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 2022/7/4 インドネシア高速鉄道の状況

中国国家鉄路集団有限公司が中心となり、中国電建市政建設集団が建設を担当するインドネシアのジャカルタとバンドン間の高速鉄道がようやく本年中に開業にむかう。

3月31日に、全線最長の箱桁架設工事がようやく完了した。そして本線バラスト軌道の敷設工事が、6月1日に正式にスタートした。これは同高速鉄道建設が線路の外での施工段階から、線路の上での施工段階へと全面的に移行したことを意味する。

ジャカルターバンドン高速鉄道はインドネシアの首都ジャカルタと第4の都市バンドン間の150 kmを結び、線路の総延長は142キロメートル、本線の軌道の総延長は279.4キロメートル。そのうちバラスト軌道区間は112.8キロメートル、スラブ軌道区間は166.6キロメートルで、いずれも中国製の鋼鉄製50メートルレールが採用される。

中国産レールはジャカルタ-バンドン高速鉄道軌道敷設基地まで運ばれた後、中国製の設備と先進的なパルスフラッシュ式溶接技術を使用して溶接作業が行なわれ、500メートルのロングレールに溶接されると、ロングレール輸送列車を利用して施工現場まで運ばれる。

人民網紙によると、 同高速鉄道は「一帯一路」(the Belt and Road)イニシアティブと中国・インドネシア両国の実務協力におけるシンボル的プロジェクトであり、中国の高速鉄道事業が初めて全システム、全パーツ、全産業チェーンにわたって海外で展開されるケースにもなる。完成すれば、ジャカルタ ーバンドン間の移動時間が現在の約3時間から40分に短縮される。

インドネシア政府が今年2022年内の「ソフト開業」を掲げている。 但し、無理であるとの見方も強い。

将来的にインドネシア第二の都市である東ジャワ州スラバヤへの延伸が計画されている。

 

これについては、 日本および中国が高速鉄道システムの売り込みを行い、入札を競った。

ロジェクトの操業開始時期は、JICAが2023年とみていたのに対し、中国側は大統領選が行われる2019年には操業を開始できるとした。
建設コストについても、JICAは61億ドルを要するとみていたところを、中国は55億ドルで完成できるとした。

インドネシア政府は2015年9月3日、高速鉄道計画の撤回を発表し、入札を白紙化したが、直後の9月29日、財政負担を伴わない中国案の採用を決定した。

中国は改訂版入札書をインドネシア側に再提出した。そこで、プロジェクトはbusiness-to-businessベースに切り替えることを明確にするとともに、インドネシア政府からは一切の政府支出を求めないし、政府保証も不要とした。

中国の国営企業(中国鉄道建設公社)は、インドネシアの国営企業3社(建設会社のWijaya Karyaがリーディングカンパニー)との間で、高速鉄道プロジェクトの実施に関する契約を締結し、両者の出資による特別目的会社(SPC)を設置することに合意した。

総コストは、55億ドルと見積もり、建設期間は、2016年から2019年までとし、その後50年間は政府から得るコンセッションの下、高速鉄道サービスを提供し、その事業収入をもって初期投資コストを回収する。
更に、本プロジェクトの建設に係る必要資金は、中国開発銀行を通じて提供するとし、融資比率は、総コストの75%、grace periodは10年間、融資期間は50年とした。

2015年9月の落札時点では、2015年に着工し2019年に開業する予定とされていたが、起工式は2016年1月21日にずれ込んだ。

提出された書類の大半が中国語で審査が進んでいないこと、中国側はインドネシア政府に当初の条件とは異なり、債務保証を求めてきているとも報じられた。
その後も、土地価格の高騰や民間工業団地の移転補償問題、不法占拠に対する立ち退き交渉の難航などで土地収用は85%にとどまり、中国側の融資の条件である高速鉄道用地の全区間確保が出来ていないため本格着工が行われず、地元業者による自己資金による整地工事のみが行われている状態とされていた。

その後のコロナ禍での工事遅延もあった。

総工事費は契約締結当時は55億ドルとされていたが、その翌年には、早くも61億ドルに膨れ上がり、最近の国会での国営建設会社の証言によれば、75〜80億ドルに達するであろうとされている。
中国側のFSが低過ぎたことに起因するが中国側は主に土地収用の遅れ等によるものとしている。

予算のオーバーに対し、政府は2021年に国家予算357億円をインドネシア側出資企業に投入して支援することを決めた。(これは61億ドルの予算に対するもので、工事費は更に増え、政府支出も増えると見られる。)

下図のように、インドネシア国営企業コンソーシアムが主体の中国とのJVが運営主体のため、コスト増はJVが負担せざるを得ない。出資者の国営企業は既に多額の対外債務を抱えており、このような支払を行えるような財務状況にはなく、最終的に国が支援するしかないこととなる 。

完成後も、ジャカルタ、バンドンの二都市間には、既に既存路線が走っていることから十分な収入は見込めず、建設費増により赤字が予想される、

中国側の融資は45.5億ドルで、grace periodは10年間、融資期間は50年であり、2026年からは毎年債務支払義務が発生する。(アジア開銀なら1%未満)
この負担は大きく、
数年もしないうち経営破綻に陥ってしまう可能性が高いのではと見られている。

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ジャカルタ-バンドン間の高速鉄道計画とは別に、ジャカルタ–スラバヤ間のジャワ島横断鉄道(在来鉄道)の高速化計画がインドネシアと日本の協力で進められている。

2017年3月、インドネシア政府は、ジャカルタとスラバヤを結ぶ鉄道の活性化のパートナーとして日本を選択した。このプロジェクトは、インドネシアの2つの主要都市間の列車を、時速 140〜160km、軌間 1,435mmにアップグレードすることを目的としている。 現在は12時間かかるジャカルタ―スラバヤ間を約半分の5時間半にすることが検討されている。

建設により、踏切が高架線に置き換わる。現在、ジャカルタとスラバヤの間には約988の踏切があり、列車の安全性、強度、速度を妨げている。プロジェクトのフェーズ1では、ジャカルタからスマランまでの新しい路線を構築し、フェーズ2では、スマランからスラバヤまでの既存の路線をアップグレードする。

これについて、インドネシア政府が中国に対して資金面などでの参加を2022年1月12日に打診していたことが明らかにされた。


2022/7/5 米連邦裁、米政府の温暖化排出規制を制限 

米連邦最高裁は6月30日、発電所の温暖化ガス排出に関して、環境保護局(EPA)が規制する権限を制限する判断を下した。石炭業界や共和党支持者の多い州の主張に沿った判断となり、バイデン大統領が掲げる気候変動対策に打撃となる。

野党・共和党系の18州や国内最大級の石炭関連企業の一部を代表して石炭産地のある南部ウェストバージニア州がEPAを相手取り、州全体の排出量を規制する権限はないと訴えていた。19州は各州の電力部門が石炭の使用停止を余儀なくされ、深刻な経済的負担を強いられるのではないかと懸念していた。

最高裁はEPAには火力発電から再生可能エネルギーへの移行など、発電所からのガス排出量を幅広く規制する権限を法律で与えられていないと結論づけた。

保守派6 対 リベラル派3での判断。

多数派の判事らはEPAに関して、発電所の排出については規制が可能だとしつつ、現行の法律(大気浄化法)のもとでは、議会はEPAに対し、火力から再生可能エネルギーなど発電形式の変更を促す規制の権限を与えていないとした。最高裁のロバーツ長官は、政府機関にそれだけの権限を与えるためには議会がより明確な法制度を整える必要があると説明した。

EPAには、電力網全体の電力生産の変更を要求することにより、電力生産からの温室効果ガス排出を制御する権限が無いというもので、裁判所の最高裁判事であるジョン・ロバーツと4人の保守的な裁判官によって書かれた。ニール・ゴーサッチは賛成意見を書いた。裁判所の3人のリベラルな裁判官は反対した。

Elena Kagan 判事は反対意見の中で、「今日、裁判所は、私たちの時代の最も差し迫った環境問題に対応するために議会が与えた権力の環境保護庁(EPA)を取り除いた」と書いた。

1960年代に、議会は大気浄化法を可決し、EPAに大気質を改善するための規制を施行する権限を与えた。 2015年、オバマ政権のクリーンパワープランは、発電所からの二酸化炭素排出に関する州のガイドラインを設定した。 24の州が、この計画が大気浄化法によってEPAに付与された権限を超えたと主張して訴訟を起こた。

 6対3の意見では、大気浄化法は、個々の排出者に削減を要求するのではなく、グリッド全体に抜本的な変更を加えることによって発電所での温室効果ガス排出を規制する権限をEPAに与えていないとする。

ロバーツ判事は「主要な質問の教義」を引用してその理由を説明した。これは、重要な問題を決定するとき、政府機関は明確な議会の承認を得なければならないと述べている。ロバーツ判事は、大気浄化法はそのような認可を提供しなかったと主張した。

Kagan判事は反対意見のなかで、気候変動の影響に関する政府間パネルの悲惨な評価を引用し、この判決は「温室効果ガスの排出を抑制するために必要な電力と付与された電力をEPAから奪う」と書いた。

 

バイデン大統領は判決を受けて声明を発表し、「気候変動と闘うわが国の力を損なう可能性がある」と最高裁を批判。政権の法務チームに対し「気候変動の原因となる有害な汚染から米国人を守り続けることができる方法を見つけるよう指示した」と説明した。

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この決定は、銃の権利を拡大し、中絶の権利を保護した1973年の判決であるロー対ウェイド事件を覆すものを含む、裁判所からのいくつかの物議を醸す決定の直後に行われた。

2022/5/10   米最高裁の中絶権判例を覆す意見草案 付記

2922/6/28 米議会、銃規制強化法案を可決、米最高裁はNY州の銃規制を違憲と判断

 

米最高裁は2022年6月30日付でBreyer判事が引退し、Jackson判事が就任したが、保守派とリベラル派は6対3のままである。

 
  性別 born 人種背景

指名大統領

就任日 判断傾向
Clarence Thomas 男性 1948/6 アフリカ系 George H. W. Bush 1991年10月23日 保守
John Roberts  (Chief) 男性 1955/1 白人系 George W. Bush 2005年9月29日 保守
Samuel Alito 男性 1950/4 イタリア系 2006年1月31日 保守
Sonia Sotomayor 女性 1954/6 ヒスパニック Barack Obama 2009年8月8日 リベラル
Elena Kagan 女性 1960/4 ユダヤ系 2010年8月7日 リベラル
Neil Gorsuch 男性 1967/8 白人系 Donald Trump 2017年4月10日 保守
Brett Kavanaugh 男性 1965/2 白人系 2018年10月6日 保守
Amy Coney Barrett 女性 1972/1 白人系 2020年10月26日 保守
Ketanji Brown Jackson 女性 1970/9 アフリカ系 Joe Biden 2020年6月30日  リベラル
引退 2022/6/30            
Stephen Breyer 男性 1938/8 ユダヤ系 Bill Clinton 1994年8月3日 リベラル

 



2022/7/11 独エネルギー大手
Uniper ドイツ政府に金融支援を要請 

ロシアからの天然ガス輸送量減少により、経営難に陥っている独エネルギー大手でロシア産ガスの最大輸入業者の1つのUniperは7月8日、ドイツ政府に資本注入などの救済措置を求める申請書を提出した。

2016年にドイツ最大のエネルギー企業E.ONが化石燃料、原子力、火力、水力、電力取引部門を「Uniper」として分離し上場した。E.ONには送配電、小売り、再生可能エネルギ一部門が残った。

同社の事業

ドイツは2020年に石油34%、天然ガス55%、石炭45%がロシアからの輸入だった。 特に、天然ガスは国内需要の9割以上を輸入に頼り、加えて輸入の半分以上をロシアに依存していることになる。

ロシア国営 Gazprom は6月14日、天然ガスパイプラインNordstream 1 の供給量を40%減らすと発表した。従来の日量最大1億6700万立方メートルから1億立方メートルになる。

Gazpromは翌15日、さらに33%削減すると発表した。合計60%のカットとなる。モスクワ時間の16日午前1時半をもって供給量は最大6700万立方メートルになる。

ドイツ重電大手Siemens Energyなどによると、パイプライン内のガス圧力を高めるために使われるガスタービン(aeroderivative gas turbine) 1基をカナダで修理したが、カナダ政府の制裁措置によってGazpromに提供できなくなったという。Siemens Energyではドイツとカナダ政府に事態を連絡し、解決策を協議していると発表した。

カナダ政府は7月9日、修理したタービンをドイツに返却すると発表した。

連邦ネットワーク庁によると、ガスの貯蔵率は7月7日時点で最大貯蔵量の63%と平年より2%少ない水準で推移する。暖房などの需要が少ない夏場に確保を進め、貯蔵率を11月までに90%まで引き上げる計画だがロシアから供給が細り、貯蔵量の積み上げは難航している。

Gazpromは7月11日から2週間ほどの「定期検査」を実施するとしており、その間はガス供給が完全に止まる見通しだが (7月11日停止)、検査終了後もガス供給が再開されない可能性もある。
ロシアはウクライナに重火器を供与するドイツに反発を強めている。

ロシアからのガス供給が完全に止まった場合などには、2023年2月頃に貯蔵率がゼロになる最悪のシナリオも想定される。

2022/6/17   Gazprom、ドイツ向けの天然ガス供給を削減


付記   

Gazpromが出資するパイプラインの運営会社は点検の期限である7月21日、天然ガスの供給を再開したことを明らかにした。

ただ、ドイツのエネルギー規制当局によると、21日の供給量は点検前と同じ、通常時よりおよそ60%削減された状況で、全面的な再開にはならないとの見通しを明らかにした。
 

付記

Gazpromは7月25日、Nordstreamについて、新たに送ガス用タービン1台の修理を始めると発表。27日から供給量を6月中旬までの約2割に減らす。

 

Uniperとドイツ政権は7月に入り、ロシアのガス供給の制限に関係し、90億ユーロ規模の金融支援についての交渉を始めた。

Uniperの損失額は、2月のウクライナにおけるロシアの特殊軍事作戦の後、ロシアのエネルギー供給への依存を縮小するという独政権の決定の影響を被り、増え続けている。他のより高額な代用品で補填を強いられているためである。現在、LNGの市況は暴騰している。

 

ロシアが天然ガスの供給を絞るなか、ドイツ政府は冬場にガス不足の危機を回避しようと政策を総動員している。独議会は7月8日、経営不安に陥るエネルギー企業への公的救済に向けた関連法(Energy Security Act 改正案)を承認した。

これによると、政府は財政危機に瀕したエネルギー企業の救済のため必要な措置をとることができる。これにより消費者への影響を緩和する。

また、ガス価格の上昇を全ての消費者の間で均等に負担するようなメカニズムも導入する。天然ガスの輸入に大きな問題が生じた際には、価格調整条項を発動する可能性も含めた。

Uniperは即日、ドイツ政府に救済措置を求める申請書を提出した。

1)コスト上昇分の価格転嫁 Fair cost allocation

2)独政府系復興金融公庫(KfW)の融資枠拡大による追加融資

3)連邦政府によるUniper への出資

年末までに100億ユーロのコスト増になると試算、販売価格への転嫁を求めるとともに、20億ユーロ分の信用枠の拡大も政府系金融機関に要請した。ドイツ政府が今後、Uniperに資本注入し、株主になる可能性がある。(政府は資本注入を含め、90億ユーロ規模の公的支援を視野にいれている。)

 

付記 

ドイツ政府は7月22日、Uniper救済策として、株式30%を取得すると発表した。政府が経営に一定の影響力を持つことで、ガスの安定供給を目指す。
ドイツ政府は2億6700万ユーロ(約370億円)の増資によるUniper株取得で、56%所有の親会社であるフィンランドのFortum、同国政府などと基本合意した。

合わせて政府系金融機関であるドイツ復興金融公庫(KfW)の融資枠を現在の20億ユーロから90億ユーロに拡大する。

10月からガス買い取り価格の高騰分を料金に転嫁し、消費者の負担が増えることも明らかにした。

 

ドイツ政府はガス消費の抑制も強化する。緊急調達計画では警戒レベル別の政策対応を3段階に分けており、ドイツ政府は6月23日、2段階目の「非常警報」を発令し、3月末に公表した初期段階の「早期警報」から警戒レベルを1段階引き上げた。ガスの代替として石炭火力発電の稼働を一時的に増やす関連法も承認された。

ドイツ政府はガスを安定確保するため、不測の事態に備えた調達計画をすでに策定済み。警戒レベルは@早期警報A非常警報B緊急警報の3段階で、重大な問題が生じる場合に宣言する。

ロシアに代わる調達先をノルウェーなどで模索する。ただ現状ではガスの供給を大きく増やすのは難しい。インフラ面でも制約があり、ドイツで液化天然ガス(LNG)の受け入れ拠点の一部が完成する年末以降にならないと、ノルウェーからのガス調達量を増やすのは難しい。

ドイツはこれまでロシアからパイプで天然ガスを輸入してきた。LNGに切り替える場合、受け入れ設備と再ガス化設備が必要である。

ドイツは3月5日、国内初の液化天然ガス(LNG)輸入ターミナル建設を発表した。
ドイツ復興金融公庫(KfW)と大手エネルギー会社RWE、オランダ政府100%出資のガス大手Gasunieが、ドイツ北部のBrunsbüttel市でLNG輸入ターミナルの建設に関する覚書(MoU)を締結した。
出資比率はKfWが50%、Gasunieが40%、RWEが10%でターミナルの運営はGasunieが担当する。

同ターミナルの年間再ガス化能力は80億立方メートルで、ドイツの年間ガス需要約950億立方メートルの8.4%に相当する。(この完成はかなり先になる)

ドイツ政府は5月5日、LNGの輸入拠点となるターミナル建設を北部Wilhelmshavenで始めた。

既存の桟橋を改良し、LNGが貯蔵できる設備を備えた船4隻をリースして洋上に停泊させる。浮体式LNG貯蔵再ガス化設備と呼ばれる大型設備で、海外から到着するタンカーからLNGを船の設備に受け入れ、船上で液体からガスに戻し、陸上のパイプラインを通じて消費地に送る。80億立方メートル程度を供給できるという。

10年契約で、秋までに完成し、RWEが運営する。陸上受け入れ基地機能の代替となる、ドイツ政府は29億4千万ユーロの予算を付ける。

これらが完成しても、現在パイプラインで受け入れている量には程遠い。価格だけの問題でない。

2022/6/17   Gazprom、ドイツ向けの天然ガス供給を削減

ガスの調達不安が高まれば、一段と厳しい措置が導入される見通しで、緊急調達計画の警戒レベル3段階で最も厳しい「緊急事態」になれば、ガスの配給制や価格決定などで政府が直接介入できるようになる。

 

一般家庭へのガス供給を優先させる方針で、企業を中心に工場の操業停止を迫られる恐れがある。割安なロシア産ガスから価格の高いLNGに切り替えれば家計負担も大幅に増える。ドイツ経済研究所のクラウディア・ケムファート氏は独メディアのインタビューで、ガス価格が「最大400%上がる可能性がある」と指摘した。

ロシアからのガス購入を続ければ経済制裁の効果を弱めかねない。一方、早期に供給が止まれば今冬のガス不足が現実味を帯びる。エネルギー不足による景気悪化の懸念は強まっている。


Frankfurter Allgemeine 紙とのインタビューでBASF CEO のMartin Brudermuller は、ロシアからのエネルギー途絶はドイツ経済を過去75年以上のうちで最悪の不況に陥らすと警告した。

4〜5年経てばロシアのガスから独立することも可能かも分からないが、それまでについてはLNG輸入での代替は不十分である。ロシアの天然ガスはドイツの消費の55%を占めており、これが一夜にして切られると、被害は取り返しのつかないものとなる。ドイツ経済は第二次大戦以来最悪の危機に陥り、特に中小企業の多くにとって終わりを意味する。

BASFの場合、ガスの供給が最大需要量の50%以下になった場合、Ludwigshafen コンビナートで生産を大幅に落とすか、完全にシャットダウンせねばならない。

ドイツ人は事態の重要性を認識していない。天然ガスを切られると職を失うことを意味する。

アンモニアを例にとると、BASFは既にアンモニアや肥料の生産を落とさざるを得なくなっているが、肥料の生産国のロシアに頼れないため、2023年には肥料不足から食糧が不足し、価格が急騰、アフリカなどの貧困国では主食の購入が難しくなるだろうとしている。

2022/4/4 ロシア、天然ガス代のルーブル払い義務化

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公的支援の動きは欧州各国に広がる。

フランス政府は7月6日、ロシアのウクライナ侵攻が欧州のエネルギー市場を不安定にしていることを受け、国内最大の電力会社であるフランス電力(EDF)を完全に国営化する計画を発表した。

フランス政府はすでに同社の株式の84%を保有しているが、ボルヌ首相が同日、政府が「EDFの資本を100%保有する」計画を議会で表明。これにより政府が同社を完全に支配し、利益が減少する中での投資家への還元を回避できる。

イタリア政府は6月30日、国営エネルギー会社GSE(Gestore dei Servizi Energetici GSE S.p.A.)のガス備蓄を支援するために、40億ユーロの政府融資を行うことを決めた。
 


2022/7/12  米の戦略石油備蓄の放出、一部Sinopecにも

 

バイデン米大統領は3月31日、高止まりしているガソリン価格の抑制を狙い、今後6カ月間にわたって戦略石油備蓄(SPR)を1日当たり平均100万バレル追加で放出すると発表した。計1億8000万バレルに相当する。

他国も協調し、米国以外の放出規模が「3000万〜5000万バレルになるだろう」と述べた。

2022/4/2 OPECプラス、大幅増産を見送り 


付記

米政権は10月18日、石油の戦略備蓄を1500万バレル放出すると発表した。石油の大幅減産を決めたサウジアラビアなどへの対抗措置とみられ、11月の米中間選挙を前にガソリン価格高騰を抑制する狙いがある。

今春に合計1億8000万バレルの石油備蓄を放出する供給枠を設けたが、今回の放出でその枠を使い切る。

「今後の状況次第では、追加で大規模に供給できる用意はある」としている。

 

米政府が国内燃料価格引き下げのために戦略石油備蓄(SPR)から放出した原油の一部が6月に欧州とアジアに輸出されていたことが明らかになった。輸出された原油は500万バレル以上だという。

米税関のデータによると、Phillips 66はイタリアのTriesteに約47万バレルを輸出した。Triesteには中欧の製油所に原油を送るパイプラインがある。

仏Total Energies傘下のAtlantic Trading and Marketingも56万バレルのカーゴを2カーゴ輸出した。

業界筋によると、オランダのほか、インドのReliance製油所、中国にも輸出された。

報道によると、エネルギー省は4月に中国Sinopecの販売子会社であるUnipec向けに戦略石油備蓄から95万バレルを販売することを承認した。バイデン政権は、「エネルギー価格引き下げに役立ち、米国消費者のガソリン価格高の苦しみを和らげる」としている。

この発表は、戦略備蓄放出のうち500万バレルが海外に売却され、うち100万バレルが中国向けであるとのロイター報道の後に行われた。

さらに、中国のSinopecとバイデン大統領の息子のHunter Biden が親密な関係にあることが判明した。

2013年に private equity companyであるBHR Partnersが設立された。

2015年にBHR はSinopec Marketing に17億ドルを出資した。

2017年にHunter Bidenは彼が唯一のオーナーであるSkaneatelesを通じてBHR の10%を取得した。

Hunter の弁護士は昨年12月にHunter Bidenが最早、BHR にもSkaneatelesにも関与していないと述べたが、米国と中国の登録では、3月時点で上記の通りとなっている。

 

米国のガソリン高を緩和するための戦略石油備蓄が海外に売られたこと、特に中国に売られたこと、さらに売却先のSinopecにバイデン大統領の息子のHunter Bidenが関与している可能性があることは、今後問題になると思われる。

Hunter Bidenはこれまでに問題を起こしている。

Joe Bidenがオバマ政権での副大統領時代にウクライナ問題を担当したが、息子のHunterを同行させている。

2014年4月にBiden副大統領がウクライナの国営天然ガス会社Burisma Holdingsの幹部に会った1カ月後に、HunterはコンサルタントとしてBurisma Holdingsに入社した。2014年から2019年までBurismaの取締役を務めた。この期間で月額5万ドルの報酬を受けていた。

トランプ前米大統領はウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談で、バイデン氏と同氏の息子に関する調査を要求。これを受け、野党・民主党が弾劾調査の開始を発表した。

2019/9/26 米民主党、Trump大統領の弾劾調査開始へ

Joe Biden大統領も政府の業務に息子を関与させるやり方は問題である。



2022/7/13 中国当局、テンセントやアリババなどに独禁法違反で罰金 、8月の独禁法改正で更に規制強化へ 

中国の 独禁法などを管轄する国家市場監督管理総局(State Administration for Market Regulation :SAMR)は7月10日、過去のM&A(合併・買収)などの際に当局への申請がなかったことが独占禁止法違反にあたるとして、ネット大手の騰訊控股(Tencent)やAlibaba集団などに罰金を科すことを決めたと発表した。

合計28の案件が罰金の対象になり、金額は大半が1件当たり50万元(約1000万円)。

騰訊控股(Tencent)は12の買収案件について総額600万元の支払いを命じられ、Alibabaの子会社は動画配信サービス「Youku(優酷)」の株式取得など5件について報告しなかったとして250万元の支払いを求められた。

オンライン診療を手掛ける平安健康医療科技(Ping An Good Doctor)が日本のソフトバンクと合弁企業ヘルスケアテクノロジーズ を東京に設立した件も対象になった。

ヘルスケアテクノロジーズ
     設立:2018年10月15日
 事業内容:オンラインヘルスケア事業

同社のHELPO(ヘルポ)は体調が悪くなり始めたときや、ちょっとした身体の不安を医師・看護師・薬剤師の医療専門チームに気軽に相談できるヘルスケアアプリ

 平安健康医療科技にはソフトバンク・ビジョン・ファンドが400億円超を出資していた。

このほか、動画配信のBilibiliが3件、ブログサイトWeiboが1件など。

 

中国当局は2020年末ごろからネット大手の摘発を強めており、これまでもTencentやAlibabaに様々な名目で罰金を科してきた。

2020/12/31   中国もインターネット企業を規制

2021/4/13 中国政府、独禁法違反でアリババに罰金3000億円 

2021/7/29 中国独禁法当局、規制強化

2021/10/16   中国当局、独禁法違反で美団に 5.27億ドルの罰金 

 

中国では8月1日に改正独禁法が施行される。2008年8月の施行以来で初の改正となり、ネット大手への統制がさらに強まる見通し。M&Aの届け出義務違反に対する罰金は大幅に引き上げられる。

中国の第13期全国人民代表大会(全人代)常務委員会第35回会議は2022年6月24日、独占禁止法の改正に関する決定を可決した。8月1日から施行される。

国家市場監督管理総局局長の説明では、改正の理由として、2008年の独禁法施行以降の運用の中で、一部の独占禁止行為に対する処罰が不十分なこと、法執行体制に改善の余地があることなどの課題が明らかになったことを指摘している。

特に、一部の大規模プラットフォーム事業者がデータや技術、資本などの優位性を乱用して独占的行為を行い、公平な競争の障害となっており、プラットフォーム経済分野における独禁法関連制度の具体的な適用規則の明確化が急務とした。

改正独禁法の第22条において、市場支配的地位を有する事業者による、データやアルゴリズム、技術やプラットフォーム規則などを利用した市場支配的地位の乱用を禁止する旨が規定されるなど、プラットフォーム事業者を対象とする内容が追加された。

また、事業者集中審査について、国務院が定める申告基準に達しない場合でも、国務院独占禁止法執行機関が、当該事業者集中が競争制限・排除効果を持つかその可能性があることを証明する証拠を有する場合、同機関は事業者に申告を要求することができると規定した(26条)。

分類されたレベル別の事業者集中審査制度を整備し、経済や国民生活に関係する重要分野における審査を強化することも盛り込まれた(37条)。

垂直的独占協定に関して、関連市場における市場占有率が国務院独占禁止法執行機関の定める基準を下回ることを証明でき、かつ、国務院独占禁止法執行機関の定めるその他の条件に合致する場合は禁止しないとする「セーフハーバールール」を定めた(18条)。


2022/7/14 世界人口、11月に80億人 2023年にインドが中国上回る

国連は7月11日に公表したリポートWorld Population Prospects 2022で、世界人口が2022年11月15日に80億人を突破するとの見通しを示した。

最新の推定では、2030年には85億人、2050年には97億人、2100年には104億人としている。

また、2023年にはインドの人口が初めて中国を上回り、世界最多になると予想した。インドは増加が続くが、中国は今後、人口減少となる。
2050年時点でもインドのほか、パキスタン、ナイジェリア、エチオピア、コンゴ等、人口増が続く国が多い。

  百万人 1990実績 2022予想 2050予想
China 1 1,144 1 1,426  2 1,317
India 2 861 2 1,412 1 1,668
USA 3 246 3 337 3 375
Indonesia 4 181 4 275  6 317
Brazil 5 149 5 215 7 231
Russia 6 148 9 145  15 133
Japan 7 123 11 124 番外      
Pakistan 8 114 5 234  5 366
Bangladesh 9 106 8 170  10 204
Nigeria 10 94 6 216 4 375
Mexico 11 81 10 127 13 144
Ethiopia   12 122 9 213
Congo   16 97 8 215

2022/7/15 英国 次期首相候補 

ジョンソン首相は7月7日、声明を発表し、与党・保守党の党首を辞任して、首相の座からも退くことを明らかにした。

7月5日には閣僚2人(Rishi Sunak:Chancellor of the Exchequer, and Sajid Javid:Health secretary)が、政権は誠実さに欠けるとして辞任、その後、Welsh Secretary Simon Hartが辞任、首相に辞任を迫ったNorthern Ireland Secretary Brandon Lewis が解任されていた。

後任を決める与党・保守党の党首選を取りまとめる委員会は7月12日、立候補の条件を満たした8人を正式に候補者として指名した。

当初、11名が立候補したが、不祥事続きで信頼が失墜したジョンソン氏が後任選出まで首相を続けることへの批判が根強く、党は手続き迅速化のため、7月11日に選出方法の変更を決定した。
従来は立候補には保守党議員358人中、8人の推薦が必要であったが、最低20人の推薦が必要と厳格化した。

サジド・ジャビド前保健相は出馬の意向を示していたが辞退した。

指名を受けたのは下記の8人。内女性(赤字)は4人。

今後の予定は次の通り。

7/13 第一回投票 30票未満の候補者は除外
7/14 第二回投票 最小票の候補者除外  ----現在、これで5人になった。
7/18〜21 投票を繰り返し、2候補を残す。7/19に3人に絞られた。

7/20 これまで2位のMordauntが落選した。

    落選
Rishi Sunak Liz Truss   Penny Mordaunt

候補者が2人になった後は、全国16万人の保守党員による郵便投票が行われ、最終的な勝者は9月5日に発表される。

9/5  新首相選出

 

    支持
議員
  7/13 7/14 7/18 7/19 7/20  
Rishi Sunak 前財務相 45人

7月5日に財務相を辞任。両親はインド系で東アフリカから移住
昨年まではジョンソン氏の後継者として有力視されていた。

新型コロナウイルス対策として打ち出した一連の経済対策は高い支持を得たが、
妻の税金申告漏れや、ジョンソン氏とともにロックダウン中のパーティーに参加し罰金を科されたことがイメージダウン

88 101 115 118 137  
Ms Penny Mordaunt 通商政策担当閣外相 25人 元防衛相で、前回首相選挙でHuntを支持したため、Johnson首相に解任された。
EU離脱の熱心な支持者。
67 83 82 92 105
Ms Liz Truss 外相 21人 3人の首相下で、環境相、貿易相、女性担当相を続け、現在は外相。
「就任初日から」減税政策を始めると約束した。
50 64 71 86 113  
Tom Tugendhat 下院外交委員長 20人   37 32 31  
Ms. Kemi Badernoch 前閣外相 16人 両親はナイジェリア系 40 49 58 59  
Nadhim Zahawi 財務相 14人

7月5日辞任のSunak財務相の後任

元イラク難民で幼少時に英国に移住。
英国は新型コロナウイルスワクチンの接種を世界で最も早く開始した国の1つだが、その際にワクチン担当相を務めていた。

25  
Jeremy Hunt 元外相 13人

2019年の保守党党首選でジョンソン氏と共に決選投票に進んだ。
2年前から下院保健特別委員会の委員長も務めている。

18  
Ms Suella Braverman 法務長官 12人

EU離脱の熱心な支持者
アイルランド問題でEUとの協定を破り、英国の弁護士から非難された。

 

32 27  
以下は当初、立候補
Sajid Javid  前保健相   7月5日に 保健相を辞任。相次ぐ閣僚離反の口火を切った。元銀行員。両親はパキスタン系イスラム移民。2019年の保守党党首選では4位だった。
Grant Shapps 運輸相    
Rehman Chishti 外務次官   パキスタン生まれ

 


2022/7/16 パナソニックエナジーの米国車載電池工場建設計画 

パナソニック
エナジー米国カンザス州714 同州への投資誘致補助金制度である Attracting Powerful Economic ExpansionAPEXへのパナソニック エナジーの申請ついてカンザス州が承認したこと発表した。

カンザス州が州内への投資を誘致するために設定した補助金制度で、特定事業領域において、総額 10 ドル以上投資をすることに同意した適性ある企業に対して適用される。
カンザス州はパナソニックが投資と雇用を完了した後、補助金として過去最大規模の8億2900万ドルを払う

パナソニック エナジーは2022年4月設立で、エナジーデバイス事業部(乾電池、リチウム一次電池、ニッケル水素電池)、モビリティエナジー事業部(車載用円筒形リチウムイオン電池)、エナジーソリューション事業部(小型リチウムイオン電池、蓄電モジュール、蓄電システム)を持つ。

パナソニック ホールディングス取締役会の承認得られた場合にはカンザ車載用リチウムイオン電池製造工場の立地先となる予定。「新しい工場の場所、生産能力も含めた具体的な中身についてはまだ何も決まっていない」としているが、候補地としてカンザス州De Soto挙げている。最大で 4,000 人の新規雇用と約40 の投資を生み出すと期待している

米ホワイトハウスは7月13日、「中国が優位にたつリチウムイオン電池市場で、米国で完結するサプライチェーンを構築する取り組みだ」との声明を発表した。

NHKは3月4日、パナソニックがEVの新型電池の生産を強化するため、アメリカで工場用地を取得する方針を固めたと報じた。

Teslaへの供給を想定し、数千億円規模の大型工場とすることを視野に、量産技術の確立などを急ぐとした。Teslaは現在、新たな工場をテキサス州で建設しており、パナソニックでは、この工場に近い、南部のオクラホマ州や、中西部のカンザス州の土地を候補とする。

パナソニック エナジーの社長は6月1日の投資家説明会で、車載用電池の生産能力について、北米を中心に2028年度にかけて3─4倍への拡大を目指すと語っていた。
同社が和歌山県の工場で量産を予定する新型車載用リチウムイオン電池「4680」(直径46mm×長さ80mmの円筒形電池)については、2023年度から北米市場で戦略パートナーに供給する。

同社が現在量産している円筒形車載電池は「1865」(直径18mm×長さ65mm)と「2170」(直径21mm×長さ70mm)の2種類だが、「4680」は、「2170」に対して体積を5倍以上にして、容量を大きくしたのが特徴。電池1つ当たりの容量を大きくすれば、自動車1台に搭載する電池の数を減らせる。

ーーー

パナソニックは2014年10月1日、リチウムイオン電池セルを生産する新会社 Panasonic Energy Corporation of North America をネバダ州
Sparksに設立した。

新会社は、同社とTesla Mortorsが連携して設置を検討してきた大規模電池工場ギガファクトリー内で、リチウムイオン電池の生産を行う。

2014/10/8 パナソニック、リチウムイオン電池の生産会社を米国に設立 

現在 この工場は世界最大リチウムイオン電池工場であり車載電池セルの出荷数 60 億個を突破している。今後もネバダSparksでの事業けていくが、カンザス州検討されている工場は、米 EV 産業の発展に対するパナソニックの長期的なコミットメントを表すものであるとしている。

 


2022/7/16  SKとFordのバッテリーJV 発足 

SK onと米国完成車メーカー Fordが合弁した電気車用バッテリー生産会社「Blue Oval SK」が公式発足した。7月14日に発表された。

Ford Motorは2021年9月27日、114億ドルを投資し、米国に電動ピックアップトラック F-150 Lightning Electric Truck の組立工場と、3つの電池工場を新設すると発表した。

2025年に操業を開始する予定。

3つの電池工場については設立を交渉中のFord とSK InnovationのJVのBlue Oval SKが建設、運営する。

バッテリー工場に両社がそれぞれ44億5000万ドルずつを投資し、組立工場にはFord単独で25億ドルを投資する。

テネシー州Stanton にBlue Oval Cityを建設する。電動ピックアップトラック「F-150 Lightning Electric Truck」の組立工場と、新JVのBlueOvalSKのリチウムイオン電池工場及び主要サプライヤーの拠点とリサイクル施設が建設される。投資額は56億ドル。

2021/10/1   Ford Motor、114億ドルを投じ、電動ピックアップトラックと3つの電池工場を建設

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SKイノベーションは2021年10月1日、電池事業を分社し、全額出資の「SKオン」(SK on)を設立した。EVの世界的な普及による需要急増に対応するため、電池事業を上場させて増産資金を確保する狙いがある。

SKは現在、米国や欧州、中国の3大市場で合計5つの新工場建設を進めている。足元で年間40ギガワット時の電池生産能力を2025年には200ギガワット時まで拡大する。

なお、SKは米ジョージア州Commerce市に電気自動車用バッテリー工場を持っている。第一工場 9.8GWh、第二工場 11.7GWh(2023年生産開始)

2018/12/4 SK Innovation、米に電気自動車バッテリー工場を建設、LG & Samsung も各地で増設

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Blue Oval SKは、米国内バッテリー工場はテネシー州(1プラント)とケンタッキー州(2プラント)に計3プラントを建設する。テネシー工場はフォードの電気車工場とともに建設される。
3つの工場を完工すれば年間バッテリーセルの生産能力は計129GWhになる。

SKは現在、米国や欧州、中国の3大市場で合計5つの新工場建設を進めている。足元で年間40ギガワット時の電池生産能力を2025年には200ギガワット時まで拡大する。

 


2022/7/18   ペルーにおけるメタネーション事業の共同検討契約

丸紅と大阪ガスは7月14日、丸紅が出資するペルーのLNG合弁会社 Peru LNGとともに、ペルー共和国で合成メタンの製造・販売事業(メタネーション事業)の事業性を調査・検討する共同検討契約を締結した。

Peru LNGについて:

出資者:Hunt Oil Company 50%、SK Energy 20%、Shell 20%、丸紅 10%

南米最初の天然ガス液化プラントをペルーのPampa Melchoritaに持つ。

2010年6月に38億米ドルを投じて完成した。能力はLNG 年間440万トンで、天然ガスは近くのCamiseaガス田からRepsol YPFとPetrobrasにより供給される。

LNGは全量Repsol のガス・マーケティング子会社が18年間にわたって購入する。

メタネーションは、再生可能エネルギー等から製造される水素と、工場等から排出されるCO2を原料とし、都市ガスの主成分であるメタンを合成する技術。

本事業は、2010年に運転を開始したPeru LNG基地を活用し、再エネ電力を用いて水を電気分解することで生成したグリーン水素と、回収されたCO2を用いて合成メタンを製造し、日本などへの輸出やペルー国内のガス需要に供給することを目指す。

 

これを実現するため、今年度は実現可能性の検討や事業性評価などに取り組む。

 


2022/7/19 原発再稼働? 

岸田首相は7月14日の官邸での記者会見で、原子力発電所を今冬に最大で9基稼働すると表明した。国内消費電力のおよそ1割に相当する電力を確保する。
火力発電の供給能力も10基増やす。電気代負担を実質的に軽減する新枠組みも打ち出し、電力不足解消へ政策総動員で臨む。

エネルギー対策と物価高対策

 この冬で言えば、最大9基の原発稼働を進め、日本全体の電力消費量の約1割に相当する分を確保するとともに、ピーク時に余裕を持って安定供給を実現できる水準を目指し、火力発電の供給能力を追加的に10基を目指して確保するよう指示した。過去3年間と比べ、最大の供給力確保を実現できる。

岸田首相は原発だけでなく、経産相に「火力発電の供給能力を追加的に10基確保するよう指示した」とも述べた。

報道各社から質問を受け、経産省担当者は「10基ではなく、10基分の供給力の確保。6月末に方針を決めた」と述べた。

火力発電の供給力は、2016年度以降、設備の休廃止により大きく減少、2022年度1.1kW余りと最も低くなっている。

経産省は6月30日、冬を見据えて有識者が話し合う総合資源エネルギー調査会電力・ガス基本政策小委員会で、火力発電のたき増しや老朽化で停止した発電所の再稼働を求める方針を決定、7月末にも発電所を持つ会社に、東日本で170万㌗、西日本で190万㌗分の供給力を募る。

東京電力と中部電力が出資する火力発電会社「JERA」は7〜8月、懸念される電力不足に対応するため、老朽化して休止中だった姉崎火力5号機(出力60万キロワット)と、知多火力5号機(同70万キロワット)2基を臨時で再稼働する。電力需給は一定の余裕が生まれるが、政府は状況はなお厳しいとして節電を呼びかけている。

 

日本の原発の状況は下記の通り。

再稼働が認められたのは10基ある。

但し、「特定重大事故等対処施設」問題がある。

原子力規制委員会は2019年4月24日の定例会合で、原発に設置が義務付けられているテロ対策施設が期限内に完成しない場合、期限の延長を認めないことを決めた。原則として原発の運転停止を命じる。

テロ対策施設は「特定重大事故等対処施設」と呼ばれ、2011年の福島第一原発事故後にできた新規制基準で設置が義務付けられた。
原子炉から離れた場所に建て、遠隔制御で原子炉を冷やす設備を備える。原子炉が航空機の衝突などによる攻撃を受けても、電源や冷却機能などを失わないようにする。

2019/4/25 テロ対策施設未完成の原発、運転停止へ 

このため、工事が期限までに完了しない原発については、工事完了まで停止することとなる.

現在、美浜3号はこの工事のため2021年10月から停止している。(7月下旬に完成、8/12に稼働)
大飯3号は稼働中だが、8月24日に期限が来るため停止、12月に運転再開。
大飯4号は定検で停止中で、8月24日に期限が来るが、その前に工事が完了、8月中旬に運転再開。

玄海3号は定検で停止中で、8月24日に期限が来て停止継続、2023年1月20日に運転再開予定。

玄海4号は定検停止していたが、7月10日に再開、8月上旬に通常運転する。しかし、9月13日に期限が来て停止、2023年2月中旬に運転再開予定。今冬には間に合わないとして首相構想から唯一除外。

このほかに定期検査のための休止がある。

高浜3号、4号は定検休止中で、8月と12月に運転再開する。
大飯4号は定検休止中。特定重大事故等対策の期限が8月24日だが、恐らく直前に同工事と定検が終了し、8月中旬から運転再開。

以上により、年末〜年初に10基のうち9基が稼働する。

岸田首相の「最大9基」はすでに原子力規制委員会の審査に合格して再稼働済みの西日本の10基のうち、検査のため運転を停止する九州電力玄海4号機を除く9基である。
原発9基態勢となるのは今のところ、23年1月下旬〜2月中旬の1カ月程度に過ぎず、それ以外の期間は7〜8基の稼働にとどまる。

2023年2月には残る玄海4号が運転再開するが、同月には伊方4号、川内1号が定検に入る。

  現在 運転
再開
特定重大事故等対策 運転再開 2023/2までの稼働期間 次期定検 政府案
完了済 期限
停止
完了
関電 高浜 3号 定検 8月       8月〜  
4号 定検 10/21       10/21〜  
美浜 3号 特定     2021/10 7月下旬 10/20→8/12 繰り上げ 8/12〜  
大飯 3号     8/24 12月   12月〜  
4号 定検 8月   (8/24) 8月 8月中旬 8月中旬〜  
四国 伊方 3号         〜2023/2/23 2023/2/23
九州 玄海 3号 定検
特定
    8/24   2023/1/20 2023/1/20〜  
4号 定検 8月   9/13   2023/2

----

 
川内 1号         2月中旬まで 2023/2月中旬
2号         通期 2023/5
合計   10基 4基               9基

  注 5基稼働中との報道があるが、定検からの立ち上げ中で通常運転前の玄海4号を含めたもの。

ーーー

稼働が認められた上記10基のほか、新規制基準への適合性を認めた原子炉設置変更許可を受けたものが7基ある。
従来の安全基準を強化して新たな規制基準が施行されたが、原子力施設等が新規制基準に係る適合性の審査に合格したもの)

東北電力女川2号(BWR:沸騰水型)
東電柏崎 6号、7号
日本原子力東海2号
関電高浜 1号、2号
中国電力島根2号(BWR)

設置変更許可は再稼働に向けた節目の一つだが、再稼働するには後段規制の設工認や保安規定変更認可、使用前確認もクリアしなければならない。安全対策工事の完了や地元同意も必要となる。

原子力規制委員会は2021年4月14日、柏崎刈羽原発のテロ対策の不備を問題視し、原発再稼働に必要な核燃料の移動や装塡を禁じる行政処分の是正措置命令を決定した。事態が改善されたと判断されるまでは再稼働ができない状態が続くことにな る。

2021/3/29   柏崎刈羽原発の再稼働、見通しつかず 

 


 

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