省の指示で米国工場を東海カーボンに129億円で売却した。
昭和電工は再編後に生産体制見直しや管理部門の機能集約などで60億円以上のコスト削減が可能と試算し、2019年での事業黒字化を目指した。

直後に状況が一転した。中国で地条鋼という違法鉄鋼が禁止となり、安価で出回っていた鉄鋼が不足し、代替として鉄スクラップから鉄鋼を生産する電炉での生産が急増、黒鉛電極の需要が急増、価格が急騰した。

これが2018年12月期に売上高、営業利益が急増した理由である。

しかし、中国では環境規制に対応した大手企業が黒鉛電極を増産、原料のニードルコークスの需給も2019年から緩和し、価格は下落した。

昭和電工でも2019年下半期より顧客である電炉鋼メーカーにおける黒鉛電極の在庫調整が継続し、特に景気減速が目立つ欧州市場においては稼働率の低下が生じた。

同社は2020年2月5日、電気炉製鋼用の黒鉛電極の世界生産能力を削減すると発表した。

2020/2/15  昭和電工、黒鉛電極の生産能力を削減

今回、黒鉛電極の低価法による簿価切り下げで172億円の営業損失を計上、他に特別損失として、黒鉛電極のドイツの生産拠点の閉鎖で51億円の損失を計上した。

電炉鋼メーカーにおける黒鉛電極の在庫調整が長引き、特に景気減速が目立つ欧州市場においては稼働率の低下が生じており、ドイツ・マイティンゲンにある生産拠点の閉鎖について労使協議で合意に達した。全体の生産能力は、年産4万t 減の21万tになる。

昭和電工がSGL GE を買収した2016年10月時点では合理化による黒字化を目指しており、その後の好況は「想定外のバブル」である。現状が本来の姿である。
同社もそれを自覚しており、バブル利益を利用して日立化成を買収し、今後の体制を整えた。

ーーー

昭和電工マテリアルズ(旧称 日立化成)の統合関連費用として389億円を計上した。

営業費用として弁護士費用や統合プロセス関連費用で82億円、営業外費用として資金調達、登録免許税等で212億円、非支配株主への優先株配当で88億円等である。

昭和電工は買収資金9700億円を次により手当てした。

昭電 みずほ銀行からの融資 2,950億円
HCホールディング みずほ銀行、日本政策投資銀行にA種優先株を発行 2,750億円
みずほ銀行からノンリコースローン 4,000億円
合計   9,700億円

この優先株に対し、88億円の配当をおこなったもの。
但し、これは少数株主持分の利益のなかから控除されるため、株主帰属損益には影響しない。

日立化成買収によるのれん代(買収額と買収先の純資産の差額)の償却が長期的な負担となる。

(億円) 総額 償却期間

償却額

2020年 2021年
無形
固定資産 
顧客関連 1,549 20年 39 77
技術関連 571 7年 41 82
その他 39 20年 1 2
合計 2,159   81 161
のれん 3,651 20年 91 183
小計(営業費用) 5,810   172 344
投資有価証券(営業外) 449 20年 11 22
合計 6,259   183 366


本年度には半年分として営業内で172億円、営業外で11億円、計183億円を計上した。2021年予想には366億円が含まれる。

このほか、棚卸資産については時価評価で受け入れ、通常は数年間で償却する。 

昭電は2020年度に棚卸資産ステップアップ調整として109億円を計上した。2021年予想では、「ステップアップ調整は一過性のため解消」としており、2020年度で一括償却したとみられる。

 

のれん等の償却の年間366億円のうち、82億円でも7年、残り284億円は20年負担が続く。

日立化成の当初の簿価に対し、6千億円も上乗せして買収したためであり、シナジー効果でよほど増益を図らないと苦しいことになる。



2021/2/20 コロナワクチンの特殊注射器、日本が韓国に供給要請? 

厚労省は2月9日、ファイザーのワクチンについて、1つの小瓶から6回分の接種ができることとなっていたが、国内の注射器では5回しかできないことを明らかにした。

日本で一般に使われている注射器は注射器の端に薬が残る構造になっている。残った分は捨てざるを得ず、1回で0.3ml 以上が必要となり、1瓶5回が正しい。

欧米ではその部分にゴムを詰め、薬が残らない Loaded 注射器が流通している。 日本でも一部使われているが、非常に少ない。

一般の注射器

Loaded type

2021/2/16     ファイザーワクチン「5回」問題 

日本ではニプロがLoadedタイプ注射器をタイで製造しているが、 製造能力は月50万本である。同社では4〜5カ月かけてタイの工場の設備を増強し、製造能力を 数百万本に引き上げるが、増産分は9〜10月ごろに国内に届く見通し。 
世界最大の注射器メーカー米国のBecton Dickinsonは、このような注射器は「ニッチな製品」であり、需要は「伝統的に最小限にとどまっている」ため、「このような製品の生産能力は限られており、生産能力を高めるには時間がかかる」としている。

 

この特殊注射器が韓国では中小企業の3社で大量につくられており、日本から約8000万個の購入要請があったと報じられている。Poonglim Pharmatechは、世界20カ国から2億6千万個以上の注射器購入の要請を受けたと伝えられた。日本から約8000万個の購入要請があったとされる。


2021/2/22    日本での新型コロナウイルスワクチンの開発状況 

厚労省は2020年6月、新型コロナウイルスワクチンの国内における早期供給を促すため、ワクチン生産体制等緊急整備事業の公募をおこない、6社に対して総額最大約900億円の助成を決め、複数のワクチンを国内で生産する体制を整えるとした。

2020/8/23 新型コロナウイルスワクチンの日本における生産体制の構築

その時点での情報をもとに、現状をまとめた。


現時点では国内ワクチンの承認がいつになるか予想できない。

ワクチンのPhase V治験では、多数の人を対象に、ワクチン接種者と偽薬接種者での発症者比率を比較するが、日本では感染者が少ないため、偽薬接種者の発症率も低くなり、ワクチンの効果が判定できない。

接種が始まったPfizerのワクチンは、米国での承認をもとにした特例承認によるものである。

特例承認は、@疾病のまん延防止等のために緊急の使用が必要、A当該医薬品の使用以外に適切な方法がない、B海外(日本と同水準の国)で販売等が認められている、という要件を満たすもので、法律では、
対象品目は「新型インフルエンザのワクチンと新型コロナウイルス感染症にかかる医薬品」で、
「日本と同水準の国」は「米国、英国、カナダ、ドイツ、フランス」のみである。
 
注 「新型コロナウイルス感染症にかかる医薬品」はレムデシビルの承認申請を見越して追加された。 当初は「英国、カナダ、ドイツ、フランス」だけだったが「米国」を追加した。

中国やロシアで承認されても、日本では特例承認の対象にはならない。

特例承認されたワクチンであれば、国内での製造承認は比較的容易に得られると思われる。

既報の通り、世界保健機関は新型コロナウイルスワクチンの生産量を増やすため、生産能力に余裕がある製薬会社は他社のワクチンを作るよう呼びかけており、フランスは国を挙げて他国のワクチンの国内生産に注力しているが、日本では動きが遅い。

2021/1/8 新型コロナワクチンの委託生産 広がる

 

    厚労省助成金
            2020/8
 

 

 

 

 

海外

ワクチン

武田薬品工業 約301億円 Novavax(下表D)が開発中のワクチンの製造技術移転、生産設備の整備、スケールアップ
光工場の新型インフルエンザ製造設備を転用、年250百万回分以上を生産

別途、Moderna (下表E)ワクチンの日本でのPhase T/U 臨床試験開始
2021年前半より5000万回の接種分を輸入し、国内供給 

 付記 2021/3/5  Modernaワクチンについて厚生労働省に製造販売承認を申請

付記

デング熱ワクチン候補の製造委託先 IDT Biologik の設備を3か月間 J&Jのワクチン製造に供与

英 AstraZeneca
下表C
約162億円 日本に1億2千万回分供給で最終合意
25%分は輸入し、75%の9千万回分を日本で委託生産
 
原液

@ 輸入、A JCRファーマに製造委託

バイアル充填 第一三共バイオテック KMバイオロジクス
保管・流通 第一三共 Meiji Seika ファルマ

2021/1/30 アストラゼネカ、ワクチンを日本で製造委託 

アストラゼネカ梶@2021/2/5 日本における製造販売承認を厚生労働省に申請

付記

第一三共バイオテックは2021年3月11日、製剤化を開始した。承認まで同社で保管する。国内配送はMeiji Seika ファルマが担当する。

JCRファーマ   AstraZenecaワクチン製造受託

希少疾患を対象としたバイオ医薬品の開発・製造
細胞培養の技術に強く、原液製造用の大型タンクなどの培養設備保有

KMバイオロジクス 約 61億円 明治ホールディングスの連結子会社 
AstraZeneca 原液製造に係る既存設備の改造、精製・ユーティリティ設備の整備、原材料保管・品質管理作業に係る設備の新設等
(原液製造はJCRファーマに決まった。)
 

 

 

国産

ワクチン

KMバイオロジクス   独自ワクチン  前臨床段階 2021年3月21日 第I/II相治験開始 
国立感染症研究所、東京大学医科学研究所、医薬基盤・健康・栄養研究所との協業による不活化ワクチンの開発
2020年度内の国内臨床試験開始を目標
アンジェス
 下表@
約 94億円 Phase U/V段階

ワクチンの実生産(大規模生産)体制の早期構築を 図るための事業
2020/6/26 アンジェスのコロナワクチン、大阪市大病院で治験へ

タカラバイオがその製造を担い、AGC Biologics社が中間体の分担製造、Cytivaが精製用資材の優先的な供給で、更にシオノギファーマが中間体の分担製造で協力体制に加わった。

塩野義製薬
 下表B
約223億円 組換えタンパクワクチン感染研/UMNフ ァーマ/塩野PhaseT/ U段階

遺伝子組換え技術を用いて培養細胞よりコロナウイルスのタンパク質抗原を製造しコロナウイルスタンパク質抗原を人に投与するための注射剤

第一三共 約 60億円 メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンDS-5670  前臨床段階 
  2021年3月22日、国内で152人を対象に初期段階の治験開始
前臨床段階 

第一三共バイオテックの工場での生産体制整備

IDファーマ/感染   アイロムグループのIDファーマ  前臨床段階
コロナウイルスの遺伝情報を
持ったセンダイウイルス(仙台の東北大で発見)投与するワクチ人体の中コロナウイルスのタンパク質(抗原)が合成される

GMPに準拠したベクター製造施設・細胞培養加工施設(CPC)を保有

海外
生産
Medicago
 下表A
  田辺三菱製薬のカナダ子会社

2020/7/17 田辺三菱製薬、カナダ子会社の新型コロナウイルスワクチンの第1相臨床試験開始を発表

  合計 約901億円  

 

WHO リスト

  Developer/manufacturer Platform Type doses Timing
 
days
Route Phase 承認
@ Osaka University/ AnGes/ Takara Bio DNA AG0301-COVID19 2 0, 14 IM U/V  
A Medicago(カナダ 田辺三菱製薬) VLP Coronavirus-Like Particle COVID-19 (CoVLP) 2 0, 21 IM U/V  
B Shionogi Protein subunit Recombinant protein vaccine S-268019 (using Baculovirus expression vector system) 2 2,21 IM T/U  
C AstraZeneca + University of Oxford Non-Replicating Viral Vector ChAdOx1-S- (AZD1222) (Covishield) 1-2 0, 28  IM V

UK  2020/12/30
EU   2021/1/29
WHO 2021/2/15

D Novavax(米) Protein Subunit SARS-CoV-2 rS/Matrix M1-Adjuvant (Full length recombinant SARS CoV-2 glycoprotein nanoparticle vaccine adjuvanted with Matrix M) 2 0, 21 IM

 

V  
E Moderna/NIAID米国立アレルギー感染症研究所) RNA mRNA -1273 2 0, 28 IM V

FDA 2020/12/17
EU 2021/1/6

F  Pfizer/BioNTech 
+ Fosun Pharma 
上海復星医薬
RNA BNT162 (3 LNP-mRNAs ) 2 0, 28 IM V

UK 2020/12/2
FDA 2020/12/11
EU 2020/12/21
WHO 2020/12/31
日本 2020/2/14

 

 

 


2021/2/23   DIC、BASFの顔料事業子会社 BASF Colors & Effects の買収に前進 

DICは2月19日に発表した2020年12月期決算で事業整理損として特別損失8,762百万円を計上した。

DICは2019年8月29日、BASF顔料事業であるBASF Colors & Effectsに関する株式及び資産の取得決定したと発表した が、独禁法当局の審査に時間がかかっていた。
事業整理損は
本件での問題解消措置として実施する事業売却に関するもので、これにより日本とEUの承認を得た。

現在、米FTCの承認手続きを行なっている。

付記 

2021年6月30日をもって全ての手続きが完了したため、両社間でクロージングに合意、資産および株式の買収を完了した。
 

ーーー

DICは2019年8月29日、BASF顔料事業であるBASF Colors & Effectsに関する株式及び資産の取得決定したと発表した 。

DICは高成長高付加価値なスペシャリティ領域ディスプレイ・化粧品・自動車など)における顔料業界リーディングカンパニー目指し、機能性顔料の拡大を進めてた。

同社はそのうち有機顔料エフェクト顔料アルミ顔料で世界有数の会社だが、BASFは欧州を中心にグローバルに拠点を有し、高級顔料エフェクト顔料(化粧品向け)及び特殊無機顔料において世界有数の会社で、両社の製品ポートフォリオは重複が少なく製品補完性が極めて高い。

買収により、市場での評価が高い高機能製品をポートフォリオに取り込み、機能性顔料事業を拡大する。

取得価額は、対象事業の企業価値(1,150百万ユーロ)から2018時点の現預金・借入金等の残高を調整した 985百万ユーロ1,162億円である。

BASFの顔料事業は、全世界で約2,600人の従業員を有しており、2018年の売上高は約10億ユーロであった。

 

当初、取引完了を2020年末までとしていたが、独禁法審査で時間がかかった。昨年10月に「2021年第1四半期中」と変更した。

日本の公取委は両社の事業の独禁法上の問題点を分析し、Pigment Red 179、Pigment Violet 29、Pigment Red 202が問題であると指摘した。

 

公取委の指摘を受け、DICは米国子会社であるSun Chemical CorporationBushy Park, South Carolina工場で生産されている高級顔料に関わる事業を売却する方針を決定した。

この工場は高級顔料の生産工場として自動車塗料向け等の顔料等を生産しているが、BASF Colors & Effectsが保有する顔料事業の取得によりDICの高級顔料は大きく拡充される見込みであるため事業戦略上の影響は軽微としている。

実は、この工場は2003年に当時の大日本インキ化学がSun Chemical を通じてBayer子会社のBayer Polymerから買収したものである。

この時点では、米FTCの指示を受け、Sun Chemical は同社のぺリレン事業をスイスのCiba Specialty Chemicals に売却している。
 

公取委は、DICのこの問題解消措置を前提にすれば競争を実質的に制限することにならないと認め、2000年12月24日にこれを承認した。
欧州委員会も、日本の公取委と同様の懸念を表明していたが、この問題解消措置を受け、2020年12月7日に承認した。
 

なお、米連邦取引委員会からの承認を得るための作業を継続中 で、場合により2021年第1四半期中」から遅れる可能性がある。

 



2021/2/26 トヨタの未来都市「Woven City」が着工 

トヨタ自動車と、トヨタグループでソフトウェアを中心とした様々なモビリティの開発を担うウーブン・プラネット・ホールディングス鰍ヘ2月23日、「Woven City」の建設を進めていくトヨタ自動車東富士工場跡地に隣接する旧車両ヤードにて地鎮祭を実施した。

地鎮祭を2月23日に実施したのは、富士山223のゴロ合わせで、豊田章男社長は「富士山の裾野に未来の新しい街をつくるとの思いで決めた」としている。

自動運転や人工知能(AI)などの先端技術を住民が実際に使って暮らし、実用化につなげる構想で、2025年までに入居が始まる予定。

トヨタの豊田章男社長は次のように述べた。

『ヒト中心の街』、『実証実験の街』、『未完成の街』が「Woven City」のブレない軸です。多様性をもった人々が幸せに暮らすことができる未来を創造することに挑戦します。

「Woven City」は、ヒト中心の街づくりの実証プロジェクトです。
トヨタが自動車会社からモビリティカンパニーへの変革を目指す中、プロジェクトでは自動運転、パーソナルモビリティ、ロボット、人工知能(AI)技術などをはじめとする様々な領域の新技術をリアルな場で実証していきます。

「Woven City」では、地上に自動運転モビリティ専用、歩行者専用、歩行者とパーソナルモビリティが共存する3本の道を網の目のように織り込み、地下にはモノの移動用の道を1本つくります。

高齢者、子育て世代の家族、発明家の方々を中心に、初めは360人程度、将来的にはトヨタの従業員を含む2,000人以上の住民が暮らし、社会課題の解決に向けた発明がタイムリーに生み出せる環境を目指してまいります。

 

トヨタは2020年1月7日、ラスベガスで開催されている世界最大規模のエレクトロニクス見本市「CES 2020」において、静岡県裾野市に「Woven City」と呼ばれる実験都市を開発するプロジェクト「コネクティッド・シティ」を発表した。

同プロジェクトの目的は、ロボット・AI・自動運転・MaaS・パーソナルモビリティ・スマートホームといった先端技術を人々のリアルな生活環境の中に導入・検証出来る実験都市を新たに作り上げることで、NTTをはじめとするパートナー企業や研究者と連携しながら、技術やサービスの開発・実証のサイクルを素早く繰り返し、人々の暮らしを支えるあらゆるモノやサービスが情報で繋がることで生まれる、新たな価値やビジネスモデルを見出す。

2020年末に閉鎖するトヨタ自動車東富士工場の跡地の175エーカーで街づくりを進めていく。

都市設計を担当するのは、デンマーク出身の建築家Bjarke Ingels。

街の建物は主にカーボンニュートラルな木材で建設、屋根には太陽光発電パネルを設置するなど、環境との調和やサステイナビリティを前提とした街づくりが基本。
住民は、室内用ロボットなどの新技術を検証するほか、センサーのデータを活用するAIで健康状態をチェックするなど、日々の暮らしの中に先端技術を取り入れる。

Woven City」は、街を通る3種類の道が網の目のように織り込まれたデザインに由来する。

1:スピードが速い車両専用の道として、「e-Palette」など、完全自動運転かつゼロエミッションのモビリティのみが走行する道
2:歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが共存するプロムナードのような道
3:歩行者専用の公園内歩道のような道

豊田社長はまた、トヨタ自動車のルーツとなる豊田自動織機の創業者・豊田佐吉が母を楽にさせたいという思いで自動織機を作ったことから、「未来に向けた実証実験都市『Woven』と名付けたのも、そうした『他の誰かのために』という想いを、未来をつくっていくこれからも忘れずにいたいと考えたからです」と語っている。

ーーー

ウーブン・プラネット・ホールディングス鰍ヘ2021年1月に、自動運転関連ソフトウェアの先行開発を行うトヨタ自動車の子会社トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメントを拡大したもので、持株会社、事業会社、投資ファンドから構成される。

  @ 持株会社 A事業会社 B投資ファンド
社名 Woven Planet Holdings Woven Core Woven Alpha Woven Capital
事業内容 グループ全体に対する戦略的意思決定、シェアドサービス提供、新事業開発 等 自動運転技術の開発、実装、市場導入・普及 @コネクティッドシティーのWoven City、
A独自の開発プラットフォームのArene、
B自動運転向け自動地図作成のAutomated Mapping Platform
などの新領域における事業拡大機会の探索、革新的なプロジェクトの立ち上げ、推進
運用総額8億ドルのグローバル投資ファンド。
自動運転モビリティーや人工知能、機械学習、データアナリティクス、コネクティビティー、スマートシティーなどの領域において、革新的なテクノロジーやビジネスモデルを開発している成長段階の企業に投資

 


2021/2/27 三菱商事、ベトナムの石炭火力「ビンタン3」撤退へ 

三菱商事がベトナムで計画している石炭火力発電プロジェクト「Vinh Tan 3」から撤退する方針を固めたことが報じられている。
地球温暖化対策で、石炭火力発電への世界的な批判が強まることや、それに伴って融資など資金対応が難しくなっていることに対応した。同社が計画中の石炭火力から撤退するのは初。

小泉進次郎環境相が反対を表明し、機関投資家大手18機関が撤退を求めたVung Ang 2石化火力発電事業については、事業継続の意向である。

Vinh Tan 3 計画

計画:1,980MWの石炭火力発電(超々臨界圧)

立地:ビントゥアン省

隣接して既にビンタン1、2、4発電所が稼働中。

事業者:Vinh Tan 3 Energy Joint Stock Company

出資者:

One Energy 49% 
ベトナムのPACIFIC Corporation 22%
ベトナム電力公社(EVN) 29%
合計 100%


* One Energy 出資者

  当初 2019/12 2020/10
三菱商事 40%   40%
中国電力 20%   20%
香港CLP 40% 離脱
KEPCO   40%
合計 100%   100%

総事業費:約20億米ドル

設計・調達・建設担当は中国の哈爾浜電気

予定:2020年建設開始、2024年稼働開始
融資団には、中国の国家開発銀行を中心に、中国工商銀行(ICBC)、中国建設銀行、中国銀行、交通銀行、英 Standard Chartered Bank、HSBCが加わる予定だった。

しかし、Standard Chartered Bankは2019年12月17日、石炭ポリシーを強化し、ビンタン3とブンアン2の双方から撤退した。そして2020年1月に、HSBCもすでに撤退していたことがわかった。HSBCは同発電所のフィナンシャル・アドバイザーに選定されていた。

ーーー

三菱商事が参加するOne Energy はベトナムのVung Ang 2 石炭火力発電事業にも参加している。

計画:1,200MW(600MW×2基)の石炭火力発電(超々臨界圧)

立地:ハティン省ブンアン経済区内(既設のブンアン1石炭火力発電所の隣接地)

事業者:Vung Ang 2 Thermal Power Company

出資者:OneEnergy Ltd.(三菱商事 40% / 中国電力 20% / KEPCO 40%)が100%

  当初 2011/9 2012 2018/4
OneEnergy 30% 30% 48.45% 100%
現地 LILAMA 25% 撤退
Ree 冷蔵電気工業 23% 48% 51.55%
その他 22% 22%

 

総事業費:約22億米ドル

融資者:国際協力銀行と民間金融機関

設計・調達・建設(EPC)契約者:(当初)Energy China GPEC(中国)、GE(米)

             両社が撤退し、韓国勢が引き受けるとする報道がある。

予定:2020年建設開始、2024年稼働開始

小泉進次郎環境相は2020年1月21日、三菱商事が主導するベトナムでの石炭火力発電所の建設計画について再検討を訴えた。 計画について「理解が得られるものではなく、つくるのはおかしい」と異例の反対意見を表明した。日本以外の国の企業が建設を担当し、政府の輸出要件に反することを理由に挙げた。

「日本がお金を出しているのに、結果的にプラントを作るのは中国やアメリカの企業だ。こういう実態はおかしい」と述べた。

2020/2/6 小泉環境相、ベトナムへの石炭火力建設計画に反対 

機関投資家大手18機関は2020年10月21日、Vung Ang 2 石炭火力発電事業に投融資等で関与している日本と韓国の企業・金融機関に対し、気候変動を悪化させるとして同事業から撤退するよう求める共同書簡を送付した。

2020/12/1 投資家連合、三菱商事などのベトナム石炭火力計画からの撤退を要求

三菱商事は2018年10月に「ESGデータブック」の改訂版を発表し、新規の石炭火力発電の開発を行わない方針を発表しているが、すでに開発に着手した案件(本件を含む)は例外としている。 

国際協力銀行(JBIC)は、2020年12月28日、Vung Ang II Thermal Power との間で、ブンアン2石炭火力発電事業を対象として、融資金額約636百万米ドル(JBIC分)を限度とするプロジェクトファイナンスによる貸付契約を締結した。

 

 

付記

 

 三井物産の安永竜夫社長は2020年10月9日のロイターとのインタビューで、インドネシア、中国、マレーシア、モロッコの4カ国に持つ石炭火力発電事業を2030年までにゼロにする考えを示した。各国の事情を考慮しつつ「売却のタイミングを見ていく」とした。


 

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