2006/6/15 日本経済新聞

上海協力機構 中国主導で経済圏めざす 20億ドルの共同事業調印へ

 中ロと中央アジア4カ国が加盟する上海協力機構(SCO)は、中国主導で域内の経済協力を加速する。14日には加盟国の企業経営者が経済交流の拡大を話し合う合同組織を設立。インフラ整備など中央アジアでの約20億ドル(約2300億円)の共同事業にも調印する。貿易・投資手続きの簡素化など市場統合に着手し、ユーラシア大陸の東西に広がる経済圏の形成を目指す。
 SCOの首脳会議開催を前に14日発足したのは「実業家委員会」。定期的に会合を開き、各国政府と連携しながら、域内の経済交流の拡大や投資環境の改善について協議する。設立総会には中国企業約70社やロシア企業約40社、中央アジア各国の大手企業の代表者らが出席した。委員会代表は同日、中国の胡錦濤国家主席、ロシアのプーチン大統領ら6カ国首脳とも会った。胡主席は「企業家の参加により、経済協力面で具体的な成果が上がる」と強調した。

 SCOはこれまでテロ対策など安全保障分野を中心に域内協力を深めてきたが、創設5周年を迎えた今回の首脳会談を機に経済関係の強化も安保と並ぶ両輪とする。第一弾となる中央アジアでの共同事業は中国が資金提供や技術支援をする。具体的な案件として@タジキスタンとウズベキスタンを結ぶ道路整備Aタジクの高圧送変電線敷設Bキルギス初のセメント工場建設Cカザフスタンの水力発電事業ーーが挙がっている。
 SCOは中長期的に、貿易や投資の手続き簡素化や技術協力などを通じて域内経済の統合を進める方針。特に中国は「10−15年で域内の貨物、資本、技術、サービスの自由な移動を実現する」(商務省の干広洲次官)ことを提唱、他の加盟国から受け入れられたという。加盟6カ国を合わせて、人口が世界の約23%、国内総生産(GDP)でも約7%を占める巨大経済圏をつくりたい考えだ。
 中国が中央アジアヘの経済協力に積極的な背景には、カスピ海に隣接し、石油や天然ガスなど資源が豊富に埋蔵されている同地域への影響力を強めたいとの思惑がある。ただ中央アジアを巡っては、資源獲得をにらんで米国や日本も外交を活発化し、中ロと激しい駆け引きを展開。中央アジア諸国の間では中国の急速な勢力伸長に懸念する見方も出ている。

▼上海協力機構
 1996年4月、中国、ロシアと中央アジアのカザフスタン、キルギス、タジキスタンが上海で首脳会議を開き、国境地帯での信頼醸成を強化する協定に調印。2001年6月にウズベキスタンが正式加盟し常設の地域協力機構「上海協力機構」へ格上げした。
 加盟国6カ国合計の面積は3千万平方キロメートル超でユーラシア大陸の5分の3。人口は約15億人。04年の6カ国合計の国内総生産(GDP)は約21兆5千億ドル。04年にモンゴル、05年にイラン、インド、パキスタンがオブザーバーとなった。

1996年4月に初めて集った上海ファイブ(ウズベキスタンを除くか国首脳会議)を前身とする協力機構で、加盟国が抱える国際テロや民族分離運動、宗教過激主義問題への共同対処の外、経済や文化等幅広い分野での協力強化を図る。2000年の会議にウズベクがオブザーバーとして参加し、翌年に6カ国によって発展発足した。

2002年6月7日、サンクト・ペテルブルグにおいて、SCO地域対テロ機構の創設に関する協定が署名された。SCO地域対テロ機構執行委員会の書記局は上海に、本部はキルギスの首都ビシュケクに設置する。

2006年6月の会合によってオブザーバー4カ国は正式に加盟する見込みである。

アフガニスタンはカルザイ政権が半ばアメリカの傀儡であるため、加盟を拒否されている。