日本経済新聞 2008/8/23                グルジアのオセチア紛争

グルジア紛争 石油輸送 マヒ続く
 港湾の機能停止 アゼルバイジャンに圧力

 ロシア軍のグルジア侵攻により同国を経由したアゼルバイジャン産の石油輸出が停止している。ロシア軍がグルジアの幹線道路と鉄道網を遮断し、主要な港湾都市を封鎖しているためだ。ロシアは紛争を利用し、親欧米志向を強めてエネルギー輸出をグルジア経由に切り替えてきたアゼルバイジャンを勢力圏に取り戻す狙いだ。

 ロシア軍が占領してきた中部の地域で16日に鉄橋が爆破され、バクーからトビリシを経由して黒海沿岸のバトゥーミやポチといった石油積み出し港を結ぶ鉄道網は不通となった。アゼルバイジャンの国営石油会社(SOCAR)は22日までに原油と石油製品を積んだ列車16本がグルジアとの国境で足止めになっていると明かした。
 アゼルバイジャンで石油開発を主導する英BPはロシア軍による攻撃を恐れ、12日から
バクーと黒海沿岸のスプサをつなぐ石油パイプラインの稼働を停止。バクーからトビリシ経由でトルコのジェイハンまでを結ぶBTCパイプラインも止まったままだ。ロシア軍は特にアゼルバイジャンが対欧州輸出拠点として投資してきたポチの施設を破壊し、港湾機能は完全に停止している。
 ロイター通信によると、BPが主導するカスピ海のアゼリ・チラグ・グナシリ油田の生産は日量80万バレルから25万バレルに減少した。グルジア経由の輸出ルートを断たれたアゼルバイジャンは代替策としてこれまで減らしてきたロシア南部のノボロシスクの港を通じた輸出に切り替えざるを得なくなっている。
 西側外交筋は「ロシアはグルジア侵攻を利用し、ロシア離れを加速したアゼルバイジャンも経済的に締め付けている」と指摘する。ロシア軍は西部地域に2千人以上の部隊を駐留させ続ける構えを見せている。港湾都市への交通網を封鎖し、グルジアとアゼルバイジャンヘの圧力に利用するねらいとみられる。
 アゼルバイジャンは領内にアルメニア系住民が分離独立を主張するナゴルノカラバフ自治州を巡る紛争を抱え、周辺地域で3月には武力衝突が発生。17日もバクーで爆弾テロが起きた。ロシアはかねてナゴルノカラバフ問題への介入をテコにアゼルバイジャンを揺さぶってきた。
 ロシア軍によるグルジアの交通遮断の影響はアルメニアにも波及。アゼルバイジャン、トルコと対立関係にあるアルメニアの輸出入はグルジアを経由しており、物資不足が深刻になっているもようだ。ロシア軍の侵攻でカラカス地域全体が不安定になる恐れがある。