2000/11/17 三井化学/住友化学

三井化学および住友化学の全面的統合について
 〜21 世紀のグローバルリーダーをめざして〜

 三井化学株式会社および住友化学工業株式会社は、「21 世紀の化学産業におけるグローバルリーダー」をめざすべく、2003 年10 月を目処に両社の事業を全面的に統合することに、本日、基本的に合意し、そのための具体的な検討を開始することになりましたのでお知らせいたします。
 なお、ポリオレフィン事業については、2001 年10 月を目処に先行的に統合を実施いたします。

1 .統合の趣旨

   三井化学と住友化学は、日本エボリュー(1996 年)、日本ポリスチレン(1997 年)、最近では日本エイアンドエル(1999 年)を共同で設立するなど、緊密な協力関係および信頼関係を築いてまいりました。一方、市場のボーダーレス化が急速に進行することで海外企業との競争が激化するなか、欧米化学会社は巨大合併と事業再編を通じて競争力の強化を図りつつあり、アジアにおいても積極投資を次々に行うなど、両社を取り巻く事業環境はますます厳しいものになっております。
 両社は、このような厳しい環境のなかで、将来の事業の発展を確保し、企業価値の更なる向上を達成するためには、事業規模の拡大による競争力の強化が必要であると考え、両社の事業を全面的に統合することが最善の選択であると判断し、本日の基本合意に至りました。

2 .21 世紀のグローバルリーダーをめざして

   三井化学と住友化学がその事業を全面統合することにより、世界トップクラスの化学会社と技術力や収益力において互角に競争できる、アジアで最大、世界第5 位の化学会社が誕生することになります。両社は、統合後の新会社において、地球規模での事業展開を通じ「21 世紀の化学産業におけるグローバルリーダー」をめざす所存です。
 統合後の新会社は、地球環境との調和の中で、世界の人々の生活がより一層豊かで快適なものになるように、技術の革新を通じて社会に有用で高品質かつ安全な製品を提供することにより広く社会に貢献いたします。さらに、株主価値を向上させ、顧客および地域社会から高く評価され、従業員にとって、働きがいがあり魅力に富んだ元気溌剌とした会社になることに努めます。また、高い倫理性をもって国内外の法令を遵守することはもちろん、公正かつ自由な競争にもとづく経営を行います。

3 .統合の方法および形態

(1 )統合の方式
   三井化学と住友化学は、対等の精神で全面的に事業の統合を行います。本統合は、最終的には単一会社として事業運営を行うことを目標としますが、当初は、両社が共同株式移転により持株会社を設立し、これを上場する方式で出発することとし、事業統合の目標期日は2003 年10 月を目処といたします。その具体的な運営形態等の詳細については、2001 年3 月を目処に決定いたします。
 なお、ポリオレフィン事業については、2001 年10 月を目処に先行して統合を実施いたします。ポリオレフィン事業を統合する会社の出資比率は、50 :50 といたします。
   
(2 )統合比率
   両社の統合における比率は、統合の際の株価およびその他の考慮すべき要素を勘案して決定いたします。
   
(3 )会社の名称・本店所在地等
   会社の名称および本店所在地等については、今後、両社間で決定いたします。
   
(4 )統合の推進体制
   統合にあたっては、両社間での具体的な検討作業を統括する機関として、事業統合検討委員会を共同で設置いたします。共同委員長は三井化学中西社長、住友化学米倉社長とし、この事業統合検討委員会の下に分科会を設置し、統合にかかる細目を検討いたします。2003 年10 月までに、両社とも、経営の健全化・体質強化をさらに徹底し、経営システム、人事制度等の統一の準備を行い、統合がスムーズに実現できるようにいたします。
 ポリオレフィン事業については、検討のための分科会として「ポリオレフィン事業統合検討委員会」を設置し、2001 年10 月の事業統合をめざして統合準備を迅速に行います。

 

4 .統合の効果

(1 )経営全般にわたる効果

   @ 規模の拡大と効率化により、生産・販売・研究のあらゆる面で世界トップクラスの化学会社と互角に競争しうる体制を整備できます。
  A 厚みを増す経営資源を背景として、選択と集中によりコア事業の競争力を強化できます。
  B 集約・統合により、研究開発が促進、強化できます。

(2 )各事業分野における統合効果

 @石油化学・基礎化学分野

 事業規模の拡大を通じたグローバルな競争力の強化が実現できます。
例えば、シンガポールにおいて、エチレン100 万トン超の設備の新設を実施し、両社の得意な誘導品をあわせてバランスの取れた収益力の高いコンプレックスを構築することが可能になり、アジアでの石化事業の基盤をより一層強化できます。

 A機能性材料・ファインケミカルズ・ライフサイエンス分野

 両社の幅広い事業展開と研究開発力等の統合により、大きなシナジー効果が期待できます。
 例えば、電子情報材料事業においては、幅広い技術力を統合することにより、今後のIT 社会が必要とする素材・機能を迅速に開発、提供することができます。
 また、農業化学品事業については、住友化学のグローバルな事業展開に、三井化学の新剤開発力が加わることにより、更に競争力が強化されます。
 医薬等のライフサイエンス分野においても、厚みを増した経営資源を背景に、将来の積極的事業展開を行うことが可能になります。

5 .統合時点の事業内容

石油化学・
基礎化学分野
エチレン、プロピレン、合繊原料、フェノール・ビスフェノ
ール、スチレンモノマー、MMA 、ポリエチレン、ポリプロピレン、
エラストマー、無機工業薬品、アルミ等
機能性材料・
ファインケミカルズ・
ライフサイエンス分野
機能製品、化成品、ウレタン、精密化学品、電子情報材料、
染料、医薬中間体、農業化学品、防疫薬、医薬品(医家向医
薬品、診断薬)等

 
  統合会社の2006 年度における連結業績目標は、次の通りです。

  業績目標
(2006 年度)
(参考)
1999 年度単純合算
売上高       3 兆円    * 1 .8 兆円
営業利益     3 ,000 億円    1 ,259 億円
経常利益   2 ,500 億円    1 ,245 億円
純利益   1 ,500 億円       345 億円

*石油化学・基礎化学分野            : 約1.0兆円
  機能性材料・ファインケミカルズ・ライフサイエンス分野 : 約0.8兆円

6 .当事会社の概要  別紙ご参照

別紙 当事会社の概要
       2000年9月末現在(連結ベース)

(1 )商号 三井化学株式会社 住友化学工業株式会社
(2 )事業内容 基礎化学品、樹脂、
化成品・精密化学品、
機能製品等の製造、販売
基礎化学品、石油化学品、
精密化学品、
農業化学品、医薬品等の製造、販売
(3 )設立年月日 1955 年7 月1 日 1925 年6 月1 日
(4 )本店所在地 東京都千代田区霞が関三丁目
2番5号
大阪市中央区北浜四丁目
5番33号
(5 )代表者 社長 中西 宏幸 社長 米倉 弘昌
(6 )資本金 103,226百万円 84,751百万円
(7 )発行済株式総数
   (額面金額)
789,156,353 株
(50 円)
1,635,166,941 株
(50 円)
(8 )株主資本 342,617百万円 441,472 百万円
(9 )総資産 1,218,915 百万円 1,465,177 百万円
(10 )決算期 3 月31 日 3 月31 日
(11 )従業員数 12 ,576 人 17 ,399 人
(12 )大株主及び
    持株比率
1.鰍ウくら銀行          
2.東レ梶@ 
3.住友信託銀行梶i信託口)
4.中央三井信託銀行
5.三井生命保険相互会社
4.99% 
4.74%
4.00%
3.67%
2.75%
1.住友生命保険相互会社
2.日本生命保険相互会社
3.住友信託銀行梶@ 
4.鰹Z友銀行
5.中央三井信託銀行梶@
8.05% 
7.37%
6.66%
4.14%
3.73%
(13 )取引銀行 鰍ウくら銀行、鞄本興業銀行
叶V生銀行、農林中央金庫
中央三井信託銀行
鰹Z友銀行、住友信託銀行
鞄本興業銀行、農林中央金庫
鞄結梹O菱銀行

(14 )最近2 年間の業績 (単位:百万円)

  三井化学株式会社 住友化学工業株式会社
決算期 1999 年
3 月期
2000 年
3 月期
1999 年
3 月期
2000 年
3 月期

売上高

855,942

884,246

927,655

950,339

営業利益

58,226

55,739

59,261

70,149

経常利益

43,870

55,902

49,447

68,561

当期純利益

7,739

16,042

20,118

18,425

1株当り当期純利益(円)

9.97

20.57

12.4

11.32

1株当り配当金(円)

6.0

6.0

5.0

5.0

1株当り株主資本(円)

423.86

438.06

200.48

210.96


化学工業日報  2000/12/25

前田勝之助東レ会長 住友−三井化学統合を語る
 石油化学 規模の経済性にはなお疑問

 住友化学工業と三井化学の事業統合に関連して、東レの前田勝之助会長の発言が面白おかしく取り上げられている。「誤解も多く、困っている」という前田会長に、発言の真意と住友−三井の事業統合への考え方、対応を聞いた。

 事前の説明、一切ない
ー 事業統合を決めた三井化学の取締役会で賛否を留保した真意は。

 「その時点では賛否の判断ができなかったということだ。私の立場は三井化学の社外取締役と同時に、三井化学第2位の大株主である東レの代表取締役という2つの責任ある立場だ。事前説明が一切なく、本格的な事業統合のFS(事業化調査)もこれからということでは、きちんとした判断、賛否を表明することはできない。腹は立つが(笑)、決してヘソを曲げているわけではない」

 申し入れあれば検討
ー 東レの参加は。

 「申し入れがあれば、真剣に検討するという姿勢に変わりはない。しかし現時点で三井化学から申し入れはないし、こちらからするつもりもない」
 「私の基本的立場は三井化学サイドにある。住友化学との統合は、石油化学を軸とする“水平連携”。規模の経済性を追求する経営思想と解釈している。これに対して東レは繊維、フィルム、プラスチック、先端材料など“垂直連携”の思想で、経営思想がまったく異なっている。このなかで
三井化学は“水平連携”を選択したということだ。だから東レから申し入れすることはあり得ない」

 垂直統合の可能性?
ー ただ東レは、カプロラクタム、高純度テレフタル酸(PTA)など合成繊維原料を生産しており、繊維事業もある。垂直統合の可能性はあるのではないか。

 「一部の繊維原料を生産しているのは確かだ。70−80年代に合繊原料を自社生産しようとしたことがある。川崎で日本石油化学と折半出資で浮島アロマを設立、シクロヘキサン、パラキシレン、オルソキシレンを生産、堺でも三井東圧化学との折半で東洋ケミックスを設立、アクリロニトリルの生産に乗り出した。85年の原料ナフサ高騰や円高でプラントの国際競争力が急速に失われ、撤退した経緯がある。カプロラクタムとPTAの一部主力原料に絞り、国際市場のなかで調達している。この方がコスト的にも有利であると考えている」
 「一部報道に、東レはPTAを2万トンしか使っていないような記載があったが、東レは年間76万トンのPTAを消費、26万トンを自社生産、50万トンが国内外からの調達。もちろん三井化学からも18万トン購入している。これだけは誤解を解いておきたい」

 メリットあり期待も
ー 統合は成功すると思われますか。

 「統合によるメリットは確かにあるし、また私も期待している。経営のキーワードは、少し前は“選択と集中”、今は“統合−合併”というムードだ。しかし統合−合併だからすべて良いわけではない。金融−銀行は統合で資本力、資金力が拡大、信用が拡大する。石油化学の場合はエチレン設備の規模、センターのコスト競争力だ。三井−住友の場合、統合しても石化の心臓部であるエチレン設備能力は180万トン弱だ。世界のエチレン能力は1億トン弱で、世界シェアはわずか1.8%に過ぎない。シンガポールに大型の新設備を建設しても3.8%しかならない。これで強いといえるかどうかだ」

ー 来年3月までに統合の姿がみえてくる。その時に反対の可能性もあるのか。

 「ゼロではない。しかし今回のことでは、日本ではまだまだ社外取締役のあり方の難しさをつくづく感じた」