日本経済新聞 2003/11/20

カネボウの化粧品分社 株売却益2500億円に 新中期計画 有利子負債4割削減

 経営再建中のカネボウは2007年3月期までの
新中期計画の大枠を固めた。主力の化粧品事業を分社し花王の出資を受ける際の株式売却益として2500億円程度を見込み、2003年3月期末で5057億円の連結有利子負債を4割減の3千億円以下にする。金利負担の圧縮に加えリストラも実施して収益構造を改善、経常利益は2.5倍程度に増やす。
 カネボウは化粧品部門を分社して来年3月に新会社を設立、その株式の49%を花王に売却する。売却額は2500億−3000億円になるもよう。それから新会社の資本金のうちの花王の持ち分を差し引いたカネボウの実質的な売却益は2500億円前後になる見通し。花王にとって過去最大の投資案件になる。
 カネボウは2003年9月中間期で625億円の債務超過に陥る見通しだが、この売却益でまず債務超過を解消。残りは負債削減に充てる。新会社設立後、カネボウは配当金に加えブランド使用料などを新会社から継続的に受け取る。
 前期にカネボウが化粧品事業で稼ぎ出した現金(キャッシュフロー)は350億円弱。事業価値は10倍台後半の5千億−6千億円と評価されるもよう。米プロクター・アンド・ギャンブルが3月に独ウェラを買収した際はヘアケア・化粧品事業をキャッシュフローの約20倍に評価した。
 約3年の中期計画に盛り込むリストラでは、連結べ−スで1万4千人強の人員を1万2千人にする。赤字のアクリル事業からの撤退に加えナイロンを4割程度減産。人事や経理など本社間接部門の人員は3分の1減らす。厚生年金基金の代行部分も返上する方針。
 早期退職者への退職金支給や遊休不動産売却損なども発生するが、金利負担減や固定費減で収益構造ば改善。2007年3月期の連結経常利益は340億円(2003年3月期は141億円)を目指す。純粋持ち株会社への移行も視野に入れ、繊維と食品に続き家庭用品や薬品なども切り出すことを検討する。19日のカネボウ株の終値は98円、10月23日の花王との化粧品事業統合発表以来、先行きを不安視した売りが広がり34%下落した。


2003/11/20 カネボウ

「カネボウグループ中期構造改革プラン」について

 当社は、本年度の全社経営指針を「未来構築」・「構造改革」とし、グループの全社的な体質強化を図るべく、事業構造改革に着手しております。

 現在、本年度を構造改革の助走期間とした「新中期計画」(平成16年度〜18年度)を策定中でありますが、先般発表の事業構造改革の方向性に沿った中期構造改革プランについて、その概要をお知らせいたします。

【 中期構造改革プラン 】

 当社は、消費財事業を核とした総合生活消費財企業への構造転換を進めておりますが、懸案である「有利子負債の圧縮」並びに「収益力強化」を実現するためには、化粧品事業を中心とした消費財事業の強化策と、グループ全社を対象にした構造改革が必要と判断いたしました。

 「中期構造改革プラン」は、(1)体制・組織のスリム化とコスト・経費・人員削減の徹底、(2)グローバル競争力強化を目的としたアライアンス戦略の実施、並びに不採算事業からの撤収を含む事業構造改革の実施を編成方針とし、経営課題の解決を図るものです。
 また、各事業部門が「カネボウ」商標の傘下で、「
The Life style Company」に沿った事業運営により安定収益化を実現し、将来的に「持株会社」移行を視野に入れ、総合生活消費財企業として、中長期的な企業価値向上を目指すものであります。

1.グループ経営指標
1)構造改革施策実施による期間収益力の向上
   営業利益水準(150億円強の改善)
    14年度:296億円→18年度目標:450億円
   経常利益水準(約200億円の改善)
    14年度:141億円→18年度目標:340億円

2.体制・組織のスリム化とコスト・経費・人員削減の徹底

1) 不採算事業の撤収、事業単位(グループ会社・事業部等)の統合・再編などにより、体制・組織をスリム化。
2) 上記スリム化及び事業対策を通じたコスト・経費・人員の削減
  (人員は2,800名削減→12,000名体制へ)
3) 厚生年金基金の代行返上の実施検討

3.事業別の対策と戦略方向

  高収益型ポートフォリオへの事業転換を図るため、各部門のビジネスモデルの見直しを図る一方、不採算事業については、撤収を含めた抜本対策を実施する。
   
1) @ 消費財事業は、化粧品をはじめとし、ホームプロダクツ・薬品・食品を事業強化部門
として、それぞれの事業の強みを生かし、強化施策を展開する。
  A 併せて、徹底したコストダウン、経費削減、組織のスリム化・再編等を行うことによ
り、収益を増強する。
 
化粧品事業
@ 花王株式会社との協業体制構築により、国内リーディングカンパニーを目指すとともにグローバル強化を図る。
A F1 (カウンセリング)ブランド戦略の再構築
B チャネル別戦略の強化(セレクトブランド展開の拡大)
C グローバル戦略の見直し、及び強化体制の再構築
ホームプロダクツ事業
@ 重点6 カテゴリー(スキンケア・ヘアカラー・ボディソープ・シャンプー/リンス・アウトバスヘアケア・洗顔料)をコアにした戦略強化
A 主力ブランド(ナイーブ・プロスタイル・肌美精)の商品戦略再構築
薬品事業
@ 医療用漢方の差別化商品(KB2 スティック)拡販
A ヘルスケアの商品戦略再構築(不採算商品削減、新規商品開発)
食品事業
@ フリスク等菓子特化戦略の推進・強化
A 不採算事業フレームの見直し(冷菓・カップ麺等)
総合 各部門連携によるサプリメント・健康食品・ハーブ関連商品等の開発推進
     
2) 合繊・天然繊維・ファッション・新素材事業は、安定収益化実現のため、抜本的な構造改革による体質改善及び人員・経費削減を加速し、短期間の内に効果を発現させる。
     
 
合繊事業
@ アクリル事業撤収
A ナイロン事業縮小(ウレタン・不採算汎用品・重合からの撤退/独自品特化)
B ポリエステル系独自品、及び生分解性繊維「ラクトロン」の強化
天然繊維
事業
@ 綿、羊毛、シルク事業のスリム化(不採算品種の縮小・撤退、及び高付加価値商品への特化)
A 製品事業の不採算取引縮小・撤退、体制効率化
B 中国、インドネシアを核とする海外オペレーションの早期確立
ファッショ
ン事業
@ 「フィラ」「ランバン」への特化・収益強化
A 上記以外の事業の収益改善(小売事業等)・縮小・撤退
新素材事業 技術・採算等の観点から事業絞込み(劣位事業は売却・撤収)