2009/7/3 公正取引委員会

ガソリンにおけるバイオマス由来燃料の利用について

 公正取引委員会は、平成20年12月から平成21年3月にかけて、ガソリンにおけるバイオマス由来燃料の利用の実態について、関連事業者及び関係省庁に対してヒアリング等による調査を行った。
 公正取引委員会は、その後、同調査を踏まえ、直接混合方式及びETBE方式が市場における競争を通じて評価・選択される環境を整備する観点から、独占禁止法上の考え方を整理するとともに、2つの混合方式のイコールフッティングを確保するために必要とされる措置について検討してきたところ、本日、これらについて考え方を取りまとめ、公表することとした。

1 調査について
(1) 事実
 改定京都議定書目標達成計画(平成20年3月28日閣議決定)(別添1参照)は、「輸送用燃料を含むバイオ燃料の普及を促進する」としているところ、ガソリンにおけるバイオマス由来燃料の利用については、バイオエタノールを直接ガソリンと混合する方式(以下「直接混合方式」という。)及びバイオエタノールからETBEを製造し、これをガソリンと混合する方式(以下「ETBE方式」という。)の2つの混合方式が存在する(別添2参照)。現在、直接混合方式による製品としては、E3が製造・販売されている。
   
 直接混合方式については、環境省等の委託を受けた大阪府や、環境省、経済産業省等の支援を受けた宮古島において実証事業が行われている。ETBE方式については、経済産業省による補助を受けた石油連盟を主体として実証事業が行われた(平成20年度末まで)。
      
公正取引委員会は、これら2つの混合方式は市場における競争を通じて評価・選択されることが望ましいとの立場から、これら混合方式を用いる事業それぞれについて調査を行ってきたところ、次のような事実が認められた。
(ア)  石油連盟は、直接混合方式について問題点があるとの見解を繰り返し表明している。
(イ)  各石油元売会社は、直接混合方式向けに原料ガソリンを供給することに消極的である。
(ウ)  各石油元売会社の系列のサービスステーション(以下「SS」という。)においては、直接混合方式による製品の販売が行われていない。
   
  (イ)及び(ウ)により、市場に流通する直接混合方式による製品の量が限られており、消費者による選択が十分に行われない状況にあると認められる。
   
(2) 背景
 エタノールを直接ガソリンと混合すると蒸気圧が上昇するため、現行の蒸気圧に係るJIS規格を満たそうとする場合には、標準的な仕様のレギュラーガソリンを直接混合方式に用いることができない(別添3参照)。
   
石油連盟及び各石油元売会社は、E10導入等の環境省が示す高い目標が実現困難なものであると考えている。
   
2 今後の対応について
 直接混合方式及びETBE方式が、市場における競争を通じて評価・選択される環境を整備する観点から、以下の対応が必要であると考えられる。
   
(1) 公正取引委員会における対応−独占禁止法上の考え方の明確化
公正取引委員会は、1(1)の実態を踏まえ、各石油元売会社に対して次のとおり独占禁止法上の考え方を明らかにする。
   
 石油連盟が各石油元売会社に対して直接混合方式による製品の製造又は販売に協力しないようにさせること及び各石油元売会社が共同して直接混合方式による製品の製造又は販売に協力しないことを決定することは、独占禁止法に違反する行為である。さらに、石油連盟が二つの混合方式の一方についてだけ、否定的な見解を表明し続けることは、石油連盟の会員である各石油元売会社の間に、一方の混合方式を採用しないとする共通の認識を醸成するおそれもある。石油連盟は、このことを十分認識し、留意する必要がある。
   
 石油元売会社が、その系列特約店等に対して、自社系列のSSにおける直接混合方式による製品の取扱いを一律に禁止することは、
(ア) それが仮に各元売会社が個別に判断した結果であったとしても、前記1の状況の下では、ほとんどすべての石油元売会社が同様の判断をする可能性が極めて高いこと
   
(イ)  我が国のガソリン販売市場においては、ガソリン販売事業者に占める各石油元売会社の系列特約店等の割合が高く、また、新たなSS等の販売網を構築することは事実上困難であること等を踏まえれば、直接混合方式による製品の製造・販売をする事業者が販路を確保することを困難にするおそれが高い。このような石油元売会社の行為は、不当に、その取引の相手方に対して、競争者と取引しない条件を付して取引するものであって、競争者の取引の機会を減少させるおそれがある行為であり、不公正な取引方法第11項(排他条件付取引)等に該当し、独占禁止法上問題となるおそれがある。

 なお、石油元売会社が、その系列特約店等に対して、他社製品を当該石油元売会社の商標を付さないで販売することを禁止する行為は、独占禁止法第21条(知的財産権の行使行為に対する適用除外)の問題ではない。少なくとも、系列特約店等が、現在各地で行われている直接混合方式の実証事業に協力するため、系列SSにおいて、一部の給油機を直接混合方式の製品専用のものとして、当該給油機を地下タンクとともに分け、当該給油機から給油する商品がサインポールの石油元売会社の製品でないことを明確に認識できるように表示してこれを販売するのであれば、その販売を禁止する行為を商標権を理由に独占禁止法に違反しないとすることはできない。
   
(2)  関係省庁において必要な対応
 前記1の各事実は、行政庁による規制やこれまでに行政庁が示してきた見解に関連するものであるが、これらは、石油元売会社による前記2(1)に該当し得る行為を誘因しかねないという懸念がある。独占禁止法違反行為が行われないような環境を整備するためにも、また、2つの混合方式の双方の促進を確保するためにも、関係省庁において次のような措置を採ることが必要であると考えられる。
   
環境省及び経済産業省は、各関係事業者の疑問を解消するため、今後のガソリンにおけるバイオマス由来燃料の普及について、連携協力して必要な情報提供を行うこと。
   
環境省は、標準的な仕様のレギュラーガソリンを直接混合方式に用いることについて、環境に与える影響との比較考量を十分に行いつつ、蒸気圧に係る基準について、必要な見直しの可否を検討すること。
   
経済産業省は、バイオエタノールの混合方式について、ETBE方式、直接混合方式の双方について制度的な手当てがなされており、事業者が自由な選択を行うことができる旨を石油連盟及び各石油元売会社に周知すること。