ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2021/4/15 日立製作所、米GlobalLogicを買収、日立金属を売却  

日立製作所は3月31日、米GlobalLogicを総額95億ドルで買収すると発表し た。(詳細後記)


一方で、日立製作所は約53%の株式を保有する上場子会社の日立金属を売却すると報道されていたが、米投資ファンドのBain Capital と日本産業パートナーズ、ジャパンインダストリアルソリューションズのコンソーシアムが独占交渉権を得たことが分かった。

昨年8月から交渉されてきたもので、日立は持株全てを売却する。この場合、TOBとなる。

証券取引所内外、どちらの取引であっても、買付け後の株式等所有割合が1/3を超える場合はTOBによる実施が義務付けられている。

日立は全株売却を考えているため、日立化成の場合と同様、上限なしのTOBとなる。

日立金属の事業は下記の通り。電線事業は2013年7月に日立電線を統合したもの。

日立金属については、少し古いが、右を参照  2016/1/28  日立金属、米国の医療機器用部品会社買収 


日立製作所は「選択と集中」を旗印に、成長分野と位置づけるエネルギーなどのインフラやIoT(モノのインターネット)事業に経営資源を集中させる方針である。

非中核分野を次々に売却しており、2009年に22社あった上場子会社は2019年には日立化成、日立金属、日立建機、日立ハイテクノロジーズ (2020/2 日立ハイテクに改称)の4社に減った。

子会社 時期 持株比率  
日立物流 2016/5/19  59.01%→30.01% 株式の29%をSGホールディングスへ譲渡
日立キャピタル 2016/10     60.61%→33.40% 株式の23.01%を三菱UFJフィナンシャル、4.20%を三菱UFJリースに譲渡
日立国際電気 2017/1   4割超→ゼロ グループで保有する4割超をKKRに売却(配当金を合わせ752億円で)
KKRはTOBを実施、傘下のHKホールディングスの完全子会社とし、2018年に工機ホールディングスと改称。

KKRは日立国際電気の半導体製造装置事業を分離、2018/6にKokusai Electricを設立したが、
2019/7 これをApplied Materialsに22億ドルで売却した。→中国の承認得られず、解約

日立工機
(電動工具)
2017 
  
40.25%→ゼロ
 
KKRに売却(KKRがTOB)
日立アーバンインベストメントも 10.90%→ゼロ
クラリオン 2018/10 6割超→ゼロ 仏自動車部品大手フォルシアに譲渡、売却価額は899億円 
日立オートモティブ
システムズ
2019/10 66.6% ホンダのケーヒン、ショーワ、日信工業と統合
ホンダが33.4%

2020年には上場4子会社のうちの日立化成株式を51.29%全てを 昭和電工に譲渡した。

2019/12/2     日立製作所、子会社日立化成を昭和電工に売却へ
2019/12/25 昭和電工、日立化成にTOB 

今回の日立金属の売却が実施されると、以前の御三家が全て売却されることとなる。

これにより日立製作所は以前の重工業企業から変身する。

 

日立製作所は2021年1月31日、上場子会社である日立ハイテクの完全子会社化に向けてTOB(@8000円、総額5311億円)を実施すると発表した。

日立ハイテクのグローバルNo.1)を中核事業として育成、ヘルスケア・アナリティクス分野に進出する。

日立製作所は3月31日、米GlobalLogicを総額95億ドルで買収すると発表した。

GlobalLogicはカリフォルニア州に本社を置くシステム開発企業で、日立が「Chip-to-Cloud」と呼ぶ、データを業務の現場からクラウドまで連携させながら活用するためのシステム開発を得意とする。

日立は本買収を通じてGlobalLogic先進的なデジタルンジニアリングのケイパビリティ大手テック企業をはじめとする強固な顧客基盤獲得し、
日立のデジタルインフラ/データマネジメント/デジタルソリューション事業を担う米国子会社であるHitachi Vantara LLCグローバル展開をリードするLumadaを強化する。

Lumada:顧客のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション/サービス/テクノロジーの総称

日立ハイテク計測・分析技術を生かした社会イノベーション事業の成長加速を行なうため、完全子会社に向け、TOBを実施した。

GlobalLogicとの統合で、ミッションクリティカルでの信頼性が重要な受託型から、アジャイル、クラウドベースの協創型へと事業ポートフォリオを高成長市場に拡大させる。

東原敏昭社長は「Lumadaを進化させてグローバル展開を加速させるための買収」と説明した。

 


 
2021/10/16 UL 規格不正問題  

すこし古い話だが、 東洋紡と京セラの2社が、米国の安全規格であるUL規格に関して長年にわたって不正を行っていたことが判明した。

東洋紡は最初に昨年10月末にPBT樹脂についての不正を発表した。これはDICから譲り受けた製品で、DICの不正をそのまま引き継いだものであ ったが、その後、本年2月と3月にDICから譲り受けたもう一つの製品と東洋紡自身の製品で不正があったことを発表した。

京セラは2021年1月8日、6製品の 不正を発表したが、京セラのケミカル事業部は2002年に東芝ケミカルを買収して作られたもので、東芝ケミカル時代から延べ35年にわたり不正を続けていた。

 

UL規格は米国の第三者安全科学機関であるUnderwriters Laboratories(UL)が策定する製品の安全規格。

ULは、認証、試験、検査、アドバイザリー/トレーニング・サービスの提供によって、120年間にわたり、発展を遂げてきた世界的な第三者安全科学機関。

材料・装置・部品・道具類などから製品に至るまでの機能や安全性に関する標準化を目的としている。
UL規格の認証取得は任意だが、州のプロジェクトではUL認証を義務付けている場合も多く、アメリカの電気製品の多くはUL認証品となっている。

火災保険業者によっては「このUL規格が無い場合、保険を受け付けない」としているところもある

米国に製品を輸出する多くの企業にとって、 その材料が不適合であることは製品そのものが問題となる可能性があり、大問題である。

不適合材料を使っているか否かを調査し、しかるべき対応を余儀なくされる。既に、不適合材料が判明し、顧客に連絡したり、販売を停止したり、材料を切り替えたりする企業が出ている。

部品点数の多い自動車メーカーへの影響は大きい。

経緯や内容は下記の通りだが、1社だけの特殊な例ではない。両社とも買収した事業が不正をしているのを知りながら、そのまま継続している。東洋紡の場合、引き継ぎ製品の不正が分かり、念のため調べたら自社でも同様のことを多数の製品で、多数のやり方で実施していた。

DICの場合、売却したPBT樹脂で今回不正が分かったが、同社の他の製品で同様のことをやっていないだろうか。(PBTだけ不正をやった特殊事情があるのだろうか)

1社だけの特殊な例でないとすれば、これだけ続発すると他社に同様のことがないとは確言できない。

米国の需要家の目に、これが日本の慣行と見られ 、日本の製品は品質面で信用できないと見られると大問題である。

さらに、日本の基準や規格、規則はきちんと守っているのだろうか。

 

1.  東洋紡

ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂「プラナック®」 について、ULに認証登録されている性能値に対して、実際に販売している商品の性能値が一部適合していないことが判明した。

ULが不定期に実施する確認試験時に、実際に販売する商品と異なる組成のサンプルを提出していた。

東洋紡からULに報告、2020年10月28日にUL保証が取り消された。

本件について、12月29日に調査結果を発表した。

本事業は2010年3月31日付でDICから譲渡を受けた。その時点で事態を把握したが、上層部に報告せず、確認試験用の組成も含めて引き継いだ。

2013年11月に担当部門内で報告されたが、継続した。

2015年10月に本件に関する資料が作成され、撤退には代替品が必要として、 販売を続けながら開発を進めた。

2020年になり、開発が失敗、8月に幹部に報告され、会社として事態を認識、その後、ULに報告。

なお、UL提出用サンプルの生産は同社の品質保証部門の監査の対象外であった。

その後、他に問題がないかどうか調査した。

2021年2月3日発表  「バイロペット®」 、「グラマイド®」 、「ペルプレン®」 で問題発見、UL保証取消

2021年3月26日発表 更にバイロアミド®」 、PPS樹脂」 、「グリラックス®」 で問題発見、UL保証取消

 

当該製品の概要と不適合理由は下記の通り。(日経クロステック)

このうち@ブラナック(PBT)は上記の通り、2010年3月にDICから譲渡を受けたが、Fのグリラックス(熱可塑性ポリエステルエラストマー)も2009年3月にDICから譲渡を受けたものである。

 

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05428/

 

2.京セラ

京セラは2021年1月8日、6製品の難燃性および絶縁性について、ULが実施する認証試験で実際の製品とは異なるサンプルを提出していた事実等が確認されたと発表した。

この認証不正は35年前からのことという。京セラのケミカル事業部は2002年に東芝ケミカルを買収して作られたもので、東芝ケミカル時代に不正が行われていたということになる。

京セラは2002年5月16日、東証2部上場の東芝ケミカルを、8月1日付で株式交換により買収し完全子会社とすることで合意し、株式交換契約を締結したと発表した。

これに伴い、東芝ケミカルは社名を「京セラケミカル」に変更する。京セラは買収により、東芝ケミカルの有機化学を基盤としたファインケミカル技術と、自社のファインセラミックス技術を融合し、高付加価値の部材開発を進め、電子部品グループとして競争力強化を図る。

当該製品の概要と不適合理由は下記の通り。(日経クロステック)

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05417/


2021/4/17 関西医大、2022年に世界初の「光免疫療法」の研究所 

関西医科大学は2022年4月に「光免疫療法」で世界初の研究所を設立する。開発者で所長に就任する米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員は4月12日、現在対象の顔や首のがんに加え「乳がんなどへの適用も検討する」と話した。

米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆・主任研究員らの研究チームは2011年11月6日のNature Medicine で初めて「光免疫療法」を報告した。

がん細胞に結びつきやすい特徴を持つ薬を投与した後、患部に赤色光を当てると、薬が光に反応してがん細胞が破壊される。光は熱を持たず、体に当てても害はないとされる。また動物実験などのデータから、この治療によって体内の免疫が活発になり、転移したがんも治癒できる可能性があると考えられている。

2016/8/22 光免疫療法による癌治療 

楽天メディカルは2020年6月29日、がん細胞をピンポイントで攻撃する「がん光免疫療法」に使う医薬品と医療機器について、「条件付き早期承認制度」に基づき厚生労働省に承認申請をした。対象は、舌がんや喉頭がんなどの頭頸部がんが再発した患者で、この治療法に使う医薬品と医療機器を承認申請するのは世界で初めて。

厚労省は2020年9月25日、楽天メディカルジャパンが申請した光免疫療法で使用する「アキャルックス®点滴静注250r」について、「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能・効果として、製造販売承認を与えた。本剤と組み合わせて用いる医療機器レーザ装置「BioBlade®レーザシステム」についても、9月2日に製造販売承認を取得している。

2020/7/1 楽天メディカル、「がん光免疫療法」の医薬品と医療機器の承認申請

関西医大が新設する光免疫医学研究所は「光免疫療法」や「免疫」などの3部門に分かれ、約30人が在籍する予定。

現在は外からレーザーを当てやすい頭頸部がんに限られているが、対象を患者数が多い大腸がんや皮膚がんに広げたり、副作用を抑えたりするための研究を進める。

所長に就任する小林氏は「まず乳がんや食道がん、子宮頸がんが対象として有望。将来的にはがん患者の8割に役に立てるようにしたい」、「特に臨床では高いレベルで、楽天メディカルと連携したい」と話す。

楽天メディカルは光免疫療法と免疫薬を併用する治験を、米国で頭頸部がんと皮膚がんを対象に進めている。

 

国立がん研究センター東病院も食道がんで光免疫療法の医師主導の治験を進めているほか、胃がんでも計画中。

2019/2/25 食道がんの光免疫療法の治験 

 


2021/4/19 政府、福島原発処理水  薄めて海洋放出の方針決定 


政府は4月13日、総理大臣官邸で関係閣僚会議を開き、東電・福島第一原発で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含む処理水の処分方法について議論し 、海へ放出する方針を決めた。

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東電は放射性物質を取り除く専用装置で汚染水を浄化した処理水を原発敷地内のタンクに保管している。2020年末までに137万トン分のタンクを確保したが、これでタンク建設用地は無くなる。

汚染水は2020年中に1日平均約150トンまで減らしたが、2022年夏〜秋にはタンクが満杯になる。

この処理水の処理について、多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会で検討してきたが、経済産業省は2019年12月23日、とりまとめ案を公表した。
5つの処分方法を検討してきたが、薄めて海に流す「海洋放出」と蒸発させて大気中に出す「水蒸気放出」という前例のある方式に絞り込んだ。

1979年の爆発事故のThree Mile Island -2号炉では汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ水について、近くの川への放出が検討されたが、下流域の住民が反発した。このため1991年から93年にかけて約9000トンを蒸発させ大気中に放出処分した。

トリチウムを含む水は薄めて海に流すことが国際的に認められている。海洋放出を問題視している韓国でも、月城原発が2016年に液体で17兆ベクレル、気体で119兆ベクレルを放出しており、古里原発も2016年に液体で36兆ベクレル、気体で16兆ベクレルを放出した。

2020/1/1 福島第一原発処理水の処分、海洋・大気放出に絞る

報告書は水蒸気放出について大気中での拡散の仕方の予測が難しく、放出濃度の監視に難があると指摘する一方、原発などで実績のある海洋放出を「確実に実施できる」と記しており、政府は海洋放出に絞った。

なお、報告を出した小委員会の委員からは、「現在あるタンク容量と同程度のタンクを土捨て場となっている敷地の北側に設置できるのではないか」「敷地が足りないのであれば、福島第一原発の敷地を拡張すればよいのではないか」などといった意見が出されたという。敷地の北側の土捨て場に大型タンクを設置することができれば、約48年分の水をためることができると試算されている。

2020年8月7日付の“Science”誌に米ウッズホール海洋研究所のKen O. Buesseler博士が投稿した。

トリチウムの半減期は12.3年であり、60年経てば97%のトリチウムは無くなる。半減期の短い他の放射性物質も同様だ。この間に現在の4倍の処理水が溜まる。タンク漏れのリスクはある。
現在放出の理由とされる土地問題は、現在の敷地外にタンクをつくれば解決する。

汚染水の放出は回復中の地域の漁業にマイナスの影響を及ぼしかねないため、大衆の心配を無視してはいけない。放出する場合、海水と海洋生物、海底堆積物のモニタリングに地域の漁民と独立的な専門家が参加しなければいけない。

2020/8/12 福島原発汚染水問題で、60年保管説

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政府は水蒸気放出には関心を示さず(東京方面に流れるのを懸念したとされる)、海洋放出を決定する方針を固め、2020年10月末にも決定するとされていたが、強い反対を受け、「さらに検討を深め、適切なタイミングで結論を出していきたい」とした。

しかし、最近になり、菅首相が動いた。

菅首相は4月7日、全国漁業協同組合連合会の岸宏会長と官邸で面会し、放出決定への理解を求めた。岸氏は改めて反対を伝達したが、首相は会談後、「近日中に判断したい」と述べた。

政府は4月13日、総理大臣官邸で関係閣僚会議を開き、東電・福島第一原発で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含む処理水の処分方法について議論し 、海へ放出する方針を決めた。

菅首相は、「福島第1原発の廃炉を進めるに当たって避けては通れない課題」と指摘。その上で、「基準をはるかに上回る安全性を確保し、政府を挙げて風評対策を徹底することを前提に海洋放出が現実的と判断し、基本方針を取りまとめた」と語った。

経産省は「福島第一原発における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」を発表した。概要は次の通り。

トリチウム及びトリチウム以外の放射性物質についてICRPの勧告に沿って従来から定められている安全性に関する原子炉等規制法に基づく規制基準厳格に遵守

海洋放出に当たっては、安全に係る法令等の遵守に加え風評影響を最大限抑制するための放出方法客観性・透明性の担保されモニタリングを含むを徹底

海洋放出について同処理水を大幅に希釈した上で実施

第三者の関与を得つつ、ALPS処理水トリチウム濃度確認するとともに、トリチウム以外の放射性物質が安全に関する規制基準を確実に下回るまで浄化れていることについて確認し、これを公表する

トリチウム濃度は、規制基準を厳格に守するだけでなく、在実施している福島第一原発のサブドレン等の排水濃度の運用目1,500ベクレル/リットル7未満)と同水準とする

この水準を実現するためにはALPS処理水を海水で大幅(100以上)に希釈する必要があるなお、この希釈に伴い、トリチウム以外の放射性物質についても、同様に大幅に希釈されることとなるALPS処理水を100倍以上に希釈することで、希釈後のトリチウム以外の告示濃度比総和は、0.01満となる。

放出するトリチウム年間の総量は、事故前の福島第一原発の放出管理値(年間22兆ベクレル内外の他の原発から放出されている量の実績値の幅の範囲内下回る水準になるよう放出を実施し定期的に見直す

風評影響に対応するため、福島県及びその隣県の水産業始めとした産業に対しては、地及び海外を含めた主要消費地において販路拡大・開拓等の支援を講じる

東京電力には、風評被害が生じた場合には、セーフティネットとして機能する賠償により、機動的に対応するよう求める

東京電力には今後、2年程度後にALPS処理水の海洋放出を開始することを目途に具体的な放出設備の設置等の準備を進めることを求める。


今後たまり続ける分も含めて、流し終えるまでに30〜40年かかる見通し。

原子力規制委員会の更田委員長は、タンクの耐用年数は約20年のため、「海洋放出が長期間にわたるなら当然、タンクの置き換えは考えないといけない」と述べた。

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2020年12月11日に、約137万㎥のタンクの設置を完了

2020年12月31日現在 貯蔵量 116万m3

 うち 告示濃度比総和 1未満 (そのまま薄めて放出可能) 32.4万m3

 告示濃度比総和 1〜5     37.4万m3
            5〜10    20.8万m3
            10〜100   16.2万m3
            100以上  6.2万m3
            合計   80.6万m3

    他に再利用タンクに 3万m3


東電は当初、第一原発の汚染水を処理した後の水にトリチウム以外の複数の放射性物質が残留していることは公表せず、2018年8月に新聞が報道して初めて明らかになった。

2018/8/29 福島原発のトリチウムを含む低濃度汚染水を巡る問題 

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福島の漁業関係者は、「約束違反」としてこの決定に猛烈に反発している。

2015年にサブドレン計画が出された。

第一原発の山側からは地下水が建屋側へ流れ込み、これが内部の溶融燃料に触れて汚染水が増える要因となっている。

「 サブドレン計画」は、建屋内に流れ込む地下水を減らし高濃度汚染水の増加を抑えることなどが目的で、原子炉建屋を囲む41本の井戸から地下水をくみ上げ、浄化装置で処理し、放射性物質の濃度を基準以下にして海に放出する。地下水を150トンに半減できると試算した。

これについていろいろあったが、最終的に福島県漁連は2015年8月11日、条件付きで計画を容認する文書を国と東電に提出した。

東電は2015年8月25日付で廣瀬直己社長名で回答している。

東京電力(株)福島第一原子力発電所のサブドレン水等の排水に対する要望書に対する回答について
 
4. 建屋内の水は多核種除去設備等で処理した後も、発電所内のタンクにて責任を持って厳重に保管管理を行い、漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わない事
   
(回答)
 ・ 建屋内の汚染水を多核種除去設備で処理した後に残るトリチウムを含む水については、現在、国(汚染水処理対策委員会トリチウム水タスクフォース)において、その取扱いに係る様々な技術的な選択肢、及び効果等が検証されております。また、トリチウム分離技術の実証試験も実施中です。
   
 ・ 検証等の結果については、漁業者をはじめ、関係者への丁寧な説明等必要な取組を行うこととしており、 こうしたプロセスや関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず、多核種除去設備で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留いたします。

 https://www.tepco.co.jp/news/2015/images/150825a.pdf

東京電力は9月14日、「サブドレン」からくみ上げて浄化した汚染地下水の海洋放出を始めた。 合わせて海側遮水壁の残る部分の工事を開始した。

2015/8/4   福島の漁協、サブドレン地下水の海洋放出容認  

 

今回の決定はこの約束に反するものであるとし、「国も東電も信用できない」としている。

これに対し、経産省幹部は、(今回は放出を決定しただけであり) 「関係者の理解なしには、決定をおこなわない」とは約束していないとし、実際の放出までに理解を得るとしている。

2年後に実施する時点で、関係者の理解が得られない場合は(その時点ではタンクは満杯)、どうするのだろうか。


2021/4/19 福島原発汚染処理水の海洋放出問題 

上記の通り、政府は4月13日、総理大臣官邸で関係閣僚会議を開き、東電・福島第一原発で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含む処理水の処分方法について議論し 、海へ放出する方針を決めた。

中国外交部は4月15日に日本の垂秀夫駐中国大使を呼び出し、日本政府の決定に厳正な申し入れを行った。

国際法及び国際ルール違反の疑いがあり、現代の文明国のする行為ではない。中国側はこれに強い不満と断固たる反対を表明する。

第1に、福島原発事故による汚染水の処理問題を考え直し、海洋放出という間違った決定を撤回すること。
第2に、国際機関の枠組で中国の専門家を含む合同技術作業チームを設置し、原発汚染水処理問題が厳格な国際的アセスメント、査察、監督を受けるようにすること。
第3に、利害関係国や国際機関との協議を通じた合意に至る前に、原発汚染水の海洋排出を勝手に始めてはならない。

記者会見で日本人記者が中国も放出していると述べたのに対し、報道官はこう述べた。

福島第一原発では最高レベルの原発事故が発生した。そこから生じた汚染水は正常な稼働時の原発の汚染水とは全く別物だ。そうでなければ、日本もこれまで汚染水をタンクに厳密に密封しておく必要はなかった。両者を一緒くたにして論じることはできない。

韓国の文大統領は4月14日、国際海洋法裁判所に放出の差し止めを求める暫定措置を含む提訴を検討するよう指示した。

暫定措置とは、国際海洋法裁判所が最終判断を下すまで、紛争当事者の利益を保存し、日本が汚染水を海洋放出できないようにする一種の「仮処分」を指す。

1999年の「みなみまぐろ事件」では、日本の調査漁獲に対し豪州、NZによる即時中止の暫定措置要請が認められた。(その後の仲裁裁判所はこれを無効とした。)

提訴された場合、うまく対応しないと仮処分が認められる可能性がある。

 

付記

 東京電力は放出に備え、タンクを23基建設する。能力140万トンとなり、計算上は2023年春までもつ。
 多核種除去設備(ALPS) 近くにある35基を処理水の放出準備にあてる。放射性物質の濃度を測ったり、放出前に海水で薄める設備に送ったりする 。

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海への放出決定の理由の一つは、トリチウムを含む水は薄めて海に流すことが国際的に認められていることである。

中国も韓国も大量のトリチウムを液体及び気体で放出している。

しかし福島では核燃料に接触した汚染水であり、ヨウ素129、セシウム135、セシウム137をはじめとする12核種が含まれる。

今回、トリチウム以外の放射性物質が規制基準を超えているものは再度ALPSで浄化し、安全に関する規制基準を確実に下回る ようにした上で、海水で大幅(100以上)に希釈する ため、トリチウム以外の告示濃度比総和は、0.01満となる。

濃度は低いが、総量としては大量の放射線物質を海に流し込むことになる。

トリチウムとは異なり、これは国際的に認められたことではない。これが海の生物に長期的にどのような影響を与えるか不明である。

自民党の山本拓衆院議員はブログで書いている。

東京電力の発表によると、ALPS処理水タンク内の処理水を試験的に二次処理したところ、トリチウム以外にもヨウ素129、セシウム135、セシウム137をはじめとする12核種が除去できていないことが明らかになっています。

そのうち11核種は通常の原発排水には含まれない核種であり、処理水を通常の原発排水と同様に考えることはできません

なお、二次処理後も残る核種には半減期が長いものも多く、ヨウ素129は約1570万年、セシウム135は約230万年、炭素14は約5700年の放射性物質です。

ALPS処理水の海洋放出については、トリチウムのみの安全性を議論するのは、正しくありません。

医学博士ではなく、工学博士が「人体に影響がない」と処理水の安全性を主張しても説得力がありません。

このような状況で、通常の原発排水とは全く異なるALPS処理水を海洋放出することとなれば、福島第一原発事故から10年を経て、さらなる風評被害の拡大を招くことになります。

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国内には、「どうしても海洋放出しなければならないのであれば、東京湾から始めて、全国の海岸に広げて行ったらどうだろうか。福島の海にだけは流してはいけない」との声がある。

大阪府の吉村知事は4月13日、「政府からの要請があれば大阪湾での放出も真摯に検討したい」と述べた。
放出される処理水の放射性物質の濃度は国の放出基準を下回り、「世界基準でも安全だ」と強調。「風評被害を福島だけに押しつけるのはあってはならない。電力を特に消費するエリアを含め全国で協力すべきだ」と語った。


東京湾や大阪湾に放出するにはタンカーで輸送する必要があるが、タンカーで運んだ汚染水を現地で放出することはロンドン条約及びロンドン議定書で禁止されている。

ロンドン条約、同議定書は「海洋において廃棄物を船舶その他から故意に処分すること」を禁止している。陸上からの処分はこれからは対象外となる。

この条約、議定書では、福島での海洋放出は禁止対象ではなく、汚染水をタンカーで運び、そこから放出するのが禁止対象となる。
(福島での海洋放出はしてもよいということではなく、この条約での判断の対象外ということ)

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「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」(通称:ロンドン条約)は、1972年12月にロンドンで採択され、1975年8月に発効し、我が国は1980年10月に同条約を締結した。

第1条 
締約国は、海洋環境を汚染するすべての原因を効果的に規制することを単独で及び共同して促進するものとし、また、特に、人の健康に危険をもたらし、生物資源及び海洋生物に害を与え、海洋の快適性を損ない又は他の適法な海洋の利用を妨げるおそれがある廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染を防止するために実行可能なあらゆる措置をとることを誓約する。

「投棄」の定義
 海洋において廃棄物その他の物を船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物から故意に処分すること
 海洋において船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物を故意に処分すること

同条約は、有害廃棄物を限定的に列挙し、これらの海洋投棄のみを禁止していた。

その後の世界的な海洋環境保護の必要性への認識の高まりを受けて、更に強化するため、「1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の1996年の議定書」(通称:ロンドン議定書)が1996年11月にロンドンで採択され、2006年3月に発効し、我が国は2007年10月に締結した。

同議定書は、廃棄物等の海洋投棄及び洋上焼却を原則禁止した上で、例外的にしゅんせつ物、下水汚泥など、海洋投棄を検討できる品目を列挙するとともに、これらの品目を海洋投棄できる場合であっても、厳格な条件の下でのみ許可することとした。

ロンドン議定書は3度にわたって改正された。
このうち二酸化炭素の海底下地層への処分(貯留)を可能とするものは発効済みであるが、海底下地層への処分(貯留)目的の二酸化炭素の輸出を可能とするものは未発効である。

  ロンドン条約(1975/8 発効) ロンドン議定書(2006/3 発効)
目的 人の健康に危険をもたらし、生物資源及び海洋生物に害を与え、海洋の快適性を損ない又は他の適法な海洋の利用を妨げるおそれのある廃棄物その他の物の船舶等からの投棄による海洋汚染の防止 ロンドン条約による海洋汚染の防止措置を一層強化

船舶等からの廃棄物等の海洋投棄を原則として禁止し、
例外的に投棄が認められる場合においても厳格な条件の下で許可

禁止 下記の「廃棄物その他の物」の投棄を禁止

有機ハロゲン化合物、水銀及び水銀化合物、産業廃棄物、放射性廃棄物等を含む

 

・下記を除く「廃棄物その他の物」の投棄を禁止。
・「廃棄物その他の物」の海洋における焼却を禁止。

例外:しゅんせつ物、下水汚泥、魚類残さ、船舶・プラットフォーム、不活性な地質学的無機物質、天然起源の有機物質等
(但し、投棄には許可を必要とする)

例外追加 
 二酸化炭素の海底下地層への貯留
  上記のための二酸化炭素の輸出を可能とするもの(未発効)

事前特別許可による投棄 砒素、ベリウム等を相当量含む廃棄物、コンテナ、金属くず等の巨大廃棄物等で漁労や船舶航行の重大な障害になるもの等  
事前の一般許可 他の全ての廃棄物その他の物  
  いずれの許可も、全ての事項(物の特性及び組成、投棄場所の特性及び投棄の方法等)について慎重な考慮が払われた後  

 

以前は昭和電工、日本軽金属、住友化学などは、ボーキサイトを輸入し、国内でアルミナを生産していた。
この際に膨大な量の赤泥ができる。当初はこれを海岸の埋め立てに使用し、工場用地を拡大していたが、その余地がなくなり、海洋投棄を行った。

1972年のロンドン条約付属書では赤泥は「汚染されていない不活性な地質学的物質であって、その化学的構成物質が海洋環境に放出されるおそれのないもの」に該当し、産業廃棄物には当たらず、海洋投棄は認められていたが、各社はグリーンピース等からの批判を受け、自主的に海洋投棄停止→アルミナ国内生産停止に踏み切った。(2006年のロンドン議定書では禁止となる。)

2008/3/8 アルミナメーカー、ボーキサイトの国内精製から撤退へ

 

 


2021/4/20    山口の石炭火力計画 取り止め 

電源開発(愛称 Jパワー)と宇部興産の山口宇部パワーは2015年から山口県宇部市西沖の山の宇部興産所有地で西沖の山発電所(仮称)新設計画を進めてきたが、4月16日、計画を取りやめると発表した。

西日本エリアにおいて電力需要は横ばいで推移すると見込まれることや、再生可能エネルギーの導入が拡大していることなど、事業環境を巡る状況を総合的に判断した結果としている。

 

山口宇部パワーは2015年2月に、宇部市西沖の山において、120万kW級(60万kWx2基)の石炭火力発電設備の建設の検討および準備を進めるため設立された。

当初の出資者は、Jパワー45%、大阪ガス45%、宇部興産10%で、2026年の稼働を目指していた。

これを受けて環境相は2015年6月12日、「西沖の山発電所」について、「現段階において是認しがたい」との意見書を経産相に提出し ている。

山口宇部パワーはその後も環境影響評価手続きを続けていたが、2019年4月24日、計画変更を検討し、環境影響評価手続を休止すると発表した。

大阪ガスは投資を回収できないと判断し、本計画からの撤退を決定、出資比率をJパワー 90%、宇部興産 10% に変更するとともに、発電能力も半減し、60万kW級(60万kWx1基)とした。


今回、石炭火力への批判が高まりを受け、
建設しても投資の回収は困難と結論付け、断念した。

経済産業省・資源エネルギー庁は3月22日、非効率石炭火力の早期削減を狙い、発電効率実績の目標を「2030年に43%」とすることを決めた。電気事業連合会は「43%は非常に高い目標だ」としている。

ーーー

2015年頃には石炭火力計画が相次いだ。

九州電力、出光興産、東京ガスの3社は2015年3月27日、千葉県に大型の石炭火力発電所を建設することで合意したと正式発表した。
九電が管外に発電所を造るのは初めて。

3社が均等出資し、出光が千葉県袖ケ浦市に持つ貯炭場に隣接する約30ヘクタールの遊休地に最大で100万kWの石炭火力2基を建設する。
投資額は4千億円規模の模様で、2020年代中ごろの稼働を目指す。

2015/4/22   首都圏向け、火力発電計画 相次ぐ 

しかしその後、石炭火力計画については撤退が相次ぐ。

東燃ゼネラル石油と関西電力の子会社 関電エネルギーソリューションは、東燃ゼネラル千葉工場敷地内に100万kWの石炭火力発電所の建設プロジェクトの事業化検討を進めていたが、2017年3月23日、計画の断念を発表した。(図@)

2017/3/29 東燃ゼネラルと関電の石炭火力プロジェクト 断念

中国電力、JFEスチールのJVの千葉パワー(中国電力 73%、JFEスチール 27%)は2018年12月27日、石炭火力発電については十分な事業性が見込めないと判断し、「蘇我火力発電所」の建設を中止すると発表した。 (図A)

2018/12/30 千葉の石炭火力計画中止

千葉パワーはその後、天然ガス火力発電所開発の事業実現性検討を行ってきた が、2021年3月31日、本計画は十分な事業性が見込めないと判断し、本検討を中止するとともに、千葉パワーを解散すると発表した。 世界的に化石燃料への逆風が強まるなか、大型投資の見直しに至ったと報じられている。

2021/3/31  中国電力とJFEスチール、千葉の天然ガス火力発電所計画も断念 

出光興産、九州電力、ならびに東京ガスは2019年1月31日、千葉県袖ケ浦市にある出光興産所有地を活用した千葉袖ケ浦エナジーの石炭火力発電所の共同開発を断念すると発表した。 (図B)

電力小売り全面自由化後の需要をにらみ、発電でも首都圏への参入が本格化するとみられたが、石炭火力3計画は全滅した。

なお、上図のLNG発電のうち、JXと東京ガスの「川崎天然ガス発電」の3・4号機増設計画はコストアップで採算が悪化し、2017年7月に撤回された。

東京ガスと昭和シェル石油(現 出光興産)の扇島パワー3号機は2016年2月に運転開始した。



2021/4/21   新型コロナウイルスの超高感度・世界最速検出技術を開発

理化学研究所、東京大学、京都大学、科学技術振興機構は4月19日、共同研究グループが 新型コロナウイルス由来のウイルスRNAを「1分子」レベルで識別して5分以内に検出する革新的技術の開発に成功したと発表した。次世代の感染症診断法の核心技術としての応用展開が期待でき るとしている。

本研究は、科学雑誌『Communications Biology』のオンライン版(4月19日付)に掲載された。

Amplification-free RNA detection with CRISPR–Cas13

 

現在行なわれているPCR検査は、検出に最短で1時間程度かかり、検出エラーも発生することから、大量の検体を短時間かつ高精度に解析することが困難で ある。

今回、SARS-CoV-2由来のウイルスRNAを「1分子」レベルで識別して5分以内に検出する革新的技術、SATORI 法(CRISPR-based amplification-free digital RNA detection)を開発した。

ウイルスの遺伝物質があると活性化する酵素を利用する。

採取した唾液など検体の中のウイルスの殻を界面活性剤などで壊し、この酵素が入った溶液と混ぜ、微小な試験管が集まったプレート上で反応を見る。
酵素が活性化すると光る蛍光物質を検出することで、陽性だと確認する。

これは下記の2つの先進技術を融合したもの。

理化学研究所の渡邉力也主任研究員グループが専門とする「マイクロチップを利用した酵素反応の1分子検出技術

半導体製造プロセスを活用して微細構造をチップ上に造形する技術 で、容積3フェムトリットルの世界最小レベルの微小試験管を約100万個集積したマイクロチップを造形した。

東京大学の西増弘志教授、濡木理教授グループの「核酸切断酵素CRISPR-Cas13a(Cas13a)」

多くの細菌は、「CRISPR-Casシステム」と呼ばれる獲得免疫システムを備えている。CRISPR-Cas獲得免疫システムは6つのタイプ (I〜VI型) に分類されている。

VI型CRISPR-Casシステムに関与するCRISPR-Cas13aは、ガイドRNAと複合体を形成し、ガイドRNAと相補的な1本鎖RNAと結合すると活性化し、1本鎖RNAを切断するRNA依存性RNA切断酵素である。


SATORI 法の仕組みは次の通り。

核酸切断酵素Cas13a(ガイドRNAと結合)と蛍光レポーター、検体のウイルスRNAを混ぜると、特異的にウイルスRNAとCas13aの複合体が形成される。

ガイドRNAをウイルスRNAと結合するよう設計しておくと、Cas13aとウイルスRNAの複合体ができる。

複合体が形成されるとCas13aの酵素活性がオンとなり、蛍光基と消光基がつながった蛍光レポーターが切断される

蛍光レポーターは、標的RNAとCas13aの複合体を検出するための蛍光性の機能分子 で、核酸のウラシル(U)が五つ連なった1本鎖RNAの両端に、それぞれ蛍光基と消光基が結合した構造を持つ。複合体はウラシルが連なった構造を特異的に切断する性質を持つため、蛍光レポーターが複合体により切断されると、蛍光基は消光基から物理的に解離し、蛍光を発するようになる。

これを微小試験管が100万個集積されたマイクロチップアレイに小分けにして封入すると、ウイルスRNAが存在する微小試験管だけ蛍光シグナルが1分以内に上昇する。

マイクロチップのデジタル信号からシグナル有の微小試験管の個数をカウントする。カウントされる試験管の個数はサンプル中のウイルスRNAの個数に相当する。

検出感度は5フェムトモーラー(fM、fMは1000兆分の1モーラー)で、新型コロナウイルス感染者の検体中のウイルスRNA量を検出する感度を満たしている。
 

ランニングコストは9ドル程度と安価であるという利点もある。(PCR検査は5ドル程度)

グループは来年度中の臨床試験開始をめざす。

また、SATORI法は、疾患バイオマーカーの検出などにも活用できるため、がんなどの基礎疾患の早期・層別化診断などを指向した次世代のリキッドバイオプシ ー(血液や尿などの身体への負担が少ない低侵襲性の液性検体の解析を基盤とした基礎疾患・感染症の診断方法)の技術基盤となることも期待できるとしている。



2012/4/21    韓国地裁、慰安婦訴訟2件で原告側の訴えを却下 

ソウル中央地方法院は3月29日、元従軍慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で1月 に勝訴した件で、原告が訴訟費用確保のために日本政府の資産差し押さえを求めたのに対し、これを否定する決定を行なった。4月20日に韓国法曹界が明らかにした。

別途、元従軍慰安婦らが日本政府を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は4月21日、国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除の原則」を認め、訴えを却下した。(後述)

ーーー

韓国で旧日本軍の元従軍慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は1月8日、請求を認め日本政府に賠償支払いを命じる判決を出した。

調停申請時、原告は12人だったが、多くが他界し、生存者は5人となっている。

ソウル中央地裁は、原告1人あたり1億ウォン(約948万円)の支払いを命じる原告勝訴の判決を出した。

地裁は仮執行を認めており、日本政府が控訴をするかしないかの判断に関わらず、韓国内にある日本政府資産の差し押さえ手続きを取ることが可能になる。

実際に日本政府資産の差し押さえは難しい。

在韓日本大使館の建物と敷地、大使館の車両などは、ウィーン条約第22条第3号が「公館、公館内にある用具類その他の財産及び使節団の輸送手段は捜索、徴発、差押え又は強制執行を免除される」と規定しており、強制執行が不可能である。

日本文化院も外務省所属の政府機関であり、各国派遣大使館(または総領事館)の一部としてウィーン条約の特権が保証される。

日本国内の日本政府資産に対する差し押さえも、韓国の裁判所が日本司法当局を相手に「執行承認」を要請しなければならず、日本の裁判所が執行を許諾する可能性はない。

2021/1/8 元慰安婦訴訟で日本政府に賠償命令 

日本政府は、国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の原則「主権免除」を理由に裁判を認めていない ため、原告は韓国内にある日本政府の資産を差し押さえることを検討し、地裁に日本政府が韓国内に所有する財産の開示を求める手続きを申し立てていた。

 

1月の判決では、「訴訟費用は日本が負担せよ」としている。

原告は訴訟費用の確保のため日本政府の資産差し押さえを求めた。

これに対し、ソウル中央地方法院民事34部は3月29日に韓国政府の「国庫による訴訟救助取立決定」を下した。

「国家が訴訟救助決定により原告に納入を猶予するようにした訴訟費用のうち、日本から取り立てることのできる訴訟費用は無いという点を確認した」とした。

裁判所関係者は「”強制執行”に関する判断で、これまでの判決である”勝訴”に関する部分ではない」と説明した。

決定は、確定判決を有効としつつ、外国の資産への強制執行はその国家の主権侵害にあたる可能性を指摘 し、韓国内の日本政府の資産を差し押さえた場合、「憲法上の国家安全保障、秩序維持、公共の福祉と相反する結果を招く」と懸念を示した。

当初の判決とは異なり「訴訟費用を日本政府が負担する必要はない」と明示しており、「強制執行は国際法違反」など勝訴判決そのものを問題視する内容も多く指摘している。

本案訴訟は日本政府の国家免除を認めず、原告勝訴判決を確定した。しかし、外国に対する強制執行は該当国家の主権と権威を傷つける恐れがあり、慎重なアプローチが必要 である。
同事件の訴訟費用を強制執行することになれば国際法に反する結果を招くことになる。

外国政府の財産に対する強制執行は現代文明国家の間の国家的威信に関連することで、これを強行すれば司法府の信頼を損なうなど重大な結果につながりかねない 。
今回の事件は、記録に残されたすべての資料を見ても、国連の国家免除条約上の外国政府に対する強制執行要件を満たしていない。
日本政府の財産を強制執行すれば、憲法上の国家安全保障、秩序維持、公共福利と相容れない結果に達することになる。

日本政府に対してこの事件の訴訟費用の取立決定を行うことは、国際法に違反す る。ウィーン条約によると、どの国家も国際条約を履行しないことを正当化するために司法府の判決など一切の国内的事情を援用してはいけない。
大法院の判例で、確定判決による権利も信義誠実の原則により行使されるべきで、判決に伴う執行が権利乱用になる場合には許されない。

(1965年の韓日請求権協定と2015年の韓日慰安婦合意にも言及し)最近も両国政府は慰安婦合意の有効性を確認し、相当数の被害者が基金(和解・癒やし財団)から金員を受け取るか、残額が日本に返還されなかった 。

国際司法裁判所(ICJ)はほぼすべての平和条約と戦後処理慣行において、国家間で総額精算を行う場合、犠牲者一人ひとりに対する賠償は必須規範ではないと判断した 。
また、ICJは戦時に他の国家領土で武装軍隊によって行われた不法行為に伴う損害に関して国家免除を認めている。
*1月の判決では、韓半島(朝鮮半島)は武力紛争の当事者ではなかったために、ICJ事例を適用することはできないとしていた。


慰安婦被害者側は今回の決定に関係なく、日本政府が慰謝料の支払いを行わない場合、強制執行手続きを踏むという立場 で、被害者訴訟代理人は4月13日に「日本が韓国で所有している財産目録を提出するように命じてほしい」としてソウル中央地方法院に財産明示申請を出した。
 

今回の地裁決定で、賠償の履行を目的とした日本政府の差し押さえも認められない可能性が高くなった。

ーーー

韓国の元従軍慰安婦らが日本政府を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は4月21日、国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除の原則」を認め、訴えを却下した。

「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」が支援する元慰安婦の李容洙氏や遺族ら20人が2015年の韓日慰安婦合意から1年後の2016年に提起した。

「精神的、肉体的な苦痛を受けた」として計約30億ウォン(約2億8千万円)の損害賠償を日本政府に請求した。

日本政府が、国際法上の「主権免除」の原則を理由に訴訟に応じてこなかったため裁判が進展していなかったが、裁判所が公示送達の手続きを取ったことで、昨年から動き始めた。

当初1月13日に元慰安婦や遺族の20人による訴訟の判決が言い渡される予定であったが、判決は延期され、裁判所は追加の審理の必要性があるとみて弁論を再開した。

今回、1審のソウル中央地方裁判所は判決で、「国際慣習法や韓国の最高裁判所の判例にのっとり、外国の主権行為について損害賠償の訴えは認められない」として、「主権免除」の原則が適用されるとの判断を示し、原告側の訴えを退けた。


2021/4/22   新型コロナウイルスの人工合成技術を開発 

大阪大や北海道大などのチーム新型コロナウイルスを短期間で人工合成する方法を開発した 従来は合成に数か月かかったが、この方法を使うと2週間に短縮できるという。ウイルス遺伝子の改変も容易にでき、世界で拡散する変異ウイルスの解析に役立つとしている。

4月1日付で英国科学雑誌「Cell Reports」にオンライン公開された。

Establishment of a reverse genetics system for SARS-CoV-2 using circular polymerase extension reaction”

ウイルスの人工合成は、大腸菌にウイルスの遺伝子を組み込んで複製を作る方法が一般的だが、新型コロナは遺伝情報が多く、そのままの状態で複製すると予期しない変異が起きやすい。
このため限られた研究者しか合成できず、時間もかかっていた。

大阪大学の微生物病研究所の鳥居志保特任研究員、感染症総合教育研究拠点の松浦善治特任教授、北海道大学大学院の福原崇介教授らの研究グループは、CPER法を用いることにより、わずか2週間で新型コロナウイルスを人工合成する新しい技術を確立した。

CPER(Circular Polymerase Extension Reaction) 法はPCRを活用した手法で、重なる領域を有する遺伝子断片を鋳型にDNA合成酵素 (ポリメラーゼ) を用いて伸長反応を実施することにより、遺伝子断片が連結した環状のDNAを作出する方法。2013年に発表され、デング熱を起こすデングウイルスなどが含まれるフラビウイルスのワクチン開発に活用されている。

本技術により、
 ・従来数ヶ月かかっていたウイルスの合成が大幅に短縮されることで新型コロナウイルスの研究開発が加速化する。

 ・世界中で出現する様々な変異を持つ新型コロナウイルスに対しても迅速に解析することが可能となる。

 ・外来遺伝子を組み込むなど遺伝子操作をしたウイルスを用いた研究は病原性解析や予防法・治療法の開発にも応用可能。

 

手法は下記の通り。

ステップ1

新型コロナウイルスの遺伝子全長をカバーする9個のウイルス遺伝子断片とプロモーターを含むリンカー断片をPCRで増幅。
各断片が隣り合う断片と重なる領域を持つよう設計。

ステップ2

各断片が隣り合う断片と重なる領域を持つよう設計されているため、もう一度PCRを行うと、10個の断片が一つに繋がり、ウイルス遺伝子全長をコードする環状のDNAを作製できる。

ステップ3

この環状DNAを新型コロナウイルスがよく増殖する培養細胞に導入すると、細胞の中でDNAをもとにRNAが合成され、さらにこのRNAをもとにウイルスが合成されて、約7日間で感染性の新型コロナウイルスを作出することができた。

高度な遺伝子操作技術を用いずに、PCRのみで新型コロナウイルスの感染性DNAクローンを作製できることが分かった。

さらに、GFPなどの蛍光タンパク質を導入したウイルスや、任意の遺伝子を変異させたウイルスも作出可能であることを示した。

ウイルスに蛍光タンパク質を導入すると、ウイルスが感染した細胞で蛍光タンパク質が発現するため、感染細胞を可視化することができる。

これまでの大腸菌にウイルスの遺伝子を組み込む方法でのウイルスの人工合成は限られた研究者しか出来ず、時間もかかっていた。
本研究成果により、より多くの研究者が迅速・簡便に新型コロナウイルスを合成できるようになり、人工的に遺伝子改変したウイルスを用いた病原性解析やワクチン・抗ウイルス薬の開発、また、次々と現れる変異ウイルスに対するこれまで以上に素早い解析が可能となる。

新型コロナウイルス感染症克服に向けた研究が飛躍的に進むことが期待される。

 


2021/4/23 米、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表 

 
米財務省は4月16日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表した。

2020年12月にトランプ前政権が「為替操作国」に指定したスイスとベトナムに加え、新しく台湾が「為替操作国」の認定基準を満たしたが、今回、バイデン政権は為替操作国の認定を見送った。

1988年の法律に照らし、それら3カ国・地域に「効率的な収支調整を妨害する、もしくは国際貿易において競争上の不当な優位性を得る」意図があったと結論付ける「十分な証拠はなかった」と説明した。

今後、公式協議を含むenhanced engagementsを行い、為替相場の過小評価と対外不均衡の過小評価の基調的な原因に対応するために特化した行動計画を策定するよう呼び掛ける。

3か国は認定基準では「為替操作国」なのに今回認定を見送った理由として、台湾への配慮があるとの見方がある。今回、初めて台湾が認定基準に該当するが、中国対策や半導体供給などで台湾との関係が重要ななか、経済制裁につながりかけない「為替操作国」指定を回避し、台湾を外す以上、既に指定しているスイスとベトナムも外したというものである。


「監視リスト」には、2020年12月の日本、中国、韓国、ドイツ、インド、イタリア、マレーシア、シンガポール、タイに加え、前回は外れたアイルランドと、今回初めてメキシコが指定された。メキシコの経常黒字はGDPの2.4%で、従来の基準では問題になっていない。

2020/12/22 米、スイスとベトナムを「為替操作国」に指定 


米財務省は為替操作国に指定する条件として(1)対米貿易黒字の規模(2)経常黒字の規模(3)継続的な通貨売り介入――を掲げている。

  従来の基準 2019/5より改正
@重大な対米貿易黒字 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上 同左
A実質的な経常黒字 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上 GDPの2.0%以上
B外為市場に対する介入 GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入
(12カ月のうち、8カ月
同左
(12カ月のうち、6カ月

3基準全てに該当すれば「為替操作国」となる。

次の場合、「監視リスト」に入る。
  2基準に該当 & 1基準だが、前年「監視リスト」の場合
  なお、中国は常時、「監視リスト」

Bの外為市場介入(12カ月のうち6カ月)は、台湾、スイス、インド、ベトナム、シンガポールの5カ国。
日本は介入ゼロ、中国は若干の介入はあるが、12カ月のうち6カ月未満で対象外となっている。

 

操作国
3基準  
監視国
2基準  
監視国
1つだが前年に監視対象   丸数字は問題となった項目
  日本 中国 韓国 台湾 ドイツ スイス インド アイルランド ベトナム イタリア マレーシア シンガポール タイ メキシコ
2016/4
2016/10
2017/4
2017/10
2018/4
2018/10
2019/5
 

@A

@

A

@A

 

 

@A

@A

@A

@A

AB
2019/8   操作国  
2020/1
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AB
2020/12
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操作国
@B
操作国
@A

@A

AB

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2021/4
@A

@

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操作国
非認定

@A
操作国非認定
@B

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操作国非認定
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@A

AB

@A

@A


 

2021/4/23 厚労省、3つ目のコロナ治療薬承認 

厚生労働省の薬事・食品衛生審議会第二部会は4月21日、すでに国内で関節リウマチ薬として承認されている日本イーライリリーの経口JAK 阻害薬「Baricitinib(商品名オルミエント)」を、新型コロナウイルス感染症の治療薬として使用することを了承した。

投与対象は新型コロナに感染した中等症や重症の患者で、すでに特例承認されている「レムデシビル」との併用を前提にする。

オルミエント®は、Incyte Corpにより経口投与のJAK 阻害剤として発見され、Eli Lilly にライセンス供与された

日本では2017年7月3日に「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」用として承認され、9月1日に日本イーライリリーから発売された。

日本での新型コロナの治療薬としての承認はレムデシビル、ステロイド薬のデキサメタゾンに次ぐ3つ目となる。

FDAは2010年5月1日に、Remdesivirを症状の重い入院患者に投与する緊急使用を許可(EUA)した。10月22日に正式承認した。

2020/10/23  FDA、レムデシビルを正式承認

日本では、海外で先に承認された場合に日本での審査を短縮する「特例承認」を適用して、Gilead Sciencesが2010年5月4日に承認を申請し、厚生労働省が5月7日に「特例承認」している。

2020/5/1 レムデシビル、5月にも特例承認

厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症の診療ガイドラインに「デキサメタゾン」を新たに掲載した。2020年7月21日に判明した。

2020/6/17 COVID-19 重症患者にステロイド剤デキサメタゾンが効果

20201119日にFDAがレムデシビルと併用によるバリシチニブの流通及び使用に関して緊急使用許可(EUAを出した。

対象は、酸素投与、侵襲的人工呼吸、又は体外式膜型人工肺ECMOを必要とするCOVID-19の疑いのある、又は検査でCOVID-19と確定した入院中の成人患者及び2歳以上の小児患者。

Eli Lilly と Incyte Corp2020年1211日、米国国立衛生研究所傘下の国立アレルギー感染症研究所(NIAIDが主導した新型コロナウイルス感染症に対する試験の結果が、査読誌New England Journal Medicineに掲載されたことを発表した。

この第III相臨床試験は、867治験施設より1,033人の患者登録された。

本試験結果から、レムデシビル単独療法と比較して、バリシチニブとレムデシビルの併用療法が、COVID-19で入院している患者の回復までの期間の中央値を8日から7日に1日短縮し、うち、中等症から重症の患者では18日から10日に8日間短くなった。人工呼吸に至った又は死亡した患者の割合を低減したことが示された。

この結果は、FDA1119日に発令したレムデシビルとの併用によるバリシチニブ投与に関する緊急使用許可(EUA)を支持するものである。

 

なお、米国立衛生研究所(NIH)は3月5日付で、新型コロナウイルス感染症の治療指針を更新し、重症患者に、関節リウマチなどの治療薬「トシリズマブ」(中外製薬のアクテムラ)を、既にコロナ治療で広く使われているステロイド系抗炎症薬の「デキサメタゾン」と併用して投与することを推奨した。

英政府は2021年1月7日、「アクテムラ」(Tocilizumab)と「サリルマブ」が新型コロナウイルス感染症の治療にも有効だと発表した。

中外製薬は、年内に国内でCOVID-19治療薬として承認申請する計画に変更はないとしている。

2021/3/16  米国立衛生研究所、コロナ重症治療でアクテムラとデキサメタゾンの併用を推奨

 

ーーー

オルミエントは国内で関節リウマチ薬として承認されている経口JAK 阻害薬である。

JAKは細胞の外から様々な刺激を細胞内に伝えるために働く酵素群(キナーゼ)の1つであるヤヌスキナーゼ(Janus kinase)の略称

関節リウマチでは、サイトカインという物質が白血球など免疫に関与する細胞を活性化して炎症を引き起こす。
サイトカインは細胞の表面にあるサイトカイン受容体に結合することにより細胞に刺激を与え、その刺激は細胞内に伝わって細胞の中心にある核に到達、核内ではDNA合成が盛んに行われ、細胞が増えたり炎症を起こす様々な物質をつくったりするようになる。JAKは細胞のなかでサイトカイン受容体に結合し、サイトカインによる刺激を下流に伝える。

生物学的抗リウマチ薬(注射剤で週1回など間隔を空けて投与)は、薬剤が1種類の特定のサイトカインを細胞の外でブロックすることにより、細胞に炎症を起こす刺激が入らないようにする。
JAK阻害薬(毎日内服する経口薬)は複数の種類のサイトカインに対して、サイトカイン受容体からの刺激を細胞のなかで遮断して炎症を抑える。

アクテムラ(トシリズマブ)は生物学的抗リウマチ薬で、インターロイキン(IL)‐6という特定のサイトカインを細胞の外でブロックする。

重症化したCOVID-19に発症する急性呼吸器不全は致死率が高いが、この原因は炎症性サイトカインの産生が異常に増加し起こるサイトカインストームが原因である。

2020/5/6   COVID-19の致死的急性呼吸器不全症候群の原因はサイトカインストーム


2021/4/24   鴻海、米ウィスコンシン工場の投資・雇用計画を大幅削減

ウィスコンシン州政府は4月19日、台湾の鴻海精密工業の米子会社 Foxconn Technology Groupと税優遇契約の見直しで大筋合意したと発表した。

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2017年7月、鴻海の創業者郭台銘がホワイトハウスに招かれ、トランプ大統領の目の前で米中西部のウィスコンシン州に新工場の建設計画を発表した。

総額100億ドルに上る巨額投資で、液晶パネルの一大生産拠点をつくる、1万3000人の雇用が生まれると説明した。
外資系企業による新工場への投資としては米史上最大とされた。

ウィスコンシン州は当時のScott Walker知事(共和党)が税優遇措置や州・地方政府による道路関連の投資を含め最大40億ドル規模とされる優遇契約を結んだ。

トランプ米大統領は2018年6月28日、ウィスコンシン州での新工場起工式に出席した。

1万5000人の雇用を創出し、ウィスコンシン州経済に年間34億ドル貢献するだろうと発言。同工場を「世界の七不思議」に続く8番目の不思議だと称賛した上で、米国のコンクリートと鉄鋼で建設されると述べた。

大統領はソフトバンクの孫正義社長を壇上に呼び、米国への投資で「マサさんに感謝したい」と述べた。

トランプ大統領は2018年11月の中間選挙を2020年の大統領選の前哨戦とみて、共和党のScott Walker知事の再選を狙い、利益誘導で鴻海の新工場の誘致を成功させた。

しかし、知事選では民主党が勝利し、大統領選でもトランプは敗北した。

実際にはFoxconnは同工場における生産品目を中小型液晶パネルやサーバー部品、人工呼吸器などへと繰り返し変更しており、建屋の完成後もほとんど稼働していない状態が続いていた。
工場誘致策を批判し、2018年の州知事選で勝利したTony Evers 知事(民主党)はFoxconnに対し税優遇契約の見直しを求めていた。

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今回、Foxconnは予定していた100億ドルの投資を6億7200万ドルに縮小し、雇用計画を1万3000人から1454人に減らす。
州政府は同工場への税優遇措置を28億5000万ドルから8000万ドルに縮小するという。

Foxconnは、2017年当時の予測は「想定外の市場の変動によって変化した」と説明し、州政府との合意について「世界市場の変化する状況に対応して事業機会を追求する柔軟性」が得られたとした。

ウィスコンシンを"one of the — if not the — largest manufacturer of data infrastructure hardware in the United States" にするとしたが、具体的内容は明らかにしていない。

Evers 知事は、今回の合意は従来契約に比べて納税者の負担が27億7000万ドル減り、雇用創出を税優遇策の条件とする措置が維持され、同工場の支援に州・地方政府が投じた数億ドルの資金が保護されると強調した。Foxconnが雇用と設備投資の目標を達成できれば、実績連動型の税優遇措置として6年間で最大8000万ドルを受けられるとした。


2021/4/24 米、「渡航中止」勧告国 大幅増、日本は含まれず 

米国務省は4月19日、新型コロナウイルスの感染拡大が続いていることを受け、米国民向けの海外渡航情報(Travel Advisories)を改定すると発表した。新型ウイルスのパンデミックが「旅行者に前例のないリスクをもたらし続けている」としている。

今回の改定はそれらの国の現在の感染状況を再評価したわけではなく、CDCによる疫学的評価を反映させたものだとしている。

但し、一部の国ではCDCの渡航警告レベルが異なる。同省では衛生関連の懸念に加え、各国での検査の利用可能性や米国民に対する渡航規制などの指標も考慮しているためとした。それら指標には、公衆衛生に関する指標や医療へのアクセス、犯罪、出入国条件、米国政府による緊急時の対応能力などが含まれる。

4月20日と21日に改定が発表された。まだ更新されており、今回の渡航情報の更新がいつ完了するかは定かではない。

https://travel.state.gov/content/travel/en/traveladvisories/traveladvisories.html/

Travel Advisories は下記の4レベルに分かれる。

Level 4: Do Not Travel
Level 3: Reconsider Travel
Level 2: Exercise Increased Caution
Level 1: Exercise normal precautions
 

これまで警戒レベルが最も高い「渡航中止勧告」(Level 4  "Do Not Travel")の対象となっていたのは約200カ国のうちケニアやミャンマー、イラク、アフガニスタン、アルゼンチンなど34カ国だったが、今回、世界の約8割の国に拡大、合計153か国とした。

欧州ではオーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリー、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国など、ほぼ全ての国が新しく指定された。

ワクチン先進国のイスラエルも含まれた。カナダも含まれている。

 

日本はLevel 3 の「渡航の見直し "Reconsider Travel"」に含まれた。

ここには他に、中国、アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、台湾などが含まれている。

 

シンガポール、韓国、タイ、ベトナムなどは Level 2の「"Exercise Increased Caution"」に含まれている。


2021/4/26 関西電力高浜、美浜原発の再稼働問題

関西電力は2021年4月22日、高浜原発1、2号機で建設中のテロ対策施設「特定重大事故等対処施設」の完成が期限 (2021年6月9日)に間に合わなくなった発表した。

特定重大事故等対処施設は2017年12月に敷地造成を始め、2019年4月から本体工事を進めてきた。

「工事が想定より大規模になったことから、期限までに間に合わない」とし、「工程などを見直し完成時期は未定」としている。

付記 福井県内の40年超の原発3基を巡り、杉本達治知事は4月28日午前、再稼働に同意すると表明した。

関西電力は5月12日、美浜原発3号機を、6月下旬にも再稼動させると発表した。但し、テロ対策工事が期限の10月下旬までに間に合わないため、再稼働した後に一度停止させる。
   

付記 関西電力は、6月23日に美浜原発3号機の原子炉を起動し、翌24日に臨界に達する。その後は、諸試験を実施し、7月27日には総合負荷性能検査を実施し、本格運転を再開する予定。

関電の原発の状況は下記の通り。

40年超は高浜1、2号と美浜3号で、40年超工事が稼働に必須。高浜1号、美浜1号は完成
再稼働には地元の了解が必要

テロ対策施設は期限内に完成しないと停止。

    40年超

テロ対策工事

2020年状況 現状
認可 期限   40年超工事 テロ対策施設
高浜 1号 2016/6/10 2021/6/9 未稼働 40年超工事未完
テロ対策工事未完
未稼働 2020/9/18 完了 期限(6/9)に間に合わず
2号 未稼働 2021/4 完了 ?
3号   2015/8/4 2020/8/3 停止 2020/1 定修で停止、トラブル発生
停止中に
テロ対策期限到来
2021年3月7日 稼働  ー 完了
4号   2015/10/9 2020/10/8 停止 テロ対策工事未完 2020/10/7停止 定修中2020/10/72021/5/  ー 工事中
美浜 3号 2016/10/26 2021/10/25 未稼働 40年超工事未完
テロ対策工事未完
6月下旬稼働
(地元了解済)

 
2020/9/18 完了 2021/10/25が期限
(その後停止)
大飯 3号   2017/8/25 2022/8/24 停止 2020/7定修 1次系配管に損傷  定修中2020/1/62021/4/5)水漏れで延長  ー 2022/8/24が期限
(それまで稼働)
4号   停止 2020/11/3  定修入り 定修中2020/10/72021/5/  ー

原子力規制委員会は2019年4月24日の定例会合で、原発に設置が義務付けられているテロ対策施設が期限内に完成しない場合、期限の延長を認めないことを決めた。原則として原発の運転停止を命じる。

テロ対策施設は「特定重大事故等対処施設」と呼ばれ、2011年の福島第一原発事故後にできた新規制基準で設置が義務付けられた。
原子炉から離れた場所に建て、遠隔制御で原子炉を冷やす設備を備える。原子炉が航空機の衝突などによる攻撃を受けても、電源や冷却機能などを失わないようにする。

2019/4/25 テロ対策施設未完成の原発、運転停止へ 

 再稼働には地元の同意が必要だが、これまで難色を示していた知事が近く再稼働の承認を決めるとされてきたが、工事の遅延で再稼働は遅れることになる。 稼働すれば、40年超原発では最初となる。

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各原発とも、使用済燃料の保管能力が少なくなっているが、特に関西電力が大きな問題を抱える。

関電は2015年以降、使用済み燃料を一時保管する中間貯蔵施設を県外に建設する方針を示してきた。

2017年11月に当時の西川知事が大飯原発3、4号機の再稼働に同意する際、関電は2018年に県外候補地を示すと約束した。だが選考は難航し、「2020年を念頭に」と先送りした 。

杉本達治知事は2020年12月2日、「提示が既に2年遅れ、地元と関電の信頼関係が崩れている」とし、40年超原発(高浜1、2号、美浜3号)の同意判断に当たり、年内提示が「全ての条件に先んじる」と踏み込んだ。

しかし、関電は年内に県外候補地を示せなかった。

関電は県外に中間貯蔵施設をつくると約束したが、使用済み燃料を受け入れるところはない。関電だけでなく、全ての原発に共通する悩みである。

電気事業連合会は経産相に、東電と日本原子力発電が設立した「リサイクル燃料貯蔵」が建設を進める中間貯蔵施設(青森県むつ市)の共同利用を検討すると報告した。

この施設は、東京電力と日本原子力発電用のものであるが、これを他社も使用できるようにしたいというものである。

これに対しむつ市長は「青森県やむつ市は核のごみ捨て場ではない。中間貯蔵場所は全国で探すべきなのに、それがないまま突然『むつ市でお願いします』とはならない」と述べ、強い不快感を示した。

2020/12/21 日本の原発の最近の諸問題

知事は本年2月2日、「議論の入り口に立っていない」と述べ、中間貯蔵施設の県外候補地を提示することが前提だと改めて主張した。

しかし、2月12日に関電の新しい提案を受け、方針を変換した。

関西電力の森本孝社長は2月12日、県庁で知事と面談し、中間貯蔵施設の県外計画地点について、青森県むつ市の施設を電力各社で共同利用する案を含めて検討を進めていると報告した。「2020年ごろ」としていた確定時期は「2023年末を最終期限とする」と表明した。

森本社長は、昨年12月に電気事業連合会がむつ市の施設の共同利用案を表明し、国や電事連が地元理解に取り組んでいると説明。「当社として選択肢の一つとして国や電事連と一体となって対応したい」と参画に意欲を示した。

「2023年末の期限までに計画地点を確定できない場合には、その後確定できるまでの間、美浜3号機、高浜1、2号機の運転は実施しないという不退転の覚悟で臨みたいと考えている」とも発言した。

杉本知事は面談後の取材に、運転開始から40年を超える関電原発3基(高浜1、2号 美浜3号)の再稼働に向けて「議論に入る前提はクリアした」と評価した。

知事は2月16日開会した定例県議会で、「県議会で再稼働について議論に着手していただき、慎重にご検討いただきたい」と述べ、議会に検討を要請した。

高浜町は2月1日、高浜1、2号機の再稼働について同意を表明した。
美浜町は2月15日、美浜3号機の再稼働への同意を表明した。

3月31日に福井県の原子力安全専門委員会のメンバーが安全対策の状況などを確認した。 委員会は4月22日、美浜3号機と高浜原発1、2号機について、「継続的な安全性向上を図っている」とした報告書を知事に提出した。

県会は4月23日、臨時議会を開き、美浜3号機と高浜1、2号機の40年超運転について「原子力との共生を目指す立地地域の思いを十分踏まえた的確な判断を強く求める」とする請願を賛成多数で採択、再稼働に事実上同意した。最大会派の県会自民党は、40年超運転を前提としたエネルギー基本計画の見直しを求める意見書案を発議し、賛成多数で可決した。

杉本知事は4月24日には両原発を視察、後日、経産相から原子力政策の明確な方向性や国が前面に立つ覚悟を確認できれば、会見を開いて同意を表明するとみられる。

付記

知事は4月27日、関西電力の森本孝社長がオンラインで会談し、森本社長は、「高経年化対策をしっかりと行い、安全運転を積み重ねて県民の不安解消に努めたい」と述べ、40年を超えた原発の再稼働にあたっては、▼特別な総点検を行うことや、▼原子炉の起動の際には、人員を通常の倍にして万全の態勢で臨む方針を示した。

また、梶山経済産業大臣とも会談し、梶山大臣は、▼原子力を将来にわたって持続的に活用する方針や、▼40年を超えた原発について、(1基あたり)最大25億円を交付する新たな制度を創設することなどを説明した。

知事は4月28日、運転開始から40年を超えた関西電力の原発3基の再稼働に同意すると表明した。「原則40年、最長で延長20年」とする現行ルールができて以降初めて。


2021/4/27 ワシントンDCを51番目の州に? 

米下院は4月22日、首都Washington, D.C. (District of Columbia)を51番目の州にする法案を与党民主党の賛成多数で可決した。

  民主党 共和党 合計
賛成 216   216
反対 0 208 208
棄権 2 4 6
合計 218 212 430

この特別区は連邦政府を置く場所であり、連邦議会の排他的立法の下に置かれており、住民は議会における代表権がない。

下院には1名の代議員 を選出できるが、法案の提出や委員会で投票を行うことはできるが、本会議では投票権を持たない 。上院議員の選出は認められてい ない。

住民が大統領を選ぶ権利については、1961年の憲法修正第23条によりようやく与えられた。

「もし同地区が州であると仮定すれば連邦議会に送ることのできる上院および下院の議員総数と等しい数の選挙人を選任する。ただし、その数は、いかなる場合にも、人口の最も少ない州の選任する選挙人の数を超えてはならない。」 

現在、選挙人は上院(100)と下院(435)の議員数にコロンビア特別区の3人を合わせ総数は533名である。

バーモント州などより多い70万人の人口を擁し、地元では「代表なき課税」は不当だと訴える声が絶えない。


州昇格は悲願であり、これまでも動きはあったが、2020年に初めて州昇格法案が下院で可決された。

米下院本会議は2020年6月26日、コロンビア特別区を51番目の州に昇格させる法案を賛成232、反対180で可決した。 採決では1人を除きすべての民主党議員が賛成し、共和党議員はほぼ全員が反対した。

51番目の州となり、州の名前はWashington, Douglass Commonwelth とする。(元奴隷で奴隷制度廃止運動家のFrederick Douglassの名前から採用)

White House、米国議会、National Mallを含む狭い地域を州から外し、連邦地区とする。

新州には上院2議席と下院1議席が割り当てられる。

下院で共和党がほぼ全員反対したのは特別区が黒人住民が多く(全体の46%)、民主党の強固な地盤であることである。2016年の調査では登録有権者の76%が民主党支持で、共和党支持はたった6%であった。

昨年の大統領選では、バイデン大統領のワシントンでの得票率は92%に達した。
州に昇格した場合、新たに与えられる上院の2議席を民主党が独占するのはほぼ確実で、上院で民主党が非常に有利になる。

共和党は「権力の強奪だ」と猛反発した。

昨年は共和党のトランプ大統領が拒否権行使を示唆し、 上院で多数派だった上院は審議入りさえ拒んだ。

下院の投票の2週間前に、当時の共和党のMitch McConnell 上院院内総務は上院での審議拒否を公言した。

2つの対案が提出された。
1つは、White Houseなどの限定された場所を除く特別区全体を隣のMaryland州に編入するというもの。住民は選挙権を与えられることになる。

もう一つは、憲法を改正し、上院議員の総数を100とするというもの。各州は2人の議員を出すため、州の数を現在の50にとどめることを意味する。

 

新しい上院は民主党と民主系無所属が50、共和党が50で、賛否同数の場合は上院議長を兼ねる副大統領(民主党)が1票を投じる。

民主党の法案提出者は、「歴史上初めて州昇格が射程に入った」と語った。

しかし、フィリバスターを避けるためには60票が必要で、共和党からの10名の賛成が必要となる。

なお、フィリバスターを避ける異例の手もあるが、それを決めるには民主党全員が賛成する必要がある。既に一人の民主党上院議員はフィリバスター回避法案には賛成しないと明言している。

法案の成立は容易ではない。Maryland州に編入し、住民に投票権を与える案の方が実際的かも分からない。


2021/4/28 東京五輪の医療体制 

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は日本看護協会に対し、大会期間中の医療スタッフとして看護師500人の確保を要請する文書を4月9日に送っていた。 武藤事務総長が4月26日に認めた。
競技会場、選手村総合診療所(発熱外来を含む)、選手村分村、宿泊療養施設を活動場所として示し、
参加条件や待遇を、
 ▽日数=原則5日以上
 ▽活動時間=1シフト当たり9時間程度
 ▽組織委が提供、負担=活動中の飲食、交通費、宿泊施設、各種賠償保険など――と規定したが、
日当や報酬の記載はなかった。
(当初は「原則無償」としていたが、政府や組織委は協力金を支給する方針に転換した。)
組織委の武藤事務総長は26日の記者会見で「医師や看護師に競技会場などの医務室で協力いただくのは前から申し上げている通りだ。もちろん大前提として、地域医療に悪影響を与えない必要がある。勤務時間やシフトのあり方を相談しながら、最も対応可能なあり方を相談していきたい」と述べた。

大会期間中の医療スタッフを巡っては、組織委は競技会場や選手村などの医務室で医療従事者が計約1万人必要と想定している。

競技会場や選手村では1日あたり最大で医師300人、看護師400人が必要で、新型コロナ対策でそれぞれ100人程度を見込むという。

橋本会長と武藤事務総長は4月21日 、大会期間中の医療体制などについて今月中に発行するプレーブック第2版で示すとし、関係機関と連携して最後の詰めの作業を行っているとした。

選手に行う新型コロナウイルス感染症の検査頻度について「原則的には毎日検査をしていく方向になる」と述べた。

読売新聞によるとポイントは下図の通りで、非常に厳しいもの。

当然、日本選手についても検査は必要である。実施可能だろうか。


医師や看護婦の不足で、病床はあるが患者を受け入れられない病院もある。
新型コロナウイルスの患者対応やPCR検査、ワクチン接種を巡っては、看護師の不足が問題になっている。

政府は否定しているが、自民党の下村政務調査会長は4月19日、ワクチンの接種体制が十分に整わない自治体もあるとして、希望するすべての国民の接種が完了するのは来年春ごろになる可能性があるという認識を示した。

なお、政府は4月26日、新型コロナウイルスのワクチン接種を迅速化させるため、大規模な接種会場を5月にも、東京都と大阪府に開設する方針を固めた。1日1万人規模の接種を目指す。
大規模接種ではモデルナのワクチンを使用する。東京会場について、自衛隊が設置と運営にあたるよう岸防衛大臣に指示した。5月24日を目標に設置し、3か月間、医師や看護師の資格を持つ自衛隊員が接種を行う。

そんななかで、毎日400人の医師、500人の看護師を長期間、 五輪のために使うなど、出来る筈がない。患者の治療が出来なかったり、ワクチン接種を遅らせるのは国民が認めないだろう。

渡航医学が専門の浜田篤郎・東京医大病院渡航者医療センター特任教授の意見を聞いている。

クリアしなければならないことが四つあるとし、@入国時検査、A大会中の検査、B出国時の検査を挙げ、Cとして「医療資源は本来、まず国内の感染流行への対応、次にワクチン接種への対応に使い、それでも余力があれば五輪に使う」べきであり、五輪最優先で医療資源を使うのは避けるべきとし、「私が挙げた四つをクリアできないなら、中止するしかないと思います 」としている。

Cの条件をクリアできる可能性は100%無い。

健康の危機にある日本人のことを考えろとも述べている。

“This is someone's country we're going into. These are real people living in crisis. We have to be sensitive to the needs of a nation."

2021/4/29 飲む(錠剤)ワクチン、貼るワクチン  

4月26日のTBSテレビ「あさチャン!」が「飲むワクチン」を取り上げた。

米国の製薬会社 Vaxart Inc が開発している経口ワクチンで、同社の最高科学責任者 Ph.D. Sean Tucker は次ぎのように述べている。

錠剤タイプの飲むワクチンを開発している。注射器や注射を打つ医師も必要ないし、さらに冷凍が必要な従来のワクチンと比べ、保存や運搬の負担が大幅に軽減できる。

飲み方も簡単で、1錠服用したのち28日間空けさらに1錠、合計2錠を服用するだけで完了。年1回、2錠飲むことが想定されていて、従来のインフルエンザ予防と同じ扱いになる。

すべて上手くいってくれれば、1年くらいで提供することができるようになる。

同社のワクチンはAstraZenecaなどと同じ複製能力を欠損させたアデノウイルスに新型コロナウイルスの表面のスパイクタンパクの遺伝子と自然免疫系を活性化するアジュバントを組み込んだもので、同社のシステムは VAAST™ delivery platform (Vector-Adjuvant-Antigen Standardized Technology)と呼ばれる。

錠剤型のワクチンで、口から投与され、小腸の粘膜から作用し、粘膜免疫を誘導するという他のワクチンとは異なるアプローチを取っている。

粘膜免疫は腸管を中心とする体の粘膜のバリア機能で、口から入ってきた細菌などから体を防御する役割を担っている。粘膜には生体内の免疫細胞の6〜7割が分布している。

粘膜免疫を利用した経口ワクチンとしては、現在日本で承認されているのは経口ポリオワクチン(弱毒生ワクチン)のみだが、海外においてはロタウイルス、コレラウイルス、腸チフスなどが承認されている。

錠剤表面をコートすることで胃酸から守られ、小腸に送達するように製剤化されている。アデノウイルスベクターが小腸の粘膜上皮細胞に取り込まれると抗原たんぱく質を発現し、免疫を誘導する。更に、組み込まれているアジュバントがワクチンの効果を高める。

錠剤が飲めない幼児や老人のための液剤化も開発中である。

同社はこれまでにこのシステムをインフルエンザなど多数のウイルスについて安全性や効果のテストを実施してきている。

 

別途、英国のバイオ企業のiosBio も錠剤ワクチンのOraPro vaccine platformを開発してきた。50℃の熱に耐え、胃の過酷な環境を通過できる。

同社は本年1月12日、米国のImmunityBio, Inc.との間でOraPro™ vaccine platform technology worldwideの独占ライセンス契約を締結した。

ImmunityBioの第二世代のCOVID-19のAdeno ワクチン候補の経口での臨床試験を米国で始めている。

 

AstraZenecaの開発チームのチーフは本年2月、現在の全てのワクチンは注射だが、これは必ずしもベストではなく、鼻スプレイや錠剤も考えられ、検討を始めていると述べた。

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University of Pittsburgh School of Medicineの研究者らは4月1日、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を抗原とし、微細な針を並べた「マイクロニードルパッチ」で投与するワクチン候補を開発し、マウスで抗体価の上昇を確認したと報告した。

研究者らは、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)と2014年の中東呼吸器症候群(MERS)のコロナウイルスで研究を行ってきてた。

ワクチンは、多数の微細な針(マイクロニードル)がシート状に並んだマイクロニードルアレイ(MNA)を使ったマイクロニードルパッチで皮膚から投与する。
ワクチンは針に溶け込んでいる。常糖とタンパク質からなるマイクロニードルアレイは、皮膚に貼ると溶解し、含まれている抗原分子が浸透して、強力な免疫を誘導する。

このワクチンは冷凍あるいは冷蔵保存の必要はない。常温保存が可能なので輸送費を削減し、特に後発開発途上国へのワクチン配布をサポートする。

マイクロニードルパッチのSARS-CoV-2ワクチンをマウスに投与したところ2週間で中和抗体が誘導された。

マイクロニードルワクチンは、滅菌に用いるガンマ線照射を行っても、その効果を維持した。

ワクチンは Pittsburgh Coronavirus Vaccineからとって、PittCoVacc と呼ばれる。

開発者は2つの点で安全性を主張している。1つはワクチンの抗原が従来のインフルエンザワクチンよりもはるかに低用量だから。2つ目は、使う抗原は皮膚内の非常に限られた部分に浸透するので、一部の患者で見られるような全身反応が起こる可能性は殆どない。 

今後数カ月以内に安全性を確かめる第T相の臨床試験を開始する。

 

東大でも同様の研究を行っている。工学部精密工学科の金範刹ウ授等の「溶解性マイクロニードル式経皮ワクチンデリバリーパッチ」である。

「DAB(Droplet-born Air Blowing)」と呼ぶ製造方式で、インクジェット技術を使って、薬を混ぜた溶解性物質の液滴(Droplet)を基板上に等間隔に付着させる。その後、もう1枚の基板を重ねてから、2枚の基板をゆっくり引き離すと、溶解性物質の粘度が高いためDropletは引き延ばされる。このとき冷風を当てておけば、適当な場所で切れてマイクロニードルが完成する。

既存の方式では過熱が必要でワクチンへの適用は困難だが、この方式では適用可能である。

 


2021/4/30 日立製作所、日立金属の売却を発表 

日立製作所は4月28日、下記発表を行なった。

日立は、BainCapital 連合のBCJ-52日立金属株式に係る公開買付不応募契約を締結した

一連の取引成立後、日立金属は、日立の連結子会社から外れ、Bain Capital 連合ので、競争力強化と収益力の回復を図っていく。

日立は引き続き、Lumadaを活用した社会イノベーション事業グローバル展開のため、日立のプロダクトに日立金属の高機能材料を活用していく。

20223月期の連結決算で事業再編等利益 約1,140億円を計上する
(出資53.45%分全量 @1674円 売却額3,820億円)

 

日立金属は競争力と収益力回復させ再成長により企業価値の向上をめざすためには、これまで以上の意思決定のスピードアップや、投資資金の獲得、また外部知見の導入が必要であり、そのためには、現在の資本構成に制限されることなく非上場化した上で革を進めることが最適と判断した。

日立金属の事業内容や売却のバックグラウンドについては下記を参照

2021/4/15 日立製作所、米GlobalLogicを買収、日立金属を売却  

 

202011旬より複数の買手候補先に打診を開始し、入札手続を進め20214月上旬、米国のPrivate Equity Fund であるBainCapital を中心とする連合を最終買付候補者として選定した。

BainCapital 連合は、BainCapitalが投資助言を行う投資ファンドが主体で、下記が参加する。

・日本産業パートナーズ(JIP)が管理・運営・情報提供等を行うファンド

・ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)が運営を行うファンド

それぞれの出資比率は未定だが、BainCapitalのファンドが2/3以上を占める。

 

今後の手続きは下記の通り。

1) 一般株主に対するTOBを実施 (日立製作所は「公開買付不応募契約」により応募しない。)

  →日立製作所と合わせ持分が2/3以上とする。

2) 日立金属は臨時株主総会の承認(日立製作所と連合が2/3以上のため確実)を得て、株式併合を行う。

3)日立金属は日立製作所持株を買い取る。

 

今回の日立金属の売却が実施されると、以前の御三家が全て売却されることとなる。



2021/4/30 EUのワクチン輸出、日本向けが35% 

欧州委員会は4月29日、EUからのワクチン輸出について説明した。

当初、4月19日までの数値をEU各国に示したが、4月26日までの数値に更新して発表した。

1月末からの3か月でEU域内から合計1億4800万回分の輸出許可を出したが、うち日本向けは5230万回分で輸出の35%を占めた。英国の1730万回分が続く。

 

付記

日本に4月25日までに到着したワクチンは2800万回分に過ぎない。
日本政府はEUの輸出許可数量を把握しておらず、関係者は確認に追われたという。
河野担当大臣はツイッターで下記の通り述べた。

4月30日にModernaワクチンが到着した。数量は公表されていないが、EU発表にはこれは含まれている。

 

EUは1月29日、輸出の透明性を高めるためだとして、域内の工場で生産されたワクチンを輸出する際、事前申告と許可を必要とする措置を導入すると発表した。

この措置は、1月30日からことし3月末までの時限的なもので、ワクチンの公平な分配を目指す「COVAXファシリティ」と呼ばれる国際的な枠組みなどへの供給は例外だとした。

欧州委員会は3月11日、新型コロナウイルスワクチンの輸出制限措置を6月まで延長すると発表した。欧州委によるとEUはバルカン諸国やアフリカへの支援用も含め、最大26億回分のワクチンを契約しているが、EUへのワクチン供給が遅れているため延長に踏み切った。

2021/1/31 EU、ワクチンの輸出規制 

イタリア政府は3月4日、イタリア国内で製造されたAstraZenecaのワクチンのオーストラリアへの輸出を差し止めたと発表した。

2021/3/5 イタリア政府、新型コロナワクチンの輸出を差し止め

輸出には欧州委員会と輸出国の両方の承認が必要であるが、これまでのところ、輸出差し止めはこの1件だけである。

 

問題は輸出元のEU自体でのワクチン接種が遅れていることである。

EUの接種計画は国によって大きなばらつきがある。 成人100人に対してEU内の平均は同31.6回分で、東欧は少なく、ブルガリアでは11回分しかない。そのなかでの域外輸出は問題になる可能性がある。

EUは3月17日に、不足しているコロナワクチンを域内市民向けに確保するため、英国への輸出を禁止する可能性を示唆した。これまでにコロナワクチンを接種した人数の人口比は、英国の方がEU加盟国と比べて高い。

EU当局者は3月21日、オランダで生産したAstraZenecaのワクチンについて、英国からの輸出要請を拒絶していることを明らかにした。

EUの欧州委員会は3月24日、1月末に導入した新型コロナウイルスワクチンの輸出規制の強化方針を発表した。

ワクチンが契約通り EUに供給されることを狙い、EUへの輸出を制限しているワクチン生産国や、ワクチン接種率でEUに先行する国への出荷を停止できるようにする。(日本は該当しない)


欧州委員会は4月26日、ワクチンを契約通りに供給していないとしてAstraZenecaを提訴した。EUの27か国全部がこれを支持している。

最大4億回分を購入する契約を結んでいたが、4〜6月期は1億8千万回の予定が7千万回になる見通し。

AstraZenecaは努力義務だと反論している。

2021/3/25    EU、新型コロナワクチンの輸出規制を強化

 

注 上図の通り、ハンガリーの接種率が特に高い。EUが許可していない中国やロシアのワクチンを国民に接種している。

2021年1月29日、EU加盟国では初めて、中国のSinopharm製の新型コロナウイルスワクチンを承認した。1週間前にはロシア製ワクチンにも暫定使用許可を出していた。
ハンガリーの外相は「EUによるワクチンの調達が遅いため、国民の命を守るには必要だった」と述べた。

 


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